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賃貸仲介の実務|宅建業法が貸借をどう規律するか

キャリア・試験情報 読了 約29分

賃貸仲介の業務を宅建業法の条文に対応させて解説。媒介契約の規制が貸借に及ばない理由、報酬が双方合計で借賃1月分になる構造、35条の説明事項が絞られる範囲までを条文根拠つきで整理します。

目次

    この記事は、不動産の賃貸仲介という業務が、宅地建物取引業法のどの規制の下で動いているのかを条文に対応させて読み解くものです。宅建士という資格が何をする資格かという役割の側は宅建士の仕事内容に、業務の期限と順序の側は宅建士の1日のスケジュールにまとめてあります。賃貸借契約そのものの中身、つまり民法と借地借家法が定める実体的なルールは賃貸借契約の注意点が扱うので、この記事は宅建業法の側に絞ります。

    先に結論を述べます。賃貸仲介は売買仲介の縮小版ではありません。取引額が小さいから規制が緩い、という関係にもなっていません。宅建業法の適用のされ方が、三つの点で構造的に違います。

    第一に、媒介契約の規制が貸借には及びません。34条の2は売買・交換の媒介契約についての規定で、貸借の媒介契約には適用されません。書面の作成・交付義務も、専任・専属専任という類型も、指定流通機構への登録義務も、貸借にはありません。

    第二に、報酬の枠の立ち方が違います。売買の媒介が「依頼者の一方につき」枠を立てるのに対し、貸借の媒介は最初から「依頼者の双方から受ける合計額」で枠が立ちます。だから貸借では代理でも枠が広がりません。

    第三に、35条の説明事項が絞られます。借主は所有者にならないため、所有者としての負担に関わる項目が落ち、そのかわり貸借に固有の項目が加わります。

    この三つが、賃貸仲介という業務の形を決めています。以下、順に条文で確認していきます。なお、この記事では年収や資格手当の金額を扱いません。宅建士の年収を示す統計が存在しないためで、その理由と資格が賃金に反映される経路は宅建士の年収にまとめてあります。

    賃貸仲介は売買仲介の縮小版ではない

    「取引額が小さいから簡単」という理解が外れている理由

    賃貸仲介と売買仲介を比べるとき、取引額の大小や所要期間の長短が持ち出されることがあります。たしかに一件あたりの金額は違いますし、来店から契約まで数日で完結することもあります。

    しかし、それは業務の負荷の話であって、適用される規制の話ではありません。規制の面で見ると、貸借は「緩い」のではなく「別の形をしている」というのが正確です。媒介契約の規制がない一方で、報酬の枠は売買より窮屈です。説明事項は減る一方で、貸借にしかない項目が加わります。

    この「別の形」を把握しないまま売買の知識をそのまま当てはめると、実務では違反を、試験では失点を生みます。宅建業法の出題が売買と貸借の対比を繰り返し問うのは、この構造的な違いがあるからです。

    三つの違いはすべて条文に書いてある

    先に挙げた三つの違いは、いずれも条文の書きぶりから直接読み取れます。34条の2が「売買又は交換の媒介の契約」と書いていること。報酬告示の第四が「依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計額」と書いていること。施行令3条3項や施行規則16条の2の柱書が、貸借について適用範囲を絞っていること。

    結論だけを覚えるのではなく、条文がそう書いてあるという事実まで押さえてください。書きぶりを覚えていれば、少し表現を変えて出題されても判断できます。

    自ら貸主となる行為は、そもそも宅建業ではない

    賃貸に関わる規制を考える前提として、確認しておくべきことがあります。自ら貸主となる行為は、宅地建物取引業に当たりません。

    宅建業法2条2号は、宅地建物取引業を「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」と定義しています。前半の「自ら行う」類型には売買と交換しか入っておらず、貸借が入っていません。後半の代理・媒介の類型には貸借が入っています。

    したがって、自分が所有するアパートを自分で貸す行為は、何棟持っていても、どれだけ反復継続していても宅建業ではなく、免許は要りません。転貸、いわゆるサブリースも自ら貸借なので同じです。規制がかかるのは、他人の貸借を代理または媒介する場合だけです。この判定の手順は宅建業に当たる行為で詳しく扱っています。

    この線引きは、賃貸仲介の実務でも意味を持ちます。取引の相手方である貸主が宅建業者とは限らず、多くの場合は免許を持たない個人の家主だということです。宅建業法上の義務を負っているのは、媒介をしている自社の側だという前提で動くことになります。

    媒介契約の規制が貸借には及ばない

    三つの違いのうち、最も見落とされやすいのがこれです。

    34条の2は「売買又は交換の媒介の契約」の規定である

    宅建業法34条の2第1項は、宅地建物取引業者が「宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約」を締結したときに、遅滞なく所定の事項を記載した書面を作成し、記名して依頼者に交付しなければならないと定めています。

    条文が対象を売買と交換に限定しています。貸借の媒介契約は、この条文の適用対象ではありません。ここから、貸借について次のことがすべて言えます。

    書面の作成・交付義務がありません。貸主から入居者募集の依頼を受けても、宅建業法上、媒介契約書を作成して交付する義務は生じません。実務では書面を交わすのが通常ですが、それは宅建業法が要求しているからではなく、条件を明確にしておくためです。

    専任媒介・専属専任媒介という類型がありません。この三類型は34条の2が売買・交換について設けた枠組みです。貸借の媒介で「専任で預かる」という言い方をすることはありますが、それは当事者間の取り決めであって、宅建業法上の専任媒介契約ではありません。

    業務処理状況の報告義務がありません。専任媒介の2週間に1回以上、専属専任媒介の1週間に1回以上という報告義務は、34条の2に基づくものです。貸借にはこの義務がありません。

    指定流通機構への登録義務がありません。専任媒介の7日以内、専属専任媒介の5日以内という登録期限も、34条の2に基づくものです。貸借の物件を指定流通機構に登録することは実務上ありますが、義務ではありません。

    有効期間の制限もありません。専任媒介契約の3か月という上限は、貸借には及びません。

    媒介契約の三類型そのものの規律は媒介契約の3類型、指定流通機構の仕組みはレインズとはで扱っています。

    なぜ貸借には媒介契約の規制がないのか

    理由を考えておくと忘れません。34条の2の規制は、依頼者を長期間拘束する契約から依頼者を保護するためのものです。売買では、専任媒介を結べば他社に頼めなくなり、その状態が数か月続きます。物件が売れなければ依頼者の資産は動きません。だから期間を区切り、報告を義務づけ、書面で条件を明示させる必要があります。

    貸借はこの構造になりません。募集の依頼は複数社に同時に出すのが通常で、依頼者を長期に拘束する仕組みが働きにくい。保護すべき状況が売買ほど強く生じないため、規制が置かれていないと理解できます。

    出題ではここがすり替えられる

    この論点は、貸借の媒介に売買の規制を当てはめる形で問われます。「宅地建物取引業者は、建物の貸借の媒介契約を締結したときは、遅滞なく34条の2第1項に規定する書面を作成して依頼者に交付しなければならない」という選択肢は誤りです。

    同様に、「建物の貸借について専任媒介契約を締結したときは、2週間に1回以上、業務の処理状況を報告しなければならない」も誤りになります。貸借にはそもそも専任媒介契約という類型がないからです。

    逆方向の引っかけとして、宅地の貸借であれば適用があるかのように書く形も考えられます。34条の2が限定しているのは「売買又は交換」という取引の種類であって、対象物が宅地か建物かではありません。宅地の貸借も建物の貸借も、等しく適用対象外です。

    報酬の枠は「双方合計で借賃1月分」

    二つ目の違いが報酬です。ここは実務でも試験でも中心になります。

    46条は金額を法律に書いていない

    宅建業法46条1項は、宅地建物取引業者が売買、交換または貸借の代理または媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる、と定めています。法律自身は金額を書かず、告示に委任しています。

    そして46条2項が、その定めた額を超えて報酬を受けてはならないとしています。金額の中身は告示(昭和45年建設省告示第1552号、令和6年7月1日施行の改正が現行)にあり、第二・第三が売買・交換、第四・第五が貸借を扱います。

    貸借の媒介は「双方から受ける合計額」で枠が立つ

    告示第四は、貸借の媒介について、依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計額は、借賃の一月分の1.1倍に相当する金額以内とすると定めます。

    ここが売買との構造的な違いです。売買・交換の媒介(第二)は「依頼者の一方につき」枠を立てるので、売主からと買主からで枠が二つ立ちます。これに対し貸借の媒介は、最初から一つの枠を双方で分け合う形になっています。

    したがって、貸主から0.55倍を受けたなら、借主から受けられるのは残りの0.55倍までです。貸主から1.1倍を受けたなら、借主からは受けられません。合計が枠を超えないかぎり、内訳の配分は原則として自由です。

    なお、基礎となる借賃には消費税等相当額を含めず、告示の率のほうが税込みの数値です。基礎は税抜き、上限は税込みという組み合わせで覚えてください。

    居住用建物は一方から0.55倍が原則

    第四には続きがあります。居住の用に供する建物の賃貸借の媒介について、依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の0.55倍に相当する金額以内とする、というものです。

    押さえるべき点が三つあります。

    第一に、この制限は居住用建物にだけかかります。宅地の貸借や事業用建物の貸借では、双方合計1.1倍という枠の中であれば、一方からいくら受けるかの内訳に制限はありません。

    第二に、承諾の時期が条文で限定されています。「当該媒介の依頼を受けるに当たって」承諾を得ている場合を除く、と書かれているので、承諾は媒介の依頼を受ける段階で得ていなければなりません。契約が成立した後に承諾を求めても、0.55倍を超えて受け取る根拠にはなりません。ここは告示の文言そのものが時期を画しているので、正確に覚える必要があります。

    第三に、承諾があっても合計の枠は動きません。承諾によって一方から1.1倍まで受けられるようになりますが、その場合は他方から受けられなくなります。あくまで内訳の配分が変わるだけです。

    貸借は代理でも枠が広がらない

    告示第五は、貸借の代理について、依頼者から受けることのできる報酬の額は借賃の一月分の1.1倍に相当する金額以内とすると定めます。そしてただし書により、業者が当該貸借の相手方からも報酬を受けるときは、その報酬の額と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額も1.1倍を超えてはなりません。

    売買・交換の代理は媒介の二倍の枠になりますが、貸借の代理は二倍になりません。貸借の媒介の双方合計と同じ1.1倍のままです。

    この非対称にも理由があります。売買の代理が二倍になるのは、媒介の枠が「一方につき」立つものだからです。貸借の代理が二倍にならないのは、媒介の枠がもともと双方合計だからです。枠の立ち方から代理の扱いが導けます。

    権利金の特例は居住用建物に適用されない

    告示第六は、宅地または建物(居住の用に供する建物を除く)の賃貸借で権利金の授受があるものの代理または媒介について、その権利金の額を売買に係る代金の額とみなして第二または第三により算出できると定めます。

    権利金とは、名義のいかんを問わず、権利設定の対価として支払われる金銭であって返還されないものをいいます。返還される敷金は含まれません。

    この特例で最も注意すべきなのが、適用対象から居住用建物が外れている点です。居住用建物の賃貸借では、権利金の授受があっても第四の枠のままです。出題では「居住用建物の賃貸借において権利金の授受があるときは、権利金の額を代金とみなして計算できる」という形で誤りにされます。

    もう一点、比較するときに単位を揃える必要があります。第四の借賃ベースの枠は「双方から受ける合計額」であるのに対し、第六により第二を適用した権利金ベースの額は「依頼者の一方につき」の額です。軸が違うものをそのまま並べると結論を誤ります。具体的な計算手順は報酬額の制限報酬額計算のパターン別攻略に譲ります。

    長期の空家等の特例(告示第九・第十)

    令和6年7月1日施行の改正で、貸借についての特例が新設されました。比較的新しい規定なので、改正前の教材には載っていないことがあります。

    長期の空家等とは、現に長期間にわたって居住の用、事業の用その他の用途に供されておらず、または将来にわたりこれらの用途に供される見込みがない宅地または建物をいいます。

    第九は、その媒介について、依頼者の双方から受ける報酬の合計額を、当該媒介に要する費用を勘案して、借賃の一月分の2.2倍に相当する金額を超えない範囲内まで拡大できると定めます。ただし条件があり、借主である依頼者から受ける報酬の額が借賃の一月分の1.1倍(居住の用に供する長期の空家等にあっては、媒介の依頼を受けるに当たって借主の承諾を得ている場合を除き0.55倍)に相当する金額以内であることが必要です。第十が代理についての特例で、こちらも2.2倍以内とされています。

    枠が広がるのは合計額であって、借主から受けられる額は原則どおりに据え置かれているという構造です。実質的に増える余地は貸主の側にあります。空き家の掘り起こしには通常より現地調査等の費用がかかるため、その費用を報酬に反映できるようにした趣旨です。

    なお、名前の似た低廉な空家等の特例(第七・第八)は、代金が800万円以下の売買・交換についての特例で、貸借には適用されません。長期の空家等が貸借、低廉な空家等が売買、と対象を分けて覚えてください。

    報酬以外に受け取れるもの

    告示第十一は、業者は第二から第十までの規定によるほか報酬を受けることができないと定めます。したがって、書類作成費、案内料、契約立会料といった名目で別途請求することはできません。

    例外として認められているのは、依頼者の依頼によって行う広告の料金など、限られた場合です。「依頼者の依頼によって」という要件があるので、業者の判断で出した広告の費用を請求することはできません。賃貸仲介では、鍵交換費用や室内消毒費用といった名目の金銭が問題になることがありますが、これらは報酬とは別の実費または貸主側の費用であり、報酬規制の枠内で処理してよいものではありません。

    賃貸の重要事項説明で何が落ち、何が加わるか

    三つ目の違いが35条です。詳細は賃貸の重要事項説明にまとめてあるので、ここでは賃貸仲介の業務という観点から骨格を押さえます。

    借主は所有者にならない、という一本の理由

    貸借の説明事項が売買と違うのは、借主が所有者にならないからです。所有者としての負担や資産価値に関わる情報は判断材料にならず、住む人として困る情報だけが必要になる。この一本の理由づけが、落ちる項目と残る項目の振り分けをすべて説明します。

    建物の貸借で落ちる項目

    法35条1項3号の私道に関する負担は、条文自体が「建物の貸借の契約以外のもの」と書いて外しています。宅地の貸借では必要で、建物の貸借だけが外れる点に注意が必要です。

    取引条件の側では、手付金等の保全措置の概要(10号)、金銭の貸借のあっせん(12号)、契約不適合責任の履行に関する措置(13号)が落ちます。いずれも代金の授受を前提とした項目で、借賃しか動かない貸借では働きません。

    既存建物の書類の保存状況(6号の2ロ)も、施行規則16条の2の3が対象を「売買又は交換の契約に係る住宅に関する書類」と定めているため、貸借では不要です。一方、同じ6号の2でも、イの建物状況調査の結果の概要は貸借でも説明対象です。同じ号の中でイとロで結論が分かれます。

    法令上の制限は範囲が絞られる

    法35条1項2号の法令に基づく制限は、施行令3条3項により、貸借の場合には対象となる法令の規定が大幅に絞られます。借主にとって建蔽率や容積率は関係がないためで、借主自身の使用に影響する一部の制限だけが残ります。

    「貸借でも建築基準法の建蔽率の制限を説明しなければならない」という選択肢は誤りです。ただし説明義務が完全になくなるわけではないので、「貸借では法令上の制限を説明する必要がない」も同じく誤りになります。

    貸借に固有の追加事項が加わる

    落ちる一方で、加わる項目があります。法35条1項14号を受けた施行規則16条の4の3のうち、7号から13号までが貸借の場合の追加事項です。台所・浴室・便所などの設備の整備状況、契約期間および更新に関する事項、定期借地権や定期建物賃貸借であればその旨、用途その他の利用の制限、敷金等の精算に関する事項、管理の委託先、建物の取壊しに関する事項といった内容です。

    柱書により、宅地の貸借には8号から13号まで、建物の貸借には7号から12号までが適用されます。7号の設備の整備状況が建物だけ、13号の建物の取壊しに関する事項が宅地だけという振り分けになっています。敷金の扱いそのものは敷金と礼金で扱っています。

    区分所有建物の貸借は3号と8号だけ

    対象が分譲マンションなど区分所有建物である場合、法35条1項6号を受けた施行規則16条の2が追加事項を定めています。同条は10の号を置いていますが、その柱書が「建物の貸借の契約にあつては第三号及び第八号に掲げるもの」と定めているため、貸借で必要になるのは2つだけです。

    残るのは、3号の専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めと、8号の一棟の建物およびその敷地の管理の委託先の氏名・住所です。ペットを飼えるかどうかは借主の生活に直結し、不具合や騒音の相談先も借主に必要だからです。逆に、敷地の権利が所有権か借地権か、修繕積立金がいくら貯まっているか、管理費の額がいくらかは、区分所有者にならない借主の判断材料になりません。

    ここで一点、改正に注意が必要です。施行規則16条の2には第9号が新設され、令和8年(2026年)4月1日に施行されました。管理者等が管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者である場合、いわゆる第三者管理方式が採られている場合に、その旨を説明させる規定です。これに伴い、従来9号だった維持修繕の実施状況の記録は10号に繰り下がり、追加事項は9項目から10項目になりました。

    ただし、柱書の「第三号及び第八号」という部分は改正されていません。したがって、貸借で必要になるのが2つだけだという結論は改正の前後で変わっていません。新設された9号は売買・交換でのみ説明対象になります。各号の中身は区分所有建物の重要事項説明で確認してください。

    定期建物賃貸借の説明は35条とは別にもう一つある

    賃貸仲介で最も混同が起きるのがここです。定期建物賃貸借については、宅建業法35条の重要事項説明とはまったく別に、借地借家法38条が定める説明義務があります。

    建物の賃貸人は、あらかじめ賃借人に対し、この賃貸借は契約の更新がなく期間の満了により終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません(借地借家法38条3項)。最高裁は、この書面が契約書とは別個独立の書面でなければならないと判断しています(最判平成24年9月13日)。

    二つは根拠も義務者も効果も違います。35条の義務者は宅建業者ですが、38条の義務者は賃貸人です。そして効果が決定的に違い、38条の説明を怠ると更新がない旨の定めそのものが無効となり(同条5項)、普通の建物賃貸借として扱われます。35条違反は業者に対する監督処分や罰則の問題であって、契約の内容が書き換わるわけではありません。制度の詳細は定期借家契約を参照してください。

    37条書面の貸借における扱い

    契約が成立したあとの書面についても、貸借には固有の扱いがあります。

    貸借の37条書面は37条2項が定める

    37条1項が売買・交換について、37条2項が貸借について、それぞれ交付すべき書面の記載事項を定めています。契約が成立したときに遅滞なく、契約の各当事者に交付する点は共通で、宅建士の記名が必要な点(37条3項)も共通です。説明義務がない点も共通で、記名だけが宅建士の仕事です。

    貸借では落ちる記載事項

    37条書面の記載事項のうち、貸借では次のものが落ちます。移転登記の申請の時期、担保責任やその履行に関する措置の内容、そして代金・交換差金についての金銭の貸借のあっせんに関する定めがあるときのその内容と不成立時の措置です。

    いずれも所有権の移転を前提とした項目です。貸借では所有権が動かないため、登記も担保責任もローンも問題になりません。記載事項の全体像は37条書面の記載事項、35条書面との対比は35条書面と37条書面の横断整理にまとめてあります。

    実務では契約書が37条書面を兼ねる

    賃貸借契約書に37条書面としての記載事項をすべて盛り込み、契約書そのものを37条書面として交付する形が一般的です。この場合、契約の場で署名し、そのまま交付することになるため、「遅滞なく」という要件は事実上その場で満たされます。

    注意すべきは、貸主にも交付が必要だという点です。37条書面は契約の各当事者に交付するものなので、借主だけに渡して終わりにはできません。35条書面が借主にだけ交付されるのと対照的です。

    業務の流れを条文に対応させる

    ここまでの規制が、日々の業務のどこに現れるかを追います。

    物件情報の収集と広告

    貸主から募集の依頼を受け、物件情報を社内データベースやポータルサイトに掲載します。この段階でかかるのが広告の規制です。

    32条の誇大広告等の禁止は、著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく優良もしくは有利であると人を誤認させるような表示を禁じます。違反の成立に実害を要しません。問い合わせがなくても、契約に至らなくても、誤認させる広告をした時点で違反です。

    賃貸仲介で特に問題になるのが、成約済みの物件を掲載し続ける、いわゆるおとり広告です。実際には存在しない物件や取引する意思のない物件の広告もこれに含まれます。物件情報の更新が日課になっているのは、営業上の理由だけでなくこの規制があるためです。

    33条の広告開始時期の制限は、未完成物件について、開発許可や建築確認などの処分があった後でなければ広告できないとするものです。この制限は貸借の広告にも及びます。新築物件の先行募集を計画するときは、確認済証が下りる日が広告開始日を決めることになります。広告規制の全体像は広告に関する規制で扱っています。

    問い合わせを受けたら取引態様を明示する

    34条は取引態様の明示義務を定めています。広告をするとき(1項)と、注文を受けたとき(2項)の2回です。自己が貸主となるのか、代理なのか、媒介なのかを明示します。

    広告で明示していても、注文を受けた際に改めて明示する必要があります。来店した顧客に物件を紹介する場面が、この2回目にあたります。詳細は取引態様の明示義務を参照してください。

    案内と申込みの受付

    物件の案内そのものは宅建士の独占業務ではなく、資格のない従業者でも行えます。入居申込書の受付も同様です。

    ここで宅建業法上の論点になるのが、申込みの際に金銭を預かる場合の扱いです。申込証拠金や預り金を受領するときは、その保全措置を講ずるかどうか、講ずる場合はその概要が35条1項11号の説明事項になります。施行規則16条の3は、受領する額が50万円未満のものなどを保全措置の対象から除外しています。

    そして、申込みを撤回した顧客に対して預り金の返還を拒む行為は、47条の2および施行規則が定める禁止行為に当たります。受領した名目にかかわらず、申込みの撤回があれば返還しなければなりません。

    重要事項説明から契約、そして帳簿へ

    契約が成立するまでの間に、宅建士が宅建士証を提示して35条書面を交付し、説明します。宅建士証の提示は請求がなくても必要で(35条4項)、違反には10万円以下の過料があります(86条)。説明する宅建士は専任である必要はありません。

    契約が成立したら、遅滞なく37条書面を契約の各当事者に交付します。そして取引があったその日のうちに、事務所ごとに備えた帳簿に記載しなければなりません(49条)。条文が「取引のあつたつど」と書いているため、月末にまとめて記載する運用は認められません。

    契約後の窓口は誰かを確認しておく

    賃貸仲介は契約成立で業務が終わりますが、借主にとってはそこから居住が始まります。入居後の不具合や更新の手続の窓口が、仲介した自社なのか、管理会社なのか、貸主本人なのかは、契約時点で借主に伝わっている必要があります。

    35条の説明事項としては、施行規則16条の4の3が定める管理の委託先が対応し、区分所有建物であれば16条の2第8号も加わります。条文上の根拠が違っても、借主に伝わるべき内容は同じです。

    賃貸管理業との境界

    賃貸仲介の隣にあるのが賃貸管理業です。適用される法律が違うので、線を引いておきます。

    管理受託は宅建業法ではなく賃貸住宅管理業法の規律

    賃貸住宅の管理業務を受託する事業は、宅建業法ではなく賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の規律を受けます。管理戸数が一定数以上の事業者は国土交通大臣の登録を受ける必要があり、営業所または事務所ごとに業務管理者を置かなければなりません。

    業務管理者になる経路のひとつが、宅地建物取引士であることに加えて指定の講習を修了することです。宅建士資格が管理分野でも入口になっている構造で、賃貸仲介と管理を兼営する会社では両方の規律が同時にかかります。

    同法にも管理受託契約の締結前の重要事項説明があり、宅建業法35条の重要事項説明とは別の制度です。説明の相手方も、宅建業法35条が借主であるのに対し、賃貸住宅管理業法のほうは委託者である貸主です。相手方が違うという一点で区別できます。管理業の全体像は不動産管理会社の仕事内容、業態の比較は賃貸管理会社の比較で扱っています。

    サブリースは自ら貸借だが、別の規制がかかる

    サブリース、すなわち特定転貸事業については注意が要ります。前述のとおり自ら貸借は宅建業に当たらないため、宅建業の免許は不要です。しかし規制がまったくないわけではありません。

    賃貸住宅管理業法は特定転貸事業者について、誇大広告等の禁止、不当な勧誘等の禁止、契約締結前の重要事項説明を義務づけています。宅建業法の枠外で、別系統の規制が用意されているということです。「免許が要らない=規制がない」と読み替えないでください。

    賃貸仲介で宅建資格がどう効くか

    独占業務が取引の完了要件になっている

    賃貸仲介の業務のうち、宅建士でなければできないのは、重要事項の説明、35条書面への記名、37条書面への記名の三つです。物件の案内も、条件のヒアリングも、申込みの受付も、資格のない従業者が行えます。

    しかし、この三つがなければ取引を完了できません。媒介として賃貸借契約を成立させるには35条の説明が必須で、それができるのは宅建士だけです。したがって、宅建士が一人もいない状態では店舗が機能しません。独占業務の整理は宅建士の独占業務を参照してください。

    あわせて、事務所ごとに業務に従事する者5人につき1人以上の成年者である専任の宅建士を置く義務があります(31条の3第1項、施行規則15条の5の3)。契約の締結や申込みの受付を行う案内所等については1人以上です。賃貸の繁忙期に臨時の案内所を設ける場合、この設置義務と、業務開始の10日前までの届出(50条2項)が問題になります。

    賃金への反映は勤務先の制度による

    資格が賃金にどう反映されるかについて、この記事では金額を示しません。宅建士の年収を示す統計が存在しないからです。厚生労働省の賃金構造基本統計調査には「宅地建物取引士」という職業区分がなく、集計されているのは職業や産業であって資格ではありません。

    言えるのは、資格が賃金に届く経路が三つあるということだけです。資格手当、有資格者を要件とするポジションへの異動・昇格、そして転職時の条件交渉の材料。いずれも勤務先の賃金規程や人事制度に依存します。資格手当は法律上の義務ではなく、各社が就業規則で任意に定めるものです。この構造は宅建士の年収で詳しく分解しています。

    賃貸から始めるという経路

    賃貸仲介は、一件あたりの期間が短く件数を多く扱うため、35条書面の作成と説明を短期間に反復できます。条文の要件が実際の書面のどこに対応するかを体で覚える機会が多い、という意味では、宅建業法の理解が定着しやすい環境です。

    そこから売買仲介や管理業へ移る経路も一般的ですが、必要になる知識は連続していません。売買では調査項目が大幅に増え、8種制限や手付金等の保全といった、貸借では働かない規律が加わります。キャリアの選択肢は宅建士の転職先、営業職としての実際は不動産営業の仕事内容で扱っています。

    試験での出題ポイント

    貸借に関する規制は、売買との対比で問われます。狙われ方には型があります。

    売買の規制を貸借に持ち込む

    最も多い型です。媒介契約書の交付義務、専任媒介の報告義務、指定流通機構への登録義務、有効期間3か月の制限。これらはすべて34条の2に基づくもので、貸借には一つも適用されません。

    判定の手順を固定してください。34条の2が出てきたら、まず「これは売買か交換か」を確認する。貸借であれば、その時点で34条の2の話は全部落ちます。

    貸借の代理を二倍にする

    「貸借の代理の報酬の上限は、媒介の場合の二倍である」は誤りです。二倍になるのは売買・交換の代理だけで、貸借の代理は媒介の双方合計と同じ1.1倍です。

    承諾の時期をずらす

    「居住用建物の賃貸借の媒介において、契約成立後に依頼者の承諾を得れば、当該依頼者から借賃の一月分の1.1倍に相当する額を受けることができる」は誤りです。告示第四は「当該媒介の依頼を受けるに当たって」と時期を限定しています。事後の承諾では根拠になりません。

    権利金の特例を居住用建物に適用する

    「居住用建物の賃貸借において権利金の授受があるときは、権利金の額を代金とみなして計算できる」は誤りです。告示第六は「宅地又は建物(居住の用に供する建物を除く)」と明記しています。

    二つの空家等の特例を入れ替える

    長期の空家等が貸借、低廉な空家等が売買・交換です。「低廉な空家等の貸借の媒介については、借賃の一月分の2.2倍まで受けられる」という書き方は、名称と対象が入れ替わっているので誤りになります。

    区分所有建物の貸借で項目を増やす

    「区分所有建物の貸借の媒介において、修繕積立金に関する規約の定めがあるときはその内容を説明しなければならない」は誤りです。施行規則16条の2の柱書により、建物の貸借で必要なのは3号と8号だけです。

    改正を踏まえた出題として、「維持修繕の実施状況の記録は施行規則16条の2第9号に定められている」という形も考えられます。令和8年4月1日以降は10号なので誤りです。ただし、この改正は貸借の範囲には影響しません。

    35条と借地借家法38条を混ぜる

    「定期建物賃貸借について、宅地建物取引業者が35条書面に更新がない旨を記載して説明すれば、借地借家法38条の説明をしたことになる」という選択肢は誤りです。義務者も書面も別で、38条の説明を怠れば更新がない旨の定めが無効になります。

    自ら貸主に免許を要求する

    「自らが所有するアパートを不特定多数に反復継続して賃貸する者は、宅地建物取引業の免許を受けなければならない」は誤りです。2条2号の前半に貸借が入っていないためで、規模や反復継続性は結論を変えません。

    覚え方・整理の仕方

    三つの違いを「契約・報酬・説明」で覚える

    貸借が売買と違うのは、媒介契約の規制、報酬の枠、説明事項の三点。この三語を持っておけば、貸借の問題を見たときに確認すべき箇所が決まります。

    34条の2は「売買又は交換」と音で覚える

    条文の書き出しをそのまま覚えるのが最短です。「売買又は交換の媒介の契約」。貸借が入っていないという事実を、条文の音として持っておけば、派生する結論(書面、類型、報告、登録、期間)はすべて自動的に落ちます。

    枠の立ち方から代理の扱いを導く

    売買の媒介は「一方につき」、貸借の媒介は「双方合計」。だから売買の代理は二倍になり、貸借の代理はならない。代理の扱いを丸暗記せず、媒介の枠の立ち方から導いてください。

    数字は1.1・0.55・2.2の三つ

    貸借の報酬で覚える数字は三つです。双方合計の原則が借賃一月分の1.1倍。居住用建物で一方から受ける原則が0.55倍。長期の空家等の特例が2.2倍。0.55は1.1の半分、2.2は1.1の倍と関係づけると、単独で覚えるより崩れません。

    特例は「対象」で区別する

    権利金は居住用建物を除く貸借、低廉な空家等は売買・交換、長期の空家等は貸借。三つの特例は名前が似ているので、効果ではなく適用対象で区別してください。権利金は貸借を売買に読み替える特例、低廉な空家等は売買の上限を上げる特例、長期の空家等は貸借の上限を上げる特例です。

    貸借の35条は「所有者にならない」で振り分ける

    落ちる項目も残る項目も、借主が所有者にならないという一点から導けます。私道負担、手付金等の保全、ローンのあっせん、契約不適合責任の措置。いずれも所有権の移転や代金の授受を前提とした項目です。区分所有建物で残るのが用途制限と管理委託先の2つだけなのも、同じ理由です。

    「自ら貸借」は条文の書き分けで覚える

    2条2号の前半には売買と交換しかなく、後半には売買・交換・貸借が入っている。この書き分けが「自ら貸借は宅建業ではない」の根拠です。結論だけでなく、条文がそう書き分けているという事実まで押さえておけば揺らぎません。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 宅地建物取引業者は、建物の貸借の媒介契約を締結したときは、遅滞なく、宅建業法34条の2第1項に規定する書面を作成して依頼者に交付しなければならない。(○か×か)

    答えを見る ×:34条の2第1項は「宅地又は建物の**売買又は交換**の媒介の契約」を締結したときの義務を定めており、貸借の媒介契約には適用されません。したがって書面の作成・交付義務はなく、専任媒介・専属専任媒介という類型も、業務処理状況の報告義務も、指定流通機構への登録義務も、有効期間3か月の制限も、貸借には及びません。これは対象物が宅地か建物かの問題ではなく取引の種類の問題なので、宅地の貸借でも結論は同じです。実務では条件を明確にするため書面を交わすのが通常ですが、それは宅建業法が要求しているからではありません。

    Q2. 居住用建物の賃貸借の媒介において、宅地建物取引業者が依頼者の双方から受けることのできる報酬の合計額は、借賃の一月分の1.1倍に相当する金額以内である。(○か×か)

    答えを見る ○:報酬告示第四は、貸借の媒介について依頼者の双方から受ける報酬の**合計額**の上限を借賃の一月分の1.1倍と定めています。売買・交換の媒介が「依頼者の一方につき」枠を立てるのと違い、貸借は最初から一つの枠を双方で分け合う構造です。なお居住用建物については、媒介の依頼を受けるに当たって依頼者の承諾を得ている場合を除き、一方から受けられるのは0.55倍までという内訳の制限が加わります。承諾があっても合計1.1倍という枠自体は動きません。基礎となる借賃は税抜き、告示の率は税込みである点もあわせて押さえてください。

    Q3. 宅地建物取引業者が貸借の代理を行う場合、依頼者から受けることのできる報酬の額は、貸借の媒介における双方合計額の二倍に相当する金額以内である。(○か×か)

    答えを見る ×:告示第五は、貸借の代理について借賃の一月分の**1.1倍**以内と定めており、媒介の双方合計と同じ枠です。二倍になるのは売買・交換の代理(第三)だけです。理由は枠の立ち方にあります。売買の媒介は「依頼者の一方につき」枠が立つため、代理ではその二倍という設計になじみますが、貸借の媒介はもともと双方合計で一つの枠なので、代理でも広がりません。さらに第五のただし書により、業者が貸借の相手方からも報酬を受けるときは、その合計額も1.1倍を超えられません。

    Q4. 区分所有建物の貸借の媒介を行う場合、施行規則16条の2に定める事項のうち、一棟の建物の維持修繕の実施状況が記録されているときはその内容を、借主に説明しなければならない。(○か×か)

    答えを見る ×:施行規則16条の2の柱書は「建物の貸借の契約にあつては**第三号及び第八号**に掲げるもの」と定めており、貸借で説明が必要なのは、3号の専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めと、8号の管理の委託先の2つだけです。維持修繕の実施状況の記録はこれに含まれません。なお同条には第9号(管理者等が管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者であるときはその旨)が新設され、令和8年4月1日に施行されたため、維持修繕の実施状況の記録は9号から**10号**に繰り下がり、追加事項は全体で10項目になりました。ただし柱書の「第三号及び第八号」は改正されていないので、貸借で2つだけという結論は変わりません。

    Q5. 自らが所有する複数のアパートを、不特定多数の者に反復継続して賃貸する者は、宅地建物取引業の免許を受けなければならない。(○か×か)

    答えを見る ×:宅建業法2条2号は宅地建物取引業を「宅地若しくは建物の**売買若しくは交換**又は宅地若しくは建物の**売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介**をする行為で業として行うもの」と定義しています。自ら行う類型には売買と交換しか入っておらず、貸借が入っていません。したがって自ら貸主となる行為は、規模や反復継続性を問わず宅建業に当たらず、免許は不要です。転貸(サブリース)も自ら貸借なので同じです。ただし特定転貸事業については、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律が誇大広告等の禁止、不当な勧誘等の禁止、契約締結前の重要事項説明を義務づけており、「免許が不要=規制がない」ではありません。

    まとめ

    賃貸仲介は売買仲介の縮小版ではなく、宅建業法の適用のされ方が構造的に違う業務です。違いは三つに整理できます。

    第一に、媒介契約の規制が及びません。34条の2が対象を「売買又は交換の媒介の契約」に限定しているため、貸借には書面の作成・交付義務も、専任媒介・専属専任媒介という類型も、業務処理状況の報告義務も、指定流通機構への登録義務も、有効期間の制限もありません。依頼者を長期に拘束する構造が生じにくいためだと理解できます。

    第二に、報酬の枠の立ち方が違います。貸借の媒介は依頼者の双方から受ける合計額で枠が立ち、借賃の一月分の1.1倍が上限です(告示第四)。居住用建物では、媒介の依頼を受けるに当たって承諾を得ている場合を除き、一方から受けられるのは0.55倍まで。枠がもともと双方合計なので、代理でも二倍になりません(第五)。特例は三つあり、権利金は居住用建物を除く貸借(第六)、低廉な空家等は売買・交換(第七・第八)、長期の空家等は貸借で合計2.2倍まで(第九・第十)と、適用対象で区別します。

    第三に、35条の説明事項が絞られます。借主が所有者にならないという一点から、私道負担、手付金等の保全、ローンのあっせん、契約不適合責任の措置が落ち、法令上の制限は施行令3条3項で範囲が縮小します。かわりに施行規則16条の4の3が定める貸借固有の項目が加わります。区分所有建物では、施行規則16条の2の柱書により3号と8号の2つだけになります。同条には令和8年4月1日施行で第9号が新設され追加事項は10項目になりましたが、柱書は改正されておらず、貸借で2つだけという結論は変わりません。

    あわせて、定期建物賃貸借については借地借家法38条3項が宅建業法35条とは別の説明義務を課しており、これを怠ると更新がない旨の定めが無効になります(同条5項)。業者に対する制裁にとどまる35条違反とは効果がまったく違います。

    そして前提として、自ら貸主となる行為は宅建業に当たりません(2条2号)。規制がかかるのは他人の貸借を代理・媒介する場合だけで、サブリースには賃貸住宅管理業法という別系統の規制が用意されています。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、貸借の報酬計算、35条書面の貸借における説明事項、媒介契約の規制の適用範囲といった論点を、条文根拠つきの肢別演習で確認できます。

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