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不動産売買の流れ|各段階に効く条文で追う

宅建業法 読了 約33分

不動産売買を広告から引渡し後まで時系列で追い、各段階に宅建業法のどの条文が効くかを整理します。媒介契約・重要事項説明・37条書面・手付・保全措置・クーリング・オフを条文根拠つきで解説。

目次

    本記事の役割 — 不動産売買を広告から引渡し後まで時系列で追い、各段階に宅建業法のどの条文が効くかを対応づけます。買主として家を買う場合も、業者として媒介する場合も、適用される条文は同じです。
    生活の場面全般から条文に入る記事は生活の場面から入る宅建、宅建業法そのものの体系は宅建業法の全体像にあります。同じ流れを売主の側から、査定・媒介契約・広告・内覧・引渡しという順で追ったものは不動産の売却方法にあり、買主側と売主側で発動する条文がどう入れ替わるかを見比べられます。各条文の詳細はそれぞれの個別記事へ送りますので、ここでは順序と対応関係を掴んでください。

    不動産の売買には順序があります。広告を出し、媒介契約を結び、申込みを受け、重要事項を説明し、契約を締結し、書面を交付し、代金を受け取り、引き渡す。この順序の一つひとつに、宅建業法が別々の条文を置いています。

    先に結論を三つ述べます。

    第一に、宅建業法32条から43条までは、取引の時間順に並んでいます。条文番号の順序がそのまま取引の順序です。この並びを知っていると、条文番号から場面が、場面から条文番号が引き出せるようになります。

    第二に、同じ制限でも「広告」と「契約」で対象が違います。工事完了前の制限は、33条の広告制限が貸借を含むのに対し、36条の契約制限は売買・交換だけです。この非対称が繰り返し問われます。

    第三に、33条の2から43条までの8種制限は、宅建業者が自ら売主で、買主が宅建業者でない場合にしか働きません。同じ家を買っても、売主が個人で業者が媒介しているだけなら、手付の上限も保全措置もクーリング・オフも適用されません。誰が売主かで買主の立場が変わります。

    なお、本記事の条文はすべて2026年4月1日時点で施行されている版によっています。宅地建物取引業法は 327AC1000000176_20260401_507AC0000000068、同法施行規則は 332M50004000012_20260401_507M60000802002、民法は 129AC0000000089_20260401_506AC0000000033 です。宅建試験は当該年度の4月1日現在施行されている法令から出題されるため、この時点の条文が令和8年度の基準になります。

    時系列と条文番号の対応

    先に全体を置きます。取引の進行と条文が、おおむね次のように対応しています。

    広告を出す段階が32条・33条・34条。売却の依頼を受けて媒介契約を結ぶ段階が34条の2。買受けの申込みを受ける段階が37条の2と41条の定義。契約の直前が35条。契約の締結が36条・38条・39条。契約の成立直後が37条。代金の授受が41条・41条の2。引渡しと引渡し後が40条と民法566条・567条です。

    条文番号が飛んでいる箇所には理由があります。37条の2が37条の後にあるのに扱う場面は申込みなのは、8種制限という別の括りで後から挿入された条文だからです。8種制限は33条の2と37条の2から43条までで、取引の時間軸とは別の「自ら売主のときだけ働く」という軸で束ねられています。この二重構造を意識すると、条文の並びが読めるようになります。

    広告の段階

    誇大広告等の禁止(32条)

    32条は、宅建業者が業務に関して広告をするときに、著しく事実に相違する表示をし、または実際のものよりも著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならないと定めています。

    対象となる事項が条文に列挙されています。所在、規模、形質、現在または将来の利用の制限、環境、交通その他の利便、代金・借賃等の対価の額もしくはその支払方法、そして代金または交換差金に関する金銭の貸借のあつせんです。

    押さえるべき点が二つあります。第一に、「著しく」という限定が付いていること。多少の誇張ではなく、著しい相違または誤認が要件です。第二に、将来の利用の制限や交通の利便も対象に含まれること。「将来この地域に駅ができる」といった表示も、著しく誤認させるものであれば32条に触れます。

    なお、この規定は広告をした時点で成立します。実際に契約が成立したかどうか、注文がなかったかどうか、被害が生じたかどうかを問いません。広告規制の詳細は広告に関する規制にまとめています。

    広告開始時期の制限(33条)

    33条は、宅地の造成または建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法29条1項もしくは2項の許可、建築基準法6条1項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあつた後でなければ、当該工事に係る宅地または建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならないと定めています。

    未完成物件について、許可や確認が下りるかどうか分からない段階で広告を打たせない、という趣旨です。開発許可と建築確認の関係そのものは開発許可と建築確認で扱っています。

    条文が「売買その他の業務に関する広告」と書いている点に注意してください。売買に限定されていないので、貸借の広告も対象です。

    取引態様の明示(34条)

    34条1項は、宅建業者が売買、交換または貸借に関する広告をするときは、自己が契約の当事者となって売買・交換を成立させるか、代理人として成立させるか、媒介して成立させるかの別を明示しなければならないと定めています。

    2項は、売買、交換または貸借に関する注文を受けたときは、遅滞なく、その注文をした者に対して取引態様の別を明らかにしなければならないとしています。

    広告のときと注文を受けたときの二度必要である点が要点です。広告で明示していれば注文時は不要、という関係にはなりません。同一の物件について複数回広告するなら、そのたびに明示が必要です。明示の方法に書面という限定はなく、口頭でも足ります。詳細は取引態様の明示義務を参照してください。

    この節の要点

    • 32条は「著しく」事実に相違する表示等を禁止。広告した時点で成立し、契約の成否を問わない。
    • 33条の広告制限は貸借も対象。処分があった後でなければ広告できない。
    • 34条は広告のときと注文を受けたときの二度。注文時は「遅滞なく」。

    媒介契約の段階

    書面の作成・交付義務(34条の2第1項)

    34条の2第1項は、宅建業者が宅地または建物の売買または交換の媒介の契約を締結したときは、遅滞なく、所定の事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならないと定めています。

    三点あります。第一に、対象が売買または交換の媒介に限られ、貸借の媒介には適用がないこと。第二に、記名だけでなく記名押印が求められること(35条書面・37条書面が宅建士の記名で足りるのと違います)。第三に、記名押印するのは宅建業者であって、宅建士ではないこと。この三点はいずれも出題されます。

    記載事項として1号から8号までが並びます。物件の特定に必要な表示、売買すべき価額または評価額、他の業者への重ねての依頼の許否、既存建物のときは建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項、有効期間および解除に関する事項、指定流通機構への登録に関する事項、報酬に関する事項などです。

    価額について意見を述べるときの根拠明示(34条の2第2項)

    2項は、1項2号の価額または評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。

    条文は根拠を明らかにする方法を限定していません。書面でなければならないという規定はなく、口頭でも足ります。「価額について意見を述べるときは、書面でその根拠を明らかにしなければならない」という肢は、条文にない要件を加えています。

    3類型と有効期間(34条の2第3項・4項)

    依頼者が他の宅建業者に重ねて依頼することを禁ずる媒介契約が専任媒介契約です。3項は、専任媒介契約の有効期間は3月を超えることができないとし、これより長い期間を定めたときはその期間は3月とすると定めています。契約全体が無効になるのではなく、期間だけが3月に短縮される点が要点です。

    4項は、有効期間は依頼者の申出により更新することができ、更新の時から3月を超えることができないとしています。依頼者からの申出が必要なので、自動更新の特約は許されません。

    これに対し、重ねての依頼が可能なものが一般媒介契約で、有効期間の法定はありません。専任媒介のうち、依頼者が自ら発見した相手方と契約することもできない旨の特約を含むものが専属専任媒介契約です。3類型の比較は媒介契約の3類型、書面の記載事項は媒介契約書の記載事項にまとめています。

    指定流通機構への登録(34条の2第5項、規則15条の10)

    5項は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内に指定流通機構に登録しなければならないと定めています。

    その期間を定めるのが施行規則15条の10です。専任媒介契約の締結の日から7日、専属専任媒介契約にあっては5日とされています。そして同条2項が、この期間の計算については休業日数は算入しないとしています。

    「7日と5日」という数字だけでなく、起算点が契約の締結の日であることと、休業日を算入しないことまでが一組です。一般媒介契約に登録義務はありません。

    6項は、登録をした宅建業者は登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならないとし、7項は、登録に係る契約が成立したときは遅滞なくその旨を指定流通機構に通知しなければならないとしています。制度そのものはレインズとはで扱っています。

    二種類の報告義務(34条の2第8項・9項)

    見落とされやすいのが、報告義務が二種類あることです。

    8項は、媒介契約を締結した宅建業者は、目的物である宅地建物の売買または交換の申込みがあつたときは、遅滞なくその旨を依頼者に報告しなければならないとしています。これは媒介契約の型を問わず、一般媒介契約にも課される義務です。

    9項は、専任媒介契約を締結した宅建業者に、業務の処理状況2週間に1回以上(専属専任媒介契約にあっては1週間に1回以上)報告しなければならないと定めています。こちらは専任・専属専任にだけ課されます。

    申込みの報告は全類型、処理状況の報告は専任系だけ。この区別が問われます。

    反する特約は無効(34条の2第10項)

    10項は、3項から6項まで、および8項・9項の規定に反する特約は無効とすると定めています。有効期間、更新、登録、登録を証する書面の引渡し、そして二つの報告義務が対象です。

    「依頼者の同意があれば報告を月1回にできる」といった特約は、9項に反するので無効になります。

    この節の要点

    • 対象は売買・交換の媒介。貸借には適用なし。書面は宅建業者が記名押印
    • 価額の意見には根拠明示(2項)。書面である必要はない。
    • 専任は3月上限、超えたら3月に短縮。更新は依頼者の申出により。
    • 登録は専任7日・専属専任5日、休業日を算入しない(規則15条の10)。
    • 申込みの報告は全類型、処理状況の報告は専任2週間・専属専任1週間。

    申込みの段階と、申込証拠金の扱い

    購入希望者から買受けの申込みを受ける段階です。ここで金銭が動くことがあり、その扱いが問題になります。

    手付金等の定義が時点で区切られている

    41条1項の括弧書きが「手付金等」を定義しています。代金の全部または一部として授受される金銭および手付金その他の名義をもつて授受される金銭で代金に充当されるものであって、契約の締結の日以後当該宅地建物の引渡し前に支払われるものをいう、というものです。

    この定義から二つの帰結が出ます。

    第一に、引渡し後に支払われる金銭は手付金等に当たりません。したがって保全措置の対象外です。

    第二に、契約締結前に受け取った申込証拠金であっても、契約締結後に代金に充当されるのであれば手付金等に含めて計算します。名義が何であるかではなく、代金に充当されるかどうかで判定されます。申込みの段階で受け取った金銭が、後の保全措置の要否の計算に効いてくるということです。

    申込みの撤回とクーリング・オフの起点

    買受けの申込みは、それ自体が後述するクーリング・オフの起点にもなります。37条の2は「買受けの申込みをした者」を対象に含めており、契約締結前でも撤回の対象になります。

    しかも同条1項の括弧書きが「事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く」としているため、判定の基準になるのは申込みをした場所です。契約を締結した場所ではありません。この点は後で詳しく扱います。

    重要事項説明の段階

    誰に、いつ、誰が

    35条1項は、宅建業者は「宅地建物取引業者の相手方等」に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地建物に関し、売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に宅地建物取引士をして、所定の事項について書面を交付して説明をさせなければならないと定めています。

    三つの要素を分けて押さえます。

    誰に。条文が「その者が取得し、又は借りようとしている」と限定しているため、説明の相手は物件を取得または賃借しようとする者、すなわち売買であれば買主です。売主に対して重要事項説明をする義務はありません。

    いつ。「契約が成立するまでの間に」です。契約と同時でも後でもなく、前でなければなりません。

    誰が。宅建士です。宅建業者が宅建士に説明をさせる、という構造になっています。

    宅建士証の提示と記名

    35条4項は、宅建士は前三項の説明をするときは、説明の相手方に対し宅地建物取引士証を提示しなければならないと定めています。

    ここが22条の4と違うところです。22条の4は取引の関係者から請求があったときの提示を定めていますが、35条4項の提示は請求がなくても必要です。重要事項説明の場面では、相手が何も言わなくても提示義務があります。

    5項は、書面の交付に当たっては宅建士は当該書面に記名しなければならないとしています。押印は求められていません。

    相手方が宅建業者の場合

    35条6項は、相手方等が宅建業者である場合について、1項の「宅地建物取引士をして…交付して説明をさせなければ」を「交付しなければ」と読み替え、4項および5項を適用しないとしています。

    つまり業者間取引では、書面の交付だけで足り、説明も宅建士証の提示も宅建士の記名も不要になります。ただし7項により、この場合でも書面を作成したときは宅建士に記名させなければなりません。読み替えで外れるのは説明義務と提示義務です。

    記載事項の一覧は35条書面の記載事項、覚え方は35条書面の覚え方にまとめています。

    契約締結の段階

    契約締結時期の制限(36条)

    36条は、工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法29条1項・2項の許可、建築基準法6条1項の確認その他政令で定める処分があった後でなければ、当該工事に係る宅地建物につき、自ら当事者として、若しくは当事者を代理してその売買若しくは交換の契約を締結し、又はその売買若しくは交換の媒介をしてはならないと定めています。

    33条と読み比べてください。36条の対象には貸借が入っていません。33条の広告制限は「売買その他の業務に関する広告」で貸借を含みますが、36条の契約制限は売買・交換だけです。

    したがって、未完成物件について、許可等の処分前に貸借の契約を締結することは36条に触れません(広告をすれば33条に触れます)。この非対称は繰り返し出題されます。

    損害賠償額の予定等の制限(38条)

    ここから8種制限です。38条1項は、宅建業者が自ら売主となる売買契約において、債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2を超えることとなる定めをしてはならないとしています。

    2項が効果を定めており、これに反する特約は「10分の2をこえる部分について無効」です。特約全体が無効になるのではなく、超過部分だけが無効になります。この効果の書き分けが問われます。

    手付の額の制限(39条1項)

    39条1項は、宅建業者が自ら売主となる売買契約の締結に際して、代金の額の10分の2を超える額の手付を受領することができないと定めています。38条と同じ10分の2ですが、こちらは受領そのものの制限です。

    手付は必ず解約手付になる(39条2項)

    39条2項が、この論点の核心です。宅建業者が自ら売主となる売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであつても、買主はその手付を放棄して、当該宅建業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができるとしています。

    「いかなる性質のものであつても」という文言により、当事者が違約手付や証約手付として合意していても、解約手付として扱われます

    そしてただし書が「その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない」としています。自分が着手したかどうかではなく、相手方が着手したかどうかで解除の可否が決まります。買主から解除するなら売主が着手していないこと、売主から解除するなら買主が着手していないことが必要です。

    民法557条1項も同じ構造ですが、宅建業法39条2項は「いかなる性質のものであつても」という点と、業者側が「倍額を現実に提供して」という点で、買主保護を厚くしています。3項により、これに反する特約で買主に不利なものは無効です。手付の詳細は手付金の制限を参照してください。

    この節の要点

    • 36条の契約制限は売買・交換のみ。33条の広告制限は貸借も含む。
    • 38条は予定額と違約金の合算で10分の2。超過部分のみ無効。
    • 39条1項は手付の受領が10分の2まで。2項でいかなる性質でも解約手付相手方が履行に着手するまで。

    37条書面の段階

    誰に交付するか

    37条1項は、売買または交換について、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に当事者を代理して締結したときはその相手方および代理を依頼した者にその媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に遅滞なく書面を交付しなければならないと定めています。

    35条書面が買主にだけ交付されるのに対し、37条書面は媒介の場合、売主と買主の双方に交付されます。この違いが最もよく問われます。

    説明義務はない

    37条3項は「宅地建物取引業者は、前二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名させなければならない」とだけ定めています。

    説明せよという規定はありません。宅建士がしなければならないのは記名だけです。「37条書面は宅建士が説明しなければならない」という肢は誤りになります。宅建士証の提示義務も37条にはありません。

    なお、書面の作成・交付そのものは宅建業者の義務であり、宅建士でなくても作成・交付できます。宅建士が担うのは記名の部分です。

    必要的記載事項と任意的記載事項

    37条1項の各号は、二種類に分かれています。

    1号から5号までが必要的記載事項です。当事者の氏名・住所、物件を特定するために必要な表示、代金または交換差金の額・支払の時期・方法、引渡しの時期移転登記の申請の時期。条文が「〜あるときは」という限定を付けていないので、定めの有無にかかわらず記載します。2号の2の既存建物の建物状況調査に関する当事者双方の確認事項も、既存建物であれば記載します。

    6号以降が任意的記載事項で、いずれも「定めがあるときは、その内容」という形をとっています。代金・交換差金以外の金銭の授受、契約の解除、損害賠償額の予定または違約金、金銭の貸借のあっせんが成立しないときの措置、天災その他不可抗力による損害の負担、契約不適合責任またはその履行に関して講ずべき措置、租税その他の公課の負担です。

    引渡しの時期と移転登記の申請の時期が必要的である点は繰り返し問われます。35条書面にはこの二つがなく、37条書面にだけあるという対比で覚えてください。両書面の横断整理は35条書面と37条書面の違い、記載事項の詳細は37条書面の記載事項にまとめています。

    手付金等の保全措置

    未完成物件は5パーセント、完成物件は10パーセント

    41条1項は、工事の完了前において行う売買で自ら売主となるものについて、保全措置を講じた後でなければ買主から手付金等を受領してはならないとしています。ただし書により、受領しようとする手付金等の額(既に受領した額を加えた額)が代金の額の100分の5以下であり、かつ政令で定める額以下であるときは不要です。

    41条の2第1項は、それ以外の売買、すなわち完成物件について同じ構造の規定を置き、ただし書の基準を代金の額の10分の1以下としています。

    政令で定める額はいずれも1,000万円です。したがって、未完成物件は代金の5パーセント超または1,000万円超、完成物件は10パーセント超または1,000万円超で保全措置が必要になります。

    登記がされていれば不要

    両条のただし書には、割合とは別の除外があります。当該宅地建物について買主への所有権移転の登記がされたとき、または買主が所有権の登記をしたときです。

    登記によって買主の地位が保全されているのだから、重ねて金銭の保全を求める必要がない、という趣旨です。割合の話だけを覚えていると、この除外を落とします。

    措置の種類が未完成と完成で違う

    41条1項が定める措置は、保証委託契約(銀行等が返還債務を連帯保証する)と保証保険契約の二つです。

    41条の2第1項は、この二つに加えて、指定保管機関による手付金等寄託契約質権設定契約をいずれも講じる方法を認めています。指定保管機関による保管は完成物件でしか使えません。未完成物件では使えないという非対称が出題されます。

    措置を講じないときの効果

    41条4項は、業者が措置を講じないときは、買主は手付金等を支払わないことができると定めています。契約が無効になるのではなく、支払を拒めるという効果です。詳細は手付金等の保全措置にまとめています。

    住宅ローンの段階

    同じ「不成立のときの措置」が二度出てくる

    住宅ローンは、宅建業法の中で二か所に登場します。しかも同じ文言が使われているため、混同されます。

    35条1項12号は、重要事項として「代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせんの内容及び当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置」を挙げています。あっせんをする場合に、その内容と、不成立のときにどうなるかを契約前に説明せよ、という規定です。

    37条1項9号は、37条書面の記載事項として「代金又は交換差金についての金銭の貸借のあつせんに関する定めがある場合においては、当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置」を挙げています。

    説明の段階と記録の段階で性格が違う

    二つの違いは、条文の書き方に表れています。

    35条1項12号は「あつせんの内容及び…措置」と、あっせんをするなら必ず説明する形です。これに対し37条1項9号は「定めがある場合においては」と条件が付いており、任意的記載事項です。定めがなければ書かなくてよいことになります。

    つまり、契約前には「あっせんの内容と不成立の場合」を説明させ、契約後には「不成立の場合の定めがあればそれを記録させる」という役割分担です。同じ言葉が出てくるのは、説明の段階と記録の段階の両方でこの論点が重要だからです。

    いわゆるローン特約、すなわち融資が受けられなかったときに契約を解除できるという合意は、この「不成立のときの措置」の典型です。合意しなければ特約は存在せず、その場合37条書面に記載する事項もありません。住宅ローンの制度そのものは住宅ローンの基礎知識で扱っています。

    決済・引渡し・登記の段階

    引渡しで危険が移転する

    民法567条1項は、売主が買主に目的物を引き渡した場合において、その引渡しがあつた時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、または損傷したときは、買主はその滅失または損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求および契約の解除をすることができないとし、この場合において買主は代金の支払を拒むことができないとしています。

    つまり、危険が移転するのは引渡しの時です。契約の時でも、代金支払の時でも、登記の時でもありません。引渡し前に双方の責めに帰することができない事由で建物が滅失すれば買主は代金の支払を拒めますが、引渡し後なら拒めません。

    2項は、売主が契約に適合する目的物の引渡債務の履行を提供したにもかかわらず、買主が受領を拒み、または受領できない場合について、履行の提供があった時以後の滅失・損傷を同様に扱うとしています。受領遅滞があれば、現実の引渡しがなくても危険が移転するということです。危険負担の全体像は危険負担にまとめています。

    登記は対抗要件

    決済の場において所有権移転登記が申請されます。登記は所有権移転の効力要件ではありませんが、第三者に対する対抗要件として機能します。登記の仕組みは不動産登記法を参照してください。

    移転登記の申請の時期は、前述のとおり37条書面の必要的記載事項(37条1項5号)です。定めがあろうとなかろうと書かなければならない事項であり、決済・引渡しと登記が一体で進むことの制度的な裏づけになっています。

    登録免許税と固定資産税の精算

    所有権移転登記には登録免許税がかかります。課税標準は固定資産課税台帳に登録された価格を基礎とする扱いで、税率は原因によって異なります。詳細は登録免許税と印紙税にまとめています。

    決済の場では固定資産税の精算が行われるのが通例ですが、これは当事者間の合意にすぎません。固定資産税の納税義務者は賦課期日である1月1日現在の所有者であり(地方税法343条1項、359条)、年の途中で売買しても市町村に対する納税義務者は変わりません。日割り精算は売買代金の調整としての性質を持つ金銭のやりとりです。この点は固定資産税で扱っています。

    引渡し後の段階

    民法の契約不適合責任

    引渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合、買主は履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除ができます。

    期間の制限を定めるのが民法566条です。売主が種類または品質に関して契約に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知つた時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、これらの権利を行使できません。ただし、売主が引渡しの時に不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、この限りでないとされています。

    起算点が「引渡しの時」ではなく「不適合を知った時」である点、そして求められているのが権利行使ではなく通知である点が要点です。また566条は種類・品質についての規定で、数量に関する不適合には適用がありません。詳細は契約不適合責任にまとめています。

    宅建業法40条による特約の制限

    40条1項は、宅建業者が自ら売主となる売買契約において、契約不適合を担保すべき責任に関し、民法566条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならないと定めています。2項により、これに反する特約は無効です。

    構造を正確に読んでください。原則は「民法566条より買主に不利な特約は禁止」で、例外として「通知期間を引渡しの日から2年以上とする特約」だけが許されます。

    したがって「引渡しの日から2年」とする特約は有効です。民法の原則(知った時から1年)より買主に不利になる場合がありますが、条文が明文で認めています。一方、「引渡しの日から1年」とする特約は2年に足りないので無効になり、無効になった結果として民法の原則に戻ります。特約がなかったことになるので、知った時から1年です。

    「特約が無効になると引渡しから2年になる」という理解は誤りです。無効になれば民法の原則に戻る、というのが正しい帰結です。40条の詳細は契約不適合責任の特約制限を参照してください。

    クーリング・オフ

    判定の基準は「申込みをした場所」

    37条の2第1項は、宅建業者が自ら売主となる売買契約について、当該宅建業者の事務所その他省令で定める場所(事務所等)以外の場所において、買受けの申込みをした者または売買契約を締結した買主は、一定の場合を除き、書面により、申込みの撤回または契約の解除を行うことができるとしています。

    そして括弧書きが「事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く」としています。

    ここから、判定の基準になるのは申込みをした場所だと分かります。事務所で申し込んで自宅で契約したならクーリング・オフできず、自宅で申し込んで事務所で契約したならできます。契約締結の場所ではありません。

    事務所等の範囲は施行規則16条の5が定めており、宅建士を置くべき継続的に業務を行うことができる施設や、土地に定着する建物内に設けられた案内所などが含まれます。テント張りの案内所のように土地に定着していない場所は事務所等に当たりません。

    できなくなる二つの場合

    1項1号は、申込者等が省令の定めるところにより申込みの撤回等を行うことができる旨およびその方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して8日を経過したときとしています。

    要件を分解すると、告知が書面でされたこと(省令が書面による告知を定めています)と、そこから8日を経過したことです。書面で告げられていなければ、何日経ってもクーリング・オフできます。起算点が「契約の日」でも「申込みの日」でもなく「告げられた日」である点も要点です。

    2号は、申込者等が当該宅地建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたときです。引渡しと代金全部の支払の両方が必要で、どちらか一方では足りません。

    効力は発した時に生じる

    2項は、申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、その効力を生ずるとしています。到達ではなく発信の時点です。8日目に発信すれば、到達が9日目でも有効になります。

    3項は、撤回等が行われた場合、宅建業者は申込者等に対し速やかに、受領した手付金その他の金銭を返還しなければならないとしています。そして1項後段が、宅建業者は撤回等に伴う損害賠償または違約金の支払を請求することができないとしています。

    4項により、これらに反する特約で申込者等に不利なものは無効です。詳細はクーリング・オフにまとめています。

    8種制限は「業者が売主」のときだけ働く

    適用場面が条文で区切られている

    ここまでに出てきた38条、39条、40条、41条、41条の2、37条の2は、いずれも8種制限と呼ばれる規定群に属します。33条の2と37条の2から43条までの8項目です。

    78条2項が「第33条の2及び第37条の2から第43条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない」と定めています。加えて各条文自身が「自ら売主となる」という限定を置いています。

    したがって8種制限が働くのは、売主が宅建業者であり、かつ買主が宅建業者でない場合に限られます。

    同じ家を買っても保護が変わる

    この限定には実質的な意味があります。

    新築分譲のように業者が自ら売主である場合、買主は手付の上限(10分の2)、解約手付のみなし、保全措置、クーリング・オフ、契約不適合責任の特約制限といった保護をすべて受けられます。

    これに対し、中古住宅を個人の売主から業者の媒介で買う場合、売主は宅建業者ではないので8種制限は働きません。手付が代金の3割でも宅建業法違反にはならず、保全措置の義務もなく、クーリング・オフもできません。契約不適合責任の特約も40条の制限を受けないので、「一切責任を負わない」という特約が民法572条の範囲で有効になりえます。

    同じ「家を買う」という場面でも、売主が誰かで適用される条文がまったく違う。事案を読むときは、まず売主が宅建業者かどうかを確認してください。適用場面の詳細は8種制限とは、横断整理は8種制限の横断整理にまとめています。

    媒介と代理では働かない

    条文が「自ら売主となる」と書いているため、業者が媒介または代理として関与しているだけの場合には8種制限が働きません。「宅建業者が関与していれば保護される」わけではない、という点が誤解されやすい箇所です。

    一方、35条の重要事項説明や37条書面の交付は、自ら売主の場合だけでなく媒介・代理の場合にも課されます。8種制限とそれ以外で適用範囲が違うことを押さえてください。

    試験での出題ポイント

    33条と36条の対象を入れ替える

    工事完了前の制限で、33条の広告制限は貸借を含み、36条の契約制限は売買・交換だけです。「未完成物件について、許可等の処分前に貸借の媒介をすることは宅建業法に違反する」という肢は、36条に貸借が入っていないため誤りになります。

    媒介契約の数字をずらす

    専任3月、レインズ登録は専任7日・専属専任5日(休業日を算入しない)、報告は専任2週間に1回以上・専属専任1週間に1回以上。登録の日数と報告の頻度を入れ替える肢が定番です。また「申込みがあったときの報告」が全類型に課されることを落とす肢も作られます。

    35条書面と37条書面の交付先を混ぜる

    35条書面は取得または賃借しようとする者へ、37条書面は媒介の場合は各当事者へ。37条書面は売主にも交付するという点が要点です。また「37条書面を宅建士が説明しなければならない」は、37条3項が記名しか求めていないため誤りです。

    宅建士証の提示義務を請求にかからせる

    35条4項の提示は請求がなくても必要です。「取引の関係者から請求があったときは宅建士証を提示しなければならない」という22条の4の規定と混ぜた肢に注意してください。

    手付の「相手方」を自分に読み替える

    39条2項ただし書は「その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない」です。自分が着手していても、相手方が着手していなければ解除できます。ここを「当事者の一方が」「自らが」に置き換える肢が作られます。

    38条と39条の効果を混ぜる

    38条2項の効果は「10分の2を超える部分について無効」で、39条3項は「買主に不利な特約は無効」です。38条を全部無効にする肢、39条を超過部分のみ無効にする肢、いずれも誤りになります。

    保全措置の割合と例外を落とす

    未完成5パーセント、完成10パーセント、いずれも1,000万円。そして買主への所有権移転の登記がされたときは割合にかかわらず不要です。また指定保管機関による保管は完成物件でしか使えません

    クーリング・オフの起算点と基準場所

    起算点は「告げられた日」で、契約の日ではありません。判定の基準は申込みをした場所で、契約締結の場所ではありません。効力は発した時に生じ、到達時ではありません。2号の「引渡しを受け、かつ代金の全部を支払った」は両方必要です。

    40条の特約が無効になった後を誤る

    「引渡しの日から1年」とする特約は無効ですが、無効になった結果は民法566条の原則(知った時から1年)に戻るのであって、引渡しから2年になるのではありません。

    覚え方・整理の仕方

    条文番号を時間軸に貼る

    32・33・34が広告、34の2が媒介契約、35が重説、36が契約時期、37が書面、38・39が契約内容、41・41の2が金銭の受領、40が引渡し後。番号順が時間順であることを一度確認しておくと、条文番号から場面を、場面から条文番号を引き出せます。例外は37条の2で、番号は37条の後ですが扱う場面は申込みです。

    「広告は広く、契約は狭い」

    33条の広告制限は貸借を含み、36条の契約制限は売買・交換だけ。広告のほうが規制の対象が広いと覚えます。広告は不特定多数に向けられるので、貸借であっても野放しにできないという理屈で理解できます。

    媒介契約は「3・7・5・2・1」

    有効期間3月、登録は専任7日・専属専任5日、報告は専任2週間・専属専任1週間。3、7、5、2、1と並べて覚えたうえで、登録に休業日を算入しないことと、更新が依頼者の申出によることを添えます。

    二つの書面を「誰に・何を・誰が」で対比する

    35条書面は、取得または賃借しようとする者に、契約成立前に、宅建士が説明し記名する。37条書面は、各当事者に、契約成立後遅滞なく交付し、宅建士は記名のみ。説明があるのは35条だけ、双方に渡すのは37条だけという二点で区別します。

    保全措置は「未完成は厳しい」

    未完成5パーセント、完成10パーセント。未完成のほうが基準が低い=早く保全が必要です。物ができていないぶん買主のリスクが大きいから厳しい、と理解すれば取り違えません。指定保管機関が完成物件専用であることも、同じ理屈で覚えられます。

    クーリング・オフは「場所・書面・8日・発信」

    判定は申込みの場所、起算は書面で告げられた日、期間は8日、効力は発した時。四つを一続きで言えるようにしておきます。加えて、引渡しと代金全部の支払が揃うと使えなくなる、という消滅事由を添えます。

    事案を読む順序を固定する

    第一に、売主は宅建業者か。第二に、買主は宅建業者か。この二つで8種制限の適用が決まります。第三に、物件は完成しているか。これで33条・36条・41条か41条の2かが決まります。第四に、業者の立場は自ら売主か媒介か代理か。この四つを最初に確定させてから条文に入ると、適用条文を取り違えません。

    理解度チェッククイズ

    次の記述の正誤を判定してください。

    問1. 宅地建物取引業者は、建築確認を受ける前の建物について、貸借の媒介をする旨の広告をすることはできないが、貸借の媒介契約を締結すること自体は禁止されていない。

    答えを見る 答えは正しい記述です。33条は「宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては…都市計画法29条1項若しくは2項の許可、建築基準法6条1項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあつた後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の**売買その他の業務に関する広告**をしてはならない」としており、貸借の広告も対象に含まれます。これに対し36条は「自ら当事者として、若しくは当事者を代理してその**売買若しくは交換**の契約を締結し、又はその**売買若しくは交換**の媒介をしてはならない」と定めており、貸借が対象に入っていません。広告制限は貸借を含み、契約制限は含まないという非対称が繰り返し問われます。

    問2. 専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、契約の締結の日から7日以内(休業日を含む)に、当該物件を指定流通機構に登録しなければならない。

    答えを見る 答えは誤りです。日数は正しいのですが、休業日の扱いが誤っています。宅地建物取引業法施行規則15条の10第1項は、法34条の2第5項の期間を「専任媒介契約の締結の日から**七日**(専属専任媒介契約にあつては、**五日**)」と定め、同条2項が「前項の期間の計算については、**休業日数は算入しない**」としています。したがって休業日は日数に含めません。あわせて、起算点が契約の締結の日であること、一般媒介契約には登録義務がないこと、専属専任は5日であることも押さえてください。なお、この規定に反する特約は法34条の2第10項により無効です。

    問3. 宅地建物取引業者が媒介により売買契約を成立させた場合、37条書面は買主に対してのみ交付すれば足りる。

    答えを見る 答えは誤りです。37条1項は、その媒介により契約が成立したときは「**当該契約の各当事者**に」遅滞なく書面を交付しなければならないと定めています。したがって売主と買主の双方に交付が必要です。これに対し35条の重要事項説明は、1項が「その者が**取得し、又は借りようとしている**宅地又は建物に関し」と限定しているため、売買であれば買主に対してのみ行い、売主には行いません。**35条は買主のみ、37条は双方**という対比で覚えてください。なお37条書面について宅建士がしなければならないのは記名だけで(37条3項)、説明義務はありません。

    問4. 宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約において、代金3,000万円の物件について600万円の手付を受領し、その手付を違約手付とする旨を買主と合意した場合、買主は手付を放棄して契約を解除することはできない。

    答えを見る 答えは誤りです。39条1項により手付の上限は代金の10分の2、すなわち600万円までなので、受領した額自体は違反していません。しかし39条2項は「宅地建物取引業者が、自ら売主となる…売買契約の締結に際して手付を受領したときは、**その手付がいかなる性質のものであつても**、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる」と定めています。当事者が違約手付として合意していても、解約手付として扱われます。3項により、これに反する特約で買主に不利なものは無効です。ただし2項ただし書により、**相手方**が契約の履行に着手した後は解除できません。

    問5. 宅地建物取引業者が自ら売主となる完成物件の売買において、代金の10分の1以下かつ1,000万円以下の手付金等を受領する場合であっても、買主への所有権移転の登記がされていないときは保全措置を講じなければならない。

    答えを見る 答えは誤りです。41条の2第1項ただし書は、三つの場合に保全措置を不要としています。**買主への所有権移転の登記がされたとき**、**買主が所有権の登記をしたとき**、そして**受領しようとする手付金等の額(既に受領した額を加えた額)が代金の額の10分の1以下であり、かつ政令で定める額(1,000万円)以下であるとき**です。これらは並列の除外事由なので、割合の要件を満たしていれば登記の有無にかかわらず保全措置は不要です。なお未完成物件については41条1項が同じ構造で基準を100分の5としており、未完成のほうが早い段階から保全が必要になります。また指定保管機関による手付金等寄託契約は完成物件(41条の2)でしか使えません。

    問6. 宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約において、契約不適合責任の通知期間を「引渡しの日から1年」とする特約を定めた場合、この特約は無効となり、通知期間は引渡しの日から2年となる。

    答えを見る 答えは誤りです。前半は正しく、後半が誤っています。40条1項は、民法566条に規定する期間について「その目的物の**引渡しの日から二年以上**となる特約をする場合を除き」、民法566条より買主に不利となる特約をしてはならないと定めています。「引渡しの日から1年」は2年に足りないため買主に不利な特約にあたり、2項により**無効**です。しかし無効になった結果は、特約がなかったことになるので**民法566条の原則に戻ります**。すなわち買主が不適合を知った時から1年以内に通知すれば足ります。「引渡しの日から2年になる」のではありません。なお、40条が対象とするのは種類または品質に関する不適合で、数量に関する不適合には民法566条の適用自体がありません。

    まとめ

    • 宅建業法32条から43条までは、取引の時間順に並んでいます。32・33・34条が広告、34条の2が媒介契約、35条が重要事項説明、36条が契約締結時期、37条が書面、38・39条が契約内容、41条・41条の2が金銭の受領、40条が引渡し後です。番号順が時間順だと知っていれば、条文番号と場面を相互に引き出せます。例外は37条の2で、番号は37条の後ですが場面は申込みです。

    • 同じ制限でも広告と契約で対象が違います。工事完了前の制限は、33条の広告制限が「売買その他の業務に関する広告」で貸借を含むのに対し、36条の契約制限は売買・交換だけです。媒介契約についても、34条の2は売買・交換の媒介にしか適用されず、貸借の媒介には書面の作成交付義務がありません。どの取引類型が対象かを条文ごとに確認することが要ります。

    • 二つの書面は「誰に・いつ・誰が何をするか」で分かれます。35条書面は取得または賃借しようとする者に、契約が成立するまでの間に、宅建士が宅建士証を提示して説明し記名します(35条1項・4項・5項)。37条書面は媒介なら各当事者に、契約成立後遅滞なく交付し、宅建士は記名するだけで説明義務はありません(37条1項・3項)。37条書面では引渡しの時期と移転登記の申請の時期が必要的記載事項です。

    • 8種制限は売主が宅建業者で買主が宅建業者でない場合にだけ働きます(78条2項、各条の「自ら売主となる」)。手付の上限10分の2と解約手付のみなし(39条)、損害賠償額の予定等の合算10分の2で超過部分のみ無効(38条)、未完成5パーセント・完成10パーセントの保全措置(41条・41条の2)、引渡しから2年以上の特約だけを認める担保責任の制限(40条)、そしてクーリング・オフ(37条の2)。媒介や代理で関与しているだけでは働きません。

    • 引渡しが危険の移転点です。民法567条1項により、引渡し後に双方の責めに帰することができない事由で滅失・損傷しても、買主は代金の支払を拒めません。契約不適合の通知期間は民法566条により知った時から1年で、宅建業法40条が認める特約は引渡しの日から2年以上とするものだけ。無効になれば民法の原則に戻ります。

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    宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。

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