不動産広告の表示基準|徒歩1分80mと新築の定義
不動産の表示に関する公正競争規約15条と施行規則9条の表示基準を条項単位で読みます。徒歩80メートル1分の起点・着点、面積、新築の2要件、価格と賃料の表示まで原文で整理します。
目次
この記事は、不動産広告のルールのうち「表示基準」と呼ばれる部分だけを、条項の順に通しで読むものです。問47という出題枠の全体像と、景品表示法から公正競争規約に至る根拠構造は景品表示法と公正競争規約が本体で、宅建業法側の広告規制は広告に関する規制が本体です。この記事はその内側にある「距離・時間・面積・写真・設備・定義用語・価格と賃料をどう書くか」という具体の規準だけを扱います。
先に結論を述べます。表示基準は、覚えるべき数字の羅列ではなく、「何を測るか」「どう測るか」「どこから測るか」「どう丸めるか」という四つの問いに対する規約の答えです。徒歩1分80メートルという有名な数字も、それ単体では意味を持ちません。道路距離で測ること、物件の側の起点が物件の種類によって変わること、施設の側の着点が改札口ではなく出入口であること、端数が切り上げであること、この四つが揃って初めて一つの規準になります。逆にいえば、選択肢はこの四つのどれか一つを差し替えて作られます。数字だけを覚えていると、数字が正しい誤り選択肢を切れません。
不動産広告の「表示基準」はどこに書かれているか
規約15条が柱を立て、施行規則9条が具体を書く
不動産広告の表示基準の所番地は、不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)15条と、同施行規則9条です。
規約15条は「事業者は、次に掲げる事項について表示するときは、規則で定めるところにより表示しなければならない」という柱書を置き、12個の事項を列挙します。1号が取引態様、2号が物件の所在地、3号が交通の利便性、4号が各種施設までの距離又は所要時間、5号が団地の規模、6号が面積、7号が物件の形質、8号が写真・絵図、9号が設備・施設等、10号が生活関連施設、11号が価格・賃料、12号が住宅ローン等です。
規約15条の本体はこの12項目の見出しだけで、中身は一切書かれていません。「規則で定めるところにより」と丸投げしているからです。その中身を書いているのが施行規則9条で、こちらは46号まであります。したがって、表示基準を勉強するというのは、実質的には施行規則9条46号を読むことです。試験で問われる数字は、ほとんどすべてこの1か条の中にあります。
規約15条の12号と施行規則9条の46号は、対応関係が一対一ではありません。たとえば規約15条3号「交通の利便性」には施行規則9条3号から6号までが対応し、15条4号「各種施設までの距離又は所要時間」には施行規則9条7号から11号までが対応します。規約側の見出しでグループを掴み、施行規則側の号で細部を掴むという二段構えで整理するのが、この分野の読み方です。
根拠が二階建てになっていることは前提として押さえるだけでよい
表示規約は法律そのものではありません。景品表示法36条1項が「事業者又は事業者団体は、内閣府令で定めるところにより、景品類又は表示に関する事項について、内閣総理大臣及び公正取引委員会の認定を受けて、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保するための協定又は規約を締結し、又は設定することができる」と定めており、表示規約はこの規定に基づく認定を受けた業界の自主規制です。景品表示法5条が不当な表示を一般的に禁じ、その具体化を業界ごとの規約に委ねている、という関係になります。この二階建ての構造、認定主体、違反したときに動く措置命令や課徴金、協議会の警告や違約金については景品表示法と公正競争規約が本体として扱っているので、そちらを参照してください。この記事では以後、規約の中身だけを見ます。
この記事が扱わないもの
同じ表示規約の中でも、禁止される表示の類型はこの記事の守備範囲ではありません。おとり広告の三類型(規約21条)、過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示の要件(規約20条・施行規則12条)、「最高」「激安」「完全」「日本一」「特選」「完売」といった特定用語の使用制限(規約18条2項)は、いずれもおとり広告と二重価格表示が本体です。
また、規約13条と施行規則7条が定める特定事項の明示義務、すなわち市街化調整区域である旨や再建築不可である旨を目立つ文字で書かせる規定も、この記事では扱いません。詳細は景品表示法と公正競争規約へ、市街化調整区域という区域そのものの中身は市街化調整区域へ送ります。宅建業法32条の誇大広告等の禁止、33条の広告開始時期の制限、34条の取引態様の明示という業法側の三規制は広告に関する規制が本体です。
広告段階の規律と、契約前に行う重要事項説明の規律は別系統である点も、最初に断っておきます。広告に書かなくてよいことが説明しなくてよいことにはならず、逆もまた成り立ちません。35条書面の説明事項は35条書面の記載事項一覧で扱っています。
基準日と参照する版
令和8年度(2026年10月18日実施)の出題範囲は、2026年4月1日現在施行の法令です。表示規約については、規約本体が令和6年10月1日施行の変更を最後とする版、施行規則が令和4年9月1日施行の変更を最後とする版が、基準日時点の現行です。この記事の条文引用はすべてこの版によっています。号番号は令和4年9月1日施行の変更で大きく動いたため、それ以前の版を引いている解説とは番号がずれます。数字が同じでも号番号が違う場合は、版の違いを疑ってください。
徒歩1分80メートルという換算の中身
そもそも徒歩分数を書かせているのは3号である
換算率の話に入る前に、「なぜ広告に徒歩分数が載っているのか」を押さえておきます。事業者が親切心で書いているのではなく、施行規則9条3号が書くことを義務づけているからです。
同号は「交通の利便については、公共交通機関を利用することが通例である場合には、次の基準により表示すること」という柱書のもとに、ア・イ・ウの三つの基準を置いています。アが条件のない基本形で、イとウが交通手段に応じた分岐です。
アは、鉄道・都市モノレール・路面電車(以下「鉄道等」)について、最寄りの駅または停留場(以下「最寄駅等」)の名称と、物件から最寄駅等までの徒歩所要時間を明示するという基準です。
イは「鉄道等の最寄駅等からバスを利用するとき」の基準で、明示すべきものが三つに増えます。最寄駅等の名称、物件から最寄りのバス停留所までの徒歩所要時間、同停留所から最寄駅等までのバス所要時間です。物件から停留所までは徒歩、停留所から駅まではバス、と経路を分解して書かせる形になっています。この場合、停留所の名称は省略できます。
ウは「バスのみを利用するとき」の基準で、最寄りのバス停留所の名称と、物件から同停留所までの徒歩所要時間を明示します。
三つに共通するのは、どの経路でも「物件から最初の乗り場までの徒歩所要時間」が必ず要求されることです。バス便の物件であっても、徒歩分数の表示から逃れられません。そして柱書が「公共交通機関を利用することが通例である場合には」と条件を付けているため、この3号の基準が働くのは公共交通機関の利用が通例である地域に限られます。
以下で見る9条9号は、この3号が要求する徒歩所要時間をどう算出するかを定める規定です。3号が「書け」と命じ、9号が「こう計算しろ」と命じる、という役割分担になっています。
条文は二つの要素でできている
施行規則9条9号は次のように定めます。
徒歩による所要時間は、道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出した数値を表示すること。この場合において、1分未満の端数が生じたときは、1分として算出すること。
――不動産の表示に関する公正競争規約施行規則9条9号
この一文には、独立した要素が二つ入っています。換算率が80メートルにつき1分であることと、1分未満の端数が生じたときは1分として算出することです。後者は「切り上げ」と説明されるのが普通ですが、条文は「切り上げる」とは書いていません。「1分未満の端数が生じたときは、1分として算出する」と書いています。結果は切り上げと同じですが、文言としてはこちらが正確です。四捨五入でも切り捨てでもありません。
境界を数値で確定させる
80の倍数ちょうどのときと、そこを1メートル超えたときの差が、そのまま出題のポイントになります。
640メートルは640÷80=8で、端数が生じないので8分です。641メートルは641÷80=8.0125となり、1分未満の端数が生じるのでこれを1分として算出し、9分になります。720メートルは720÷80=9でちょうど9分、721メートルは10分です。800メートルは10分、801メートルは11分です。
80の倍数ちょうどのときだけ端数が出ず、そこを1メートルでも超えると分数が一つ増えるという構造です。試験では「640メートルなので9分と表示した」「721メートルなので9分と表示した」のように、境界の片側をずらして誤りを作ります。倍数ちょうどを一つ覚えておき、そこから逆算するのが確実です。
道路距離であって直線距離ではない
条文が「道路距離80メートルにつき」と書いている以上、測るのは道路距離です。地図上で物件と駅を直線で結んだ長さではありません。川や線路を挟んで直線では近くても、橋や踏切まで回り込まなければならない立地では、道路距離は直線距離よりはるかに長くなります。表示される分数はその回り込みを反映します。
一方で、道路距離である以上、信号待ちの時間、坂道の勾配、階段、踏切の遮断、歩道橋の上り下りは一切考慮されません。これは規約の不備ではなく、規約が採用している方式の当然の帰結です。規約は「道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出した数値を表示すること」と定めており、算出した数値を表示せよと命じています。実際に歩いて計測した時間を表示せよとは書いていません。実測時間の表示を求めれば、誰が、どの速さで、どの時間帯に歩いたかによって表示が変わり、事業者間の比較可能性が失われます。比較可能性を確保するために、あえて機械的な換算を採ったのがこの規定です。
したがって、「実際に歩いたら12分かかったのに10分と表示されていた」という状態は、道路距離が800メートルであれば規約上は適法です。逆に「実測で7分だったから7分と表示した」ほうが、道路距離が641メートルであれば規約違反になります。実測が正しくて換算が間違っているのではなく、規約は換算しか認めていません。
複数の駅・複数の施設を表示するとき
物件の広告に複数の路線・複数の駅が並ぶことは珍しくありません。この場合、それぞれの駅ごとに、それぞれの道路距離から換算した分数を出します。最も近い駅の分数を他の駅にも流用することはできませんし、複数駅の平均を表示することもできません。施行規則9条7号が「道路距離又は所要時間を表示するときは、起点及び着点を明示して表示すること」と定めているのは、まさにどこからどこまでの数値なのかを一つひとつ特定させるためです。
同じことが、後述する学校・病院・商業施設などの生活関連施設についても当てはまります。施設ごとに道路距離を測り、施設ごとに換算します。「駅から徒歩8分だから、駅前のスーパーも徒歩8分」という書き方は成り立ちません。
どこからどこまでを測るのか(起点と着点)
施行規則9条7号の全文
徒歩分数の話で最も誤解が多いのが、測定の両端です。施行規則9条7号は次のように定めています。
道路距離又は所要時間を表示するときは、起点及び着点を明示して表示すること(他の規定により当該表示を省略することができることとされている場合を除く。)。
なお、道路距離又は所要時間を算出する際の物件の起点は、物件の区画のうち駅その他施設に最も近い地点(マンション及びアパートにあっては、建物の出入口)とし、駅その他の施設の着点は、その施設の出入口(施設の利用時間内において常時利用できるものに限る。)とする。
――不動産の表示に関する公正競争規約施行規則9条7号
前段は先に見た明示義務です。後段の「なお」以下に、測定の両端に関する三つの規律が入っています。順に見ます。
物件側の起点は「最も近い地点」が原則
原則は「物件の区画のうち駅その他施設に最も近い地点」です。建物の出入口ではありません。土地だけの取引や戸建て住宅では、敷地の境界のうち駅に最も近い一点が起点になります。奥行きのある敷地であれば、建物の玄関よりも手前の敷地の角が起点です。
括弧書きで例外とされているのが、マンションおよびアパートの場合で、このときだけ「建物の出入口」が起点になります。大規模なマンションでは、敷地の端は駅に近くても、エントランスは敷地の奥にあることがあります。敷地の端を起点にすると実態から離れすぎるため、共同住宅については建物の出入口を起点とする、という趣旨です。
この区別は、2022年9月1日施行の変更で条文上明確化された部分です。整理するときは、「原則は敷地の最も近い地点、マンションとアパートだけが建物の出入口」と、原則と例外の順序で覚えてください。「すべての物件について建物の出入口を起点とする」という記述は、原則と例外を入れ替えた誤りです。逆に「すべての物件について敷地のうち最も近い地点を起点とする」も、例外を落とした誤りになります。
施設側の着点は「出入口」であって改札口ではない
駅その他の施設の着点は「その施設の出入口」です。改札口でも、ホームでも、バス乗り場でもありません。地下街に長い連絡通路が伸びている大規模駅では、最も手前の出入口から改札まで数分歩くことがありますが、規約上はその区間は所要時間に入りません。
このため、表示された分数と実際に電車に乗るまでの体感時間が乖離することが構造的に起こります。これは事業者が数字を操作しているのではなく、規約が着点を出入口と定めていることの結果です。試験では「着点は駅の改札口とする」という選択肢が作られやすいところなので、条文が「出入口」と書いていることを直接思い出せるようにしておいてください。
着点には「常時利用できるもの」という限定がかかる
見落とされやすいのが、着点の括弧書きです。「施設の利用時間内において常時利用できるものに限る」という限定が付いています。
たとえば、駅の出入口のうち、朝夕のラッシュ時だけ開く臨時出口や、特定の時間帯に閉鎖される出入口があるとします。この出入口は「施設の利用時間内において常時利用できるもの」に当たらないため、着点として使えません。近い出入口があっても、それが常時利用できないなら、常時利用できる別の出入口までの距離で測ることになります。
この限定は、条文の括弧書きの中にあるため読み飛ばされがちですが、着点の選択を事業者の有利に寄せさせないための歯止めです。起点の側にはこの種の限定がありません。物件の起点は「最も近い地点」と一義的に決まるため、事業者に選択の余地がないからです。これに対し着点の側は、出入口が複数ある施設では事業者がどれを選ぶかで距離が変わります。選択の余地がある側にだけ限定が付いている、と理解すると、括弧書きの位置を落としません。
団地は最も近い区画と最も遠い区画の両方を表示する
施行規則9条8号は、団地についての特則です。
団地(一団の宅地又は建物をいう。以下同じ。)と駅その他の施設との間の道路距離又は所要時間は、取引する区画のうちそれぞれの施設ごとにその施設から最も近い区画(マンション及びアパートにあっては、その施設から最も近い建物の出入口)を起点として算出した数値とともに、その施設から最も遠い区画(マンション及びアパートにあっては、その施設から最も遠い建物の出入口)を起点として算出した数値も表示すること。
――不動産の表示に関する公正競争規約施行規則9条8号
最も近い区画からの数値だけでは足りず、最も遠い区画からの数値も表示しなければなりません。「駅徒歩5分」とだけ書いて、実際には団地の奥の区画からは12分かかる、という表示は規約違反です。正しくは「駅徒歩5分〜12分」のように、両端を示すことになります。
条文が「それぞれの施設ごとに」と書いていることにも注意してください。駅とスーパーと小学校を並べるなら、施設ごとに最も近い区画と最も遠い区画を判定します。駅に最も近い区画が、小学校にも最も近いとは限りません。施設ごとに起点が変わりうるということです。
そして8号も、括弧書きでマンションおよびアパートを別扱いにしています。7号と同じ構造で、共同住宅の場合は「最も近い建物の出入口」と「最も遠い建物の出入口」が起点になります。複数棟からなるマンションで、棟によって駅までの距離が違う場合を想定した規定です。
なお「団地」の定義は8号の括弧書きにあり、「一団の宅地又は建物」をいいます。分譲か賃貸かを問わず、また戸建てかマンションかも問いません。試験で「団地」という語が出てきたら、この定義に戻ってください。
工区に分けたときは開発区域全体を書く
規約15条5号「団地の規模」を受けるのが、施行規則9条12号です。
開発区域を工区に分けて工区ごとに開発許可を受け、当該開発許可に係る工区内の宅地又は建物について表示をするときは、開発区域全体の規模及びその開発計画の概要を表示すること。この場合において、全体計画中に開発許可を受けていない部分を含むときは、その旨を明示すること。
――不動産の表示に関する公正競争規約施行規則9条12号
要件は二段です。第一に、工区ごとに開発許可を受けて工区単位で売るときでも、開発区域全体の規模と開発計画の概要を書きます。目の前の工区の話だけをしてはいけない、ということです。第二に、全体計画のうちまだ開発許可を受けていない部分があるなら、その旨を明示します。
8号が「最も遠い区画からの数値も書け」と求めているのと、発想が同じです。団地に関する規律は、事業者が見せたい範囲だけを切り出して見せることを封じる方向で組まれています。開発許可そのものの仕組みは開発許可で扱っています。
徒歩以外の移動手段はどう表示するか
自動車は道路距離を明示したうえで実測時間
施行規則9条10号は次のように定めます。
自動車による所要時間は、道路距離を明示して、走行に通常要する時間を表示すること。この場合において、表示された時間が有料道路(橋を含む。)の通行を含む場合のものであるときは、その旨を明示すること。ただし、その道路が高速自動車国道であって、周知のものであるときは、有料である旨の表示を省略することができる。
――不動産の表示に関する公正競争規約施行規則9条10号
要素は三つです。第一に、道路距離を明示すること。時間だけを書くことは許されません。第二に、時間は「走行に通常要する時間」であって、機械的な換算ではないこと。第三に、有料道路の通行を含むならその旨を明示することで、括弧書きが「橋を含む」としているので、有料の橋を通る場合も明示が要ります。
ただし書きの省略が認められるのは、その道路が高速自動車国道であって、周知のものであるときに限られます。二つの条件が重なったときだけです。有料道路一般ではなく高速自動車国道であること、しかも周知のものであること。この二段の絞り込みを落として「有料道路の場合は有料である旨の表示を省略できる」と書けば誤りになります。
自転車も同じ形をとる
施行規則9条11号は「自転車による所要時間は、道路距離を明示して、走行に通常要する時間を表示すること」と定めます。自動車の規定から有料道路の部分を除いた形です。道路距離の明示と、走行に通常要する時間という二要素は共通しています。
徒歩だけが機械換算、他は実測という非対称
ここまでを並べると、はっきりした非対称が見えます。
徒歩だけが「80メートルにつき1分として算出した数値」という機械的な換算です。自動車も自転車も「走行に通常要する時間」で、実態に即した時間を表示します。したがって、自動車や自転車について換算率を持ち出す選択肢はすべて誤りです。「自動車による所要時間は道路距離400メートルにつき1分として算出する」「自転車は道路距離200メートルにつき1分として算出する」といった規定は、規約のどこにも存在しません。
逆に、徒歩について「実際に歩行に通常要する時間を表示する」とする選択肢も誤りです。徒歩は換算、自動車と自転車は実測。この向きを取り違えると、両方向の誤り選択肢に対応できません。
電車・バスは実態表示で、原則がラッシュ時
施行規則9条4号は、電車・バス等の交通機関の所要時間について四つの基準を並べています。
アは「起点及び着点とする鉄道、都市モノレールの駅若しくは路面電車の停留場又はバスの停留所の名称を明示すること」です。ただし、物件から最寄駅等までバスを利用する場合であって、物件の最寄りの停留所から最寄駅等までのバスの所要時間を表示するときは、停留所の名称を省略できます。
イは「特急、急行等の種別を明示すること」です。特急で30分の路線を、各駅停車しか止まらない駅について特急の所要時間で表示することはできません。
ウは「朝の通勤ラッシュ時の所要時間を明示すること」です。そのうえで「この場合において、平常時の所要時間をその旨を明示して併記することができる」と続きます。原則はラッシュ時、平常時は併記が許されるだけという主従関係です。ここを逆にして「平常時の所要時間を明示し、ラッシュ時は併記できる」とする選択肢が典型的な誤りになります。ラッシュ時のほうが所要時間は長くなるのが通常なので、消費者に不利なほうを原則にしていると理解すると、向きを覚えやすくなります。
エは「乗換えを要するときは、その旨を明示し、ウの所要時間には乗り換えにおおむね要する時間を含めること」です。乗換えの事実を書くだけでは足りず、乗換時間を所要時間に算入しなければなりません。「乗車時間の合計を表示すれば足りる」とする記述は誤りです。
現に利用できる交通機関であること
施行規則9条5号は「公共交通機関は、現に利用できるものを表示し、特定の時期にのみ利用できるものは、その利用できる時期を明示して表示すること」とし、ただし書で「新設の路線については、路線の新設に係る国土交通大臣の許可処分又はバス会社等との間に成立している協定の内容を明示して表示することができる」としています。季節運行のバスを通年運行のように書くことはできず、新路線は許可処分か協定という具体の裏付けを明示して初めて書けます。
同6号は「新設予定の駅等又はバスの停留所は、当該路線の運行主体が公表したものに限り、その新設予定時期を明示して表示することができる」と定めます。運行主体の公表という客観的な事実が要件で、報道や噂では足りません。「現に利用できるもの」を原則とし、将来のものは客観的な裏付けと予定時期の明示を条件に例外的に許すという構造は、次に見る生活関連施設と共通です。
施設までの距離と「現に利用できるもの」の原則
公共・公益施設は三点セットで表示する
施行規則9条29号は、学校・病院・官公署・公園その他の公共・公益施設について、次の三つを求めています。
アが「現に利用できるものを表示すること」、イが「物件からの道路距離又は徒歩所要時間を明示すること」、ウが「その施設の名称を表示すること」です。ウにはただし書があり、「公立学校及び官公署の場合は、パンフレットを除き、省略することができる」とされています。名称の省略が認められるのは公立学校と官公署だけで、しかもパンフレットでは省略できません。私立学校や病院の名称は省略できず、公立学校であってもパンフレットには名称を書く必要があります。
イが「道路距離又は徒歩所要時間」と選択になっている点にも注意してください。距離を書くか分数を書くかは事業者が選べます。ただし分数を書くなら、それは9条9号の換算を通した数値でなければなりません。
学校だけに追加の限定がかかる
施行規則9条30号は、29号アの「現に利用できるもの」という原則の例外です。
前号アの規定にかかわらず、学校については、学校の設置について必要とされる許可等の処分を受けているもの又は国若しくは地方公共団体が事業決定しているものにあっては、現に利用できるものと併せて表示する場合に限り、その整備予定時期を明示して表示することができる。
――不動産の表示に関する公正競争規約施行規則9条30号
学校の予定を書くには、二段の要件を満たす必要があります。第一に、設置の許可等の処分を受けているか、国または地方公共団体が事業決定していること。第二に、現に利用できる学校と併せて表示すること。この第二の要件があるため、予定の学校だけを単独で載せることはできません。「近くに新設予定の小学校があります」とだけ書いた広告は、既存の学校を併記していない限り規約違反です。
同号の後段は、学校以外の施設について「都市計画法第11条に規定する都市施設であって、同法第20条第1項に規定する告示があったものに限り、その内容を明示して表示することができる」としています。都市計画決定の告示という客観的な段階に達していることが要件です。
商業施設は将来確実なら整備予定時期の明示で足りる
施行規則9条31号は、デパート・スーパーマーケット・コンビニエンスストア・商店等の商業施設について、「現に利用できるものを物件からの道路距離又は徒歩所要時間を明示して表示すること」を原則とし、ただし書で「工事中である等その施設が将来確実に利用できると認められるものにあっては、その整備予定時期を明示して表示することができる」としています。
学校と商業施設で、例外の条件が非対称であることが重要です。商業施設は「将来確実に利用できると認められる」ことと「整備予定時期の明示」で足り、現存施設との併記は求められていません。これに対し学校は、許可等の処分または事業決定という段階要件に加えて、現に利用できるものとの併記まで要求されます。学校のほうが条件が重い、と覚えてください。生活の質に直結する施設ほど、予定の表示に慎重になっているという理解です。
なお施行規則9条28号は、都市計画法29条の開発許可を受けて開発される団地に設置することが当該開発許可の内容となっている公共・公益施設および生活利便施設、または当該団地に地方公共団体が設置に関し事業決定している公共・公益施設について、その整備予定時期を明示して表示できるとしています。29号が「前号の公共・公益施設以外の」と書き出しているのは、この28号の施設を除く趣旨です。
計画と道路は「公表・告示・認可」の段階で線を引く
施設そのものではなく、周辺の計画を書くときの規準が32号と33号です。どちらも「客観的にどの段階まで進んでいるか」で可否を分けています。
32号は、地方公共団体等の地域振興計画・再開発計画・都市計画等の内容について、「当該計画の実施主体者がその整備予定時期を公表したものに限り、表示することができる」とし、書くときは「その整備予定時期及び表示の時点において当該計画が実施手続のどの段階にあるかを明示」することを求めます。整備予定時期を書くだけでは足りず、手続のどこにいるかまで書かせるのがこの号の特徴です。
33号は道路です。国または地方公共団体が新設する道路については道路法18条の規定による告示が行われたもの、高速道路株式会社法1条に規定する株式会社や地方道路公社等が新設する道路については建設について許認可を受けたか、工事実施計画書について認可を受けたものに限り、表示できます。こちらも整備予定時期と手続の段階の明示が要ります。
29号アの「現に利用できるもの」、30号の「許可等の処分または事業決定」、31号の「将来確実に利用できると認められる」、32号の「実施主体者が公表」、33号の「告示または認可」。将来のものを書ける条件は、施設の種類ごとに違う段階に設定されているという点だけ押さえておけば、条件を横に流用する誤り選択肢を切れます。
測るものはすべて道路距離、名称に使える地名だけが直線距離
ここまで見てきた距離は、駅までも、学校までも、スーパーまでも、すべて道路距離です。徒歩分数も道路距離からの換算です。表示基準の世界では、距離といえば道路距離と考えて構いません。
例外が一つだけあります。規約19条の物件の名称の使用基準です。物件の名称に公園や海岸などの名称を用いてよいかどうかは、施行規則の距離規定とは違って直線距離で判定されます。たとえば同条1項3号は、物件が公園・庭園・旧跡その他の施設または海・湖沼・河川の岸もしくは堤防から直線距離で300メートル以内に所在している場合に、これらの名称を用いることができるとしています。測る対象が「歩いて行く距離」ではなく「その地名を名乗るのが妥当か」という別の問題なので、測定方法も変わるわけです。名称基準の数値の一覧と各号の内容は景品表示法と公正競争規約に譲ります。
この記事で押さえるべきは、「行く距離は道路距離、名乗る距離は直線距離」という仕分けが、測定方法という一本の軸で説明できるということです。距離の話が出てきたら、まずどちらの話かを判定してください。
広告に書かれた施設の記載を自分で裏取りする手順は物件調査で扱っています。表示基準は「嘘ではない表示」を保証する仕組みであって、その物件が自分に合うかどうかまでは保証しません。
面積はどう表示されるか
メートル法と、1平方メートル未満の扱い
施行規則9条13号は「面積は、メートル法により表示すること。この場合において1平方メートル未満の数値は、切り捨てて表示することができる」と定めます。
「できる」と書かれている点が決定的に重要です。これは任意規定であって、切り捨てが義務づけられているわけではありません。小数点以下を残して「72.45平方メートル」と表示しても規約違反にはならず、「72平方メートル」と切り捨てて表示することも許される、という意味です。試験では「1平方メートル未満の数値は切り捨てて表示しなければならない」と義務に読み替える誤り選択肢が作られます。条文の語尾が「表示すること」ではなく「表示することができる」であることを、そのまま記憶してください。
また、許されるのは切り捨てであって、切り上げでも四捨五入でもありません。切り上げれば実際より広く見えるため、消費者に有利な方向にだけ丸めを認めた規定だと理解できます。時間は切り上げ、面積は切り捨てという向きの違いは、いずれも「消費者に不利な側に丸める」という一つの発想から出ています。
土地は水平投影面積
施行規則9条14号は「土地の面積は、水平投影面積を表示すること。この場合において、取引する全ての区画の面積を表示すること。ただし、パンフレット等の媒体を除き、最小土地面積及び最大土地面積のみで表示することができる」と定めます。
水平投影面積とは、真上から見て地面に投影した面積です。傾斜地であっても、斜面に沿った実際の表面積ではありません。斜面の表面積は水平投影面積より必ず大きくなりますが、表示されるのは投影面積のほうです。傾斜地を含む土地で、表示面積のわりに使える平坦部分が狭いという現象は、この算定方法の帰結でもあります。「土地の面積は斜面に沿った実際の面積を表示する」という選択肢は誤りです。
後段の「取引する全ての区画の面積を表示すること」も見落とされやすい規律です。分譲宅地で複数区画を売るなら、原則としてすべての区画の面積を出します。最小・最大の二つだけで済ませられるのは、パンフレット等の媒体を除いた場合です。パンフレットには全区画を書かなければなりません。媒体によって要求水準が変わる、という構造です。
なお、前面道路の幅員が4メートルに満たないためにセットバックが必要な土地では、後退部分は敷地面積に算入できず、有効に使える面積が表示面積より小さくなります。この仕組みはセットバックとはで扱っています。
建物は延べ面積、マンションは専有面積
施行規則9条15号は次のように定めます。
建物の面積(マンションにあっては、専有面積)は、延べ面積を表示し、これに車庫、地下室等(地下居室は除く。)の面積を含むときは、その旨及びその面積を表示すること。この場合において、取引する全ての建物の面積を表示すること。
――不動産の表示に関する公正競争規約施行規則9条15号
要素は三つです。第一に、建物の面積は延べ面積であり、マンションについては専有面積を指すこと。第二に、車庫・地下室等の面積を含むときは、その旨とその面積を表示すること。地下居室は括弧書きで除かれているので、地下の居室部分は通常の延べ面積として扱われます。第三に、原則としてすべての建物の面積を表示すること。
ただし書は、新築分譲住宅、新築分譲マンション、一棟リノベーションマンション、新築賃貸マンション、新築賃貸アパート、共有制リゾートクラブ会員権については、パンフレット等の媒体を除き、最小建物面積および最大建物面積のみで表示できるとしています。土地の14号と同じ構造です。
車庫を含むときに「その旨及びその面積」まで書かせているのは、総面積だけを大きく見せることを防ぐためです。延べ面積100平方メートルのうち20平方メートルが車庫であれば、居住部分は80平方メートルです。この内訳を書かせることで、面積の比較可能性を保っています。
バルコニーが専有面積に入らない理由
マンションの広告に「専有面積70.20平方メートル(バルコニー面積12.00平方メートル)」のように、バルコニーが別記されているのを見たことがあると思います。これは表示のスタイルの問題ではなく、バルコニーが専有部分ではないからです。
バルコニーは、その住戸の居住者だけが使えるとしても、法律上は共用部分であり、居住者が持っているのは共用部分の専用使用権にすぎません。共用部分である以上、専有部分の面積である専有面積には入りません。したがって「バルコニー面積を含めて専有面積として表示した」という記述は誤りになります。バルコニーは括弧書きで別に示すか、専用使用権の対象である旨を明示して書くことになります。マンションと戸建てで所有の構造がどう違うかはマンションと戸建ての違いで扱っています。
建築基準法上、一定の要件を満たすバルコニーが床面積に算入されないこととも整合しますが、規約上の理由は「専有部分ではないから」であって、建築基準法の算入ルールが理由ではありません。建築面積・延べ面積の定義そのものと、それを使う建蔽率・容積率の計算は建ぺい率と容積率とはを参照してください。
畳数表示は1畳1.62平方メートル以上
施行規則9条16号は「住宅の居室等の広さを畳数で表示する場合においては、畳1枚当たりの広さは1.62平方メートル(各室の壁心面積を畳数で除した数値)以上の広さがあるという意味で用いること」と定めます。
数字は1.62平方メートルです。これは中京間や江戸間といった実際の畳の寸法ではなく、表示のための下限値です。そして括弧書きが「各室の壁心面積を畳数で除した数値」と、計算方法まで指定しています。壁の中心線で囲んだ面積を畳数で割った値が1.62平方メートル以上でなければ、その畳数を名乗れません。
たとえば壁心面積が9.72平方メートルの部屋を「6畳」と表示するなら、9.72÷6=1.62で、ちょうど下限を満たします。同じ部屋を「6.5畳」と表示すると9.72÷6.5=1.4953…で下限を割るため、この表示はできません。面積が同じでも、名乗る畳数を大きくすると下限を割るという関係です。
なお、DKやLDKの広さについては、規約18条1項3号・4号が「住宅の居室(寝室)数に応じ、その用途に従って使用するために必要な広さ、形状及び機能を有するもの」と定めているだけで、規約本体に畳数の下限はありません。実際の畳数の目安は表示規約実施細則の指導基準として示されており、居室(寝室)が1部屋のときDKは4.5畳・LDKは8畳、2部屋以上のときDKは6畳以上・LDKは10畳以上とされています。規約の定義と実施細則の指導基準は別の層なので、根拠を問う問題では層を取り違えないようにしてください。
採光要件を満たさない部屋は「納戸」
施行規則9条17号は、採光および換気のための窓その他の開口部の面積の当該室の床面積に対する割合が建築基準法28条の規定に適合していないため、同法において居室と認められない納戸その他の部分については、その旨を「納戸」等と表示することを求めています。
建築基準法28条1項は、住宅等の居室には採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積を居室の床面積に対して「5分の1から10分の1までの間において居室の種類に応じ政令で定める割合」以上とすることを求めています。住宅の居住のための居室について政令が定める割合は、建築基準法施行令19条3項により7分の1です(国土交通大臣が定める基準に従って照明設備の設置等の措置が講じられているものは、10分の1までの範囲で別に定める割合になります)。同条2項は換気について、開口部の面積を居室の床面積の20分の1以上とすることを求めています。
間取り図の「納戸」「サービスルーム」「S」「フリールーム」といった表記は、この17号によるものです。面積が広くても、採光の開口部が足りなければ居室と表示できません。逆にいえば、居室として数えられていない部屋があるとき、その理由は多くの場合ここにあります。
地目は登記簿のものを表示し、現況が違えば併記
施行規則9条19号は「地目は、登記簿に記載されているものを表示すること。この場合において、現況の地目と異なるときは、現況の地目を併記すること」と定めます。
登記簿の地目が原則で、現況が異なるときは併記です。現況だけを書くことも、登記簿だけを書くこともできません。登記簿上は「田」や「畑」のままで、実際には宅地として使われている土地は珍しくなく、この場合は両方を書きます。登記記録の見方は不動産登記簿の読み方で扱っています。
写真・設備・工事歴をどう書くか
施行規則9条は数字だけを縛っているわけではありません。18号と20号から27号は、写真・部材の性能・工事歴・設備という、数値化できない情報の書き方を定めています。ここまで見てきた距離・面積・価格が「同じ物差しで測らせる」規定だったのに対し、この一群は「都合のよい部分だけを見せることを封じる」規定としてまとまっています。
写真と動画は「取引するもの」が原則
施行規則9条22号は「宅地又は建物の写真又は動画は、取引するものを表示すること」を原則とします。売る建物の写真を載せる、という当たり前の要求です。
例外が認められるのは、「取引する建物が建築工事の完了前である等その建物の写真又は動画を用いることができない事情がある場合」です。この場合でも、使えるのは「取引する建物を施工する者が過去に施工した建物」に限られ、さらに次の二類型のいずれかでなければなりません。
アは建物の外観で、「取引する建物と構造、階数、仕様が同一であって、規模、形状、色等が類似するもの」です。同一が要求される要素と類似で足りる要素が分かれている点が要注意で、構造・階数・仕様は同一でなければなりません。しかもただし書があり、「当該写真又は動画を大きく掲載するなど、取引する建物であると誤認されるおそれのある表示をしてはならない」とされています。要件を満たしても、載せ方によっては違反になります。
イは建物の内部で、「写される部分の規模、仕様、形状等が同一のもの」です。外観と違い、こちらは類似では足りず同一が要求されます。
そして例外を使うときは、「当該写真又は動画が他の建物である旨」と、アに該当する場合は「取引する建物と異なる部位」を明示します。明示の場所まで指定されていて、写真の場合は写真に接する位置、動画の場合は画像中です。離れた場所の注記では足りません。
同23号は、コンピュータグラフィックス・見取図・完成図・完成予想図について、「その旨を明示して用い、当該物件の周囲の状況について表示するときは、現況に反する表示をしないこと」と定めます。完成予想図に「完成予想図」と書かせるのが前段、隣地に実在しない緑地や、実在する建物を消した絵を描かせないのが後段です。22号が「本物かどうか」、23号が「絵であることと、絵の中の周囲が現実と合っているか」を規律しています。
部材の性能と、建築材料の強調表示
施行規則9条18号は、遮音・断熱等を目的とした建築部材自体の性能を表示する場合について定めます。「実際の住宅内における遮音、断熱性能等がその構造等から当該部材自体の性能とは異なる可能性がある場合には、その旨を表示すること」。
部材単体を実験室で測った数値と、その部材を組み込んだ住宅で体感される性能は一致しません。数値そのものを禁じるのではなく、一致しない可能性があることを書かせるという手当てをした規定です。
同20号は「宅地の造成材料又は建物の建築材料について、これを強調して表示するときは、その材料が使用されている部位を明示すること」と定めます。「総○○造」のように読める書き方で、実際は一部にしか使っていない、という誤認を防ぐ規定です。強調しなければ部位の明示は要りません。強調したときにだけ追加の負担が生じるという建て付けです。
増築・改築・改装・改修は内容と時期を明示
施行規則9条21号は「建物を増築、改築、改装又は改修したことを表示する場合は、その内容及び時期を明示すること」と定めます。
「リフォーム済」とだけ書くことは認められません。何をしたか(内容)と、いつしたか(時期)の二つが要ります。10年前に壁紙だけ替えたのか、昨年に水回りを全面更新したのかで、買主の評価はまったく変わるからです。
この21号は、施行規則3条11号の一棟リノベーションマンションとセットで理解すると位置づけが見えます。11号は改装・改修を経た物件に「工事完了後1年未満かつ未居住」という新築と同形の枠を与える規定で、21号は個別の工事歴を書くときの規準です。枠を与えるのが3条、書き方を縛るのが9条21号という分担です。
上水道・ガス・温泉・共用施設
規約15条9号「設備・施設等」を受ける施行規則9条24号から27号は、いずれも種別や条件を割った書き方を求めます。
24号は上水道(給水)について、「公営水道、私営水道又は井戸の別」を表示させます。「上水道あり」では足りず、三つのどれかを書きます。
25号はガスについて、「都市ガス又はプロパンガスの別」を明示させます。24号が「別を表示すること」、25号が「別を明示して表示すること」と、いずれも上位概念で済ませることを許さない書き方をしている点が共通しています。
26号は温泉法による温泉で、四つの事項を明示させます。加温したものはその旨、加水したものはその旨、温泉源から採取した温泉を給湯管によらずに供給する場合(運び湯の場合)はその旨、共同浴場を設置する場合において循環装置又は循環ろ過装置を使用する場合はその旨です。四つとも、源泉をそのまま供給・利用しているわけではないことを開示させる方向で揃っています。温泉と書けるかどうかを争わせるのではなく、どう供給し、どう使っているかを書かせるという規準の立て方です。
27号は、団地内または物件内のプール、テニスコート、スポーツジム、シアタールーム等の共用施設について、「それらの施設の内容、運営主体、利用条件及び整備予定時期を明示すること」を求めます。四点セットです。運営主体と利用条件が入っているのは、施設が存在しても管理組合が運営していない、あるいは別料金や会員制で自由に使えない、という食い違いを防ぐためです。「あるかどうか」ではなく「使えるかどうか」を書かせるという点で、生活関連施設の「現に利用できるもの」の原則と同じ発想に立っています。
広告の面積と登記の面積がずれると何が起きるか
ずれは規約の側から生じている
壁心と内法という測り方の定義そのもの、および不動産登記規則115条と区分所有法14条3項の条文は、不動産用語辞典とマンションと戸建ての違いが本体として扱っています。ここで見るのは、その先にある問いです。すなわち、表示規約の側はどちらの測り方を前提にしているのか、という点です。
規約は「専有面積は壁心で表示せよ」と正面から書いてはいません。にもかかわらず壁心が前提であることは、条文から二重に読み取れます。
第一に、施行規則9条16号です。畳数表示の下限が「各室の壁心面積を畳数で除した数値」と定められている以上、規約は住戸の面積を壁心で捉えています。第二に、同15号が建物の面積を「延べ面積」と呼んでいることです。延べ面積は建築基準法の用語で、建築基準法施行令2条1項4号が「建築物の各階の床面積の合計による」とし、同項3号が床面積を「建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による」と定めています。規約が借りてきた語の中身が、そもそも壁心なのです。
一方、登記記録上の区分建物の床面積は内法です。規約は壁心を前提とし、登記は内法を採る。どちらかが間違っているのではなく、二つの制度が別々の目的で別々の測り方を選んだ結果です。ただし数値は一致せず、中心線で囲んだ面積のほうが内側線で囲んだ面積より必ず大きくなるため、広告の専有面積は登記の床面積より大きく出ます。
税制の床面積要件は登記面積で判定される
この数パーセントが実害になるのは、税制の床面積要件を判定する場面です。
住宅ローン控除は、租税特別措置法41条とその施行令が床面積の下限を定めており、判定に使うのは登記事項証明書に表示されている床面積です。マンションについては専有部分の床面積、すなわち内法で判定します。広告に「専有面積50.5平方メートル」と書かれていても、登記事項証明書の床面積が下限を割ることがあり、その場合は要件を満たしません。具体的な面積要件と特例の範囲は住宅ローン控除を参照してください。
不動産取得税の住宅の課税標準の特例も、固定資産税の新築住宅の減額措置も、同じように床面積で判定されます。いずれも2026年4月1日施行の改正で要件が動いており、現在は40平方メートル以上240平方メートル以下という同一の範囲に揃っています。それぞれの根拠条文と細かい取扱いは不動産取得税と固定資産税で扱っています。
表示基準が保証しているのは「嘘ではないこと」だけ
表示規約に完全に適合した広告であっても、その物件が税制上の優遇を受けられることまでは保証しません。規約は、専有面積を壁心で表示することを禁じていません。壁心で計算した数値を正確に書いている限り、その表示は適法です。一方、税法は登記面積で判定します。二つの制度が別々の測り方を採用しているために、適法な表示を信じたまま要件を外す、という事態が起こりえます。
同じ構造は、面積以外にも現れます。徒歩分数は換算値であって実測値ではなく、着点は改札口ではなく出入口です。地目は登記簿のものが原則で、現況はあくまで併記です。表示基準は「どの数値を、どの測り方で書くか」を統一して比較可能性を確保する仕組みであって、その数値が読み手の目的にとって有用であることまでは引き受けていません。広告の数値は表示規約の規準に従った数値、税の判定に使う数値は登記記録の数値、というように、数値ごとにどの制度の規準で作られたものかを確認するのが、この分野の実務的な作法になります。
「新築」と名乗れるのはどこまでか
規約18条1項1号の全文
表示規約18条1項は「事業者は、次に掲げる用語又はこれらの用語に類する用語を用いて表示するときは、それぞれ当該各号に定める意義に即して使用しなければならない」という柱書のもとに、六つの用語を定義しています。その1号が「新築」です。
新築 建築工事完了後1年未満であって、居住の用に供されたことがないものをいう。
――不動産の表示に関する公正競争規約18条1項1号
要件は二つで、「であって」で並列されています。第一に建築工事完了後1年未満であること、第二に居住の用に供されたことがないこと。両方を満たして初めて「新築」です。片方だけでは足りません。
したがって、建築工事完了後6か月で誰も住んでいなければ新築、建築工事完了後6か月でも一度誰かが住んでいれば新築ではない、建築工事完了後13か月で誰も住んでいなくても新築ではない、という判定になります。試験では、二要件のうち一方を落として「建築後1年未満であれば新築と表示できる」とする選択肢や、接続詞を「又は」に変えて「1年未満であるか、又は居住の用に供されたことがないもの」とする選択肢が作られます。「であって」は「かつ」だと読み替えて処理してください。
起算点は「建築工事完了後」であり、その意味は同項6号にある
「建築工事完了後1年未満」の起算点は、契約日でも、引渡日でも、登記の日でもありません。建築工事が完了した時点です。
そして「建物の建築工事の完了」が何を指すかは、同じ規約18条1項の6号が定義しています。
建物の建築工事の完了 建物をその用途に従い直ちに使用することができる状態に至ったことをいう。
――不動産の表示に関する公正競争規約18条1項6号
用途に従って直ちに使用できる状態に至ったことが完了です。したがって、内装が終わっていない段階や、設備が未接続で使用できない段階は、まだ完了していません。逆に、使用できる状態に至っていれば、引渡しや登記がまだでも起算は始まっています。
なお、宅地についても同項5号が「宅地の造成工事の完了」を定義しており、「宅地上に建物を直ちに建築することができる状態に至ったことをいい、当該工事の完了に際し、都市計画法その他の法令による工事の完了の検査を受けることが必要とされるときは、その検査に合格したことをいう」としています。建物のほうには検査合格の要件がなく、宅地のほうには法令上必要な場合に検査合格が要件として付くという非対称があります。建築確認と完了検査・検査済証の関係そのものは建築確認で扱っています。
「未使用」ではなく「居住の用に供されたことがない」
第2要件の文言も、正確に読む必要があります。条文は「居住の用に供されたことがない」と書いており、「未使用」とは書いていません。
この違いが効くのは、居住以外の用途で使われた建物です。完成した住宅を一時的にモデルルームや事務所として使い、誰も住んでいない場合、それは「未使用」ではありませんが「居住の用に供されたことがない」には当たります。建築工事完了後1年未満であれば、規約の文言上は新築と表示しうることになります。
実務やテキストでは「新築=建築後1年未満かつ未使用」と要約されることが多く、この要約は通称としては通用しますが、条文の文言そのものではありません。「未使用」という要約に引きずられると、居住以外の使用があった場合の処理を誤ります。試験対策としては、条文の文言で覚え、要約は要約として扱うのが安全です。
中古の定義は「または」で結ばれている
新築の裏返しに当たるのが、施行規則3条の物件種別です。同条7号は「中古住宅 建築後1年以上経過し、又は居住の用に供されたことがある一戸建て住宅であって、売買するものをいう」と定めます。10号の中古マンションも「建築後1年以上経過し、又は居住の用に供されたことがあるマンションであって、住戸ごとに、売買するものをいう」と同じ形です。13号の中古賃貸マンション、16号の中古賃貸アパートも同様です。
新築が「かつ」で結ばれているのに対し、中古は「または」で結ばれています。論理的にはこれで正しく裏返しになります。新築の二要件のどちらか一方でも欠ければ、もう一方の枠、すなわち中古に入るからです。試験では「中古住宅とは、建築後1年以上経過し、かつ居住の用に供されたことがある住宅をいう」と接続詞を差し替える誤り選択肢が作られます。新築は「かつ」、中古は「または」という対比で覚えてください。
なお、施行規則3条は「建築後」という語を使い、規約18条1項1号は「建築工事完了後」という語を使っています。前者は起算点の定義を置いていないため、実務上は後者の「建物の建築工事の完了」の定義に従って読むことになります。
未入居物件の位置づけ
完成から1年を超えたが誰も住んでいない住宅は、規約上は新築と表示できません。かといって、居住の用に供されたことはないので、実態としては新品です。実務でこうした物件を「未入居」「新古」などと呼ぶのは、規約上の「新築」を名乗れないが、居住歴がないことは伝えたいという要請から生まれた表現です。
規約は「未入居」という語を定義していません。したがってこの語自体は規約18条1項の統制の外にありますが、居住歴がないという内容が事実に反すれば、それは不当表示の問題になります。規約が定義している語かどうかで、統制のかかり方が変わるという点を押さえておいてください。
法令ごとに違う「新築」という言葉
同じ語が制度ごとに別の定義を持つ
「新築」は、宅建の学習範囲だけでも四つの異なる意味で登場します。どの制度の話かを先に確定させないと、定義を取り違えます。ここでは条文の文言を並べて比較します。
表示規約の「新築」
すでに見たとおり、規約18条1項1号は「建築工事完了後1年未満であって、居住の用に供されたことがないもの」です。広告表示のための定義であり、この定義に当たらない建物を「新築」と表示すれば規約違反になります。効果は表示の可否です。
品確法・住宅瑕疵担保履行法の「新築住宅」
住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)2条2項は次のように定めます。
この法律において「新築住宅」とは、新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して1年を経過したものを除く。)をいう。
――住宅の品質確保の促進等に関する法律2条2項
表示規約と要素は似ていますが、書き方の順序が逆です。規約は「1年未満であって、居住の用に供されたことがない」と二つを並列させています。品確法は「まだ人の居住の用に供したことのないもの」を本体とし、括弧書きで「建設工事の完了の日から起算して1年を経過したものを除く」と除外する形をとっています。結果として範囲はほぼ同じですが、条文の構造が違うため、条文の穴埋めや文言を差し替える出題では区別が必要です。
起算点の語も違います。規約が「建築工事完了後」であるのに対し、品確法は「建設工事の完了の日から起算して」です。
特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)2条1項は「この法律において『住宅』とは住宅品質確保法第2条第1項に規定する住宅をいい、『新築住宅』とは同条第2項に規定する新築住宅をいう」と定め、品確法の定義をそのまま借りています。品確法と履行確保法の「新築住宅」は同一の定義です。効果は、10年間の瑕疵担保責任(品確法94条・95条)と、その責任を履行するための資力確保義務です。資力確保の仕組みは住宅瑕疵担保履行法で、新築と中古で買主の保護がどう変わるかは中古住宅の瑕疵と契約不適合で扱っています。
建築基準法の「新築」
建築基準法2条13号は「建築 建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転することをいう」と定めます。ここでの「新築」は、増築・改築・移転と並ぶ工事の類型であり、建物の新しさを表す語ではありません。
したがって建築基準法の文脈で「新築に該当するか」と問われているときは、居住歴も経過年数も関係がなく、更地に建物を建てる行為なのか、既存建物に付け足す行為なのかという工事の性質が問題になっています。表示規約の新築とは、そもそも問いの立て方が違います。
税法上の「新築住宅」
税法では、不動産取得税の課税標準の特例や固定資産税の減額措置の対象として「新築住宅」という語が使われます。ここでの判定軸は、その住宅が新築されたものであることと、床面積の要件、そして減額の場合は新築後の経過年数です。居住歴の有無を正面から問う定義にはなっていません。
つまり同じ「新築住宅」でも、品確法は居住歴と1年、税法は新築という取得の形態と床面積を見ています。要件が重なる部分はありますが、判定軸が違います。
読み方の手順
四つを並べると、次のような整理になります。
表示規約の新築は「広告でその語を使ってよいか」を決める定義で、二要件は「建築工事完了後1年未満」と「居住の用に供されたことがない」。品確法・履行確保法の新築住宅は「10年の瑕疵担保責任と資力確保義務がかかるか」を決める定義で、「人の居住の用に供したことがない」を本体に、「建設工事の完了の日から1年経過」を除外事由とする。建築基準法の新築は工事の類型で、増築・改築・移転との対比。税法の新築住宅は課税上の取扱いを決める枠で、床面積等の要件が別に付く。
問題文を読むときは、最初に「これはどの制度の話か」を確定させてから定義を思い出すという順序を守ってください。定義を先に思い出すと、別の制度の定義を当てはめてしまいます。
定義用語と物件種別が表示事項を決める
規約18条1項が定義する六つの用語
規約18条1項は、新築を含めて六つの用語を定義しています。1号が新築、2号が新発売、3号がダイニング・キッチン(DK)、4号がリビング・ダイニング・キッチン(LDK)、5号が宅地の造成工事の完了、6号が建物の建築工事の完了です。
この六つは「規約が定義を置いている語」というひとまとまりとして覚えるのが効率的です。語ごとに個別に暗記するより、「規約18条1項に定義がある語は六つで、その1号が新築」という形で持っておくと、条文の位置から引き出せます。
2号の「新発売」は次のとおりです。
新発売 新たに造成された宅地、新築の住宅(造成工事又は建築工事完了前のものを含む。)又は一棟リノベーションマンションについて、一般消費者に対し、初めて購入の申込みの勧誘を行うこと(一団の宅地又は建物を数期に区分して販売する場合は、期ごとの勧誘)をいい、その申込みを受けるに際して一定の期間を設ける場合においては、その期間内における勧誘をいう。
――不動産の表示に関する公正競争規約18条1項2号
括弧書きの「期ごとの勧誘」が要点です。一団の物件を数期に分けて販売する場合、各期について「新発売」と表示できます。第2期、第3期でも、その期にとって初めての勧誘であれば新発売です。「一つの物件について新発売と表示できるのは一度限りである」という記述は誤りになります。また、造成工事や建築工事の完了前でも新発売と表示できる点も、括弧書きが明示しています。
3号のDKは「台所と食堂の機能が1室に併存している部屋」、4号のLDKは「居間と台所と食堂の機能が1室に併存する部屋」で、いずれも「住宅の居室(寝室)数に応じ、その用途に従って使用するために必要な広さ、形状及び機能を有するもの」という限定が付きます。機能が併存していることに加えて、寝室数に見合った広さ・形状・機能が要るという二段構えです。前述のとおり、具体的な畳数の下限は規約本体ではなく実施細則の指導基準にあります。
5号と6号の工事完了の定義は前節で見たとおりです。これらは単なる用語説明ではなく、広告表示の開始時期や「新築」の起算点を決める前提として機能します。
なお、規約18条2項は、同じ条にありながら性格がまったく違います。「最高」「格安」「完全」「日本一」「特選」「完売」といった用語について、合理的な根拠資料を要求し、一部については根拠となる事実の併記まで求める規定です。こちらはおとり広告と二重価格表示が本体として扱います。18条は1項が定義、2項が使用制限という二層構造だとだけ押さえてください。
施行規則3条の物件種別が表示事項を決める
表示基準と並んで、広告の中身を決めているのが物件の種別です。施行規則3条は、規約8条にいう必要な表示事項を定めるための区分として、19の種別を定義しています。
1号が分譲宅地、2号が現況有姿分譲地、3号が売地、4号が貸地、5号が新築分譲住宅、6号が新築住宅、7号が中古住宅、8号がマンション、9号が新築分譲マンション、10号が中古マンション、11号が一棟リノベーションマンション、12号が新築賃貸マンション、13号が中古賃貸マンション、14号が貸家、15号が新築賃貸アパート、16号が中古賃貸アパート、17号が一棟売りマンション・アパート、18号が小規模団地、19号が共有制リゾートクラブ会員権です。
そして施行規則4条1項が「規約第8条に規定する必要な表示事項は、前条に掲げる区分による物件の種別ごとに、それぞれの種別に対応する別表1から別表10の表示媒体欄に『○』及び『●』の記号を付した事項とする」と定めています。
つまり、種別が決まると別表が決まり、別表が決まると書くべき事項が決まる、という連動構造です。同じ「面積」でも、分譲宅地と新築分譲マンションでは要求される表示が違います。表示基準(施行規則9条)が「書くならこう書け」を定めるのに対し、種別と別表は「何を書かなければならないか」を定めます。二つは別の規律なので、混同しないでください。
種別の定義には、覚えておくと役立つものがいくつかあります。8号の「マンション」は「鉄筋コンクリート造りその他堅固な建物であって、一棟の建物が、共用部分を除き、構造上、数個の部分に区画され、各部分がそれぞれ独立して居住の用に供されるもの」で、堅固な建物であることが要素です。15号の「新築賃貸アパート」が「マンション以外の新築の建物」と定義されているのは、この裏返しです。18号の「小規模団地」は「販売区画数又は販売戸数が2以上10未満のもの」と定義されており、施行規則4条1項ただし書がこの小規模団地について表示事項を一部軽減しています。
11号の「一棟リノベーションマンション」は、2022年9月1日施行の変更で加わった比較的新しい種別です。「共同住宅等の1棟の建物全体(内装、外装を含む。)を改装又は改修し、マンションとして住戸ごとに取引するものであって、当該工事完了前のもの、若しくは当該工事完了後1年未満のもので、かつ、当該工事完了後居住の用に供されていないものをいう」と定義されています。新築の二要件と同じ形が、改装工事の完了を基準に用意されている点が特徴です。中古マンションを一棟丸ごと改修して分譲する取引形態に、新築に準じた枠を与えたものと理解できます。
価格と賃料の表示
土地の価格には造成費を含める
施行規則9条34号は「土地の価格については、上下水道施設・都市ガス供給施設の設置のための費用その他宅地造成に係る費用(これらの費用に消費税及び地方消費税が課されるときは、その額を含む。)を含めて表示すること」と定めます。
上下水道やガスの引込費用、造成費用を別途請求する前提で、それらを除いた価格だけを表示することはできません。購入者が最終的に負担する造成関係の費用は、表示価格に織り込むというのが原則です。
同35号は「土地の価格については、1区画当たりの価格を表示すること。ただし、1区画当たりの土地面積を明らかにし、これを基礎として算出する場合に限り、1平方メートル当たりの価格で表示することができる」としています。原則は1区画当たり、単価表示は面積を明らかにした場合の例外です。広告価格と公示価格などの公的価格の関係は土地の価格はどう決まるで扱っています。
分譲宅地の価格は原則全区画、例外で三点表示
同36号は、35号の場合において「取引する全ての区画の価格を表示すること」を原則とし、ただし書で次のように定めます。
ただし、分譲宅地の価格については、パンフレット等の媒体を除き、1区画当たりの最低価格、最高価格及び最多価格帯並びにその価格帯に属する販売区画数のみで表示することができる。また、この場合において、販売区画数が10未満であるときは、最多価格帯の表示を省略することができる。
――不動産の表示に関する公正競争規約施行規則9条36号
三点セットは「最低価格・最高価格・最多価格帯」で、最多価格帯にはそれに属する販売区画数を添えます。この省略はパンフレット等の媒体では使えません。そして販売区画数が10未満のときだけ、最多価格帯を省略できます。最低価格と最高価格は省略できません。
現況有姿分譲地だけは、別の建て付けになります。同37号は「現況有姿分譲地の価格については、分割可能最小面積を明示して、1平方メートル当たりの価格を表示すること」とし、「1平方メートル当たりの価格が異なる土地があるときは、それぞれの面積を明示して、最低価格及び最高価格を表示すること」としています。35号が原則を1区画当たりとし、単価表示を例外に回しているのと逆向きです。現況有姿分譲地は、施行規則3条2号が「主として一団の土地を一定面積以上の区画に区分けして売買する山林、原野等の土地」と定める種別で、区画の面積が一律ではありません。そのため1区画当たりの価格を並べても比較になりません。そこで単価で示させ、あわせて「分割可能最小面積」を明示させることで、単価に最小面積を掛ければ最低いくら必要かが分かるようにしています。単価表示が原則なのは19種別のうち現況有姿分譲地だけです。
「最多価格帯」の定義は規約4条6項7号にあり、「売買に係る物件の価格を100万円刻みでみたときに最も物件数が多い価格帯又は価格が著しく高額である等これによることが適当でないと認められる場合において、任意に区分した価格帯でみたときに物件数が最も多い価格帯」をいいます。原則は100万円刻みで、高額物件などで100万円刻みが適当でない場合に限り、任意の刻み幅が認められます。
住宅の価格は1戸当たりで、消費税等を含む
同38号は「住宅(マンションにあっては、住戸)の価格については、1戸当たりの価格(敷地の価格(当該敷地が借地であるときは、その借地権の価格)及び建物(電気、上下水道及び都市ガス供給施設のための費用等を含む。)に係る消費税等の額を含む。)を表示すること」と定めます。
1戸当たりの総額表示であり、その中に敷地の価格と、建物にかかる消費税等が含まれます。土地の譲渡は消費税が非課税ですが、建物の譲渡には課税されます。したがって建売住宅の表示価格には、建物部分の消費税が入っていることになります。「建物価格は税抜きで表示し、消費税は別途と記載すればよい」という処理は、この規定に反します。
同39号は、38号の場合において「取引する全ての住戸の価格を表示すること」を原則とし、新築分譲住宅・新築分譲マンション・一棟リノベーションマンションについては、パンフレット等の媒体を除き1戸当たりの最低価格・最高価格・最多価格帯およびその価格帯に属する住宅または住戸の戸数のみで表示できるとし、販売戸数が10戸未満であるときは最多価格帯の表示を省略できるとしています。
36号が「販売区画数が10未満」、39号が「販売戸数が10戸未満」で、対象が区画か戸かの違いだけで数字は同じ10です。片方だけを覚えて他方に別の数字を当てる誤り選択肢に注意してください。
賃料は1か月当たり、管理費・共益費は別に表示
賃貸物件の表示は、売買と構造が似ていますが、細部が違います。
施行規則9条40号は「賃貸される住宅(マンション又はアパートにあっては、住戸)の賃料については、取引する全ての住戸の1か月当たりの賃料を表示すること。ただし、新築賃貸マンション又は新築賃貸アパートの賃料については、パンフレット等の媒体を除き、1住戸当たりの最低賃料及び最高賃料のみで表示することができる」と定めます。
単位は1か月当たりです。年額でも、日割りでもありません。そして例外表示は「最低賃料及び最高賃料」の二点だけで、売買のような最多価格帯は出てきません。さらに、この例外が使えるのは新築賃貸マンションまたは新築賃貸アパートに限られます。中古賃貸マンションや貸家には使えません。売買の三点表示と混同しないでください。
同41号は管理費について、「マンションの事務を処理し、設備その他共用部分の維持及び管理をするために必要とされる費用をいい、共用部分の公租公課等を含み、修繕積立金を含まない」と定義したうえで、「1戸当たりの月額(予定額であるときは、その旨)を表示すること」を求めます。ただし、住戸により額が異なる場合において全ての住宅の管理費を示すことが困難であるときは、最低額および最高額のみで表示できます。
同42号は共益費について、「借家人が共同して使用又は利用する設備又は施設の運営及び維持に関する費用」と定義し、同じく1戸当たりの月額を表示することを求めます。同43号は修繕積立金について、同じ形で1戸当たりの月額の表示を求めています。
管理費・共益費・修繕積立金は、いずれも賃料や価格とは別に、1戸当たりの月額として表示します。賃料に含めて一本の数字にすることはできません。定義の面では、管理費は修繕積立金を含まないことが41号の括弧書きで明記されており、両者が別の費目であることが条文上確定しています。予定額であるときはその旨を明示する必要がある点も三つに共通しています。
賃貸借契約で賃料以外に授受される敷金・礼金の法的性質は敷金と礼金で、広告の条件を契約書でどう確認するかは賃貸借契約の注意点で扱っています。貸借の媒介報酬の上限は仲介手数料の上限を参照してください。
住宅ローン・割賦販売・利回り
施行規則9条44号は住宅ローンについて、「銀行その他の金融機関が行う物件の購入資金及びこれらの購入に付帯して必要とされる費用に係る金銭の貸借」と定義したうえで、次の事項を明示することを求めます。
アが「金融機関の名称若しくは商号又は都市銀行、地方銀行、信用金庫等の種類」、イが「借入金の利率及び利息を徴する方式(固定金利型、固定金利指定型、変動金利型、上限金利付変動金利型等の種別)又は返済例」です。イの括弧書きは、返済例を示す場合には「借入金、返済期間、利率等の返済例に係る前提条件を併記すること」と、「ボーナス併用払のときは、1か月当たりの返済額の表示に続けて、ボーナス時に加算される返済額を明示すること」を求めています。月額だけを大きく見せてボーナス加算を隠すことができないようにした規定です。
同45号は割賦販売について、「代金の全部又は一部について、不動産の引渡後1年以上の期間にわたり、かつ、2回以上に分割して受領することを条件として販売すること」と定義し、割賦販売である旨、割賦限度額、利息の料率(実質年率)、支払期間および回数、信用調査費その他の費用を必要とするときはその旨およびその額の明示を求めます。引渡後1年以上かつ2回以上という二要件が定義の核です。
同46号は「利回り」について、「当該物件の1年間の予定賃料収入の当該物件の取得対価に対する割合であるという意味で用い」ることとし、その旨、予定賃料収入が確実に得られることを保証するものではない旨、公租公課その他当該物件を維持するために必要な費用の控除前のものである旨の三つを明示することを求めます。表面利回りを実質利回りのように見せることを防ぐ規定です。
取引態様は用語を指定して表示する
最後に、施行規則9条1号に戻ります。「取引態様は、『売主』、『貸主』、『代理』又は『媒介』(『仲介』)の別をこれらの用語を用いて表示すること」と定められています。
用語が指定されている点が要点です。「販売」「取扱い」「ご紹介」といった言い換えは認められません。括弧書きで「仲介」が併記されているのは、媒介の代わりに仲介という語を使ってよいという意味です。宅建業法34条が定める取引態様の明示義務と目的は重なりますが、根拠も、明示すべき時期も、違反したときの効果も別系統です。業法側の詳細は取引態様の明示義務を参照してください。
同2号は物件の所在地について、「都道府県、郡、市区町村、町又は字及び地番(別表3、別表5、別表7及び別表9における地番を除く。)を表示すること」を原則とし、「ただし、パンフレット等を除き都道府県及び郡は省略することができる」としています。ここでもパンフレットだけ要求水準が高いという構造が繰り返されています。
括弧書きが除いている別表3・別表5・別表7・別表9は、売地・貸地や中古住宅、中古マンション、貸家、一棟売りマンションなど、いずれも単一の物件を扱う別表です。これらでは地番まで書く必要がありません。逆に、分譲宅地や新築分譲住宅のように複数区画・複数戸を扱う別表では地番が要ります。また同号は末尾で「別表8においては、住居表示により表示することができる」としており、新築賃貸マンション・新築賃貸アパート(賃貸戸数が1戸のものを除く)については地番に代えて住居表示で足ります。同じ「所在地」でも要求水準が物件の種別によって変わるという、前に見た種別と別表の連動構造が、ここでも働いています。
試験での出題ポイント
端数処理を差し替える型
最も多いのが、施行規則9条9号の「1分未満の端数が生じたときは、1分として算出する」を、切り捨てや四捨五入に差し替える型です。条文が「1分として算出する」と書いていることを直接思い出すのが最短の切り方です。あわせて、面積の13号は「1平方メートル未満の数値は、切り捨てて表示することができる」なので、時間は必ず切り上げ、面積は切り捨てが任意という二段の違いを持っておいてください。「面積は1平方メートル未満を切り捨てて表示しなければならない」は、任意を義務に変えた誤りです。
換算を他の手段に及ぼす型
「自動車による所要時間は道路距離◯メートルにつき1分として算出する」という選択肢は、80メートル1分という換算を徒歩以外に広げたものです。10号も11号も「走行に通常要する時間」としか書いていません。換算率が出てきた時点で、対象が徒歩かどうかを確認してください。
起点・着点をずらす型
着点を「改札口」とする型、起点を「すべての物件について建物の出入口」とする型、逆に「すべての物件について敷地のうち最も近い地点」とする型の三方向があります。着点は出入口、起点は原則が敷地の最も近い地点でマンションとアパートだけが建物の出入口という原則・例外の構造を、そのまま保持してください。着点の括弧書き「施設の利用時間内において常時利用できるものに限る」を落とす型も出ます。
団地の最遠区画を落とす型
「団地については、駅から最も近い区画を起点として算出した数値を表示すれば足りる」という型です。8号は最も近い区画からの数値と最も遠い区画からの数値の両方を求めています。「それぞれの施設ごとに」という文言も落とされやすいところです。
電車の所要時間の主従を逆にする型
「平常時の所要時間を明示し、朝の通勤ラッシュ時の所要時間を併記することができる」という型です。4号ウは原則がラッシュ時で、平常時が併記です。乗換時間を所要時間に含める(同エ)ことを落とす型も同時に出ます。
面積の測り方を変える型
土地の面積を「斜面に沿った実際の面積」とする型(14号は水平投影面積)、バルコニーを専有面積に含めるとする型、畳数の基準を1.62平方メートル以外の数値にする型、車庫を含むときにその旨と面積を表示しなくてよいとする型(15号は表示を要求)があります。面積の話が出たら、まず何の面積かを確定させてください。
新築の要件を崩す型
二要件のうち一方を落とす型、「であって」を「又は」に変える型、起算点を引渡日や契約日にする型、中古の定義の「又は」を「かつ」に変える型があります。規約18条1項6号が建築工事の完了を「建物をその用途に従い直ちに使用することができる状態に至ったこと」と定義していることまで押さえておけば、起算点をずらす選択肢も切れます。
施設の表示で例外条件を緩める型
「工事中の学校であっても、整備予定時期を明示すれば表示できる」という型が典型です。学校には「現に利用できるものと併せて表示する場合に限り」という追加の限定があります。逆に商業施設についてこの併記要件を持ち込む型もあるので、学校が重く、商業施設が軽いという非対称の向きを覚えてください。
写真の例外要件を緩める型
「建築工事完了前で写真が用意できないときは、他の建物の外観写真を用いることができる」という型です。22号は、他の建物であればよいのではなく、取引する建物を施工する者が過去に施工した建物であることを要求しています。加えて、外観は構造・階数・仕様が同一であること、内部は写される部分が同一であること、他の建物である旨を写真に接する位置に明示することまで求められます。「同一」と「類似」を入れ替える型も出ます。
価格・賃料の例外を混ぜる型
最多価格帯の省略要件を「10戸以上」とする型、100万円刻みを別の刻み幅にする型、パンフレット等でも三点表示ができるとする型、賃料の例外表示に最多賃料帯を持ち込む型があります。賃料の例外は最低賃料と最高賃料の二点だけで、対象は新築賃貸マンション・新築賃貸アパートに限られます。
出題枠の中での位置づけ
これらはいずれも問47の枠で問われます。問46から50までという5問免除科目の中で問47がどういう位置にあるか、直前期にどの順で仕上げるかは問46〜50の攻略で扱っています。選択肢がどう作られるかという類型化そのものは引っかけ表現のパターンを参照してください。
覚え方・整理の仕方
四つの問いに分解して復元する
表示基準のうち数値に関する部分は、暗記量が多いように見えて、実は四つの問いに対する答えの組み合わせです。
何を測るか。距離なのか、時間なのか、面積なのか、価格なのか。
どう測るか。距離なら道路距離か直線距離か。時間なら換算か実測か。面積なら水平投影か延べ面積か。
どこから測るか。起点は敷地の最も近い地点か建物の出入口か。着点は出入口か。団地なら最も近い区画と最も遠い区画の両方か。
どう丸めるか。時間は1分未満を1分として算出(切り上げ)。面積は1平方メートル未満を切り捨てて表示できる(任意)。
問題文を読んだら、まずこの四つのどれについて問われているかを判定し、該当する答えを引き出す。この順序を固定すると、記憶が断片化しません。
数値でない部分(写真・部材の性能・材料・工事歴・設備)は、この四つの枠に乗りません。こちらは「都合のよい部分だけを見せない」という一本の発想でまとめます。写真は取引するものが原則で、例外は施工者の過去物件かつ同一・類似の限定つき。材料は強調したときだけ部位の明示。工事歴は内容と時期の両方。共用施設は内容・運営主体・利用条件・整備予定時期の四点。要求されているのは常に「その表示だけでは分からない残りの部分」です。
対比で持つ
移動手段は「徒歩だけ機械換算、あとは実測」。自動車・自転車は走行に通常要する時間、電車・バスは実際のダイヤに基づく所要時間で原則がラッシュ時。
距離は「行く距離は道路距離、名乗る距離は直線距離」。施行規則の距離規定はすべて道路距離、規約19条の物件名称の基準だけが直線距離。
丸めは「時間は切り上げ、面積は切り捨て可」。どちらも消費者に不利な側へ丸める発想から出ていて、時間は義務、面積は任意。
新築と中古は「新築はかつ、中古はまたは」。新築は1年未満かつ未居住、中古は1年以上または居住済み。
施設の予定表示は「学校が重く、商業施設が軽い」。学校は許可等または事業決定に加えて現存施設との併記が要り、商業施設は将来確実プラス整備予定時期の明示で足りる。
媒体は「パンフレットだけ厳しい」。面積の最小最大表示も、価格の三点表示も、所在地の都道府県・郡の省略も、公立学校・官公署の名称省略も、すべてパンフレット等では認められません。「パンフレット等の媒体を除き」という文言を見たら、パンフレットには全部書け、と読み替える。
定義用語は「どこに定義があるか」で持つ
規約18条1項に定義がある語は六つ(新築・新発売・DK・LDK・宅地の造成工事の完了・建物の建築工事の完了)。施行規則3条に定義がある物件種別は19。規約4条6項に定義がある語には最多価格帯(100万円刻み)が含まれる。語を個別に覚えるのではなく、「その語の定義がどの条にあるか」で束ねると、条文から引き出せるようになります。
数字は短いリストにする
この記事の範囲で覚えるべき数字は、実はごく少数です。80(徒歩の換算メートル)、1(1分未満は1分、1平方メートル未満は切り捨て可、建築工事完了後1年未満)、1.62(畳1枚当たりの平方メートル)、100万円(最多価格帯の刻み)、10(最多価格帯を省略できる販売区画数・販売戸数の境)、2以上10未満(小規模団地)。
それぞれについて「どの規定の数字か」を言えるようにしてください。数字だけを覚えて規定名を言えない状態が、最も誤りやすい状態です。なお「切り上げるのは時間、切り捨てるのは面積」という語呂は覚え方として使えますが、面積が任意規定である点まで含めて理解しておかないと、義務と誤読する原因になります。
理解度チェッククイズ
第1問
物件から最寄駅までの道路距離が641メートルである場合、徒歩所要時間は8分と表示することができる。○か×か。
答えは×です。施行規則9条9号は道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出し、1分未満の端数が生じたときは1分として算出することを求めています。641÷80=8.0125で1分未満の端数が生じるため、9分として算出します。8分と表示できるのは640メートル以下の場合です。80の倍数ちょうどを1メートルでも超えると分数が一つ増えるという境界を確認してください。
第2問
道路距離または所要時間を算出する際の物件の起点は、物件の種類を問わず、建物の出入口とされている。○か×か。
答えは×です。施行規則9条7号は、物件の起点を「物件の区画のうち駅その他施設に最も近い地点」とし、括弧書きで「マンション及びアパートにあっては、建物の出入口」としています。建物の出入口が起点になるのはマンションとアパートの場合だけで、それ以外は敷地のうち最も近い地点が起点です。原則と例外を入れ替えた記述になっています。
第3問
駅までの所要時間を算出する際の着点は、その駅の改札口である。○か×か。
答えは×です。施行規則9条7号は着点を「その施設の出入口」としており、改札口ではありません。しかも括弧書きで「施設の利用時間内において常時利用できるものに限る」という限定が付いています。出入口から改札まで距離がある大規模駅で表示分数と体感が乖離するのは、この規定の帰結であって、規約違反ではありません。
第4問
土地の面積は、傾斜地であっても水平投影面積を表示する。○か×か。
答えは○です。施行規則9条14号が「土地の面積は、水平投影面積を表示すること」と定めています。斜面に沿った実際の表面積ではありません。なお同号は原則として取引する全ての区画の面積を表示することを求めており、最小土地面積と最大土地面積のみで表示できるのはパンフレット等の媒体を除いた場合に限られます。
第5問
建築工事完了後10か月の住宅を、その間モデルルームとして使用していたが誰も居住していない場合、この住宅を「新築」と表示することはできない。○か×か。
答えは×です。規約18条1項1号は新築を「建築工事完了後1年未満であって、居住の用に供されたことがないもの」と定義しています。第2要件は「未使用」ではなく「居住の用に供されたことがない」なので、モデルルームとしての使用は居住には当たらず、建築工事完了後1年未満である限り新築の定義に当たります。「新築=1年未満かつ未使用」という要約は実務上の通称であって、条文の文言ではありません。なお、起算点は同項6号の「建物をその用途に従い直ちに使用することができる状態に至ったこと」であり、契約日や引渡日ではありません。
まとめ
表示基準は、暗記の対象ではなく復元の対象です。測る対象、測り方、起点、丸め方という四点セットを持っていれば、条文を思い出せなくても筋の通った判断ができます。距離は道路距離、徒歩だけが80メートル1分の機械換算で端数は1分として算出、起点は敷地の最も近い地点で共同住宅だけが建物の出入口、着点は常時利用できる出入口、団地は最も近い区画と最も遠い区画の両方。面積は水平投影と延べ面積で、1平方メートル未満の切り捨ては任意。この骨格が施行規則9条の全体を貫いています。
新築は起算点と二要件で決まります。建築工事完了後1年未満であること、居住の用に供されたことがないこと。起算点は建物をその用途に従い直ちに使用できる状態に至ったときで、契約でも引渡しでもありません。そして同じ「新築」という語が、品確法・住宅瑕疵担保履行法、建築基準法、税法でそれぞれ別の定義を持ちます。どの制度の話かを先に決めてから定義を思い出すという順序を守ってください。
規制の全体像と根拠構造は景品表示法と公正競争規約と広告に関する規制へ、おとり広告・二重価格表示・特定用語の使用制限という禁止される表示の側はおとり広告と二重価格表示へ進んでください。三つを合わせると、問47の出題範囲がほぼ埋まります。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、税・その他の分野の肢別トレーニングで、表示規約の表示基準に関する過去問を論点別に演習できます。
税と価格の評定は毎年ほぼ同じ形で出ます。出題パターンを肢別で押さえれば取りこぼしません。