宅建業法の数字まとめ|混同しない覚え方で整理
宅建業法に出てくる期間・金額・割合・人数の数字を、同じ数字どうしで束ねて整理します。なぜその数字なのかを制度の目的から説明し、取り違えるとどう間違うかまで条文番号つきで解説します。
目次
本記事は、宅建業法に登場する数字を、同じ数字どうしで束ねて整理したものです。科目の骨組みは宅建業法の全体像、論点ごとの精度の上げ方は宅建業法で18問以上取るにまとめてあります。本記事は数字そのものを扱います。
数字の一覧を眺めても覚えられないのは、数字が単独では意味を持たないからです。宅建業法の数字は、その制度が誰を守るためにあるのかとセットにすると、忘れても復元できます。 営業保証金が1,000万円で分担金が60万円なのは、前者が単独で弁済原資を用意するのに対し後者は多数の業者で分担するからです。保全措置の閾値が未完成物件で5%、完成物件で10%と違うのは、未完成物件のほうが引渡し前に業者が倒産したときの損害が大きいからです。以下、この形で数字を並べます。
数字を覚える前に、混同の型を知る
取り違えは「同じ数字どうし」で起きる
宅建業法の失点で多いのは、まったく知らない数字が出てくることではなく、覚えている数字を別の制度に当ててしまうことです。5年という数字は免許の有効期間にも宅建士証の有効期間にも欠格期間にも帳簿の保存期間にも出てきますし、2週間という数字は営業保証金の不足額の供託にも専任宅建士の補充にも還付充当金の納付にも出てきます。
したがって、制度ごとに数字を覚えるやり方は効率が悪くなります。制度ごとに覚えると、試験で「2週間以内」という肢を見たときに、どの制度の2週間なのかを判断する材料がありません。同じ数字が出てくる制度を先に束ねておけば、「2週間が出てくるのはこの4つ」という形で確認できます。
数字には3つの種類がある
第一に期間の数字です。有効期間、届出の期限、保存期間、報告の頻度がこれにあたります。期間の数字は、起算点とセットでないと意味を持ちません。「30日以内」だけを覚えても、いつから30日なのかを知らなければ肢の正誤は判断できません。
第二に金額と割合の数字です。供託額、分担金、報酬の料率、8種制限の割合がこれにあたります。金額と割合は、その水準が誰の保護のために置かれているかを考えると、大小関係を間違えなくなります。
第三に人数の数字です。専任の宅建士の設置基準がほぼこれだけで、数は少ないものの毎年のように問われます。
以下、この3種類を数字の値ごとに束ねていきます。値ごとに束ねる理由は、試験の選択肢が値の入れ替えで作られるからです。
「5年」が出てくる数字
免許の有効期間と宅建士証の有効期間
宅地建物取引業の免許の有効期間は5年です(業法3条2項)。宅地建物取引士証の有効期間も5年です(業法22条の2)。この2つは同じ5年ですが、更新の手続が違います。
免許の更新申請は、有効期間が満了する日の90日前から30日前までの間に行います(業法3条3項、施行規則3条)。この90日と30日の組み合わせは、期限が2つ並ぶために入れ替えられやすく、「30日前から10日前まで」といった肢が作られます。90日前より早く出すこともできない点も押さえてください。
宅建士証の交付を受けるには、登録をしている都道府県知事が指定する講習で、交付の申請前6か月以内に行われるものを受講しなければなりません(業法22条の2第2項)。ただし試験に合格した日から1年以内に交付を受けようとする場合は受講が不要です。6か月と1年という2つの数字が同じ条文に並ぶので、ここも入れ替えの対象になります。
5年ではないもの
最も間違えやすいのが、宅地建物取引士の登録です。登録には有効期間がありません。 消除されない限り効力が続きます。5年なのは免許と宅建士証であって、登録ではありません。登録と宅建士証を別物として理解していないと、この肢で必ず落とします。合格後の手続の流れは宅建士の登録と宅建士証で確認できます。
もう1つが従業者名簿です。従業者名簿の保存期間は10年で、5年ではありません。一方で帳簿の保存期間は5年です。この2つは並べて出題されるので、後述の保存期間の節でまとめて扱います。
欠格期間の5年
免許の欠格事由に出てくる5年も、5年グループの一員です。刑罰による欠格は刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年、免許取消処分による欠格は取消しの日から5年です(業法5条1項)。同じ5年でも起算点が違い、そこが出題の分岐点になります。系統別の整理は免許の欠格事由にあります。
なお執行猶予がついた場合、猶予期間が満了すれば刑の言渡しが効力を失うため、その時点で欠格でなくなります。満了からさらに5年を待つ必要はありません。5年グループの中で、この1点だけは「5年ではない」答えになります。
届出と申請の期限(30日・10日前・90日前)
30日が出てくるもの
宅建業者名簿の登載事項に変更があったときの届出は、変更があった日から30日以内です(業法9条)。商号または名称、法人の役員および政令で定める使用人の氏名、事務所の名称および所在地、事務所ごとに置かれる専任の宅地建物取引士の氏名が対象で、資本金の額は対象外です。届出事項の範囲は宅建業者名簿と変更届にまとめてあります。
廃業等の届出も30日以内です(業法11条1項)。ただし死亡の場合だけ起算点が違い、相続人がその死亡の事実を知った日から30日以内になります。死亡の日からではありません。届出義務者も事由ごとに違うので、宅建業の廃業届で確認してください。
宅建士側の死亡等の届出も30日以内で、死亡の場合は相続人が知った日から30日以内です(業法21条)。
30日はもう1つ、8種制限にも出てきます。割賦販売契約における賦払金の支払義務の履行がされない場合、業者は30日以上の相当の期間を定めて書面で催告しなければ、契約の解除や残代金の一括請求ができません(業法42条1項)。届出の30日とは無関係な数字ですが、値が同じなので束ねておきます。
30日ではなく「遅滞なく」のもの
宅建士の変更の登録は、期限が日数で定められておらず「遅滞なく」です(業法20条)。対象は氏名、住所、本籍、勤務先の宅建業者の商号または名称および免許証番号です。業者側の変更が30日以内、宅建士側の変更が遅滞なく、という非対称は毎年のように問われます。
37条書面の交付、媒介契約書の交付、指定流通機構への成約の通知も「遅滞なく」です。日数を答えさせる肢に見せかけて、実は日数の定めがないというパターンがあります。
10日前と90日前
案内所等を設置して業務を行うときの届出は、業務を開始する日の10日前までに、免許権者とその所在地を管轄する都道府県知事の双方に対して行います(業法50条2項、施行規則19条3項)。「10日以内」ではなく「10日前まで」であり、事前の届出である点が要点です。一方、標識の掲示は届出とは別の義務で、期限の定めはなく設置場所ごとに必要です(業法50条1項)。事務所の要件は宅建業の事務所の要件にあります。
90日前は前述の免許更新の申請開始日です。10日前と90日前は、どちらも「前」で数える数少ない数字なので、対にして覚えると混ざりません。
3か月と1か月
営業保証金の供託の届出をしないまま免許を受けた日から3か月を経過したとき、免許権者は届出をすべき旨の催告をしなければなりません(業法25条6項)。催告が到達した日から1か月以内に届出がないときは、免許を取り消すことができます(同条7項)。3か月は催告の起点、1か月は取消しの起点です。
3か月はもう1つ、媒介契約に出てきます。専任媒介契約と専属専任媒介契約の有効期間は3か月以内で、これを超える定めをしたときは3か月に短縮されます(業法34条の2第3項)。契約全体が無効になるのではありません。3類型の比較は媒介契約の3類型にまとめてあります。
「2週間」「1週間」が出てくる数字
2週間が出てくる4つの場面
第一に、専任の宅地建物取引士が不足したときです。事務所等で専任の宅建士の設置要件を満たさなくなったときは、2週間以内に必要な措置をとらなければなりません(業法31条の3第3項)。補充だけでなく、従業者を減らして比率を満たす方法も「必要な措置」に含まれます。
第二に、営業保証金の不足額の供託です。還付によって営業保証金が政令で定める額に不足することとなったときは、免許権者から通知を受けた日から2週間以内に不足額を供託しなければなりません(業法28条1項)。
第三に、その供託をしたときの届出です。供託した日から2週間以内に、その旨を免許権者に届け出ます(同条2項)。2週間が2回続く形なので、片方だけを1週間と覚えていると失点します。
第四に、保証協会の還付充当金です。還付があったとき、社員は協会から還付充当金を納付すべき旨の通知を受けた日から2週間以内に納付しなければならず、納付しないと社員の地位を失います(業法64条の10第2項・3項)。
これに加えて、保証協会の社員が新たに事務所を設置したときの分担金の納付も、設置した日から2週間以内です(業法64条の9第2項)。営業保証金と分担金の比較は営業保証金と弁済業務保証金の違いを参照してください。
1週間が出てくる2つの場面
第一に、保証協会が弁済業務保証金を供託する期限です。協会は社員から分担金の納付を受けた日から1週間以内に、その額に相当する額の弁済業務保証金を供託しなければなりません(業法64条の7)。ここは協会の義務であって、業者の義務ではありません。
第二に、社員の地位を失った業者が営業保証金を供託する期限です。保証協会の社員がその地位を失ったときは、地位を失った日から1週間以内に営業保証金を供託しなければなりません(業法64条の15)。2週間ではありません。協会の仕組みは保証協会の仕組みにまとめてあります。
報告の頻度に出てくる2週間と1週間
媒介契約の業務処理状況の報告は、専任媒介契約が2週間に1回以上、専属専任媒介契約が1週間に1回以上です(業法34条の2)。拘束の強い専属専任のほうが頻度が高い、という方向性で覚えれば逆にはなりません。報告の方法は書面に限られず、口頭でも電子メールでも足ります。
「加入しようとする日まで」は日数ではない
保証協会に加入しようとする者は、加入しようとする日までに分担金を納付します(業法64条の9第1項)。これは日数で定められた期限ではなく、加入の日が締切という形です。「加入の日から1週間以内に納付する」という肢は誤りで、1週間以内なのは協会が供託する側です。納付する主体と供託する主体を取り違えると、この一組は必ず間違えます。
金額の数字(1,000万円・500万円・60万円・30万円)
営業保証金は1,000万円と500万円
営業保証金の額は、主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき1事務所ごとに500万円です(業法25条2項、施行令2条の4)。事務所が3つある業者なら、主たる事務所1,000万円に従たる事務所2つ分の1,000万円を加えて2,000万円になります。
供託は主たる事務所の最寄りの供託所に対して行います。従たる事務所の最寄りの供託所ではありません。金銭のほか有価証券でも供託でき、国債は額面の100%、地方債と政府保証債は90%、その他の債券は80%で評価されます。
分担金は60万円と30万円
弁済業務保証金分担金の額は、主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき1事務所ごとに30万円です(業法64条の9第1項、施行令7条)。営業保証金と違い、金銭でのみ納付でき、有価証券は使えません。
覚え方は桁で分けるのが確実です。営業保証金は千万円単位、分担金は十万円単位。そのうえで、どちらも主たる事務所が2倍という主従関係を押さえます。混ざるのは桁ではなく、1,000万と500万、60万と30万のどちらが主たる事務所かという点です。
還付の限度額は分担金の額ではない
金額の数字で最も出題されるのがここです。保証協会の社員と取引した者(宅建業者を除く)が弁済を受けられる限度は、その社員が社員でないとしたならば供託すべきであった営業保証金の額に相当する額の範囲内です(業法64条の8第1項)。主たる事務所のみの業者であれば、納付した分担金は60万円でも、還付の限度は1,000万円になります。
分担金が少額でよいのは多数の業者で原資を分担するからであって、取引の相手方の保護水準を下げてよいという意味ではありません。この理由を持っていれば、「還付の限度額は60万円である」という肢は考えるまでもなく誤りだと分かります。
もう1つの1,000万円
1,000万円は手付金等の保全措置にも出てきます。ただし意味はまったく別で、こちらは保全措置が不要となる金額の上限です。営業保証金の1,000万円と保全措置の1,000万円は、値が同じというだけで無関係です。値が同じ数字を無理に関連づけて覚えないでください。
割合の数字(5%・10%・10分の2・10分の3)
割合の数字は8種制限に集中しています。8種制限が適用されるのは宅建業者が自ら売主となり、買主が宅建業者でない場合に限られます(業法78条2項)。この前提を落とすと、正しい数字を覚えていても答えを外します。制限の全体像は8種制限を完全攻略、軸ごとの比較は8種制限の横断整理にあります。
5%と10%は保全措置の閾値
手付金等の保全措置は、工事完了前の物件では受領しようとする手付金等の額が代金の5%以下かつ1,000万円以下であれば不要(業法41条1項)、工事完了後の物件では代金の10%以下かつ1,000万円以下であれば不要です(業法41条の2第1項)。買主が所有権の登記を備えたときも不要になります。
未完成物件のほうが基準が厳しい理由は、引渡し前に業者が倒産したとき、完成物件なら物件そのものが存在するのに対し、未完成物件では買主に何も残らないからです。この理由を押さえておけば、5%と10%を逆にすることはなくなります。
閾値を超えたときは、超過部分だけでなく受領する手付金等の全額について保全措置が必要です。「超えた部分についてのみ保全すればよい」という肢は誤りです。計算問題の型は手付金等の保全措置で扱っています。
10分の2は買主の負担の上限
手付の額は、代金の額の10分の2を超えて受領できません(業法39条1項)。損害賠償額の予定と違約金の合計額も、代金の額の10分の2を超える定めができません(業法38条1項)。どちらも買主が失うことになる額の上限を画したものなので、値が同じであることに理由があります。
効果の違いには注意が必要です。手付は上限を超える額を受領すること自体ができません。これに対し損害賠償額の予定は、10分の2を超える定めをしたときに超える部分が無効になるだけで、契約全体が無効になるわけではありません。手付の扱いは手付金の制限にまとめてあります。
10分の3は所有権留保の限界
宅建業者は、自ら売主となる割賦販売契約において、受領した額が代金の額の10分の3を超えるときまでに、登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければなりません(業法43条1項)。10分の3を超えて代金を受け取りながら登記を移さないでいることが禁じられている、という形です。
10分の2と10分の3の使い分けは、10分の2が買主が失う額の上限、10分の3が登記を移さないでいられる限界、と役割で区別します。値だけを並べると必ず混ざります。
割合はもう2種類ある
報酬の速算式に出てくる5%、4%、3%も割合の数字ですが、8種制限の割合とは別の系統です。後述の報酬の節で扱います。
専任の宅地建物取引士の設置基準に出てくる「5人に1人以上」も割合の一種です。こちらは金額ではなく人数の比率なので、次の節で扱います。
人数と保存期間の数字(5人に1人・5年・10年)
5人に1人以上
事務所には、業務に従事する者5人に1人以上の割合で成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければなりません(業法31条の3第1項、施行規則15条の5の3)。従業者が5人なら1人、6人なら2人、10人なら2人、11人なら3人です。端数が出たら切り上げる、と覚えると計算が速くなります。数え方の詳細は専任の宅建士の設置義務にあります。
契約行為等を行う案内所等については、専任の宅建士は1人以上で足ります(施行規則15条の5の2)。ここは5人に1人ではありません。事務所は5人に1人、案内所等は1人以上、という対で押さえてください。
不足した場合の措置は前述のとおり2週間以内です(業法31条の3第3項)。設置基準を満たさない状態で契約を締結しても、その契約自体は無効になりません。監督処分の対象にはなります。
帳簿は5年、従業者名簿は10年
宅建業者は、事務所ごとに業務に関する帳簿を備え、取引のあった都度、一定の事項を記載しなければなりません(業法49条)。帳簿は各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後5年間保存します。ただし業者が自ら売主となる新築住宅に係るものは10年間です(施行規則18条3項)。
従業者名簿は、最終の記載をした日から10年間保存します(業法48条3項、施行規則17条の2第4項)。帳簿が原則5年、従業者名簿が10年、という違いをそのまま覚えてください。
保存期間が違う理由は保護の対象が違うためです。帳簿は取引の記録なので事業年度を単位に管理され、新築住宅だけ10年になるのは瑕疵担保責任の期間が引渡しから10年とされていることに対応します。従業者名簿は、取引の関係者が過去の担当者を確認できるようにするための制度なので、より長期の保存が求められます。
掲示と携帯の義務
標識は事務所等ごとに公衆の見やすい場所に掲示します(業法50条1項)。報酬の額は事務所ごとに公衆の見やすい場所に掲示します(業法46条4項)。案内所等には報酬額の掲示は不要で、標識だけが必要です。
従業者証明書は、従業者に携帯させなければならず、取引の関係者から請求があったときは提示させなければなりません(業法48条1項・2項)。宅建士証と違い、これは全従業者が対象です。これらの義務違反は50万円以下の罰金の対象になります(業法83条)。
期間と日数の数字(8日・7日・5日・6か月・2年)
クーリング・オフの8日
事務所等以外の場所で買受けの申込みをした買主は、申込みの撤回等ができる旨およびその方法を書面で告げられた日から8日を経過するまでは、申込みの撤回等ができます(業法37条の2第1項)。
8日の起算点は「書面で告げられた日」です。契約締結の日でも、申込みの日でもありません。告げられていなければ、何か月経過していても撤回できます。また、宅地建物の引渡しを受け、かつ代金の全額を支払ったときは撤回できなくなります。引渡しだけ、あるいは代金の一部の支払だけでは、まだ撤回できます。事例での確認はクーリング・オフ制度にあります。
撤回の効力は書面を発した時に生じます(同条2項)。到達時ではないため、8日目に発信すれば9日目に到達しても有効です。
指定流通機構への登録は7日と5日
専任媒介契約を締結した業者は契約締結の日から7日以内に、専属専任媒介契約を締結した業者は5日以内に、その物件を指定流通機構に登録しなければなりません(業法34条の2第5項、施行規則15条の10)。いずれも業者の休業日を除いて数えます。休業日を算入しない点は、具体的な日付を使った肢で問われます。
7日と5日のどちらが専属専任かは、拘束が強いほうが短い、という方向性で決まります。報告の頻度が専属専任のほうが高いのと同じ向きです。
法定講習の6か月と合格後の1年
宅建士証の交付申請前6か月以内に行われる法定講習の受講が必要で、試験合格の日から1年以内に交付を受ける場合は不要である点は前述のとおりです(業法22条の2第2項)。6か月は講習の有効期間、1年は講習免除の期間で、意味がまったく違います。
契約不適合責任の通知期間は2年以上
宅建業者が自ら売主となる場合、種類または品質に関する契約不適合について、民法の規定より買主に不利となる特約は無効です。ただし、通知期間を目的物の引渡しの日から2年以上とする特約は有効です(業法40条1項)。
2年という数字だけを覚えると、「2年」が上限なのか下限なのかを間違えます。買主保護のための制度なので、2年以上でなければならない、つまり2年が下限です。「引渡しから1年とする特約は有効」という肢は誤りになります。
取戻しの公告は6か月を下らない期間
営業保証金を取り戻すには、原則として、還付を請求する権利を有する者に対し6か月を下らない一定期間内に申し出るべき旨を公告しなければなりません(業法30条2項)。ただし保証協会の社員となった場合や、取戻しの事由が発生してから10年を経過した場合などは公告が不要です。
報酬の数字
報酬の計算は、数字を覚えているかではなく手順を固定しているかで差がつきます。制度の全体は報酬額の制限、計算の型は報酬額計算のパターン別攻略にあります。
速算式の200万円と400万円
売買または交換の媒介における報酬の上限は、取引価額が200万円以下なら価額の5%、200万円超400万円以下なら4%に2万円を加えた額、400万円超なら3%に6万円を加えた額です。いずれも消費税抜きの価額に対して計算します。
2万円と6万円という加算額は、料率を下げたことによる差額を補正するために置かれています。400万円の物件で確かめると、5%で計算した20万円と、3%に6万円を加えた18万円の差が2万円になり、境界での不連続を小さくする形になっています。数字を丸暗記するより、この構造を知っておくほうが忘れにくくなります。
1.1倍と1.04倍
算出した上限額に対し、課税事業者は1.1倍、免税事業者は1.04倍を乗じます。1.04という数値は、免税事業者であっても仕入れの段階で消費税を負担していることを考慮したもので、この数値自体が肢に出ます。1.1と1.04を入れ替えた肢、免税事業者に1.1を乗じた肢が典型です。
計算の順序も固定してください。取引価額を税抜きにする、速算式で上限を出す、媒介か代理かで倍率を決める、課税区分に応じて消費税相当額を上乗せする、複数業者が関与していれば合計額を確認する、の5段階です。土地の譲渡は消費税が非課税なので税抜きにする必要がなく、建物の価格だけを1.1で割ります。
賃貸借の1か月分と0.5か月分
賃貸借の媒介では、依頼者双方から受け取る報酬の合計が借賃の1か月分(に消費税相当額を加えた額)を超えられません。居住用建物の場合、依頼者の一方から受け取れるのは借賃の0.5か月分が原則で、媒介の依頼を受けるにあたって依頼者の承諾を得ている場合はこの限りではありません。
居住用建物以外で権利金の授受があるときは、権利金の額を売買代金とみなして速算式で計算することもでき、有利なほうを採用できます。
空家等の800万円と33万円
低廉な空家等の売買・交換の媒介については特例があり、2024年7月1日施行の告示改正で対象が価額800万円以下に拡大され、報酬の上限は税込33万円まで、売主・買主の双方から受領できることになりました。改正前の400万円という数字を覚えたままだと誤ります。改正論点は宅建業法の改正ポイントで確認してください。
罰則と住宅瑕疵担保履行法の数字
罰則の3年・2年・6か月
最も重い区分は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科です(業法79条)。無免許での事業、不正の手段による免許取得、名義貸し、業務停止処分に違反しての業務がこれにあたります。
重要な事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為は、2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科です(業法79条の2)。誇大広告の禁止に違反した場合は、6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科です(業法81条)。広告規制の全体は広告に関する規制にあります。
罰金のみの区分としては、変更の届出の懈怠、帳簿の備付け義務違反、従業者名簿の備付け義務違反、標識の掲示義務違反、案内所等の届出の懈怠、報酬額の掲示義務違反などが50万円以下の罰金の対象です(業法83条)。宅建士証の返納義務や、事務禁止処分を受けたときの提出義務に違反した場合は10万円以下の過料で、こちらは刑罰ではありません(業法86条)。罰則の一覧は宅建業法の罰則一覧にまとめてあります。
法人については両罰規定があり、79条または79条の2の違反行為については1億円以下の罰金が科されます(業法84条)。この1億円は、行為者個人に科される300万円と桁が違う点で問われます。
なお2025年6月1日施行の改正刑法により懲役と禁錮は拘禁刑に一本化され、宅建業法の罰則の表記も拘禁刑に改められています。刑の重さそのものは変わっていません。
住宅瑕疵担保履行法の3月31日・3週間・50日
自ら売主として新築住宅を販売する業者は、資力確保措置の状況を、基準日ごとに免許権者へ届け出なければなりません。基準日は毎年3月31日の年1回です。かつては3月31日と9月30日の年2回でしたが、法改正により年1回に整理されました。
届出は基準日から3週間以内に行います。届出をしないと、基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結できなくなります。3週間と50日は、どちらも基準日を起点とする数字なので、混ざりやすい組み合わせです。
戸数の数え方にも数字があります。住宅販売瑕疵担保保証金の額を算定するにあたり、新築住宅の床面積が55平方メートル以下であるときは、2戸をもって1戸と数えます。小規模な住宅の負担を軽くするための調整で、55という数字はここでしか出てきません。
資力確保措置の対象となる瑕疵の範囲は、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分で、引渡しから10年間の責任です。買主が宅建業者である場合には、そもそも資力確保措置の対象になりません。制度の位置づけは住宅瑕疵担保履行法にまとめています。
試験での出題ポイント
値の入れ替え
最も多い形です。同じ制度内で主従を逆にする(1,000万円と500万円、60万円と30万円、7日と5日、2週間と1週間)型と、別制度の数値を持ってくる(手付の10分の2を保全措置の閾値に、所有権留保の10分の3を手付の上限に)型があります。制度ごとに覚えていると後者に気づけません。
起算点のずらし
値は合っているのに起算点だけが違う肢です。廃業等の届出を死亡の日から30日以内とする、欠格期間を判決確定の日から5年とする、クーリング・オフの8日を契約締結の日から数えるといった形で作られます。「いつから」を条文の語で覚えているかが問われます。
「以内」「以上」「超える」の読み替え
保全措置は代金の5%「以下」なら不要なので、ちょうど5%なら不要です。契約不適合の通知期間は2年「以上」とする特約が有効なので、ちょうど2年なら有効です。所有権留保は代金の10分の3を「超える」ときまでに登記が必要なので、ちょうど10分の3では義務が生じません。境界の扱いは頻出です。
日数の数え方
指定流通機構への登録の7日と5日は業者の休業日を除いて数えます。具体的な日付を示して「何日までに登録すればよいか」を問う形式では、休業日を算入するかどうかで答えが変わります。
数字の定めがないもの
数字を問う肢の中に、そもそも日数の定めがないものが混ぜられます。宅建士の変更の登録、37条書面の交付、媒介契約書の交付はいずれも「遅滞なく」であり、日数の定めはありません。宅地建物取引士の登録にも有効期間はありません。頻出論点の全体像は宅建業法の頻出論点ランキングで確認できます。
覚え方・整理の仕方
値ごとに束ね、そのうえで理由を1行つける
5年、30日、2週間、10分の2というように値で束ねたら、それぞれに「なぜその値なのか」を1行つけてください。理由がつけられない数字は、そもそも試験で問われても答えの根拠を持てません。
たとえば2週間グループなら、専任宅建士の補充は営業を続けたまま体制を戻すのに必要な最短期間、営業保証金の不足額の供託は弁済原資が欠けた状態を放置しない期間、還付充当金の納付は協会が立て替えた分を速やかに回収する期間、といった具合です。厳密な立法趣旨でなくても、自分の言葉で説明できれば復元の手がかりになります。
対になる数字は必ずペアで書く
単独で覚えると混ざる数字は、最初からペアで書き出します。1,000万円と500万円、60万円と30万円、5%と10%、10分の2と10分の3、7日と5日、2週間と1週間、5人に1人と1人以上、帳簿5年と従業者名簿10年、90日前と30日前。この9組を紙に書けるかどうかで、数字問題の得点はほぼ決まります。
大小の方向だけは絶対に間違えない
値そのものを忘れても、方向を覚えていれば選択肢を絞れます。拘束が強い契約類型ほど期限は短く頻度は高い、未完成物件ほど保全の基準は厳しい、主たる事務所は従たる事務所の2倍、保護の必要が高い期間ほど長い。方向が合っていれば、値を逆にする形の肢は消せます。
語呂は値だけの列挙に限って使う
理由づけや方向性で復元できる数字に語呂を当てると、かえって不安定になります。語呂を使うなら、報酬の速算式の加算額のように理由づけが難しい列挙に限ってください。他科目の数字の整理は法令上の制限の暗記法、建築基準法の数字まとめにあります。
直前期は書き出しで確認する
読み返す形の確認では、知っている感覚だけが強まります。何も見ずに、5年グループを列挙する、2週間グループを列挙する、8種制限の4つの割合を役割つきで挙げる、という順で書き出してから答え合わせをしてください。直前期の使い方は直前期の学習戦略にまとめてあります。
理解度チェッククイズ
Q1. 宅地建物取引士の登録の有効期間は5年であり、5年ごとに更新の申請をしなければならない。
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**× 誤り。** 宅地建物取引士の登録には有効期間がなく、消除されない限り効力が続きます。有効期間が5年なのは宅建業の免許(業法3条2項)と宅地建物取引士証(業法22条の2)です。登録と宅建士証を別の制度として理解していないと落とす肢です。Q2. 保証協会に加入しようとする宅地建物取引業者は、加入の日から1週間以内に弁済業務保証金分担金を保証協会に納付しなければならない。
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**× 誤り。** 分担金は加入しようとする日までに納付します(業法64条の9第1項)。1週間以内なのは、保証協会が分担金の納付を受けた日から弁済業務保証金を供託するまでの期限です(業法64条の7)。納付する主体と供託する主体が入れ替えられた肢です。Q3. 宅地建物取引業者が自ら売主となり宅建業者でない買主と工事完了前の建物の売買契約を締結する場合、代金の額の5%に相当する額の手付金を受領するときは、手付金等の保全措置を講じる必要はない。
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**○ 正しい。** 工事完了前の物件では、手付金等の額が代金の5%以下かつ1,000万円以下であれば保全措置は不要です(業法41条1項)。「5%以下」なのでちょうど5%なら不要です。5%を超えたときは、超過部分ではなく全額について保全措置が必要になります。Q4. 宅地建物取引業者は、事務所ごとに備える帳簿を各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後10年間保存しなければならない。
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**× 誤り。** 帳簿の保存期間は閉鎖後5年間で、業者が自ら売主となる新築住宅に係るものだけが10年間です(業法49条、施行規則18条3項)。10年が原則なのは従業者名簿のほうで、こちらは最終の記載をした日から10年間保存します(業法48条3項)。Q5. 専属専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、契約の締結の日から休業日を除き5日以内に当該物件を指定流通機構に登録し、依頼者に対して1週間に1回以上業務の処理状況を報告しなければならない。
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**○ 正しい。** 専属専任媒介契約では、指定流通機構への登録が休業日を除いて5日以内、業務処理状況の報告が1週間に1回以上です(業法34条の2第5項、施行規則15条の10ほか)。専任媒介契約では登録が7日以内、報告が2週間に1回以上となり、拘束の強い専属専任のほうが期限が短く頻度が高くなります。まとめ
宅建業法の数字を落とさないために押さえる点は、次の3つです。
- 制度ごとではなく値ごとに束ねる --- 5年、30日、2週間、1,000万円、10分の2というように同じ値の規定を並べておけば、試験で値を見た瞬間に候補を絞れます。制度ごとに覚えると、値の入れ替えに気づけません。
- 値には必ず理由と方向をつける --- 未完成物件のほうが保全の基準が厳しい、拘束の強い契約類型ほど期限が短い、主たる事務所は従たる事務所の2倍。方向が合っていれば、値を逆にした肢は消せます。
- 起算点と境界の扱いまでセットで覚える --- 「いつから」の30日か、「以下」なのか「超える」なのか、休業日を算入するのか。値が合っていても、この3点で正誤が反転します。
論点ごとの精度の上げ方は宅建業法で18問以上取る、直前期の一巡は宅建業法を2週間で仕上げる方法、免許と登録の数字の対比は免許制度の横断整理へ進んでください。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、本記事で扱った数字を含む肢を条文根拠つきの解説で演習でき、間違えた数字だけを繰り返し確認できます。
宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。