宅建の語呂合わせ|使う数字と使わない数字
宅建の語呂合わせを科目横断で整理。制度趣旨から導ける数字には使わず、導けない数字にだけ使うという線引きを示し、宅建業法・法令上の制限・権利関係・税の主要数値を条文根拠つきで解説します。
目次
この記事は、宅建の語呂合わせを科目横断で扱うハブです。個別科目の語呂は民法の語呂合わせと法令上の制限の暗記法に、数字そのものの整理は宅建業法の数字まとめと建築基準法の数字にあります。ここで扱うのは、その手前にある「どの数字に語呂を使い、どの数字には使わないか」という判断です。
結論を先に書きます。語呂合わせを当てていいのは、制度の趣旨をどれだけ丁寧に追っても復元できない数字だけです。営業保証金の1,000万円と500万円、クーリング・オフの8日、開発許可の1,000平方メートル。これらは立法者が政策判断で決めた線であり、「なぜその額なのか」を説明する筋道が存在しません。逆に、専属専任媒介の報告が1週間に1回で専任媒介が2週間に1回であることや、接道義務が2メートルであることは、制度の目的から導けます。導ける数字に語呂を当てると、問われ方が変わった瞬間に対応できなくなります。語呂は理解の代わりではなく、理解しても残る「意味のない部分」の受け皿です。
語呂合わせを使ってよい数字と、使ってはいけない数字
導ける数字に語呂を当てると応用が利かなくなる
宅建の数字には二種類あります。制度の目的から復元できる数字と、できない数字です。
前者の例が、専任媒介契約と専属専任媒介契約の各種期限です。専任媒介は指定流通機構への登録が契約締結日から7日以内、業務処理状況の報告が2週間に1回以上。専属専任媒介はそれぞれ5日以内、1週間に1回以上(宅地建物取引業法34条の2第9項、同法施行規則15条の10)。この四つの数字を語呂で覚える必要はありません。専属専任媒介は依頼者が自己発見取引すらできない最も拘束の強い契約であり、その分だけ業者に課される義務も重い、という一本の理屈で「専属専任のほうが短い」と決まるからです。数字を四つ暗記するのではなく、順序関係を一つ理解すれば足ります。
もう一つの例が接道義務です。建築物の敷地は幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接しなければならない(建築基準法43条1項、42条1項)。この4メートルと2メートルは、消防車が通り、避難と救助ができる最低幅という趣旨から出ています。趣旨を押さえていれば、「敷地が道路に1.8メートル接していれば足りる」という肢を見た瞬間に、人が担架を持って通れないと気づけます。語呂で「ヨンとニ」と覚えているだけだと、条例で強化される場合(同法43条3項)や2項道路のセットバック(同法42条2項)が絡んだときに手が止まります。
導ける数字を語呂で押し込むことの本当の害は、覚え間違えることではありません。覚えられてしまうことです。数字が出てくるので理解した気になり、その数字を生んだ考え方を通らないまま先へ進んでしまう。用途地域の並びについても同じ問題が起きます。詳しくは用途地域の覚え方で扱っています。
導けない数字こそ語呂の出番
一方、営業保証金の額には理屈がありません。主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき事務所ごとに500万円(宅地建物取引業法25条2項、同法施行令2条の4)。なぜ1,000万円なのか、なぜ支店は本店の半分なのか。取引の相手方を保護するために相応の額を、という一般的な説明はできますが、それは1,000万円という具体的な数字を導きません。弁済業務保証金分担金の60万円と30万円(同法64条の9第1項、同法施行令7条)も同じです。
こういう数字は、覚えるしかありません。そして覚えるしかない数字を、意味のない音の列のまま抱え込むと、試験本番で別の数字と入れ替わります。語呂合わせの役割は、この意味のない列に手がかりを一本通すことです。「1,000万円」という四桁の情報を、思い出せる言葉に結びつけておく。それだけの技術です。記憶が良くなるわけではなく、取り出す入口が一つ増えるだけだと考えてください。
なぜ入口が増えるのかというと、数字それ自体には引っかかりがないからです。「1,000万円」という並びは、他の四桁の並びと形の上で区別がつきません。試験中に思い出そうとしても、手がかりになる材料が数字の中に含まれていない。ここに言葉を結びつけると、「営業保証金」という制度名から言葉が呼び出され、言葉から数字が復元される、という二段の経路ができます。経路が一本しかない状態から二本に増えるだけですが、緊張した状態で一本目が詰まったときに効きます。語呂合わせの効能はこの範囲にとどまり、それ以上を期待すると使い方を誤ります。
迷ったときの三つの質問
目の前の数字に語呂を当てるべきかは、次の三つを自分に問えば判断できます。
一つ目、この数字を忘れたとして、制度の目的から再現できるか。再現できるなら語呂は不要です。二つ目、この数字と対になる別の数字があり、両者の大小関係に理由があるか。理由があるなら、覚えるのは大小関係であって数字ではありません。三つ目、この数字が変わったら制度の何が壊れるかを説明できるか。説明できないなら、それは政策的に決められた線であり、語呂の対象です。
この三つで振り分けると、宅建で語呂が本当に必要な数字は思ったより少ないことが分かります。多くの受験生は、導ける数字まで語呂に押し込んで、覚える量を自分で増やしています。
三つ目の質問は特に効きます。たとえば専任媒介契約の有効期間3か月(宅地建物取引業法34条の2第3項)を考えてみます。これがもし1年だったら何が壊れるか。依頼者は結果の出ない業者に1年間縛られ、他の業者に頼み直す機会を失います。つまり3か月は、依頼者を長期拘束から解放するための上限であり、期間を短くする方向は依頼者に有利なので特約で短縮できる、という帰結まで導けます。壊れる先が説明できたので、これは理屈側の数字です。もっとも3という具体的な数字自体は政策判断なので、上限であること、これより長い定めは3か月に短縮されること(同項後段)まで理解したうえで、数字だけを語呂で留めるのは合理的です。媒介契約全体の整理は媒介契約の種類と規制にあります。
語呂合わせの作り方
数字を音に変える対応を一つに固定する
語呂合わせは、数字を音に置き換えるところから始まります。0は「れい・まる・お」、1は「い・いち・ひと」、2は「に・ふ・ふた」、3は「さ・さん・み」、4は「し・よ・よん」、5は「ご・いつ」、6は「ろ・ろく・む」、7は「しち・な・なな」、8は「は・はち・や」、9は「く・こ・ここの」、10は「と・じゅう」。この対応を自分の中で一つに固定してください。
固定が重要なのは、同じ数字を場面ごとに違う音で読むと、思い出すときに逆変換ができなくなるからです。8を「は」と読む語呂と「や」と読む語呂を混在させると、語呂は出てくるのに数字に戻せない、という事態が起きます。よく使う数字ほど読み方を一つに決めておきます。
覚える対象を語呂の中に入れる
最も多い失敗は、数字だけを語呂にすることです。「ハッとする」で8日は出てきますが、何の8日かが出てきません。宅建には8日以外にも起算日つきの期間が並んでいるので、数字だけの語呂は取り違えを招きます。
対策は単純で、対象を語呂の中に入れることです。クーリング・オフなら「クーリング・オフはハッとして八日」のように、制度名を語呂の一部にします。長くなっても構いません。語呂の目的は短さではなく、思い出したときに何の数字か迷わないことです。営業保証金なら「本店センマン、支店ゴヒャク」のように、主たる事務所とその他の事務所という区別まで語呂に含めます。
単位を落とさない
面積の1,000と金額の1,000万円と日数の1,000は別物ですが、語呂にすると「セン」で同じ音になります。開発許可の1,000平方メートルと営業保証金の1,000万円が頭の中で隣り合うと、選択肢を読んだときに一瞬迷います。語呂に単位を残してください。「センヘイベイ」「センマンエン」と唱えるだけで、この混線は起きなくなります。
他の語呂と衝突させない
宅建には似た数字の並びが二組あります。開発許可の面積要件が1,000・3,000・10,000平方メートル(都市計画法29条1項、同法施行令19条1項、同法施行令22条の2)で、国土利用計画法の事後届出が2,000・5,000・10,000平方メートル(国土利用計画法23条2項1号)。どちらも三段階で、区域が都市から離れるほど大きくなり、最後は10,000平方メートルで一致します。
この二組を別々に語呂化すると、必ず混ざります。有効なのは、二つを一つの語呂にまとめてしまうことです。「開発はイチ・サン・マン、国土法はニ・ゴ・マン」と、対にして唱える。開発許可のほうが一段階小さい、という関係ごと記憶に入れます。区域の性格からこの差を説明する筋道は開発許可が必要な面積要件と国土利用計画法の事後届出にあります。語呂で入口を作り、記事で理屈を通すという順序です。
語呂を作らないほうが速い場合を見分ける
更新申請の期限は、免許の有効期間満了の日の90日前から30日前までです(宅地建物取引業法施行規則3条)。この90と30を語呂にしようとすると、かなり無理のある文になります。しかし「3か月前から1か月前まで」と言い換えれば、語呂なしで覚えられます。数字が月単位に置き換えられるなら、置き換えたほうが速い。
同じことが消滅時効にも言えます。債権は権利を行使できることを知った時から5年間、権利を行使できる時から10年間で時効消滅します(民法166条1項)。これは「知って5年、できて10年」と唱えれば済みます。語呂ではなく要約です。語呂を作る前に、要約で足りないかを確認する癖をつけてください。
他人の語呂を借りるときの条件
市販教材や受験生同士のやり取りには、既成の語呂が大量に流通しています。借りること自体は問題ありませんが、条件が二つあります。
一つは、その語呂が指している数字を条文で確認してから使うことです。改正で数字が変わっても、語呂だけは古いまま流通し続けます。宅建は毎年のように改正が入る試験なので、出所の分からない語呂をそのまま抱えるのは危険です。二つ目は、自分の音の対応と衝突しないかを確かめることです。8を「や」と読む語呂を借りたのに、自分は他の場面で8を「は」と読んでいるなら、どちらかに寄せます。
借り物の語呂が自分の作った語呂より覚えにくいのは、語呂の出来が悪いからではなく、作る過程を経ていないからです。数字を音に変換し、意味の通る文を組み立てるという作業そのものが、対象と向き合う時間になっています。借りるなら、少なくとも一度は自分の言葉に組み替えてください。
宅建業法の数字と語呂
宅建業法は数字が最も多い科目です。全体の整理は宅建業法の数字まとめに譲り、ここでは語呂が必要な数字だけを取り出します。
5年の四つ
免許の有効期間は5年(宅地建物取引業法3条2項)、宅地建物取引士証の有効期間も5年(同法22条の2第3項)。免許と登録の欠格期間も、多くの場合5年です。この5年は語呂不要で、「宅建業法の期間は基本5年」と一括りにできます。むしろ注意すべきは5年でないものです。帳簿の保存は5年ですが従業者名簿は10年(同法施行規則18条3項、17条の2第4項)、自ら売主となる新築住宅に係る帳簿は10年。ここだけ「名簿はトウ(10)年」と押さえます。
営業保証金と分担金の四つの金額
主たる事務所1,000万円とその他の事務所500万円、分担金は主たる事務所60万円とその他の事務所30万円。四つの数字ですが、実は覚えるのは二つで足ります。どちらの制度も、その他の事務所の額が主たる事務所の半分だからです。「保証金センマン、分担金ロクジュウマン、支店はどちらも半分」。これで四つが二つになります。
この構造を見つけてから語呂を作るのが正しい順序です。四つの数字を四つの語呂にすると、覚える量が二倍になります。制度の詳細は営業保証金の供託と保証協会の仕組みにあります。
2週間が集まる場所
宅建業法の「2週間」は、供託と保証協会のまわりに集中します。還付があって営業保証金が不足した場合、免許権者の通知を受けた日から2週間以内に不足額を供託し、供託した日から2週間以内に届け出る(同法28条1項・2項)。保証協会の社員は、還付充当金の納付の通知を受けた日から2週間以内に納付する(同法64条の10第2項)。保証協会の社員が新たに事務所を設置したときは、その日から2週間以内に分担金を納付する(同法64条の9第2項)。
数字が同じなので、語呂を作る必要はありません。「お金が足りなくなったら2週間」と場面でまとめます。2週間が出てくる場面の全体像は宅建業法の2週間で整理しています。
30日と90日と1年
届出の期限は30日に集まります。商号や事務所の所在地などに変更があったときの変更の届出が30日以内(同法9条)、廃業等の届出も30日以内で、業者が死亡した場合は相続人が死亡の事実を知った日から30日以内(同法11条1項1号)。宅地建物取引士の登録事項に変更があった場合の変更の登録は「遅滞なく」で、日数の定めがありません(同法20条)。30日でないものを一つ覚えておくほうが、30日を七つ覚えるより速くなります。
90日は更新申請の始期だけです。1年は監督処分の上限で、業務停止処分が1年以内(同法65条2項)、宅地建物取引士に対する事務禁止処分も1年以内(同法68条2項)。ここも数字が揃っているので語呂は不要です。監督処分の全体の流れは監督処分の種類と手続を参照してください。
なお、事務所に置くべき成年者である専任の宅地建物取引士は、業務に従事する者5人に1人以上の割合です(同法31条の3第1項、同法施行規則15条の5の3)。案内所等では1人以上で足ります。この5人に1人という割合には理屈がないので、語呂の対象にしてかまいません。
8日と10分の2と10分の3
クーリング・オフができるのは、告げられた日から起算して8日を経過するまで(同法37条の2第1項1号)。この8日に理屈はないので、語呂の出番です。「クーリング・オフはハッとして八日」。ただし本当に問われるのは起算点と、告知が書面でされていない場合に期間が進行しないことのほうです。制度の全体はクーリング・オフにあります。
自ら売主となる場合、手付の額は代金の10分の2を超えられません(同法39条1項)。損害賠償額の予定等も合算して代金の10分の2まで(同法38条1項)。一方、所有権留保が禁止されるのは受領した額が代金の10分の3を超えたときです(同法43条1項)。「手付はニワリ、留保はサンワリ」と対で唱えると、2と3の取り違えが減ります。手付の詳細は手付金の額の制限を参照してください。
保全措置の5パーセント・10パーセント・1,000万円
手付金等の保全措置が不要となるのは、工事完了前の物件では代金の5パーセント以下かつ1,000万円以下、工事完了後の物件では10パーセント以下かつ1,000万円以下のときです(同法41条1項、41条の2第1項、同法施行令3条の5)。
この三つの数字のうち、5パーセントと10パーセントは理屈で導けます。未完成物件のほうが、買主が引渡しを受けられなくなるリスクが大きいので、より低い額から保全を要求する。だから未完成が5で完成が10です。導ける以上、語呂は不要です。一方、1,000万円という上限額には理屈がないので、ここだけ語呂で固定します。理屈で導ける部分と導けない部分が一つの条文に同居している典型例で、語呂の当てどころを考える練習になります。詳しくは手付金等の保全措置にあります。
法令上の制限の数字と語呂
開発許可の三つの面積
市街化区域は1,000平方メートル以上、区域区分が定められていない都市計画区域と準都市計画区域は3,000平方メートル以上、都市計画区域および準都市計画区域の外は10,000平方メートル以上で開発許可が必要になります。そして市街化調整区域には面積の基準がなく、規模にかかわらず許可が必要です。
ここで語呂を当てるのは三つの数字だけにしてください。市街化調整区域に面積要件がないことは、語呂ではなく理由で覚えます。都市計画法29条1項1号が除外の対象として挙げているのは市街化区域、非線引き都市計画区域、準都市計画区域の三つで、市街化調整区域が書かれていない。市街化を抑制すべき区域だから、小規模でも素通りさせないという設計です。この点を語呂に押し込むと、「調整区域はゼロ平方メートル」といった意味の分からない記憶になります。
国土利用計画法の面積と期間
事後届出が必要になるのは、市街化区域で2,000平方メートル以上、市街化区域を除く都市計画区域で5,000平方メートル以上、都市計画区域外で10,000平方メートル以上(国土利用計画法23条2項1号)。届出は契約を締結した日から起算して2週間以内に、権利取得者が行います(同条1項)。
開発許可の面積と一緒に「イチ・サン・マン/ニ・ゴ・マン」で唱える方法は前述のとおりです。届出期間の2週間は、宅建業法の2週間とは無関係なので、混ぜないでください。同じ「2週間」でも、宅建業法のそれは金銭の穴埋め、国土利用計画法のそれは取引の事後報告です。数字が同じでも文脈が違うものは、束ねずに離しておくほうが安全です。
建築確認の200平方メートル
建築確認が必要になる規模は、2025年4月1日施行の改正で整理されました。特殊建築物はその用途に供する部分の床面積が200平方メートル超(建築基準法6条1項1号)、それ以外は階数が2以上または延べ面積が200平方メートル超(同項2号)、これらに当たらない建築物は都市計画区域等の内側にある場合に確認が必要(同項3号)という三段構えです。改正前は木造と木造以外で規模要件が分かれており、「木造は3階建て・500平方メートル」といった語呂が広く使われていましたが、現在この区別はありません。
古い語呂を持っている場合は、作り直してください。改正で数字が変わったのに語呂だけが残っていると、間違いを正確に再現する装置になります。語呂は定期的に棚卸しが必要だという、分かりやすい実例です。建築基準法の数字の全体は建築基準法の数字に、都市計画法の数字は都市計画法の数字まとめにあります。
権利関係の数字と語呂
権利関係は理屈の科目なので、語呂の出番は法令上の制限より少なくなります。個別の語呂は民法の語呂合わせにまとめてあるので、ここでは考え方だけを示します。
時効の期間
所有の意思をもって平穏公然に他人の物を占有した者は、20年で所有権を取得します。占有の開始時に善意無過失であれば10年です(民法162条)。この20年と10年は政策的な線なので語呂の対象になりますが、「悪いと二十年、善意無過失なら十年」と唱えれば足ります。
不法行為による損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で消滅します(同法724条)。人の生命または身体を害する不法行為では、前者が5年に延びます(同法724条の2)。債権一般の消滅時効が5年と10年(同法166条1項)で、生命身体侵害の場合は10年が20年になる(同法167条)。数字が交錯するので、時効は語呂よりも一覧での対比が向いています。時効の完成猶予と更新を参照してください。
相続分は語呂より構造
配偶者と子が相続人なら配偶者2分の1、配偶者と直系尊属なら配偶者3分の2、配偶者と兄弟姉妹なら配偶者4分の3(民法900条)。三つの数字を別々に覚える必要はありません。配偶者以外の相続人が遠くなるほど配偶者の取り分が増え、分母が2、3、4と一つずつ大きくなり、分子が分母より1小さい。この構造を一度見つけてしまえば、二度と忘れません。
遺留分は、直系尊属のみが相続人である場合が3分の1、それ以外が2分の1(同法1042条1項)。こちらは構造がないので語呂の対象です。「直系尊属だけならサンブンノイチ、あとはハンブン」。相続の承認または放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければなりません(同法915条1項)。この3か月は熟慮期間と呼ばれ、相続財産を調べるのに要する期間という趣旨があるので、語呂よりも名前で覚えるほうが確実です。相続の全体像は相続の基本にあります。
借地借家法の期間
借地借家法は期間の数字が集中する分野ですが、ここも語呂の当てどころは限られます。借地権の存続期間が30年以上、更新後は最初が20年以上、それ以降が10年以上(借地借家法3条、4条)という並びは、更新のたびに短くなるという一本の流れで覚えられます。一方、定期借地権の50年以上、事業用定期借地権の10年以上50年未満、建物譲渡特約付借地権の30年以上(同法22条から24条)は、種類ごとに独立した政策的な線なので、語呂が効きます。期間ごとの整理は借地借家法の数字まとめにあります。
区分所有法の決議要件
区分所有法は分数が多い法律です。そしてこの分野は令和7年法律第47号による改正で段の構成そのものが変わりました(令和8年4月1日施行)。宅建試験は当該年度4月1日現在施行の法令から出題されるため、令和8年度は改正後が前提になります。古い教材の語呂やグループ分けをそのまま使うと、覚えた形が誤りになります。
改正後は四段です。過半数が通常の集会の議事(39条1項)。3分の2以上が二つあり、瑕疵の除去またはバリアフリー化のために必要となる共用部分の変更(17条5項)と、大規模滅失の復旧(61条5項)です。4分の3以上が、共用部分の重大変更(17条1項)、規約の設定・変更・廃止(31条1項)、管理組合法人の設立(47条1項)、義務違反者に対する使用禁止・競売・引渡しの各請求(58条2項、59条2項、60条2項)。5分の4以上が建替え系の決議(62条1項ほか)です。
特に注意すべきは大規模滅失の復旧です。改正前は4分の3以上だったものが3分の2以上に下がりました。段が移動したので、「4分の3のグループ」に入れて覚えていると、改正後は誤りになります。ここは改正前なら正しかった記述なので、作問の素材として扱いやすい位置にあります。
分母も変わりました。17条1項・31条1項・39条1項・61条5項はいずれも、定足数を満たしたうえで「出席した区分所有者及びその議決権」を分母とします。総数を分母とするのは62条1項の建替え決議です。
これも語呂ではなく整理で処理します。数字を並べて覚えると混線しますが、四つの箱に分ければ収まります。詳しくは区分所有法の決議要件と区分所有法の全体像を参照してください。
税の数字と語呂
税は数字の塊ですが、多くは政策的に決められた線なので、語呂が最もよく効く分野です。
不動産取得税は、標準税率が4パーセント、住宅と土地については3パーセントに軽減され、宅地の課税標準は価格の2分の1とされます。新築住宅を取得した場合は課税標準から1,200万円が控除されます(地方税法73条の14第1項)。「取得税はサン(3パーセント)、宅地はハンブン、新築はセンニヒャク」と一続きで唱えます。詳細は不動産取得税の軽減措置にあります。
固定資産税は、標準税率1.4パーセント、住宅用地のうち200平方メートル以下の部分は課税標準6分の1、それを超える部分は3分の1(同法349条の3の2)。新築住宅は床面積120平方メートルまでの部分について税額が2分の1に減額されます。「固定はイチテンヨン、小規模はロクブンノイチ、新築はヒャクニジュウまでハンブン」。
ここで注意が要るのが、200平方メートルと120平方メートルの並存です。前者は住宅用地の課税標準の特例、後者は新築住宅の税額の減額で、対象も効果も違います。同じ税目の中に似た面積が二つあるので、語呂を作るときは必ず「土地の200」「建物の120」と対象を含めてください。固定資産税で整理しています。
覚え方・整理の仕方
作った語呂は白紙に書き出して検証する
語呂は作った時点では覚えていません。作った直後は元の数字を見ているので、語呂から数字を復元できるかどうかが分からないからです。作った翌日に、何も見ずに白紙へ書き出してください。書き出すのは語呂ではなく数字のほうです。「営業保証金」と書いて、そこから1,000万円と500万円が出てくるか。出てこなければ、その語呂は失敗作なので作り直します。
逆方向でも引けるようにする
試験で問われるのは「営業保証金はいくらか」だけではありません。「1,000万円という数字が出てくる制度は何か」という形でも問われます。語呂を数字から制度へ引けるようにしておくと、選択肢の中の数字を見た瞬間に、それがどの制度の数字かを判定できます。1,000万円なら営業保証金と手付金等の保全措置の上限、5年なら免許と宅建士証と帳簿の保存、2週間なら供託の穴埋めと国土利用計画法の届出。数字を軸に束ね直す作業を一度やっておくと、取り違えを狙った肢に強くなります。
過去問の中で語呂を回収する
語呂を単独で復唱しても定着しません。問題を解いている最中に、その語呂を実際に使う経験が要ります。肢を読んで数字が出てきたら、いったん手を止めて語呂を思い出し、それから正誤を判定する。この一手間を挟むと、語呂が試験の文脈と結びつきます。想起の負荷をかける反復の組み方は宅建の暗記術で扱っています。
語呂の数を増やしすぎない
語呂を作ること自体が楽しくなると、導ける数字にまで語呂を作り始めます。語呂が三十も四十もあると、今度は語呂同士が混ざります。上限を決めてください。科目ごとに十個程度、全体で四十個を超えたら、どれかを捨てて理屈に置き換えます。
試験での出題ポイント
数字を一つだけ入れ替える肢
最も多い出題形式は、正しい文章の中で数字を一つだけ入れ替えるものです。「専任媒介契約では、契約締結の日から5日以内に指定流通機構に登録しなければならない」という肢は、5日を7日に直せば正しくなります。この形式は、数字を覚えているかではなく、どの制度の数字かを覚えているかを試しています。語呂に制度名を入れておくべき理由がここにあります。
二つの制度の数字を交換する肢
開発許可の面積と国土利用計画法の届出面積、手付の10分の2と所有権留保の10分の3、専任媒介と専属専任媒介の期限。似た構造の二制度は、数字を入れ替えた肢が作られます。対で覚えていないと気づけません。語呂を作るときに、対になる相手を必ず同じ語呂に入れるのはこのためです。
境界の扱いを問う肢
「1,000平方メートルを超える開発行為」と「1,000平方メートル以上の開発行為」は違います。都市計画法施行令19条1項が定めるのは規模の下限なので、ちょうど1,000平方メートルは許可が必要です。語呂は数字は運んでくれますが、「以上」か「超える」かは運んでくれません。境界の扱いは条文で確認しておく必要があります。手付金等の保全措置の5パーセントも、「5パーセント以下」なら不要、「5パーセントを超える」なら必要という向きを間違えないでください。
改正で変わった数字
改正が入った直後の年度は、変更点が狙われます。2025年4月施行の建築確認の規模要件はその典型です。古い語呂を持ったまま試験に臨むと、改正前の数字を自信を持って選んでしまいます。出題傾向の見方は宅建試験の出題傾向にまとめてあります。
理解度チェッククイズ
第1問。市街化調整区域内で開発行為を行う場合、開発区域の面積が1,000平方メートル未満であれば開発許可は不要である。
答えは誤り。都市計画法29条1項1号が規模による除外の対象としているのは、市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域、準都市計画区域の三つで、市街化調整区域は含まれていません。したがって市街化調整区域では、面積の大小にかかわらず開発行為には原則として許可が必要です。1,000平方メートルは市街化区域の基準です。
第2問。宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地の売買契約において、代金の額の10分の3を超える額の手付を受領することはできない。
答えは誤り。手付の上限は代金の額の10分の2です(宅地建物取引業法39条1項)。10分の3は、所有権留保等が禁止される基準、すなわち受領した額が代金の10分の3を超えたときに登記の移転等をしなければならないという場面の数字です(同法43条1項)。2割と3割を対で押さえてください。
第3問。市街化区域内において2,500平方メートルの土地の売買契約を締結した権利取得者は、契約を締結した日から起算して2週間以内に、都道府県知事に事後届出をしなければならない。
答えは正しい。市街化区域内の事後届出は2,000平方メートル以上が対象で(国土利用計画法23条2項1号)、2,500平方メートルはこれに該当します。届出期間は契約を締結した日から起算して2週間以内、届出義務者は権利取得者です(同条1項)。売主に届出義務はありません。
第4問。専属専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、契約の相手方を探索するため、契約締結の日から休業日を除き7日以内に指定流通機構へ登録しなければならない。
答えは誤り。専属専任媒介契約の登録期限は、休業日を除き5日以内です。7日以内は専任媒介契約の期限で(宅地建物取引業法施行規則15条の10)、専属専任のほうが拘束が強い分だけ短く設定されています。業務処理状況の報告も、専任が2週間に1回以上、専属専任が1週間に1回以上と、同じ向きで差がついています。
第5問。工事完了前の宅地の売買において、宅地建物取引業者が自ら売主として受領する手付金等の額が代金の額の10分の1以下であれば、保全措置を講ずる必要はない。
答えは誤り。工事完了前の物件で保全措置が不要となるのは、代金の額の5パーセント以下かつ1,000万円以下の場合です(宅地建物取引業法41条1項、同法施行令3条の5)。10パーセントは工事完了後の物件の基準です。未完成物件のほうがリスクが高いため、より低い額から保全が要求される、という向きで押さえておけば取り違えません。
語呂の限界と失敗の型
数字は出るのに、何の数字か出てこない
最も多い失敗です。試験中に「サン」「ゴ」「ハチ」といった音は浮かぶのに、それが登録期限なのか報告頻度なのかクーリング・オフなのかが分からない。原因は、語呂を作った時点で対象を入れなかったことにあります。作るときには対象が自明なので、省略しても問題ないように見えます。省略の代償は、数週間後に現れます。
この失敗は事後に修復できます。手持ちの語呂を書き出し、対象を含んでいないものに制度名を足すだけです。長くなっても構いません。「センマン・ゴヒャク」を「営業保証金は本店センマン支店ゴヒャク」に直す。それだけで、試験中に迷う時間がなくなります。
似た語呂が混ざる
二つ目は、語呂同士の衝突です。宅建には同じ数字が別の制度で何度も出てくるので、数字を軸に語呂を作ると必ず衝突します。1,000は開発許可の面積と営業保証金と保全措置の上限、2週間は供託の穴埋めと国土利用計画法の届出、5年は免許と宅建士証と帳簿の保存。
衝突を避ける方法は二つあります。一つは、前述のとおり語呂に単位と対象を入れること。もう一つは、同じ数字が出てくる制度を意図的にまとめて一つの語呂にすることです。バラバラに作ると混ざりますが、最初から束ねてしまえば、混ざりようがありません。数字別の束ね方は宅建業法の数字まとめに例があります。
語呂が理解の代わりになる
三つ目が最も深刻です。語呂を持っていると、その論点を処理できる感覚が生まれます。ところが本試験で問われるのは数字そのものではなく、要件と効果の組み合わせであることが多い。「開発許可が必要な面積は1,000平方メートル」と言えても、開発行為の定義(都市計画法4条12項)を知らなければ、そもそもその行為が開発行為に当たるかを判定できません。面積の語呂は、判定の最後の一手にしか使えないのです。
見分け方は簡単で、その論点について語呂以外に説明できることが二つ以上あるかを確認してください。数字しか言えないなら、理解が抜けています。
改正で古くなった語呂を持ち続ける
四つ目は前述の建築確認のような例です。語呂は書き換えにくい形で頭に入るので、数字が変わっても上書きされにくい。年に一度、直近の改正点を確認し、該当する語呂があれば作り直すか捨ててください。改正点の確認は年度ごとの学習の最初にやるのが効率的です。
語呂が運んでこないもの
語呂合わせで解決できるのは、数字を思い出せないという問題だけです。その数字がどの要件に係るのか、要件を満たすとどういう効果が生じるのか、例外はあるのかは、語呂の外側にあります。35条書面の記載事項のように、項目そのものを覚える論点では、語呂よりも条文の並び順に沿った理解のほうが強く働きます(35条書面の完全整理)。計算を伴う論点も同様で、計算問題のまとめにあるとおり、手順を覚えるほうが確実です。
語呂を持っていること自体は得点になりません。語呂は、理解を通した後に残る取り出しにくい情報へ、入口を一つ付ける道具です。この記事で示した線引き、すなわち導ける数字には使わず、導けない数字にだけ使うという原則を守れば、覚える語呂は四十個程度に収まります。それ以上に増えているなら、理解で処理できるものを暗記に回している可能性が高いので、一度棚卸しをしてください。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、ここで扱った数字が問われる肢を科目別・論点別に演習できます。
肢別演習と年度別演習で、立てた学習計画をそのまま実行に移せます。間違えた肢だけを繰り返す復習にも対応しています。