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案内所等の届出と標識|専任宅建士の要否

宅建業法 読了 約47分

宅建業法50条と施行規則15条の5の2・19条を逐条で読み、案内所等の範囲、10区画10戸の射程、六つある標識の様式、10日前までの届出、義務の帰属、罰則と監督処分の条文位置を整理します。

目次

    この記事は、宅地建物取引業者がモデルルームや現地販売センター、展示会場といった「事務所以外の場所」で業務を行うときに発生する三つの義務、すなわち標識の掲示(50条1項)・専任の宅地建物取引士の設置(31条の3第1項)・案内所等の届出(50条2項)を、条文と施行規則の引用関係から読み解くものです。

    専任の宅建士を何人置くかという人数の話は専任の宅建士の設置義務に、事務所とは何かという定義そのものは宅建業の事務所に譲ります。この記事が扱うのは、条文が「どの場所を」対象にしているのかという範囲の問題、標識の様式が実際にはいくつに分かれているのかという中身の問題、届出の事項と期限がどの条文に置かれているかという手続の問題、売主と代理業者が並ぶ現場で義務が誰に付くのかという帰属の問題、そして違反したときに何が起きるのかという効果の問題、この五つです。

    結論を先に述べます。案内所等の規律は、法律の条文だけを読んでも輪郭が出てきません。範囲を決めているのは施行規則15条の5の2と19条1項という二つの省令規定であり、この二つは「重ならないように」作られています。そして15条の5の2の柱書には、契約の類型と行為の類型を絞る限定が書き込まれています。10区画以上・10戸以上という数字も、条文上は第2号の括弧書きの中にある定義語の一部にすぎず、その定義語がどこまで輸出されているかで結論が変わります。以下では、この引用関係を一段ずつたどります。

    案内所等をめぐる三つの義務は、それぞれ別の範囲を持つ

    三つの条文が指している場所は同じではない

    まず配線図を描きます。関係する条文は三本です。

    第一に、宅建業法50条1項です。「宅地建物取引業者は、事務所等及び事務所等以外の国土交通省令で定めるその業務を行う場所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令で定める標識を掲げなければならない」と定めています。ここには「事務所等」と「事務所等以外の国土交通省令で定めるその業務を行う場所」という二つの集合が並んでいます。

    第二に、31条の3第1項です。「宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条及び第五十条第一項において「事務所等」という。)ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない」。「事務所等」という語はここで定義されており、その定義は「この条及び第五十条第一項において」効く、と括弧書きが射程を明示しています。つまり50条1項に出てくる「事務所等」は、31条の3第1項が定義したものをそのまま借りています。

    第三に、50条2項です。「宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、あらかじめ、第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める場所について所在地、業務内容、業務を行う期間及び専任の宅地建物取引士の氏名を免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事及びその所在地を管轄する都道府県知事に届け出なければならない」。届出の対象になる場所が「第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める場所」と名指しで引用されています。

    届出の範囲と専任設置の範囲は条文上ぴったり一致する

    この三本を並べると、範囲の関係が見えます。50条2項が名指ししているのは31条の3第1項の省令場所そのものですから、届出をしなければならない場所と、専任の宅建士を置かなければならない場所は、条文上まったく同じ集合です。ずれる余地がありません。「専任の宅建士が必要な場所なら届出も必要、届出が必要な場所なら専任の宅建士も必要」と言えるのは、覚え方の便宜ではなく条文の引用構造から出てくる帰結です。

    これに対して50条1項の標識は一段広い範囲を持ちます。「事務所等」に加えて「事務所等以外の国土交通省令で定めるその業務を行う場所」が足されているからです。この「以外」の部分を定めているのが施行規則19条1項で、その柱書は「第十五条の五の二に規定する場所以外のものとする」と書いています。専任設置場所を定めた15条の5の2と、標識だけの場所を定めた19条1項は、集合として排他的に組まれているわけです。

    したがって、標識の対象範囲は「15条の5の2の場所」+「19条1項の場所」+「事務所」となり、この三つを足したものが50条1項の適用範囲になります。標識は最も広く、専任と届出は同じ範囲で狭い。これがこの分野の骨格です。

    この記事で扱わないこと

    人数の話には踏み込みません。施行規則15条の5の3が「事務所にあつては……五分の一以上となる数、前条に規定する場所にあつては一以上とする」と定めていますが、割合の数え方や端数処理、業務に従事する者の範囲、常勤性・専従性、みなし規定、要件を欠いた場合の2週間の措置は専任の宅建士の設置義務で扱っています。この記事では「案内所等には1人以上」という結論だけを前提として使います。

    事務所の定義にも踏み込みません。3条1項の括弧書きと施行令1条の2が定める事務所の意味、本店と支店の扱い、事務所の数が免許権者・営業保証金・分担金を決めていく上流の構造は宅建業の事務所の担当です。この記事は逆向きに、案内所の側から「どこで線を越えると事務所になるのか」だけを見ます。宅建業法20問全体のなかでのこの論点の位置づけは宅建業法の全体像で確認できます。

    • 50条2項の届出の範囲=31条の3第1項の省令場所。条文上完全に一致する
    • 50条1項の標識の範囲=事務所+15条の5の2の場所+19条1項の場所。一段広い
    • 15条の5の2と19条1項は「以外のもの」という一句で排他的に組まれている

    施行規則15条の5の2の柱書を一語ずつ読む

    柱書は場所を挙げる前に契約と行為を絞っている

    施行規則15条の5の2の柱書は次のとおりです。「法第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める場所は、次に掲げるもので、宅地若しくは建物の売買若しくは交換の契約(予約を含む。以下この項において同じ。)若しくは宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介の契約を締結し、又はこれらの契約の申込みを受けるものとする」。

    この一文は、四つの号を挙げる前に二重の絞りをかけています。ひとつは契約の類型による絞り、もうひとつは行為の類型による絞りです。号に当てはまる場所であっても、この柱書の絞りを通過しなければ専任設置も届出も発生しません。試験問題は号のほうばかりを聞いてくるように見えますが、実際に判定を左右するのはこの柱書であることが多いのです。

    自ら当事者となる側には貸借が入っていない

    契約の類型を分解します。前半は「宅地若しくは建物の売買若しくは交換の契約」です。ここに挙がっているのは売買と交換だけで、貸借が入っていません。後半は「宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介の契約」で、こちらには貸借が入っています。

    つまり、自ら契約当事者となる場面については売買と交換だけが対象で、代理・媒介の場面については売買・交換・貸借の三つが対象、という非対称な書き分けになっています。この非対称は偶然ではありません。自ら貸主として賃貸借契約を締結する行為は、そもそも宅建業法2条2号の「宅地建物取引業」に当たらないからです。免許すら不要な行為を省令が対象に含めても意味がないので、条文の側で最初から落としてあるわけです。宅建業の「業」に当たるかどうかの判断枠組みは宅建業の「業」に当たるケースで整理しています。

    裏を返すと、賃貸物件の媒介契約を締結したり申込みを受けたりする案内所は、この柱書を通過します。「案内所の規制は売買の分譲だけの話だ」と思い込んでいると、賃貸の繁忙期に設ける臨時の店舗を落とします。貸借の代理・媒介に宅建業法がどう及ぶかは賃貸仲介の実務で扱っています。

    「予約を含む」の括弧書きは売買・交換にだけ付いている

    さらに細かい点ですが、「(予約を含む。以下この項において同じ。)」という括弧書きは、前半の「売買若しくは交換の契約」の直後に置かれています。売買予約や交換予約を締結する場所も、本契約と同じく対象になるという趣旨です。代理・媒介の契約の側にこの括弧書きは付いていません。媒介契約の予約という概念が実務上ほとんど意味を持たないためと読めますが、いずれにせよ条文の文言としてはそう書かれています。

    「締結し、又は……申込みを受ける」という二本立て

    行為の類型は「これらの契約を締結し、又はこれらの契約の申込みを受ける」の二つです。契約締結の権限がその場になくても、買受けの申込みを受け付けているだけで対象になります。逆に、資料を配り物件を紹介し、来場者アンケートを取るだけで、申込書を受け取らない案内所は、この柱書を通過しません。号のどれかに形式的に当てはまっていても、専任の宅建士も届出も不要ということになります。

    この「契約行為等を行うかどうか」という分水嶺は、実務では運用しだいで動きます。申込証拠金を預かる、申込書に記入させて預かる、といった行為があれば申込みの受付と評価されるのが自然です。試験では「モデルルームで契約を締結する場合」「申込みのみを受ける場合」「案内と説明のみを行う場合」という三段階で場面が作られ、真ん中と一番下の区別を突いてきます。

    なお、契約行為等を行わない案内所であっても、そこで行われる広告や物件紹介そのものは別の規律に服します。広告開始時期の制限と誇大広告の禁止は広告に関する規制、実在しない物件や取引できない物件で客を集める行為はおとり広告・二重価格表示の問題です。また、宅地建物の売買・交換・貸借に関する注文を受けたときは遅滞なく取引態様の別を明らかにしなければならない(34条2項)ので、契約行為等を行わない案内所でも取引態様の明示は必要になり得ます。この義務は場所ではなく行為に付いているからです。詳細は取引態様の明示義務を参照してください。

    • 柱書は号に当てはまる場所をさらに二重に絞る
    • 自ら当事者=売買・交換のみ、代理・媒介=売買・交換・貸借
    • 「予約を含む」は売買・交換の側だけに掛かる
    • 締結だけでなく申込みの受付も対象。案内と資料配布のみは対象外

    四つの場所を号ごとに読む — 10区画・10戸がかかるのは二つだけ

    第1号 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所

    第1号は「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの」です。規模要件も一団要件も、この号には書かれていません。継続的に業務を行える施設であること、そして事務所ではないこと、この二つだけが条件です。

    ここでいう「継続的に業務を行うことができる施設」とは、電話・机・什器が備わり、一定期間そこで業務を行える物理的な実体があるものを指します。事務所との違いは、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人が置かれているかどうかで決まります(施行令1条の2第2号)。この点は後段でもう一度扱います。

    第1号で押さえておきたいのは、この号が「施設を有する場所」という書き方をしている一方で、第2号・第3号は「その案内所」としか書いていない、という差です。第2号・第3号には、建物であることも土地に定着していることも要求されていません。したがって、仮設のテントで設けた案内所であっても、10戸以上の一団の建物の分譲について申込みを受けるなら第2号(自ら分譲する場合)または第3号(代理・媒介の場合)に当たり、専任の宅建士も50条2項の届出も必要になります。「施設の実体がないから対象外だ」と言えるのは、第1号を検討する場面に限られます。なお、クーリング・オフの場面を定める施行規則16条の5第1号ロには「土地に定着する建物内に設けられるものに限る」という限定が置かれており、同じ案内所でも定着を要求する条文と要求しない条文がある点はクーリング・オフで扱っています。

    第2号 自らの一団の分譲の案内所

    第2号は「宅地建物取引業者が十区画以上の一団の宅地又は十戸以上の一団の建物の分譲(以下この条、第十六条の五及び第十九条第一項において「一団の宅地建物の分譲」という。)を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所」です。

    四つの号のうち、10区画以上・10戸以上という数字が書かれているのはこの号だけです。しかも数字は、対象となる案内所の要件としてではなく、「一団の宅地建物の分譲」という語を定義するための材料として置かれています。この定義の作り方が、後で効いてきます。

    「案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所」という書き方にも注意が必要です。対象になるのは分譲地そのものではなく、設置された案内所です。案内所を設置せず、現地で直接申込みを受ける形をとる場合には、この号は働きません。

    第3号 他業者の一団の分譲の代理・媒介の案内所

    第3号は「他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所」です。ここには数字が書かれていませんが、「一団の宅地建物の分譲」という定義語が使われています。第2号の括弧書きで定義された語ですから、10区画以上・10戸以上という規模要件を間接的に受け継いでいます。

    条文の作りとしては、第2号が数字を書いて定義語を作り、第3号がその定義語を引く、という順序です。第3号だけを読んで「規模要件がない」と結論するのは誤りで、定義語をたどれば同じ規模要件がかかっています。

    第4号 展示会その他これに類する催しの実施場所

    第4号は「宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合にあつては、これらの催しを実施する場所」です。規模要件も一団要件もありません。住宅フェア、合同販売会、相談会といった催しの会場で契約を締結し、または申込みを受けるなら、扱う物件が何区画であろうと対象になります。

    「展示会その他これに類する催し」という書き方は、展示会に限らず、同種の集客イベントを広く拾う趣旨です。他方で、催しではない通常の店舗営業は第1号のほうで処理されます。

    「案内所」という語は第2号と第3号にしか出てこない

    四つの号を並べて読むと、条文が「案内所」という語を使っているのは第2号と第3号だけだとわかります。第1号は「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所」、第4号は「催しを実施する場所」です。にもかかわらず、この四つをまとめて「案内所等」と呼ぶのは、31条の3第1項が「事務所等」という括弧書きを置いていることに由来する実務上の呼称です。

    このずれを意識しておくと、問題文が「案内所」と書いているのか「業務を行う場所」と書いているのかで、どの号の話をしているかを絞れます。試験の肢が「案内所には規模要件がある」と書いていれば第2号・第3号の話であり、「展示会場にも規模要件がある」と書いていれば第4号を第2号に引きつけた誤りだとわかります。

    具体的な施設をどの号に落とすか

    判断の手順は、号の文言に当てはめるだけです。マンションのモデルルーム・マンションギャラリーは、多くの場合、建物内に什器を備えて一定期間営業しますから、第1号の継続的施設に当たるか、分譲の案内所として第2号・第3号に当たるかを見ます。現地販売センターも同様です。住宅フェアや合同相談会の会場は第4号です。

    どの号に落ちても、柱書の絞りを通過しなければ専任設置も届出も生じないという構造は変わりません。号の当てはめと柱書の当てはめは、順序としてはどちらが先でもかまいませんが、両方を通す必要があります。

    なお、37条の2のクーリング・オフで使われる「事務所等」は、これとは別の省令(施行規則16条の5)で別の範囲として定義されています。同じ「事務所等」という語が二か所で違う中身を持っているので、混ぜてはいけません。16条の5は「土地に定着する建物内に設けられるものに限る」といった独自の限定を置いており、買主の自宅・勤務先という宅建業者側の場所ではないものまで含みます。この違いはクーリング・オフで扱っています。

    • 規模要件が明示されているのは第2号だけ。第3号は定義語を通じて受け継ぐ
    • 第1号(継続的施設)と第4号(展示会等)には規模要件も一団要件もない
    • 条文が「案内所」と呼んでいるのは第2号・第3号のみ

    「一団の宅地建物の分譲」という定義語は19条1項まで効いている

    括弧書きが射程を明示している

    第2号の括弧書きをもう一度読みます。「(以下この条、第十六条の五及び第十九条第一項において「一団の宅地建物の分譲」という。)」。定義語の射程が三か所に限定して示されています。第一に「この条」、すなわち15条の5の2の中。第二に16条の5、すなわちクーリング・オフの適用場所。第三に19条1項、すなわち標識を掲げる場所です。

    定義語の射程がここまで明示されているのは、条文としては親切な作りです。そして、この射程が19条1項に及んでいるという事実が、標識義務の範囲を決めています。

    9区画の分譲では現地の標識義務も生じない

    施行規則19条1項2号は「宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地又は建物の所在する場所」を標識掲示の対象としています。ここで使われている「一団の宅地建物の分譲」は定義語ですから、10区画以上の宅地または10戸以上の建物の分譲を指します。

    したがって、9区画の宅地を分譲する場合、その物件の所在する場所に標識を掲げる義務は条文上生じません。同様に、19条1項3号(自らの分譲の案内所)も4号(他業者の分譲の代理・媒介の案内所)も、いずれも「一団の宅地建物の分譲」を前提にしていますから、10区画・10戸に届かない分譲についてはこれらの号が働きません。

    「分譲地の現地には常に標識が必要」という言い方は、10区画以上・10戸以上を暗黙の前提にしているときにだけ正しくなります。

    ただし第1号と第5号は規模と無関係に残る

    ここで一段だけ注意が要ります。規模要件が効いているのは、「一団の宅地建物の分譲」という定義語を使っている号、すなわち19条1項の第2号・第3号・第4号だけです。第1号の「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの」と第5号の展示会等には、この定義語が使われていません。15条の5の2の側も同じで、規模要件を持つのは第2号・第3号だけです。

    したがって、9区画の分譲であっても、そのために什器を備えたモデルルームを一定期間営業するのであれば、それは規模と関係なく「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所」です。そこで契約を締結し、または申込みを受けるなら15条の5の2第1号に当たり、専任の宅建士も50条2項の届出も必要になります。契約行為等を行わないのであれば19条1項1号に落ち、標識だけが必要になります。いずれにせよ標識は必要です。

    つまり、規模が10に届かないことで落ちるのは「分譲地の現地」(19条1項2号)と「分譲の案内所」(15条の5の2第2号・第3号、19条1項3号・4号)という号だけであり、規模が小さければ規制がおよそ及ばなくなる、という話ではありません。9区画・9戸を素材にした肢では、問題文が指している場所が現地なのか施設なのかを読み分ける必要があります。

    一団性はどう判断するのか

    条文が定めているのは数字だけで、「一団」の意味そのものは書かれていません。10区画・10戸という線は条文に明記された要件ですが、そこに数える区画・住戸をどの範囲で束ねるかは、条文の文言からは出てきません。

    したがってこの部分は、条文で答えが出る領域ではなく、個別の事案ごとの判断に委ねられている領域です。試験でも境界事例が正面から問われることはまれで、問われるのは「10区画」「10戸」という数字そのものと、その数字がどの号に掛かるかです。数字が定義語の中にあり、その定義語が19条1項まで輸出されている、という条文の構造を押さえるほうが得点に直結します。宅建業法に出てくる数字の整理は宅建業法の数字まとめにまとめてあります。

    数え方が争いになりやすい場面だけ挙げておくと、期を分けて分譲する場合(全体20区画を第1期8区画・第2期12区画に分ける場合など)と、複数の業者が共同で分譲する場合です。いずれも「10」という数字の当てはめ以前に、何を一つの分譲と見るかという問題であって、条文の文言が答えを持っていません。条文が答えを持っている部分と持っていない部分を分けておくと、覚えるべき範囲がはっきりします。

    標識を掲げる場所と、六つある様式

    19条1項の柱書が持つ排他設計

    施行規則19条1項の柱書は「法第五十条第一項の国土交通省令で定める業務を行う場所は、次に掲げるもので第十五条の五の二に規定する場所以外のものとする」と定めています。「以外のものとする」という一句が、この項の性格を決めています。

    50条1項の標識義務は、条文の構造上「事務所等」と「事務所等以外の国土交通省令で定めるその業務を行う場所」の二つに向けられています。前者は15条の5の2が定める場所(+事務所)であり、後者を19条1項が定めます。両者が重なると、同じ場所が二つの号に当たって様式が決まらなくなるため、19条1項は最初から15条の5の2の場所を除外しているわけです。

    ここから重要な帰結が出ます。50条1項の標識が必要な場所は、業務を行う場所すべてではありません。19条1項が五つの場所を限定列挙しており、そのリストに載っていない場所には、そもそも標識義務が及ばないのです。「業務を行う場所ならどこでも標識が要る」という理解は条文の限定列挙と合いません。

    19条1項が挙げる五つの場所

    第1号は「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外のもの」。15条の5の2第1号と同じ文言ですが、こちらは「15条の5の2に規定する場所以外のもの」という柱書の絞りが掛かっているので、契約行為等を行わない継続的施設が残ります。

    第2号は「宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地又は建物の所在する場所」。物件の所在地そのものです。15条の5の2の四つの号を見返すと、これに対応する号は置かれていません。四つの号はいずれも施設・案内所・催しの場所であって、物件の所在地そのものを挙げる号がないからです。結果として、19条1項2号は専任の宅建士や届出とは無関係に、標識だけが必要になる場所ということになります。19条2項が4号でこの場所だけを取り出して別記様式第十一号を割り当て、「置くべきもの/以外のもの」の分岐を置いていないのも、これと符合します。

    第3号は「前号の分譲を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所」、第4号は「他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所」、第5号は「宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合にあつては、これらの催しを実施する場所」です。それぞれ15条の5の2の第2号・第3号・第4号に対応する文言ですが、柱書の絞りにより、契約行為等を行わないものが19条1項側に残ります。

    標識の様式は六つに分かれている

    施行規則19条2項は「法第五十条第一項の規定により宅地建物取引業者が掲げる標識の様式は、次の各号に掲げる場所の区分に応じ、当該各号に掲げる様式とする」として、六つの区分を置いています。条文の順に並べます。

    第1号、事務所は別記様式第九号。

    第2号、前項第1号・第3号・第5号に規定する場所で法31条の3第1項の規定により専任の宅建士を置くべきものは別記様式第十号。

    第3号、前項第1号・第3号・第5号に規定する場所で前号に規定するもの以外のものは別記様式第十号の二。

    第4号、前項第2号に規定する場所は別記様式第十一号。

    第5号、前項第4号に規定する場所で法31条の3第1項の規定により専任の宅建士を置くべきものは別記様式第十一号の二。

    第6号、前項第4号に規定する場所で前号に規定するもの以外のものは別記様式第十一号の三。

    様式は事務所用と事務所以外用の二種類ではなく、六つの区分を持っています。この六区分は、標識に何を書かせるかを場所の性格に応じて変えるための仕組みです。

    「置くべきもの/以外のもの」が果たしている機能

    19条2項の書き方には、一見すると引っかかる点があります。2項2号と5号は「前項第一号、第三号又は第五号に規定する場所で……宅地建物取引士を置くべきもの」という言い方をしていますが、19条1項の柱書は「第十五条の五の二に規定する場所以外のもの」と限定しています。文言だけを追うと、19条1項の場所は専任の宅建士を置くべき場所ではないはずで、2項2号が空振りするようにも読めます。

    この点は、19条2項が19条1項各号を「場所の類型を指し示すための呼び名」として借りている、と読むと整合します。2項は、1項各号が記述している場所の類型(継続的施設、分譲の案内所、代理・媒介の案内所、展示会場、物件所在地)を引いたうえで、「専任の宅建士を置くべきもの」か「それ以外のもの」かで様式を振り分けているのです。前者は15条の5の2に当たる場所、すなわち契約行為等を行う場所であり、後者は19条1項に残る場所、すなわち契約行為等を行わない場所です。

    つまり「置くべきもの/以外のもの」という区分が、50条1項の適用対象を事務所等の側と19条1項の側に振り分ける切れ目として機能しています。標識の様式を見れば、その場所が契約行為等を行う場所なのかどうかがわかる、という設計です。

    六区分を復元できる形に畳む

    六区分をもう一段整理すると、第十号系(第十号・第十号の二)と第十一号系(第十一号・第十一号の二・第十一号の三)に大別できます。第十号系が引いているのは19条1項の第1号・第3号・第5号、すなわち継続的施設・自らの分譲の案内所・展示会場です。第十一号系が引いているのは第2号(物件所在地)と第4号(他業者の分譲の代理・媒介の案内所)です。

    分岐の有無にも差があります。第十号系と第十一号の二・第十一号の三は「専任の宅建士を置くべきもの/それ以外のもの」で二つに割れていますが、第2号(物件所在地)に対応する第十一号だけは、この分岐を持ちません。前述のとおり、物件所在地には15条の5の2に対応する号がなく、専任の宅建士を置くべき場合がそもそも生じないからです。六区分のうち一つだけ分岐がない、という形は条文の構造からそのまま説明がつきます。

    したがって、六区分を丸暗記する必要はありません。まず事務所を別に置いて第九号(1区分)。残りを場所の類型で三つに束ね、継続的施設・自らの分譲の案内所・展示会場をひとまとめにして第十号系(2区分)、物件所在地を第十一号(1区分)、他業者の分譲の代理・媒介の案内所を第十一号の二系(2区分)。専任の宅建士を置くべき場合が生じ得る二つの束にだけ二分岐が付く、という形で1プラス2プラス1プラス2=6が復元できます。

    なお、各様式の具体的な記載欄は別記様式という図表の形で定められており、条文の本文には文言として現れません。この記事では、条文本文から確実に言える二点、すなわち様式が六区分あることと、次に述べる掲示方法の要件に絞って扱います。

    「公衆の見やすい場所に掲げる」という掲示方法

    50条1項は「公衆の見やすい場所に……標識を掲げなければならない」と定めています。備え付けておけばよいのではなく、外部から見える形で掲示することが求められています。報酬額の掲示(46条4項)も同じ「公衆の見やすい場所に」という文言を使っており、対比しやすい規定です。報酬額の上限そのものは報酬額の制限で扱っています。

    もう一点、電子化との関係です。35条と37条には、相手方の承諾を得たうえで電磁的方法により提供できる旨の規定が置かれています(35条8項・9項、37条4項・5項など)。これに対して50条には、標識の掲示に代わる電磁的方法を認める規定が置かれていません。書面の電子化が進んだ分野と、そうでない分野が条文上はっきり分かれているということです。IT重説と書面電子化の全体像はIT重説と書面電子化を参照してください。

    なお、現地の案内所やモデルルームでの物件表示は、宅建業法の標識とは別に、景品表示法と不動産の表示に関する公正競争規約の規律も同時に受けます。標識は業者の身元と場所の性格を示すもの、広告表示の基準は物件情報の表示方法を定めるもので、系統が違います。景品表示法と公正競争規約不動産広告の表示基準でそれぞれ扱っています。

    • 19条1項柱書の「以外のもの」が二つのリストの排他性を作る
    • 標識義務は限定列挙。業務を行う場所すべてではない
    • 様式は六区分。事務所=第九号、以下は場所の類型と宅建士の要否で分岐

    50条2項の届出 — 事項・期限・様式・宛先がどの条文にあるか

    法律が定めているのは事項と宛先

    50条2項の文言をもう一度置きます。「宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、あらかじめ、第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める場所について所在地、業務内容、業務を行う期間及び専任の宅地建物取引士の氏名を免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事及びその所在地を管轄する都道府県知事に届け出なければならない」。

    法律が自ら定めているのは二つです。ひとつは届出事項で、所在地・業務内容・業務を行う期間・専任の宅地建物取引士の氏名の四つ。もうひとつは宛先で、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事と、その所在地を管轄する都道府県知事の二か所です。

    免許権者が誰になるかは事務所の所在で決まります(3条1項)。この決まり方は宅建業の免許制度で扱っています。二系統の宛先が置かれている理由は、監督の構造にあります。免許権者は業者そのものを監督し、業務地の知事はその区域内での業務を監督するという二層構造になっているためです。免許制度と監督権限の横断的な整理は宅建業の免許制度を横断整理にあります。

    なお、大臣免許業者について、この届出を主たる事務所の所在地を管轄する知事を経由して行うという規定は、2026年4月1日時点の宅建業法には置かれていません。78条の3は「都道府県知事への免許等に関する情報の提供」という別内容の規定であり、大臣から知事への情報提供を定めるものであって、業者からの届出の経由を定めるものではありません。条文どおり「免許権者と所在地の知事の二か所へ」と押さえるのが正確です。

    期限と様式は省令にある

    「業務を開始する日の十日前まで」という期限は、法律ではなく施行規則19条3項に置かれています。「法第五十条第二項の規定による届出をしようとする者は、その業務を開始する日の十日前までに、別記様式第十二号による届出書を提出しなければならない」。様式が別記様式第十二号であることも、同じ項が定めています。

    法律の側は「あらかじめ」としか書いていません。この「あらかじめ」を具体化しているのが省令の「十日前までに」です。法律が抽象的な時期規制を置き、省令が具体的な日数を埋めるという分業になっています。

    この配置は、それ自体が出題の素材になります。「10日前という期限は宅建業法50条2項に定められている」という肢は、内容としては正しく見えても、条文の位置としては誤りです。数字が法律にあるのか省令にあるのかを問う形式は、宅建業法では珍しくありません。

    「業務を行う期間」が届出事項であることの帰結

    四つの届出事項のうち、実務上いちばん重い意味を持つのが「業務を行う期間」です。案内所は期間を定めて届け出る建て付けになっているため、いくつかの連続した帰結が出てきます。

    第一に、届け出た期間が終われば案内所はそこで終わります。廃止の届出という別の手続が用意されているわけではなく、期間の満了によって当然に終了する形です。宅建業そのものをやめる場合の廃業等の届出(11条)とは、まったく別の話になります。廃業届の仕組みは宅建業の廃業届・免許取消で扱っています。

    第二に、期間を延長する場合は改めて届け出る必要があります。届け出た期間の外で契約行為等を行えば、届出のない場所で契約を締結し、または申込みを受けていることになるからです。

    第三に、専任の宅建士が交代した場合も、届出事項である「専任の宅地建物取引士の氏名」が変わりますから、改めて届け出ることになります。

    第四に、届出事項に「専任の宅地建物取引士の氏名」が入っていることから、届出の時点で専任の宅建士が確定していなければならないことになります。設置義務(31条の3第1項)と届出義務(50条2項)が、手続の面でも結びついているわけです。何人置くかについては専任の宅建士の設置義務を参照してください。

    9条の変更の届出とは別系統である

    専任の宅建士の氏名という同じ言葉が9条の変更の届出にも出てくるので、条文で切り分けておきます。9条1項が変更の届出の対象としているのは「第四条第一項第一号から第五号までに掲げる事項」であり、その第5号は「前号の事務所ごとに置かれる第三十一条の三第一項に規定する者……の氏名」です。第4号が「事務所の名称及び所在地」ですから、第5号の「前号の事務所ごとに置かれる」は事務所を指しています。9条が捕捉しているのは事務所ごとに置かれる専任の宅建士であって、案内所等に置かれる専任の宅建士ではありません。

    したがって、案内所の専任の宅建士が交代したときに使うのは9条ではなく50条2項です。同じ「専任の宅建士の氏名の変更」でも、場所が事務所か案内所かで、根拠条文も、期限(30日以内か、業務開始の10日前までか)も、宛先(免許権者のみか、免許権者と所在地の知事の二か所か)も入れ替わります。事後か事前かという性質まで反対です。

    もう一段付け加えると、この4条1項5号は宅建業者名簿の登載事項ではありません。8条2項2号が登載事項を「第四条第一項各号(第五号を除く。)に掲げる事項」と書いており、第5号だけを括弧書きで抜いているからです。事務所の専任の宅建士ですら名簿に載らないのですから、案内所の専任の宅建士が名簿に載ることはなおさらありません。「名簿の登載事項だから届出が必要」という理由づけは、この括弧書きと合わないことになります。名簿の登載事項と変更の届出のずれそのものは宅建業者名簿と変更の届出で整理しています。

    • 法律が定めるのは届出事項四つと宛先二か所
    • 「十日前までに」と別記様式第十二号は施行規則19条3項
    • 期間を届け出る建て付けなので、延長も専任者の交代も再度の届出になる

    売主と代理業者が並ぶ案内所で、義務は誰に付くか

    判断軸は「誰が設置したか」の一本

    この分野で最も出題されるのが、売主業者と代理・媒介業者が並ぶ場面での義務の帰属です。判断軸は一本しかありません。その場所を設置したのは誰か、です。

    典型的な場面を条文で追います。売主業者Aが12戸の一団の建物を分譲し、代理業者Bが現地近くに案内所を設置して買受けの申込みを受けている、という設定にします。

    案内所を設置したBが負うもの

    まず専任の宅建士です。Bの案内所は、施行規則15条の5の2第3号の「他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所」に当たります。分譲が12戸ですから「一団の宅地建物の分譲」の定義(10戸以上)を満たしています。柱書についても、Bは買受けの申込みを受けていますから通過します。したがってBは、施行規則15条の5の3により1人以上の成年者である専任の宅建士を置きます。

    次に届出です。50条2項の対象は「31条の3第1項の国土交通省令で定める場所」ですから、いま確認した15条の5の2第3号の案内所がそのまま対象になります。届出義務を負うのは、その場所について専任の宅建士を置くべき者、すなわちBです。Bは業務開始の10日前までに、Bの免許権者とその案内所の所在地を管轄する知事の二か所へ届け出ます。

    そして標識です。Bの案内所は施行規則19条1項の場所ではなく(柱書で除外されている)、31条の3第1項の「事務所等」に当たります。様式は19条2項5号の「前項第四号に規定する場所で法第三十一条の三第一項の規定により……宅地建物取引士を置くべきもの」に該当し、別記様式第十一号の二です。

    案内所を設置していないAが負うもの

    Aは案内所を設置していません。したがって、Aには専任の宅建士の設置義務も、50条2項の届出義務も生じません。ここが最も間違えやすい点です。「自分が売主なのだから自分が届け出る」という直感は、条文の主語と合いません。

    ただしAが何も負わないわけではありません。施行規則19条1項2号は「宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地又は建物の所在する場所」を標識の対象としています。Aは12戸の一団の建物を分譲していますから、その物件の所在する場所に標識を掲げなければなりません。様式は19条2項4号により別記様式第十一号です。

    まとめると、Bは届出と専任の宅建士1人以上と別記様式第十一号の二の標識を負い、Aは物件所在地に別記様式第十一号の標識を掲げる。三つの義務が、設置者かどうかという一本の軸できれいに分かれます。

    共同で案内所に人を出す場合

    AとBの双方が同じ案内所に社員を出す、いわゆる共同案内所の場合はどうなるか。この場合も判断軸は変わりません。届出も専任設置も標識も、その場所を設置した者ごとに判断します。AとBがともに設置者であれば、それぞれが届出を行い、それぞれが専任の宅建士を置き、それぞれの標識を掲げることになります。

    条文上、案内所を設置したのが一人でなければならないという限定はありません。15条の5の2第2号はAについて(自らの分譲の案内所)、第3号はBについて(代理・媒介の案内所)それぞれ働きますから、両方が同時に当てはまる状況が生じ得ます。様式もそれぞれ異なり、Aは19条2項2号により別記様式第十号、Bは19条2項5号により別記様式第十一号の二になります。

    契約行為等を行わない案内所をBが設けた場合

    同じ場面で、Bの案内所が資料配布と物件の紹介のみを行い、申込みを受け付けないとします。柱書の「締結し、又は……申込みを受ける」を通過しないので、15条の5の2には当たりません。専任の宅建士も届出も不要です。

    しかし標識は必要です。この案内所は施行規則19条1項4号の「他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所」に当たり、かつ15条の5の2の場所ではないので、19条1項の場所として残ります。様式は19条2項6号の「前項第四号に規定する場所で前号に規定するもの以外のもの」、別記様式第十一号の三です。

    この「専任と届出は落ちるが標識は残る」という段差が、案内所の論点でいちばん問われるところです。標識だけが一段広い範囲を持つという、最初に確認した構造がそのまま出題される形になります。

    これらはすべて業者の義務であって宅建士の義務ではない

    50条1項も50条2項も31条の3第1項も、主語は「宅地建物取引業者は」です。標識を掲げなかった、届出をしなかった、専任の宅建士を置かなかった、というときに責任を問われるのは業者であり、そこに配置された宅建士個人ではありません。宅建士個人が処分を受けるのは、宅建士としての事務に関する不正等があった場合です。主語による義務の仕分けは宅建業者と宅建士の義務で整理しています。

    また、案内所に置くのは「専任の」宅建士ですが、重要事項の説明や37条書面への記名は宅建士であればよく、専任である必要はありません。専任性が要求されるのは設置義務の場面だけです。この区別は宅建士の独占業務3つで扱っています。売主と代理業者の関係そのもの、すなわち媒介契約と代理契約の規律は媒介契約の3類型を参照してください。

    案内所が「事務所」に変わる瞬間と、案内所にはかからない義務

    分水嶺は契約締結権限を有する使用人の有無

    案内所として運用していた場所が、いつのまにか事務所になっていることがあります。分水嶺は施行令1条の2第2号です。「前号に掲げるもののほか、継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの」。

    継続的に業務を行うことができる施設であることと、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人が置かれていること、この二つが揃った時点で、その場所は3条1項にいう事務所になります。逆に言えば、施設としての実体があっても、契約締結権限を持つ使用人がいなければ事務所ではありません。案内所と事務所を分けているのは、建物の立派さでも営業期間の長さでもなく、権限の所在です。

    事務所の定義そのものと、本店・支店の扱いについては宅建業の事務所が扱っています。ここでは案内所の側から見た効果だけを見ます。

    事務所になった瞬間に立ち上がる義務

    その場所が事務所になると、案内所のときには不要だった義務が一斉に立ち上がります。専任の宅建士は1人以上ではなく5分の1以上になり、従業者名簿と帳簿と報酬額の掲示が必要になり、標識の様式も別記様式第九号に変わります。営業保証金であれば事務所ごとに500万円の追加供託が必要になり(25条2項、施行令2条の4、26条1項)、保証協会の社員であれば分担金の追加納付が2週間以内に必要になります(64条の9第2項)。

    さらに、その事務所が他の都道府県にあれば、免許換えの問題が発生します。知事免許の業者が他県に事務所を設置すれば、7条1項3号または2号に当たり、大臣免許または他県知事免許を受け直すことになります。

    手続の系統も入れ替わります。案内所のままであれば、所在地・業務内容・業務を行う期間・専任の宅建士の氏名を、業務開始の10日前までに、免許権者と所在地の知事の二か所へ届け出ます(50条2項、施行規則19条3項)。これに対して事務所になれば、その名称と所在地は4条1項4号に掲げる事項ですから、9条1項により30日以内に、免許権者へ変更の届出をすることになります。事前か事後か、10日前か30日以内か、宛先が二か所か一か所か。同じ「場所を設けたときの届出」でも、事務所か案内所かで三つとも入れ替わるわけです。

    さらに、4条1項4号は8条2項2号の括弧書きで除外されていませんから、事務所の名称と所在地は宅建業者名簿に登載されて公示の対象になります。案内所の所在地は名簿に載りません。この点でも、線を越えるかどうかが効いてきます。

    案内所にかからない義務を条文の主語から数える

    逆向きに、案内所には及ばない義務を条文の文言から確認します。共通するのは、条文が「その事務所ごとに」と書いているという点です。

    報酬額の掲示は46条4項が「宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない」と定めています。「その事務所ごとに」ですから、案内所には及びません。標識が50条1項で「事務所等及び事務所等以外の……業務を行う場所ごとに」と書いているのと、文言が明確に違います。

    従業者名簿は48条3項が「その事務所ごとに、従業者名簿を備え」と定め、帳簿は49条が「その事務所ごとに、その業務に関する帳簿を備え」と定めています。いずれも案内所には備え付けの義務がありません。記載事項や保存期間(名簿は最終記載日から10年、帳簿は各事業年度末日で閉鎖して5年、自ら売主となる新築住宅に係るものは10年)は従業者名簿と帳簿で扱っています。

    営業保証金の追加供託は26条1項が「事業の開始後新たに事務所を設置したとき」を要件にしています。案内所の設置は事務所の設置ではないので、追加供託は生じません。額そのものと供託・還付の仕組みは営業保証金にあります。保証協会の社員の場合も、64条の9第2項が「新たに事務所を設置したとき」と書いていますから、分担金の追加納付は生じません。保証協会の仕組みは保証協会の仕組みを参照してください。

    免許換えも同じです。7条1項各号は、いずれも事務所の設置・廃止・所在の変化を引き金にしています。案内所を他県に設けても、事務所の所在は動きませんから、免許換えは不要です。

    場所ではなく人や相手方に付く義務は案内所にも及ぶ

    一方で、条文が場所を単位にしていない義務は、案内所でも当然に働きます。

    従業者証明書がその代表です。48条1項は「従業者に……携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならない」と書いており、単位は場所ではなく従業者という人です。案内所で働く従業者も携帯し、取引の関係者の請求があれば提示しなければなりません(48条2項)。同じ48条のなかで、1項が人に付き3項が「その事務所ごとに」と場所に付いている、という対比になっています(宅建業の事務所)。

    供託所等の説明も同じです。35条の2は「宅地建物取引業者の相手方等……に対して、当該売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に」説明をするようにしなければならないと定めており、場所を問いません。案内所で契約が成立するなら、そこで説明の対象になります。

    35条の重要事項説明、37条書面の交付、34条の取引態様の明示なども、いずれも行為や相手方に付く義務であって、場所によって免除されることはありません。「案内所だから軽い規律で済む」というのは、事務所ごとの備付け義務についてだけ言えることです。

    • 案内所に不要なもの=報酬額の掲示・従業者名簿・帳簿・追加供託・分担金の追加納付・免許換え
    • 案内所にも必要なもの=標識・従業者証明書・35条・35条の2・37条・34条など行為や人に付く義務
    • 事務所になる分水嶺は契約締結権限を有する使用人の有無(施行令1条の2第2号)

    違反したときの効果 — 罰則の条文位置と、監督処分の列挙に何が入っていないか

    届出違反は83条1項1号、標識違反は83条1項2号

    罰則の位置を条文で確定します。83条1項1号は「第九条、第五十条第二項、第五十三条……又は第七十七条第三項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者」を挙げ、これに50万円以下の罰金を科します。案内所等の届出をしなかった場合も、虚偽の届出をした場合も、同じ号で処理されます。

    83条1項2号は「第三十七条、第四十六条第四項、第四十八条第一項又は第五十条第一項の規定に違反した者」で、こちらも50万円以下の罰金です。標識の不掲示は、37条書面の不交付や報酬額の不掲示、従業者証明書を携帯させないことと同じ号に並んでいます。

    いずれについても、84条2号により「第八十条又は第八十一条から第八十三条まで(同条第一項第三号を除く。)」が両罰規定の対象とされ、行為者を罰するほか、法人に対しても各本条の罰金刑が科されます。罰則の全体像と金額の階層は宅建業法の罰則一覧にまとめてあります。

    専任の宅建士に関する違反は100万円以下

    これに対して、31条の3第3項に違反した場合、すなわち設置基準に抵触する事務所等を開設し、または抵触した状態を2週間以内に是正しなかった場合は、82条2号が「第十二条第二項、第十三条第二項、第三十一条の三第三項又は第四十六条第二項の規定に違反した者」として100万円以下の罰金を定めています。

    標識・届出の50万円と、専任の宅建士の100万円。金額が倍になっています。案内所という同じ場所をめぐる三つの義務でも、違反に対する評価は同じではないということです。宅建業法の罰則は79条から83条まで金額の階層で並んでおり、82条と83条は隣接していますが段が違います。

    65条2項2号の列挙に50条は入っていない

    ここからが、この論点でいちばん見落とされる部分です。65条2項2号は業務停止事由として多数の条文を列挙しています。「第十三条、第二十五条第五項……第二十八条第一項、第三十一条の三第三項、第三十二条、第三十三条の二、第三十四条、第三十四条の二第一項若しくは第二項……第三十五条第一項から第三項まで、第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十一条第一項、第四十一条の二第一項、第四十三条から第四十五条まで、第四十六条第二項、第四十七条、第四十七条の二、第四十八条第一項若しくは第三項、第六十四条の九第二項……の規定に違反したとき」。

    この長い列挙のなかに、31条の3第3項は入っています。しかし50条は、1項も2項も入っていません。つまり、標識を掲げなかったことや案内所等の届出をしなかったことは、それ自体としては業務停止事由になっていないのです。

    では業務停止に至る道がないかというと、そうではありません。二つの経路があります。ひとつは65条1項の指示処分を受け、その指示に従わなかった場合で、65条2項3号が「前項又は次項の規定による指示に従わないとき」を業務停止事由としています。もうひとつは65条2項5号の「前三号に規定する場合のほか、宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき」で、悪質な事案がここで拾われます。

    いずれにせよ、「標識を掲げていなかったので直ちに業務停止処分ができる」とは条文上言えません。一段階を経由する必要があります。指示処分・業務停止処分・免許取消処分の一般的な違いや処分権者、公告、聴聞の手続は監督処分で扱っています。

    なお、業務停止処分に至った場合には、66条1項9号により「前条第二項各号のいずれかに該当し情状が特に重いとき又は同条第二項若しくは第四項の規定による業務の停止の処分に違反したとき」が必要的免許取消しの事由になります。段が上がっていく構造自体は共通です。

    65条4項2号の括弧書き「事務所に係る部分を除く」

    もうひとつ、案内所の論点と直結する規定があります。65条4項は、免許権者でない都道府県知事が、その区域内で業務を行う業者に対して業務停止を命じられる場合を定めています。その2号の列挙が「第十三条、第三十一条の三第三項(事務所に係る部分を除く。)、第三十二条、第三十三条の二……」と始まります。

    31条の3第3項の後ろに「(事務所に係る部分を除く。)」という括弧書きが付いています。事務所における専任の宅建士の設置に関する部分は、業務地の知事が処分できる対象から外され、案内所等に係る部分だけが残されているのです。

    理由は監督の分担にあります。事務所の設置は免許権者が把握し監督すべき事柄で、事務所の数と所在が免許権者を決める仕組みになっているからです。これに対して案内所等は、免許権者と関係なく他県に設けることができ、その場所を管轄する知事が50条2項の届出を受けています。届出を受けた知事が監督できなければ、届出制度の意味が薄れます。

    したがって、知事免許の業者が他県に案内所を設け、そこで専任の宅建士を置かなかった場合、その業務地の知事は65条4項2号により業務停止を命じることができます。他方、同じ業者の事務所における専任の宅建士の不足について、業務地の知事は同号では処分できません。届出の宛先が免許権者と所在地の知事の二か所になっていることと、この括弧書きは同じ設計思想から出ています。

    • 50条2項違反=83条1項1号、50条1項違反=83条1項2号。いずれも50万円以下の罰金
    • 31条の3第3項違反=82条2号。100万円以下の罰金
    • 65条2項2号の列挙に50条はない。業務停止には指示処分違反(3号)か5号を経由する
    • 65条4項2号は31条の3第3項から「事務所に係る部分」だけを除いている

    試験での出題ポイント

    この論点は、宅建業法20問のなかでは単独出題も組合せ問題の一肢としての出題もある頻出領域です。宅建業法全体でどこを確実に取るかという設計は宅建業法の頻出論点を参照してください。以下、問われ方を十のパターンに整理し、どの条文のどの語に戻れば判定できるかを対にして示します。

    契約の締結だけを書いて、申込みの受付を落とす

    「契約を締結する案内所には専任の宅建士が必要である」という肢を作り、申込みの受付だけを行う案内所を対象外であるかのように誘導する形です。戻る先は施行規則15条の5の2の柱書の「締結し、又はこれらの契約の申込みを受けるものとする」。締結と申込受付は並列で、どちらか一方があれば対象になります。この種の一部だけを書いて残りを落とす手口は引っかけ表現のパターンにまとめてあります。

    10区画・10戸の数字を入れ替える

    「10区画以上の一団の宅地」を「10区画を超える」にする、「10戸以上の建物」を「10戸を超える」にする、あるいは区画と戸を入れ替えるパターンです。戻る先は15条の5の2第2号の「十区画以上の一団の宅地又は十戸以上の一団の建物」。宅地は区画、建物は戸、いずれも「以上」です。

    継続的施設や展示会場にも規模要件があるかのように書く

    「展示会場で契約を締結する場合であっても、取り扱う物件が10戸未満であれば専任の宅建士を置く必要はない」といった肢です。戻る先は15条の5の2第4号の文言で、そこには規模要件も一団要件も書かれていません。第1号も同じです。規模要件が明示されているのは第2号だけで、第3号が定義語を通じてそれを引いている、という構造を思い出せば判定できます。

    9区画の分譲の現地に標識が必要だとする

    「宅建業者が宅地を分譲する場合、その物件の所在する場所には常に標識を掲げなければならない」という書き方の肢です。戻る先は施行規則19条1項2号の「一団の宅地建物の分譲」という語と、15条の5の2第2号の括弧書きの射程「以下この条、第十六条の五及び第十九条第一項において」。定義語が19条1項まで輸出されているので、10区画・10戸に満たなければこの号は働きません。

    標識の様式が二種類しかないとする

    「標識の様式は、事務所用と事務所以外の場所用の二種類である」という肢です。戻る先は施行規則19条2項で、第1号から第6号まで六つの区分が置かれています。事務所が第九号、以下は場所の類型と専任の宅建士を置くべきか否かで第十号・第十号の二・第十一号・第十一号の二・第十一号の三に分かれます。

    届出の期限・宛先・条文位置をずらす

    「業務を開始した日から10日以内に届け出る」「業務開始後遅滞なく届け出る」といった時期のすり替え、「免許権者にのみ届け出れば足りる」「所在地の知事にのみ届け出れば足りる」といった宛先の片落ち、「10日前という期限は宅建業法50条2項に定められている」という条文位置の誤りの三系統があります。戻る先は50条2項(事項と宛先)と施行規則19条3項(十日前まで、別記様式第十二号)です。事前届出であること、二か所であること、日数は省令にあること、この三点を分けて覚えます。

    案内所に従業者名簿・帳簿・報酬額の掲示を要求する

    「案内所には従業者名簿を備えなければならない」「案内所にも報酬額を掲示しなければならない」といった肢です。戻る先は48条3項・49条・46条4項の「その事務所ごとに」という文言です。標識だけが50条1項で「事務所等及び事務所等以外の……業務を行う場所ごとに」と書かれている、という対比で判定できます。

    案内所を他県に設けたら免許換えが必要だとする

    戻る先は7条1項各号で、いずれも事務所の設置・廃止・所在の変化を引き金にしています。案内所は事務所ではないので、他県に設けても免許換えは生じません。ただし50条2項の届出はその案内所の所在地を管轄する知事にもすることになるので、「何もしなくてよい」わけではない点に注意します。

    売主と代理業者のどちらが届出をするかを入れ替える

    「売主業者Aが分譲し、代理業者Bが案内所を設置して契約を締結する場合、Aは案内所について届出をしなければならない」という肢です。戻る先は15条の5の2第3号の「他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所」と、50条2項が31条の3第1項の省令場所を引いていること。義務は設置した者に付きます。Aに残るのは物件所在地の標識だけです。

    標識不掲示がただちに業務停止事由だとする/契約行為等を行わない案内所には標識も不要だとする

    前者の戻る先は65条2項2号の列挙で、そこに50条はありません。後者の戻る先は施行規則19条1項柱書と各号で、契約行為等を行わない案内所は19条1項に落ちて標識義務が残ります。専任と届出は落ちるが標識は残る、という段差がこの論点の核です。

    覚え方・整理の仕方

    数字の羅列ではなく、条文をたどる手順として覚える

    この分野を数字の暗記として覚えると、必ず混ざります。10区画・10戸・10日前・二か所という数字が近接していて、どれがどこに掛かるかを取り違えるからです。かわりに、判定の手順として覚えます。手順は三つです。

    第一手順は柱書に戻ることです。その場所で「宅地建物の売買・交換の契約(予約を含む)、または売買・交換・貸借の代理・媒介の契約を、締結し、または申込みを受けるか」を判定します。ここが否なら、15条の5の2の対象ではありません。専任も届出も要りません。

    第二手順は号に当てはめることです。案内所(第2号・第3号)なら10区画以上・10戸以上を確認します。継続的施設(第1号)と展示会等(第4号)なら規模は確認しません。号によって確認する項目が違う、という点が要です。

    第三手順は振り分けです。第一手順と第二手順を通過すれば、専任の宅建士1人以上・50条2項の届出・第十号系または第十一号の二の標識。通過しなければ、施行規則19条1項に落ちて標識のみ・第十号の二または第十一号の三の標識。この振り分けを一度書き出しておくと、以後は迷いません。

    「十五条の五の二に規定する場所以外のもの」という一句を覚える

    二つのリストが重ならないという性質は、この一句から自動的に出てきます。19条1項柱書の「次に掲げるもので第十五条の五の二に規定する場所以外のものとする」を覚えておけば、「同じ場所が両方のリストに入るのではないか」という混乱が起きません。

    そして、この排他性から「標識の範囲=事務所+15条の5の2+19条1項」という足し算が出ます。専任と届出は15条の5の2だけ、標識はそれに19条1項と事務所を足したもの。範囲の大小関係を条文の一句に結びつけておくのが最も安定します。

    数字は用途とセットで唱える

    四つの数字を、それぞれの条文上の役割とセットにします。

    10区画・10戸は「一団の宅地建物の分譲」の定義(施行規則15条の5の2第2号の括弧書き)。場所の要件そのものではなく定義語の中身である、という位置づけまで含めて覚えます。

    10日前は届出の期限(施行規則19条3項)。法律ではなく省令にある数字だ、という位置まで含めます。

    二か所は届出の宛先(法50条2項)。免許権者と所在地の知事、と言い切れるようにします。

    1人以上は案内所等の専任の宅建士の数(施行規則15条の5の3)。事務所の5分の1以上と対になります。

    六区分は標識の様式の数(施行規則19条2項)。数字の意味を混ぜないための整理法は宅建業法の数字まとめ宅建の語呂合わせにまとめてあります。

    帰属は「設置した者」の四文字で通す

    売主・代理業者・媒介業者が入り乱れる場面は、「設置した者」という四文字だけで通します。届出も専任も標識の様式も、設置した者を基準に決めます。売主かどうか、物件を所有しているかどうかは関係ありません。

    例外的に見えるのが物件所在地の標識ですが、これも設置の話ではなく、分譲する業者が自分の分譲地について掲げるという別系統の義務(施行規則19条1項2号)なので、混ざりません。「案内所の三点セットは設置者、現地の標識は分譲者」と二行で覚えます。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 宅建業者が8戸の一団の建物の分譲を行う場合において、案内所を設置せず、当該建物の所在する場所で買受けの申込みを受けるときは、その所在する場所に標識を掲げなければならない。○か×か。

    答えを見る ×。施行規則19条1項2号が標識の対象としているのは「宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地又は建物の所在する場所」です。ここでいう「一団の宅地建物の分譲」は15条の5の2第2号の括弧書きが定義した語で、10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物の分譲を指します。括弧書きは「以下この条、第十六条の五及び第十九条第一項において」と射程を明示しており、19条1項にも及びます。8戸では定義を満たさないので、この号による標識義務は生じません。数字が場所の要件ではなく定義語の中身として置かれている、という条文の作りがそのまま結論を決めています。なお、本問が消しているのは19条1項2号だけです。仮に現地に什器を備えた継続的な施設を設けていれば、規模と無関係に15条の5の2第1号または19条1項1号の問題になり、結論が変わります。規模要件が効くのは「一団の宅地建物の分譲」という定義語を使う号に限られる、という切り分けを保ってください。

    Q2. 宅建業者が業務に関し展示会を実施し、その会場で宅地の売買契約の申込みを受ける場合において、当該展示会で取り扱う宅地が10区画に満たないときは、その会場に専任の宅建士を置く必要はない。○か×か。

    答えを見る ×。展示会場は施行規則15条の5の2第4号の「宅地建物取引業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合にあつては、これらの催しを実施する場所」に当たります。この号には規模要件も「一団」要件も書かれていません。10区画以上・10戸以上という数字が現れるのは第2号の括弧書きだけで、それを引いているのは第3号です。柱書の「申込みを受ける」に該当する以上、規模を問わず施行規則15条の5の3により1人以上の専任の宅建士が必要になり、50条2項の届出も必要です。

    Q3. 売主である宅建業者Aから一団の建物の分譲の代理の依頼を受けた宅建業者Bが、案内所を設置して売買契約を締結する場合、Aは、当該案内所について宅建業法50条2項の届出をしなければならない。○か×か。

    答えを見る ×。50条2項の届出の対象は「第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める場所」であり、Bの案内所は施行規則15条の5の2第3号の「他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所」に当たります。義務を負うのは案内所を設置したBです。Aは案内所を設置していないので届出も専任の宅建士の設置も不要ですが、施行規則19条1項2号により、物件の所在する場所に別記様式第十一号の標識を掲げる必要があります。義務は「設置した者」に付く、という一本の軸で判断します。

    Q4. 宅建業者が案内所に標識を掲げなかったときは、免許権者は、当該業者に対して直ちに業務の停止を命ずることができる。○か×か。

    答えを見る ×。65条2項2号は業務停止事由となる違反条文を列挙していますが、その列挙に50条は含まれていません(31条の3第3項は含まれています)。したがって標識の不掲示は、それ自体では業務停止事由になりません。65条1項の指示処分を受けてこれに従わない場合(65条2項3号)や、65条2項5号の「宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき」に当たる場合に、はじめて業務停止に至ります。なお、83条1項2号により50万円以下の罰金の対象にはなり、84条2号により法人にも各本条の罰金刑が科されます。

    Q5. 宅建業者Bが、他の宅建業者Aの行う一団の宅地の分譲の媒介のために案内所を設置し、そこでは物件の紹介と資料の交付のみを行い契約の締結も申込みの受付も行わない場合であっても、Bはその案内所に標識を掲げなければならない。○か×か。

    答えを見る ○。契約の締結も申込みの受付も行わないので、施行規則15条の5の2の柱書を通過せず、専任の宅建士の設置義務も50条2項の届出義務も生じません。しかし標識は別です。この案内所は施行規則19条1項4号の「他の宅地建物取引業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介を案内所を設置して行う場合にあつては、その案内所」に当たり、かつ15条の5の2に規定する場所ではないため、柱書の「第十五条の五の二に規定する場所以外のもの」という絞りを通って19条1項の場所として残ります。様式は19条2項6号の別記様式第十一号の三です。専任と届出は落ちるが標識は残る、という段差が本問の核心です。

    まとめ

    案内所等の規律は、法律の条文が枠だけを示し、範囲の実質を施行規則が決めているという構造をしています。したがって、法律だけを読んでも輪郭が出ません。

    範囲を決めているのは二つの省令規定です。施行規則15条の5の2が専任の宅建士と届出の対象を定め、施行規則19条1項が標識だけの場所を定めます。19条1項柱書の「第十五条の五の二に規定する場所以外のもの」という一句によって二つのリストは排他的に組まれており、両者に事務所を足したものが50条1項の標識の適用範囲になります。50条2項の届出は31条の3第1項の省令場所を名指しで引いているので、専任設置の範囲と条文上完全に一致します。

    15条の5の2の柱書は、契約の類型(自ら当事者となるのは売買・交換、代理・媒介は売買・交換・貸借)と行為の類型(締結または申込みの受付)で二重に絞りをかけています。四つの号のうち規模要件が書かれているのは第2号だけで、第3号は定義語を通じてこれを受け継ぎ、第1号と第4号には規模要件がありません。そして「一団の宅地建物の分譲」という定義語は19条1項まで射程が及ぶため、10区画・10戸に満たない分譲では物件所在地の標識義務も生じません。

    標識の様式は施行規則19条2項で六区分に分かれ、事務所は別記様式第九号、以下は場所の類型と専任の宅建士を置くべきものか否かで振り分けられます。届出は、事項四つと宛先二か所を法50条2項が、10日前という期限と別記様式第十二号を施行規則19条3項が定めています。義務の帰属は「設置した者」を軸に決まり、罰則は届出違反が83条1項1号、標識違反が83条1項2号で50万円以下、専任の宅建士に関する31条の3第3項違反が82条2号で100万円以下です。監督処分については、65条2項2号の列挙に50条が入っていないこと、65条4項2号が31条の3第3項から「事務所に係る部分」だけを除いていることが押さえどころになります。

    この論点は、条文の引用関係をたどれば例外なく答えが出る領域です。数字だけを覚えると混ざりますが、柱書から号へ、号から定義語へ、定義語から19条1項へと順にたどる読み方を身につければ、どの角度から問われても崩れません。人数の基準は専任の宅建士の設置義務で、事務所の側の全体像は宅建業の事務所で補ってください。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、宅建業法の過去問を論点別に演習でき、案内所等の届出・標識・専任の宅建士に関する肢も条文根拠つきの解説で確認できます。

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