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専任の宅建士の設置義務|5人に1人の数え方

宅建業法 読了 約49分

宅建業法31条の3の専任の宅建士の設置義務を条文根拠つきで解説。事務所の5分の1以上という割合の数え方、案内所等の1人以上、50条2項の届出、常勤性と専従性、欠けた場合の2週間の措置まで整理します。

目次

    この記事は、宅建業法31条の3が定める専任の宅地建物取引士の設置義務を、条文の構造に沿って整理するものです。事務所そのものの要件は宅建業の事務所の要件に、宅建士個人の登録手続は宅建士の登録と宅建士証に譲り、ここでは「どこに何人置くのか」「誰を専任と呼べるのか」「欠けたらどうするのか」に絞ります。

    結論を先に述べます。この論点で問われるのは、ほぼ三つです。事務所は業務に従事する者の数に対して5分の1以上、事務所以外の場所(案内所等)は1人以上という割合の違い。設置義務がかかるのは、契約を締結し、または契約の申込みを受ける場所に限られるという範囲の限定。そして要件を欠いたときは2週間以内に適合させる措置を執らなければならないという期限。この三点を条文番号ごと言い切れる状態になれば、本試験でこの分野を落とすことはほぼなくなります。

    なお、条文の解釈のうち条文自体に書かれていない部分は、国土交通省が示している「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日施行版)に依拠します。以下でこの通達に触れるときは、そのつど断ります。

    以下では、なぜその数字なのかという趣旨から始めて、数え方、場所の範囲、届出、専任性の中身、名義の問題、免許との関係、欠けた場合の効果、そしてクーリング・オフとの連動まで順に見ていきます。

    何のための規制か

    宅建士の関与を取引の現場に常時確保する

    宅地建物の取引は、当事者にとって一生に何度もない高額な取引であり、法令上の制限や権利関係など専門的な確認事項が多数あります。そこで宅建業法は、重要事項の説明(35条)や37条書面への記名といった中核的な行為を宅建士の独占業務とし、専門家の関与を強制しました。独占業務の中身は宅建士の独占業務3つで扱っています。

    しかし、独占業務を定めるだけでは足りません。宅建士が名義だけ存在して現場にいなければ、実際の説明は無資格者が行い、宅建士は記名だけするという運用になりかねないからです。そこで31条の3は、業務が行われる場所ごとに、一定数の宅建士を常時配置することを業者に義務づけました。独占業務の規定が「誰がやるか」を定める規律だとすれば、31条の3は「そこに人がいる状態を作れ」という規律です。

    この趣旨は、後で見る条文の細部をすべて説明します。設置義務がかかるのが「契約を締結し、または申込みを受ける場所」に限られるのも、専任性の中身が常勤と専従で構成されるのも、2週間という短い是正期間が置かれているのも、すべて「購入の判断が行われる現場に専門家が居続けること」を確保するための設計です。

    業者に課される義務であって、宅建士に課される義務ではない

    条文の主語を確認しておきます。31条の3第1項は「宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条及び第五十条第一項において「事務所等」という。)ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない」と定めています。義務を負うのは宅建業者であって、宅建士ではありません。

    したがって、専任の宅建士が不足した状態が生じたときに責任を問われるのも業者です。ただし、後述するとおり、宅建士の側にも「他の事務所の専任である旨の表示を業者に許した」という形で監督処分を受ける場面があります(68条1項1号)。業者の義務と宅建士の義務の切り分けは宅建業者と宅建士の義務の違いで整理しています。

    条文の括弧書きにも注意しておきます。「事務所等」という語は、31条の3第1項の括弧書きで定義され、その定義は同条と50条1項でだけ使われます。8種制限のクーリング・オフ(37条の2)にも「事務所等」という語が出てきますが、あちらは別に定義された語で、範囲が一致しません。この二重定義の構造については宅建業の事務所の要件を参照してください。

    条文は三つの項で構成されている

    31条の3は三項からなり、それぞれ役割が違います。第1項が設置義務の本体で、場所ごとに国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅建士を置くことを命じます。第2項が、業者本人または法人の役員が宅建士である場合のみなし規定です。第3項が、要件に抵触する事務所等を開設してはならないこと、および既存の事務所等が抵触するに至ったときの2週間以内の措置義務を定めます。

    三項のどれを引用しているかで、他の条文の効き方も変わります。1項を引くのは、免許申請書の記載事項(4条1項5号)と添付書類(4条2項5号、および専任の宅建士の略歴を記載した書類を求める規則1条の2第1項7号)、標識と届出(50条1項・2項)、置くべき場所と数を定める省令(規則15条の5の2、15条の5の3)、そしてクーリング・オフの適用除外場所(規則16条の5第1号)です。2項が引かれるのは、4条1項5号と規則15条の5の3の括弧書き、すなわち「みなされる者を含む」という数え方の部分だけです。3項を引くのは、業務停止(65条2項2号、65条4項2号)と罰則(82条2号)、つまり違反の効果の側だけです。免許の基準である5条1項15号だけは項を特定せず「第三十一条の三に規定する要件」と条ごと引いています。

    したがって、問題文が是正義務や処分の話をしていれば3項、置くべき場所や人数の話をしていれば1項と省令、みなしの話をしていれば2項、と当たりがつきます。

    条ごと引かれる場面がもうひとつあります。77条2項は、宅建業を営む信託会社について、3条から7条まで・12条・25条7項・66条・67条1項を除いて大臣免許の宅建業者とみなす、と定めています。除外されているのは免許と免許取消しに関する規定だけなので、31条の3は適用されます。信託会社は免許を受けずに宅建業を営めますが、事務所には専任の宅建士を置かなければならない、ということです。実際、規則31条1項4号は、信託会社が77条3項により大臣へ行う届出の記載事項として「事務所ごとに置かれる法第三十一条の三第一項に規定する宅地建物取引士の氏名」を挙げています。これに対して77条の2第2項(登録投資法人)と77条の3第2項(特例事業者)は、除外する規定の列に31条の3、35条、35条の2、37条、48条から50条までを加えており、こちらには設置義務が及びません。「免許が要らない」ことと「専任の宅建士が要らない」ことは別だ、という切り分けが条文に書かれています。

    • 独占業務が「誰がやるか」を定め、31条の3が「そこに人がいる状態」を義務づける
    • 義務を負うのは業者。宅建士個人ではない
    • 1項が設置義務、2項がみなし規定、3項が開設禁止と2週間の措置
    • 1項は場所と人数、2項はみなし、3項は違反の効果と、他の条文からの引かれ方が分かれる
    • 免許不要の信託会社(77条)にも設置義務は及ぶ。登録投資法人・特例事業者は適用除外

    事務所における設置基準

    5分の1以上という割合

    事務所に置くべき専任の宅建士の数は、施行規則15条の5の3に定められています。同条は「法第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める数は、事務所にあつては当該事務所において宅地建物取引業者の業務に従事する者の数に対する同項に規定する宅地建物取引士(同条第二項の規定によりその者とみなされる者を含む。)の数の割合が五分の一以上となる数、前条に規定する場所にあつては一以上とする」と規定しています。これが俗に言う「5人に1人」です。

    条文が「5人につき1人」ではなく「5分の1以上となる数」と書かれている点には意味があります。人数で割り切って考えるのではなく、割合として満たしているかを見るという形になっているため、端数が出た場合の処理が条文から素直に導けます。

    もうひとつ、括弧書きにも注目してください。分子に数えるのは「同条第2項の規定によりその者とみなされる者を含む」宅建士です。つまり、後述するみなし規定によって専任とみなされた業者本人や役員も、割合計算の分子に算入されます。みなし規定は人数の計算から事務所を外す規定ではなく、必要な人数のうち1人を埋める規定だ、ということが条文の括弧書きから読み取れます。

    端数は切り上げになる

    業務に従事する者が6人の事務所を考えます。専任の宅建士が1人だと、割合は6分の1であり、5分の1に届きません。したがって2人必要です。11人なら、2人では11分の2で足りず、3人必要になります。要するに、業務に従事する者の数を5で割って、割り切れなければ切り上げるという計算になります。

    具体的には、1人から5人までは1人以上、6人から10人までは2人以上、11人から15人までは3人以上、16人から20人までは4人以上、21人から25人までは5人以上です。試験では20人前後までの数字が使われることが多いので、この範囲を即答できるようにしておきます。

    計算そのものは難しくありませんが、本試験では「業務に従事する者が11人いる事務所に専任の宅建士を2人置いている」という形で、数字がわずかに足りない状態を作って正誤を問うてきます。5で割って切り上げる、という手順を機械的に実行できるようにしておくのが確実です。

    事務所ごとに判定し、全社の合計では見ない

    割合は「当該事務所において」業務に従事する者を分母として計算します。会社全体の従業者数に対して会社全体の専任の宅建士の数が5分の1以上あればよい、という計算ではありません。本店に専任の宅建士を多く配置しても、支店の割合が不足していれば、その支店について31条の3第1項違反です。

    この点は「事務所の数」が効いてくる場面のひとつです。宅建業法は、事務所がいくつあるかによって免許権者、営業保証金の供託額、標識や名簿の備付け場所を決めています。営業保証金であれば主たる事務所1,000万円、その他の事務所1か所につき500万円という計算になりますし(25条2項、施行令2条の4)、この点は営業保証金の供託で扱っています。専任の宅建士の設置義務も、その「事務所ごとに判定する」系列の義務です。

    人数が増えたときに何が起きるか

    事務所の従業者が増えて割合を下回った場合も、31条の3第3項の適用場面です。専任の宅建士が辞めた場合だけが問題になるのではありません。5人だった事務所に1人採用して6人になれば、専任の宅建士は2人必要になり、1人のままなら「抵触するに至つたとき」に該当します。

    この点は見落とされやすく、「専任の宅建士が退職した場合に限り2週間以内の措置が必要である」という形で誤りの選択肢が作られます。条文は原因を限定していません。割合を満たさなくなった事実があれば、原因が何であれ措置義務が生じます。宅建士が病気で長期に勤務できなくなった場合、他の事務所へ異動した場合、宅建士証の有効期間が切れた場合も同じです。

    • 事務所は「業務に従事する者に対して5分の1以上」。端数は切り上げ
    • 分子にはみなし規定で専任とみなされた者も算入される(規則15条の5の3の括弧書き)
    • 判定は事務所ごと。会社全体の合計では見ない
    • 宅建士が減った場合だけでなく、従業者が増えた場合も抵触する

    分母に誰を数えるか

    条文ではなく通達が範囲を決めている

    割合の分母になる「業務に従事する者」の範囲は、条文には書かれていません。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の第31条の3第1項関係2が、規則15条の5の3の解釈としてこれを示しています。しかも、宅建業だけを営む場合と、他の業種を兼業している場合とで、書き分けられています。この書き分けを知っているかどうかが、この論点の実質です。

    宅建業のみを営む場合

    同通達は、宅建業のみを営む者の場合について、原則として代表者、役員(非常勤の役員を除く)およびすべての従業員等が含まれ、受付、秘書、運転手等の業務に従事する者も対象となる、としています。そのうえで、宅地建物の取引に直接的な関係が乏しい業務に臨時的に従事する者はこれに該当しない、という除外を置いています。

    読み取るべき点は三つです。第一に、代表者が含まれること。第二に、非常勤の役員は除かれること。役員だから当然に入る、という理解は誤りで、常勤かどうかで分かれます。第三に、受付・秘書・運転手まで明示的に列挙されていること。営業担当者だけを数えればよい、という発想は条文解釈として成り立ちません。

    除外される「臨時的に従事する者」は、繁忙期に短期間だけ雇い入れて事務の補助をさせるような場合を想定したものです。ここで効いているのは「臨時的」という限定であって、雇用形態そのものではありません。パートタイムであっても継続的に宅建業の業務に従事しているなら、分母に入ります。

    他の業種を兼業している場合

    兼業の場合、同通達は、代表者、宅建業を担当する役員(非常勤の役員および主として他の業種も担当し宅建業の業務の比重が小さい役員を除く)、および宅建業の業務に従事する者が含まれる、としています。そのうえで、宅建業を主として営む者にあっては、全体を統括する一般管理部門の職員も該当する、と付け加えています。

    つまり、一般管理部門の職員を分母に入れるかどうかは、その会社が宅建業を主として営んでいるかどうかで変わります。建設業が主体で宅建業を従たる事業として営んでいる会社の総務部員は、当然に分母に入るわけではありません。逆に、宅建業が主体の会社であれば、宅建業に直接タッチしない管理部門の職員も分母に入ります。

    したがって、「兼業の場合は全従業員を数える」という断定的な選択肢は誤りですし、「兼業の場合は宅建業の営業担当者だけを数える」という断定も正確ではありません。役員については比重による除外があり、管理部門については主従による扱いの違いがある、という二段構えで押さえます。

    従業者証明書の範囲とはずれている

    同じ通達の第48条第1項関係は、従業者証明書を携帯させるべき者の範囲について、代表者(いわゆる社長)を含み、かつ「法第31条の3第1項で定める従事者の範囲」に、非常勤の役員と、単に一時的に事務の補助をする者を加えるものとする、としています。

    つまり、従業者証明書の対象範囲は、専任の宅建士の分母よりも広い、という関係になります。非常勤役員と一時的な補助者は、分母には入らないが従業者証明書は必要だ、というずれです。通達がわざわざ「法第31条の3第1項で定める従事者の範囲」を引いたうえで二つを足しているので、範囲が意識的にずらされていることが読み取れます。従業者証明書と従業者名簿の中身は従業者名簿と帳簿にまとめてあります。

    出題では、この二つの範囲を入れ替えてきます。「非常勤の役員には従業者証明書を携帯させる必要がない」は誤り、「非常勤の役員は専任の宅建士の割合を算定する分母に含まれる」も誤りです。同じ人物について、制度ごとに答えが逆になる点が狙われます。

    • 分母の範囲を決めているのは条文ではなく解釈・運用の考え方
    • 専業なら代表者と全従業員(受付・秘書・運転手を含む)。非常勤役員と臨時的従事者は除く
    • 兼業なら宅建業を担当する役員と宅建業の業務に従事する者。一般管理部門は宅建業を主として営む場合に含む
    • 従業者証明書の範囲は、この分母に非常勤役員と一時的補助者を足したもの

    案内所等における設置基準

    事務所以外の場所は1人以上で足りる

    施行規則15条の5の3は、事務所以外の場所については、置くべき専任の宅建士の数を1以上と定めています。ここが事務所との最大の違いです。案内所にどれだけ多くの従業者を配置しても、専任の宅建士は1人いれば足ります。

    事務所と扱いが違うのは、案内所等が期間限定で特定の物件について設けられる臨時的な場所であり、宅建業の拠点として継続的に機能する事務所とは性質が異なるためです。逆に言えば、事務所に該当するかどうかで必要人数が変わるので、その場所が事務所なのか案内所等なのかという判断が先に来ます。

    判断の分かれ目は、通達が明示しています。第31条の3第1項関係1(3)は、規則15条の5の2第1号に当たる場所を「令第1条の2と同等程度の事務所としての物的施設を有してはいるが、宅地建物取引業に係る契約締結権限を有する者が置かれない場所」と説明し、不特定の物件の契約を行う等、継続的に取引の相手方に対して契約締結権限を行使する者が置かれることとなる場合は、令1条の2第2号の「事務所」に該当するとしています。施行令1条の2第2号は事務所を「継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの」と定義しており、この定義との差が「契約締結権限者を常置しているか」の一点にあることがわかります。事務所の定義そのものは宅建業の事務所の要件で扱っています。

    設置義務がかかる四つの場所

    どこが「事務所その他国土交通省令で定める場所」に当たるかは、施行規則15条の5の2に列挙されています。挙げられているのは次の四種類です。

    第一に、継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、事務所以外のもの。第二に、宅建業者が10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物の分譲を案内所を設置して行う場合の、その案内所。第三に、他の宅建業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理または媒介を案内所を設置して行う場合の、その案内所。第四に、宅建業者が業務に関し展示会その他これに類する催しを実施する場合の、これらの催しを実施する場所です。

    10区画・10戸という数字は、分譲の規模が小さければ案内所を設けても規制の対象にしないという線引きです。9区画の分譲のために設けた案内所は、この規定の場所には当たりません。数字が入れ替えられる出題があるので、10という数字と、区画(宅地)と戸(建物)の対応を正確に覚えます。

    第四号の「展示会その他これに類する催し」については、通達が具体例を挙げています。宅地建物の取引や媒介契約の申込みを行う不動産フェア、宅地建物の買い換え・住み替えの相談会、一時に多数の顧客が対象となる場合に設けられる抽選会、売買契約の事務処理等を行う場所その他催しとして期間を限って開催されるもの、とされています。会場が仮設であるかどうかや、期間が短いかどうかは、この号の該当性を左右しません。

    契約を締結し、または申込みを受けるかどうかで分かれる

    四つの場所を覚えただけでは足りません。施行規則15条の5の2の柱書は、これらのうち「宅地若しくは建物の売買若しくは交換の契約(予約を含む。)若しくは宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介の契約を締結し、又はこれらの契約の申込みを受けるもの」に限る、という限定をかけています。

    柱書は二段に分かれています。自ら当事者となる契約については「売買若しくは交換」だけで、貸借が入っていません。自ら貸借を行う行為はそもそも宅建業に当たらないからです(2条2号。宅建業の「業」に当たるケースを参照)。これに対して代理・媒介の契約については「売買、交換若しくは貸借」と書かれており、貸借が入っています。したがって、賃貸物件の媒介契約を締結し、または申込みを受ける案内所は、設置義務の対象です。「案内所の設置義務は売買に限られる」という選択肢は誤りになります。

    そのうえで、案内所として設けられていても、そこでは物件の紹介と資料の配布しか行わず、契約の締結も申込みの受付も行わないのであれば、専任の宅建士を置く必要はありません。これは案内所の論点で最も出題される部分です。

    さらに注意したいのは、契約の締結だけでなく「申込みを受ける」ことも要件に含まれている点です。「契約は本店で締結し、案内所では申込みを受け付けるだけである」という事情は、設置義務を免れる理由になりません。むしろ典型的なひっかけの形です。申込みを受ける時点で、購入判断に関わる説明が行われるからこそ、専門家の関与が必要とされているわけです。

    通達は「契約の申込み」の意味も定義しています。第31条の3第1項関係1(2)は、「契約の申込み」とは契約を締結する意思を表示することをいい、物件の購入のための抽選の申込み等、金銭の授受を伴わないものも含まれる、としています。手付や申込証拠金を受け取っていないことは、設置義務を免れる理由になりません。

    同関係1(1)は、逆方向の要請も置いています。15条の5の2各号の場所で契約を締結する際には、その場所で取り扱う物件について契約を締結する権限の委任を受けた者を置くか、または契約締結権限を有する者が派遣されているものとする、という定めです。案内所で契約まで行うのであれば、専任の宅建士のほかに契約締結権限を持つ者もその場にいることが前提になっている、ということです。専任の宅建士が置かれていれば契約締結権限も当然に備わる、という関係ではありません。ここは先に見た1(3)の裏返しでもあります。1(3)は、継続的に契約締結権限を行使する者が置かれるなら施行令1条の2第2号の事務所になる、としていました。1(1)が想定しているのは、契約のたびに権限の委任を受けた者を置くか権限者を派遣するという形であって、これなら規則15条の5の2第1号の場所にとどまります。同じ「契約締結権限を持つ人がいる」でも、継続的に置かれているかどうかで、必要な専任の宅建士の数が割合になるか1人になるかが変わる、という順序です。

    臨時に開設する案内所と、複数業者が使う案内所

    通達には、実務でよく問題になる二つの類型についての整理があります。

    一つは、週末にのみ営業する案内所です。第31条の3第1項関係1(5)②は、週末に宅建士や契約締結権者が出張して申込みの受付や契約の締結を行う別荘の現地案内所等、週末にのみ営業を行うような場所についても、専任の宅建士を置くものとする、としています。営業日が限られていることは、設置義務を外す理由になりません。

    もう一つは、複数の宅建業者が同じ案内所を使う場合です。同(5)①は、同一の物件について、売主である宅建業者および媒介または代理を行う宅建業者が同一の場所において業務を行う場合には、いずれかの宅建業者が専任の宅建士を1人以上置けば31条の3第1項の要件を満たす、としています。ただし、なお書きで、不動産フェア等で複数の宅建業者が異なる物件を取り扱う場合には、各宅建業者ごとに1人以上の専任の宅建士を置くものとする、と書き分けられています。

    分かれ目は「同一の物件か、異なる物件か」です。同じ物件を売主と媒介業者が一緒に売っている場では、専門家が1人いれば説明の質は確保できます。異なる物件を各社が並べて売っている場では、自社物件について説明できる宅建士が各社に必要になります。趣旨から素直に導ける結論です。

    なお、専任の宅建士は1人で足りる場合でも、標識の掲示(50条1項)と50条2項の届出は、それぞれの業者が自社の義務として果たす必要があります。案内所まわりの届出・標識・専任の要否は案内所等の届出と標識で個別に整理しています。

    標識と50条2項の届出は、設置義務と範囲がずれる

    設置義務・標識・届出は、条文上それぞれ別の範囲を持ちます。設置義務の側から見て必要な限りで、三つの関係を確定させておきます。

    まず届出です。50条2項は「第三十一条の三第一項の国土交通省令で定める場所について」所在地、業務内容、業務を行う期間および専任の宅建士の氏名を、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事、およびその所在地を管轄する都道府県知事に届け出るべきものとしています。参照先が15条の5の2そのものですから、届出の対象範囲は専任の宅建士の設置義務がある場所と完全に一致します。契約の締結も申込みも行わない案内所は、設置義務がないのと同じ理由で届出も不要です。期限は条文本体ではなく規則19条3項にあり、「その業務を開始する日の十日前までに、別記様式第十二号による届出書を提出しなければならない」と定められています。事前であること、届出先が免許権者と所在地の知事の二か所であること、届出事項に専任の宅建士の氏名が入っていることの三点が、設置義務の側から押さえるべき部分です。

    次に標識です。50条1項は「事務所等及び事務所等以外の国土交通省令で定めるその業務を行う場所ごとに」標識を掲げるべきものとし、その「事務所等以外」を受ける規則19条1項の柱書は「次に掲げるもので第十五条の五の二に規定する場所以外のもの」と書いています。設置義務のある場所と、それ以外の場所を足し合わせたものが標識の掲示場所だ、という二層構造です。19条1項2号には「宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲をする場合における当該宅地又は建物の所在する場所」、つまり分譲地の現地が挙がっていますが、この現地は15条の5の2の列挙には入っていません。分譲地の現地には標識の掲示義務はあるが専任の宅建士の設置義務はない、という結論はここから出ます。

    義務の主体も、標識と設置義務でずれます。売主である業者Aが販売代理を業者Bに委託し、Bが案内所を設けて契約の申込みを受ける場合、専任の宅建士を置く義務を負うのは案内所を設置したBです。Aは案内所を設置していないので、その案内所について設置義務を負いません。ただしAは、分譲地の現地に標識を掲示する義務を別に負います。誰がどこに何の義務を負うかは、設置主体を基準に切り分けます。

    なお、事務所に掲げる標識(宅地建物取引業者票)には「この事務所に置かれている専任の宅地建物取引士の数」という欄があります。通達の第50条第1項関係1は、その欄に併記される「宅地建物取引業に従事する者の数」について、専任の宅建士の数に変更があった場合のみ変更することとし、変更に伴い提出する専任の宅建士設置証明書に記載された従事者の数と同じ数を記載する、としています。標識に出る分母と、4条2項5号の証明書に書く分母が食い違わないように運用されている、ということです。

    標識の様式が規則19条2項で場所ごとに六区分されていることや、届出書の記載方法、案内所そのものにかかる義務の全体像は案内所等の届出と標識で個別に扱っています。ここでは、標識が最も広く、専任の宅建士と50条2項の届出が同じ範囲でその内側にある、という包含関係を持って先へ進みます。

    • 事務所以外は1人以上。事務所の割合とは別の基準
    • 対象は規則15条の5の2の四つの場所のうち、契約の締結または申込みを受けるもの。代理・媒介は貸借を含む
    • 「契約の申込み」には金銭の授受を伴わない抽選の申込み等も含まれる
    • 同一物件を売主と媒介業者が同じ場所で扱うならいずれか1社が1人置けば足りる
    • 50条2項の届出の範囲は設置義務の範囲と一致し、標識の範囲はそれより広い
    • 届出は業務開始日の10日前までに、免許権者と所在地の知事の両方へ(規則19条3項)

    「専任」とは何か

    常勤性と専従性の二つで構成される

    条文は「専任」の定義を置いていません。内容は解釈・運用の考え方の第31条の3第1項関係3で示されており、「専任」とは、原則として、宅建業を営む事務所に常勤して、専ら当該事務所に係る宅建業の業務に従事する状態をいう、とされています。前半が常勤性、後半が専従性です。

    常勤性については、同通達が括弧書きで「宅地建物取引業者の通常の勤務時間を勤務することをいう」と定義しています。所定の勤務時間を勤務しているかどうかが基準であり、事務所の中に物理的に滞在し続けることではありません。したがって、他社に常勤しながら名義だけを貸している場合や、月に数日しか出社しない場合は常勤性を欠きます。物件案内や役所調査、契約の立会いなど、通常の業務の遂行に伴う外出によって常勤性が失われることはありません。

    専従性については、条文の解釈として「専ら当該事務所に係る宅建業の業務に従事する」と書かれている点が重要です。「宅建業に従事する」ではなく「当該事務所に係る宅建業に従事する」です。同じ会社の別の事務所の仕事をしていれば、それは専従性の観点からは外の仕事になります。

    IT活用による勤務場所の柔軟化

    かつては、専任の宅建士は物理的に事務所に常駐していなければならないという理解が一般的でした。現在の通達は、常勤の定義の括弧書きに「ITの活用等により適切な業務ができる体制を確保した上で、宅地建物取引業者の事務所以外において通常の勤務時間を勤務する場合を含む」と明記しています。テレワークの普及を受けた整理です。

    もっとも、これは常勤性の要件がなくなったという意味ではありません。「適切な業務ができる体制を確保した上で」という条件が付いており、かつ「通常の勤務時間を勤務する」ことは変わっていません。宅建士の働き方と専任性の関係については宅建士は在宅ワークできるかで詳しく扱っています。書面の電子化やIT重説といった非対面化の制度そのものはIT重説と書面電子化を参照してください。

    兼業事務所での例外

    同通達は、専従性についても但書を置いています。当該事務所が宅建業以外の業種を兼業している場合等で、当該事務所において一時的に宅建業の業務が行われていない間に他の業種に係る業務に従事することは差し支えない、という趣旨です。したがって、「兼業している者は一切専任の宅建士になれない」という断定は正確ではありません。

    ただし、限定も付いています。宅建業の事務所が建築士事務所や建設業の営業所等を兼ねていて、そこの宅建士が建築士法・建設業法等の法令により専任を要する業務に従事しようとする場合、および個人業者である宅建士が同一の場所で土地家屋調査士・行政書士等の業務をあわせて行おうとする場合については、他の業種の業務量等を斟酌のうえ専任と認められるものを除き、専任の宅建士とは認められない、とされています。「他の法令でも専任を求められている職に就いている」という事情は、原則として専任性を否定する方向に働く、と読むのが正確です。

    一方で、明示的に差し支えないとされている兼務もあります。同通達は、宅建業を営む事務所の専任の宅建士が、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律12条1項により選任される業務管理者を兼務している場合に、その業務管理者としての賃貸住宅管理業に係る業務に従事することは差し支えない、としています。不動産管理業と宅建業の関係は不動産管理会社と宅建で扱っています。

    二つの場所の専任を兼ねることはできない

    専従性の要件から、同一人物が複数の事務所や案内所の専任の宅建士を兼ねることはできません。この点について通達は、はっきりとした注意書きを置いています。当該事務所において一時的に宅建業の業務が行われていない間に、ITの活用等により、同一の宅建業者の他の事務所に係る宅建業の業務に従事することは差し支えないが、この場合において当該他の事務所における専任の宅建士を兼ねることができるわけではない、という趣旨です。

    つまり、他の事務所の仕事を手伝うこと自体は否定されていないが、それによって他の事務所の専任の宅建士としてカウントされるわけではない、ということです。ITの活用による柔軟化が「1人で2か所を兼ねられる」という帰結を生まないよう、通達が念押しをした形になっています。

    「本店の専任の宅建士が、同時に支店の専任の宅建士を兼ねることができる」という選択肢は誤りです。また、他の法人の常勤役員を務めている者を専任の宅建士とすることも、常勤性を欠くため認められません。

    • 専任=常勤性(通常の勤務時間を勤務すること)+専従性(当該事務所に係る宅建業に専ら従事すること)
    • IT活用等により体制を確保すれば、事務所以外での勤務も常勤に含まれる
    • 兼業事務所には例外があるが、他の法令で専任を要する職を兼ねる場合は原則として否定される
    • 賃貸住宅管理業の業務管理者の兼務は差し支えないと明示されている
    • 他の事務所の業務を手伝えても、その事務所の専任を兼ねることはできない

    専任の宅建士の名義が問題になる場面

    名義の貸し借りは宅建士自身への処分事由

    設置義務は業者の義務ですが、要件を満たしていない状態を作るときに宅建士が関与すると、宅建士自身が監督処分を受けます。根拠は68条1項1号です。同号は、都道府県知事は、その登録を受けている宅建士が「宅地建物取引業者に自己が専任の宅地建物取引士として従事している事務所以外の事務所の専任の宅地建物取引士である旨の表示をすることを許し、当該宅地建物取引業者がその旨の表示をしたとき」に該当する場合においては、必要な指示をすることができる、と定めています。

    条文を丁寧に読むと、要件が二つあることがわかります。第一に、宅建士が「表示をすることを許した」こと。第二に、業者が実際に「その旨の表示をした」こと。許諾しただけで業者が表示していなければ、この号には当たりません。両方がそろって初めて指示処分の対象になります。

    対象になる表示は「自己が専任の宅建士として従事している事務所以外の事務所の専任の宅建士である旨」です。つまり、A支店の専任として実際に勤務している者が、B支店の専任としても届け出られることを承諾した、という場面が典型です。二か所の専任を兼ねられないという専従性のルールが、宅建士側の処分事由として裏打ちされている構造になっています。

    なお、68条1項2号は、他人に自己の名義の使用を許し、その他人がその名義を使用して宅建士である旨の表示をしたとき、を別に定めています。1号が「自分は宅建士だが、勤務していない事務所の専任として名前を使わせた」場合、2号が「宅建士でない他人に自分の名義を使わせた」場合です。似ていますが、貸す対象が違います。

    処分の重さは段階的に上がる

    68条1項に該当した場合、まず指示処分です。指示に従わない場合、または1項各号に該当する場合には、68条2項により1年以内の期間を定めて宅建士としてすべき事務を行うことを禁止されます。さらに、68条1項各号に該当し情状が特に重いとき、または事務の禁止処分に違反したときは、68条の2第1項4号により登録が消除されます。登録が消除されると、18条1項9号により、その処分の日から5年間は再登録ができません。

    処分を誰ができるかにも、業者側と同じ二層構造があります。68条1項・2項の主語は「その登録を受けている宅地建物取引士」に対する登録知事です。これに対して68条3項・4項は、当該都道府県の区域内において、他の都道府県知事の登録を受けている宅建士が1項各号に該当する場合の、業務地の知事による指示および事務の禁止を定めています。業者について65条1項・2項と3項・4項が対になっているのと同じ形です。ただし業者側の65条4項2号には「第三十一条の三第三項(事務所に係る部分を除く。)」という切り出しがあるのに対し、68条4項にはそうした限定がなく、1項各号がそのまま対象になります。名義貸しは登録知事の管轄外でも起こりうるので、範囲を絞る理由がないわけです。

    業者の側にも跳ね返ります。65条1項4号は、宅建士が68条または68条の2第1項の処分を受けた場合において、宅建業者の責めに帰すべき理由があるときを、業者に対する指示処分の事由としています。名義の貸し借りは通常、業者が求めて成立するものですから、この号が働く場面が想定されています。この号は65条2項1号の2を通じて業務停止にもつながり、さらに65条4項1号により業務地の知事も処分できる系列に乗っています。監督処分の全体像は監督処分の違いで整理しています。

    届け出る氏名は実在の勤務者でなければならない

    50条2項の届出事項に専任の宅建士の氏名が入っていること、通達が「実際に専任の宅建士として勤務する者1人を届け出れば足りる」としていることを合わせると、届け出るのは実際に勤務する者でなければならない、という当然の帰結が出てきます。実際には勤務していない宅建士の氏名を届け出れば、50条2項の虚偽の届出として83条1項1号の罰金対象になり、宅建士の側は68条1項1号の処分対象になります。

    • 68条1項1号は「勤務していない事務所の専任として名前を使わせた」宅建士への処分事由
    • 許諾と業者による表示の両方がそろって初めて該当する
    • 指示、事務禁止(1年以内)、登録消除と段階が上がり、消除後5年は再登録できない
    • 68条3項・4項により、業務地の知事も指示と事務禁止を命じられる
    • 業者側にも65条1項4号による指示処分がある

    誰を専任の宅建士にできるか

    前提として宅建士であること

    専任の宅建士は、当然ながら宅建士でなければなりません。ここは条文が明快です。2条4号が「宅地建物取引士」を「第二十二条の二第一項の宅地建物取引士証の交付を受けた者」と定義しています。したがって、試験に合格し、都道府県知事の登録を受け(18条1項)、宅建士証の交付を受ける(22条の2第1項)という三段階を経て初めて宅建士です。合格しただけでも、登録しただけでも宅建士ではありません。

    この定義が効いてきます。登録は済ませたが宅建士証の交付を受けていない者を専任の宅建士として届け出ることはできません。この三段階の手続は宅建士の登録と宅建士証で扱っています。宅建士証には5年の有効期間があり(22条の2第3項)、更新の際には交付の申請前6か月以内に行われる法定講習の受講が必要になります(同条2項)。有効期間が切れた瞬間にその者は2条4号の宅建士でなくなり、分子から抜けます。前に見たとおり、専任の宅建士が欠ける原因を条文は限定していないので、これも31条の3第3項の2週間が走り出す場面です。講習の種類と使い分けは宅建士の法定講習を参照してください。

    登録の移転にも注意が必要です。22条の2第4項は、宅建士証が交付された後に19条の2の規定により登録の移転があったときは、当該宅建士証はその効力を失う、と定めています。移転の申請とともに交付の申請をすれば、移転後の知事が従前の有効期間の残りを期間とする宅建士証を交付します(同条5項)。この手続をとらないと、一時的に宅建士証がない状態になります。移転先の事務所で専任として届け出る予定があるなら、実務上は同時申請が必須になる、という関係です。

    なお、19条の2にはただし書があり、68条2項または4項による事務の禁止の処分を受けてその期間が満了していない者は、登録の移転を申請できません。処分を受けた宅建士が別の県の事務所へ移って専任として再登板する、という抜け道を条文が塞いでいます。同じ趣旨で、22条の2第7項は、事務の禁止の処分を受けた宅建士に、宅建士証をその交付を受けた知事へ速やかに提出させ、同条8項が禁止の期間が満了した場合の返還請求について定めています。同条6項の返納(登録が消除されたとき、または宅建士証が効力を失ったとき)と、7項の提出(事務の禁止の処分を受けたとき)は、返す先も戻ってくるかも違うので、対で覚えます。

    原則は成年者であること

    31条の3第1項は「成年者である専任の宅地建物取引士」と規定しています。したがって、原則として未成年者は専任の宅建士になれません。ここでいう成年は民法上の成年であり、18歳以上を指します。

    なお、宅建士の登録自体については、18条1項1号が「宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」を登録できない者として挙げています。裏返せば、営業に関し成年者と同一の行為能力を有する未成年者であれば、登録を受けて宅建士になること自体は可能です。登録できることと、専任の宅建士になれることは別の話だ、という関係を押さえておきます。登録の欠格事由は宅建業の免許の欠格事由と対比して整理すると理解が早くなります。

    業者本人や役員が宅建士である場合のみなし規定

    ここで31条の3第2項が効いてきます。この項は、宅建業者(法人である場合においては、その役員)が宅建士であるときは、その者が自ら主として業務に従事する事務所等については、その者はその事務所等に置かれる成年者である専任の宅建士とみなす、と定めています。

    みなし規定である以上、その者が未成年者であっても、「成年者である専任の宅建士」として扱われます。つまり、営業に関し成年者と同一の行為能力を有する未成年者が宅建士の登録を受け、個人業者として、あるいは法人の役員として、自ら主として業務に従事する事務所については、専任の宅建士とみなされることになります。

    「未成年者は専任の宅建士になれない」という命題は原則としては正しいのですが、この2項のみなしという例外があります。試験ではこの例外が正面から問われます。

    みなしが及ぶ範囲の限定

    2項の適用には限定があります。「その者が自ら主として業務に従事する事務所等」についてのみ、みなされます。したがって、宅建士である代表者が、本店と支店の両方についてみなし専任として扱われることはありません。主として業務に従事している一つの事務所についてだけです。

    また、みなされるのは「成年者である専任の宅建士」としてであり、設置すべき人数の計算からその事務所が除外されるわけではありません。規則15条の5の3が、割合の分子を「同条第2項の規定によりその者とみなされる者を含む」と書いているとおり、みなされた者は分子に1人として数えられるにすぎません。業務に従事する者が11人いる事務所であれば3人必要で、そのうち1人がみなし規定によって満たされます。残り2人は別に置く必要があります。

    さらに、2項の適用対象は「宅建業者(法人である場合においてはその役員)」です。役員とは、業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者をいうと2項の括弧書きが定めています。支店長や営業所長といった政令で定める使用人は、この括弧書きの役員に含まれません。使用人が宅建士であっても、みなし規定は働かず、通常どおり専任の宅建士として配置する必要があります。

    • 宅建士=合格・登録・宅建士証の交付の三段階を経た者(2条4号)
    • 宅建士証の有効期間は5年。切れれば専任の宅建士が欠けた状態になる
    • 事務禁止の処分中は登録の移転を申請できない(19条の2ただし書)
    • 原則は成年者。ただし31条の3第2項のみなし規定という例外がある
    • みなしは「自ら主として業務に従事する事務所等」に限られ、人数計算を免除するものではない
    • みなしの対象は業者本人と法人の役員。政令で定める使用人は含まれない

    免許の要件としての設置義務

    免許を受ける段階で審査される

    31条の3の設置義務は、免許を受けた後に守るべき義務であると同時に、免許を受けるための要件でもあります。5条1項15号は、免許の基準として「事務所について第三十一条の三に規定する要件を欠く者」を挙げており、これに該当する場合、免許権者は免許をしてはならないとされています。

    これに対応して、4条2項5号は、免許申請書の添付書類として「事務所について第三十一条の三第一項に規定する要件を備えていることを証する書面」を挙げています。実務上「専任の宅地建物取引士設置証明書」と呼ばれる書面です。免許の申請から交付までの流れは宅建業の免許制度で扱っています。

    つまり、専任の宅建士がいない状態では、そもそも免許を受けられません。31条の3第3項前段が「第一項の規定に抵触する事務所等を開設してはならず」と定めているのと合わせて、要件を満たさない事務所を先に作って後から人を入れる、という順序は制度上認められていません。

    免許後に欠けても、必要的取消しにはならない

    ここは条文の対応関係を丁寧に確認する価値があります。66条1項1号は、免許を必ず取り消さなければならない場合として「第五条第一項第一号、第五号から第七号まで、第十号又は第十四号のいずれかに該当するに至つたとき」を挙げています。この列挙に15号は入っていません。

    したがって、免許を受けた後に専任の宅建士が欠けた状態になっても、それだけで免許が必ず取り消されるわけではありません。働くのは31条の3第3項の是正義務であり、これに違反したときの65条2項2号の業務停止処分、そして業務停止事由に該当し情状が特に重いときの66条1項9号の免許取消しです。

    免許の基準に該当することが即座に免許取消しにつながるのは、破産、拘禁刑、暴力団員等といった人的な欠格事由(5条1項1号、5号から7号、10号、14号)に限られている、という構造です。設置義務は是正できる性質のものだから、直ちに取り消すのではなく期限を切って直させる、という制度設計になっています。

    専任の宅建士に変更があったときの手続

    専任の宅建士を交代させたり増員したりした場合、業者は変更の届出をしなければなりません。9条1項は、宅建業者は4条1項1号から5号までに掲げる事項について変更があった場合においては、30日以内に、当該変更に係る事項を記載した届出書を免許権者に提出しなければならない、と定めています。4条1項5号が「前号の事務所ごとに置かれる第三十一条の三第一項に規定する者(同条第二項の規定によりその者とみなされる者を含む。)の氏名」ですから、専任の宅建士の氏名の変更はこの届出の対象です。

    ここは市販教材の記述とずれやすい箇所です。8条2項と9条は令和6年法律第53号により2025年4月1日から構造が変わっており、それ以前は8条2項6号が専任の宅建士の氏名を宅建業者名簿の登載事項として掲げ、9条が「前条第二項第二号から第六号までに掲げる事項」の変更について届出を求めていました。現在の8条2項2号は名簿の登載事項を「第四条第一項各号(第五号を除く。)に掲げる事項」としており、専任の宅建士の氏名(5号)は名簿の登載事項からは外れています。届出の対象ではあるが名簿の登載事項ではない、という状態です。この改正の詳細は宅建業者名簿と変更の届出にまとめてあります。令和8年度試験に影響する改正の全体像は令和8年度の法改正まとめを参照してください。

    なお、9条2項により、変更の届出書には4条2項の添付書類(1号・6号・7号を除く)が準用されます。専任の宅建士の交代であれば、4条2項5号の設置要件を証する書面を添えることになります。この書面は10条により一般の閲覧に供される「特定書類」に含まれています。

    同じ改正で、大臣免許の業者が届出書をどう出すかも変わりました。かつての78条の3第2項は、9条1項や50条2項により国土交通大臣に提出すべき届出書について「その届出に係る業務を行う場所の所在地を管轄する都道府県知事を経由しなければならない」と定めていましたが、この経由の規定は削られ、現在の78条の3は、大臣が知事へ免許等に関する情報を提供する義務を定める規定に置き換わっています。しかも情報提供の対象からは4条1項5号、すなわち専任の宅建士の氏名が明文で除かれています(78条の3第1項2号の括弧書き)。基準日である2026年4月1日時点の宅建業法の本則で「経由」の語が残っているのは、19条の2の登録の移転(登録をしている知事を経由して申請する)だけです。大臣免許の業者が届出をどこかの知事を経由して行う、という筋は現行の条文には存在しません。市販教材で「経由」を見かけたら、改正前の記述だと判断してよい箇所です。免許権者と業務地の知事の権限の分かれ方そのものは宅建業の免許制度を横断整理で扱っています。

    宅建士本人の変更の登録とは別の手続

    業者が行う9条の変更の届出とは別に、宅建士本人が行う手続もあります。20条は、登録を受けている者は、登録を受けている事項に変更があったときは、遅滞なく、変更の登録を申請しなければならない、と定めています。勤務先の宅建業者の商号または名称および免許証番号は資格登録簿の登載事項ですから、勤務先が変われば宅建士本人が変更の登録を申請します。

    期限の書き方が違う点に注意します。業者の変更の届出は「30日以内」、宅建士の変更の登録は「遅滞なく」です。両者は主体も宛先も違う別個の手続で、片方を行えばもう片方が不要になるという関係にはありません。

    • 5条1項15号により、設置要件を欠く者には免許をしてはならない
    • 4条2項5号で設置要件を証する書面の添付が必要
    • 66条1項1号の列挙に15号はない。免許後に欠けても直ちに必要的取消しにはならない
    • 専任の宅建士の氏名の変更は9条の届出対象(30日以内)。宅建士本人は20条で遅滞なく変更の登録

    欠けた場合の措置と監督処分

    2週間以内に適合させる措置を執る

    31条の3第3項は、業者は同条1項の規定に抵触する事務所等を開設してはならず、既存の事務所等が同項の規定に抵触するに至ったときは、2週間以内に、同項の規定に適合させるため必要な措置を執らなければならないと定めています。

    前段と後段で内容が違う点に注意します。前段は、そもそも要件を満たさない事務所を新たに開設することの禁止です。後段は、開設後に要件を満たさなくなった場合の是正義務です。新規に事務所を設ける場面で「開設してから2週間以内に専任の宅建士を置けばよい」という選択肢が出たら、前段違反であり誤りです。

    2週間という数字の位置づけ

    2週間という期間は、宅建業法のなかで他の期間と混同されやすい数字です。専任の宅建士の変更があった場合、前節のとおり9条により30日以内に免許権者へ届け出る必要があります。是正の措置が2週間、変更の届出が30日、という二つの期限が同時に走ることになります。

    この二つは目的が違います。2週間は実体を法令に適合させるための期限であり、30日は行政に情報を届けるための期限です。両方を果たす必要があり、片方で代替できるものではありません。宅建業法に登場する期間や人数の数字を横断で確認したい場合は宅建業法の数字まとめが使えます。

    措置の中身は三通り

    「必要な措置」として認められるのは、割合を回復させる方法であれば足ります。実際には三通りです。第一に、新たに専任の宅建士を置くこと。宅建士を採用する場合と、既存の従業者のうち宅建士証の交付を受けた者を専任として配置する場合があります。第二に、業務に従事する者を減らして割合を満たすこと。第三に、その事務所自体を廃止することです。

    条文は「適合させるため必要な措置」としか書いていないため、宅建士を増やす方法に限定されていません。この点を問う出題もあります。

    業務停止処分と罰則の両方がある

    2週間以内に必要な措置を執らなかった場合、31条の3第3項違反として、65条2項2号により業務停止処分(1年以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止)の対象になります。さらに、業務停止事由に該当し情状が特に重いときは、66条1項9号により免許取消処分がされます。

    見落とされやすいのが罰則です。82条2号は「第十二条第二項、第十三条第二項、第三十一条の三第三項又は第四十六条第二項の規定に違反した者」を100万円以下の罰金に処する、と定めています。31条の3第3項違反は、監督処分だけでなく罰金の対象でもあります。案内所等の届出義務違反(50条2項)が83条1項1号の50万円以下の罰金であるのに対し、設置義務の是正を怠った場合は82条2号の100万円以下と、金額が倍になっている点も押さえておくと整理しやすくなります。罰則全体の並びは宅建業法の罰則一覧にまとめてあります。

    この二つは、監督処分の側でも差がついています。65条2項2号は、違反すると直ちに業務停止を命じうる条文を名指しで列挙する形になっており、そこに挙がっているのは31条の3第3項です。50条2項は列挙にありません。50条1項の標識も同様に列挙外です。したがって、届出を怠っただけでは、65条1項柱書の「この法律の規定に違反した場合」として指示処分の対象にはなるものの、いきなり業務停止を命じることはできず、その指示に従わないときに65条2項3号を経て業務停止に進む、という順序をたどります。罰金の額でも監督処分の直結度でも、設置義務違反のほうが重く扱われている、という一貫した設計です。「設置義務違反と届出義務違反は同じ扱い」とする選択肢は、罰金の額と監督処分の両面から誤りだと言えます。監督処分の列挙は、条文に名前が挙がっているかどうかで結論が変わる典型例です。

    処分できるのは誰か

    監督処分の権限にも一つ論点があります。65条2項は免許権者が業務停止を命じられる場合を定め、その2号に31条の3第3項が挙げられています。これに対して65条4項は、免許権者以外の都道府県知事(業務地の知事)が、その区域内における業務について業務停止を命じられる場合を定めており、その2号は「第三十一条の三第三項(事務所に係る部分を除く。)」と書かれています。

    つまり、業務地の知事が31条の3第3項違反を理由に業務停止を命じられるのは、案内所等に関する部分に限られ、事務所に関する部分は含まれません。事務所の設置義務違反を処分できるのは免許権者だけです。案内所は他県に出ていくことが予定されている場所だから業務地の知事にも権限を与え、事務所は免許権者が把握しているから免許権者に任せる、という切り分けです。監督処分の種類と権限の関係は監督処分の違いで整理しています。

    私法上の効力は左右されない

    なお、専任の宅建士が欠けている状態で行った重要事項の説明や契約が、当然に無効になるわけではありません。設置義務は行政上の規制であり、個々の取引の私法上の効力を直接左右するものではないからです。ここも取り違えやすい部分です。

    もっとも、重要事項の説明そのものを宅建士でない者が行えば、それは35条違反として別に問題になります。設置義務違反と独占業務違反は別の話です。

    • 3項前段は開設禁止、後段は2週間以内の是正義務
    • 措置は宅建士の増員に限らず、従業者の減員や事務所の廃止でもよい
    • 違反は65条2項2号の業務停止、情状が特に重ければ66条1項9号の免許取消、加えて82条2号の100万円以下の罰金
    • 65条2項2号の列挙に50条2項・50条1項はない。届出違反は指示処分が先に立つ
    • 業務地の知事の処分権限は案内所等の部分に限られる(65条4項2号)

    クーリング・オフの適用除外場所との連動

    「専任の宅建士を置くべき場所」が基準になっている

    専任の宅建士の設置義務は、8種制限のクーリング・オフと直結しています。37条の2第1項は、宅建業者が自ら売主となる売買契約について、事務所等以外の場所で買受けの申込みをした者に申込みの撤回等を認めていますが、この「事務所等」の範囲を定める規則16条の5第1号は、掲げる場所のうち「法第三十一条の三第一項の規定により同項に規定する宅地建物取引士を置くべきもの」と書いています。

    通達の第37条の2第1項関係1も、クーリング・オフ制度の適用のない場所は原則として専任の宅建士を置くべき場所に限定されている、と明言しています。そのうえで、適用の有無は、その場所が専任の宅建士を設置しなければならない場所であるか否かにより区別されるのであって、実際に専任の宅建士がいるか否か、標識を掲げているか否か、届出がなされているか否かによって区別されるものではない、としています。

    ここは出題価値が高い部分です。「専任の宅建士を置いていなかった案内所での申込みだからクーリング・オフできる」という筋は通りません。置くべき場所であった以上、実際に置いていたかどうかにかかわらず適用除外です。設置義務を怠ったことは31条の3違反として別に処理されます。

    範囲は完全には一致しない

    もっとも、二つの範囲は完全には重なりません。ずれは三方向にあります。

    第一に、狭くなる方向です。規則16条の5第1号ロは案内所に「土地に定着する建物内に設けられるものに限る」という括弧書きを付し、ニがこれを引いています。規則15条の5の2第2号・3号の案内所には、そのような限定がありません。したがって、別荘地の販売におけるテント張りや仮設小屋のような、一時的かつ移動が容易な施設で契約の申込みを受ける場合、専任の宅建士の設置義務はあるが、クーリング・オフの適用除外にはならない、という組み合わせが生じます。通達の第37条の2第1項関係1(2)②はこの結論を明示したうえで、マンション分譲のモデルルームや戸建分譲のモデルハウスは「案内所」と解して差し支えないとしています。

    第二に、展示会がさらに強く絞られています。規則15条の5の2第4号は「展示会その他これに類する催しを実施する場合にあつては、これらの催しを実施する場所」とだけ書いており、施設の性質を問いません。これに対して16条の5第1号ホは、専任の宅建士を置くべき場所であることに加えて、その場所が「土地に定着する建物内のもの」であること、そこで売買契約に関する説明をしたこと、そのうえで催しを「土地に定着する建物内において」実施することを重ねて要求しています。仮設テントの不動産フェアで申込みを受ければ設置義務は生じますが、クーリング・オフは適用されます。案内所だけを見て「土地への定着が一点だけの違いだ」と覚えると、展示会でずれます。

    第三に、逆に広くなる方向もあります。16条の5第2号は、相手方が自宅または勤務する場所において売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合の、その自宅または勤務先を適用除外としています。ここは専任の宅建士を置くべき場所ではありません。設置義務の範囲が適用除外の範囲を決めているのは1号までで、2号は買主側の申出という別の理由で除外されている、という構造です。

    クーリング・オフの要件と期間、8日という起算の仕組みについてはクーリング・オフで詳しく扱っています。ここでは、1号の入口が「専任の宅建士を置くべき場所」であること、そこからのずれが以上の三方向であることを押さえておけば十分です。

    • 規則16条の5第1号は「専任の宅建士を置くべき場所」を基準にしている
    • 実際に置いていたか、標識があるか、届出があるかは適用除外の判断に影響しない
    • 案内所(ロ・ニ)は「土地に定着する建物内」、展示会(ホ)はさらに説明の実施まで要求される
    • 相手方の自宅・勤務先(2号)は、設置義務がないのに適用除外になる

    試験での出題ポイント

    割合と定数の入れ替え

    最頻出は、事務所と案内所等の基準を入れ替える形です。「案内所には業務に従事する者5人につき1人以上」「事務所には1人以上で足りる」という二方向のすり替えがあります。事務所は割合、事務所以外は定数、と対で押さえておけば一瞬で判断できます。

    人数計算の境界

    業務に従事する者が6人、11人、16人といった、5の倍数のすぐ上の数字が使われます。5で割って切り上げるという手順を機械的に実行します。また、分母に誰を数えるかを操作する出題もあり、非常勤の役員を数に入れさせようとする形や、受付・秘書といった職種を除外させようとする形が典型です。通達が名指しで挙げている職種は分母に入る、非常勤役員と臨時的従事者は入らない、と覚えておきます。

    案内所の範囲

    「契約の締結を行わない案内所には専任の宅建士を置く必要がない」という選択肢は、申込みの受付を行っている場合には誤りになります。締結と申込みの両方が要件に含まれている点が狙われます。また、分譲地の現地について専任の宅建士が必要だとする形、10区画・10戸という数字を変える形、貸借の媒介の案内所を対象外だとする形も定番です。

    届出の期限と届出先

    10日前という期限を「10日以内」「業務開始後10日以内」に変える形、届出先を免許権者のみ、あるいは所在地の知事のみに限定する形です。事前・二か所、と覚えます。届出事項に専任の宅建士の氏名が含まれることも合わせて確認しておきます。

    2週間と30日の混同

    是正措置の2週間を30日に変える形、変更届の30日を2週間に変える形の両方があります。実体の是正が2週間、行政への届出が30日、と目的で区別します。数字だけを見て反応すると引っかかるので、「何のための期間か」を先に確定させるのが定石です。この種の言い換えの型は引っかけ表現のパターンにまとめてあります。

    専任性と独占業務の混同

    重要事項の説明や37条書面への記名は、宅建士であれば行うことができ、専任の宅建士である必要はありません。「重要事項の説明は専任の宅建士でなければ行えない」という選択肢は誤りです。この論点は毎年のように形を変えて出ます。頻出度の全体像は宅建業法の頻出論点ランキングを参照してください。

    未成年者の扱い

    「未成年者は専任の宅建士になることができない」という一般論だけを覚えていると、31条の3第2項のみなし規定を使った出題で誤ります。原則と例外の両方を言えるようにしておきます。あわせて、みなしの対象が業者本人と法人の役員に限られ、政令で定める使用人には及ばない点も確認しておきます。

    処分と罰則の組み合わせ

    設置義務違反について「業務停止処分の対象となるが罰則はない」とする形が作れます。82条2号が100万円以下の罰金を定めているので誤りです。逆に、案内所等の届出義務違反について100万円以下の罰金だとする形も誤りで、こちらは83条1項1号の50万円以下です。金額を入れ替える出題に備えて、どちらがどちらかを対で覚えます。

    処分の側にも同じ差があります。65条2項2号の列挙に載っているのは31条の3第3項であって50条2項ではないので、届出を怠っただけで直ちに業務停止を命じられるわけではなく、まず指示処分が立ちます。罰金の額でも業務停止への直結度でも設置義務違反のほうが重い、と一方向に揃えて覚えれば、「設置義務違反と届出義務違反は同じ扱いである」という形の選択肢を両面から切れます。

    覚え方・整理の仕方

    場所を三段階に並べる

    この論点の情報は、場所を三段階に並べると整理できます。上から順に、事務所、契約の締結または申込みを受ける案内所等、それ以外の場所です。

    事務所には、専任の宅建士が5分の1以上、標識、従業者名簿、帳簿、報酬額の掲示が必要です。契約の締結または申込みを受ける案内所等には、専任の宅建士が1人以上、標識、50条2項の届出が必要です。それ以外の場所、つまり契約も申込みも行わない案内所や分譲地の現地には、標識だけが必要です。

    この三段階で覚えると、「案内所に報酬額を掲示する必要がある」「案内所に従業者名簿を備える必要がある」といった選択肢も判断できるようになります。

    数字は用途とセットで唱える

    「5分の1・事務所・専任の宅建士の割合」「1人以上・案内所等・専任の宅建士の定数」「10日前・案内所等の届出・免許権者と所在地の知事」「10区画または10戸・一団の分譲」「2週間・設置義務の是正」「30日・変更の届出」「100万円・31条の3第3項違反」「50万円・50条2項の届出違反」。数字だけを並べて覚えると必ず混ざるので、数字・場面・結論を一続きで言う形にします。

    「締結し、又は申込みを受ける」を一語で覚える

    案内所の論点は、この一句を正確に覚えているかで決まります。「契約するかどうか」ではなく「契約を締結し、又はこれらの契約の申込みを受けるか」です。申込みが入っていることを忘れないために、条文の言い回しのまま覚えてしまうのが早道です。あわせて、申込みには金銭の授受を伴わない抽選の申込みも含まれる、という通達の定義を付けておくと、変化球にも対応できます。

    標識・専任・届出のベン図を頭に持つ

    標識が最も広く、専任の宅建士と50条2項の届出が同じ範囲でその内側にある、という包含関係を図として持っておきます。三つの義務のうちどれが必要かを問われたら、この包含関係に当てはめれば答えが出ます。クーリング・オフの適用除外場所は、規則16条の5第1号の分だけがこの内側にさらに一段小さく入り(土地への定着という限定がかかるため)、同条2号の相手方の自宅・勤務先だけが円の外に飛び出している、と持っておくと8種制限の問題にも使えます。飛び出している一つを例外として覚えるのが、図を壊さないコツです。

    趣旨に戻れば端の論点も導ける

    設置義務の趣旨は、購入の判断が行われる場所に専門家を常時置くことです。この趣旨から考えれば、申込みを受ける場所に設置義務がかかること、資料配布だけの場所にかからないこと、現地に不要であること、同一物件を扱う複数業者の案内所なら1人で足りること、異なる物件を並べるフェアでは各社に必要なことは、いずれも自然に導けます。細かい規則の列挙を丸暗記するより、趣旨を軸にして例外を確認する方が定着します。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 業務に従事する者が11人いる事務所には、専任の宅建士を2人置けば足りる。○か×か。

    答えを見る ×。施行規則15条の5の3により、事務所には業務に従事する者の数に対する専任の宅建士の数の割合が5分の1以上となる数を置く必要があります。11人に対して2人では11分の2であり、5分の1に届きません。3人が必要です。5で割って端数を切り上げる、と機械的に処理します。なお業務に従事する者の範囲は解釈・運用の考え方が定めており、宅建業のみを営む場合は代表者および役員(非常勤の役員を除く)とすべての従業員等が含まれ、受付・秘書・運転手等も対象になります。宅地建物の取引に直接的な関係が乏しい業務に臨時的に従事する者は含まれません。

    Q2. 宅建業者が10戸の一団の建物の分譲について案内所を設け、そこで契約の申込みのみを受け、契約の締結は本店で行う場合、その案内所に専任の宅建士を置く必要はない。○か×か。

    答えを見る ×。施行規則15条の5の2の柱書は、対象となる場所を「契約を締結し、又はこれらの契約の申込みを受けるもの」としており、申込みの受付も要件に含まれます。契約の締結を本店で行うことは、設置義務を免れる理由になりません。解釈・運用の考え方は「契約の申込み」を契約を締結する意思を表示することと定義し、金銭の授受を伴わない抽選の申込み等も含むとしています。また10戸の一団の建物の分譲を行う案内所は同条2号に該当します。この場合、専任の宅建士1人以上に加えて、標識の掲示と50条2項の届出も必要です。

    Q3. 専任の宅建士を置くべき案内所については、業務を開始した日から10日以内に、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事に届け出なければならない。○か×か。

    答えを見る ×。二か所が誤りです。50条2項は「あらかじめ」届け出るべきものとし、規則19条3項が「業務を開始する日の十日前まで」と定めています。事後の届出ではありません。また届出先は、免許権者だけでなく、その案内所の所在地を管轄する都道府県知事にも届け出る必要があります。免許権者と所在地の知事の両方、という点が繰り返し問われます。届出をせず、または虚偽の届出をした場合は83条1項1号により50万円以下の罰金の対象です。

    Q4. 宅建業を営む法人の役員が宅建士である場合、その者が自ら主として業務に従事する事務所については、その者を成年者である専任の宅建士とみなす。○か×か。

    答えを見る ○。31条の3第2項の規定どおりです。みなし規定であるため、その役員が未成年者であっても「成年者である専任の宅建士」として扱われます。「未成年者は専任の宅建士になれない」という原則だけを覚えていると、この例外で誤ります。ただし、みなされるのは自ら主として業務に従事する一つの事務所等についてのみであり、複数の事務所について同時にみなされることはありません。また規則15条の5の3の括弧書きが、みなされた者を割合計算の分子に含めると定めているとおり、必要な人数そのものが減るわけでもありません。2項の役員には政令で定める使用人は含まれない点も確認しておきます。

    Q5. 事務所の専任の宅建士が退職して設置要件を満たさなくなった場合、宅建業者は30日以内に必要な措置を執らなければならない。○か×か。

    答えを見る ×。31条の3第3項により、既存の事務所等が設置基準に抵触するに至ったときは、2週間以内に必要な措置を執らなければなりません。30日は、専任の宅建士の氏名の変更を免許権者に届け出る期限です(9条1項、4条1項5号)。この二つは目的が異なる別個の義務であり、どちらか一方を果たせば足りるというものではありません。2週間以内に措置を執らなければ、65条2項2号により業務停止処分の対象となり、情状が特に重ければ66条1項9号により免許が取り消されます。さらに82条2号により100万円以下の罰金の対象にもなります。

    まとめ

    専任の宅建士の設置義務は、条文の数が少なく、覚えるべき数字も限られている一方で、事務所と案内所、専任の宅建士と標識と届出、是正の2週間と変更届の30日というように、隣り合う制度と細かく食い違う箇所が多い論点です。だからこそ、数字を単体で覚えるのではなく、場所と義務の対応関係として覚える必要があります。

    優先して固めるべきは、事務所の5分の1以上と案内所等の1人以上という基準の違い、契約の締結または申込みを受けるかどうかという範囲の限定、そして2週間以内の措置義務の三点です。この三点を条文番号とともに言えるようになれば、標準的な出題は取り切れます。そのうえで、31条の3第2項のみなし規定、50条2項の届出先が二か所であること、分母の範囲を定める解釈・運用の考え方の書き分けを追加すれば、難易度の高い年度でも対応できます。

    さらに一段深く固めたい場合は、この義務が周辺制度とどうつながっているかを確認してください。免許の基準(5条1項15号)としての側面、名義貸しに対する宅建士側の処分(68条1項1号)、そしてクーリング・オフの適用除外場所(規則16条の5第1号)の基準になっているという連動です。設置義務が単独の論点ではなく、宅建業法の複数の制度をつないでいる結節点だと理解できると、横断的な出題にも対応できるようになります。

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