宅建試験AIブートラボ 宅建試験AIブートラボ

宅建業の廃業届・免許取消|届出事由と届出義務者

宅建業法 読了 約37分

宅建業法11条の廃業等の届出を、5つの事由ごとの届出義務者と免許が失効する時点に分けて解説。76条の取引結了、66条1項7号による取消しとの接続まで条文根拠つきで整理します。

目次

    この記事は、宅地建物取引業法11条が定める廃業等の届出を、事由・届出義務者・免許が失効する時点の三つに分けて扱います。免許制度の全体の流れは宅建業の免許制度、免許と宅建士の登録を並べた横断整理は宅建業の免許制度を横断整理にあります。名簿の変更の届出(9条)との切り分けは宅建業者名簿と変更の届出が扱うので、この記事では11条そのものを深く掘ります。

    結論を先に述べます。11条の出題は、事由ごとに届出義務者が違うことと、免許が失効する時点も事由によって分かれることという二つのずれの上に成り立っています。しかもこの二つはずれ方が一致していません。届出義務者は五つの事由すべてで異なるのに、失効時点は「死亡・合併消滅」と「破産・解散・廃業」の二つにしか分かれない。選択肢はこの不一致を突いてきます。義務者を正しくしたうえで失効時点を誤らせる、あるいはその逆、という作り方が定番です。

    そして失効時点の分かれ目には理由があります。死亡と合併消滅は、免許を受けた主体そのものが消えてしまう。主体がいないのに免許だけが残っていると考える余地はありません。これに対し破産・解散・廃業は、主体がまだ存在している。破産手続が始まっても法人はあり、解散しても清算の目的の範囲で法人格は残り、廃業に至っては本人がやめると決めただけです。存在している主体から免許を取り上げるには、届出という行為が要る。この一本の基準で五つすべてが割り切れるので、個別の暗記は要りません。

    11条が免許制度のどこに置かれているか

    免許は行政が把握し続けるもの

    宅地建物取引業の免許は、一度与えて終わりの資格ではありません。3条1項が免許権者を定め、5条1項が入口で欠格事由を審査し、6条で免許証を交付したあとも、行政は業者の状態を継続的に把握し続ける建て付けになっています。8条2項が宅地建物取引業者名簿への登載事項を定め、10条がその名簿を一般の閲覧に供させ、9条が登載事項に変更があったときの届出を業者に義務づけているのは、名簿の記載を現実と一致させ続けるためです。取引の相手方は名簿を見て業者を判断するので、記載が古いままでは制度が機能しません。

    11条はこの流れの終点にあります。業者が業をやめる、あるいは業を続けられない状態になったときに、その事実を行政に知らせる。届出を受けて免許権者は名簿から当該業者を消し、閲覧に供される情報から外します。9条が「業を続けながら中身が変わったとき」の届出であるのに対し、11条は「業そのものが終わるとき」の届出です。この役割の違いが、そのまま届出義務者の違いにもつながります。9条の義務者は常に宅建業者本人ですが、11条ではそもそも業者本人が存在しないか、存在しても自分で届出をする立場にない場合があるからです。

    免許は他人に承継されない

    もう一つ、11条の背景にあるのが免許の一身専属性です。免許は特定の申請者について、その者に欠格事由がないか、事務所の体制が整っているかを審査したうえで与えられます。したがって他人に譲渡することも、貸すことも、相続によって承継することもできません。13条1項が自己の名義をもって他人に宅建業を営ませることを禁じているのは、審査を通った看板の裏に審査を受けていない者が立つことを防ぐためです。

    11条1項1号が業者の死亡について相続人からの届出を求めているのは、この一身専属性の裏返しです。相続人は免許を相続しません。相続するのは事業用の財産であって、免許ではない。だから相続人が事業を引き継ぐつもりなら、相続人自身が新たに免許を受けなければなりません。届出はあくまで「被相続人の免許が終わった」ことを行政に知らせる行為であって、相続人が業者になるための手続ではありません。ここを取り違えると、「相続人は被相続人の免許を承継して業務を継続できる」という選択肢に引っかかります。

    免許が不要な場面との区別も押さえておいてください。そもそも宅建業に当たらない行為であれば免許自体が要りません。判定の枠組みは宅建業の「業」に当たるケースと当たらない例で整理しています。

    11条1項が定める五つの事由と届出義務者

    条文を正確に読むところから始めます。

    宅地建物取引業法11条1項
    「宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当することとなつた場合においては、当該各号に掲げる者は、その日(第一号の場合にあつては、その事実を知つた日)から三十日以内に、その旨をその免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。」

    柱書だけで三つのことが決まっています。届出先は免許権者であること、期限は30日以内であること、そして1号だけ起算点が違うこと。届出先が免許権者であるという点は見落とされがちですが、大臣免許の業者が主たる事務所の所在地の知事に届け出るのではありません。9条の変更の届出と同じく、免許を与えた者に対して届け出ます。

    1号 死亡した場合 — 相続人

    個人業者が死亡した場合、届け出るのはその相続人です。

    なぜ相続人なのか。本人が死亡している以上、本人に届出をさせることはできません。そして死亡した業者の権利義務を包括的に引き受けるのは相続人ですから、残務の処理を現に担う立場の者に届出をさせるのが自然です。この「残務を現に処理する者に届け出させる」という発想は、後述する破産管財人・清算人にも共通しています。11条1項の届出義務者は、その場面で残務処理を担う者が誰かという一点で決まっていると理解しておくと、五つを個別に覚える必要がなくなります。

    出題では「相続人」を別の言葉に置き換えてきます。配偶者、子、同居の親族といった具体的な続柄に差し替えられていれば誤りです。条文が定めているのは相続人であって、相続人が誰であるかは民法の相続の規定によって決まります。相続人が複数いる場合に誰が届け出るかまでは条文が定めていませんが、届出義務は相続人に課されています。相続の基本的な枠組みは相続の基本で確認できます。

    2号 法人が合併により消滅した場合 — 消滅した法人を代表する役員であった者

    法人が合併によって消滅した場合、届け出るのはその法人を代表する役員であった者です。

    「であった者」という過去形が重要です。法人はすでに消滅しているので、現在の代表役員は存在しません。消滅の直前に代表役員だった者に、事後的な届出義務を負わせる規定です。存続法人や新設法人の代表者ではありません。ここが最頻出のひっかけで、「合併後の存続会社の代表者が届け出る」という選択肢は誤りになります。

    なぜ存続法人ではないのか。合併によって消滅法人の権利義務は存続法人に包括承継されますが、免許は承継されません。免許は一身専属的なもので、合併の効果として移転する権利義務には含まれないからです。したがって存続法人が宅建業を営むには、存続法人自身が免許を受けている必要があります。存続法人がもともと免許を持っていればその免許で営業を続けられますし、持っていなければ新たに免許を受けなければなりません。消滅法人の免許は消滅法人とともに終わるのであって、存続法人に渡るものではない。だから届出も、消滅法人の側の人間がするのです。

    3号 破産手続開始の決定があった場合 — 破産管財人

    宅建業者について破産手続開始の決定があった場合、届け出るのはその破産管財人です。

    破産管財人は業者の内部の人間ではありません。裁判所が選任し、破産財団に属する財産の管理処分権を専属的に持つ第三者です。破産手続開始の決定があると、破産者は財産の管理処分権を失い、その権限は破産管財人に移ります。残務を現に処理する者は破産管財人ですから、届出義務もそこに課されるという筋です。破産した業者本人(あるいは法人の代表役員)が届け出るのではありません。

    この3号は二重に狙われます。第一に届出義務者を業者本人や代表役員に差し替える形。第二に、後述するとおり免許の失効時点を「破産手続開始の決定があった時」に差し替える形です。義務者が破産管財人という特殊な立場の者であるために、失効時点まで特別扱いだと思い込ませる。これが3号の出題の型です。義務者の特殊さと失効時点の扱いは無関係だと割り切ってください。

    4号 合併および破産手続開始の決定以外の理由により解散した場合 — 清算人

    法人が合併・破産以外の理由で解散した場合、届け出るのはその清算人です。株主総会の解散決議、定款で定めた存続期間の満了、解散を命ずる裁判といった場合がこれに当たります。

    条文が「合併及び破産手続開始の決定以外の理由により解散した場合」とわざわざ書いているのは、合併も破産も広い意味では解散事由に含まれるからです。合併は2号、破産は3号で先に押さえてあるので、4号はそれ以外の残り全部を受ける規定になっています。2号・3号・4号は排他的に並んでいて、重なりません。

    清算人が届出義務者になる理由は、破産管財人と同じです。解散した法人は清算の目的の範囲内でなお存続し、清算人がその事務を執行します。残務を処理しているのは清算人ですから、そこに届出をさせる。破産管財人と清算人はいずれも、法人の通常の業務執行体制とは別に残務処理のために置かれる立場だ、という共通点で覚えると混ざりません。

    5号 宅地建物取引業を廃止した場合 — 宅建業者であった個人または法人を代表する役員

    業者が自ら宅建業をやめた場合、届け出るのは宅地建物取引業者であった個人、または宅地建物取引業者であった法人を代表する役員です。

    5号は他の四つと性質が違います。1号から4号までは本人の意思とは無関係に生じうる事態ですが、5号だけは業者が自分の意思で選ぶ場面です。この違いは、後で見る欠格事由(5条1項3号のかけこみ廃業)や、宅建士の登録欠格(18条1項4号)で意味を持ってきます。処分逃れのために自分から廃業するという抜け道が成り立つのは、本人が選べる事由だけだからです。

    5号の場合、法人は解散していません。法人はそのまま存続したうえで、宅建業という事業だけをやめる。だから届出をするのは「法人を代表する役員」であって、清算人ではありません。2号のような「であった者」という限定が付いていないのは、法人自体が消滅していないからです。ここは4号との対比で押さえてください。法人が解散したのなら清算人、法人は残して業だけやめるのなら代表役員。

    なお、5号の廃止は宅建業全体をやめる場合を指します。一部の事務所だけを廃止した場合は11条の問題ではなく、9条の変更の届出(事務所の名称・所在地は4条1項4号の登載事項)と、営業保証金の超過額の取戻し(30条1項後段)の問題になります。事務所単位の話と業全体の話を混同させる選択肢があるので、区別してください。事務所に置くべき専任の宅建士の要件は専任の宅地建物取引士、事務所そのものの要件は事務所の要件で扱っています。

    30日の起算点 — 死亡だけが「知った日」

    原則は「その日から」

    五つの事由すべてについて、期限は30日以内です。ここに例外はありません。届出の期限が事由によって変わることはないので、「合併の場合は2週間以内」といった選択肢は即座に切れます。

    起算点は原則として「その日」、つまり事由が発生した日です。合併の効力が生じた日、破産手続開始の決定があった日、解散した日、宅建業を廃止した日。それぞれの日から30日を数えます。

    1号だけ「その事実を知った日から」

    柱書の括弧書きが、1号についてだけ起算点をずらしています。「その日(第一号の場合にあつては、その事実を知つた日)から三十日以内」。死亡の場合だけは、相続人がその事実を知った日から30日以内です。

    理由は明快です。相続人は必ずしも被相続人と同居しているわけではなく、死亡の事実をすぐに知るとは限りません。知らないうちに期間が進行して、気づいたときには期限を過ぎていた、という事態は酷にすぎます。他の四つは、届出義務者が事由の発生を知らないという状況が考えにくい。破産管財人は選任されて初めて管財人になるのですから決定を知っていますし、清算人も同様です。合併の代表役員も廃業を決めた本人も、当然に事実を知っています。知らない可能性があるのは死亡の場合だけなので、そこだけ起算点をずらしている。

    この「一点だけ違う」という形で覚えるのが最も確実です。五つの起算点を並べて覚えようとすると、どれがどれだったか混ざります。原則は事由の発生日、例外は死亡の一つだけ、と押さえてください。

    宅建士の21条も同じ構造

    同じ構造が、宅地建物取引士の死亡等の届出(21条)にもあります。21条の柱書も「その日(第一号の場合にあつては、その事実を知つた日)から三十日以内」と、11条と一字一句同じ書き方をしています。業者側と宅建士側で、期間も起算点のずらし方も共通です。

    ここは無理に違いを探さないでください。すべてが違うと思い込むと、共通しているところでかえって迷います。共通するものは共通と割り切り、違うところだけを覚えるのが記憶の負荷を下げるコツです。21条との具体的な差異は後段で扱います。宅建業法に現れる期間の数字を横断的に整理したものは宅建業法の数字にあります。

    免許が失効する時点 — 11条2項が挙げているのは3号から5号まで

    条文の書き方そのものを読む

    ここが11条の最頻出論点です。条文はきわめて短い。

    宅地建物取引業法11条2項
    「前項第三号から第五号までの規定により届出があつたときは、第三条第一項の免許は、その効力を失う。」

    読むべきは、2項が1項3号から5号までしか挙げていないという点です。破産・解散・廃業について、届出があったときに免許が効力を失う。そう書いてあるだけです。

    裏返すと、1号(死亡)と2号(合併による消滅)は2項に含まれていません。では死亡や合併消滅の場合に免許はどうなるのか。条文には「失効する」と書いていない。書く必要がないからです。免許を受けた主体が存在しなくなった以上、その者に対する免許が残っていると考える余地がありません。人が死ねば、法人が消滅すれば、免許はその時点で当然に効力を失います。届出は事後の報告にすぎず、免許の運命には影響しません。

    「主体が消えたかどうか」という一つの基準

    死亡と合併消滅は事由の発生時に失効。破産・解散・廃業は届出の時に失効。この分かれ目を五つ暗記する必要はありません。基準は一つです。

    免許を受けた主体そのものが消えたか。

    死亡した個人は、もう存在しません。合併により消滅した法人も、法人格そのものが消滅しています。主体が消えたのだから、届出を待つまでもなく免許は意味を失う。行政の側からしても、届出があるまで免許が有効だとすると、死者に免許が帰属している期間が生じてしまいます。

    これに対し、破産手続開始の決定を受けた法人は存在しています。財産の管理処分権が破産管財人に移っただけで、法人格は消えていません。解散した法人も、清算の目的の範囲内でなお存続します。廃業した業者に至っては、個人も法人もそのまま存在していて、宅建業という事業をやめただけです。主体が存在し続けている以上、免許を終わらせるには何らかの行為が要る。その行為が届出です。だから届出の時に失効する。

    この理屈が腹に落ちれば、五つの事由を暗記する作業は不要になります。選択肢を読んだ瞬間に「この事由で主体は消えるか」と自問すれば、失効時点は自動的に決まります。

    破産の非対称に注意する

    繰り返しになりますが、破産が最も誤りやすいところです。届出義務者は破産管財人という、業者の外から来た特殊な立場の者。ところが失効時点は破産手続開始の決定の時ではなく、届出の時。義務者は特殊、失効時点は原則どおり。この非対称に引きずられて、失効時点まで「決定の時」だと答えてしまう受験者が多くいます。

    出題の型としては、「宅地建物取引業者である法人が破産手続開始の決定を受けた場合、その日から30日以内に破産管財人が届け出なければならず、免許は破産手続開始の決定があった時に効力を失う」という選択肢が典型です。前半は正しく、後半だけが誤り。前半で油断させて後半で外す構造なので、一つの選択肢の中に義務者と失効時点の両方が書かれていたら、必ず両方を検算してください。

    有効期間の満了による失効との違い

    11条による失効とは別に、免許は有効期間の満了によっても失効します。免許の有効期間は5年で(3条2項)、更新を受けなければそこで終わります。ただし3条4項により、更新の申請をしたのに有効期間の満了日までに処分がなされないときは、従前の免許は処分がなされるまでなお効力を有します。申請さえしていれば、行政の処理が遅れても無免許にはならないという手当てです。

    11条の失効と有効期間の満了は、後述する76条や30条では並べて規定されていますが、原因はまったく別です。11条は業をやめる場面、有効期間の満了は更新を怠った場面。混同しないでください。免許の有効期間と更新の詳細は宅建業の免許制度で扱っています。

    免許が失効しても取引は結了できる — 76条

    根拠条文は11条2項ではなく76条

    免許が失効したあと、進行中の取引はどうなるのか。ここで働くのが76条です。

    宅地建物取引業法76条(免許の取消し等に伴う取引の結了)
    「第三条第二項の有効期間が満了したとき、第十一条第二項の規定により免許が効力を失つたとき、又は宅地建物取引業者が第十一条第一項第一号若しくは第二号に該当したとき、若しくは第二十五条第七項、第六十六条若しくは第六十七条第一項の規定により免許を取り消されたときは、当該宅地建物取引業者であつた者又はその一般承継人は、当該宅地建物取引業者が締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては、なお宅地建物取引業者とみなす。」

    根拠は76条であって、11条2項ではありません。11条2項は失効の時点を定めるだけの条文で、取引の結了については何も述べていません。学習の初期に両者を混同したまま覚えてしまうと、条文番号を問う出題や、他の条文との参照関係を問う出題で崩れます。

    76条がカバーする範囲は広い

    76条が挙げている事由を数えてみてください。有効期間の満了、11条2項による失効(破産・解散・廃業)、11条1項1号・2号への該当(死亡・合併消滅)、25条7項による取消し(営業保証金の供託の届出をしない場合)、66条による取消し、67条1項による取消し(所在不明の場合)。廃業等の五つの事由がすべて入っているだけでなく、免許の取消処分を受けた場合も含まれています。

    つまり、免許が終わる場面はほぼすべて76条の射程に入ります。自主的にやめた場合も、行政に取り消された場合も、進行中の取引を放り出させることはしない。取引の相手方からすれば、業者の免許がどういう理由で終わったかは知ったことではなく、締結済みの契約が履行されないほうがよほど困るからです。76条は業者を保護する規定ではなく、取引の相手方を保護する規定だと理解してください。

    「その者又はその一般承継人」

    みなされる主体も条文が定めています。「当該宅地建物取引業者であつた者又はその一般承継人」。

    死亡の場合、業者であった者はもう存在しませんから、一般承継人である相続人がみなし業者になります。合併消滅の場合は、権利義務を包括承継した存続法人・新設法人が一般承継人です。破産の場合は破産管財人が財産の管理処分権を持ち、解散の場合は清算人が清算事務を執行します。廃業の場合は、業者であった者自身がそのまま残務を処理します。

    11条1項の届出義務者と、76条のみなし業者は、多くの場面で重なりますが概念としては別です。届出義務者は届出という一回きりの行為を課される者、みなし業者は取引の結了という継続的な活動について業者と扱われる者です。合併の場合、届出義務者は消滅法人の元代表役員ですが、一般承継人は存続法人ですから、ここは重なりません。

    できることとできないこと

    76条がみなすのは「当該宅地建物取引業者が締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内」に限られます。この限定が答えを決めます。

    できるのは、免許が終わる前に締結済みの契約の後始末です。代金の決済、物件の引渡し、登記手続への協力、契約に基づく債務の履行。これらは結了に向けた行為ですから許されます。みなし業者である以上、その範囲では宅建業法の規制も及びます。

    できないのは、新たな取引に踏み出すことです。新規に売買契約を締結する、新たに媒介契約を結ぶ、新規物件の広告を出す。これらは結了の目的の範囲を超えるので、無免許事業になります。相続人が被相続人の在庫物件を新たに売り出すのは、結了ではなく新規の営業です。

    出題では「廃業の届出後は一切の業務ができない」という極端な誤りと、「相続人は被相続人の事業をそのまま継続できる」という逆方向の誤りの両方が出ます。線引きは締結済みかどうか。この一点で判断してください。

    営業保証金と分担金の後始末

    みなし業者である間は取り戻せない

    廃業すれば、供託していた営業保証金は取り戻せます。根拠は30条1項です。

    宅地建物取引業法30条1項(抜粋)
    「(前略)第十一条第二項の規定により免許が効力を失つたとき、同条第一項第一号若しくは第二号に該当することとなつたとき(中略)は、宅地建物取引業者であつた者又はその承継人(第七十六条の規定により宅地建物取引業者とみなされる者を除く。)は、当該宅地建物取引業者であつた者が供託した営業保証金を取り戻すことができる。」

    注目すべきは括弧書きです。「第七十六条の規定により宅地建物取引業者とみなされる者を除く」。取引の結了が終わっていない間、その者はまだみなし業者ですから、営業保証金を取り戻せません。当然です。取引が進行中なのに保証の裏付けを引き揚げてしまえば、相手方が損害を被ったときに還付を受ける原資が消えてしまいます。76条のみなしと30条の取戻しは、この括弧書きで直結しています。片方だけを覚えていると、この連動を問う選択肢を落とします。

    30条1項が挙げる事由は76条とほぼ同じ並びです。有効期間の満了、11条2項による失効、11条1項1号・2号への該当、25条7項・66条・67条1項による取消し。免許が終われば取り戻せる、ただし結了が終わるまでは待て、という構造だと理解してください。

    6か月以上の公告と、10年の例外

    取戻しには手続的な制約もあります。30条2項は、営業保証金について27条1項の権利を有する者、つまり業者との宅建業に関する取引によって債権を有する者に対し、6か月を下らない一定期間内に申し出るべき旨を公告し、その期間内に申出がなかった場合でなければ取り戻せないと定めています。

    還付を受けられる者がいるかもしれないのに、業者が先に引き揚げてしまうのを防ぐ規定です。ここでも保護されているのは取引の相手方です。

    ただし例外があります。30条2項ただし書は、「営業保証金を取りもどすことができる事由が発生した時から十年を経過したとき」は公告が不要だとしています。10年経てば債権は時効等で整理されているはずだという割り切りです。6か月と10年という二つの数字がセットで出題されるので、どちらがどちらの役割かを混同しないでください。6か月は公告の期間、10年は公告そのものが不要になる期間です。

    なお、一部の事務所を廃止した場合の超過額の取戻しも30条1項後段が定めています。この場合も原則として公告が必要です。営業保証金の制度全体は営業保証金の供託と還付で扱っています。

    保証協会の社員だった場合

    営業保証金を供託せず、宅地建物取引業保証協会の社員となっていた業者が廃業した場合は、64条の11が適用されます。

    社員が社員の地位を失ったとき、保証協会は納付されていた弁済業務保証金分担金の額に相当する額の弁済業務保証金を取り戻すことができ(64条の11第1項)、取り戻したときは元社員に分担金を返還します(同条2項)。ただし返還のタイミングには制約があります。同条4項により、保証協会は元社員に係る取引によって生じた債権を有する者に対し、6か月を下らない一定期間内に認証を受けるため申し出るべき旨を公告しなければならず、同条3項により、その期間が経過した後でなければ返還できません。保証協会が元社員に対して債権を持っているときはその弁済完了後、認証をしたときは還付充当金債権の弁済完了後です。

    6か月以上の公告という枠組みは、営業保証金でも分担金でも共通しています。違うのは、営業保証金では業者側が公告するのに対し、分担金では保証協会が公告する点です。保証協会の仕組みは宅地建物取引業保証協会にまとめてあります。

    届出を怠るとどうなるか — 66条1項7号

    自主的な廃業が強制的な取消しに変わる

    11条の届出は義務ですが、履行しなかった場合の帰結は、多くの受験者が思うより重いものです。

    宅地建物取引業法66条1項7号
    「第十一条第一項の規定による届出がなくて同項第三号から第五号までのいずれかに該当する事実が判明したとき。」

    66条1項柱書は「当該免許を取り消さなければならない」と定めています。必要的取消しです。免許権者に裁量はありません。届出をせずに放置し、行政が破産・解散・廃業の事実を把握したら、その業者の免許は取り消されます。

    意味を考えてください。届出をしていれば、免許は11条2項によって静かに失効するだけでした。届出を怠ったために、同じ結末が「取消処分を受けた」という形に変わる。行政処分を受けた事実は残りますし、70条1項により66条による処分は公告されます。自主的な退出が、行政による強制的な排除に変質するわけです。この接続を押さえておくと、11条と66条が別々の制度ではなく一本につながって見えてきます。

    なぜ3号から5号までなのか

    7号が挙げているのは「同項第三号から第五号まで」、つまり破産・解散・廃業だけです。1号(死亡)と2号(合併消滅)は入っていません。

    理由は失効時点の議論と同じです。死亡と合併消滅の場合、免許はすでに事由の発生時に失効しています。取り消すべき免許がもう存在しないのに、取消処分をすることはできません。存在しないものを取り消すという処分は観念できない。だから7号は、届出があって初めて失効する3号から5号までを対象にしているのです。

    ここは11条2項の「3号から5号まで」という限定と完全に対応しています。11条2項で失効の対象になる三つが、66条1項7号で取消しの対象になる三つと一致する。条文を並べて読むと、立法者が同じ論理で条文を書いていることが見えます。この対応関係に気づいていれば、「業者が死亡したのに届出がなかった場合、免許権者はその免許を取り消さなければならない」という選択肢が誤りだと判断できます。

    罰則には11条が入っていない

    意外なところですが、83条を確認しておいてください。83条1項1号は、50万円以下の罰金の対象として「第九条、第五十条第二項、第五十三条(中略)又は第七十七条第三項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者」を挙げています。

    9条は挙げられていますが、11条は挙げられていません。名簿の変更の届出を怠れば罰金の対象になるのに、廃業等の届出を怠っても、この規定による罰金は科されません。

    罰金がないから軽い、という話ではありません。前項で見たとおり、11条の不履行には66条1項7号による必要的取消しという、より直接的な制裁が用意されているからです。制裁の形が違うだけで、11条のほうが緩いわけではない。むしろ免許そのものを失う処分ですから重いとも言えます。「廃業等の届出をしなかった者は50万円以下の罰金に処せられる」という選択肢は、条文の列挙にない以上、誤りです。宅建業法の罰則を横断的に見たものは宅建業法の罰則一覧にあります。

    届出も所在確認もできないとき — 67条

    公告して30日待つ

    届出をしないまま業者が行方をくらました場合、66条1項7号による取消しには限界があります。破産・解散・廃業の「事実が判明」しなければ発動できないからです。単に連絡が取れないというだけでは、廃業したのかどうかも分かりません。

    この隙間を埋めるのが67条です。

    宅地建物取引業法67条1項
    「国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者の事務所の所在地を確知できないとき、又はその免許を受けた宅地建物取引業者の所在(法人である場合においては、その役員の所在をいう。)を確知できないときは、官報又は当該都道府県の公報でその事実を公告し、その公告の日から三十日を経過しても当該宅地建物取引業者から申出がないときは、当該宅地建物取引業者の免許を取り消すことができる。」

    事務所の所在地が確知できないか、業者本人(法人なら役員)の所在が確知できないとき。官報または都道府県の公報で公告し、公告の日から30日を経過しても申出がなければ、免許を取り消すことができます。

    66条との三つの違い

    67条は66条と混同されやすいので、違いを明確にしておきます。

    第一に、66条1項は「取り消さなければならない」(必要的)ですが、67条1項は「取り消すことができる」(任意的)です。所在が確知できないという事情だけでは、必ず取り消すべきだとまでは言えないという判断です。

    第二に、67条には公告と30日の待機が前置されています。いきなり取り消すのではなく、まず公告して業者に申し出る機会を与える。行方不明といっても本当に廃業したとは限らないので、名乗り出る余地を残しています。

    第三に、67条2項は「前項の規定による処分については、行政手続法第三章の規定は、適用しない」と定めています。行政手続法第3章は不利益処分に関する章で、聴聞や弁明の機会の付与を定めています。所在が確知できない相手に聴聞の通知を送ることはできませんから、適用を外しているわけです。66条による取消しでは聴聞が必要である(69条2項が66条の処分に係る聴聞について規定を準用しています)のと対照的です。

    なお、67条1項による取消しも76条・30条の列挙に含まれているので、取引の結了と営業保証金の取戻しの扱いは他の場合と変わりません。

    免許取消しの全体像と、廃業届との違い

    取消しの根拠条文は四つある

    この記事のタイトルには「免許取消」が入っていますが、廃業等の届出と免許取消しは別の制度です。混同しないために、取消しの根拠条文を整理しておきます。

    66条1項は必要的取消しです。免許権者は取り消さなければなりません。列挙されているのは、5条1項の一定の欠格事由に該当するに至ったとき(1号から4号)、免許換えを受けていないことが判明したとき(5号。7条1項各号に該当するのに3条1項の免許を受けていない場合)、免許を受けてから1年以内に事業を開始せず、または引き続いて1年以上事業を休止したとき(6号)、11条1項の届出がなくて3号から5号までの事実が判明したとき(7号)、不正の手段により免許を受けたとき(8号)、65条2項各号に該当し情状が特に重いときまたは業務停止処分に違反したとき(9号)です。

    66条2項は任意的取消しで、3条の2第1項により免許に付された条件に違反したときに取り消すことができます。

    25条7項も任意的取消しです。営業保証金を供託した旨の届出をしない業者に対し、免許の日から3か月以内に届出がなければ免許権者は催告をしなければならず(25条6項)、催告が到達した日から1か月以内になお届出がないときは免許を取り消すことができます。

    67条1項は前節で見た所在不明の場合で、これも任意的です。

    「取り消さなければならない」のは66条1項だけで、25条7項・66条2項・67条1項はいずれも「取り消すことができる」という整理になります。語尾を入れ替える選択肢が出るので、必要的か任意的かを条文ごとに押さえてください。

    65条は取消しではない

    65条は指示処分と業務停止処分の規定で、免許の取消しではありません。65条1項が指示、同条2項が1年以内の期間を定めた業務の全部または一部の停止です。業務停止は最長1年で、免許自体は残ります。

    ただし65条と66条は接続しています。66条1項9号が「前条第二項各号のいずれかに該当し情状が特に重いとき又は同条第二項若しくは第四項の規定による業務の停止の処分に違反したとき」を必要的取消事由としているからです。業務停止で済む事案でも情状が特に重ければ取消しに上がり、業務停止に違反すればやはり取消しになります。監督処分の全体像は宅建業者への監督処分で扱っています。

    5年の欠格になる取消しは限られる

    免許を取り消されたら5年間は免許を受けられない、と反射的に覚えている受験者が多いのですが、正確ではありません。

    5条1項2号が5年の欠格事由としているのは、「第六十六条第一項第八号又は第九号に該当することにより免許を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者」です。8号は不正の手段による免許取得、9号は情状が特に重い場合と業務停止処分違反。この二つの号に絞られています。

    したがって、66条1項6号(1年以内に事業を開始せず、または1年以上事業を休止した)による取消しや、7号(廃業等の届出がなくて事実が判明した)による取消し、67条1項(所在不明)による取消しは、5年の欠格事由になりません。取消しと聞いたら5年、ではなく、取消しの理由が8号か9号かを確認する。この手順を踏んでください。

    かけこみ廃業には5年の欠格が付く

    5条1項2号だけでは抜け道が残ります。取消処分は聴聞を経て行われるので、聴聞の期日および場所が公示された時点で、業者は自分が取り消されようとしていることを知ります。処分が下りる前に自分から廃業の届出をしてしまえば「取り消された者」に当たらず、2号を免れることができてしまう。

    これを封じるのが5条1項3号です。66条1項8号または9号に該当するとして免許取消処分の聴聞の期日および場所が公示された日から、処分をする日または処分をしないことを決定する日までの間に、11条1項4号(解散)または5号(廃業)の規定による届出があった者は、その届出の日から5年を経過するまで免許を受けられません。ただし、解散または宅建業の廃止について相当の理由がある者は除かれます。

    対象が11条1項4号と5号に限られている点が重要です。1号の死亡、2号の合併消滅、3号の破産手続開始の決定は、本人の意思で選べる事由ではありません。処分逃れのために死ぬ、処分逃れのために破産する、という想定は制度として置く意味がない。自分の意思で選べる解散と廃業だけが、かけこみとして捕捉されます。この理由まで理解しておけば、対象となる号を暗記する必要がなくなります。

    5条1項4号は、この規定を法人の役員に及ぼすものです。3号の期間内に合併により消滅した法人、または11条1項4号・5号の届出があった法人について、3号の公示の日前60日以内にその法人の役員であった者は、消滅または届出の日から5年間欠格となります。法人を畳んで役員が別法人で再出発する、という抜け道を塞ぐ規定です。欠格事由の全体像は宅建業の免許の欠格事由で系統別に整理しています。

    宅建士の登録との対比

    21条の届出義務者は号によって違う

    宅地建物取引士の登録にも、業者の11条に対応する規定があります。21条の死亡等の届出です。

    • 1号 死亡した場合 — その相続人
    • 2号 18条1項1号から8号までのいずれかに該当するに至った場合 — 本人
    • 3号 18条1項12号(心身の故障により宅建士の事務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの)に該当するに至った場合 — 本人またはその法定代理人もしくは同居の親族

    義務者が三通りに分かれている点を正確に押さえてください。死亡は相続人、原則は本人、心身の故障の場合だけ本人・法定代理人・同居の親族の三者です。3号で三者が並んでいるのは、本人が届出をできる状態にないことが想定されるからで、そのときに代わって届け出られる者を条文が明示しています。

    破産のときだけ義務者がずれる

    11条と21条を並べたときに最も問われるのが破産です。

    宅建業者が破産手続開始の決定を受けたときの届出義務者は破産管財人(11条1項3号)。宅建士が破産手続開始の決定を受けたときの届出義務者は本人(21条2号。18条1項2号が破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者を掲げています)。

    死亡はどちらも相続人で共通、期限はどちらも30日以内で共通、起算点のずらし方も共通。違うのは破産の一点だけです。だからここだけを覚えれば足ります。宅建士側の届出義務者を破産管財人だとする選択肢、業者側を本人だとする選択肢、どちらの向きでも出ます。

    宅建士の登録が破産で影響を受けるのは、18条1項2号が破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者を登録の欠格事由としているからです。したがって21条2号の届出があれば、22条2号により知事は登録を消除しなければなりません。宅建士の登録制度全体は宅地建物取引士の登録で扱っています。

    22条は66条1項7号と同じ構造をしている

    22条は申請等に基づく登録の消除を定めており、その3号が興味深い形をしています。

    宅地建物取引業法22条(抜粋)
    「三 前条第一号の規定による届出がなくて同号に該当する事実が判明したとき。」

    21条1号の届出、つまり死亡の届出がないまま死亡の事実が判明したときは、知事は登録を消除しなければならない。66条1項7号とまったく同じ書き方です。届出がないまま事実が判明したら行政の側から処理する、という発想が業者側にも宅建士側にも置かれています。

    ただし対象がずれています。業者側の66条1項7号は11条1項3号から5号まで(死亡と合併消滅は除かれる)。宅建士側の22条3号は21条1号(死亡)そのもの。業者側で死亡が除かれているのは、免許がすでに失効していて取り消すべき対象がないからでした。宅建士側では、死亡しても登録簿の記載は残り続けるので、消除という作業が必要になります。免許の「取消し」と登録の「消除」は、法的な性質が違う。取消しは処分ですが、消除は登録簿から記載を消す行為です。

    かけこみは宅建士側では廃業だけ

    宅建士の登録欠格にも、業者の5条1項3号に対応する規定があります。18条1項4号です。

    66条1項8号または9号に該当するとして免許の取消処分の聴聞の期日および場所が公示された日から処分の日までの間に、11条1項5号の規定による届出があった者(宅建業の廃止について相当の理由がある者を除く)は、届出の日から5年間登録を受けられません。

    業者側の5条1項3号が11条1項4号と5号の両方を挙げているのに対し、18条1項4号は5号だけです。4号の解散が入っていません。登録を受けるのは自然人であって、解散するのは法人だからです。廃業した法人の役員が個人として宅建士登録を目指す場面は、別途18条1項5号が5条1項4号該当者を欠格としてカバーしています。同じ発想の規定でも、対象が自然人か法人かによって挙げる号が変わる。細かいところですが、条文を並べて読むとこうした整合が見えてきます。

    試験での出題ポイント

    義務者と失効時点は必ずセットで検算する

    11条の選択肢は、一文の中に届出義務者と失効時点の両方を書き込んでくるのが定番です。前半の義務者を正しく書いて安心させ、後半の失効時点で外す。あるいはその逆。片方を確認して正誤を決めてはいけません。必ず両方を検算してください。

    特に破産は、義務者が破産管財人という目立つ要素なので、そこが合っていると全体が合っている気がしてしまいます。義務者の特殊さと失効時点の扱いは無関係だと割り切ることです。

    存続法人か、消滅法人か

    合併の出題では、届出義務者を「存続法人の代表者」に差し替える形が繰り返されます。条文は「その法人を代表する役員であつた者」で、「その法人」は消滅した法人を指します。合併の話が出てきたら、主語が消滅法人側か存続法人側かを確認する。

    派生として、「合併により消滅した法人の免許は存続法人に承継される」という選択肢も出ます。免許は一身専属で承継されないので誤りです。

    30日の起算点

    「合併により消滅した場合、その事実を知った日から30日以内」といった形で、起算点を1号以外に広げてくる選択肢があります。知った日から起算するのは1号の死亡だけです。

    逆に、死亡の場合について「死亡の日から30日以内」とする形も出ます。どちらの向きでも出るので、条文の括弧書きの位置を正確に記憶してください。

    届出がない場合の帰結

    66条1項7号の対象が3号から5号までであることを突く出題があります。「宅建業者が死亡したのに届出がなかった場合、免許権者は免許を取り消さなければならない」は誤りです。免許はすでに失効しているので、取り消す対象がありません。

    また、11条の届出義務違反に罰金があるかを問う形も考えられます。83条1項1号の列挙に11条は入っていません。

    取引の結了の限界

    「廃業の届出をした後は、既に締結していた契約の履行も一切できない」は誤り。「相続人は被相続人の宅建業を引き続き営むことができる」も誤り。締結済みの契約の結了は可、新規の取引は不可。この線引きを軸に判断します。

    根拠条文を76条だと正確に言えるようにしておくことも大切です。11条2項は失効の時点を定める条文で、取引の結了については何も定めていません。

    営業保証金の取戻しとの連動

    「廃業の届出をすれば直ちに営業保証金を取り戻せる」という選択肢は、二重に誤りです。第一に、76条によりみなし業者とされる間は30条1項括弧書きにより取り戻せません。第二に、30条2項により6か月を下らない期間の公告が必要です。免許が終わったことと、保証金を回収できることは別だと押さえてください。

    必要的か任意的か

    66条1項は「取り消さなければならない」、66条2項・25条7項・67条1項は「取り消すことができる」。語尾を入れ替えるだけで誤りの選択肢が作れるので、条文ごとに語尾を記憶してください。

    覚え方・整理の仕方

    届出義務者は「残務を現に処理している者」

    五つの義務者を丸暗記する必要はありません。その場面で残務を実際に処理しているのは誰かと考えれば導けます。

    死亡したなら、権利義務を包括的に引き受けた相続人。合併で消滅したなら、消滅の直前に法人を代表していた者。破産手続が始まったなら、財産の管理処分権を専属的に持つ破産管財人。解散したなら、清算事務を執行する清算人。業だけをやめたなら、そのまま存在している本人または代表役員。

    破産管財人と清算人は、どちらも通常の業務執行体制の外から残務処理のために置かれる立場だという点で共通しています。破産なら管財人、解散なら清算人という対応は、この共通点を意識すると混ざりません。

    失効時点は「主体が消えたか」だけを見る

    五つの失効時点を個別に覚えるのはやめてください。基準は一つです。

    免許を受けた主体そのものが消えたか。消えたなら(死亡・合併消滅)、届出を待たずに失効する。消えていないなら(破産・解散・廃業)、届出をもって失効する。

    この基準で五つすべてが割り切れます。そして同じ基準が66条1項7号の対象範囲(3号から5号まで)も説明します。一つの理屈が二つの条文を説明しているので、理屈のほうを覚えるのが効率的です。

    条文が挙げている号の範囲を覚える

    11条まわりでは、他の条文が「11条1項の何号」を参照しているかが繰り返し問われます。三つあります。

    11条2項が挙げるのは3号から5号まで。破産・解散・廃業について、届出時に失効する。

    66条1項7号が挙げるのも3号から5号まで。11条2項と同じ範囲で、理由も同じです。

    5条1項3号が挙げるのは4号と5号。かけこみ廃業として捕捉されるのは、本人の意思で選べる解散と廃業だけ。

    そして18条1項4号(宅建士の登録欠格)が挙げるのは5号だけ。自然人が対象なので解散が落ちる。

    3号から5号、3号から5号、4号と5号、5号だけ。参照する範囲が段階的に狭まっていくという形で並べると、どの条文がどこまでを見ているかが記憶しやすくなります。

    30日という数字の位置づけ

    行政に事実を知らせる届出は、業者側も宅建士側も30日です。名簿の変更の届出(9条)が30日、廃業等の届出(11条1項)が30日、宅建士の死亡等の届出(21条)も30日。

    これに対し、宅建士本人が登録簿の書換えを求める変更の登録は「遅滞なく」で、日数が付いていません。届出は30日、申請は遅滞なく。役割で分けると混ざりません。

    そのうえで、死亡の場合だけ起算点が「知った日」という例外を一つ乗せる。この二段構えで覚えてください。

    6か月と10年、30日と1年

    数字の混線を防ぐために、場面ごとに整理しておきます。

    30日は届出の期限(11条1項、9条、21条)と、67条1項の公告後の待機期間。6か月は営業保証金の取戻しの公告期間(30条2項)と、保証協会が分担金を返還する前の公告期間(64条の11第4項)。10年は営業保証金の取戻しで公告が不要になる期間(30条2項ただし書)。1年は66条1項6号の事業不開始・休止期間と、65条2項の業務停止の上限。5年は免許の有効期間(3条2項)と、欠格期間。

    同じ数字が別の場面で出てくるので、数字から場面を引くのではなく、場面から数字を引く方向で覚えてください。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 宅地建物取引業者である法人が破産手続開始の決定を受けた場合、その日から30日以内に破産管財人がその旨を免許権者に届け出なければならず、免許は破産手続開始の決定があった時に効力を失う。(○か×か)

    答えを見る×:前半は正しく、後半が誤りです。届出義務者が破産管財人であること(11条1項3号)、期限が事由の発生日から30日以内であることは条文どおりです。しかし免許が効力を失うのは届出があった時です。11条2項は「前項第三号から第五号までの規定により届出があつたときは、第三条第一項の免許は、その効力を失う」と定めており、破産は3号なので届出時の失効になります。事由の発生時に当然に失効するのは、2項に含まれていない1号(死亡)と2号(合併による消滅)で、免許を受けた主体そのものが存在しなくなるためです。破産手続が始まっても法人は存続しているので、免許を終わらせるには届出という行為が要ります。義務者が破産管財人という特殊な立場であることに引きずられて、失効時点まで特別扱いだと考えないでください。

    Q2. 宅地建物取引業者である法人が合併により消滅した場合、合併後存続する法人を代表する役員が、合併の日から30日以内にその旨を届け出なければならない。(○か×か)

    答えを見る×:届出義務者は存続法人の代表役員ではなく、消滅した法人を代表する役員であった者です(11条1項2号)。条文が「であつた者」と過去形で書いているのは、法人がすでに消滅していて現在の代表役員が存在しないためです。免許は一身専属的なもので合併によって存続法人に承継されないので、存続法人が宅建業を営むには自らの免許が必要になります。なお期限を「合併の日から30日以内」とする点は正しく、知った日から起算するのは1号の死亡だけです。

    Q3. 宅地建物取引業者が死亡したにもかかわらず相続人からの届出がなく、免許権者がその事実を把握した場合、免許権者は当該業者の免許を取り消さなければならない。(○か×か)

    答えを見る×:66条1項7号が対象としているのは「第十一条第一項の規定による届出がなくて同項第三号から第五号までのいずれかに該当する事実が判明したとき」であり、1号の死亡と2号の合併消滅は含まれていません。死亡の場合、免許は死亡の時点ですでに当然に失効しているため、取り消すべき免許が存在しないからです。11条2項が3号から5号までしか挙げていないことと、66条1項7号が3号から5号までしか挙げていないことは、同じ理由で対応しています。なお、届出義務そのものは相続人に生じており、義務を果たしていない状態であることに変わりはありません。

    Q4. 宅地建物取引業者が廃業の届出をした場合、その届出前に締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては、なお宅地建物取引業者とみなされる。この効果を定めているのは宅地建物取引業法11条2項である。(○か×か)

    答えを見る×:みなしの効果自体は正しいのですが、根拠条文が誤りです。取引の結了について定めているのは76条であり、11条2項は免許が効力を失う時点を定めるだけの規定です。76条は、有効期間の満了、11条2項による失効、11条1項1号・2号への該当、25条7項・66条・67条1項による取消しのいずれの場合にも、業者であった者またはその一般承継人を取引の結了の目的の範囲内で業者とみなすと定めています。免許が終わった原因を問わず幅広くカバーしているのは、この規定が業者ではなく取引の相手方を保護するためのものだからです。

    Q5. 宅地建物取引業者が宅地建物取引業を廃止した旨の届出をしたときは、その届出により免許が効力を失うため、直ちに供託していた営業保証金を取り戻すことができる。(○か×か)

    答えを見る×:二つの点で誤りです。第一に、30条1項は取戻しができる者から「第七十六条の規定により宅地建物取引業者とみなされる者」を明文で除いています。締結済みの契約の結了が終わるまでは、なお業者とみなされる立場なので取り戻せません。取引が進行中なのに保証の裏付けを引き揚げてしまえば、相手方が還付を受ける原資が失われるからです。第二に、30条2項により、原則として営業保証金について権利を有する者に対し6か月を下らない一定期間内に申し出るべき旨を公告し、その期間内に申出がなかった場合でなければ取り戻せません。ただし取戻し事由の発生から10年を経過したときは公告が不要になります(同項ただし書)。なお、免許が効力を失う点自体は正しく、廃業は11条1項5号なので同条2項により届出時に失効します。

    まとめ

    11条は短い条文ですが、そこから伸びる線が多いところです。最後に骨格だけ確認します。

    届出義務者は五つの事由すべてで違います。死亡は相続人、合併消滅は消滅法人を代表する役員であった者、破産は破産管財人、解散は清算人、廃業は業者であった個人または法人を代表する役員。その場面で残務を現に処理している者が誰か、という視点で導けます。

    期限は一律30日以内で、起算点だけ死亡が例外です。原則は事由の発生日、死亡だけが相続人がその事実を知った日。相続人が死亡を知らないうちに期間が進むのは酷だという理由です。

    免許が失効する時点は二つに分かれます。死亡と合併消滅は事由の発生時、破産・解散・廃業は届出の時(11条2項)。免許を受けた主体そのものが消えたかどうか、という一つの基準で割り切れます。

    失効しても取引の結了はできます。根拠は11条2項ではなく76条です。締結済みの契約の後始末は可、新規の取引は不可。そしてみなし業者である間は営業保証金を取り戻せません(30条1項括弧書き)。

    届出を怠れば、自主的な退出が強制的な取消しに変わります。66条1項7号による必要的取消しです。ただし対象は3号から5号までで、死亡と合併消滅は取り消すべき免許がすでにないため含まれません。

    この五つを、条文の番号とセットで言えるようにしておいてください。宅建業法全体の中での位置づけは宅建業法の全体像で確認できます。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、廃業等の届出の義務者と失効時点を組み合わせた肢別トレーニングを収録しています。条文を読んだあとに肢を回して、判断が反射になるまで固めてください。

    読んだ内容を、宅建業法の肢で確かめる

    宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。

    関連記事

    Android版アプリの先行テスターを募集しています

    正式公開に先立ち、先行してご利用いただける方を募集しています。学習記録や有料プランはWeb版と同じアカウントで、そのまま引き継げます。3ステップで、通常その場で使い始められます。

    1
    テスターグループに参加する

    お使いのGoogleアカウントで参加ボタンを押すだけです。承認を待つ必要はありません。

    参加ページを開く
    2
    テスト版を受け取る

    手順1と同じGoogleアカウントでログインしたAndroid端末で受け取りページを開き、「テスターになる」を押してGoogle Playからインストールします。

    受け取りページを開く
    3
    いつものアカウントでログインする

    Web版と同じメールアドレス・パスワードでログインすれば、学習記録がそのまま表示されます。

    「まだご利用いただけません」と表示された場合は、反映待ちの可能性があります。時間をおいて再度お試しいただくか、info@takken-bootlab.com までお知らせください。