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宅建業者名簿と変更の届出|登載事項とのずれ

宅建業法 読了 約25分

宅建業者名簿の登載事項(8条2項)と変更の届出の対象(9条)は一致していません。両方向のずれを条文の号で切り分け、免許換えとの区別、宅建士の登録簿との対比まで整理します。

目次

    この記事は、宅地建物取引業者名簿(8条)と、その内容に変更があったときの届出(9条)を扱います。免許制度そのものの流れは宅建業の免許制度、免許と登録を横断して整理したものは宅建業の免許制度を横断整理にあります。廃業等の届出(11条)は宅建業の廃業届・免許取消が扱うので、この記事では対比に必要な範囲だけ触れます。

    先に結論を述べます。この論点の核心は、名簿の登載事項と変更の届出の対象が一致していないという一点です。しかもずれは両方向にあります。名簿に載るのに届け出なくてよいものがあり、逆に名簿に載らないのに届け出なければならないものがあります。この非対称が、そのまま出題の作られる場所になっています。

    そしてもう一点、先に潰しておくべきことがあります。8条2項と9条は、令和6年法律第53号により2025年4月1日から条文の構造そのものが変わりました。改正前の9条は「前条第二項第二号から第六号まで」と書いていましたが、改正後は「第四条第一項第一号から第五号まで」と、免許申請書の記載事項を直接引く形になっています。号数で覚えている場合、古い教材の記述はそのまま使えません。

    宅建試験の出題根拠となる法令は試験を実施する年度の4月1日現在施行のものですから、令和8年度では改正後の条文が正解の基準です。以下、改正後の条文に沿って整理します。

    「届出」と名のつく制度を先に切り分ける

    宅建業法には届出と名のつく制度が複数あり、期限も義務者も効果も違います。混同が出題の定番なので、範囲を先に確定させます。

    業者側にある届出

    変更の届出(9条)が、この記事の主題です。免許を受けた後、申請書に書いた事項に変更が生じたときに行います。

    廃業等の届出(11条)は、業者が死亡した、法人が合併で消滅した、破産手続開始の決定があった、解散した、宅建業を廃止した、という場合に行うものです。事由ごとに届出義務者が違い、免許が失効する時点も分かれます。

    このほか、案内所等の届出(50条2項)があります。事務所以外で契約の締結や申込みの受付を行う場所について、業務を開始する日の10日前までに届け出るものです。期限が「以内」ではなく「前まで」である点が他と違います。

    宅建士側は用語そのものが違う

    宅建士の側では、同じような場面でも使われる語が違います。

    登録事項に変更があったときは変更の登録を「申請」します(20条)。届出ではありません。他の都道府県へ移るときは登録の移転を「申請」できます(19条の2)。そして死亡等の場合だけ死亡等の届出という語が使われます(21条)。

    業者は届出、宅建士は登録の申請。ただし宅建士でも21条だけは届出。この用語の使い分けが、そのまま選択肢の作り分けに使われます。

    この記事が扱う範囲

    以下では、名簿(8条)、その閲覧(10条)、変更の届出(9条)を中心に扱い、免許換え(7条)との区別、廃業等の届出(11条)との切り分け、宅建士の登録簿との対比を加えます。宅建業法全体の中での位置づけは宅建業法の全体像を参照してください。

    8条2項と9条は2025年4月1日に構造が変わった

    号数を扱う前に、改正を確認しておきます。ここを知らないと、古い教材と条文が食い違って見えます。

    改正前の条文

    2025年3月31日までの8条2項は、登載事項を号ごとに列挙する形でした。1号が免許証番号および免許の年月日、2号が商号または名称、3号が法人の役員および政令で定める使用人の氏名、4号が個人の氏名および政令で定める使用人の氏名、5号が事務所の名称および所在地、6号が事務所ごとに置かれる専任の宅建士の氏名、7号が取引一任代理等の認可、8号がその他国土交通省令で定める事項、という並びです。

    そして改正前の9条は、「前条第二項第二号から第六号までに掲げる事項について変更があつた場合」に30日以内の届出を求めていました。

    改正後の条文

    令和6年法律第53号により、2025年4月1日から次の形になっています。

    8条2項の登載事項は四つに整理されました。1号が免許証番号および免許の年月日、2号が「第四条第一項各号(第五号を除く。)に掲げる事項」、3号が50条の2第1項の認可(取引一任代理等)を受けているときはその旨および認可の年月日、4号が65条の規定による処分を受けたことがあるときはその年月日および内容です。

    そして9条は、「第四条第一項第一号から第五号までに掲げる事項について変更があつた場合」に、国土交通省令の定めるところにより30日以内に、当該変更に係る事項を記載した届出書を提出しなければならない、という形になりました。

    何が変わり、何が変わらなかったか

    変わったのは条文の構造です。登載事項も届出対象も、8条2項の号を数えるのではなく、4条1項(免許申請書の記載事項)の号を参照する形に統一されました。

    改正前は省令に委ねられていた「その他国土交通省令で定める事項」が削られ、代わりに65条の処分が本則に明記されています。また兼業の種類も、省令経由ではなく4条1項6号として2号のなかに取り込まれました。

    変わらなかったのは、期限の30日と、実質的な対象の範囲です。改正前後で「何を届け出るか」の結論はほぼ同じで、参照の仕方が整理されただけだと理解して差し支えありません。ただし号数だけは完全に変わっているので、「8条2項2号から6号まで」という覚え方をしていた場合は付け替えが必要です。

    令和8年度の基準日

    宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されます。改正の施行は2025年4月1日なので、令和7年度試験の時点ですでに改正後の条文が基準でした。令和8年度でも当然に改正後です。改正論点の整理は宅建業法の最近の改正点、試験制度の前提は宅建試験の全体像にまとめてあります。

    宅地建物取引業者名簿(8条)

    誰が備えるか

    8条1項は、国土交通省および都道府県に、それぞれ宅地建物取引業者名簿を備えると定めています。

    登載の範囲は8条2項が定めており、国土交通大臣はその免許を受けた業者について、都道府県知事はその免許を受けた業者に加えて、国土交通大臣の免許を受けた業者で当該都道府県の区域内に主たる事務所を有するものについて登載します。

    つまり、大臣免許の業者は国の名簿に載るだけでなく、主たる事務所がある都道府県の名簿にも載ります。「大臣免許なら都道府県の名簿には載らない」という理解は誤りです。

    登載事項は四つ

    改正後の8条2項が定める登載事項は、次の四つです。

    第一が、免許証番号および免許の年月日(1号)。免許権者が付与するものなので、業者の側で変わるものではありません。

    第二が、4条1項各号に掲げる事項。ただし5号を除きます(2号)。中身は次項で確認します。

    第三が、50条の2第1項の認可を受けているときは、その旨および認可の年月日(3号)。この認可は取引一任代理等に係る特例のもので、認可を受けた業者については34条の2および34条の3の適用が外れます。該当する業者は限られます。

    第四が、65条の規定による処分を受けたことがあるときは、その年月日および内容(4号)。65条は指示および業務の停止を定める条文です。免許取消処分(66条)ではなく、指示処分と業務停止処分である点に注意してください。監督処分の体系は監督処分の整理で扱っています。

    4条1項各号の中身

    2号が引いている4条1項は、免許申請書に記載すべき事項を定めた条文です。次の六つが並んでいます。

    1号が商号または名称。2号が法人である場合の役員の氏名と、政令で定める使用人があるときはその者の氏名。3号が個人である場合のその者の氏名と、政令で定める使用人があるときはその者の氏名。4号が事務所の名称および所在地。5号が前号の事務所ごとに置かれる31条の3第1項に規定する者、すなわち成年者である専任の宅建士の氏名。6号が他に事業を行つているときは、その事業の種類。

    8条2項2号はこのうち5号を除いて引いています。したがって名簿に載るのは、商号、役員と政令使用人、個人の氏名と政令使用人、事務所、そして他に行う事業の種類です。

    「政令で定める使用人」とは誰か

    4条1項2号と3号に出てくる「政令で定める使用人」は、条文を読むだけでは中身が分かりません。政令に委ねられているためです。

    宅地建物取引業法施行令2条の2は、この政令で定める使用人を、宅建業者の使用人で、宅建業に関し施行令1条の2に規定する事務所の代表者であるものと定めています。支店長や営業所長がこれにあたります。

    押さえるべきは、事務所の代表者であることが要件だという点です。役職名で決まるのではありません。したがって、事務所の代表者でない従業者は、どれだけ地位が高くても政令で定める使用人ではなく、その人が交代しても届出は不要です。逆に、支店長が交代すれば4条1項2号または3号の変更にあたるため、30日以内の届出が必要になります。

    なお同条は、5条1項の欠格事由や65条2項の業務停止処分事由、66条1項の免許取消事由でも同じ定義が使われることを示しています。一つの定義が免許制度の各所で共有されているわけです。欠格事由の一覧は免許の欠格事由を参照してください。

    「事務所」の範囲が届出の要否を決める

    4条1項4号の「事務所の名称及び所在地」も、何が事務所にあたるかで結論が変わります。

    施行令1条の2は、法3条1項の事務所を二つに分けています。一つが本店または支店(商人以外の者にあっては主たる事務所または従たる事務所)。もう一つが、それ以外で、継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くものです。

    したがって、継続的な施設があっても契約締結権限を持つ使用人を置いていなければ事務所ではなく、その開設・廃止は変更の届出の対象になりません。逆に事務所に当たれば、届出だけでなく、専任の宅建士の設置義務(31条の3第1項)、営業保証金の供託額の算定、標識の掲示、従業者名簿と帳簿の備付けが一斉に発生します。

    事務所に該当するかどうかは、この記事の届出だけの問題ではありません。判定基準は宅建業の事務所の要件にまとめてあります。

    名簿に載らないもの

    条文が列挙していない以上、次のものは登載事項ではありません。役員の住所、従業者の数、事務所の電話番号、資本金の額。いずれも出題で「登載される」と書かれることがありますが、条文にありません。

    そして最も重要なのが、専任の宅建士の氏名(4条1項5号)が8条2項2号から明示的に除かれているという点です。改正前は6号として登載事項に入っていましたが、改正後は除外されています。にもかかわらず、後述するとおり変更の届出の対象には入っています。このねじれが、この記事の中心です。

    名簿等の閲覧(10条)

    10条は、国土交通大臣または都道府県知事は、国土交通省令の定めるところにより、宅地建物取引業者名簿および一定の書類(特定書類)またはこれらの写しを一般の閲覧に供しなければならないと定めています。

    押さえるべき点は二つです。

    第一に、義務であること。「供することができる」ではなく「供しなければならない」です。免許権者に裁量はありません。

    第二に、閲覧できるのが一般であること。取引の相手方に限られず、誰でも閲覧できます。取引しようとする相手が免許を受けた業者かどうか、処分を受けたことがあるかどうかを、取引前に確認できる仕組みです。

    名簿に65条の処分の年月日と内容が登載されるのは、この閲覧制度と組み合わさって初めて意味を持ちます。処分歴を公示することで、取引の相手方に判断材料を与えているわけです。

    なお、事務所ごとに備える従業者名簿(48条3項)は、これとはまったく別の制度です。備えるのが業者で、閲覧させる相手も取引の関係者に限られます(48条4項)。名称が似ているので混同しないでください。詳細は従業者名簿の記載事項を参照してください。

    変更の届出(9条)

    対象は4条1項1号から5号まで

    9条は、宅建業者は4条1項1号から5号までに掲げる事項について変更があった場合においては、国土交通省令の定めるところにより、30日以内に、当該変更に係る事項を記載した届出書を、その免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事に提出しなければならないと定めています。

    具体的には次の五つです。商号または名称。法人の役員および政令で定める使用人の氏名。個人の氏名および政令で定める使用人の氏名。事務所の名称および所在地。そして事務所ごとに置かれる専任の宅建士の氏名。

    6号の「他に事業を行つているときは、その事業の種類」は含まれていません。兼業を始めても、やめても、変更の届出は要りません。ここは頻出です。

    期限は30日以内

    期限は変更があった日から30日以内です。「遅滞なく」ではありません。後述するとおり、宅建士の変更の登録が「遅滞なく」とされているのと対になっており、両者を入れ替える出題が定番です。

    期間の数字は宅建業法の中に多数あるので、まとめて整理しておくと混同しにくくなります。宅建業法の数字まとめを参照してください。

    届出書の提出という形式

    改正後の条文は「その旨を届け出なければならない」ではなく、「当該変更に係る事項を記載した届出書を提出しなければならない」という書き方になっています。

    そして9条2項が、4条2項(1号、6号および7号を除く)の規定を届出書について準用しています。4条2項は免許申請書の添付書類を定めた規定なので、変更の内容に応じて役員の略歴を記載した書類などを添付することになります。ただし既に提出されている書類の内容に変更がないときは、その添付を省略することができます。

    届出先は免許権者

    提出先は、その免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事です。大臣免許の場合、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して提出する扱いになっています。

    経由するだけで、届出先そのものは免許権者である大臣です。「大臣免許の業者は都道府県知事に届け出る」という書き方は、経由と届出先を混同させる作りです。

    登載事項と届出対象がずれている

    ここがこの論点の核心です。8条2項と9条は、参照している範囲が違います。

    名簿にあるが、届出の対象でないもの

    四つあります。

    免許証番号および免許の年月日(8条2項1号)。免許権者が付与するものなので、業者が届け出るものではありません。

    50条の2第1項の認可(同3号)。認可をするのは国土交通大臣自身です。

    65条の規定による処分の年月日および内容(同4号)。処分をしたのは免許権者自身なので、業者から届け出させる必要がありません。

    他に行う事業の種類(4条1項6号)。名簿には2号を通じて載りますが、9条が引いているのは1号から5号までなので、届出の対象になりません。

    前の三つは「免許権者がすでに知っていることだから」で説明がつきます。四つ目だけは理由が違い、兼業の内容は宅建業の適正な運営に直結しないため、公示はするが変更のたびに届け出させるほどではないという整理だと理解できます。

    届出の対象だが、名簿にないもの

    専任の宅建士の氏名(4条1項5号)です。8条2項2号がこの号を明示的に除いているため名簿には載りませんが、9条は1号から5号までを引いているため届出の対象になります。

    理由を考えると筋が通ります。専任の宅建士の配置は、31条の3第1項が定める設置義務そのものです。事務所ごとに業務に従事する者5人につき1人以上という要件を満たしているかどうかを、免許権者が継続的に把握する必要があります。だから変更があれば届け出させる。一方、個人の氏名を一般の閲覧に供する必要まではない。この二つの要請の差が、届出の対象に入れつつ名簿からは外すという形になっていると読めます。専任の要件そのものは専任の宅建士とはで扱っています。

    出題はこのずれを突く

    出題の作り方は決まっています。名簿の登載事項をそのまま届出の対象として書くか、届出の対象をそのまま名簿の登載事項として書くかのどちらかです。

    「宅地建物取引業以外の事業を開始したので、30日以内に変更の届出をしなければならない」は誤りです。名簿には載りますが届出は不要です。

    逆に、専任の宅建士の氏名について「名簿の登載事項であるから」という理由づけで届出が必要だと説明する肢が出た場合、結論は正しいが理由が誤りという形になります。届出が必要な根拠は9条が4条1項5号を引いていることであって、名簿の登載事項だからではありません。

    登載事項なら届出、という対応で覚えないでください。条文が別々に範囲を定めていると理解し、号で押さえるのが確実です。

    変更の届出か、免許換えか

    事務所の変更については、変更の届出では足りない場合があります。

    7条の免許換え

    宅建業者が免許を受けた後、事務所の分布が変わって免許権者の区分が変わる場合、新たに免許を受け直すことになります。7条は、この場合に従前の免許はその効力を失うと定めています。

    該当するのは三つです。大臣免許を受けた者が一の都道府県の区域内にのみ事務所を有することとなったとき。知事免許を受けた者が当該都道府県の区域内における事務所を廃止して、他の一の都道府県の区域内に事務所を設置することとなったとき。知事免許を受けた者が二以上の都道府県の区域内に事務所を有することとなったとき。

    判断は事務所の分布だけで決まる

    免許権者が大臣か知事かは、二以上の都道府県に事務所があるかどうかだけで決まります。事務所の数でも、規模でも、取引額でもありません。

    したがって、事務所の移転や新設・廃止があったときは、その結果として都道府県をまたぐかどうかを見れば、変更の届出で済むのか免許換えになるのかが判定できます。

    同一都道府県内での移転であれば、免許権者は変わらないので変更の届出です。他の都道府県に事務所を設置して二以上になれば大臣免許への免許換え、逆に大臣免許の業者が一つの県だけになれば知事免許への免許換えです。免許権者の決まり方は宅建業の免許制度にまとめてあります。

    免許換えを怠った場合

    免許換えが必要であるにもかかわらず手続を行わなかった場合、免許取消処分の対象になります。

    ここで押さえておきたいのが、この取消は免許の欠格事由には当たらないという点です。5条1項が定める欠格事由のうち免許取消に関するものは、不正の手段による免許取得、業務停止処分事由に該当し情状が特に重い場合、業務停止処分違反という三つを理由とする取消に限られます。免許換えを怠ったことによる取消はこれに含まれないため、5年間免許を受けられなくなるという効果は生じません。欠格事由の一覧は免許の欠格事由を参照してください。

    廃業等の届出(11条)との切り分け

    11条は別の制度ですが、期限が同じ30日なので混同されます。区別すべき点を確認します。

    期限は同じ30日以内、ただし起算点に例外がある

    11条1項は、業者が同項各号に該当することとなった場合に、当該各号に掲げる者がその日から30日以内に届け出なければならないと定めています。

    例外が一つあり、1号の死亡の場合だけは「その事実を知つた日」から30日以内です。相続人が死亡の事実をすぐに知るとは限らないためです。9条の変更の届出には、こうした起算点の例外はありません。

    義務者が事由ごとに違う

    これが11条の特徴です。9条の届出義務者が常に宅建業者であるのに対し、11条は事由ごとに異なります。

    死亡した場合はその相続人。法人が合併により消滅した場合はその法人を代表する役員であった者。破産手続開始の決定があった場合はその破産管財人。合併および破産手続開始の決定以外の理由により解散した場合はその清算人。宅建業を廃止した場合は宅建業者であった個人または宅建業者であった法人を代表する役員。

    破産の場合が破産管財人であって業者本人ではない点、合併消滅の場合が「代表する役員であった者」である点が狙われます。

    免許の失効時期が分かれる

    11条2項は、同条1項3号から5号までの規定により届出があったときは、3条1項の免許はその効力を失うと定めています。

    裏返すと、1号(死亡)と2号(合併消滅)は2項に含まれていません。これらは届出を待たずに、事由が発生した時点で免許が失効します。人が死亡すれば、法人が消滅すれば、免許を受けた主体そのものが存在しなくなるからです。

    これに対し破産、解散、廃業は、届出があった時に失効します。主体は存続しているため、届出という行為をもって効力を失わせる仕組みです。

    死亡・合併は事由発生時、破産・解散・廃業は届出時。この分かれ目が最頻出です。制度の詳細は宅建業の廃業届・免許取消にまとめてあります。

    宅建士の登録簿との対比

    業者側の名簿と、宅建士側の登録簿は、対比で覚えると混同しません。三組に整理します。

    期限が「30日以内」と「遅滞なく」

    業者の変更の届出は30日以内(9条)。宅建士の変更の登録は、登録を受けている事項に変更があったときは遅滞なく申請しなければなりません(20条)。

    業者は日数、宅建士は遅滞なく。この入れ替えが最も多く出ます。加えて、業者側は「届出」で宅建士側は「登録の申請」という用語の差もあります。

    有効期間があるかないか

    業者の免許には5年の有効期間があり(3条2項)、更新しなければ失効します。これに対し宅建士の登録には有効期間がありません。消除されない限り続きます。

    ただし宅地建物取引士証には5年の有効期間があります(22条の2第3項)。登録と宅建士証を分けて考える必要があり、ここも混同しやすい部分です。登録から交付までの手続は宅建士登録の手続き、更新時の講習は宅建士の法定講習で扱っています。

    免許換えは義務、登録の移転は任意

    業者が事務所の分布を変えて免許権者の区分が変われば、免許換えをしなければなりません。義務です。

    これに対し19条の2は、宅建士の登録を受けている者が、登録をしている知事の管轄以外の都道府県に所在する事務所の業務に従事し、または従事しようとするときは、登録の移転の申請をすることができると定めています。任意です。

    したがって、他県の事務所に勤務することになっても登録を移転しないまま働き続けることができます。「移転しなければならない」という肢は誤りです。なお、事務禁止処分を受けてその期間が満了していないときは移転できません(同条ただし書)。

    死亡等の届出(21条)の義務者

    宅建士側にも死亡等の届出があります。21条は、登録を受けている者が各号に該当することとなった場合に、当該各号に定める者が、その日(1号の場合はその事実を知った日)から30日以内に、登録をしている都道府県知事に届け出なければならないと定めています。

    義務者は号ごとに違います。1号の死亡した場合はその相続人。2号の18条1項1号から8号までのいずれかに該当するに至った場合は本人。3号の18条1項12号に該当するに至った場合は、本人またはその法定代理人もしくは同居の親族。

    3号だけ義務者が広くなっているのは、心身の故障により宅建士の事務を適正に行うことができない状態を想定した規定だからです。本人が届け出られない可能性がある場面だけ、法定代理人と同居の親族が加えられていると理解すると忘れません。

    住所の扱いが逆になる

    対比のなかで最も引っかかりやすいのがこれです。

    宅建士の住所は登録簿の登載事項です。18条2項は、登録は氏名、生年月日、住所その他国土交通省令で定める事項ならびに登録番号および登録年月日を登載してすると定めています。したがって引っ越せば変更の登録が必要です。

    これに対し、宅建業者の役員の住所は名簿の登載事項ではありません。4条1項2号が求めているのは役員の氏名だけです。したがって役員が引っ越しても届出は不要です。

    住所という同じ語でも、業者側と宅建士側で結論が逆になります。

    届出を怠った場合

    9条違反には罰金がある

    83条1項1号は、9条の規定による届出をせず、または虚偽の届出をした者を50万円以下の罰金に処すると定めています。

    同じ号には50条2項の案内所等の届出なども並んでおり、届出義務違反がまとめて扱われています。罰則の全体像は宅建業法の罰則にまとめてあります。

    監督処分の対象にもなる

    罰則とは別に、宅建業法違反として指示処分や業務停止処分の対象にもなり得ます。そして処分を受ければ、その年月日と内容が名簿に登載され(8条2項4号)、一般の閲覧に供されます(10条)。

    届出を怠ったことが、名簿を通じて公示されるという構造になっているわけです。

    11条は83条に列挙されていない

    一点、条文を確認しておくべきことがあります。83条1項1号が挙げているのは9条であって、11条ではありません。廃業等の届出については、この罰金の規定に列挙されていません。

    「届出義務があるのだから罰則も同じだろう」と推測せず、条文が何を挙げているかで判断してください。

    試験での出題ポイント

    期限を入れ替える

    変更の届出を「14日以内」「2週間以内」「遅滞なく」とする形です。正しくは30日以内。そして宅建士の変更の登録を「30日以内」とする逆方向の入れ替えもあります。こちらは遅滞なくです。

    登載事項と届出対象を混ぜる

    前述のとおり、両者は一致していません。兼業の種類は名簿に載るが届出は不要専任の宅建士は名簿に載らないが届出は必要という二つのねじれを押さえてください。

    登載事項に含まれないものを含める

    役員の住所、従業者の数、事務所の電話番号、資本金の額。いずれも条文にありません。とくに役員の住所は、宅建士の住所が登録事項であることと混同させる形で出ます。

    変更の届出と免許換えを取り違えさせる

    同一都道府県内の事務所移転を免許換えとする、他の都道府県への本店移転を変更の届出とする、といった形です。都道府県をまたぐかどうかだけで判定できます。

    名簿を備える主体と閲覧の範囲

    「大臣免許の業者は都道府県の名簿には登載されない」は誤りです。主たる事務所がある都道府県の名簿にも登載されます。また「名簿を閲覧できるのは取引の相手方に限られる」も誤りで、一般の閲覧に供されます。

    廃業等の届出の義務者と失効時期

    破産の届出義務者を業者本人とする、死亡の場合に届出をもって失効するとする、といった形です。義務者は事由ごとに違い、失効時期は死亡・合併が事由発生時、破産・解散・廃業が届出時です。

    登録の移転を義務とする

    19条の2は「申請をすることができる」と書いています。義務ではありません。免許換えが義務であることと対比させて狙われます。

    古い号数で出題されることはないが、教材には残る

    2025年4月1日の改正で8条2項と9条の構造が変わっているため、それ以前に作られた教材や過去問解説には旧号数の記述が残っています。結論はほぼ同じですが、根拠として示される号数が違います。条文の所在を問われる形式では、改正後の条文で答える必要があります。

    覚え方・整理の仕方

    「名簿は8条、届出は9条、参照先はどちらも4条1項」

    改正後の構造を一文にすると、これになります。8条2項2号も9条も、4条1項の号を参照しています。違うのは、どの号まで引いているかだけです。

    8条2項2号は4条1項各号から5号を除いたもの。9条は4条1項1号から5号まで。片方は5号を外し、もう片方は5号までで止める。この対比で覚えると、ねじれの向きを取り違えません。

    ずれは両方向にある

    名簿にあって届出なし、が四つ(免許証番号・免許年月日、認可、処分、兼業の種類)。届出ありで名簿になし、が一つ(専任の宅建士)。

    前者は「免許権者がすでに知っている」か「重要度が低い」、後者は「設置義務の履行状況だから把握が要る」。理由で束ねると、個別に覚える必要がなくなります。

    30日と遅滞なくは「業者と宅建士」

    業者は30日以内の届出、宅建士は遅滞なくの登録申請。組織は日数で管理し、個人は速やかに。この一組を軸に、有効期間の有無(免許は5年、登録は無期限)、免許換えと登録の移転(義務と任意)を並べれば、三組がまとめて出てきます。

    失効時期は「主体が消えたかどうか」

    死亡と合併消滅は、免許を受けた主体そのものが存在しなくなるので、届出を待たずに失効します。破産・解散・廃業は主体が存続しているので、届出という行為で失効させます。

    主体が消えたなら自動、残っているなら届出。この理由づけを持てば、五つの事由を暗記しなくても振り分けられます。

    住所は「業者は不要、宅建士は必要」

    役員の住所は名簿の登載事項でないので届出不要。宅建士の住所は登録事項なので変更の登録が必要。同じ語で結論が逆という一点だけ覚えておけば足ります。

    改正は「号数が変わった、結論は変わらない」

    2025年4月1日の改正について覚えるべきはこれだけです。何を届け出るかは実質的に変わっておらず、参照の仕方が整理されました。古い教材を使う場合、結論はそのまま使えるが、根拠の号数は付け替えるという扱いにしてください。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 宅地建物取引業者は、宅地建物取引業以外の事業を新たに開始した場合、その日から30日以内にその旨を免許権者に届け出なければならない。(○か×か)

    答えを見る ×:他に行う事業の種類は4条1項6号に掲げる事項です。名簿には8条2項2号(「4条1項各号(5号を除く。)に掲げる事項」)を通じて登載されますが、9条が変更の届出の対象としているのは**4条1項1号から5号まで**であり、6号は含まれていません。したがって兼業を開始しても、やめても、変更の届出は不要です。名簿の登載事項と変更の届出の対象は一致しておらず、「名簿に載るなら届出が必要」という対応で覚えると、この肢を落とします。

    Q2. 宅地建物取引業者は、事務所ごとに置かれる専任の宅地建物取引士の氏名に変更があった場合、30日以内に変更の届出をしなければならない。(○か×か)

    答えを見る ○:専任の宅建士の氏名は4条1項5号に掲げる事項であり、9条が引く「4条1項1号から5号まで」に含まれるため、変更があれば30日以内の届出が必要です。注意すべきは理由づけで、**この事項は8条2項2号が明示的に5号を除いているため、名簿の登載事項ではありません。**届出が必要な根拠は9条が4条1項5号を引いていることであって、名簿の登載事項だからではありません。専任の宅建士の配置は31条の3第1項の設置義務の履行状況そのものなので、免許権者が継続的に把握する必要がある、と理解すると筋が通ります。

    Q3. 宅地建物取引業者名簿は、取引の相手方となろうとする者からの請求があったときに限り、閲覧に供される。(○か×か)

    答えを見る ×:10条は、国土交通大臣または都道府県知事は、国土交通省令の定めるところにより、宅地建物取引業者名簿および特定書類またはこれらの写しを**一般の閲覧に供しなければならない**と定めています。閲覧できる者は取引の相手方に限られず、義務であって裁量もありません。なお、事務所ごとに備える従業者名簿(48条3項)は別制度で、こちらは取引の関係者から請求があったときに閲覧させる義務です(48条4項)。名称が似ているので混同しないでください。

    Q4. 宅地建物取引業者について破産手続開始の決定があった場合、その免許は決定があった時に効力を失う。(○か×か)

    答えを見る ×:11条2項は、同条1項**3号から5号まで**の規定により届出があったときに免許が効力を失うと定めています。破産手続開始の決定は3号なので、失効するのは**届出があった時**です。事由の発生時ではありません。事由の発生時に当然に失効するのは、2項に含まれていない1号(死亡)と2号(合併による消滅)で、免許を受けた主体そのものが存在しなくなるためです。なお破産の場合の届出義務者は破産管財人であり、業者本人ではありません。

    Q5. 宅地建物取引士の登録を受けている者が、登録をしている都道府県以外の都道府県に所在する事務所に従事しようとするときは、登録の移転を申請しなければならない。(○か×か)

    答えを見る ×:19条の2は「登録の移転の**申請をすることができる**」と定めており、任意です。移転しないまま他県の事務所で勤務を続けることもできます。義務とされているのは業者側の免許換えのほうで、事務所の分布が変わって免許権者の区分が変わる場合には新たに免許を受けることになり、従前の免許は効力を失います(7条)。**免許換えは義務、登録の移転は任意**という対比で押さえてください。なお、事務禁止処分を受けてその禁止の期間が満了していないときは、登録の移転を申請できません(19条の2ただし書)。

    まとめ

    宅地建物取引業者名簿(8条)と変更の届出(9条)の核心は、両者の範囲が一致していないことです。

    名簿の登載事項は四つで、免許証番号および免許の年月日(1号)、4条1項各号から5号を除いたもの(2号)、50条の2第1項の認可(3号)、65条の規定による処分の年月日および内容(4号)です。これに対し変更の届出の対象は、4条1項1号から5号までです。

    このため、ずれが両方向に生じます。名簿に載るが届出は不要なのが、免許証番号・免許年月日、認可、処分、そして他に行う事業の種類(4条1項6号)。届出は必要だが名簿には載らないのが、専任の宅建士の氏名(4条1項5号)です。前者は免許権者がすでに知っているか重要度が低いため、後者は31条の3の設置義務の履行状況として把握が必要なため、と理由で束ねられます。

    期限は30日以内で、提出するのは変更に係る事項を記載した届出書です。すでに提出済みの添付書類に変更がなければ添付を省略できます(9条2項)。届出を怠れば83条1項1号により50万円以下の罰金の対象となり、監督処分を受ければその内容が名簿に登載され、10条により一般の閲覧に供されます。

    事務所の変更については、都道府県をまたぐかどうかで免許換え(7条)か変更の届出かが分かれます。免許換えを怠った場合の免許取消は、5条1項の欠格事由には当たりません。

    宅建士の登録簿とは三組で対比します。期限は30日以内と遅滞なく、有効期間は免許5年と登録無期限、免許換えは義務で登録の移転は任意。さらに住所の扱いが逆で、宅建士の住所は登録事項だが役員の住所は名簿の登載事項ではありません。

    なお、8条2項と9条は令和6年法律第53号により2025年4月1日から条文の構造が変わっています。実質的な結論はほぼ同じですが、旧「8条2項2号から6号まで」という号数は現在の条文には存在しません。古い教材を使う場合は根拠の号数を付け替えてください。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、名簿の登載事項と変更の届出の対象を切り分ける肢を、条文根拠つきで演習できます。

    読んだ内容を、宅建業法の肢で確かめる

    宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。

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