広告に関する規制|誇大広告の禁止と広告開始時期
宅建試験で出題される広告に関する規制を解説。誇大広告の禁止、広告開始時期の制限、取引態様の明示義務の3つの規制を具体例と条文で整理。
目次
本記事は、宅地建物取引業法が定める広告に関する規制、すなわち32条の誇大広告等の禁止、33条の広告開始時期の制限、34条の取引態様の明示義務を扱います。あわせて、33条と取り違えられやすい36条の契約締結時期の制限、および景品表示法と不動産の表示に関する公正競争規約の位置づけまでを一本の線でつなぎます。科目全体の中での位置づけと出題範囲の地図は宅建業法の全体像で確認してください。
先に結論を述べます。広告規制で問われるのは、ほとんどの場合「規制が働く場面はどこか」の一点です。32条は広告の中身、33条は広告を出せる時期、34条は広告に書くべき事項という具合に、それぞれ違う面を規制しています。この3つに36条の契約締結時期の制限を加えた4つを、規制対象となる行為と適用される取引の範囲という2つの軸で並べ直せば、選択肢のほとんどはその場で切れます。
広告規制の全体像をつかむ
4つの規定が守っているもの
宅建業法は免許制度で業者の入口を絞り、営業保証金で取引の担保を確保し、35条書面と37条書面で契約の内容を書面化します。しかし消費者が業者と接触する最初の瞬間は、免許でも書面でもなく広告です。物件を探す人は広告を見て問い合わせ、来店し、そこで初めて宅建業者と向き合います。その最初の接点で誤った情報を掴まされると、その後の手続がどれほど厳格でも、判断の出発点が歪んだままになります。
そこで宅建業法は、業務の入口である広告に対して、内容・時期・表示事項の3方向から規制をかけました。32条が内容、33条が時期、34条が表示事項です。さらに36条が、広告の一歩先にある契約締結の時期を制限しています。この4つは条文の位置も近く、いずれも「業務上の規制」という同じ章に置かれています。
規制の対象となる行為で分ける
32条は、広告の内容が著しく事実に相違したり、実際より著しく優良・有利だと誤認させたりすることを禁じます。つまり「何を書いたか」を見る規定です。
33条は、工事完了前の宅地建物について、必要な許可等の処分を受ける前に広告することを禁じます。書いた内容が正確であっても、時期が早ければ違反です。「いつ出したか」を見る規定です。
34条は、広告をするときと注文を受けたときに、自ら当事者となるのか、代理なのか、媒介なのかの別を明示させます。これは禁止規定ではなく作為義務で、「必要なことを書いたか」を見る規定です。
36条だけは広告の話ではありません。工事完了前の物件について、許可等の処分の前に売買・交換の契約を締結したり、その代理・媒介をしたりすることを禁じます。「いつ契約したか」を見る規定です。
適用される取引の範囲で分ける
もう一本の軸が、売買・交換・貸借のどこまでに適用されるかです。32条は「その業務に関して広告をするとき」と定めており、取引の種類を限定していません。34条も「宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する広告」と明記しており、貸借を含みます。33条も「売買その他の業務に関する広告」であり、貸借の広告を含みます。
これに対して36条だけが、売買・交換の契約締結とその代理・媒介に限定され、貸借を対象外としています。この一点が、33条と36条を並べる問題で毎回のように狙われます。理由は後の章で条文の文言から説明します。
誇大広告等の禁止(宅建業法32条)
条文が挙げる規制対象事項
32条は次のように定めています。
宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地又は建物の所在、規模、形質若しくは現在若しくは将来の利用の制限、環境若しくは交通その他の利便又は代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法若しくは代金若しくは交換差金に関する金銭の貸借のあつせんについて、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。
――宅地建物取引業法 第32条
条文が挙げる事項は、物件そのものに関するものと、取引条件に関するものに大きく二分できます。
物件そのものに関するのは、所在、規模、形質の3つです。所在は住所や地番、規模は土地の面積や建物の延床面積・間取り、形質は地目、構造、築年数、設備といった物理的な性質を指します。実際の面積が50平方メートルなのに80平方メートルと表示すれば規模の相違、木造を鉄骨造と表示すれば形質の相違です。
次に、物件を取り巻く条件に関するのが、現在もしくは将来の利用の制限、環境、交通その他の利便です。現在の利用の制限とは、用途地域による建築物の用途制限、建ぺい率・容積率、高さの制限などです。将来の利用の制限には、都市計画で決定済みだが未施行の制限などが含まれます。市街化調整区域内の土地であるのに建物が自由に建てられるかのように表示すれば、ここに触れます。環境は日照、眺望、周辺施設で、交通その他の利便は最寄り駅からの距離や所要時間、バス便の有無です。
最後が取引条件に関する2つで、代金・借賃等の対価の額もしくはその支払方法と、代金もしくは交換差金に関する金銭の貸借のあっせんです。価格や家賃の額そのものだけでなく、頭金や分割の条件といった支払方法、そして住宅ローンのあっせん条件までが含まれます。提携ローンが実際には利用できないのに利用できるかのように表示すれば、貸借のあっせんに関する誇大広告です。
条文にない事項は対象にならない
ここで押さえるべきは、32条が対象事項を限定列挙している点です。列挙されていない事項について事実と異なる表示をしても、32条の誇大広告等の禁止には該当しません。たとえば売主の資力や、業者自身の営業成績に関する誇張は、32条の対象事項の中にはありません。もっとも、それが取引の相手方の判断に重要な影響を及ぼす事実であれば、47条1号の不告知・不実告知に当たる余地があり、この点は宅建業者の説明義務まとめで扱っています。
試験では、対象事項に含まれないものを混ぜて「これも誇大広告として禁止される」と述べる形は多くありません。むしろ、対象事項に含まれているのに含まれていないかのように書く形、たとえば「金銭の貸借のあっせんに関する表示は誇大広告の規制対象外である」といった選択肢が出ます。ローンのあっせんが条文に明記されている点は、意識して覚えてください。
「著しく」が要件である意味
条文は「著しく事実に相違する表示」「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」と、いずれにも「著しく」を置いています。したがって、わずかな誤差や表現の揺れは32条の対象外です。
では何をもって著しいと判断するのか。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」32条関係は、事実と表示との相違の度合いが大きいことのみで判断されるものではなく、宅地建物取引業者が事実を表示しないことによって一般購入者等が誤認するかどうかで判断すべきとしています。つまり基準は数値のずれ幅ではなく、一般の購入者が判断を誤るかどうかという受け手側の視点です。
この理解があると、二つのパターンの違いも整理できます。「著しく事実に相違する表示」は、表示された内容そのものが事実と食い違っている場合です。「著しく優良・有利と誤認させる表示」は、一つひとつの記載は嘘ではないのに、全体として実際より良く見える場合です。駅の出入口までは3分だが改札までは10分かかる物件を「駅徒歩3分」とだけ表示する、他社が扱えない条件であるかのように書く、といった例が後者にあたります。
実害がなくても違反が成立する
広告規制で最も頻繁に問われるのがこの点です。32条は「してはならない」と表示行為そのものを禁じており、その結果として誰かが契約したことも、損害が発生したことも、要件にしていません。
したがって、誇大広告を出したが問い合わせが1件もなかった場合、問い合わせはあったが契約に至らなかった場合、契約に至ったが買主が結果的に満足していた場合のいずれであっても、32条違反は成立します。監督処分の対象となり、罰則の対象にもなります。
さらに、広告を出した後で誤りに気づいて訂正したとしても、既に違反行為は完了しています。訂正や取下げは情状として考慮される余地があるにとどまり、違反の成否を左右しません。「後日訂正広告を出したので違反とはならない」という選択肢は誤りです。
広告の媒体と回数を問わない
32条は媒体を限定していません。新聞や折込チラシ、住宅情報誌、現地看板、テレビやラジオのコマーシャルはもちろん、自社ウェブサイト、不動産ポータルサイトへの掲載、SNSへの投稿、メールマガジンやダイレクトメールも「業務に関する広告」に含まれます。
インターネット広告で実務上とくに問題になるのが、成約済み物件の掲載放置です。掲載当初は正確だった情報でも、成約後に削除しないまま置けば、取引できない物件を取引できるかのように表示していることになります。掲載を続ける行為が新たな表示行為と評価されるため、「掲載時点では正しかった」という反論は通りません。
また、広告の回数も要件ではありません。1回限りの広告でも違反は成立します。「継続的に広告を出した場合に限り誇大広告となる」といった表現は誤りです。
おとり広告は誇大広告の一類型
おとり広告は32条とは別の条文にあるのではなく、32条の誇大広告等の禁止に含まれるものとして扱われます。前掲の解釈・運用の考え方は、次の3つの類型を誇大広告等に該当するものとして挙げています。
第1に、物件が存在しないため実際には取引することができない物件に関する表示です。架空の物件情報を掲載する場合で、これは虚偽広告とも呼ばれます。第2に、物件は存在するが実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示です。既に成約した物件、売主が売却を撤回した物件などがこれにあたります。第3に、物件は存在するが実際には取引する意思がない物件に関する表示です。相場より著しく好条件の物件で問い合わせを集め、来店した客には別の物件を勧めるという手法がこれにあたります。
3つのうち第1類型だけは物件そのものが存在しませんが、第2・第3類型では物件は実在します。「物件が実在する以上おとり広告には当たらない」という選択肢は、この点で誤りになります。おとり広告は、後述する不動産の表示に関する公正競争規約でも独立して禁止されており、宅建業法と規約の両面から規制されています。
広告開始時期の制限(宅建業法33条)
条文と規制の趣旨
33条は、宅地の造成または建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法29条1項もしくは2項の規定による許可、建築基準法6条1項の規定による確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ、当該工事に係る宅地または建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない、と定めています。
趣旨は実現可能性の担保です。未完成物件の広告は、まだ存在しない物件を売るという性質上、そもそも消費者が実物を確認できません。そのうえ許可や確認が下りなければ、計画された物件は永遠に完成しません。許可等が下りる前に広告を認めれば、実現するかどうか分からない物件に対して申込みが集まり、不許可となったときに大量の被害が生じます。そこで、行政の判断が済み、法的に工事を進められる状態になってから初めて広告を認めることにしたわけです。
必要とされる許可等の処分
条文が例示するのは、都市計画法29条1項・2項の開発許可と、建築基準法6条1項の建築確認です。これに加えて「その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるもの」があり、宅地建物取引業法施行令2条の5が、都市計画法35条の2第1項の変更許可、農地法5条1項の許可、宅地造成及び特定盛土等規制法にもとづく許可など、多数の処分を列挙しています。
重要なのは、必要とされる処分がすべて済んでいなければならない点です。造成と建築の両方が必要な分譲地であれば、開発許可だけでは足りず、建築確認も受けなければ建物の広告はできません。逆に、その物件について建築確認が不要であるなら、当然ながら建築確認を待つ必要はありません。開発許可と建築確認の要否と手続の詳細は開発許可と建築確認の違いで整理しており、開発許可の制度そのものは宅建の開発許可制度、建築確認の手続は建築確認の手続きで扱っています。
申請中である旨を明示しても広告できない
33条をめぐる最頻出の引っかけがこれです。「建築確認を申請中である旨を表示すれば広告できる」という選択肢は誤りです。
条文は「処分があつた後でなければ……広告をしてはならない」と定めており、処分の存在を要件としています。申請中であることを正直に伝えたとしても、処分がない以上、要件を満たしません。同じ理屈で、「近日中に確認が下りる見込みである旨を付記した」「不許可の場合は申込みを白紙撤回する旨を明記した」といった条件を付けても広告はできません。消費者に対する説明を尽くしたかどうかではなく、処分があったかどうかだけが基準です。
なお、既に建築確認を受けた物件について変更の確認を申請している場合の扱いは別です。国土交通省の解釈・運用の考え方33条関係は、変更の確認を申請中であっても、当初の確認内容で広告することは差し支えないとしつつ、変更の確認を受ける予定である旨を表示すべきものとしています。当初の処分は既に存在するため、33条の要件自体は満たされているという整理です。
完成物件には適用されない
33条は「工事の完了前においては」と場面を限定しています。したがって、工事が完了した物件については、この制限は働きません。完成した中古住宅や完成済みの新築建売住宅の広告は、許可等の処分の有無を論じるまでもなく可能です。
ここで問われやすいのが、工事完了の判定時期です。工事完了とは物理的な完成を指すのであって、検査済証の交付や登記の完了を指すのではありません。ただし実務では未完成か完成かの線引きが問題になりにくいため、試験対策としては「未完成物件だけの規制である」と押さえておけば足ります。
貸借の広告にも適用される
33条が禁じるのは「当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告」です。売買に限定した文言ではなく、「その他の業務に関する広告」を含みますから、交換の広告も、貸借の広告も、代理・媒介として行う広告も、すべて対象です。建築中のアパートについて入居者募集の広告を出すことも、建築確認前であれば33条違反になります。
一方で、宅建業者でない者や、宅建業に当たらない行為には宅建業法は適用されません。自ら貸借を行う行為は宅建業に当たらないため、自己所有の建物を自ら賃貸する者が入居者募集広告を出しても、宅建業法の広告規制は及びません。この線引きは宅建業の「業」に当たるケースで扱っています。
取引態様の明示義務(宅建業法34条)
明示すべき3つの態様
34条1項は、宅地または建物の売買、交換または貸借に関する広告をするときは、自己が契約の当事者となって売買もしくは交換を成立させるか、代理人として売買・交換・貸借を成立させるか、媒介して売買・交換・貸借を成立させるかの別を明示しなければならない、と定めています。
自ら当事者となる場合は「売主」、代理人となる場合は「代理」、媒介する場合は「媒介」または「仲介」と表示します。この区別が消費者にとって重要なのは、態様によって受ける規制も費用も変わるからです。業者が自ら売主となる取引では8種制限が適用され、クーリング・オフや手付金等の保全措置といった買主保護のしくみが働きます。媒介であれば8種制限は働かない代わりに、報酬の上限規制が問題となります。報酬額の考え方は報酬額の制限にまとめています。
なお、自ら当事者となる場合について条文が挙げるのは売買と交換だけで、貸借が入っていません。自ら貸借を行う行為が宅建業に当たらないためで、条文の構造として自然な帰結です。
広告時と注文時の両方で必要
34条2項は、宅地または建物の売買、交換または貸借に関する注文を受けたときは、遅滞なく、その注文をした者に対し取引態様の別を明らかにしなければならない、と定めています。
明示が必要な場面は、広告をするときと注文を受けたときの2つです。この2つは独立した義務なので、広告に取引態様を明示していたとしても、注文を受けた際には改めて明示しなければなりません。「広告で明示済みだから注文時の明示は不要である」という選択肢は誤りです。逆に、広告を一切出さずに紹介だけで取引が始まった場合でも、注文を受けた時点で明示義務が生じます。
書面は不要で、相手が知っていても省略できない
34条は明示の方法を定めていません。したがって書面である必要はなく、口頭でも足ります。35条書面や37条書面のように書面の交付が要求される規定と混同しないでください。書面の交付が必要な場面は35条書面の記載事項一覧で確認できます。
また、注文をした者が取引態様を既に知っていたとしても、明示義務は消えません。34条は相手方の認識を要件にしていないからです。相手方が宅建業者であっても同じです。「取引の相手方が宅建業者である場合は明示を省略できる」「相手方が既に知っていた場合は明示を要しない」といった選択肢は、いずれも誤りになります。取引態様の明示については取引態様の明示義務に詳しくまとめています。
貸借にも適用され、媒介契約の規制とは範囲が異なる
34条は売買・交換・貸借のすべてに適用されます。ここで対比しておきたいのが34条の2の媒介契約の規制です。34条の2は「宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約」を対象としており、貸借の媒介には適用されません。条文番号が隣り合っているのに適用範囲が違うため、入れ替えて出題されます。媒介契約書面の交付や指定流通機構への登録が貸借に及ばないことは媒介契約の3類型で扱っており、登録先である指定流通機構についてはレインズとはを参照してください。
整理すると、貸借に適用されるのが32条・33条・34条、適用されないのが34条の2と36条です。この4つと1つの線引きを覚えておくと、選択肢の半分は処理できます。
33条と36条を取り違えない
規制する行為が違う
33条が禁じるのは広告であり、36条が禁じるのは契約の締結と代理・媒介です。したがって、許可等の処分を受ける前に行った行為が広告なら33条違反、契約なら36条違反になります。
ここから導かれるのが、「建築確認前に広告を出しておき、確認が下りてから契約を締結すればよい」という選択肢の誤りです。契約の時期が適法であっても、広告の時期が違法である以上、33条違反が成立しています。逆に「開発許可を受けたので広告を出し、建築確認を待たずに契約した」という場合は、建築確認も必要な物件であれば広告の段階で既に33条違反であり、契約についても36条違反です。
適用される取引の範囲が違う
36条は、工事完了前の宅地建物について、自ら当事者として、もしくは当事者を代理して売買もしくは交換の契約を締結し、または売買もしくは交換の媒介をしてはならない、と定めています。条文に現れるのは売買と交換だけで、貸借は一切出てきません。つまり36条は、貸借の契約締結も、貸借の代理・媒介も規制しません。
これに対して33条は「売買その他の業務に関する広告」であり、貸借の広告を含みます。同じ「許可等の処分の前」を規制していながら、広告は貸借を含み、契約は貸借を含まないという非対称が生じています。
なぜこの差があるのか。契約締結時期の制限の趣旨は、実現しないかもしれない物件について、代金を支払わせるなどの重い法律関係を先に固めさせないことにあります。売買や交換では代金や交換差金という大きな金銭が動き、不許可となれば損害も大きい。一方、貸借は建物が完成しなければ賃料の支払も入居も始まらず、契約を先に結んでも消費者が失うものが相対的に小さい。だから契約の制限からは外されています。しかし広告は、契約に至る前の段階で人を集める行為ですから、貸借であっても実現しない物件で入居希望者を動かすのは有害です。だから広告の制限には貸借が残っています。
この理由づけを持っておくと、「未完成の建物の貸借の媒介を、建築確認前に契約してはならない」という選択肢に対して、36条の対象外であることを条文の趣旨から確認できます。
出題される組み合わせ
33条と36条の組み合わせで作られる選択肢は、おおむね次の型に収まります。第1に、広告と契約を入れ替える型。第2に、貸借を混ぜる型。第3に、申請中である旨の表示で処理できるかを問う型。第4に、必要な処分の一部しか下りていない状態を提示する型です。
このうち第2の型がもっとも差がつきます。「建築確認を受ける前に、建築中の建物の貸借の媒介の契約を締結することはできない」は誤りで、36条は貸借を対象としません。「建築確認を受ける前に、建築中の建物の貸借に関する広告をすることはできない」は正しく、33条は貸借の広告を含みます。この2文をそのまま暗記してしまうのが早道です。
違反したときの監督処分と罰則
監督処分は3つとも対象になる
32条、33条、34条のいずれに違反しても、監督処分の対象となります。免許権者は、業法の規定に違反したときは指示処分をすることができ(65条1項)、情状が重ければ1年以内の期間を定めて業務停止処分をすることができます(65条2項)。さらに業務停止処分に該当し情状が特に重いときは、免許を取り消さなければなりません(66条1項9号)。処分の要件と手続の詳細は監督処分の違いにまとめています。
免許取消しが必要的取消しである点、業務停止の上限が1年である点は、広告規制の問題でも周辺知識として問われます。宅建業法の数字は宅建業法の数字まとめで横断的に確認できます。
罰則があるのは32条だけ
ここが既存教材でも誤りやすい箇所です。広告規制のうち罰則の対象となるのは、誇大広告等の禁止(32条)だけです。
81条1号は、25条5項、32条、44条の規定に違反した者を、6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定めています。かつては懲役と表記されていましたが、2025年6月1日施行の改正により懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されたため、条文上の表記は拘禁刑です。古い教材の「6か月以下の懲役」は同じものを指しています。
これに対して、33条の広告開始時期の制限と34条の取引態様の明示義務には、罰則の定めがありません。違反すれば監督処分の対象にはなりますが、拘禁刑や罰金は科されません。「広告開始時期の制限に違反した者は6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処せられる」という選択肢は誤りです。宅建業法の罰則全体の段階構造は宅建業法の罰則一覧で確認してください。
なお、誇大広告の法定刑を「1年以下」と記憶している受験生が少なくありませんが、1年以下(80条)に当たるのは47条2号の不当に高額な報酬の要求です。誇大広告は6月以下で、宅建業法の拘禁刑の中では最も軽い段階に置かれています。
景品表示法と不動産の表示に関する公正競争規約
2つのルールの位置づけ
不動産広告を規律しているのは宅建業法だけではありません。不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)が、商品・役務の内容や取引条件について一般消費者に誤認される表示を禁じており(5条)、違反には消費者庁長官による措置命令(7条)や課徴金納付命令(8条)が用意されています。2024年10月1日施行の改正では確約手続が導入され、優良誤認表示・有利誤認表示に対する直罰規定も新設されました。
その景品表示法にもとづき、不動産業界が自主的に定めた業界ルールが不動産の表示に関する公正競争規約です。公正取引委員会と消費者庁長官の認定を受けた協定で、景品表示法だけでは曖昧になる部分、たとえば徒歩所要時間の計算方法や「新築」と呼べる範囲を、具体的な数値と定義で埋めています。宅建試験では「税・その他」の分野から1問出題されるのが通例で、詳細は不当景品類及び不当表示防止法にまとめています。
宅建業法との関係は補完関係です。宅建業法32条が「著しく」という抽象的な要件でしか裁けない部分を、規約が具体的な表示基準で埋めています。同じ広告について、宅建業法の監督処分と、規約にもとづく違約金の両方が問題になり得ます。
徒歩1分は80メートル
規約の施行規則が定める表示基準のうち、最頻出が徒歩所要時間です。道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出し、1分未満の端数が生じたときは1分として算出します。つまり切り上げです。
道路距離650メートルであれば、650を80で割ると8.125となり、端数を切り上げて徒歩9分と表示します。640メートルちょうどなら8分、641メートルなら9分です。切り捨てや四捨五入と入れ替える出題があるため、切り上げである点を確実にしてください。
基準となるのは直線距離ではなく道路距離です。また、信号待ちの時間、坂道、踏切、歩道橋などは考慮しません。2022年9月施行の規約改正で起点と着点が明確化され、物件の側は建物の出入口、駅等の側は最も近い出入口を用いることとされました。改札口からの距離ではないため、「駅徒歩3分」と表示された物件で改札まで10分かかることは実際に起こり得ます。この表示自体が直ちに規約違反となるわけではありませんが、宅建業法32条の誤認させる表示の問題として論じられる余地は残ります。
新築は建築後1年未満かつ未使用
規約は特定の用語について使用基準を定めており、そのうち「新築」は、建築工事完了後1年未満であって、居住の用に供されたことがないものと定義されています。
要件が2つある点が要注意です。建築後1年未満であること、そして未使用であることの両方を満たして初めて新築と表示できます。建築後6か月しか経っていなくても、一度でも入居していれば新築とは表示できません。逆に未使用のまま1年を超えれば、これも新築とは表示できず、いわゆる未入居物件として扱われます。「建築後1年未満であれば新築と表示できる」という選択肢は、未使用要件を落としているため誤りです。
おとり広告と特定用語の使用制限
規約はおとり広告を独立して禁止しています。取引の申出に係る不動産が存在しないため実際には取引できない物件、存在するが取引の対象となり得ない物件、存在するが取引する意思がない物件についての広告表示が対象で、宅建業法32条の解釈と平仄が合っています。
また、「完全」「完璧」「絶対」「日本一」「業界一」「当社だけ」「最高」「最高級」「格安」「激安」といった、最上級を意味する用語や著しく安いことを意味する用語は、それを裏付ける合理的な根拠となる資料を示すことができない限り使用できません。逆に言えば、客観的な根拠が示せる場合には使用が認められる余地があります。「これらの用語は一律に使用が禁止されている」という選択肢は、この点で言い過ぎです。
試験での出題ポイント
どこが問われるか
広告規制は宅建業法の20問の中でほぼ毎年1問、他の論点と組み合わされる形を含めるとそれ以上の頻度で登場します。宅建業法全体の出題傾向は宅建業法の頻出論点ランキングで確認できます。
問われ方は限られています。第1に、誇大広告について実害や取引の成立を要件に加える形。第2に、広告開始時期の制限について申請中の表示で足りるとする形。第3に、33条と36条の適用範囲、とくに貸借の扱いを入れ替える形。第4に、取引態様の明示について注文時の明示を不要とする形、書面を要求する形、相手方の認識で省略できるとする形。第5に、罰則の有無を32条以外にも広げる形です。
引っかけのつくられ方
選択肢は、正しい記述に1語を足すか、1語を抜くかで作られます。誇大広告なら「著しく」を抜く、あるいは「損害が発生した場合に限り」を足す。広告開始時期なら「完成物件についても」を足す。取引態様なら「書面により」を足す、「注文を受けたときも」を抜く。罰則なら条文番号を保ったまま年数だけ差し替える。
したがって、条文の文言をそのまま覚えておくことが最大の防御になります。とくに32条の「著しく」、33条の「処分があつた後でなければ」、34条2項の「遅滞なく」の3語は、問題文の中で必ず確認する癖をつけてください。
他の論点との組み合わせ
広告規制は単独で出るだけでなく、業務上の規制の総合問題の一肢として出ることも多い分野です。組み合わされやすいのは、8種制限、報酬額の制限、媒介契約の規制、監督処分の4つです。取引態様の明示が「業者が自ら売主である」という事実を明らかにするため、そこから8種制限の適用に話がつながる構成がよく見られます。
また、依頼者の特別の依頼によって行った広告の費用は、報酬とは別に受領できます。通常の広告費用は報酬に含まれるため別途請求できない、という原則との対比で問われるので、報酬額の制限とセットで確認しておくと安全です。
覚え方・整理の仕方
条文番号を並びで覚える
32条、33条、34条は連番です。32が内容、33が時期、34が表示事項、と番号順に「なに・いつ・なにを書く」と対応させると、条文番号と内容の紐づけが崩れません。そして36条だけが離れており、離れている理由は広告ではなく契約を扱うからだ、と押さえます。
貸借を含むかどうかで4つに仕分ける
もっとも実戦的な整理がこれです。貸借を含むのは32条・33条・34条の3つ、貸借を含まないのは34条の2(媒介契約の規制)と36条(契約締結時期の制限)の2つ。「広告は貸借を含む、契約と媒介契約書面は含まない」と一文で覚えます。
罰則の有無は「内容だけが罰せられる」
広告規制のうち罰則があるのは32条だけです。時期を守らなかったこと、態様を書かなかったことは行政処分にとどまり、嘘を書いたことだけが刑事罰の対象になる、と理由づけて覚えます。嘘の表示は消費者を直接だます行為であり、悪質性の質が違うためです。
数字は3つだけ
広告規制で覚える数字は、徒歩1分あたり80メートル、新築の建築後1年未満、誇大広告の6月以下の拘禁刑・100万円以下の罰金、この3組で足ります。80、1年、6月と100万という並びだけを確実にしておけば、数字を差し替える出題に対応できます。
理解度チェッククイズ
Q1. 宅建業者が誇大広告を行った場合でも、その広告により実際に取引が成立せず、誰にも損害が生じなかったときは、宅建業法32条違反とはならない。(○か×か)
答えを見る
×:32条は表示行為そのものを禁止しており、取引の成立や損害の発生を要件としていません。問い合わせが1件もなかった場合でも違反は成立し、監督処分の対象となるほか、81条1号により6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科の対象となります。後から訂正広告を出しても、既に成立した違反は消えません。Q2. 宅建業者は、建築確認を受けていない建築中の建物について、建築確認申請中である旨を明示すれば、その売買の広告をすることができる。(○か×か)
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×:33条は「処分があつた後でなければ……広告をしてはならない」と定めており、処分の存在そのものを要件としています。申請中である旨を正直に表示しても、処分がない以上要件を満たしません。不許可の場合は白紙撤回する旨を付記しても同じです。ただし、既に建築確認を受けた物件について変更の確認を申請中である場合は、当初の確認内容で広告することが認められています。Q3. 宅建業者は、建築確認を受けていない建築中の建物について、その貸借の媒介の契約を締結することができるが、その貸借に関する広告をすることはできない。(○か×か)
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○:36条は工事完了前の宅地建物について、自ら当事者としてまたは代理して売買・交換の契約を締結すること、および売買・交換の媒介をすることを禁じており、貸借は対象外です。したがって貸借の媒介契約の締結は制限されません。一方33条は「売買その他の業務に関する広告」を対象としており、貸借の広告を含みます。広告は貸借を含み、契約は含まない、という非対称がこの肢の核心です。Q4. 宅建業者は、広告に取引態様の別を明示していた場合であっても、その広告を見た者から注文を受けたときは、遅滞なく取引態様の別を明らかにしなければならない。(○か×か)
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○:34条1項の広告時の明示義務と、34条2項の注文時の明示義務は独立した義務です。広告で明示済みであることを理由に注文時の明示を省略することはできません。また明示の方法に制限はなく書面である必要はありませんが、注文をした者が取引態様を既に知っていた場合や、その者が宅建業者である場合でも、明示義務は免除されません。Q5. 広告開始時期の制限に違反して広告をした宅建業者は、監督処分を受けるほか、6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処せられ、またはこれらを併科されることがある。(○か×か)
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×:81条1号が挙げるのは25条5項、32条、44条の違反であり、33条は含まれていません。広告開始時期の制限に違反しても罰則の適用はなく、指示処分や業務停止処分といった監督処分にとどまります。34条の取引態様の明示義務も同様に罰則がありません。広告規制のうち罰則があるのは誇大広告等の禁止(32条)だけです。まとめ
広告規制は、32条が広告の内容、33条が広告の時期、34条が広告に書く事項、36条が契約の時期という4層で組み立てられています。この4つを「規制する行為」と「貸借を含むか」の2軸で並べれば、出題される論点はほぼ尽きます。誇大広告は実害を要件としないこと、広告開始時期は申請中の表示では足りないこと、取引態様の明示は注文時にも必要であること、罰則があるのは32条だけであること。この4点を条文の文言とともに押さえておけば、広告規制の1問は確実に取れます。
関連する規制を続けて確認するなら、自ら売主となる場合に加わる8種制限、広告費用の扱いが問われる報酬額の制限、違反時の行政処分を扱う監督処分の違いの順が効率的です。条文を読んだあとは、宅建試験AIブートラボのアプリで宅建業法の過去問演習に進み、広告規制の肢を実際に切ってみてください。
宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。