おとり広告と二重価格表示|広告の禁止行為
おとり広告の3類型、二重価格表示の5要件、特定用語の使用制限、不当な比較広告を規約の条文順に解説。掲載を続ける行為がなぜ違反になるかまで踏み込みます。
目次
不動産広告のルールのうち、「これを表示してはいけない」という禁止類型だけを取り出して深掘りする記事です。広告規制の骨格(宅地建物取引業法32条が何を対象にするか、33条の広告開始時期、34条の取引態様の明示)は広告規制に、景品表示法と公正競争規約の関係や景品類の限度額は不当景品類及び不当表示防止法に、徒歩所要時間や面積といった表示基準の数字は不動産広告の表示基準にそれぞれ置いてあります。ここでは、おとり広告・二重価格表示・特定用語・不当な比較広告という4つの禁止類型を、条文の号ごとに分解します。宅建業法の全体像は宅建業法の全体像を参照してください。
結論から書きます。禁止類型は「何が嘘か」で引くと迷いません。物件そのものが嘘なら不動産の表示に関する公正競争規約21条のおとり広告、価格が嘘なら規約20条と同施行規則12条の不当な二重価格表示、言葉に根拠がなければ規約18条2項の特定用語の使用制限、比べ方が不公正なら規約22条の不当な比較広告です。そしてこの4つのどれにも当てはまらなくても、情報が古くなったまま掲載を続ければ規約24条1項の修正義務違反になり、多くの場合そのままおとり広告の第2類型に転がり込みます。
広告規制のうち「禁止行為」だけを抜き出す
一枚の広告に二つのルールが同時にかかる
不動産の広告には、法律のルールと業界のルールが重なってかかります。法律の側は、宅建業法32条の誇大広告等の禁止と、景品表示法5条の不当表示の禁止です。業界の側は、景品表示法36条1項の認定を受けて設定された不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)です。景品表示法36条1項は、事業者または事業者団体が「内閣総理大臣及び公正取引委員会の認定を受けて」協定または規約を締結できると定めており、この認定を受けたものが表示規約です。この2階建ての構造そのものについては不当景品類及び不当表示防止法が詳しく扱っているので、本記事では立ち入りません。
本記事が扱うのは、この2階のうち「表示してはいけない類型」を並べた部分、具体的には表示規約の第8章(不当表示の禁止、20条から23条)と第9章(表示内容の変更等の公示、24条)、それに特定用語の使用基準を定めた18条2項です。表示基準(何をどう書くか)ではなく、禁止類型(何を書いてはいけないか)に絞ります。
4つの禁止類型を性格で分ける
規約が禁じる表示は、突き詰めると「どこに嘘が入っているか」で4つに分かれます。
第1に、物件が嘘であるものです。表示された物件が存在しない、あるいは存在しても取引できない、あるいは取引する気がない。これが規約21条のおとり広告です。買主が現地を見に行くまでもなく、その広告に対応する取引がそもそも成立し得ません。
第2に、価格が嘘であるものです。実際に販売する価格に、それより高い価格を並べて安く見せる。価格そのものは実在するかもしれませんが、比較の対象として使われた高い方の価格に実体がなければ、有利さの印象だけが水増しされます。これが規約20条の不当な二重価格表示で、その具体的な線引きは施行規則12条と13条にあります。
第3に、言葉に根拠がないものです。「最高級」「日本一」「完全」「激安」といった評価語は、それ自体は事実の記述ではありません。裏付ける資料を持たないまま使えば、読み手は根拠があるものとして受け取ります。これが規約18条2項の特定用語の使用制限です。
第4に、比べ方が不公正なものです。他社の物件と比較すること自体は禁止されていませんが、実証できない事項を持ち出す、重要でない事項を重要であるかのように強調する、比較対象を恣意的に選ぶ、単に相手を誹謗する。これが規約22条の不当な比較広告です。
「表示」の範囲は広い
規約4条5項は「表示」を、顧客を誘引するための手段として事業者が物件の内容または取引条件その他取引に関する事項について行う広告その他の表示と定義し、インターネットによる広告表示、チラシ・ビラ・パンフレット・説明書面・電子記録媒体(ダイレクトメール、ファクシミリを含む)および口頭による広告表示(電話によるものを含む)、ポスター・看板(デジタルサイネージを含む)・のぼり・垂れ幕、新聞紙・雑誌・放送・映写・演劇・電光による広告、物件自体による表示およびモデル・ルームによる表示を列挙しています。
ここで押さえたいのは、口頭と電話が明文で入っている点です。紙やウェブに残らない説明でも規約上は「表示」であり、禁止類型の適用を免れません。宅建業法32条も媒体を限定していないので、この点では両者の射程が揃います。したがって「口頭で伝えただけなら広告規制はかからない」という発想は成り立ちません。
おとり広告の3類型を条文の順に読む
21条は3行しかない
表示規約21条は、「事業者は、次に掲げる広告表示をしてはならない」として3つの号を置きます。第1号が「物件が存在しないため、実際には取引することができない物件に関する表示」、第2号が「物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示」、第3号が「物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示」です。
条文はこれだけです。3行しかないのに毎年のように出題されるのは、この3つが並列の列挙ではなく、段が順に降りていく構造になっているからです。第1号で問われるのは物件の存在、第2号で問われるのは取引可能性、第3号で問われるのは取引意思。前の段が満たされていることを前提に、次の段を問う形になっています。だから号の順番を入れ替えると意味が通らなくなります。
判定は3つの質問を順に投げるだけです。表示どおりの物件は存在するか。存在するとして、取引の対象になり得るか。対象になり得るとして、取引する意思があるか。どこかで「いいえ」が出た段が、そのまま該当する号になります。
条文が3行しかないぶん、各号の輪郭は別の文書が埋めています。景品表示法5条3号にもとづく指定告示「不動産のおとり広告に関する表示」(昭和55年4月12日公正取引委員会告示第14号)が、自己の供給する不動産の取引に顧客を誘引する手段として行う表示として、取引の申出に係る不動産が存在しないため実際には取引することができない不動産についての表示、取引の申出に係る不動産は存在するが実際には取引の対象となり得ない不動産についての表示、取引の申出に係る不動産は存在するが実際には取引する意思がない不動産についての表示の3つを指定しており、規約21条の3号はこれと同じ並びです。そして、この告示の各号がどういう場合を指すのかは、公正取引委員会「『不動産のおとり広告に関する表示』の運用基準」(昭和55年6月9日事務局長通達第9号)が例示しています。以下、号ごとにこの運用基準を参照しながら読んでいきます。
第1号——表示どおりの物件が存在しない
第1号は、表示された物件が存在しない場合です。前掲の運用基準は、告示第1号の「取引の申出に係る不動産が存在しない」場合の例示として、次の2つを挙げています。第1に、広告、ビラ等に表示した物件が広告、ビラ等に表示している所在地に存在しない場合。第2に、広告、ビラ等に表示している物件が実際に販売しようとする不動産とその内容、形態、取引条件等において同一性を認めがたい場合です。
前者は分かりやすい架空物件です。押さえておきたいのは後者で、運用基準は「取引条件」の違いまで第1号の射程に入れています。実在する建物の実在する部屋についての広告であっても、表示された内容・形態・取引条件が実際に販売しようとする物件のそれと食い違い、同一性を認めがたいところまでいけば、「表示どおりの物件は存在しない」と評価されるということです。
したがって、この号の境界線は「建物が実在するかどうか」ではなく「表示と実物の同一性」です。表示された賃料が実際の賃料とわずかに違うだけであれば同一性は保たれており、この場合はその条件で取引に応じる意思があるかを問う第3号や、価格について実際のものより安いと誤認されるおそれのある表示(規約23条1項)の問題になります。これに対し、実際には存在しない間取りを作り出す、別の部屋の条件を貼り付けるといった程度に至れば、同一性が失われて第1号に戻ります。「物件が実在するから第1号ではない」と機械的に処理しないでください。問うべきは、広告が指し示している物件と、事業者が実際に売ろうとしている物件が、同じものと言えるかどうかです。
第2号——存在するが取引の対象になり得ない
第2号は、物件は実在するけれども、法律上または事実上、その取引に応じることができない場合です。実務上ここに入ってくるものが最も多く、試験でもここが主戦場になります。前掲の運用基準は、告示第2号の例示として、表示した物件が売却済の不動産または処分を委託されていない他人の不動産である場合と、表示した物件に重大な瑕疵があるためそのままでは取引することができないものであることが明らかな場合(瑕疵があること及びその内容が明瞭に記載されている場合を除く)の2つを挙げています。例示の第1が「売却済」と「処分を委託されていない他人の不動産」の2つを並べている点が、この号の輪郭を決めています。
まず、既に成約した物件です。売買契約が成立した、賃貸借契約が成立した、という段階で、その物件はもはや取引の対象になり得ません。掲載を続ければ第2号に当たります。「成約直後でまだ削除作業が終わっていない」という事情は、後述する規約24条1項の修正義務が「速やかに」と書いている以上、抗弁になりません。
次に、売主が売却を撤回した物件です。契約が成立していなくても、売主が売る意思を失った時点で、その物件について取引に応じることはできなくなります。媒介契約が終了した場合も同様です。事業者自身に取引する意思があっても、権利者の側で取引ができなくなっているので、第3号ではなく第2号になります。第2号と第3号を分けるのは、意思を失ったのが誰かです。媒介契約が終了していれば、その物件はその事業者にとって「処分を委託されていない他人の不動産」であり、運用基準の例示にそのまま乗ります。
さらに、他社が扱っている物件を無断で自社の物件であるかのように掲載する場合があります。物件は実在し、売主も売る意思を持っていますが、掲載した事業者はその取引に関与する立場にありません。これも運用基準がいう「処分を委託されていない他人の不動産」で、問い合わせを受けても取引の当事者にも媒介者にもなれない以上、その事業者との関係では取引の対象になり得ず、第2号に該当します。あわせて、取引態様について事実に相違する表示として規約23条1項1号の問題にもなります。
価格が確定していない物件も、この号との関係で問題になります。売主との間で価格の合意ができていない段階で、推測にもとづく価格を付して広告すれば、その価格での取引には応じられません。ここで効いてくるのが、規約4条6項3号の予告広告の定義です。同号は予告広告の対象を「価格又は賃料が確定していないため、直ちに取引することができない物件」と書いています。規約自身が、価格未確定の物件を「直ちに取引することができない」ものとして分類しているわけです。だからこそ規約は、この状態を隠さずそのまま表示させる別の枠組み(予告広告)を用意し、価格が未定である旨または予定額の幅と、本広告まで申込みに応じない旨を書かせています。予告広告の要件そのものは不当景品類及び不当表示防止法に整理されています。
裏を返せば、この枠組みを使わずに未確定の数字を確定価格のように表示した広告は、規約が「直ちに取引することができない」と位置づけた状態を、取引可能な状態として表示していることになります。第2号の「実際には取引の対象となり得ない」という文言に、この場面がそのまま重なります。
第3号——存在し取引もできるが、その気がない
第3号は、物件が実在し、法律上も取引できる状態にあるにもかかわらず、事業者にその物件を取引する意思がない場合です。相場より著しく良い条件の物件を掲げて問い合わせを集め、来店した客には別の物件を勧める、という手法が典型例として挙げられます。
この号だけは、外形からは違反かどうかが分かりません。物件は実在し、売主も売る気があり、価格も確定している。欠けているのは事業者の内心だけです。だから第3号は独立の節を立てて扱います。
「物件が実在すればおとり広告ではない」という誤解の正体
出題で繰り返し使われるのが、「広告された物件が実在する以上、おとり広告には当たらない」という肢です。これは第1号だけを見て3類型全体を語ったもので、誤りです。物件が存在しないのは第1号だけであり、第2号と第3号では物件は実在します。しかも、前述のとおり第1号ですら「表示と実物の同一性」を問う余地を残しているので、物件の実在は3つのどの号についても決め手になりません。
同じ誤りの変形として、「おとり広告は、物件が存在しない場合に限り成立する」「実際に契約に至らなければおとり広告にならない」といった形も出ます。規約21条は3類型を並列に禁じており、契約の成立や不成立を要件にしていません。
なお、広告に載せなかった不利な事実を後で告げなかった、という不作為型の問題は、広告規制ではなく宅建業法47条1号の故意の不告知の領域に移ります。告げるべきことを告げない類型の規制は重要事項説明義務や人の死の告知に関するガイドラインの方が中心的に扱っており、広告段階の禁止類型とは働く場面が違います。
第3類型「取引する意思がない」はどう認定されるか
主観要件を客観的事実から推認する
規約21条3号は「取引する意思がない」という事業者の内心を要件にしています。しかし内心をそのまま証明することはできないので、実際には外形に現れた客観的事実の積み重ねから推認するほかありません。規約の条文自体には推認の手がかりが書かれていませんが、公正取引委員会「『不動産のおとり広告に関する表示』の運用基準」(昭和55年6月9日事務局長通達第9号)が告示第3号について挙げる2つの例示が起点になります。1つは、顧客に対し、広告、ビラ等に表示した物件に合理的な理由がないのに案内することを拒否する場合。もう1つは、表示した物件に関する難点をことさらに指摘する等して当該物件の取引に応ずることなく顧客に他の物件を勧める場合です。いずれも内心そのものではなく、取引に向かわない外形的な行動を指しています。以下では、この2つを軸に、実務で問題になる手がかりを4つに整理します。
条件設定そのものが相場から乖離している
第1の手がかりは、表示された条件が同種同等の物件の相場から著しく離れていることです。相場より著しく良い条件は、それ自体では違反ではありません。事情があって安く売る物件は現実に存在します。しかし、その条件で取引に応じる用意(売主の合意、価格の根拠、引渡しの目処)が伴っていなければ、条件は集客のためだけに置かれたと評価されやすくなります。逆にいえば、相場から離れた条件を表示するときほど、その条件で取引できることを裏付ける資料を持っておく必要が生じます。
問い合わせへの応答が定型化している
第2の手がかりは、問い合わせに対する応答です。掲載直後から、問い合わせのたびに即座に「その物件は成約済みです」と答え、別の物件を提示する運用が続いているとします。個々の応答だけを見れば嘘ではないかもしれませんが、成約済みであれば規約24条1項により速やかに修正または取りやめなければならないのに掲載が続いている、という事実と組み合わせると、その物件で取引する意思がないまま掲載を維持していると評価されます。「成約済みと答えている」という事実は、第2号の言い訳になると同時に、第3号の推認材料にもなります。
案内を拒む、案内可能日を設定しない
第3の手がかりは、内見・案内の扱いです。前掲の運用基準が第3号の例示の筆頭に置いているのが、まさに「合理的な理由がないのに案内することを拒否する場合」でした。案内の拒否は、推認材料の1つであるにとどまらず、告示の運用基準が直接に名指しした行為です。取引する意思があるなら、案内の日程を調整できるのが通常だからです。したがって、明示的に断らなくても、案内可能日をいつまでも設けない、鍵の手配ができないと言い続ける、日程調整の連絡を返さないといった状態が続けば、実質的に拒否と同じ評価を受けます。ここで問題になるのは断り方の言葉づかいではなく、案内に至らない状態が合理的な理由なく続いているという事実です。
来店後の誘導が一方向である
第4の手がかりは、来店後の行動です。運用基準の第2の例示は「表示した物件に関する難点をことさらに指摘する等して当該物件の取引に応ずることなく顧客に他の物件を勧める場合」でした。ここで効いているのは「ことさらに」と「取引に応ずることなく」という2語です。物件の短所を正直に伝えること自体は、むしろ望ましい説明です。問題になるのは、短所の指摘が当該物件の取引を進めないための手段として使われ、そのまま他の物件の勧誘に移ることです。
したがって、来店後の応対を評価するときは、広告物件について具体的な検討(内見の設定、条件の交渉、資金計画の相談)が一度でも進んだかを見ます。それがないまま初めから別の物件へ話が向き、しかもそれが特定の客に対する偶発的な対応ではなく、その広告に反応した客に一様に生じているのであれば、反復性が推認を強めます。1件の応対だけを取り出して意思の欠如を証明することはできませんが、同じ広告に対する応対のパターンが揃っていれば、広告の目的が当該物件の取引ではなく来店の誘引にあったと評価できます。
3層構造で規制されている
第3類型は、規約21条3号だけで規制されているわけではありません。宅建業法32条の解釈としても、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」が同じ3類型を誇大広告等に含めています。さらに、前掲の景品表示法5条3号の指定告示「不動産のおとり広告に関する表示」が、取引の申出に係る不動産は存在するが実際には取引する意思がない不動産についての表示を不当表示として指定しています。
この3層は名宛人が違います。表示規約が拘束するのは、規約4条4項が定める「事業者」、すなわち宅建業法3条1項の免許を受けて宅地建物取引業を営む者であって、規約25条1項に規定する公正取引協議会の構成団体に所属するものおよび規約に個別に参加するものです。これに対し、景品表示法の告示は不動産事業者一般に及びます。不動産公正取引協議会連合会「『おとり広告』の規制概要及びインターネット広告の留意事項」(おとり広告ガイドライン、2019年11月1日)も、昭和55年告示第14号について、原則として会員協議会に加盟する不動産事業者であるか否かにかかわらず不動産事業者のすべてに適用され、表示規約とは規定振りに若干の相違があるものの内容は同一である、と説明しています。そして宅建業法32条は、免許を受けた宅地建物取引業者すべてに及びます。規約に加盟していないから規約違反にならない、という主張が成り立つ場面でも、告示と業法32条は残ります。広告と実際の取引条件の食い違いから生じる紛争の形は不動産取引のトラブル事例にまとめてあります。
掲載を続ける行為が新しい表示になる——規約24条の修正義務
24条は2つの義務を置いている
表示規約24条は「表示の修正・取りやめ及び取引の変更等の公示」という見出しで、2つの義務を定めています。
1項は、事業者は、継続して物件に関する広告その他の表示をする場合において、当該広告その他の表示の内容に変更があったときは、速やかに修正し、又はその表示を取りやめなければならない、というものです。修正か取りやめか、選択できるのは方法だけで、放置という選択肢はありません。
2項は、事業者は、物件に関する広告その他の表示を行った後、やむを得ない事情により当該表示に係る物件の取引を変更し、延期し又は中止したときは、速やかにその旨を公示しなければならない、というものです。1項が「表示の内容が変わったとき」の作為義務であるのに対し、2項は「取引そのものを変更・延期・中止したとき」の公示義務です。1項は消す義務、2項は告げる義務と対にすると混ざりません。
なぜ掲載継続が新たな表示なのか
掲載開始の時点では情報が正確だった、という事情は、なぜ抗弁にならないのか。答えは規約24条1項の「継続して……表示をする場合」という書き出しにあります。規約は、継続的な掲載を、一度きりの行為ではなく続いている行為として捉えています。したがって、内容に変更があった後も掲載が続いているなら、その後の各時点で「取引の対象になり得ない物件」を表示していることになります。これが第2類型のおとり広告に転化する構造です。
出題では「掲載を開始した時点では当該物件が取引可能であったのだから、その後成約したとしても、おとり広告には当たらない」という形で出ます。掲載開始時点の適法性は、掲載継続の適法性を保証しません。
更新すべき経路は1つではない
実務上、同じ物件の情報は複数の場所に置かれます。修正義務はそのすべてに及びます。
第1に、不動産ポータルサイトの掲載情報です。掲載件数が多いほど削除漏れが起きやすく、しかも掲載は事業者の手元を離れて表示され続けます。物件情報の流通の仕組みそのものについては不動産テックの現在地を参照してください。
第2に、自社サイトや自社が配布する紙媒体です。ポータルの掲載を落としても自社サイトに残っていれば、そこで表示は継続しています。
第3に、指定流通機構(レインズ)の登録情報です。宅建業法34条の2第5項は専任媒介契約を締結した宅建業者に指定流通機構への登録を義務づけ、同条7項は登録した宅地建物の売買または交換の契約が成立したときに遅滞なく指定流通機構に通知することを求めています。登録と成約通知の実務はレインズとはにまとめました。登録情報の更新は規約24条の直接の対象というより宅建業法上の義務ですが、他の宅建業者がそこを見て自社の広告を作る以上、更新を怠れば誤った情報が連鎖します。
媒介契約に伴う登録義務と、業務処理状況の報告義務(専任媒介で2週間に1回以上、専属専任媒介で1週間に1回以上)が、情報を最新に保つ実務上の担保として働きます。媒介契約書の記載事項は媒介契約書の記載事項を参照してください。
賃貸仲介で放置が起きやすい理由
成約済み物件の掲載放置は、賃貸で起きやすい問題です。売買に比べて1件あたりの掲載期間が短く、成約が頻繁で、同一物件の複数の部屋を扱うため、どの部屋が埋まったかの管理が煩雑になるからです。規約4条3項は「建物」に賃貸マンション・賃貸アパートその他の貸室等建物の一部を含むと明記しており、貸借の広告も当然に規約の対象です。宅建業法32条も貸借を含みます。賃貸の媒介の実務は賃貸仲介の仕事にあります。
24条は協議会の措置の対象条文に入っていない
細かい点ですが、構造を理解する助けになるので触れておきます。表示規約26条1項は公正取引協議会の調査権限を「第5条から第23条まで」の規定に違反する事実があると思料するときについて定め、27条1項は警告および50万円以下の違約金という措置を「第5条及び第8条から第23条まで」の規定に違反する行為があると認めるときについて定めています。24条はどちらの列挙にも入っていません。調査の範囲が5条から23条まで、措置の範囲がそこから6条・7条を落としたものであるという細かい差もありますが、24条が両方から外れている点は共通です。
これは24条に意味がないということではありません。24条1項の修正義務を怠った結果として生じるのは、たいてい21条2号のおとり広告か、23条各号の誤認されるおそれのある表示です。つまり24条は、掲載継続がなぜ違反になるのかを説明する接続条文として置かれており、制裁は転化した先の条文で科されます。この理解があると、「規約24条違反として違約金を課された」という言い回しの不自然さに気づけます。
宅建業法の側から見たおとり広告と、勧誘規制との境目
32条は要件を絞っていない
宅建業法32条は、宅地建物取引業者が業務に関して広告をするときに、宅地または建物の所在、規模、形質、現在もしくは将来の利用の制限、環境もしくは交通その他の利便、代金・借賃等の対価の額もしくはその支払方法、代金もしくは交換差金に関する金銭の貸借のあっせんについて、著しく事実に相違する表示をし、または実際のものよりも著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない、と定めます。対象事項の逐条解説は広告規制に譲ります。
おとり広告がこの32条に含まれることは、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」が示しています。同解釈・運用の考え方は、物件が存在しないため実際には取引することができない物件に関する表示、物件は存在するが実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示、物件は存在するが実際には取引する意思がない物件に関する表示の3つを、誇大広告等に該当するものとして挙げています。規約21条の3類型と同じ並びです。
実害・契約成立・広告回数を要件としない
32条の条文に、損害の発生も、契約の成立も、広告の回数も書かれていません。条文が禁じているのは「表示をすること」であって、その表示によって誰かが損をすることではありません。したがって、次のいずれも違反の成立を妨げません。
問い合わせが1件もなかった場合。誤認した人が現れなかったのだから実害はありませんが、表示をした事実は残ります。契約に至らなかった場合も同じです。広告が1回限りだった場合も同じで、条文に回数の要件はありません。
そして、後から訂正広告を出しても、既に成立した違反は消えません。訂正は再発防止や情状として評価される余地があるにすぎず、違反の成否を左右しません。「直ちに訂正広告を出したので32条違反とはならない」という肢は、この点で誤りです。
誘引の段階と、来店後の勧誘の段階
おとり広告で来店させた後の行為は、32条の守備範囲を外れます。32条が規律するのは広告という誘引行為であって、対面での勧誘ではありません。来店後に働くのは宅建業法47条と47条の2です。
47条の2第1項は、契約の締結の勧誘をするに際し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為を禁じます。2項は、契約を締結させ、または申込みの撤回もしくは解除を妨げるために相手方等を威迫することを禁じます。3項の委任を受けた宅建業法施行規則16条の11第1号は、勧誘に際しての禁止行為を6つ挙げており、イが当該契約の目的物である宅地または建物の将来の環境または交通その他の利便について誤解させるべき断定的判断を提供すること、ロが正当な理由なく契約を締結するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒むこと、ハが勧誘に先立って商号または名称、勧誘を行う者の氏名、契約の締結について勧誘をする目的である旨を告げずに勧誘を行うこと、ニが相手方等が契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む)を表示したにもかかわらず勧誘を継続すること、ホが迷惑を覚えさせるような時間に電話しまたは訪問すること、ヘが深夜または長時間の勧誘その他私生活または業務の平穏を害するような方法により困惑させることです。
ここで押さえておきたいのは、法47条の2第1項の断定的判断が「利益を生ずることが確実である」という利益に関するものであるのに対し、規則16条の11第1号イの断定的判断は「将来の環境又は交通その他の利便」に関するものだという違いです。両者は別の規定で、対象が異なります。各号の詳しい読み方は宅建業法47条の禁止行為にあります。
切り分けは単純です。広告を出して人を呼ぶまでが32条と表示規約、呼んだ後の対面・電話でのやり取りが47条と47条の2です。おとり広告で誘引し、来店した客に「今日中に決めないと他の人に決まる」と迫って再勧誘を続けたのなら、32条違反と47条の2第3項・規則16条の11第1号ニ違反が別々に成立します。1つの事案で条文が複数立つことを、出題者は「どちらか一方が正しい」形に加工してきます。
罰則と監督処分の帰結
32条違反の法定刑は、宅建業法81条1号により6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科です。宅建業法の拘禁刑の中では最も軽い段階に位置します。1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金(80条)が科されるのは47条2号の不当に高額の報酬を要求する行為であり、2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金(79条の2)が科されるのは47条1号の故意の不告知・不実告知です。拘禁刑の年数は段階的に下がりますが、罰金の上限が300万円になるのは79条の2だけで、80条も81条も100万円です。拘禁刑の重さと罰金の重さが同じ順で動くと思い込むと、ここでずれます。罰則の段階構造は宅建業法の罰則一覧にまとめてあります。
なお、47条の2には罰則がありません。79条から83条までの罰則条文に47条の2は登場しないので、断定的判断の提供や再勧誘の継続に対する制裁は監督処分に限られます。
監督処分の側では、65条2項2号が業務停止処分の事由として32条、34条、47条、47条の2などを列挙しており、いずれも1年以内の期間を定めた業務の全部または一部の停止の対象になります。さらに66条1項9号は、65条2項各号のいずれかに該当し情状が特に重いときを必要的免許取消しの事由としています。指示処分・業務停止処分・免許取消処分の要件と手続は監督処分を参照してください。
これに対し、表示規約違反に対して動くのは公正取引協議会です。規約27条1項により、警告または50万円以下の違約金。警告に従わなければ同条3項により500万円以下の違約金、構成員資格の停止、除名処分、または消費者庁長官に対する措置請求です。協議会は行政庁ではないので、免許の取消しも業務の停止も命じられません。規約違反と行政処分を直結させる肢は、この主体のすり替えでできています。
二重価格表示——施行規則12条の5要件を1つずつ
20条が禁じているのは二重価格表示そのものではない
表示規約20条は、事業者は、物件の価格、賃料または役務の対価について、二重価格表示をする場合において、事実に相違する広告表示または実際のものもしくは競争事業者に係るものよりも有利であると誤認されるおそれのある広告表示をしてはならない、と定めます。二重価格表示とは、実際に販売する価格(実売価格)にこれよりも高い価格(比較対照価格)を併記する等の方法により、実売価格に比較対照価格を付すことをいう、と条文自身が定義しています。
読み方の順番が大事です。禁止されているのは「二重価格表示」ではなく、「二重価格表示をする場合において、事実に相違し、または有利と誤認されるおそれのある表示をすること」です。二重価格表示という形式そのものは適法に行えます。「二重価格表示は禁止されている」という肢は、この点で言い過ぎです。
施行規則12条が線を引く
では、どういう二重価格表示なら適法か。過去の販売価格を比較対照価格に使う場合について、表示規約施行規則12条が答えを出しています。同条は、過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示は、次に掲げる要件の全てに適合し、かつ、実際に、当該期間、当該価格で販売していたことを資料により客観的に明らかにすることができる場合を除き、規約20条において禁止する不当な二重価格表示に該当するものとする、という書き方をしています。
つまり、原則は「不当な二重価格表示に該当する」で、5要件と資料要件を全部満たしたときだけ例外的に外れるという構造です。要件を1つでも落とせば違反側に戻ります。
第1要件——公表日と値下げした日の明示
1号は、過去の販売価格の公表日および値下げした日を明示することを求めます。日付を書かなければならない、というだけの要件に見えますが、これは残り4つの要件の検証を可能にするための土台です。公表日が書かれていなければ2号の「2か月以上」が測れず、値下げした日が書かれていなければ3号の「6か月以内」が測れません。読み手が自分で期間要件の充足を確かめられる状態にすることが、この号の役割です。
なお、旧規則では「過去の販売価格の公表時期及び値下げの時期を明示したものであること」でした。2022年9月1日施行の改正で「過去の販売価格の公表日及び値下げした日」と改められています。不動産公正取引協議会連合会が公表した同改正の新旧対照表は、この号の改正理由を「規定を明確にした」としています。明示すべき対象が漠然とした「時期」ではなく特定の「日」であることが、条文の文言として確定したということです。
第2要件——値下げ直前の価格で、値下げ前2か月以上公表していたこと
2号は、比較対照価格に用いる過去の販売価格は、値下げの直前の価格であって、値下げ前2か月以上にわたり実際に販売のために公表していた価格であること、を求めます。
この号には2つの内容が入っています。1つは「値下げの直前の価格」であること。何度か値下げを重ねた場合に、いちばん高かった昔の価格を持ち出すことはできません。直前の価格に限られます。もう1つは「値下げ前2か月以上にわたり実際に販売のために公表していた」こと。名目上つけただけで、すぐ下げた価格は使えません。
2か月は下限です。その価格で売ろうとしていた実績がそれだけの期間なければ、比較の基準として意味を持たない、という発想です。旧規則ではこの期間が「値下げの3か月以上前に公表された価格であって、かつ、値下げ前3か月以上にわたり実際に販売のために公表していた価格」でした。2022年9月1日施行の改正で2か月に短縮されています。前掲の新旧対照表は、この号の改正理由として、媒介契約の3か月間の中で二重価格表示を可能とするために旧価格の公表期間を短縮したうえで規定を明確にした、という趣旨を挙げています。宅建業法34条の2第3項が専任媒介契約の有効期間を3月と定めている以上、旧規則のままでは、媒介契約の期間中に値下げをして二重価格表示を行える余地がほとんど残らなかったということです。「3か月」はネット上に残る旧版の規則に由来する数字であり、現行は2か月です。
第3要件——値下げの日から6か月以内
3号は、値下げの日から6か月以内に表示するものであることを求めます。6か月は上限です。値下げから時間が経ちすぎた比較は、現在の市場における有利さを示すものではなくなるからです。
2か月と6か月は向きが逆であることを毎回確認してください。前の価格を「どれだけ長く掲げていたか」の下限が2か月、値下げから「どれだけ経ったか」の上限が6か月です。この2つを入れ替えた肢、片方だけ示して他方を落とした肢、「2週間以上」「1年以内」などに差し替えた肢が、二重価格表示の出題の中心です。
第4要件——価値の同一性
4号は、過去の販売価格の公表日から二重価格表示を実施する日まで物件の価値に同一性が認められるものであることを求めます。これは2022年9月1日施行の改正で新設された要件です。
旧規則では、6か月以内という期間要件のただし書として、「6か月以内であっても災害その他の事情により物件の価値に同一性が認められなくなった場合には、同一性が認められる時点までに限る」という形で書かれていました。改正でこれが独立の号に格上げされています。内容としては、火災・水害等で建物が損傷した、法令上の制限が変わって利用可能性が変化した、といった事情があれば、期間内であっても過去の価格との比較は成り立たない、ということです。
比較が意味を持つのは、比べられている2つの価格が同じものの価格であるときだけです。物が変われば、価格差は値下げではなく物の違いを反映したものになります。この要件はその当たり前を条文にしたものです。
第5要件——土地または建物であること
5号は、土地(現況有姿分譲地を除く)または建物(共有制リゾートクラブ会員権を除く)について行う表示であることを求めます。要件というより適用対象の限定で、除外された2つには過去価格との比較が使えません。
なぜこの2つだけ外れるのかは、規約施行規則の定義を見ると分かります。現況有姿分譲地は、主として一団の土地を一定面積以上の区画に区分けして売買する山林、原野等の土地であって、分譲宅地および売地以外のものをいうとされています。区画の切り方が固定されておらず、施行規則は現況有姿分譲地の価格について、分割可能最小面積を明示して1平方メートル当たりの価格を表示することを求めています。つまりこの類型では、比較すべき「1つの物件の1つの価格」という単位がそもそも立ちません。共有制リゾートクラブ会員権は、主として会員が利用する目的で宿泊施設等のリゾート施設の全部または一部の所有権を共有するものをいうとされており、価格が施設そのものではなく会員権の内容に左右されます。
この号を「5番目の要件」として数字で覚えるより、過去価格との比較は、単位の定まった土地・建物についてしか成り立たないという理解で持っておくほうが応用が利きます。
5要件とは別に資料要件がある
見落としやすいのが、柱書の後半です。「かつ、実際に、当該期間、当該価格で販売していたことを資料により客観的に明らかにすることができる場合を除き」とあります。5要件を形式的に満たしていても、その期間その価格で販売していた事実を資料で示せなければ、不当な二重価格表示に該当します。
広告に日付を書き、期間の計算が合っていても、実際にはその価格で販売活動をしていなかったのなら意味がない、ということです。この二段構えは景品表示法7条2項の不実証広告規制と発想が通じており、根拠資料の保有が事業者側の負担として置かれています。景品表示法側の仕組みは不当景品類及び不当表示防止法にあります。
割引表示と、比較対照価格の作り方
施行規則13条の割引表示
表示規約施行規則13条は、一定の条件に適合する取引の相手方に対し、販売価格、賃料等から一定率または一定額の割引をする場合において、当該条件を明示して、割引率、割引額または割引後の額を表示する場合を除き、規約20条において禁止される不当な二重価格表示に該当するものとする、と定めます。
12条と同じ「除き……該当するものとする」型です。原則は不当な二重価格表示で、条件を明示して割引率・割引額または割引後の額を表示したときだけ例外になります。
なぜ条件を伏せると不当表示なのか
「今なら100万円引き」とだけ書かれた広告を考えます。読み手は、自分がその物件を買えば100万円安く買えると理解します。ところが実際には、その割引が適用されるのは特定の期間に契約した人だけ、あるいは特定の住戸だけ、あるいは提携ローンを利用する人だけだったとします。
このとき、表示された価格差は、読み手にとっての有利さを表していません。割引後の額が実売価格であるかのように見えるのに、多くの読み手にとっては実売価格が別にある。実売価格に実体のない比較対照価格を付したのと同じ構造になるので、割引表示は二重価格表示の一種として扱われます。条件を明示せよ、という要件は、価格差が誰にとっての価格差なのかを示せ、という要求です。
割引率・割引額・割引後の額のいずれかを表示することも求められています。「大幅割引」「特別価格でご提供」といった、幅の分からない表現だけでは足りません。
比較対照価格に転用してはいけないもの
過去の販売価格以外にも、広告の中には「高い方の価格」に見える数字がいくつも現れます。これらを比較対照価格として使うと、施行規則12条の5要件を潜脱することになります。
第1に、予告広告の段階で示した予定額です。前述のとおり、予告広告は規約4条6項3号が「価格又は賃料が確定していないため、直ちに取引することができない物件」について用意した仕組みで、そこに現れる数字は確定した販売価格ではありません。施行規則12条2号が求めているのは「実際に販売のために公表していた価格」であり、確定していない予定額はこれに当たりません。予定額を「元の価格」に見立てて実売価格と並べれば、比較の基準そのものが存在しないことになります。予告広告から本広告に移る局面は値下げに見えやすいので、この点は実務でも間違えやすいところです。
第2に、期分け販売における他の期の価格です。規約18条1項2号は「新発売」の定義の中で、一団の宅地または建物を数期に区分して販売する場合は期ごとの勧誘をいう、と書いており、期分け販売は期ごとに独立した販売として扱われます。したがって第1期の価格は、第2期で販売する区画・住戸の「過去の販売価格」ではありません。区画や住戸が違えば、価格差は値下げではなく物件の違いを表します。施行規則12条4号の価値の同一性要件が、まさにここを塞いでいます。
第3に、そもそも販売のために公表したことのない価格です。媒介の依頼者が当初口にした希望価格、事業者が内部で作成した査定額、近隣の成約事例から算出した相場の数字は、いずれも「実際に販売のために公表していた価格」ではありません。しかも施行規則12条の柱書は、5要件に加えて「実際に、当該期間、当該価格で販売していたことを資料により客観的に明らかにすることができる」ことを求めています。公表していない数字については、その資料が原理的に存在しません。要件を満たせないのではなく、要件が想定している事実がそもそも発生していないという関係です。
いずれも共通するのは、比較対照価格に使えるのは「実際に、その期間、その価格で販売していた」と資料で示せる価格だけという一点です。逆にいえば、比較対照価格を置きたいときに最初に確認すべきは、その数字がいつからいつまで、どの媒体で、いくらとして世に出ていたかであって、その数字が高いか安いかではありません。
広告費用と報酬の関係
なお、割引や値下げの話題と紛らわしいものに、広告費用の扱いがあります。宅建業者が受け取れる報酬は国土交通大臣の定める額を超えてはならず、広告費用は原則として報酬に含まれます。依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額は別途受領できる、というのが例外の形です。報酬の枠組みは報酬額の制限を参照してください。広告表示の適否とは別の論点ですが、同じ「広告」という語で結ばれているため、出題で混ぜられることがあります。
特定用語の使用制限——禁止ではなく条件つきの解禁である
18条2項の柱書を正確に読む
表示規約18条2項は、次のように書かれています。事業者は、次に掲げる用語を用いて表示するときは、それぞれ当該表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除き、当該用語を使用してはならない。この場合において、第1号及び第2号に定める用語については、当該表示内容の根拠となる事実を併せて表示する場合に限り使用することができる。
構造が二層になっています。第1層は、全6号に共通する要件で、「合理的な根拠を示す資料を現に有している」こと。第2層は、1号と2号だけに追加される要件で、「根拠となる事実を併せて表示する」ことです。
6分類の中身
1号は、物件の形質その他の内容または価格その他の取引条件に関する事項について、「最高」「最高級」「極」「特級」等、最上級を意味する用語です。
2号は、物件の価格または賃料等について、「買得」「掘出」「土地値」「格安」「投売り」「破格」「特安」「激安」「バーゲンセール」「安値」等、著しく安いという印象を与える用語です。
3号は、物件の形質その他の内容または役務の内容について、「完全」「完ぺき」「絶対」「万全」等、全く欠けるところがないことまたは全く手落ちがないことを意味する用語です。
4号は、物件の形質その他の内容、価格その他の取引条件または事業者の属性に関する事項について、「日本一」「日本初」「業界一」「超」「当社だけ」「他に類を見ない」「抜群」等、競争事業者の供給するものまたは競争事業者よりも優位に立つことを意味する用語です。
5号は、物件について、「特選」「厳選」等、一定の基準により選別されたことを意味する用語です。
6号は、物件について、「完売」等、著しく人気が高く、売行きがよいという印象を与える用語です。
この号の並びは2022年9月1日施行の改正で入れ替わりました。改正前は「完全」等が1号、「日本一」等が2号、「特選」等が3号、「最高」等が4号、「買得」等が5号で、併記義務は4号・5号に課されていました。現行規約では最上級が1号、著しく安いが2号となり、併記義務は1号・2号に課されています。併記義務の対象が「最上級」と「著しく安い」の2つであることは改正前後で変わっていませんが、号数で記憶していると現行の条文と食い違います。号数ではなく中身で覚えてください。
資料の保有で足りる号と、広告への併記まで要る号
3号から6号までの用語(「完全」「日本一」「特選」「完売」等)は、合理的な根拠を示す資料を現に有していれば使えます。資料を広告に載せる必要はありません。行政や協議会から求められたときに提示できる状態にあればよい、ということです。
これに対し、1号と2号の用語(「最高」「最高級」「格安」「激安」等)は、資料を持っているだけでは足りません。根拠となる事実を広告に併せて表示して初めて使えます。「格安」と書くなら、何と比べてどう安いのかを同じ広告の中に書く必要があります。
なぜこの2つだけ上乗せされているのか。最上級表現と安さの強調は、読み手が価格や品質を判断するうえで最も影響が大きく、かつ根拠の当否を読み手自身が確かめにくいからだと理解できます。資料は全部の号、併記は最上級と安さの2号だけという覚え方で足ります。
「一律禁止」と読ませる出題への対処
この論点の出題は、ほぼ2種類しかありません。
第1に、「これらの用語は不動産広告において一切使用することができない」という一律禁止型。18条2項は「資料を現に有している場合を除き……使用してはならない」と書いており、資料があれば使えます。禁止の程度を強めすぎているので誤りです。
第2に、「合理的な根拠を示す資料を有していれば、いずれの用語も使用することができる」という一律解禁型。1号・2号の併記義務を落としているので、これも誤りです。前者だけを警戒していると後者で落とします。一律禁止でも一律解禁でもなく、二層であると持っておいてください。
なお、18条1項が定める用語(新築、新発売、ダイニング・キッチン、リビング・ダイニング・キッチン、宅地の造成工事の完了、建物の建築工事の完了)は、2項とは性格が違います。1項は定義に従って使えという意味の使用基準であり、根拠資料の有無の問題ではありません。「新築」の要件をはじめとする1項の内容は不動産広告の表示基準で扱っています。
不当な比較広告と、23条という受け皿
22条が禁じる3つの比較
表示規約22条は、事業者は、比較広告において、次に掲げる広告表示をしてはならない、として3号を置きます。
1号は、実証されていない、または実証することができない事項を挙げて比較する表示です。比較の材料が事実として確かめられないなら、比較は印象操作にしかなりません。
2号は、一般消費者の物件等の選択にとって重要でない事項を重要であるかのように強調して比較するもの、および比較する物件等を恣意的に選び出すなど不公正な基準によって比較する表示です。1つの号に2つの内容が入っています。前半は「何を比べるか」の選び方、後半は「誰と比べるか」の選び方の問題です。自社に有利な項目だけを取り出す、自社より条件の悪い物件だけを比較対象に選ぶ、といった操作が該当します。
3号は、一般消費者に対する具体的な情報ではなく、単に競争事業者またはその物件等を誹謗し、または中傷する表示です。比較の体裁をとりながら、実質は相手の評判を落とすだけのものが該当します。
比較広告そのものは禁止されていない
22条の柱書は「比較広告において」と書いており、比較広告を行うこと自体は前提とされています。規約4条6項6号は「比較広告」を、自己の供給する物件または役務について、これと競争関係にある特定の物件等を比較対象物件等として示し(暗示的に示す場合を含む)、物件等の内容または取引条件について、客観的に測定または評価することによって比較する広告表示、と定義しています。
定義に「客観的に測定又は評価することによって」という限定が入っている点に注目してください。客観的な測定・評価にもとづく比較であれば、それは規約が想定する比較広告であり、22条各号に当たらない限り適法です。「不動産広告において他社の物件と比較することは禁止されている」という肢は誤りです。
もっとも、この定義は22条の適用範囲を狭めるためのものではありません。定義に当てはまらない表示、たとえば客観的な測定も評価もしていない印象だけの当てこすりは、22条の外に出て自由になるのではなく、後述する23条1項の他社に関する各号(競争事業者の物件について事実に反する表示をして自社の物件が優良・有利であると誤認させるおそれのある表示、競争事業者の経歴・営業種目・取引先・事業所・事業規模・経営状況その他信用に関する事項について信用を害するおそれのある表示)に落ちます。比較広告の定義から外れることは、規制から外れることを意味しません。
22条3号と、他社への言及一般との関係
22条3号の誹謗・中傷と、23条1項の他社に関する各号は、対象が重なります。違いは、22条が「比較広告において」という場面の限定を持っているのに対し、23条1項の各号にはその限定がないことです。したがって、比較の体裁をとった誹謗であれば22条3号、比較の形をとらずに他社の信用を害する表示をしただけであれば23条1項の該当号、という振り分けになります。どちらに落ちても規約27条1項の措置の対象である点は同じなので、実務上の帰結は変わりません。試験対策としては、22条は「比較広告において」という枕がある条文だという一点を押さえておけば十分です。
23条の形式と、2項の受け皿
表示規約23条1項は「その他の不当表示」として、多数の類型を列挙しています。取引態様、物件の所在地、交通の利便性、各種施設までの距離、団地の規模、面積、建物の間取り・用途、物件の形質、写真・絵図、利用の制限、設備・生活関連施設、環境等、価格・料金、価格以外の取引条件、融資等の条件、事業者の信用、その他の事項というグループに分かれ、いずれも「実際のものよりも優良(または有利)であると誤認されるおそれのある表示」という同じ形式で書かれています。
同じ形式が繰り返されているということは、23条1項が個々の事項について新しい判断基準を作っているのではなく、「誤認されるおそれ」という一つの基準を事項ごとに書き下しているだけだ、ということです。だから号を暗記する意味は薄く、形式を理解すれば足ります。
1項の筆頭に置かれているのが取引態様です。1号は、取引態様について、事実に相違する表示または実際のものもしくは競争事業者に係るものよりも優良もしくは有利であると誤認されるおそれのある表示を禁じています。宅建業法34条1項の取引態様の明示義務が「明示せよ」という作為義務であるのに対し、規約23条1項1号は「誤認させるな」という不作為義務で、方向が違います。明示義務の要件は取引態様の明示義務を参照してください。
そして23条2項が受け皿になります。1項に列挙されていない事項であっても、物件の取引に関する事項について事実に相違する表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択および事業者間の公正な競争を阻害するおそれがあると認められる広告表示をしてはならない、という趣旨の規定です。
1項の列挙は限定列挙ではありません。列挙にない事項だから規約違反にならない、という主張は2項で塞がれています。この構造は宅建業法32条と対照的です。32条は対象事項を条文に列挙しており、列挙外の事項については32条の問題になりません。規約23条には受け皿があり、業法32条にはない。この差は出題で使われます。広告に載せる前提としてどこまで調べる必要があるかは物件調査の実務にまとめました。
試験での出題ポイント
おとり広告を1類型に絞る型
最も多いのが、規約21条の3類型のうち1つだけを取り出して「〜の場合に限り」と限定する形です。「おとり広告に該当するのは、物件が存在しない場合に限られる」「実際に取引が行われなかった場合に限りおとり広告となる」といった肢がこれに当たります。21条は3号を並列に置いており、契約の成否も要件にしていません。限定語が付いていたら、条文が本当に限定しているかを確認する癖をつけてください。限定語の操作による引っかけの一般型は引っかけ表現のパターンにまとめてあります。
掲載時点の正確さを抗弁にする型
「掲載開始時点では取引可能であったから、その後成約しても違反にならない」という形です。規約24条1項が継続表示について修正または取りやめを義務づけている以上、掲載継続はその後の各時点での表示行為です。逆に、「速やかに修正すれば違反にならない」という肢は正しい方向を向いています。両者を混同しないでください。
二重価格の期間を入れ替える型
2か月と6か月の入れ替えが最頻出です。「値下げ前6か月以上にわたり公表していた価格であること」「値下げの日から2か月以内に表示するものであること」という形で出ます。加えて、片方だけを示して他方を落とす型、「3か月」という改正前の数字を使う型もあります。2か月が下限で6か月が上限、という向きで持っていれば、どちらの操作にも対応できます。
二重価格そのものを禁止とする型
「不動産広告において二重価格表示をすることは禁止されている」という肢です。規約20条は二重価格表示をする場合における不当な表示を禁じているのであって、形式そのものを禁じてはいません。施行規則12条の要件を満たせば適法に行えます。
割引表示の条件明示を落とす型
「割引率を表示すれば、割引の条件を明示しなくても不当な二重価格表示に当たらない」という形です。施行規則13条は「当該条件を明示して、割引率、割引額又は割引後の額を表示する場合を除き」と書いており、条件の明示と金額の表示の両方が要ります。片方だけでは足りません。
特定用語を一律禁止・一律解禁にする型
前述のとおり、「一切使用できない」と強めすぎる型と、「資料があればすべて使える」と弱めすぎる型の2方向があります。1号・2号だけに併記義務が上乗せされている二層構造を思い出せば、どちらも処理できます。
比較広告そのものを禁止とする型
「他社の物件と比較する広告表示は禁止されている」という肢です。規約4条6項6号の定義に「客観的に測定又は評価することによって」とある以上、客観性のある比較は許容されます。禁止されるのは22条各号の不公正な比較です。
措置の主体をすり替える型
「表示規約に違反した宅建業者は、免許を取り消されることがある」という形です。規約違反に対して公正取引協議会が採れるのは警告・違約金・資格停止・除名・消費者庁長官への措置請求であって、免許に関する処分ではありません。ただし、同じ広告が宅建業法32条にも違反していれば、そちらの効果として業務停止処分や、情状が特に重い場合の免許取消しが起こり得ます。「規約違反だから免許取消し」は誤り、「業法32条違反で情状が特に重いから免許取消し」は正しいという切り分けです。
誘引と勧誘を混ぜる型
「おとり広告により来店させ、断りの意思表示を受けた後も勧誘を続けた行為は、宅建業法32条に違反する」という形です。再勧誘の継続は47条の2第3項および施行規則16条の11第1号ニの問題で、32条ではありません。段階で条文が切り替わることを押さえておいてください。
出題される位置
おとり広告・二重価格表示・特定用語は、宅建業法32条の側から宅建業法の20問の中で問われることもあれば、表示規約の側から問47で問われることもあります。宅建業法での出題頻度の分布は宅建業法の頻出論点を、問47の学習設計は5問免除科目の攻略を参照してください。問47は登録講習修了者の免除対象に含まれます(5問免除制度)。
覚え方・整理の仕方
おとり広告は「ない・なれない・する気がない」
規約21条の3号を、3つの短い言い方で持ちます。1号は物件が「ない」、2号は取引の対象に「なれない」、3号は取引「する気がない」。この順で質問を投げて、最初に「はい」が出た段が該当する号です。号の順番と段の順番が一致しているので、条文の並びをそのまま記憶に使えます。
ただし1号の「ない」は、建物が物理的に存在しないという意味に限りません。運用基準が「内容、形態、取引条件等において同一性を認めがたい場合」を1号の例示に挙げている以上、「表示どおりの物件がない」と読むのが正確です。この一語を足しておくと、実在する建物の情報を大きく改変した広告を、無条件に1号から外してしまう誤りを避けられます。
第2号と第3号は「誰の意思か」で割る
物件が実在して迷ったときは、取引ができなくなった原因が誰にあるかを見ます。売主が売却を撤回した、契約が成立した、媒介契約が終了した、というように事業者の外側で取引可能性が失われていれば第2号。物件も売主も動いていないのに事業者が取引に応じないのであれば第3号です。
二重価格は「下限2か月・上限6か月」
数字の向きを言葉で固定します。前の価格を掲げていた期間の下限が2か月、値下げからの経過期間の上限が6か月。「長く掲げていた実績が要るから下限、時間が経ちすぎると使えないから上限」と理由まで一緒に持てば、入れ替えられても気づけます。
この記事で覚える数字は2か月と6か月の2つだけです。徒歩1分80メートル、面積の畳1.62平方メートル、物件名称の300メートル・50メートル・5,000メートル・1,000メートル、景品類の限度額といった数字は、いずれも別の条文にある別の話です。禁止類型の学習中にそれらを引っ張り出すと混線します。宅建業法全体の数字の横断整理は宅建業法の数字にまとめてあるので、数字は数字でまとめて処理してください。
特定用語は「資料は全部、併記は2つ」
18条2項の二層構造は、この6文字で足ります。合理的な根拠を示す資料の保有は6号すべてに共通する要件、根拠となる事実の併記は1号(最上級)と2号(著しく安い)だけの追加要件。号数ではなく「最上級と安さ」という中身で持っておけば、改正で号が動いても対応できます。
24条は「掲載し続けることが表示すること」
規約24条1項を、この一文に言い換えます。掲載は一度きりの行為ではなく続いている行為であり、続けている間ずっと表示していることになる。だから内容が変わったら速やかに直すか消すかしなければならず、掲載開始時点の正しさは抗弁にならない。2項は「取引をやめたら黙って消すのではなく、その旨を公示する」と対にします。
4つの禁止類型は「何が嘘か」で引く
物件が嘘なら21条、価格が嘘なら20条と規則12条・13条、言葉に根拠がなければ18条2項、比べ方が不公正なら22条。そして、どれにも当てはまらない誤認は23条1項の各号、列挙にないものは23条2項。この引き方をしておけば、選択肢を読んだ瞬間に見るべき条文が決まります。
理解度チェッククイズ
第1問
宅地建物取引業者が、実在する物件について広告を行った場合、その物件が現に存在している以上、おとり広告に該当することはない。
答えは×です。不動産の表示に関する公正競争規約21条は3つの類型を並列に禁じており、物件が存在しないのは1号だけです。2号は物件が存在するが実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示、3号は物件が存在するが実際には取引する意思がない物件に関する表示で、いずれも物件は実在します。したがって、物件の実在はおとり広告該当性を否定する理由になりません。さらに、公正取引委員会「『不動産のおとり広告に関する表示』の運用基準」(昭和55年6月9日事務局長通達第9号)は、1号についても、表示している物件が実際に販売しようとする不動産とその内容、形態、取引条件等において同一性を認めがたい場合を例示に挙げています。建物が実在していても、表示と実物が同じものと言えない程度に食い違えば1号の問題が残るということです。宅建業法の側でも、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」が同じ3類型を32条の誇大広告等に含めています。
第2問
宅地建物取引業者がインターネット上に掲載した物件情報について、掲載を開始した時点では取引が可能であったが、その後に売買契約が成立した。掲載を削除しないまま放置しても、掲載開始時点の表示は正確であったのだから、おとり広告には該当しない。
答えは×です。表示規約24条1項は、継続して物件に関する広告その他の表示をする場合において、表示の内容に変更があったときは速やかに修正し、またはその表示を取りやめなければならないと定めています。掲載を続ける行為は、その後の各時点における表示行為として評価されるため、成約後も掲載を続ければ「実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示」として規約21条2号に該当します。掲載開始時点の正確さは抗弁になりません。なお、修正義務を定める24条は、調査について定める規約26条1項の対象(5条から23条まで)にも、警告および違約金について定める27条1項の対象(5条および8条から23条まで)にも列挙されておらず、制裁は転化した先の21条・23条によって働きます。
第3問
過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示は、比較対照価格が値下げの直前の価格であって値下げ前6か月以上にわたり実際に販売のために公表していた価格であり、かつ値下げの日から2か月以内に表示するものであれば、他の要件を満たす限り不当な二重価格表示に該当しない。
答えは×です。数字が入れ替わっています。表示規約施行規則12条2号は、比較対照価格に用いる過去の販売価格は値下げの直前の価格であって、値下げ前2か月以上にわたり実際に販売のために公表していた価格であることを求め、同条3号は値下げの日から6か月以内に表示するものであることを求めています。2か月は掲げていた期間の下限、6か月は値下げからの経過期間の上限で、向きが逆です。なお同条は、これらを含む5要件のすべてに適合し、かつ実際にその期間その価格で販売していたことを資料により客観的に明らかにできる場合を除き、不当な二重価格表示に該当するものとしています。
第4問
一定の条件に適合する取引の相手方に対して販売価格から一定額の割引をする場合において、割引額を表示していれば、その条件を明示していなくても不当な二重価格表示に該当しない。
答えは×です。表示規約施行規則13条は、一定の条件に適合する取引の相手方に対し販売価格、賃料等から一定率または一定額の割引をする場合において、当該条件を明示して、割引率、割引額または割引後の額を表示する場合を除き、規約20条において禁止される不当な二重価格表示に該当するものとしています。条件の明示と、割引率・割引額・割引後の額のいずれかの表示は、どちらも必要です。条件を伏せたまま金額だけを示せば、その価格差が誰にとっての価格差なのかが分からず、有利さの印象だけが残ります。
第5問
「完全」「日本一」「最高級」「激安」といった用語は、一般消費者に誤認を生じさせるおそれが大きいため、不動産の広告表示において使用することが一切禁止されている。
答えは×です。表示規約18条2項は、これらの用語について「当該表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除き、当該用語を使用してはならない」と定めており、資料を有していれば使用できます。一律禁止ではありません。ただし二層になっており、同項後段は、1号(「最高」「最高級」等の最上級を意味する用語)および2号(「格安」「激安」等の著しく安いという印象を与える用語)については、当該表示内容の根拠となる事実を併せて表示する場合に限り使用できるとしています。3号の「完全」等、4号の「日本一」等、5号の「特選」等、6号の「完売」等は資料の保有で足り、広告への併記までは求められません。「一切使用できない」も「資料があればすべて使える」も、どちらも誤りです。
まとめ
広告の禁止類型は「何が嘘か」で引けます。物件が嘘なら表示規約21条のおとり広告で、1号が表示どおりの物件の不存在(所在地に存在しない場合のほか、実際に販売しようとする物件と内容・形態・取引条件等において同一性を認めがたい場合を含みます)、2号が取引可能性の欠如、3号が取引意思の欠如という3段構造です。価格が嘘なら規約20条と施行規則12条で、過去価格との比較は公表日・値下げ日の明示、値下げ直前かつ2か月以上公表していた価格であること、値下げから6か月以内であること、価値の同一性、対象物件の限定という5要件と、資料による裏付けを満たしたときだけ適法になります。条件を伏せた割引表示は施行規則13条で不当な二重価格表示に落ちます。言葉に根拠がなければ規約18条2項で、資料の保有が全6号の共通要件、根拠事実の併記が1号・2号だけの上乗せです。比べ方が不公正なら規約22条で、比較広告そのものは客観性があれば適法です。そして情報が古くなったら規約24条1項の修正義務が働き、放置すれば21条2号に転化します。
この5本と同じ広告に、宅建業法32条が重ねてかかります。業法違反は実害・契約成立・広告回数を要件とせず、訂正広告でも消えません。制裁の主体だけは分けて持ってください。規約違反に動くのは公正取引協議会(警告・違約金・資格停止・除名・消費者庁長官への措置請求)、業法違反に動くのは免許権者(指示処分・業務停止処分・免許取消処分)です。広告規制の骨格は広告規制、表示基準の数字は不動産広告の表示基準、景品表示法と規約の関係は不当景品類及び不当表示防止法へ進んでください。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、宅建業法と問47の過去問を論点別に演習でき、おとり広告と二重価格表示の肢を続けて解くことができます。
宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。