宅建業の免許制度を横断整理|登録制度との違い
宅建業の免許制度を、免許権者・有効期間・免許換え・名簿と変更の届出・廃業等の届出の順に整理し、混同しやすい宅建士の登録制度との違いを条文根拠つきで対比します。
目次
この記事は、宅地建物取引業の免許にかかわる手続きを、免許を受けるところから免許が消えるところまで一本の線でつなぎ直すハブです。そもそも免許が必要かどうかという入口の判定は宅建業の「業」に当たるケースと当たらない例で、免許を受けられない事由の中身は宅建業の免許の欠格事由で、免許を受けたあとの違反に対する処分は宅建業者への監督処分で扱っています。この記事はそれらを束ねる位置にあります。
結論から述べます。免許制度でつまずく最大の原因は、論点が多いことではなく、宅地建物取引士の登録制度と手続きの形が似ているために記憶が混線することです。免許には有効期間があるが登録にはない、免許換えは義務だが登録の移転は任意、業者の変更の届出は30日以内だが宅建士の変更の登録は遅滞なく。この三組の対比を軸に据えると、条文の数字はほとんど自動的に整理されます。以下では、免許制度そのものを手続きの順に追いながら、要所要所で登録制度と突き合わせていきます。
免許制度は「会社」を、登録制度は「人」を規律している
二つの制度が並立している理由
宅建業法は、宅地建物取引の適正化を二つの経路から確保しようとしています。ひとつは、事業を営む主体そのものに参入規制をかける経路です。免許を受けなければ宅建業を営めないとし(3条1項、12条1項)、免許の段階で欠格事由を審査し(5条1項)、営業保証金の供託を義務づけ(25条1項)、違反があれば監督処分で市場から退場させる。これが免許制度です。
もうひとつは、取引の現場で判断と説明を担う人に資格を要求する経路です。重要事項の説明、35条書面と37条書面への記名は宅地建物取引士でなければできず(35条1項・5項、37条3項)、その宅建士は試験に合格したうえで都道府県知事の登録を受け、宅地建物取引士証の交付を受けなければなりません(18条1項、22条の2第1項)。これが登録制度です。
つまり免許は事業者に対する許可であり、登録は個人に対する資格の公証です。この性質の違いが、そのまま手続きの違いに現れます。事業者は市場に居続ける限り監督下に置く必要があるので、免許には期限を切って定期的に再審査する。これに対して個人の資格は、一度備わった能力が時の経過で消えるわけではないので、登録そのものには期限を設けない。ただし現場に出るための携帯証である宅建士証には、法令改正への追随を求めるため5年の期限と法定講習を課す。この理屈を先に押さえておくと、数字を覚え直す必要がなくなります。
免許は譲れないし相続もできない
免許制度を貫くもう一つの性質が、一身専属性です。免許は特定の申請者について、その者の欠格事由の有無や事務所の体制を審査したうえで与えられるものなので、他人に譲渡することも、貸すことも、相続によって承継することもできません。だからこそ13条1項が自己の名義をもって他人に宅建業を営ませることを禁じ、11条1項1号が業者の死亡について相続人からの届出を要求しています。相続人が事業を継ぐのであれば、相続人自身が新たに免許を受け直さなければなりません。
宅建士の登録も同じく一身専属で、他人に使わせることはできません(15条の2、宅建士の信用失墜行為の禁止に加え、22条の4が宅建士証の他人への貸与を想定しない構造になっています)。この点は共通していますが、免許は事務所という物的組織と結びついている一方、登録は人だけに結びついている、という違いが後の論点に効いてきます。
免許権者は事務所の分布だけで決まる
3条1項の二分法
宅建業法3条1項は、免許権者を次のように振り分けています。2以上の都道府県の区域内に事務所を設置してその事業を営もうとする場合は国土交通大臣の免許を、1の都道府県の区域内にのみ事務所を設置して営もうとする場合は当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない、というものです。
ここで基準になっているのは事務所の所在地だけです。会社の規模、資本金、取引の量、営業活動の範囲は、いずれも免許権者の決定に関係しません。したがってA県知事免許の業者が、B県にある物件をB県の顧客に媒介することは何ら問題なく、A県知事免許のままで全国どこの取引にも関与できます。「知事免許は当該都道府県内の物件しか扱えない」という誤りは、免許制度の最頻出の引っかけです。免許権者の違いは、監督する行政庁がどこかという違いにすぎません。
なお、大臣免許を申請する場合であっても、申請書は主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して提出します(78条の3第1項)。窓口は都道府県だが免許を与えるのは大臣、という構造です。
何が「事務所」に当たるか
免許権者が事務所の分布で決まる以上、どこまでが事務所かの線引きが決定的に重要になります。事務所とは、本店、支店その他の政令で定めるものを指し、具体的には継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くものです。この定義に当たると、専任の宅建士の設置義務(31条の3第1項)、営業保証金の供託額の算定(25条2項)、標識の掲示、報酬額の掲示、従業者名簿と帳簿の備付けが一斉に発生します。詳しくは宅建業の事務所の要件で扱っています。
注意すべきなのは、本店が宅建業を営んでいなくても、支店が宅建業を営んでいれば本店も事務所として扱われる点です。本店には全社を統括する機能があり、宅建業の営業から生じる責任も及ぶと考えられるためです。逆に、支店が宅建業をまったく営んでいなければ、その支店は宅建業法上の事務所ではありません。免許区分の判定でこの扱いを間違えると、大臣免許か知事免許かの結論がまるごとひっくり返ります。
免許換えは事務所の増減に自動的にひも付く
事務所の分布が変われば、あるべき免許権者も変わります。宅建業法7条1項は、免許を受けた者が次のいずれかに該当して引き続き宅建業を営もうとする場合に、新たな免許権者の免許を受けたときは従前の免許が効力を失う、と定めています。該当する場面は三つです。
- 大臣免許の業者が、事務所を廃止して1の都道府県の区域内にのみ事務所を有することとなったとき。その都道府県知事の免許に換える。
- 知事免許の業者が、当該都道府県内の事務所を廃止して、他の1の都道府県の区域内に事務所を設置することとなったとき。移転先の都道府県知事の免許に換える。
- 知事免許の業者が、2以上の都道府県の区域内に事務所を有することとなったとき。大臣免許に換える。
裏返せば、同一の都道府県の中で事務所を移転したり、同一県内に支店を増設したりしても、免許権者は変わらないので免許換えは不要です。この場合は事務所の名称および所在地の変更として、9条の変更の届出で処理します。免許換えが必要な場面と変更の届出で足りる場面の切り分けは、そのまま試験問題の形になります。
免許換えを怠るとどうなるか
免許換えは「してもよい」ではなく義務です。7条1項各号のいずれかに該当しているのに新たな免許を受けていないことが判明したときは、免許権者は免許を取り消さなければなりません(66条1項)。裁量のない必要的取消しである点が重要です。
もっとも、この取消しは5条1項が定める5年間の欠格事由には当たりません。5年の欠格につながるのは、不正の手段による免許取得、業務停止処分事由に該当し情状が特に重い場合、業務停止処分違反という、いわゆる三大取消事由に限られます。免許換え懈怠による取消しを受けた者は、事務所の体制を整えて直ちに免許を申請し直すことができます。この区別は宅建業の免許の欠格事由で系統立てて整理しているので、あわせて確認してください。
免許換えによって受ける免許は、新規の免許です。したがって有効期間は新たな免許の日から5年であり、従前の免許の残存期間を引き継ぐわけではありません。後で述べる宅建士の登録の移転と正反対の処理になるところで、対比の狙い目です。
有効期間5年と更新の手続き
5年という期間の意味
免許の有効期間は5年です(3条2項)。この5年は、免許を受けた者が引き続き適格であるかを定期的に確認するための区切りです。したがって更新の際にも改めて5条1項の欠格事由の審査が行われ、専任の宅建士が法定数を満たしているかも確認されます。免許を一度取れば安泰という制度ではありません。
大臣免許と知事免許で有効期間が違うということはありません。どちらも5年です。免許権者の違いは監督主体の違いにすぎない、という原則がここでも一貫しています。
更新申請は90日前から30日前まで
免許の更新を受けようとする者は、有効期間満了の日の90日前から30日前までの間に更新の申請をしなければなりません(3条3項、施行規則3条)。ここが二つの数字で挟まれているのには理由があります。早すぎる申請では、審査時点と有効期間開始時点が離れすぎて審査の意味が薄れる。遅すぎる申請では、満了までに審査が終わらない。その両方を避けるための区間指定です。
「満了の90日前まで」「満了の30日前から」といった言い換えは、いずれも誤りになります。始点が90日前、終点が30日前という向きを取り違えないでください。
審査中に有効期間が満了した場合
期間内に更新申請をしたのに、満了日までに免許権者の処分がされないことがあります。この場合、従前の免許は有効期間の満了後も、処分がされるまでの間はなお効力を有します(3条4項)。申請者に落ち度がない事情で営業ができなくなるのは不合理だからです。この間、業者は宅建業を適法に営むことができます。
そして更新がされたときは、新たな免許の有効期間は、従前の免許の有効期間の満了の日の翌日から起算します(3条5項)。処分がされた日からではありません。審査が長引いた分だけ有効期間が後ろにずれて得をする、ということにはならないわけです。「満了後に更新されたので、新免許の5年は更新処分の日から数える」という選択肢は誤りです。
更新しなかった場合と取引の結了
期間内に更新申請をしないまま有効期間が満了すれば、免許は失効します。再び宅建業を営むには新規の免許申請が必要です。ただし、免許が失効した瞬間にすべての行為が違法になるわけではありません。76条は、免許の有効期間の満了などにより免許が効力を失ったときは、その者または一般承継人は、宅建業者が締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては、なお宅建業者とみなすと定めています。すでに締結した契約の履行、決済、引渡しといった後始末は続けられるということです。逆にいえば、新規の媒介契約を結ぶことはできません。
免許の申請から名簿への登載、そして変更の届出
申請、免許の条件、免許証
免許を受けようとする者は、商号または名称、事務所の名称および所在地、法人であれば役員の氏名など、4条1項が定める事項を記載した免許申請書を提出します。免許権者は、5条1項の欠格事由に該当しないかを審査し、該当すれば免許をしてはならず、その場合は理由を付した書面で申請者に通知します(5条2項)。
免許には条件を付し、また付した条件を変更することができます(3条の2第1項)。ここでいう条件は、宅建業の適正な運営と取引の公正を確保するため必要な最小限度のものに限られます(同条2項)。免許は与えるか拒むかの二択ではなく、条件付きで与えるという選択肢がある点は見落とされがちです。
免許をしたときは、免許権者は免許証を交付します(6条)。商号や主たる事務所の所在地が変わって免許証の記載と実態がずれた場合は、免許証の書換え交付を申請します。免許証は免許を受けたことの証票にすぎず、掲示義務があるのは免許証ではなく標識(50条1項)である点も、細かいながら問われることがあります。
宅地建物取引業者名簿に何が載るか
国土交通省および都道府県には、宅地建物取引業者名簿が備えられます(8条1項)。名簿に登載される主な事項は、免許証番号および免許の年月日、商号または名称、法人であれば役員の氏名と政令で定める使用人の氏名、個人であればその者の氏名と政令で定める使用人の氏名、事務所の名称および所在地、事務所ごとに置かれる専任の宅地建物取引士の氏名、そして指示処分または業務停止処分を受けたときはその年月日および内容です(8条2項各号)。このほか、国土交通省令により、宅建業以外の事業を行っているときはその事業の種類も登載されます。
名簿は一般の閲覧に供されます(10条)。取引の相手方が、その業者が実在するか、処分歴があるか、専任の宅建士がいるかを自分で確認できるようにするための制度です。監督処分の履歴が名簿に載り、それが公開されるという点は、監督処分の実効性を支える仕組みでもあります。処分の内容そのものは宅建業者への監督処分で扱っています。
変更の届出は30日以内、ただし対象は限定される
宅建業者は、8条2項2号から6号までに掲げる事項に変更があった場合、30日以内にその旨を免許権者に届け出なければなりません(9条)。対象は、商号または名称、役員および政令で定める使用人の氏名、個人業者の氏名と政令で定める使用人の氏名、事務所の名称および所在地、専任の宅建士の氏名です。
ここで重要なのは、名簿の登載事項と変更の届出の対象が一致していないことです。免許証番号および免許の年月日(1号)は、そもそも業者側の都合で変わるものではありません。指示処分や業務停止処分の内容(7号)は、免許権者自身が処分をしたのですから業者が届け出る必要はありません。そして省令で定める事項である兼業の種類は、宅建業の適正な運営に直結しないため、名簿には載るが変更の届出の対象からは外れています。「宅建業以外の事業を始めたので30日以内に変更の届出をした」という選択肢は誤りです。この論点の詳細は宅建業者名簿の変更の届出で扱っています。
もう一つ落とし穴があります。役員の氏名は届出の対象ですが、役員の住所は名簿の登載事項ではないため、住所が変わっても届出は不要です。事務所の所在地は対象ですが、事務所を新設・廃止した結果として免許権者が変わるなら、変更の届出ではなく免許換えになります。届出の対象かどうかを、条文の号で押さえておくのが確実です。
なお、専任の宅建士が退職して法定数(事務所では業務に従事する者5人に1人以上、31条の3第1項)を欠いたときは、2週間以内に必要な措置を執らなければなりません(同条3項)。補充自体は2週間以内、補充した結果としての氏名の変更の届出は30日以内という、二つの期間が重なる場面です。設置義務の中身は専任の宅建士の設置義務を参照してください。
廃業等の届出と、免許が失効する時点
五つの事由と、届け出る人
宅建業者が業をやめる場面は五つに類型化され、それぞれ届出義務者が異なります(11条1項各号)。
- 個人業者が死亡したとき。届け出るのは相続人。
- 法人が合併により消滅したとき。届け出るのは消滅した法人を代表する役員であった者。
- 破産手続開始の決定があったとき。届け出るのは破産管財人。
- 法人が合併および破産手続開始の決定以外の理由により解散したとき。届け出るのは清算人。
- 宅建業を廃止したとき。届け出るのは業者であった個人、または業者であった法人を代表する役員。
届出期間は、その日から30日以内です。ただし死亡の場合だけは、その事実を知った日から30日以内となります。相続人が死亡の事実を知らないうちに期間が進行するのは酷だからです。この一点だけ起算点が違う、という形で覚えるのが効率的です。
届出義務者を取り違えさせる選択肢が頻出します。破産したときに届け出るのは代表役員ではなく破産管財人であり、解散したときは清算人です。破産管財人と清算人はいずれも法人の外から選任されて残務を処理する立場であり、その者に届出をさせるのが実務上確実だ、という発想でつながります。
失効する時点は事由によって違う
より問われるのが、免許がいつ効力を失うかです。死亡と合併による消滅の二つについては、免許は届出を待たずに当然に効力を失います(11条2項)。人が死ねば、あるいは法人が消滅すれば、免許を受けた主体そのものが存在しなくなる以上、届出があるまで免許が残っていると考える余地がないからです。
これに対して、破産手続開始の決定、解散、廃止の三つでは、免許は届出の時に効力を失います。破産手続が始まっても法人はまだ存在しており、解散しても清算の目的の範囲内で法人格は残ります。廃止に至っては、業者本人がやめると決めただけです。いずれも主体は存在し続けるので、行政に対して届出がされた時点をもって免許を消す、という整理です。
とくに破産は誤りやすいところです。届出義務者は破産管財人なのに、失効時点は破産手続開始決定の時ではなく届出の時。義務者の特殊さに引きずられて失効時点まで特別扱いしてしまうと、そのまま失点します。廃業等の届出の詳細は廃業等の届出で扱っています。
なお、免許が失効した場合も、76条により取引を結了する目的の範囲内では宅建業者とみなされます。相続人が、被相続人が生前に締結した売買契約の決済を完了させることは可能です。ただし、そこから先の新たな取引は無免許事業になります。
免許の欠格事由は「なぜ排除するか」で束ねる
5条1項は、免許権者が免許をしてはならない場合を列挙しています。これは裁量のない羈束的な処分であり、いずれかの号に該当すれば必ず拒否されます。全体像だけ示すと、排除の理由は次の系統に分かれます。
- 経済的信用と判断能力にかかわるもの。破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、心身の故障により宅建業を適正に営むことができない者。
- 過去に免許を取り消されたことにかかわるもの。三大取消事由による取消しから5年を経過しない者。
- 処分を免れるための廃業にかかわるもの。取消処分の聴聞の期日および場所の公示の日から処分がされるまでの間に相当の理由なく廃業等の届出をした者は、届出の日から5年。
- 刑罰にかかわるもの。拘禁刑以上の刑(2025年6月1日施行の改正前は「禁錮以上の刑」)に処せられた者は罪名を問わず、宅建業法違反、暴力的な犯罪、背任罪については罰金刑でも、執行を終わりまたは執行を受けることがなくなった日から5年。
- 反社会的勢力にかかわるもの。暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者、暴力団員等がその事業活動を支配する者。
- 組織の人的構成にかかわるもの。役員、政令で定める使用人、法定代理人が欠格事由に該当する場合。
試験で問われるのはほぼ、5年をどこから数えるかと、その事由が本人以外の誰にまで及ぶかの2点です。号ごとの詳細と、控訴・上告中の扱い、執行猶予が満了した場合の扱いは宅建業の免許の欠格事由に集約しているので、そちらで仕上げてください。刑罰系だけを深く追いたい場合は刑罰と欠格事由の関係も用意しています。
宅建士の登録制度との対比で記憶を分離する
ここからが本題です。免許制度の手続きは、宅建士の登録制度と形が似ているために混線します。軸ごとに突き合わせて、違いを言語化しておきます。登録制度そのものの手続きは宅建士の登録の手続きで詳しく扱っています。
有効期間があるのは免許と宅建士証、ないのは登録
免許の有効期間は5年です(3条2項)。宅建士の登録には有効期間がありません。登録は、登録の消除がされない限り効力を持ち続けます。一方、宅地建物取引士証の有効期間は5年です(22条の2第3項)。
つまり、5年という数字は免許と宅建士証にあり、登録にはない。ここを「宅建士の登録は5年ごとに更新する」と覚えてしまうと、複数の問題で連鎖的に失点します。登録は資格の公証であり、宅建士証は現場に出るための携帯証だ、という性質の違いから導いてください。宅建士証の交付を受けるには、交付の申請前6月以内に行われる知事指定の法定講習を受講しなければなりません(22条の2第2項)。法改正に追随させるための講習であり、期限を切る必要があるのはこの携帯証のほうだ、という理屈です。ただし、試験に合格した日から1年以内に交付を申請する場合は、講習は不要です。
変更を伝える手続きは、業者が30日以内、宅建士が遅滞なく
宅建業者は、名簿登載事項のうち8条2項2号から6号までに変更があったとき、30日以内に届け出ます(9条)。宅建士は、登録を受けている事項のうち氏名、住所、本籍、勤務先の宅建業者の商号または名称および免許証番号に変更があったとき、遅滞なく変更の登録を申請しなければなりません(20条)。
期間の書き方が違うのは、手続きの性質が違うからです。業者側は「届出」であり、行政に事実を通知すれば足りるので、日数で区切って管理できます。宅建士側は「変更の登録の申請」であり、登録簿の記載を書き換える処分を求める行為です。申請を受けて知事が登録を書き換えるという構成上、日数ではなく遅滞なくという規範的な表現が使われています。
なお、宅建士の住所は登録事項なので、引っ越せば変更の登録が必要です。これに対して宅建業者の役員の住所は名簿の登載事項ではないので、変更の届出は不要です。住所という同じ言葉でも、業者側と宅建士側で結論が逆になる典型例です。
免許換えは義務、登録の移転は任意
事務所の分布が変われば免許換えをしなければならず、怠れば免許を取り消されます(7条1項、66条1項)。これに対して、登録を受けている者が、登録をしている知事の管轄する都道府県以外の都道府県に所在する事務所の業務に従事し、または従事しようとするときは、その事務所の所在地を管轄する知事に対し、現に登録をしている知事を経由して、登録の移転を申請することが「できる」と定められています(19条の2)。義務ではありません。
移転しないままでも、宅建士としての業務に支障はありません。A県知事の登録を受けたままB県の事務所で勤務し、B県で重要事項の説明をすることは適法です。移転の実益は、法定講習の受講や宅建士証の更新の窓口が近くなるという便宜にとどまります。
移転の要件でもう一つ注意すべきは、勤務先が基準であって住所は関係がないことです。B県に引っ越しただけで勤務先がA県のままなら、登録の移転はできません。そして、事務禁止処分を受け、その禁止の期間が満了していないときは、登録の移転を申請することができません(19条の2ただし書)。処分を受けた者が他県に移って処分の実効性を弱めることを防ぐための制限です。
移転後の有効期間は残存期間、免許換え後は新たに5年
登録の移転があったときは、従前の宅建士証は効力を失い、移転先の知事から新たな宅建士証の交付を受けます。このとき新しい宅建士証の有効期間は、従前の宅建士証の有効期間が満了するまでの期間、つまり残存期間です(22条の2第5項)。移転は登録の所在地を変えるだけで、資格を取り直したわけではないからです。しかも、この場合は法定講習の受講が不要です。
これに対し、免許換えによって受ける免許は新規の免許なので、有効期間は新たな免許の日から5年です。同じ「移す」手続きに見えて、期間の扱いが正反対になります。ここは対で覚える価値があります。
死亡等を届け出る期間は、どちらも30日以内
宅建士について、登録を受けている者が死亡したときは相続人が、その事実を知った日から30日以内に届け出なければなりません(21条1号)。また、心身の故障により宅建士の事務を適正に行うことができない者となったときは、本人または法定代理人もしくは同居の親族が届け出ます。
宅建業者の廃業等の届出も30日以内であり、死亡の場合だけ「知った日から」となる点も同じです。ここは共通しているので、無理に違いを探さないでください。すべてが違うと思い込むと、かえって迷います。共通するものは共通と割り切り、違うところだけを覚えるのが記憶の負荷を下げるコツです。
免許制度の外縁
無免許事業の禁止と広告の禁止
免許を受けない者は宅建業を営んではなりません(12条1項)。さらに、免許を受けない者は、宅建業を営む旨の表示をし、または宅建業を営む目的をもって広告をしてはなりません(12条2項)。実際に取引をしたかどうかを問わず、表示や広告の段階で違法になります。免許申請中の者が「近日開業」と広告を出す行為も、これに触れます。
違反に対する罰則は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科です(79条)。法人が違反した場合には、行為者を罰するほか法人にも重い罰金が科されます(両罰規定、84条)。宅建業法の罰則の中でも最も重い部類であり、免許制度が制度の入口を守るためのものであることを示しています。
名義貸しの禁止
宅建業者は、自己の名義をもって他人に宅建業を営ませてはなりません(13条1項)。また、自己の名義をもって他人に宅建業を営む旨の表示をさせ、または広告をさせてはなりません(13条2項)。無免許の者が免許業者の看板を借りて営業すれば、参入規制も欠格事由の審査も無意味になるからです。実質的には無免許事業の脱法行為なので、罰則も12条違反と同じ枠に置かれています(79条)。
監督上も、名義貸しは重い扱いを受けます。名義を貸した業者は業務停止処分の対象となり、情状が特に重いときは免許を取り消されます(66条1項)。この取消しは三大取消事由に当たるため、取消しの日から5年間は免許を受けられません。
免許を受ける必要がない者
免許制度には適用除外があります。まず、宅建業法の規定は国および地方公共団体には適用されません(78条1項)。国や地方公共団体が宅地を分譲しても免許は不要です。公的主体には利益追求の動機がなく、別の法制度で行為の適正が担保されているためです。独立行政法人都市再生機構や地方住宅供給公社も、それぞれの根拠法により国または地方公共団体とみなされる扱いを受けます。
次に、信託会社および信託業法の免許を受けた信託銀行です。信託会社については、免許に関する3条から7条まで、無免許事業の禁止(12条)などの規定が適用されません(77条1項)。ただし免許を受けなくてよいだけで、宅建業法の適用そのものから外れるわけではありません。宅建業を営む信託会社は、国土交通大臣の免許を受けた宅建業者とみなされ(77条2項)、その旨を国土交通大臣に届け出なければなりません(77条3項)。したがって、専任の宅建士の設置、重要事項の説明、37条書面の交付、営業保証金の供託といった義務はすべて負い、監督処分の対象にもなります。ここを「信託会社には宅建業法が適用されない」と読み替えると誤りになります。
注意すべきなのは、免許不要とされるのはこの範囲に限られることです。農業協同組合、学校法人、社会福祉法人などは、公共性が高くても免許が必要です。また、破産管財人が裁判所の許可を得て破産財団に属する宅地建物を売却する行為は、裁判所の監督のもとで行われる清算行為なので、反復継続しても業として行うものには当たらないと解されています。免許が必要かどうかの判定そのものは宅建業の「業」に当たるケースと当たらない例で整理しています。
試験での出題ポイント
免許制度は、条文を素直に問う問題より、二つの制度を混ぜて誤りを作る問題のほうが多く出ます。狙われ方は次の型に集約されます。
第一に、免許権者の判定です。事務所の分布だけで決まるのに、営業エリアや取引の相手方の所在地を混ぜてきます。「A県知事免許の業者はB県所在の物件の売買を媒介できない」といった選択肢は、免許権者の意味を取り違えさせる典型です。
第二に、免許換えと変更の届出の切り分けです。同一県内の移転か、県をまたぐ設置・廃止かを読み取らせます。問題文が事務所の増設と廃止を同時に書いてくることがあるので、最終的にいくつの都道府県に事務所が残るかを数えてから判断してください。
第三に、更新の数字の向きです。90日前から30日前まで、という区間の始点と終点を入れ替えてきます。あわせて、審査中に満了した場合に従前の免許が続くこと(3条4項)と、更新後の起算が満了日の翌日であること(3条5項)が、セットで問われます。
第四に、廃業等の届出における義務者と失効時点の組合せです。破産の届出義務者は破産管財人だが失効は届出時、という組合せを崩してきます。届出義務者だけを合わせて失効時点を誤らせる、あるいはその逆、という作り方が多いので、五つの事由それぞれについて義務者と失効時点を両方言えるようにしておいてください。
第五に、宅建士の登録制度との混同です。登録に有効期間があるか、変更が30日以内か遅滞なくか、登録の移転が義務か任意か、移転後の宅建士証の有効期間が5年か残存期間か。この四つは、そのまま四つの誤り選択肢になります。宅建業者と宅建士の義務を横断して整理した宅建業者と宅建士の義務の違いもあわせて確認しておくと、取りこぼしが減ります。
第六に、免許不要の範囲です。国・地方公共団体は適用除外だが、信託会社は免許不要でも大臣免許業者とみなされる、という段差を突いてきます。
覚え方・整理の仕方
数字は「主体ごとの表」ではなく「性質ごと」に束ねる
免許制度の数字を、業者と宅建士の対応表として覚えようとすると崩れます。性質で束ねてください。有効期間が5年なのは、免許と宅建士証。有効期間がないのは、登録。この三つの関係を「事業を営む許可と、現場に出る携帯証には期限がある。資格そのものには期限がない」と言葉で覚えます。
30日という数字は、業者側の届出に一貫して現れます。名簿の変更の届出(9条)、廃業等の届出(11条1項)。加えて、宅建士の死亡等の届出(21条)も30日です。つまり「行政に事実を知らせる届出は30日」。これに対して、宅建士本人が登録簿の書換えを求める変更の登録は「遅滞なく」。届出は30日、申請は遅滞なく、と役割で分けます。
2週間は、専任の宅建士が法定数を欠いたときの補充の期間です(31条の3第3項)。これだけは事務所の体制に関する数字なので、届出の数字とは別枠に置きます。
「義務か任意か」で免許換えと登録の移転を割る
免許換えは義務、登録の移転は任意。この一言を先に置くと、周辺の結論が自動的に決まります。義務だから、怠れば取消しという制裁がある。義務だから、新規の免許として有効期間も新たに5年になる。任意だから、しなくても不利益はない。任意だから、移転しても資格の中身は変わらず、宅建士証の有効期間は残存期間のまま引き継ぐ。制裁と期間の結論を個別に暗記する必要はありません。
廃業等の届出は「主体が消えたか」で失効時点を決める
五つの事由の失効時点は、届出義務者を覚えるより、主体が消えたかどうかで判断するほうが安定します。死亡と合併消滅は、免許を受けた主体そのものが消滅するので、届出を待たずに失効する。破産、解散、廃止は、主体がまだ存在しているので、届出をもって失効する。主体が消えたかどうかという一つの基準で、五つすべてが割り切れます。
免許制度を営業保証金と接続して確認する
免許を受けただけでは営業を開始できません。営業保証金を主たる事務所の最寄りの供託所に供託し、その旨を免許権者に届け出た後でなければ事業を開始できません(25条1項・5項)。免許の取得から営業開始までを一続きの流れとして押さえておくと、免許制度の位置づけがはっきりします。供託額や還付、保管替えの手続きは営業保証金の供託と還付、保証協会に加入する場合の弁済業務保証金分担金については宅地建物取引業保証協会で扱っています。事務所に備え付ける従業者名簿の要件は従業者名簿と従業者証明書を参照してください。免許制度の基本的な仕組みそのものを最初から確認したい場合は宅建業免許の制度を理解するへ、宅建業法という科目全体の中での位置づけは宅建業法の全体像へ戻ってください。
理解度チェッククイズ
Q1. 甲県知事免許を受けている宅建業者が、乙県内にある宅地の売買の媒介を行うためには、あらかじめ乙県知事の免許を受けなければならない。(○か×か)
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×:免許権者は事務所をどこに設置しているかだけで決まります(3条1項)。営業活動の範囲や物件の所在地は関係がなく、甲県知事免許のままで乙県内の物件を媒介できます。乙県内に事務所を設置することになってはじめて、免許換えの問題になります(7条1項)。Q2. 免許の更新の申請を有効期間満了の日の45日前に行ったが、満了の日までに処分がされなかった場合、満了の日をもって免許は失効する。(○か×か)
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×:申請期間は満了の日の90日前から30日前までであり(3条3項、施行規則3条)、45日前の申請は期間内です。期間内に申請があり満了日までに処分がされないときは、従前の免許は処分がされるまでの間なお効力を有します(3条4項)。なお更新されたときの新免許の有効期間は、満了の日の翌日から起算します(3条5項)。Q3. 宅建業者である法人が破産手続開始の決定を受けた場合、その日から30日以内に破産管財人が届け出なければならず、免許は破産手続開始の決定があった時に効力を失う。(○か×か)
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×:届出義務者が破産管財人であること、30日以内であることは正しい(11条1項)のですが、失効の時点が誤りです。届出を待たずに当然に失効するのは死亡と合併による消滅の二つだけで(11条2項)、破産、解散、廃止の三つは届出の時に失効します。届出義務者と失効時点をずらして出題する定番の型です。Q4. 宅地建物取引士の登録の有効期間は5年であり、5年ごとに更新の申請をしなければならない。(○か×か)
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×:宅建士の登録には有効期間がなく、登録が消除されない限り効力を持ち続けます。有効期間が5年なのは宅地建物取引士証です(22条の2第3項)。宅建業の免許の5年(3条2項)と混同させる出題が繰り返されています。Q5. 甲県知事の登録を受けている宅建士が乙県内の事務所に勤務することとなった場合、登録の移転を申請しなければならず、移転後に交付される宅建士証の有効期間は交付の日から5年である。(○か×か)
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×:二重に誤りです。登録の移転は「申請することができる」であって義務ではありません(19条の2)。また、移転後に交付される宅建士証の有効期間は、従前の宅建士証の有効期間が満了するまでの残存期間です(22条の2第5項)。新たに5年になるのは免許換えのほうです。なお、事務禁止処分の期間が満了していないときは移転を申請できません(19条の2ただし書)。まとめ
免許制度は、免許権者の決定(3条1項)、有効期間と更新(3条2項から5項)、免許換え(7条1項)、名簿と変更の届出(8条、9条)、廃業等の届出と失効(11条)という順序で、免許の一生をたどる形になっています。この線に沿って条文を読み直せば、個々の数字は制度の必然として並びます。
そのうえで、宅建士の登録制度との三つの対比を持っておいてください。有効期間があるのは免許と宅建士証で、登録にはない。免許換えは義務で、登録の移転は任意。業者の変更の届出は30日以内で、宅建士の変更の登録は遅滞なく。試験で誤り選択肢が作られるのは、ほぼこの三つの継ぎ目です。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、免許制度と登録制度を混ぜた肢別問題を出題順に演習できるので、この記事で整理した対比が本試験の問われ方でどう現れるかを確認してみてください。
宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。