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宅建業の「業」に当たるケースと当たらない例

宅建業法 読了 約37分

宅建業法2条2号の「業」の判定を、宅地の定義・取引の該当性・業としての5要素の順に整理。自ら貸借、分譲、適用除外まで条文根拠つきで解説します。

目次

    本記事は、宅建業法の入口にあたる「免許が必要かどうか」の判定を扱います。宅建業法という法律の全体像は宅建業法の全体像をつかむで、免許制度そのものの仕組みは宅建業免許の制度を理解するで扱っているので、あわせて読むと位置づけがはっきりします。

    結論から言えば、ある行為に免許が必要かどうかは、二段階で判定します。第一段階は「その行為が宅建業法上の取引に当たるか」、第二段階は「それを業として行っているか」です。この二段階を頭の中で分けずに、なんとなく「不動産を扱っているから免許が要りそうだ」と考えると、試験では確実に取りこぼします。とくに「自ら貸借は取引に当たらない」という第一段階の結論は、宅建業法のなかでも最も繰り返し問われるポイントで、ここを落とすと本試験で1点をそのまま失います。以下では、条文の文言に沿って判定の手順を組み立て直します。

    宅建業法2条2号の読み方と、判定が二段階になる理由

    宅建業の定義は、宅建業法2条2号に置かれています。

    宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。(宅建業法2条2号)

    この一文は長いのですが、構造は単純です。前半が「どういう行為か」を列挙し、末尾の「で業として行うもの」が、その行為に条件を重ねています。つまり、行為の型に当てはまることと、それを業として行うことの両方がそろってはじめて宅建業になります。

    前半で列挙されている行為の型

    前半をほどくと、次の二つの固まりに分かれます。ひとつめは「宅地若しくは建物の売買若しくは交換」で、これは自分が当事者として売買または交換をする行為を指します。ふたつめは「宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介」で、これは他人の取引に関与する行為です。

    ここで注意すべきなのは、ひとつめの固まりに「貸借」が入っていないことです。条文は「売買若しくは交換」としか書いていません。他方、ふたつめの固まりには「売買、交換若しくは貸借」と、貸借がきちんと入っています。この書き分けが、後で扱う「自ら貸借は取引に当たらない」という結論の根拠そのものです。覚えるべきは結論だけでなく、条文がそう書いてあるという事実です。

    後半の「業として行うもの」

    「業として」には定義規定がありません。条文の外側でこれを埋めているのが、国土交通省が公表している「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」です。令和8年4月1日施行版の第2条第2号関係は、「業として行なう」とは宅地建物の取引を社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行う状態を指すものであり、その判断は次の事項を参考に諸要因を勘案して総合的に行われる、としています。回数でも金額でもなく「社会通念上事業の遂行とみることができる程度」という物差しが置かれている点が出発点です。ここで問題になるのは、たとえば個人が相続した土地を売る場合のように、行為の型としては売買に当たるけれども、事業と呼ぶには程遠いケースをどう扱うかです。

    判定手順として書き直す

    以上をふまえて、判定は次の順に進めます。

    • 対象物が「宅地」または「建物」に当たるか。当たらなければ、その時点で宅建業ではない。
    • その行為が、自ら売買・交換、または売買・交換・貸借の代理・媒介に当たるか。自ら貸借はここで落ちる。
    • それを「業として」行っているか。不特定多数を相手に反復継続して行う事業性があるか。
    • 三つすべてを通過して、はじめて宅建業に当たり、免許が必要になる。

    この順番には意味があります。対象物が宅地でなければ、どれだけ大規模に反復継続していても宅建業ではありません。逆に、対象物が宅地であっても自ら貸借なら、規模を問わず宅建業ではありません。上から順に落としていく発想を身につけてください。

    第一段階の前提「宅地」とは何か(2条1号)

    免許の要否を問う問題では、「業として」の部分ばかりに目が行きがちですが、実際には対象物が宅地に当たるかどうかを争点にする出題も少なくありません。宅地の定義は2条1号にあります。

    宅地 建物の敷地に供せられる土地をいい、都市計画法第8条第1項第1号の用途地域内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含むものとする。(宅建業法2条1号)

    この条文も二段構えです。原則を定める前半と、範囲を広げる後半に分かれます。

    建物の敷地に供せられる土地

    前半の「建物の敷地に供せられる土地」は、用途地域の内外を問いません。市街化調整区域であろうと、都市計画区域外であろうと、現に建物が建っている土地はもちろん、建物を建てる目的で取引される土地であれば宅地に当たります。この読み方は解釈で補ったものではなく、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」の第2条第1号関係が正面から書いています。同関係は、本号にいう「建物の敷地に供せられる土地」とは現に建物の敷地に供せられている土地に限らず、広く建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地をいうものであり、その地目、現況の如何を問わない、としています。

    したがって、都市計画区域外の山林であっても、別荘を建てる目的で分譲されるのであれば、その土地は宅地です。逆に、資材置場として使う目的で取引される土地は、建物の敷地ではないので、この前半には当たりません。用途地域の指定については用途地域の種類と特徴を整理するで扱っています。

    用途地域内の土地は原則としてすべて宅地

    後半が広げているのが、用途地域内の土地です。用途地域内にある土地は、現況が何であっても、原則として宅地に当たります。現況が農地でも、山林でも、雑種地でも、空き地でも、用途地域内であれば宅地です。ここは直感に反するので、意識して覚える必要があります。

    なぜこうなっているかというと、用途地域は市街地として利用することを前提に指定される区域だからです。現況が農地であっても、いずれ建物の敷地として供される蓋然性が高い。だから、取引の段階から宅建業法の保護を及ぼしておく、という発想です。

    なお、都市計画法8条1項1号の用途地域には、準都市計画区域に定められた用途地域も含まれます。同条2項が、準都市計画区域について「前項第一号から第二号の二まで」などの地域地区を都市計画に定めることができるとしており、1号すなわち用途地域がそこに含まれているからです。準都市計画区域に定められた用途地域も、条文上は「都市計画法第8条第1項第1号の用途地域」にほかなりません。都市計画区域内にしか用途地域がないと思い込むと、ここで足をすくわれます。都市計画の枠組みは都市計画法の全体像と区域区分で確認してください。

    市街化区域の土地はほぼ全部が宅地になる

    用途地域の指定範囲を、区域区分と結びつけて理解しておくと判定が速くなります。都市計画法13条1項7号の後段は、「市街化区域については、少なくとも用途地域を定めるものとし、市街化調整区域については、原則として用途地域を定めないものとする」と定めています。「定めるものとする」は義務的な表現です。

    つまり、市街化区域の土地は、原則としてどこかの用途地域に入っています。したがって市街化区域内の土地は、現況が畑でも空き地でも、道路・公園・河川・広場・水路に供されていない限り宅地です。逆に市街化調整区域には原則として用途地域が定められないので、市街化調整区域の土地が宅地に当たるかどうかは、2条1号の前半、すなわち「建物の敷地に供せられる土地」かどうかだけで決まります。市街化調整区域内でも、既存建物が建っている土地や、開発許可を受けて建物を建てる目的で取引される土地は宅地です。

    この二段構えを押さえると、「市街化調整区域内の土地だから宅地ではない」という選択肢が誤りであることが即座に分かります。区域区分がどの都市計画とどう連動するかは都市計画の種類と決定権者、用途地域13種の並びは用途地域13種の覚え方で確認できます。

    登記記録の地目は判定材料にならない

    宅地かどうかは、宅建業法2条1号が定める基準で決まります。前掲の解釈・運用の考え方が「その地目、現況の如何を問わない」と明記しているとおり、不動産登記記録の地目が「宅地」であるか「田」であるかは、この判定に影響しません。地目が田であっても、用途地域内にあれば宅建業法上の宅地ですし、地目が宅地であっても、用途地域外で現に建物の敷地でもなく、建物を建てる目的でもない土地は、宅建業法上の宅地ではありません。

    同じ「宅地」という語が、宅建業法、不動産登記、固定資産税の各制度で別々の基準によって使われているという点は、横断的に押さえておく価値があります。とくに宅地造成及び特定盛土等規制法2条1号の「宅地」は「農地、採草放牧地及び森林……並びに道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供されている土地……以外の土地」と定義されており、農地等と公共施設用地を除いた残り全部という引き算の作りです。用途地域を手がかりにする宅建業法の宅地とは、範囲も発想も違います。盛土規制法側の定義は盛土規制法の規制区域と許可・届出、造成宅地防災区域との関係は造成宅地防災区域と特定盛土等規制区域で扱っています。

    用途地域内でも宅地にならない5つ

    後半には「道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のもの」という除外があります。政令(宅建業法施行令1条)が定めているのは広場と水路です。したがって、用途地域内であっても宅地にならないのは、道路、公園、河川、広場、水路の5つに供されている土地に限られます。

    この5つは、頭文字を拾って覚えるのが定番です。逆に言えば、用途地域内の土地で宅地にならないのはこの5つだけなので、「用途地域内の畑は宅地でない」「用途地域内の駐車場用地は宅地でない」といった選択肢は誤りになります。畑も駐車場用地も、除外リストに入っていません。

    「建物」の範囲

    建物については定義規定が置かれていませんが、2条2号のかっこ書きが「建物の一部を含む」としています。したがって、マンションの一室も建物です。区分所有建物の専有部分を売買する行為は、当然に宅建業法上の取引に当たります。区分所有の基本は区分所有法の基本と共用部分で扱っています。

    登記の有無は関係ありません。未登記の建物も建物です。また、居住用に限られず、店舗、事務所、倉庫、工場も建物に含まれます。他方、屋根と柱または壁を備えていない構築物、たとえば野立ての広告塔や、土地に定着していない仮設物は建物とは扱われません。

    第一段階の本体「取引」に当たるか

    対象物が宅地または建物であることを確認したら、次はその行為が2条2号の列挙に当てはまるかを見ます。ここは、売買・交換・貸借という三つの取引類型と、自ら・代理・媒介という三つの関与形態の組み合わせで整理します。

    自ら当事者となる売買

    自分が売主または買主として宅地建物を売買する行為は、取引に当たります。条文が「売買」としか書いていない以上、売る側だけでなく買う側も含まれる点に注意してください。転売目的で宅地を買い集める行為も、業として行えば宅建業です。

    もっとも、自分が使うために建物を1棟買うだけであれば、業としての要件を満たさないので免許は不要です。取引に当たることと、免許が必要になることは別の話です。この区別をつけないまま「買うのも取引だから免許が要る」と早合点しないでください。

    自ら当事者となる交換

    交換も売買と同じ扱いです。宅地と宅地、宅地と建物、建物と建物のいずれの組み合わせでも、自ら当事者として交換すれば取引に当たります。交換は実務上の登場頻度こそ低いものの、条文上は売買と完全に並べて書かれているので、試験では売買と同じ結論になります。

    ここで狙われるのは、交換だけを取引から外す選択肢です。「自ら交換をする行為は宅建業に当たらない」といった記述は誤りです。条文の前半に「売買若しくは交換」と明記されている以上、交換は入ります。

    自ら貸借は取引に当たらない

    宅建業法の免許論点で最大の頻出ポイントがこれです。自分が所有する宅地建物を、自分が貸主となって他人に貸す行為は、宅建業法上の取引に当たりません。2条2号の前半が「売買若しくは交換」としか書いておらず、貸借を含めていないからです。

    したがって、賃貸マンションを何棟所有していようと、それを自ら賃貸する限り、免許は不要です。オフィスビルを1棟所有して多数のテナントに貸す行為も同じです。個人が転勤に伴って自宅を第三者に貸す行為も、当然に免許は不要です。戸数や規模、反復継続性は一切問題になりません。第一段階で落ちるので、第二段階の判定に進まないからです。

    この結論の理由づけも押さえておくと応用が利きます。宅建業法1条は、免許制度と事業への規制によって業務の適正な運営と取引の公正を確保し、もって「購入者等の利益の保護」と流通の円滑化を図ることを目的に掲げています。自ら貸借の場合、貸主と借主が直接向き合うだけで、専門知識を持つ仲介者が間に入って報酬を得る構造がありません。加えて、借主の保護は借地借家法という別の法律が担っています。だから宅建業法の規律から外されている、と理解できます。借地借家法の枠組みは借地借家法の全体像を押さえるを参照してください。

    転貸・サブリースも自ら貸借

    自ら貸借に当たるかどうかで迷いやすいのが、転貸です。建物所有者から一括して借り上げ、それを入居者に転貸するいわゆるサブリース事業も、転貸人自身が貸主として貸す以上、自ら貸借です。したがって、転貸行為そのものに宅建業の免許は不要です。

    ここで区別しなければならないのが、同じ事業者が入居者募集の媒介まで行う場合です。他人の物件について貸借の媒介をするのであれば、それは取引に当たり、業として行えば免許が必要になります。サブリースなのか媒介なのかは、契約上その事業者が貸主の地位に立っているかどうかで決まります。所有者から一括で借り上げ、空室リスクを自ら負って入居者と賃貸借契約を結んでいるなら自ら貸借です。所有者と入居者が直接賃貸借契約を結び、事業者はその成立に尽力して報酬を受けるだけなら媒介です。同じ会社が両方の建物を扱っていることもあるので、会社の看板ではなく契約ごとに判定します。

    なお、サブリースについては、宅建業法とは別に賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律による規制があります。免許論点として押さえておくべきは、規制がかかる入口の作りです。同法2条4項は、賃借人が当該賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営むことを目的として締結される賃貸住宅の賃貸借契約を「特定賃貸借契約」と定義し、同条5項は、その契約に基づき賃借した賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営む者を「特定転貸事業者」と定義しています。誇大広告等の禁止(28条)以下の規制は、この「特定転貸事業者」という属性に対してかかります。

    したがって、賃貸住宅管理業の登録を受けているかどうかも、宅建業の免許を持っているかどうかも、規制がかかるかどうかとは関係がありません。宅建業の免許が不要であることと、何の規制もないこととは違います。宅建業法が自ら貸借を対象から外している空白を、後発の法律が別の設計で埋めたと理解するほうが正確です。規制の中身は賃貸住宅管理業法の登録と業務管理者、管理会社の業態ごとの適用関係は不動産管理会社にどの法律がかかるかで扱っています。

    駐車場の賃貸

    青空駐車場を自ら貸す行為も、当然に自ら貸借なので免許は不要です。ただし論点が二つ重なっているので、切り分けておきます。用途地域内の駐車場用地であれば、その土地は宅地に当たります(除外5つに駐車場は入っていません)。それでも自ら貸借である以上、第一段階の取引で落ちます。他方、他人の駐車場用地について貸借の媒介を反復継続して行えば、宅地の貸借の媒介として免許が必要になり得ます。

    宅建業者が自ら貸主となる場合

    免許を持っている宅建業者が、自社所有の建物を自ら貸主として賃貸する場合はどうなるか。ここも自ら貸借なので、その行為は宅建業法上の取引ではありません。したがって、その賃貸借契約について35条の重要事項説明をする義務も、37条書面を交付する義務もありません。免許を持っているかどうかで結論は変わりません。

    宅建業法の業務規制は、宅建業者が「宅建業に関して」行う取引に及びます。自ら貸借はそもそも宅建業に含まれないので、規制の対象外です。この理屈が分かっていれば、「宅建業者Aが自ら貸主となる建物賃貸借契約について、Aは借主に重要事項説明をしなければならない」という記述が誤りであることを、条文の構造から導けます。37条書面の記載事項は37条書面の記載事項を整理するで扱っています。

    逆に言えば、宅建業者が売主となる売買であれば、自ら売買として宅建業に当たるので、重要事項説明も37条書面も必要です。加えて、買主が宅建業者でなければ8種制限の適用も受けます。8種制限が適用される場面の切り分けは8種制限が適用されない場合を参照してください。

    代理

    売買、交換、貸借のいずれについても、代理は取引に当たります。2条2号の後半には貸借が明記されているからです。自ら貸借は取引でないのに、貸借の代理は取引になる。この非対称は解釈の産物ではなく、前半と後半で列挙が書き分けられている結果にすぎません。

    代理は、本人に代わって契約を締結する権限を持つ関与形態です。民法上の代理の効果は代理制度の基本と要件で扱っています。宅建業法上は、代理を業として行えば免許が必要になり、報酬額の上限も媒介より高く設定されています。報酬計算のルールは報酬額の計算パターンを整理するで確認できます。

    媒介

    媒介も、売買・交換・貸借のすべてについて取引に当たります。媒介は、契約締結そのものは当事者が行い、事業者はその成立に向けて尽力する関与形態です。賃貸仲介会社の業務は貸借の媒介であり、これを反復継続して行う以上、宅建業の免許が必要です。賃貸仲介の実務的な流れは賃貸仲介の流れと注意点にまとめています。

    媒介契約の規制そのものについては媒介契約の3類型と規制を参照してください。

    9つの組み合わせをどう覚えるか

    売買・交換・貸借の3類型と、自ら・代理・媒介の3形態を掛け合わせると9通りになります。このうち取引に当たらないのは「自ら貸借」の1つだけです。残る8つはすべて取引に当たります。

    • 自ら売買、自ら交換は取引に当たる。
    • 売買・交換・貸借の代理は、3つとも取引に当たる。
    • 売買・交換・貸借の媒介も、3つとも取引に当たる。
    • 唯一の例外が自ら貸借で、これだけが取引に当たらない。

    9マスのうち例外は1つ、という形で覚えるのが最短です。網羅的に覚えるのではなく、「自ら貸借だけが抜けている」と押さえます。

    第二段階「業として」の判定

    第一段階を通過したら、その行為を業として行っているかを判定します。ここで手掛かりになるのが、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」が2条2号関係で示している判断要素です。同解釈では、次の5つの要素を総合的に勘案して事業性の有無を判断するとしています。

    取引の対象者

    広く一般の者を対象に取引を行おうとする場合は事業性が高く、取引の当事者に特定の関係が認められる場合は事業性が低い、とされています。これが「不特定多数」という言葉の中身です。

    読み落としやすいのは、この要素に付された注記です。同解釈は、ここでいう「特定の関係」とは親族間、隣接する土地所有者等の代替が容易でないものが該当する、としています。基準は「人数が少ないこと」でも「名簿があること」でもなく、その相手でなければならない事情があるかどうかです。自己所有の土地を隣地所有者1人に売る、あるいは親族に譲るという場合は、まさにこの注記が挙げる関係に当たるので事業性が低いと評価されます。

    他方、自社の従業員のみを対象に宅地を分譲する場合は、対象が「自社の従業員」という属性で括られた集団であって、注記のいう代替が容易でない関係とは言えません。人数を絞っていることだけを理由に事業性が否定されるわけではなく、区画割りして継続的に売れば他の要素が事業性を押し上げます。「相手が限定されていれば必ず不要」と単純化しないでください。

    取引の目的

    利益を目的とする場合は事業性が高く、特定の資金需要の充足を目的とする場合は事業性が低い、とされています。同解釈が特定の資金需要の例として挙げているのは、相続税の納税と、住み替えに伴う既存住宅の処分です。いずれも利益を得るために行うものではない、という括り方になっています。

    取引対象物件の取得経緯

    転売するために取得した物件の取引は事業性が高く、相続または自ら使用するために取得した物件の取引は事業性が低い、とされています。同解釈は「自ら使用するために取得した物件」の例として、個人の居住用の住宅、事業者の事業所、工場、社宅を挙げています。社宅がここに入っている点は押さえておく価値があります。会社が社宅として使うために取得した建物を処分する場面は、取得経緯の要素としては事業性が低い側に評価されるということです。競売で取得した物件も、転売目的であれば事業性が高いと評価される側に寄ります。

    ただし、取得経緯はあくまで5要素のひとつです。相続で取得した土地であっても、それを区画割りして不特定多数に反復継続して分譲するのであれば、他の要素が強く事業性を示すので、免許が必要になります。「相続財産だから免許不要」という結論に飛びつく選択肢は、典型的な誤りです。

    取引の態様

    自ら購入者を募り一般消費者に直接販売しようとする場合は事業性が高く、宅建業者に代理や媒介を依頼して販売しようとする場合は事業性が低い、とされています。

    ここが試験で最も狙われる要素です。「宅建業者に代理を依頼するのだから、自分は免許を受けなくてよい」という記述は、原則として誤りです。事業性が低いという評価要素のひとつにすぎず、それだけで免許不要が確定するわけではありません。とくに、自らが売主となって不特定多数に反復継続して宅地を分譲する場合は、販売の窓口を宅建業者に任せていても、自ら売買を業として行っていることに変わりがないため、免許が必要と解されます。

    なお、依頼を受けた側の宅建業者が代理・媒介を業として行う以上、そちらに免許が必要なのは当然です。両者を混同しないでください。

    取引の反復継続性

    反復継続的に取引を行おうとする場合は事業性が高く、1回限りの取引として行おうとする場合は事業性が低い、とされています。この要素にも注記が二つ付いていて、そこが試験で使われます。

    ひとつめの注記は、反復継続性は現在の状況のみならず、過去の行為並びに将来の行為の予定及びその蓋然性も含めて判断する、というものです。判定の時間軸が現在に固定されていません。いま目の前にある取引が1件でも、過去に同種の取引を重ねていれば反復継続性は認められますし、これから売る予定があってその実現の見込みが高ければ、やはり認められます。「今回が初めての取引だから業ではない」という論法が通らない根拠がここにあります。

    ふたつめの注記は、1回の販売行為として行われるものであっても、区画割りして行う宅地の販売等、複数の者に対して行われるものは反復継続的な取引に該当する、というものです。これが「区画割りして分譲すれば業に当たる」という結論の根拠です。注記の言い回しに注意してください。基準になっているのは契約の本数ではなく「複数の者に対して行われるか」です。もともと1筆の土地であっても、10区画に分けて別々の買主に売れば、複数の者に対する取引になります。逆に、広い土地をそのまま1人に1回で売るのであれば、反復継続性は認められにくくなります。

    回数の明文基準はありません。「何回から業に当たるか」という問いには、法令上の答えがないというのが正確な回答です。

    営利性は必須要件ではない

    5要素のうち「取引の目的」に利益を目的とすることが挙げられていますが、これは事業性を高める方向に働く一要素であって、必須要件ではありません。同解釈が置いた物差しは「社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行う状態」であり、営利目的をその成立要件にはしていないからです。無報酬・非営利であっても、広く一般の者を相手に反復継続して媒介を行えば、業に当たり得ます。「ボランティアだから免許は要らない」という論法は通りません。

    総合判断であることの意味

    5要素はチェックリストではなく、総合的に勘案する材料です。したがって、ある要素が事業性を否定する方向に働いていても、他の要素が強く事業性を示せば、全体として業に当たると判断されます。試験でも、ひとつの要素だけを取り出して結論を出させる選択肢は、たいてい誤りになるよう作られています。

    典型的な出題パターン

    ここまでの判定枠組みを、頻出の設例に当てはめて確認します。どのパターンも、二段階のどこで結論が決まるかを意識してください。

    自己所有地を区画割りして不特定多数に売る

    免許が必要です。第一段階は自ら売買なので通過します。第二段階も、一団の土地を分割することで反復継続性が認められ、相手も不特定多数なので、業に当たります。土地の取得経緯が相続であっても、自己使用のために長年保有していた土地であっても、結論は変わりません。

    なお、免許の要否とは別に、取引する土地の面積や所在によっては国土利用計画法の届出が必要になります。注視区域・監視区域内では契約締結前の事前届出が求められ、免許制度とは別系統の手続として重なってきます。この点は国土利用計画法の事前届出を参照してください。

    従業員のみを対象に分譲する

    対象者が自社の従業員に限られている点だけを見れば事業性を下げる方向に読めますが、解釈・運用の考え方が「特定の関係」の例として挙げているのは親族間と隣接する土地所有者等、すなわち代替が容易でない関係です。従業員という属性で括られた集団はこれに当たらず、区画割りして複数の者に売るのであれば反復継続性の注記にも該当します。したがって、相手を従業員に限ったことを理由に免許不要と結論づけることはできません。「相手が限定されているから当然に不要」と即断する選択肢には警戒してください。

    宅建業者に代理を依頼して自ら売主となる

    免許が必要です。前述のとおり、代理を依頼したという事情は事業性を下げる一要素にすぎません。自ら売主として不特定多数に反復継続して売る以上、自ら売買を業として行っています。この設問は、免許論点のなかでも引っかけとして繰り返し使われます。

    競売により取得した宅地を分譲する

    免許が必要です。競売という取得方法自体は、免許の要否を左右しません。転売目的で買い受けたのであれば取得経緯は事業性を高める方向に働き、これを区画割りして不特定多数に売れば反復継続性も認められます。

    自ら所有するマンションを賃貸する

    免許は不要です。何戸あっても、何棟あっても結論は同じです。第一段階の取引で落ちるので、業としての判定に進みません。ただし、そのマンションを賃貸するのをやめて分譲に切り替えれば、自ら売買になるので、免許が必要になります。

    借り上げた建物を転貸する

    免許は不要です。転貸も自ら貸借です。ただし、入居者募集を媒介として行うのであれば、そちらには免許が必要になります。

    用途地域外の農地の売買を媒介する

    免許は不要な場合があります。用途地域外にあり、かつ建物の敷地に供する目的でない農地は、宅地に当たりません。対象物の段階で落ちるので、媒介であっても宅建業になりません。ただし、その農地が用途地域内にあれば宅地に当たり、媒介を業として行えば免許が必要です。農地の権利移動については農地法の許可と規制を参照してください。

    建設会社が自社施工の建売住宅を売る

    免許が必要です。建設業の許可を受けていることは、宅建業の免許を代替しません。建物を不特定多数に反復継続して販売する以上、自ら売買を業として行っています。

    組合方式による住宅の建築という名目の募集

    売買や媒介の看板を掲げずに同じ実質を行う形が、解釈・運用の考え方に一つだけ名指しで書かれています。「組合方式による住宅の建築」という名目で、組合員以外の者が業として、住宅取得者となるべき組合員を募集し、その組合員による宅地の購入や住宅の建築について指導・助言を行う形です。

    同解釈は、組合員による宅地または建物の取得がその売買として行われ、かつその売買に組合員以外の者が関与する場合には、通常、宅地建物の売買またはその媒介に該当するものと認められ、宅建業法が適用される、としています。名目が「組合の運営」であっても、実質が売買またはその媒介であれば2条2号の列挙に落ちる、という判断です。

    さらに、組合員の募集が宅地または建物が特定されないまま行われる場合であっても、宅地または建物が特定された段階から宅建業法が適用される、とされています。募集の入口で物件が決まっていないことは、適用を免れる理由になりません。行為の名前ではなく実質で判定するという第一段階の基本が、そのまま現れている箇所です。

    免許が不要な者と適用除外

    行為の型と業としての要件を満たしていても、主体によって宅建業法の適用が外れる場合があります。ここは丸暗記が必要な部分です。

    国および地方公共団体

    宅建業法78条1項は「この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない」と定めています。したがって、国や都道府県、市町村が宅地の分譲を行っても免許は不要です。適用がないのは免許の規定だけでなく、宅建業法の規定全体です。

    注意すべきは、国や地方公共団体から媒介や代理の依頼を受けた宅建業者には、宅建業法がそのまま適用されるという点です。依頼者が適用除外だからといって、35条の重要事項説明や37条書面の交付が免除されるわけではありません。適用除外は主体に付いてくるのであって、物件や取引に付いてくるのではない、と理解してください。重要事項説明の対象は重要事項説明の全体像で扱っています。

    都市再生機構と地方住宅供給公社

    独立行政法人都市再生機構と地方住宅供給公社も、免許を受けずに宅地建物の取引を行うことができます。ただし、その根拠がどこにあるかは正確に押さえておく価値があります。根拠は宅建業法本体でも、都市再生機構法や地方住宅供給公社法という法律本体でもありません。それぞれの法律が「他の法令の準用」を政令に委ねており、その政令が宅建業法78条1項を名指しで準用しているという構造です。

    具体的には、独立行政法人都市再生機構法施行令34条が「次の法令の規定については、機構を国の行政機関とみなして、これらの規定を準用する」としたうえで、4号に「宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)第七十八条第一項」を挙げています。地方住宅供給公社法施行令2条も同じ形で、「地方住宅供給公社を、市のみが設立したものにあつては当該市と、その他のものにあつては都道府県とみなして」準用する法令の4号に、宅建業法78条1項を置いています。

    この作りから分かることが二つあります。ひとつは、準用されているのが78条1項だけだという点です。78条1項は「この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない」という条文ですから、これを準用すれば結果として宅建業法全体が適用されません。免許だけが外れるのではなく、法律全体が外れます。もうひとつは、機構や公社が「国」「地方公共団体」そのものになるわけではなく、78条1項の適用の場面に限ってそうみなされるにすぎないという点です。したがって、他の法律で国や地方公共団体に与えられている扱いが自動的に及ぶわけではありません。

    信託会社および信託銀行

    信託会社と、信託業務を兼営する金融機関、いわゆる信託銀行については、宅建業法77条に特例があります。ここは78条1項と違って、外れる規定が条文で限定列挙されているので、その範囲を確認しておきます。

    77条1項が適用しないとしているのは、3条から7条まで、12条、25条7項、66条、67条1項です。3条から7条までが免許そのものの規定、12条が無免許事業等の禁止、25条7項が営業保証金を供託した旨の届出をしない場合の免許取消し(免許から3か月以内に届出がないと催告し、催告到達から1か月以内になお届出がなければ免許を取り消すことができる、という流れの最後の部分)、66条と67条1項が免許の取消しです。要するに、免許の入口と出口に関する規定だけが外れています。信託会社はそもそも免許を受けないのですから、免許を前提とする取消しの規定が働く余地がなく、外されているというだけのことです。

    そのうえで、77条2項が「宅地建物取引業を営む信託会社については、前項に掲げる規定を除き、国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者とみなしてこの法律の規定を適用する」と定めています。「前項に掲げる規定を除き」という限定が付いているところが読みどころで、裏を返せば、それ以外の規定はすべて適用されるということです。重要事項説明も37条書面の交付も、営業保証金の供託そのものも必要です。営業保証金の仕組みは営業保証金の供託と還付で扱っています。

    77条3項は、信託会社が宅建業を営もうとするときは国土交通大臣に届け出なければならないと定めています。この届出を怠り、または虚偽の届出をした場合には、83条1項1号により50万円以下の罰金が科されます。免許が不要であることと、手続が一切不要であることは別です。

    信託業務を兼営する金融機関については、77条4項が「政令で定める」としており、宅建業法施行令9条がこれを受けています。同条2項は、兼営金融機関等について、業として行うことができる行為の範囲を、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律1条1項の信託業務に該当するものに限る旨の条件が付された国土交通大臣の免許を受けた宅建業者とみなす、としています。信託会社と完全に同じ扱いではなく、行える取引の範囲に条件が付く形になっている点が違いです。

    なお、免許の欠格事由の適用がないのも、免許に関する5条が77条1項の除外リストに入っているためです。免許の欠格事由そのものは免許の欠格事由一覧で確認してください。国・地方公共団体のように法律全体の適用が外れるのとは扱いが違うという点は、免許制度の横断整理として免許制度と登録制度の横断整理にまとめています。

    免許が必要になる紛らわしい団体

    適用除外は、78条1項、77条、そして政令に78条1項の準用規定が置かれている法人に限られます。したがって、次のような団体には免許が必要です。

    • 農業協同組合、漁業協同組合などの協同組合
    • 学校法人、宗教法人、社会福祉法人
    • 公益社団法人、公益財団法人、特定非営利活動法人
    • 独立行政法人であっても、準用規定を持たないもの

    「公的な性格を持つ団体だから不要だろう」という感覚で解くと外します。農業協同組合法、社会福祉法、宗教法人法のいずれにも、宅建業法78条1項を準用する規定はありません。基準になるのは団体の公共性ではなく、条文または政令に準用規定があるかどうかだけです。

    独立行政法人という法人形式についても同じことが言えます。都市再生機構には施行令34条4号の準用規定がありますが、たとえば独立行政法人住宅金融支援機構法施行令には、宅建業法78条1項を準用する規定は置かれていません。機構の業務は貸付債権の譲受けや住宅融資保険といった金融業務が中心で、そもそも宅地建物の売買を業とする建て付けになっていないためですが、独立行政法人という形式それ自体が適用除外を導くのではないことは、条文の有無から確認できます。機構の業務範囲は住宅金融支援機構の業務で扱っています。

    破産管財人による売却は別の層の話

    最後にひとつ、性質の違うものを並べておきます。ここまでの適用除外は、宅建業に当たることを前提に主体を理由として法の適用を外す仕組みでした。破産管財人はそうではなく、そもそも第二段階の「業として行うもの」に当たらないという理由で免許が不要になります。同じ「免許不要」でも層が違うので、選択肢で根拠を入れ替えられたときに気づけるようにしておいてください。

    破産管財人が破産財団に属する宅地建物を任意売却する行為に免許が要らないことは、解釈・運用の考え方の第2条第2号関係が明記しています。ここは理由づけを取り違えやすいので、条文の外側の文言を正確に押さえてください。

    同解釈は、破産管財人が破産財団の換価のために自らの名において任意売却により宅地または建物の取引を「反復継続的に行うことがある」ことをまず認めています。そのうえで、当該行為は破産法に基づく行為として裁判所の監督の下に行われるものであることにかんがみ、法2条2号にいう「業として行なうもの」には該当せず、3条1項の免許を受けることを要さない、としています。つまり、免許が不要になる理由は「反復継続していないから」ではありません。反復継続していても、裁判所の監督下の清算行為であることを理由に「業として行なうもの」から外している、という構成です。反復継続性を否定する説明を選ばせる選択肢が作れる箇所なので、順序を逆に覚えないでください。

    なお同解釈は、売却に際して必要に応じて宅建業者に代理または媒介を依頼し、購入者の保護を図ることが望ましいとも付言しています。この依頼を受けた宅建業者の側には、当然に宅建業法が適用されます。ここも主体ごとに切り分けて考える場面です。

    無免許で営業した場合の効果

    免許の要否を判定する意味は、免許なしで営業したときの効き目にあります。

    無免許事業の禁止

    宅建業法12条1項は「第三条第一項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営んではならない」と定めています。同条2項は「第三条第一項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営む旨の表示をし、又は宅地建物取引業を営む目的をもつて、広告をしてはならない」と定めています。免許申請中の段階で「宅建業を営む」旨の広告を出すことも、この2項に触れます。

    2項が別に置かれている意味は、実際に契約に至らなくても規制が働く点にあります。営業を開始する前でも、表示や広告をした時点で違反が成立します。宅建業を営む意思の外部への表明を早い段階で断つことで、無免許業者に相談に行く消費者そのものを生まないという設計です。

    この12条2項と、免許を受けた宅建業者にかかる33条の広告開始時期の制限とを混同しないでください。33条は、宅地の造成または建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法29条1項もしくは2項の許可、建築基準法6条1項の確認、その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ、その宅地建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない、という規定です。開発許可と建築確認は条文が直接名指ししており、「政令で定めるもの」がかかるのはその他の許可等の処分の側だという読み方までしておくと安全です。33条の名宛人は宅建業者、12条2項の名宛人は免許を受けていない者です。禁じている対象も、前者は特定の物件の広告、後者は自分が宅建業者であるかのような表示です。広告規制の側の整理は不動産広告の表示基準、実際に問題になる広告類型はおとり広告と二重価格表示で扱っています。

    罰則は12条1項と2項で段が違う

    免許の要否の判定を誤ったとき、どちらの項に落ちるかで結果がまったく変わります。12条1項違反、すなわち実際に無免許で宅建業を営んだ場合は79条2号に当たり、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科です。これに対して12条2項違反、すなわち無免許のまま表示や広告をしたにとどまる場合は82条2号で、100万円以下の罰金です。拘禁刑はありません。13条の名義貸しも同じ構造で、1項が79条3号、2項が82条2号に振り分けられています。

    覚えるべきは、営業まで至ったか、表示・広告にとどまったかという線で刑が段違いになる、という一点です。罰則そのものの体系、両罰規定の対象範囲、監督処分との違いは宅建業法の罰則一覧にまとめてあるので、免許論点からはこの振り分けだけを持ち出せば足ります。

    無免許で営む者は「宅建業者」ではない

    見落とされやすい帰結が、2条3号の定義から出ます。同号は「宅地建物取引業者」を「第三条第一項の免許を受けて宅地建物取引業を営む者」と定義しています。免許を受けていない者は、どれだけ大規模に宅地建物の取引を反復していても、この法律のいう宅建業者ではありません。

    これは用語の問題では終わりません。78条2項は、33条の2および37条の2から43条までの規定、いわゆる8種制限を「宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない」としています。相互間かどうかは、実態としての不動産取引の慣れではなく、双方が2条3号の宅建業者であるかどうかで決まります。したがって、買主が免許を受けずに不動産取引を繰り返している者であっても、その者は宅建業者ではないので、売主業者は8種制限をそのまま負います。免許の要否の判定は、8種制限の適用の有無にまで跳ね返るということです。適用場面の切り分けは8種制限が適用されない場合を参照してください。

    なお、無免許で締結された売買契約や媒介契約の私法上の効力は、宅建業法が直接に定めているわけではありません。12条は行政上の取締りと刑罰によって無免許営業を抑止する規定であって、契約の効力を否定する条文は置かれていません。この点は、免許が失効した後でも「取引を結了する目的の範囲内においては、なお宅地建物取引業者とみなす」とした76条が、既存の取引関係を清算させる方向で作られていることと合わせて読むと、法の姿勢が見えます。

    免許を受けた後の話

    免許が必要と判定されたら、次は事務所ごとの要件や専任の宅建士の設置が問題になります。事務所の要件は事務所の要件と設置基準、専任の宅建士については専任の宅建士の設置義務で扱っています。分譲の現地に置く案内所のように、事務所以外の場所で契約を締結する場合には、届出と標識と専任宅建士の要否がそれぞれ別のルールで決まるので、案内所等の届出・標識・専任宅建士の要否を参照してください。廃業したときの手続は廃業等の届出のルールを参照してください。

    試験での出題ポイント

    この論点は、宅建業法の第1問目付近に置かれることが多く、失点が許されない位置にあります。問われ方には明確な型があります。

    自ら貸借を取引に含める誤り

    最頻出です。「自ら所有する建物を賃貸する行為を業として行う者は、免許を受けなければならない」といった記述は誤りです。棟数や戸数を大きく書いて、規模で判断させようとする作りが典型です。数字に引っ張られず、関与形態を見てください。

    代理・媒介の貸借を取引から外す誤り

    自ら貸借が外れることを覚えた受験者が、貸借そのものが外れると勘違いするのを狙った出題です。貸借の代理も媒介も、取引に当たります。

    宅建業者への依頼で免許不要とする誤り

    「宅建業者に販売の代理を依頼するので、自らは免許を受ける必要がない」という記述は誤りです。5要素のひとつにすぎないという理解を、そのまま答えに使えます。

    取得経緯だけで結論を出す誤り

    「相続により取得した土地なので免許は不要」という記述も誤りです。区画割りして不特定多数に売れば免許が必要です。

    宅地の定義を使った出題

    「用途地域内の農地は宅地に当たらない」「用途地域内の空き地は宅地に当たらない」といった記述は誤りです。除外は道路、公園、河川、広場、水路の5つだけです。逆に「都市計画区域外の土地は宅地に当たらない」という記述も誤りで、建物の敷地に供せられる土地なら宅地です。

    適用除外の主体を入れ替える出題

    国・地方公共団体は法律全体の適用除外、信託会社・信託銀行は免許部分のみの特例、という違いを入れ替えてきます。また、農業協同組合や社会福祉法人を適用除外に紛れ込ませる作りも定番です。

    免許の要否と業務規制を混ぜる出題

    免許不要であることと、宅建業法の規制が及ばないことは違います。信託会社の例と、国から依頼を受けた宅建業者の例が、この混同を突いてきます。宅建業法全体の頻出論点は宅建業法の頻出論点を絞るにまとめています。

    「必ず」「常に」で断定させる作り

    免許論点の選択肢には、条文が総合判断としている部分を断定に置き換える型が繰り返し現れます。「相手方が特定されていれば常に免許は不要である」「宅建業者に媒介を依頼した場合は必ず免許が不要である」といった書きぶりです。国土交通省の解釈・運用の考え方は5要素を総合的に勘案するとしているのですから、単一の要素で「常に」「必ず」と言い切る記述は、それだけで疑うべき対象になります。

    逆に、条文が例外なく決めている部分については断定が正しくなります。自ら貸借が取引に当たらないという結論は、2条2号の文言そのものから出るので、「戸数を問わず免許は不要である」という断定は正しい記述です。断定表現がすべて誤りなのではなく、条文が総合判断を求めている箇所での断定が誤りだという区別をつけてください。こうした語尾の作りは論点を問わず共通しているので、引っかけ表現のパターンで型としてまとめて確認しておくと、初見の問題でも反応できるようになります。

    令和8年度に向けた改正の影響

    令和8年度試験は2026年4月1日現在施行の法令から出題されます。この基準日で見ると、宅建業法の法律本体は2026年4月1日施行の改正を受けていますが、2条の定義、77条の信託会社の特例、78条の適用除外を含めて、本記事が扱った条文に実体的な変更はありません。免許の要否という論点そのものは、従来どおりの理解で対応できます。同じ基準日で実体改正が入ったのは施行規則16条の2など重要事項説明の側で、免許論点の外側です。年度全体の改正の整理は令和8年度試験に影響する法改正まとめを参照してください。

    覚え方・整理の仕方

    暗記量そのものは多くありません。三つの型に落とし込むと、本試験の場で迷わなくなります。

    9マスの例外はひとつだけ

    売買・交換・貸借と、自ら・代理・媒介の9マスを頭に描き、「自ら貸借」の1マスだけを塗りつぶす。塗りつぶした1マスが取引に当たらない唯一の組み合わせです。9つを個別に覚えるのではなく、例外の位置だけを覚えます。

    宅地の除外は「道公河広水」

    用途地域内で宅地から外れるのは、道路・公園・河川・広場・水路の5つです。頭文字を「どう・こう・か・こう・すい」とつなげて音で覚えるか、いずれも公共の用に供される施設という共通点で意味づけて覚えます。畑や駐車場はここに入っていない、と対にして記憶するのが有効です。

    業としての5要素は「者・的・歴・様・数」

    解釈・運用の考え方が挙げる5要素は、対象者・目的・取得経緯・態様・反復継続性です。それぞれ「誰に」「なぜ」「どうやって手に入れた」「どう売る」「何回」と言い換えると、日常的な言葉で思い出せます。そして、どれも単独では結論を決めないという点をセットで覚えます。

    適用除外は二層に分けて覚える

    法律全体が適用されない層に、国・地方公共団体・都市再生機構・地方住宅供給公社。免許だけが外れる層に、信託会社・信託銀行。この二層構造で覚えると、業務規制の適用の有無まで一緒に処理できます。

    層の分かれ目は、根拠となる条文が78条1項か77条かという一点です。78条1項は「この法律の規定は」で始まるので全部が外れます。77条1項は3条から7条まで、12条、25条7項、66条、67条1項と規定を列挙しているので、列挙されたものだけが外れます。都市再生機構と地方住宅供給公社が上の層に入るのは、それぞれの施行令が78条1項のほうを準用しているからだ、と根拠までたどれるようにしておくと、主体を入れ替えた選択肢に強くなります。

    判定は必ず上から

    対象物が宅地か建物か、行為が取引に当たるか、業として行っているか。この順に落としていく癖をつけると、迷ったときに立ち返る場所ができます。免許の有効期間5年(3条2項)、無免許事業の3年・300万円と、無免許での表示・広告の100万円といった数字は、他の論点の数字と混ざりやすいので、宅建業法の数字まとめで横断的に確認しておくと定着します。

    理解度チェッククイズ

    Q1. Aが自己所有のマンション10戸を、不特定多数の者に反復継続して賃貸する場合、Aは宅建業の免許を受けなければならない。

    答えを見る **× 誤り。** 自ら貸借は2条2号の「取引」に当たりません。2条2号の前半は「売買若しくは交換」としか定めておらず、貸借は代理・媒介の場面にしか登場しないからです。戸数や反復継続性は結論に影響せず、第一段階で判定が終わります。

    Q2. Bが、相続により取得した土地を10区画に分割し、宅建業者Cに販売の代理を依頼して不特定多数の者に売却する場合、Bは免許を受ける必要がない。

    答えを見る **× 誤り。** 取得経緯が相続であること、販売を宅建業者に依頼していることは、いずれも国土交通省の解釈・運用の考え方が挙げる事業性を下げる要素にすぎません。一団の土地を分割して不特定多数に売る以上、反復継続性と対象者の要素が強く事業性を示すため、Bは自ら売買を業として行う者として免許が必要です。なお、代理を受けたCにも当然に免許が必要です。

    Q3. 用途地域内にある現況農地の売買を反復継続して媒介する行為は、対象が農地であるため宅建業に当たらない。

    答えを見る **× 誤り。** 2条1号により、用途地域内の土地は、道路・公園・河川・広場・水路に供されているものを除き、現況を問わず宅地に当たります。農地は除外リストに入っていないので宅地です。その売買の媒介を業として行えば宅建業に当たり、免許が必要です。

    Q4. 宅建業を営む信託会社は、国土交通大臣への届出をすれば足り、免許を受ける必要はないが、重要事項説明などの業務に関する規定は適用される。

    答えを見る **○ 正しい。** 宅建業法77条により、信託会社には免許に関する規定が適用されず、国土交通大臣への届出をもって宅建業を営むことができます。国土交通大臣の免許を受けた宅建業者として扱われるため、35条の重要事項説明や37条書面の交付といった業務規制はそのまま適用されます。国・地方公共団体が78条1項により法律全体の適用を受けないのとは異なります。

    Q5. 地方住宅供給公社が宅地の分譲を行う場合、宅建業の免許を受ける必要はない。

    答えを見る **○ 正しい。** 地方住宅供給公社法施行令2条4号が、宅建業法78条1項について、公社を市または都道府県とみなして準用しています。78条1項は「この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない」という条文なので、準用の結果、宅建業法全体が適用されず、免許も不要になります。独立行政法人都市再生機構も、都市再生機構法施行令34条4号が同じ形で78条1項を準用しています。他方、農業協同組合法や社会福祉法にはこうした準用規定がないため、宅建業を営むには免許が必要です。

    まとめ

    免許の要否は、対象物、取引、業としての三段構えで判定します。対象物の段階では、用途地域内の土地が現況を問わず宅地になること、除外は道路・公園・河川・広場・水路の5つに限られることを押さえます。取引の段階では、9つの組み合わせのうち自ら貸借だけが外れることを押さえます。業としての段階では、国土交通省の解釈・運用の考え方が示す5要素を総合考慮するのであって、ひとつの事情だけで結論が決まるわけではないことを押さえます。

    そのうえで、主体による適用除外を二層に分けて記憶します。国・地方公共団体・都市再生機構・地方住宅供給公社は法律全体の適用除外、信託会社・信託銀行は免許部分のみの特例です。この整理ができていれば、免許の要否を問う問題は安定して得点源になります。免許を受けた後の規制については宅建業者と宅建士の義務の違いへ進んでください。

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    読んだ内容を、宅建業法の肢で確かめる

    宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。

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