報酬額の制限|46条と告示が定める上限の枠組み
宅建業法46条と報酬告示の構造を条文から整理。売買・交換と貸借の上限、権利金・低廉な空家等・長期の空家等の三つの特例、報酬以外に受け取れるもの、超過受領の効果まで解説します。
目次
本記事の役割 — この記事は報酬規制の枠組み、すなわち何がどの条文と告示のどこで決まっているかを扱います。ケース別の計算手順は報酬額計算のパターン別攻略、計算分野全体の横断整理は宅建の計算問題まとめにまとめてあるので、解き方を確認したい場合はそちらへ進んでください。
報酬額の制限は、数字が多く見える分野です。5パーセント、4パーセント、3パーセント、1か月分、2分の1、800万円、30万円。これを一列に暗記しようとすると崩れます。
しかし、この分野の数字はすべて一つの告示の中に、決まった順序で並んでいます。宅地建物取引業法46条1項が「国土交通大臣の定めるところによる」と委任し、その定めが昭和45年建設省告示第1552号です。告示は第一の定義から第十一の受領禁止まで、原則と特例が構造的に配置されています。
地図を先に持てば、数字は地図上の位置として覚えられます。この記事では告示の構造をたどりながら、どこで何が決まっているかを整理します。以下で引用する告示の内容は、令和6年6月21日国土交通省告示第949号による改正後のもの(同年7月1日施行)です。
報酬規制の枠組み
46条は四つの項からできている
出発点は宅地建物取引業法46条です。四つの項がそれぞれ別のことを定めています。
1項は、宅建業者が売買、交換または貸借の代理または媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによると定めます。法律自身は金額を書かず、大臣の定めに委任しています。
2項は、宅建業者は前項の額をこえて報酬を受けてはならないと定めます。これが超過受領の禁止です。
3項は、国土交通大臣は1項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならないと定めます。委任を受けた大臣の側の義務です。
4項は、宅建業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならないと定めます。
四つの項が、委任、遵守、告示、掲示という順に並んでいます。項番号と内容の対応は入れ替えて問われうるので、この順序で押さえてください。
要求しただけでも違反になる
46条2項が禁じているのは「受ける」ことですが、別の条文が「要求する」ことも禁じています。
47条は業務に関する禁止事項を列挙しており、その2号が「不当に高額の報酬を要求する行為」です。実際に受け取っていなくても、要求した時点で違反が成立します。47条全体の禁止行為は宅建業法47条の禁止行為にまとめています。
上限であって定額ではない
もう一点、制度の性格として押さえておくべきことがあります。告示が定めているのは上限であって、定額ではありません。
告示の各規定は「……以内とする」「……を超えてはならない」という書き方で統一されています。上限の枠内であれば、いくらにするかは当事者の合意によります。値引きも無料も、法律上は妨げられません。
「宅建業者は告示の定める額の報酬を受けなければならない」という記述は誤りになります。規制されているのは天井だけです。実際の報酬額は媒介契約で定めることになり、媒介契約書面の記載事項にもなっています(34条の2第1項7号)。媒介契約の3類型は媒介契約の3類型、書面の記載事項は媒介契約書の記載事項を参照してください。
告示の構造を地図として持つ
告示は次のように並んでいます。この並びを覚えておくと、どの場面がどこで扱われているかを迷わず引けます。
第一が定義(消費税等相当額)。第二が売買・交換の媒介、第三が売買・交換の代理。第四が貸借の媒介、第五が貸借の代理。ここまでが原則です。
そして特例が三系統続きます。第六が権利金の授受がある場合の特例、第七と第八が低廉な空家等(第七が媒介、第八が代理)、第九と第十が長期の空家等(第九が媒介、第十が代理)。
最後に第十一が、第二から第十まで以外の報酬の受領を禁じる規定です。
原則が四つ(第二から第五)、特例が三系統(第六、第七・第八、第九・第十)、締めが一つ(第十一)。この形を頭に入れておけば、「この場面はどこを見るのか」が即座に決まります。
告示はいつ改まったか
この告示は昭和45年10月23日建設省告示第1552号として定められ、その後たびたび改正されています。附則を追うと、消費税率の変更に対応した改正(平成元年、平成9年、平成16年、平成26年、令和元年)に加え、平成29年12月8日国土交通省告示第1155号(平成30年1月1日施行)で低廉な空家等の特例が導入され、令和6年6月21日国土交通省告示第949号(令和6年7月1日施行)で現在の内容になっています。
令和6年の改正で入ったのが、低廉な空家等の対象と上限の引上げ、そして長期の空家等の貸借の特例(第九・第十)の新設です。長期の空家等の特例は比較的新しい規定なので、改正前の教材には載っていないことがあります。この記事の内容は令和6年7月1日施行の現行告示によります。
なお、報酬をいつ受け取れるかについては、46条にも告示にも定めがありません。受領の時期を法令が直接規律しているわけではないという点は、条文を根拠に断定できる範囲として押さえておいてください。
売買・交換の報酬
告示の率は消費税込み
第二は、売買・交換の媒介について、業者が依頼者から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む)は、依頼者の一方につき、代金の額を次の区分に応じた割合を乗じて得た金額を合計した金額以内とする、と定めます。
区分と割合は、200万円以下の金額が100分の5.5、200万円を超え400万円以下の金額が100分の4.4、400万円を超える金額が100分の3.3です。
ここで二点確認してください。第一に、告示の率は消費税等相当額を含んだ数値です。一般に使われる5パーセント、4パーセント、3パーセントは税抜きの率で、これに1.1を乗じたものが告示の率にあたります。第二に、基礎となる代金の額からは消費税等相当額を含まないものとされています。基礎は税抜き、率は税込みという組み合わせです。
第三に、この額は依頼者の一方につき受けられる額です。売主からと買主からの双方から受ける場合は、それぞれについてこの枠が立ちます。
交換の場合は、交換に係る宅地建物の価額を代金の額とみなしますが、価額に差があるときはいずれか多い価額によります。「両方の価額を合計する」は誤りです。
いわゆる速算式は、この区分計算を一本の式にまとめた計算上の便法です。区分ごとに積み上げる作業を省略できますが、告示が定めているのは区分計算のほうだという点は押さえておいてください。計算の型は報酬額計算のパターン別攻略と仲介手数料の計算方法と上限にまとめています。
代理は二倍だが合計にも上限がある
第三は、売買・交換の代理について、依頼者から受けることのできる報酬の額は、第二の計算方法により算出した金額の二倍以内とすると定めます。
そしてただし書が重要です。業者が当該売買または交換の相手方からも報酬を受ける場合においては、その報酬の額と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額が、第二の計算方法により算出した金額の二倍を超えてはならない。
つまり、二倍という枠は取引全体で一つです。代理の依頼者から二倍を取ったうえで相手方からさらに受け取ることはできません。「代理なら二倍」だけを覚えて合計の制限を落とすと、選択肢を誤ります。
複数の業者が関与する場合
一つの取引に複数の宅建業者が関与することはよくあります。売主側と買主側で別の業者が媒介する場合です。
告示はこの場面を正面から規定していませんが、第二が「依頼者の一方につき」と定めていることから答えが導けます。枠は依頼者ごとに立つので、売主側の業者は売主から、買主側の業者は買主から、それぞれ第二の額を上限として受けられます。取引全体としては、第二の額の二倍が受け渡される計算になります。
一方の業者が売主・買主双方から媒介の依頼を受けている場合も、枠は依頼者ごとに二つ立つので、合計で第二の額の二倍までです。「一つの取引で動く報酬の総額は、媒介なら第二の額の二倍まで」という上限は、業者が何社関与しても変わりません。
代理が絡む場合は第三ただし書が明示的に合計を縛ります。媒介では枠の立ち方から、代理ではただし書から、同じ二倍という天井が出てくるという関係です。取引態様の区別そのものは取引態様の明示義務にまとめています。
貸借の報酬
双方合計で借賃の1.1倍
第四は、貸借の媒介について、業者が依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計額は、当該宅地建物の借賃の一月分の1.1倍に相当する金額以内とすると定めます。
売買が「依頼者の一方につき」であるのに対し、貸借は最初から双方の合計で枠が定められている点が構造的な違いです。借賃からも消費税等相当額を含まないものとされ、使用貸借の媒介の場合は通常の借賃によります。
居住用建物と承諾の時期
第四には続きがあります。居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の0.55倍に相当する金額以内とする。
読み解くべき点が二つあります。
第一に、この制限は居住用建物にのみかかります。宅地や事業用建物の貸借では、双方合計で1.1倍という枠の中であれば、一方からいくら受けるかの内訳に制限はありません。
ここでいう「居住の用に供する建物」とは、専ら居住の用に供する建物を指します。国土交通省の宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(第46条第1項関係1(3)④)は、居住の用に供する建物で事務所、店舗その他居住以外の用途を兼ねるものは含まれないと明示しています。つまり住居兼事務所や店舗併用住宅の賃貸借の媒介では、一方から0.55倍という内訳の制限はかかりません。双方合計で借賃の一月分の1.1倍という第四前段の枠だけが働き、その枠内でどちらからいくら受けるかは自由です。「居住用」という語から反射的に0.55倍を持ち出すと、兼用建物の事例で誤ります。
第二に、承諾の時期が条文で限定されています。「当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き」とあるので、承諾は媒介の依頼を受ける段階で得ていなければなりません。契約が成立した後に承諾を求めても、0.55倍を超えて受け取る根拠にはなりません。告示の文言そのものが時期を画しているので、ここは正確に覚えてください。賃貸仲介の実務は不動産賃貸の仲介業務で扱っています。
貸借の代理も1.1倍
第五は、貸借の代理について、依頼者から受けることのできる報酬の額は、借賃の一月分の1.1倍に相当する金額以内とすると定めます。
売買と違い、貸借では代理でも二倍にはなりません。貸借の媒介の双方合計と同じ1.1倍です。そしてただし書により、業者が当該貸借の相手方からも報酬を受ける場合は、その報酬の額と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額も1.1倍を超えてはなりません。
売買は媒介が一方につき、代理が二倍。貸借は媒介が双方合計、代理も同じ枠。この非対称が繰り返し問われます。
三つの特例
権利金の特例(第六)
第六は、宅地または建物(居住の用に供する建物を除く)の賃貸借で権利金の授受があるものの代理または媒介について、第四または第五の規定にかかわらず、当該権利金の額を売買に係る代金の額とみなして、第二または第三の規定によることができると定めます。
権利金とは、名義のいかんを問わず権利設定の対価として支払われる金銭であって返還されないものをいいます。返還される敷金は含まれません。
適用の際に注意すべきなのが、比較するときに単位を揃えることです。第四の借賃ベースの枠は「依頼者の双方から受ける報酬の合計額」であるのに対し、第六により第二を適用した権利金ベースの額は「依頼者の一方につき」受けられる額です。軸が違うものをそのまま並べると結論を誤ります。
例で確認します。事業用建物の賃貸借で、借賃が月額30万円、権利金が500万円(いずれも税抜き)の場合。
借賃ベースでは、双方から受ける合計額の上限が借賃の一月分、すなわち税抜きで30万円です。権利金ベースでは、500万円を代金とみなして第二を適用すると、依頼者の一方につき税抜きで21万円。双方から受ける前提に揃えると、21万円の二倍で42万円になります。
したがって、双方から受ける場合には権利金ベースの42万円のほうが高くなります。消費税等相当額を含めた表示に直すと、借賃ベースが33万円、権利金ベースが46万2000円です。借賃ベースの30万円と権利金ベースの21万円を並べて「借賃ベースが高い」と判断するのが典型的な誤りです。
一方からのみ受ける場合は、一方から受けられる額どうしで比べます。この例では、借賃ベースは双方合計30万円という枠の中で配分する話になり、権利金ベースは一方から21万円です。どちらの軸で問われているかを問題文から読み取ってから比べるという手順を固定してください。
なお第六は「第二又は第三の規定によることができる」としているので、代理の場合は第三を適用します。権利金を代金とみなしたうえで、代理なら二倍の枠が立つということです。
なお、この特例は居住用建物には適用されません。居住用建物の賃貸借では、権利金の授受があっても第四の枠のままです。
低廉な空家等の特例(第七・第八)
第七は、低廉な空家等の売買または交換の媒介に関する特例です。低廉な空家等とは、売買に係る代金の額(消費税等相当額を含まない)または交換に係る価額が800万円以下の宅地または建物をいいます。
内容はこうです。業者は、第二の規定にかかわらず、当該媒介に要する費用を勘案して、第二の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受けることができる。この場合において、当該依頼者から受ける報酬の額は30万円の1.1倍に相当する金額を超えてはならない。
条文の書きぶりを確認してください。「依頼者から」であって、売主に限定されていません。また上限は「30万円の1.1倍」、すなわち33万円です。
第八が代理についての特例で、業者が依頼者から受けることのできる報酬の額は、第三の規定にかかわらず、第七の規定により算出した金額の二倍以内とします。ただし相手方からも報酬を受ける場合は、合計額も第七により算出した金額の二倍を超えてはなりません。代理は媒介と同じではなく、二倍の枠が立つという点に注意してください。
条文の書きぶりでもう一点、見落とされやすい部分があります。第七は「当該媒介に要する費用を勘案して、第二の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受けることができる」としています。800万円以下でありさえすれば自動的に33万円を受けられる、という規定ではありません。現地調査等に実際に費用を要することが前提で、その費用を勘案した範囲で第二の額を超えられ、その上限が30万円の1.1倍だという構造です。
「代金が800万円以下の宅地の売買の媒介であれば、常に33万円まで報酬を受けることができる」という記述は、この「費用を勘案して」という要件を落としている点で不正確になります。
なお、この特例を適用するには、媒介契約の締結に際してあらかじめ上限の範囲内で報酬額について依頼者に説明し、合意を得ることが求められています。これは告示本文ではなく、国土交通省が示す宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方によるものです。合意なく一方的に増額することはできません。
長期の空家等の特例(第九・第十)
令和6年の改正では、貸借についても特例が新設されました。旧来の解説には載っていないことがあるので、現行の内容を確認しておいてください。
第九は、長期の空家等の貸借の媒介についての特例です。長期の空家等とは、現に長期間にわたって居住の用、事業の用その他の用途に供されておらず、または将来にわたりこれらの用途に供される見込みがない宅地または建物をいいます。
内容は、依頼者の双方から受ける報酬の合計額について、第四の規定にかかわらず、借主である依頼者から受ける報酬の額が借賃の一月分の1.1倍(居住の用に供する長期の空家等にあっては、媒介の依頼を受けるに当たって当該借主の承諾を得ている場合を除き0.55倍)に相当する金額以内である場合に限り、当該媒介に要する費用を勘案して、第四により算出した金額を超えて、借賃の一月分の2.2倍に相当する金額を超えない範囲内で報酬を受けることができる、というものです。
借主側の負担は増やさないという条件つきで、双方合計の枠を2.2倍まで広げる設計です。増える分は貸主側が負担する形になります。
第十が代理についての特例で、こちらも借賃の一月分の2.2倍に相当する金額以内とされています。
報酬以外に受け取れるもの
第十一①は、締めの規定です。宅地建物取引業者は、売買、交換または貸借の代理または媒介に関し、第二から第十までの規定によるほか、報酬を受けることができない。
そのうえで、ただし書がただ一つの例外を置いています。「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額については、この限りでない」。
条文が認めているのはこれだけです。依頼者の依頼によって行う広告の料金であって、業者の判断で行う通常の広告の費用は報酬に含まれます。文言も「依頼によって行う」であり、「特別の依頼による」ではありません。広告そのものの規制は広告に関する規制にまとめています。
実務では、依頼者の特別の依頼により行う遠隔地への出張の費用なども別途受領できるとされていますが、これは告示本文ではなく解釈・運用の考え方によるものです。告示に書いてあるのは広告の料金だけという区別は押さえておいてください。
免税事業者の場合は計算が変わる
見落とされやすいのが、第十一②の免税事業者に関する規定です。
そもそも第二は、適用対象を「宅地建物取引業者(課税事業者である場合に限る)」と限定しています。第三から第五まで、第七から第十まで、第十一①も同じです。つまり告示の本則は課税事業者を前提に組まれています。
免税事業者については第十一②が別に定めます。受けることのできる報酬の額は、第二から第十までの規定に準じて算出した額に110分の100を乗じて得た額、当該代理または媒介における仕入れに係る消費税等相当額、および①ただし書に規定する額(依頼者の依頼によって行う広告の料金)を合計した金額以内とする、と。
110分の100を乗じるのは、告示の率が消費税等相当額を含んだ数値だからです。免税事業者は消費税を納める義務がないので、いったん税抜きの水準まで戻したうえで、自らが仕入れの段階で負担した消費税相当額を加算する、という組み立てになっています。課税事業者と免税事業者で上限額が違うという結論だけでも押さえておいてください。
そして、加算できる仕入れに係る消費税等相当額には上限があります。国土交通省の解釈・運用の考え方(第46条第1項関係5)は、告示第二から第十までに準じて算出した額に110分の100を乗じて得た額を「税抜金額」と呼んだうえで、仕入れに係る消費税等相当額をコスト上昇要因として価格に転嫁できるとし、「この場合、仕入れに係る消費税等相当額は、税抜金額の0.04倍を限度とする」としています。
したがって免税事業者が受けられる報酬の上限は、税抜金額に加算できる分を上限まで乗せても税抜金額の1.04倍までです。課税事業者の1.1倍と比べて低く抑えられている、という関係になります。加算できること自体は覚えていても0.04倍という限度を落としている受験者が多いので、ここまで押さえてください。
なお、この転嫁される金額は報酬額の一部であって、消費税および地方消費税として別途受け取るものではないとされています。報酬の枠の外に置かれる第十一①ただし書の広告料金とは、性格が違います。
上限を超えたらどうなるか
罰則は「要求」のほうが重い
超過して報酬を受け取れば46条2項違反です。これは82条2号により100万円以下の罰金の対象になります。掲示義務(46条4項)に違反した場合は83条2号により50万円以下の罰金です。
そして注目すべきなのが、47条2号の不当に高額の報酬を要求する行為の罰則です。80条は、47条2号に掲げる行為をした者を1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定めています。
つまり、実際に受け取った場合(46条2項違反、100万円以下の罰金)よりも、要求しただけの場合(47条2号違反、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、併科可)のほうが重い。直感に反しますが、不当に高額な要求そのものの悪質性が高く評価されているためと理解できます。罰則の全体像は宅建業法の罰則一覧にあります。
監督処分と私法上の効果
罰則とは別に、監督処分の対象にもなります。65条1項の指示処分、同条2項の業務停止処分、情状が特に重ければ66条1項9号による免許取消しに至ります。処分の段階は監督処分にまとめています。
私法上は、上限を超えて受領した部分について法律上の原因がないことになるため、民法703条の不当利得として返還義務が生じます。行政上の責任と刑事責任と私法上の責任が、それぞれ別に発生するという構造です。
試験での出題ポイント
46条の項番号
「宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に報酬の額を掲示しなければならない」は46条4項です。2項は超過受領の禁止、3項は国土交通大臣の告示義務。項番号を入れ替えた選択肢に注意してください。
上限か定額か
「宅地建物取引業者は、国土交通大臣が定めた額の報酬を受けなければならない」は誤りです。告示は「……以内とする」と定めており、上限を画すだけです。枠内でいくらにするかは当事者の合意によります。
代理の二倍と合計の制限
「売買の代理を依頼された宅地建物取引業者は、代理の依頼者から媒介の二倍の報酬を受けたうえで、さらに相手方からも報酬を受けることができる」は誤りです。第三ただし書により、合計額も第二の二倍を超えられません。
貸借の代理
「貸借の代理の報酬の上限は、貸借の媒介の場合の二倍である」は誤りです。第五は借賃の一月分の1.1倍とし、相手方からも受ける場合の合計も同じ枠です。二倍になるのは売買・交換の代理だけです。
居住用建物の承諾の時期
「居住用建物の賃貸借の媒介において、契約成立後に依頼者の承諾を得れば、当該依頼者から借賃の一月分の1.1倍に相当する額を受けることができる」は誤りです。第四は「当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き」と時期を限定しています。事後の承諾では根拠になりません。
対象のほうも問われます。第四後段の「居住の用に供する建物」は専ら居住用のものに限られ、事務所や店舗を兼ねるものは含まれません(解釈・運用の考え方 第46条第1項関係1(3)④)。したがって住居兼事務所の賃貸借の媒介では、承諾がなくても一方から0.55倍を超えて受けられます。双方合計の1.1倍という枠だけが働くからです。
権利金の特例の対象
「居住用建物の賃貸借において権利金の授受があるときは、権利金の額を代金とみなして計算できる」は誤りです。第六は「宅地又は建物(居住の用に供する建物を除く)」と明記しています。
低廉な空家等の上限と対象
上限は「30万円の1.1倍」であって30万円ではありません。また対象は代金の額が800万円以下で、これは消費税等相当額を含まない額です。代理の場合は第八により第七により算出した金額の二倍以内になります。
報酬以外に受け取れるもの
「宅地建物取引業者は、依頼者の依頼によらない通常の広告の料金を報酬とは別に受領することができる」は誤りです。第十一①ただし書が認めているのは依頼者の依頼によって行う広告の料金に限られます。
課税事業者を前提にしている
第二から第五まで、第七から第十まで、第十一①は、いずれも適用対象を課税事業者である宅地建物取引業者に限定しています。免税事業者については第十一②が別の計算方法を定めており、第二から第十までに準じて算出した額に110分の100を乗じた額に、仕入れに係る消費税等相当額等を加えた額が上限になります。「告示の額はすべての宅地建物取引業者に一律に適用される」という記述は正確ではありません。
このとき加算できる仕入れに係る消費税等相当額は、税抜金額の0.04倍が限度です(解釈・運用の考え方 第46条第1項関係5)。上限まで乗せても税抜金額の1.04倍にとどまり、課税事業者の1.1倍には届きません。「免税事業者は仕入れに係る消費税等相当額を制限なく加算できる」という記述は誤りになります。
覚え方・整理の仕方
告示の並びを地図にする
数字を覚える前に、告示の並びを覚えてください。
第二・第三が売買と交換(媒介・代理)、第四・第五が貸借(媒介・代理)。ここまでが原則。第六が権利金、第七・第八が低廉な空家等、第九・第十が長期の空家等。ここまでが特例。第十一が締め。
原則は「売買・貸借 × 媒介・代理」の四マス、特例は三系統、締めが一つ。問題文を読んだら、まずどのマスかを決める。特例の要件に当たらなければ原則のマスで処理する。この順序を固定すれば、特例を見落としたり原則に特例を混ぜたりしません。
「一方につき」か「双方合計」か
売買と貸借で最も違うのが、枠の立ち方です。
売買・交換の媒介は「依頼者の一方につき」(第二)。だから双方から受ければ枠が二つ立ちます。貸借の媒介は「依頼者の双方から受ける報酬の合計額」(第四)。最初から一つの枠です。
この違いが、代理の扱いにもつながります。売買の代理が二倍になるのは、媒介の枠が一方につき立つものだからです。貸借の代理が二倍にならないのは、媒介の枠がもともと双方合計だからです。枠の立ち方から代理の扱いが導けるので、丸暗記は要りません。
三つの特例は「何を対象にするか」で分ける
特例が三系統あるので、どれがどの場面かを混同しがちです。対象で分けてください。
第六の権利金は、貸借の場面で権利金の授受があるときの特例です。居住用建物は除かれます。効果は、貸借の枠(第四・第五)ではなく売買の枠(第二・第三)で計算できるようにすること。
第七・第八の低廉な空家等は、売買・交換の場面で代金が800万円以下のときの特例です。効果は、第二の額を超えて30万円の1.1倍まで受けられるようにすること。
第九・第十の長期の空家等は、貸借の場面で長期間使われていない物件のときの特例です。効果は、双方合計の枠を借賃の一月分の2.2倍まで広げること。
権利金は貸借を売買に読み替える特例、低廉な空家等は売買の上限を引き上げる特例、長期の空家等は貸借の上限を引き上げる特例。三つの効果がそれぞれ違うので、効果とセットで覚えると混ざりません。
三つの承諾・合意を区別する
告示には、依頼者の意思を要件とする場面が三つ出てきます。混同しやすいので分けてください。
居住用建物の貸借では、一方から0.55倍を超えて受けるために、媒介の依頼を受けるに当たっての承諾が要ります(第四)。長期の空家等の居住用でも、借主から0.55倍を超えて受けるために同じく依頼を受けるに当たっての承諾が要ります(第九)。低廉な空家等では、媒介契約の締結に際してあらかじめ報酬額を説明し合意を得ることが求められます(解釈・運用の考え方)。
いずれも取引が成立した後ではなく、依頼を受ける段階で必要という点が共通しています。「あとから承諾を取れば増額できる」という選択肢は、どの場面でも誤りだと覚えてください。
税抜きと税込みの向きを固定する
消費税の扱いは、向きを一つ覚えれば足ります。基礎になる代金や借賃は税抜き、報酬の上限額は税込み。
告示の率が5.5、4.4、3.3という数値なのも、貸借が1.1倍、0.55倍という数値なのも、いずれも消費税等相当額を含んだ数値だからです。よく使われる5パーセント、4パーセント、3パーセントや「1か月分」「2分の1」は、税抜きに直した言い方です。告示の数値と一般に使われる数値の関係が1.1倍であることを押さえておけば、どちらで問われても対応できます。数字の横断整理は宅建業法の数字まとめにあります。
罰則は「要求」が重いと覚える
超過受領(46条2項、82条2号、100万円以下の罰金)と、不当に高額の報酬の要求(47条2号、80条、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、併科可)。要求のほうが重い。
直感に反するからこそ記憶に残ります。この一点を覚えておけば、罰則の重さを比較する選択肢に反応できます。科目全体での位置づけは宅建業法の全体像、論点別の入口は宅建業法の頻出論点にまとめています。
理解度チェッククイズ
問1 宅地建物取引業者が宅地の貸借の代理を行う場合、依頼者から受けることのできる報酬の額の上限は、貸借の媒介の場合において依頼者の双方から受けることのできる報酬の合計額の二倍である。
答え:×。報酬告示第五は、貸借の代理に関して依頼者から受けることのできる報酬の額を、借賃の一月分の1.1倍に相当する金額以内と定めており、貸借の媒介について第四が定める双方合計の枠と同じです。二倍にはなりません。しかも第五ただし書により、業者が当該貸借の相手方からも報酬を受ける場合には、その合計額も借賃の一月分の1.1倍を超えてはなりません。二倍になるのは売買・交換の代理(第三)だけです。
問2 居住の用に供する建物の賃貸借の媒介において、宅地建物取引業者は、契約が成立した後に依頼者の承諾を得れば、その依頼者から借賃の一月分の1.1倍に相当する額の報酬を受けることができる。
答え:×。報酬告示第四は、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額を、「当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の0.55倍に相当する金額以内」と定めています。承諾は媒介の依頼を受ける段階で得ている必要があり、契約成立後に承諾を求めても0.55倍を超えて受け取る根拠にはなりません。なお双方から受ける合計額は、いずれにせよ借賃の一月分の1.1倍が上限です。
問3 事業用建物の賃貸借で権利金の授受がある場合において、権利金の額を売買に係る代金の額とみなして算出した額が、借賃の一月分をもとに算出した額より低いときは、常に借賃をもとに算出した額が上限となる。
答え:×。比較にあたっては軸を揃える必要があります。報酬告示第四の借賃ベースの枠は「依頼者の双方から受ける報酬の合計額」であるのに対し、第六により第二を適用した権利金ベースの額は「依頼者の一方につき」受けられる額です。したがって双方から受ける場合は、権利金ベースの額を二倍にしてから比べなければなりません。一方から受けられる額どうしを並べて「借賃ベースが高い」と判断すると誤ります。なお第六は居住の用に供する建物には適用されません。
問4 宅地建物取引業者は、宅地の売買の媒介に関し、依頼者の依頼によらずに行った広告の料金に相当する額を、報酬とは別に依頼者から受け取ることができる。
答え:×。報酬告示第十一①は、業者は第二から第十までの規定によるほか報酬を受けることができないとしたうえで、ただし書で「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額については、この限りでない」と定めています。認められているのは依頼者の依頼によって行う広告の料金だけで、依頼によらない通常の広告の費用は報酬に含まれます。
問5 宅地建物取引業者が不当に高額の報酬を要求した場合、実際にはその額を受領しなかったとしても、宅地建物取引業法違反となる。
答え:○。47条2号は「不当に高額の報酬を要求する行為」を禁じており、受領の有無を問いません。罰則も80条により1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科とされています。実際に上限を超えて受領した場合の46条2項違反は82条2号により100万円以下の罰金ですから、要求しただけの場合のほうが法定刑は重いという関係になります。
まとめ
- 枠組みは宅地建物取引業法46条にあります。1項が国土交通大臣への委任、2項が超過受領の禁止、3項が大臣の告示義務、4項が事務所ごとの掲示義務です。告示が定めるのは上限であって定額ではなく、枠内の額は当事者の合意によります。不当に高額の報酬を要求する行為は47条2号が別に禁じています。
- 報酬告示は、原則が四つ(第二=売買・交換の媒介、第三=同代理、第四=貸借の媒介、第五=同代理)、特例が三系統(第六=権利金、第七・第八=低廉な空家等、第九・第十=長期の空家等)、締めが一つ(第十一)という構造です。売買の媒介は「依頼者の一方につき」、貸借の媒介は「双方から受ける合計額」で枠が立ち、この違いから代理の扱い(売買は二倍、貸借は同じ枠)が導けます。
依頼者の意思を要件とする場面は三つあり、いずれも依頼を受ける段階で必要です。居住用建物の貸借で0.55倍を超えるための承諾(第四)、長期の空家等の居住用で借主から0.55倍を超えるための承諾(第九)、低廉な空家等で報酬額について説明し合意を得ること(解釈・運用の考え方)。事後の承諾では根拠になりません。
超過して受領すれば46条2項違反として82条2号により100万円以下の罰金、掲示義務違反は46条4項違反として83条2号により50万円以下の罰金です。他方、不当に高額の報酬を要求する行為(47条2号)は80条により1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科とされており、要求しただけのほうが法定刑は重くなります。監督処分と、民法703条の不当利得としての返還義務も、それぞれ別に生じます。
報酬額の上限と特例の適用場面は、宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングで論点ごとに演習できます。
宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。