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宅建業法の全体像|20問の出題範囲と学習設計

宅建業法 読了 約24分

宅建業法20問の全体像を、業者になるまで・取引を始めるまで・取引の各段階・守らせる仕組みという4つの流れで整理します。条文の位置と学習順序がつかめます。

目次

    この記事は、宅建試験で最も配点の大きい宅建業法の地図です。個々の要件には踏み込まず、法律全体がどう組み立てられていて、どこから学ぶと効率がよいのかを示します。論点ごとの中身は、それぞれの記事へ進んでください。出題頻度の順に並べたものは宅建業法の頻出論点ランキングTOP15にあります。権利関係側の地図は権利関係の全体像|14問の出題範囲と学習設計です。

    先に結論を述べます。宅建業法は、条文の要件と数字を正確に覚えれば取り切れる科目です。権利関係のように事案を組み立てる作業が要らず、覚えた量がそのまま得点になります。配点は50問中20問で最大。だから、宅建試験の学習はここから始めるのが合理的です。

    そして宅建業法は、ばらばらの規制の寄せ集めではありません。業者が生まれてから、営業の準備を整え、取引を進め、違反したら処分される、という時間の流れに沿って条文が並んでいます。この流れを掴めば、20問がどこに配置されているのかが見えます。

    宅建業法はどんな法律か

    宅建業法1条は、この法律の目的を、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、業務の適正な運営と宅地建物の取引の公正を確保し、あわせて宅地建物取引業の健全な発達を促進して、購入者等の利益の保護と流通の円滑化を図ることだと定めています。

    ここに二つの軸があります。ひとつは購入者等の保護。不動産は高額で、情報も専門知識も売主側に偏っています。放っておけば買主が不利になるので、業者に義務を課してその偏りを埋めます。もうひとつは業界の健全な発達。悪質な業者を排除し、まともな業者が営業できる環境を作るという発想です。

    この二つの軸を意識すると、個々の規制の意味が見えてきます。重要事項の説明が契約前でなければならないのはなぜか。8種制限が業者間の取引には適用されないのはなぜか。趣旨に戻れば、暗記に頼らずに結論を出せる場面が増えます。

    規制の対象は、宅建業者と宅建士の二つです。業者は法人または個人という事業主体、宅建士はその中で専門的な事務を担う個人です。義務がどちらに向いているのかを取り違えると、正誤が逆になります。主体ごとの整理は宅建業者と宅建士の義務|主体で分ける整理にまとめてあります。

    以下、四つの段階に分けて全体を見ていきます。

    第一段階:業者になるまで

    何が宅建業に当たるのか(2条2号)

    すべての出発点は、その行為が宅建業に当たるかどうかです。2条2号は、宅地建物取引業を「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」と定義しています。

    この条文の書き方をよく見てください。自ら当事者となる行為として挙げられているのは売買と交換だけで、貸借が入っていません。貸借について挙げられているのは代理と媒介だけです。つまり、自ら貸主となって物件を貸す行為は宅建業に当たりません。自社ビルを賃貸するオーナーやサブリース業者に免許が要らないのは、この条文構造によります。

    もうひとつの要素が「業として」です。不特定多数を相手に反復継続して行うことを意味します。自分の土地を一度売るだけなら業ではありませんが、区画割りして多数に分譲すれば業になります。判断が分かれる具体例は宅建業の「業」に当たるケースと当たらない例で扱っています。

    なお2条1号は宅地を、建物の敷地に供せられる土地に加え、用途地域内の土地で道路・公園・河川その他政令で定める公共施設の用に供されているもの以外を含む、と定義しています。用途地域内であれば現況が農地や山林でも宅地に当たる、という点が出題されます。

    免許(3条)

    宅建業を営むには免許が必要です。3条1項は、2以上の都道府県の区域内に事務所を設置する場合は国土交通大臣、1の都道府県の区域内にのみ設置する場合はその都道府県知事の免許を受けなければならないと定めます。基準は事務所の所在地であって、営業する地域ではありません。知事免許の業者が他県の物件を扱っても違反にはなりません。

    有効期間は5年です(3条2項)。更新を受けなければ効力を失いますが、更新の申請をしたのに有効期間の満了日までに処分がなされないときは、従前の免許が処分がなされるまで効力を有します(3条4項)。事務所の設置状況が変われば免許換えが必要で、新たな免許を受けたときに従前の免許は効力を失います(7条1項)。

    無免許での営業は12条1項が禁止し、自己の名義で他人に宅建業を営ませる名義貸しは13条1項が禁止しています。免許制度の詳細は宅建業の免許制度|要否・免許権者・更新、宅建士の登録制度との対比は宅建業の免許制度を横断整理|登録制度との違いを参照してください。

    免許の欠格事由(5条1項)

    免許は誰にでも出るわけではありません。5条1項が15の号にわたって欠格事由を定めています。破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者(1号)、一定の理由で免許を取り消されて5年を経過しない者(2号)、暴力団員等(7号)、申請前5年以内に宅建業に関し不正または著しく不当な行為をした者(8号)、事務所について31条の3の要件を欠く者(15号)などです。

    ここで二つ、古い教材が残りやすい箇所があります。

    第一に、刑罰による欠格です。5号は「拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者」と定めています。2025年6月1日に施行された改正刑法により、懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されたことを受けた表現です。「懲役以上の刑」と書かれた記述は現行法の文言ではありません。拘禁刑への統一が宅建業法の各規定に与えた影響は拘禁刑とは?宅建業法の欠格事由への影響を解説にまとめてあります。

    第二に、成年被後見人・被保佐人の扱いです。かつては5条1項に成年被後見人と被保佐人が名指しで掲げられていましたが、2019年の改正でこの名指しは削除されました。現在の10号は「心身の故障により宅地建物取引業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの」という書き方で、個別の判断によることになっています。成年被後見人であるというだけで一律に免許を受けられない、という記述は誤りです。欠格事由の系統別の整理は宅建業の免許の欠格事由|5条1項を系統別に整理にあります。

    なお、罰金刑による欠格は6号に限定列挙されています。宅建業法違反、暴力団対策法違反、刑法の傷害・現場助勢・暴行・凶器準備集合等・脅迫・背任の各罪、暴力行為等処罰法違反。これ以外の罪で罰金刑を受けても欠格にはなりません。罪名を差し替える出題が定番です。

    宅建士の登録と宅建士証(18条・22条の2)

    宅建士になる道筋も、免許と並行して押さえます。試験に合格しただけでは宅建士ではありません。都道府県知事の登録を受け(18条1項)、宅建士証の交付を受けてはじめて宅建士です。2条4号が「宅地建物取引士」を「第二十二条の二第一項の宅地建物取引士証の交付を受けた者」と定義していることからも明らかです。

    宅建士証の交付を受けようとする者は、登録をしている知事が指定する講習で交付の申請前6月以内に行われるものを受講しなければなりません。ただし試験に合格した日から1年以内に交付を受けようとする者は不要です(22条の2第2項)。宅建士証の有効期間は5年(同条3項)、登録の移転があったときは従前の宅建士証は効力を失います(同条4項)。

    宅建士には、15条の業務処理の原則、15条の2の信用失墜行為の禁止、15条の3の知識及び能力の維持向上という三つの努力・行為規範が置かれています。合格後の具体的な手続は宅建士の登録と宅建士証|合格後の手続きを参照してください。

    事務所と専任の宅建士(31条の3)

    事務所を構えるには人的な要件があります。31条の3第1項は、事務所その他省令で定める場所ごとに、省令で定める数の成年者である専任の宅建士を置かなければならないと定めます。省令が定める数が、業務に従事する者5人に1人以上です。

    同条2項には便利な規定があります。業者本人(法人なら役員)が宅建士であるときは、その者が自ら主として業務に従事する事務所等については、専任の宅建士とみなされます。同条3項は、既存の事務所等が要件に抵触するに至ったときは2週間以内に適合させる措置を執らなければならないとしています。この2週間は出題頻度の高い数字です。

    人数の数え方は専任の宅建士の設置義務|5人に1人の数え方、事務所そのものの要件は宅建業の事務所の要件|設置義務・届出事項を完全整理で扱っています。

    第二段階:取引を始めるまで

    免許を受けても、すぐに営業を始められるわけではありません。取引の相手方が損害を受けたときに備える財産的な基盤を整える必要があります。

    営業保証金(25条)

    25条1項は、宅建業者は営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならないと定めます。供託先は主たる事務所のもよりの供託所であって、支店の近くではありません。金額は政令により、主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき500万円です。

    供託しただけでは足りません。供託した旨を免許権者に届け出る必要があり(25条4項)、この届出をした後でなければ事業を開始できません(同条5項)。免許をした日から3月以内に届出がないときは免許権者が催告をしなければならず(同条6項)、催告が到達した日から1月以内になお届出がないときは免許を取り消すことができます(同条7項)。3月と1月という二つの期間が、順序ごと問われます。

    保証協会という別ルート(64条の9)

    1,000万円を用意できる業者ばかりではありません。そこで宅地建物取引業保証協会に加入するという道があります。64条の9第1項は、保証協会に加入しようとする者は、加入しようとする日までに、主たる事務所およびその他の事務所ごとに政令で定める額の弁済業務保証金分担金を納付しなければならないと定めます。政令の額は、主たる事務所60万円、その他の事務所30万円です。

    社員となった後に新たに事務所を設置したときは、その日から2週間以内に分担金を納付しなければならず(同条2項)、納付しないときは社員の地位を失います(同条3項)。営業保証金の1,000万円と分担金の60万円、この桁の違いが保証協会制度の存在意義です。両制度の比較は営業保証金と弁済業務保証金の違い|供託額・還付を比較、協会側の仕組みは保証協会の仕組み|加入・弁済業務・還付充当金にまとめてあります。

    供託所等については、契約が成立するまでの間に相手方へ説明する義務があります(35条の2)。重要事項説明とは別の義務で、宅建士でなくても説明できる点が特徴です。詳細は供託所等に関する説明義務|35条の2を条文からを参照してください。

    事務所に備えるもの

    営業を始める事務所には、四つのものを備えます。従業者証明書を携帯させること(48条1項。従業者は取引の関係者から請求があれば提示します。同条2項)、事務所ごとに従業者名簿を備えること(同条3項。請求があれば閲覧に供します。同条4項)、事務所ごとに帳簿を備え取引のあったつど記載すること(49条)、事務所等および省令で定める業務を行う場所ごとに公衆の見やすい場所に標識を掲げること(50条1項)。これに報酬額の掲示(46条4項)が加わります。

    この四つと報酬額の掲示は、どこに備えるのかがそれぞれ違います。帳簿と従業者名簿は事務所のみ、標識は事務所以外の案内所等にも必要、報酬額の掲示は事務所のみ。場所を入れ替える出題が定番です。記載事項と保存期間は従業者名簿と帳簿|記載事項と保存期間で扱っています。

    第三段階:取引の各段階

    ここからが宅建業法の本体で、出題数も最も多い領域です。取引の時間順に条文が並んでいることを意識してください。

    広告(32条・33条・34条)

    取引はまず広告から始まります。32条は誇大広告等を禁止し、所在・規模・形質・利用の制限・環境・交通の利便・対価の額や支払方法などについて、著しく事実に相違する表示や、実際のものより著しく優良・有利であると誤認させる表示をしてはならないと定めます。

    33条は広告の開始時期を制限します。宅地の造成または建物の建築に関する工事の完了前は、都市計画法29条1項・2項の開発許可や建築基準法6条1項の確認など、政令で定める処分があった後でなければ広告できません。

    34条は取引態様の明示です。1項が広告をするときの明示、2項が注文を受けたときに遅滞なく明らかにすることを求めています。広告のときと注文のとき、二度必要だという点が問われます。詳細は広告に関する規制|誇大広告の禁止と広告開始時期取引態様の明示義務|売主・代理・媒介の違いにあります。

    媒介契約(34条の2)

    依頼を受けたら媒介契約を結びます。34条の2第1項は、売買または交換の媒介契約を締結したときは遅滞なく所定の事項を記載した書面を作成し、記名押印して依頼者に交付しなければならないと定めます。貸借の媒介にはこの義務がない点に注意してください。

    契約の型は三つです。他の業者に重ねて依頼できる一般媒介、重ねて依頼できない専任媒介、さらに自己発見取引もできない専属専任媒介。専任媒介の有効期間は3月を超えることができず、これより長く定めても3月になります(同条3項)。更新は依頼者の申出により可能で、更新の時から3月を超えられません(同条4項)。

    専任媒介を締結したときは指定流通機構への登録義務があり(同条5項)、業務の処理状況の報告義務も課されます。専任は2週間に1回以上、専属専任は1週間に1回以上です(同条9項)。また型を問わず、申込みがあったときは遅滞なく依頼者に報告しなければなりません(同条8項)。これらに反する特約は無効です(同条10項)。3類型の比較は媒介契約の3類型|一般・専任・専属専任の違いを比較、書面の中身は媒介契約書の記載事項|レインズ登録義務と報告義務を参照してください。

    重要事項説明(35条)

    宅建業法の中心にある義務です。35条1項は、宅建業者は相手方等に対し、その者が取得しまたは借りようとしている宅地建物に関し、売買・交換・貸借の契約が成立するまでの間に、宅建士をして所定の事項について書面を交付して説明をさせなければならないと定めます。

    押さえるべき要素が三つあります。時期は契約が成立するまでの間であること、説明するのは宅建士であること、そして書面の交付と説明の両方が必要であることです。宅建士は説明をするときに相手方に対し宅建士証を提示しなければならず(35条4項)、書面には宅建士が記名しなければなりません(同条5項)。宅建士証の提示は、22条の4の「請求があったときの提示」と違い、請求がなくても必要です。

    相手方が宅建業者である場合には、35条6項により説明が不要となり、書面の交付だけで足ります。8項により、承諾を得れば電磁的方法による提供も可能です。

    記載事項は35条書面の記載事項一覧|重要事項説明書に何を書くか、覚え方は35条書面の覚え方|語呂合わせと売買・賃貸の違いで整理する、貸借に固有の項目は賃貸の重要事項説明|貸借に固有の項目と売買との違い、区分所有建物の追加事項は区分所有建物の重要事項説明|35条の追加事項、オンラインで行う場合のルールは重要事項説明のIT化|オンライン説明のルールと注意点に分けてあります。

    契約締結時期の制限(36条)

    33条の広告版に対応するのが36条です。工事完了前は、必要な許可等の処分があった後でなければ、自ら当事者として、または当事者を代理して売買・交換の契約を締結し、あるいは売買・交換の媒介をしてはならないと定めます。

    ここで重要なのは、36条の対象に貸借が含まれていないことです。33条の広告制限は貸借も対象ですが、36条の契約制限は売買・交換だけ。この非対称が繰り返し問われます。

    37条書面(37条)

    契約が成立したら37条書面です。37条1項は、売買・交換について、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して締結したときはその相手方および代理を依頼した者に、媒介により契約が成立したときは各当事者に、遅滞なく所定の事項を記載した書面を交付しなければならないと定めます。2項が貸借について同様の定めを置きます。

    35条書面との違いは、交付の時期、交付する相手、そして説明の要否です。37条書面には説明義務がありません。3項が求めているのは宅建士による記名だけです。「37条書面を宅建士が説明しなければならない」という肢は誤りになります。

    記載事項には、必ず記載しなければならないものと、定めがあるときに記載すればよいものがあります。この区別は37条書面の記載事項|必要的記載と任意的記載の違いで、35条書面との横断整理は35条書面と37条書面の違い|横断整理で扱っています。

    8種制限(33条の2、37条の2から43条)

    宅建業者が自ら売主となり、買主が宅建業者でない場合にだけ働く特別な規制です。78条2項が「第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない」と定めており、適用場面が条文で明確に区切られています。

    八つの内訳は、自己の所有に属しない物件の売買契約締結の制限(33条の2)、事務所等以外でした買受けの申込みの撤回等、いわゆるクーリング・オフ(37条の2)、損害賠償額の予定等の制限(38条)、手付の額の制限等(39条)、担保責任についての特約の制限(40条)、手付金等の保全(41条・41条の2)、割賦販売契約の解除等の制限(42条)、所有権留保等の禁止(43条)です。

    数字は代金の10分の2が二つ、10分の3が一つという構成になっています。損害賠償額の予定と違約金は合算して代金の10分の2を超えられず、超えた部分が無効になります(38条)。手付は代金の10分の2を超えて受領できません(39条1項)。所有権留保が問題になるのは代金の10分の3を超える額の支払を受けたときです(43条1項)。クーリング・オフの8日と、担保責任の特約で許される引渡しの日から2年以上(40条1項)も頻出の数字です。

    全体像は8種制限とは|自ら売主制限の全体像と8項目、軸ごとの比較は8種制限の横断整理|数字と効果を軸で比べる、個別には手付金の制限|手付の額と手付解除の条件契約不適合責任の特約制限|民法との違い所有権留保等の禁止があります。

    報酬(46条)

    46条1項は、売買・交換・貸借の代理または媒介に関して受けることができる報酬の額は国土交通大臣の定めるところによると規定し、2項がその額を超えて報酬を受けることを禁じています。具体的な上限は告示で定められており、計算問題として出題されます。上限額の求め方は報酬額の制限|仲介手数料の計算方法と上限額、出題パターン別の解き方は報酬額計算のパターン別攻略|売買・交換・貸借を参照してください。

    第四段階:守らせる仕組み

    業務に関する禁止事項(47条・47条の2)

    47条は、業者が相手方等に対してしてはならない行為を三つ挙げています。1号が、契約締結の勧誘に際し、または申込みの撤回・解除・債権の行使を妨げるため、35条や37条の記載事項など判断に重要な影響を及ぼす事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為。2号が不当に高額の報酬を要求する行為。3号が手付について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為です。

    2号は「要求する」だけで違反になる点に注意してください。実際に受領しなくても成立します。3号は手付の貸付けや立替えが対象で、手付金の分割払いを認めることも含まれます。一方、代金の減額や手付金の減額は信用の供与ではないため違反になりません。

    47条の2は、断定的判断の提供(1項)、威迫(2項)、その他省令で定める行為(3項)を禁じています。45条は秘密を守る義務を定め、宅建業を営まなくなった後も同様だとしています。

    監督処分(65条から68条の2)

    処分は業者向けと宅建士向けに分かれ、それぞれ三段階です。業者に対しては指示処分、業務停止処分(65条)、免許取消処分(66条・67条)。宅建士に対しては指示処分、事務禁止処分(68条)、登録消除処分(68条の2)です。

    66条1項は「免許を取り消さなければならない」と定める必要的取消しで、5条1項の1号・5号から7号まで・10号・14号のいずれかに該当するに至ったときなどが挙げられています。処分権者が免許権者に限られるのか、業務地を管轄する知事もできるのかという点も出題されます。詳細は監督処分|指示・業務停止・免許取消の違いにまとめてあります。

    罰則(79条以下)

    最も重いのが79条です。不正の手段によって免許を受けた者、12条1項の無免許事業の禁止に違反した者、13条1項に違反して他人に宅建業を営ませた者、業務停止命令に違反して業務を営んだ者は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれを併科されます。

    ここも古い記述が残りやすい箇所です。2025年6月1日施行の改正刑法により懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されたため、条文の文言は「懲役」ではなく「拘禁刑」です。79条の2は47条1号違反について2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、80条は47条2号違反について1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金を定めています。

    84条1号は両罰規定で、79条・79条の2の違反行為については、行為者を罰するほか法人に対して1億円以下の罰金刑を科すとしています。行為者と法人で金額が桁違いになる点が問われます。罰則の一覧は宅建業法の罰則一覧を参照してください。

    住宅瑕疵担保履行法

    宅建業法そのものではありませんが、宅建業者を名宛人とする特別法として出題範囲に入っています。正式名称は特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律です。

    新築住宅の売主となった宅建業者に、資力確保措置として住宅販売瑕疵担保保証金の供託か、住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結を義務づける制度です。11条1項は、宅建業者は毎年、基準日から3週間を経過する日までの間において、当該基準日前10年間に自ら売主となる売買契約に基づき買主に引き渡した新築住宅について、供託をしていなければならないと定めます。

    基準日は3月31日で、年1回です。3条が「基準日(三月三十一日をいう。以下同じ。)」と定義しています。かつては3月31日と9月30日の年2回でしたが、現在は年1回に改められています。「基準日は年2回」という記述は現行制度ではありません。

    12条1項は基準日ごとの届出義務を定め、13条は、供託と届出をしなければ、当該基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後は新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結してはならないと定めます。届出を怠ると営業そのものが止まる、という強い効果です。15条は、供託をしている業者に対し、売買契約を締結するまでに供託所の所在地等を記載した書面を交付して説明することを求めています。

    供託額は戸数を基礎に算定され、床面積が政令で定める面積以下のものは2戸をもって1戸とする特例があります(11条3項)。制度の全体像は住宅瑕疵担保履行法|供託と保険による資力確保、戸数の数え方と算定は住宅瑕疵担保履行法の供託額|戸数の数え方と算定で扱っています。

    20問をどう取りにいくか

    この科目から始める理由

    宅建業法を最初に学ぶべき理由は三つあります。

    第一に、配点が50問中20問で最大だからです。全体の4割を占める科目を後回しにすると、時間切れのリスクが直撃します。

    第二に、覚えた量が得点になるからです。要件と数字を正確に押さえれば正解にたどり着ける問題が中心で、努力が結果に結びつく手応えを得やすい。学習の初期にこの手応えがあるかどうかは、継続に効きます。

    第三に、法律の読み方の練習になるからです。主語は業者か宅建士か、原則はどれで例外はどこか、期間の起算点はいつか。宅建業法でこの読み方を身につけておくと、権利関係や法令上の制限に入ったときの負担が下がります。科目別の目標点の考え方は宅建の科目別攻略法、得点源の見極め方は宅建の合格戦略|得点源と捨て問の見極め方にあります。

    学習の順序

    宅建業法の中では、時間の流れに沿って進めるのが自然です。業の定義と免許制度から入り、宅建士の登録制度と対比しながら押さえる。次に営業保証金と保証協会。ここまでが営業の入口です。

    続いて取引の各段階に入ります。重要事項説明と37条書面は出題数が多いので早めに着手し、8種制限をそれに続けます。この三つが宅建業法の得点の中心です。そのあと媒介契約、広告規制、その他の業務規制を回し、報酬の計算問題を集中して処理します。最後に監督処分と罰則を横断的に整理し、住宅瑕疵担保履行法を足して完成です。

    精度を上げる段階では宅建業法で18問以上取る|論点別の精度の上げ方、直前期に一気に仕上げるなら宅建業法を2週間で仕上げる方法|直前期の集中対策、演習の回し方は宅建の過去問活用術|肢別・年度別と回転法を参照してください。近年の改正点は宅建業法の改正ポイント|近年の重要改正を整理にまとめてあります。

    試験での出題ポイント

    主体を入れ替える

    宅建業者の義務を宅建士の義務として書く、あるいはその逆。これが最も多いパターンです。重要事項の説明をするのは宅建士ですが、説明をさせる義務を負っているのは業者です。37条書面を交付する義務は業者にあり、記名するのが宅建士です。条文の主語を確認する癖をつけてください。

    時期をずらす

    重要事項説明は契約が成立するまでの間、37条書面は契約成立後に遅滞なく。この順序を入れ替える肢が定番です。営業保証金の供託は事業開始前(25条5項)、専任の宅建士の欠員補充は2週間以内(31条の3第3項)、保証協会の社員が事務所を新設したときの分担金納付も2週間以内(64条の9第2項)。

    売買・交換と貸借を混ぜる

    33条の広告開始時期の制限は貸借にも及びますが、36条の契約締結時期の制限は売買・交換のみです。34条の2の媒介契約書面の交付義務は売買・交換のみで、貸借にはありません。どの規制がどの取引態様に及ぶかを整理しておくと、この種の肢を即断できます。

    適用範囲を広げる

    8種制限を業者間取引にも適用する肢が典型です。78条2項により、33条の2および37条の2から43条までは業者相互間の取引に適用されません。同様に、35条6項により相手方が業者であれば重要事項の説明は不要で、書面の交付だけで足ります。

    数字を差し替える

    免許の有効期間5年、宅建士証の有効期間5年、営業保証金の主たる事務所1,000万円とその他500万円、分担金の60万円と30万円、専任媒介の3月、報告の2週間と1週間、クーリング・オフの8日、代金の10分の2と10分の3、担保責任の特約の2年、届出や補充の2週間、免許取消手続の3月と1月。数字は加工が容易なので、ずらした肢が量産されます。横断的な整理は宅建業法の数字まとめ|混同しない覚え方で整理にあります。

    改正前の内容を現行制度として出す

    拘禁刑への一本化(2025年6月1日施行)、成年被後見人・被保佐人の名指し削除(2019年)、住宅瑕疵担保履行法の基準日が年1回になったこと。いずれも改正前の記述が誤答肢として使われます。「懲役3年以下」「成年被後見人は免許を受けられない」「基準日は年2回」という表現を見たら、それだけで誤りだと判断できます。

    覚え方・整理の仕方

    四段階の流れで条文の位置を思い出す

    業者になるまでが2条から31条の3、営業の基盤が25条から50条、取引の各段階が32条から46条、守らせる仕組みが47条から84条。おおまかな帯として覚えておけば、条番号を聞いたときにどの段階の話かが即座に浮かびます。

    自ら貸借は「業ではない」を軸にする

    2条2号の構造は、自ら当事者になるのは売買と交換だけ、貸借は代理と媒介だけ、という形です。「自ら貸借は業に当たらない」を一つ覚えておけば、免許の要否、8種制限の適用、37条書面の交付相手など、複数の論点で判断の基準になります。

    35条と37条は「前と後、説明と記名」

    35条は契約前・説明あり・記名あり・宅建士証の提示あり。37条は契約後・説明なし・記名あり・提示なし。この四つの軸で並べれば、両者の違いは一度で整理できます。

    8種制限は「2割・2割・3割・8日・2年」

    数字だけを先に唱えます。損害賠償額の予定等が2割、手付が2割、所有権留保が3割、クーリング・オフが8日、担保責任の特約が引渡しから2年以上。数字が浮かべば、どの条文の話かは逆算できます。語呂を使う場合は宅建業法の数字まとめ|混同しない覚え方で整理が使えます。

    保証金は「1,000と500、60と30」

    営業保証金が主たる事務所1,000万円・その他500万円、分担金が主たる事務所60万円・その他30万円。桁が違うことと、どちらも主たる事務所が2倍であることをセットで覚えます。

    2週間が三つある

    専任の宅建士の欠員補充(31条の3第3項)、保証協会の社員の事務所新設時の分担金納付(64条の9第2項)、そして専任媒介の報告頻度(34条の2第9項)。同じ2週間でも意味が違うので、三つ並べて区別しておくと取り違えません。

    処分は「三段階が二組」

    業者は指示・業務停止・免許取消、宅建士は指示・事務禁止・登録消除。どちらも軽い順に三段階で、真ん中の名称だけが違います。この対称性で覚えると、名称の入れ替えに気づけます。

    理解度チェッククイズ

    次の記述の正誤を判定してください。

    Q1. 自ら所有する建物を反復継続して不特定多数の者に賃貸する行為は、宅地建物取引業に当たるため、免許を受けなければならない。

    答えは誤りです。宅建業法2条2号は、宅地建物取引業を「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」と定義しています。自ら当事者となる行為として挙げられているのは売買と交換だけで、貸借は含まれていません。したがって自ら貸主となる行為は、どれだけ反復継続しても宅建業に当たらず、免許は不要です。なお、他人の貸借を代理・媒介する行為は宅建業に当たります。

    Q2. 成年被後見人は、宅地建物取引業法5条1項の欠格事由に該当するため、免許を受けることができない。

    答えは誤りです。かつては5条1項に成年被後見人および被保佐人が名指しで掲げられていましたが、2019年の改正でこの名指しは削除されました。現行の5条1項10号は「心身の故障により宅地建物取引業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの」という規定であり、後見開始の審判を受けたという一事をもって一律に欠格となるわけではありません。同様に、5条1項5号の刑罰による欠格は、2025年6月1日施行の改正刑法を受けて「拘禁刑以上の刑」と規定されています。

    Q3. 宅地建物取引業者は、宅地の造成に関する工事の完了前においては、必要な許可等の処分があった後でなければ、当該宅地の貸借の媒介をしてはならない。

    答えは誤りです。契約締結時期を制限する36条の対象は、自ら当事者としてまたは当事者を代理してする売買・交換の契約締結と、売買・交換の媒介であり、貸借は含まれていません。これに対し、33条の広告開始時期の制限は「売買その他の業務に関する広告」を対象としており、貸借の広告も制限されます。広告は貸借も対象、契約は売買・交換のみ、という非対称が繰り返し問われます。

    Q4. 宅地建物取引業者が自ら売主として宅地建物取引業者である買主と売買契約を締結する場合、損害賠償額の予定は、代金の額の10分の2を超えてはならない。

    答えは誤りです。損害賠償額の予定等の制限を定める38条は、いわゆる8種制限のひとつです。78条2項は「第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない」と定めており、買主も宅建業者である業者間取引には適用されません。8種制限は、宅建業者が自ら売主となり、かつ買主が宅建業者でない場合にのみ働く規制です。

    Q5. 新築住宅の売主である宅地建物取引業者は、基準日ごとに資力確保措置の状況を免許権者に届け出なければならず、この基準日は毎年3月31日の年1回である。

    答えは正しい記述です。特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律3条が「基準日(三月三十一日をいう。以下同じ。)」と定義しており、年1回です。かつては3月31日と9月30日の年2回でしたが、現在は年1回に改められています。11条1項により基準日から3週間を経過する日までに供託をしていなければならず、12条1項により基準日ごとの届出が必要です。13条は、供託と届出をしなければ基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後は新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結できないと定めています。

    まとめ

    • 宅建業法は50問中20問を占める最大の科目で、条文の要件と数字を正確に覚えれば取り切れる性質を持ちます。だから学習はこの科目から始めるのが合理的です。
    • 条文は、業者になるまで(2条から31条の3)、取引を始めるまで(25条から50条)、取引の各段階(32条から46条)、守らせる仕組み(47条から84条)という時間の流れに沿って並んでいます。この帯を掴めば、個別の条文がどの段階の話かを即座に位置づけられます。
    • 古い記述には注意が必要です。刑罰による欠格と罰則は2025年6月1日施行の改正刑法により「拘禁刑」に、5条1項からは2019年に成年被後見人・被保佐人の名指しが削除され、住宅瑕疵担保履行法の基準日は年1回の3月31日になっています。

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    宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。

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