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宅建業法の罰則一覧|懲役・罰金の金額を整理

宅建業法 読了 約26分

宅建業法の罰則を79条から86条まで条文順に整理。無免許営業や名義貸しが最も重い理由、法人に1億円以下の罰金が科される両罰規定、監督処分との違いまで、序列の理由から解説します。

目次

    本記事の役割 — この記事は宅建業法の罰則(刑事罰・過料)を条文順に整理し、なぜその行為が重く扱われるのかという序列の理由に踏み込みます。
    指示処分・業務停止処分・免許取消処分といった行政上の監督処分の要件は監督処分と罰則|指示・業務停止・免許取消の違いにまとめています。

    宅建業法の罰則は、宅建業法の第8章(79条から86条まで)に置かれています。数字の羅列に見えるため丸暗記の対象にされがちですが、実際には違反行為が何を壊すのかによってきれいに序列がついており、その理由を理解すれば金額と年数はほとんど覚え直す必要がなくなります

    本記事の結論を先に述べます。宅建業法の罰則は、免許制度そのものを壊す行為(79条)を頂点に、取引の相手方に直接損害を与える行為(79条の2、80条、81条)、業者の資格や取引条件に関わる義務の違反(82条)、行政の把握を妨げるにとどまる手続違反(83条)、そして刑罰ですらない過料(85条から86条)へと、守るべき利益が「制度そのもの」から「個別の取引」を経て「行政の事務」へ移るにつれて軽くなっていきます。この一本の軸で全体をつかんでください。

    なお、刑法等の一部を改正する法律により2025年6月1日から懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。宅建業法の条文も現在は「拘禁刑」と書かれています。古い教材の「懲役」は読み替えて差し支えありませんが、条文の文言としては拘禁刑が正しい表記です。近年の改正論点は宅建業法の改正ポイントで確認できます。

    罰則の全体構造と刑の重さの序列

    7つの段階がある

    宅建業法の罰則は、重いものから順に次の段階に分かれています。それぞれの根拠条文とあわせて押さえてください。

    • 3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科(79条)
    • 2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科(79条の2)
    • 1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科(80条)
    • 6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科(81条)
    • 100万円以下の罰金(82条)
    • 50万円以下の罰金(83条)
    • 30万円以下の過料(85条)、20万円以下の過料(85条の2)、10万円以下の過料(86条)

    試験で実質的に問われるのは、79条、79条の2、80条、81条、82条、83条、84条、86条の8つです。85条と85条の2は指定流通機構や登録講習機関に関する規定なので、存在だけ知っていれば足ります。

    「併科」の意味を正確に押さえる

    79条から81条までの条文は「拘禁刑若しくは罰金に処し、又はこれを併科する」と書かれています。この「若しくは」と「又は」の使い分けが読めると、条文の意味が正確に取れます。

    原則は選択刑です。裁判所は拘禁刑と罰金のどちらかを選んで科します。そのうえで、情状が重い場合には両方を同時に科すこともできる、というのが併科の意味です。したがって「無免許営業をした者には3年以下の拘禁刑と300万円以下の罰金の両方が必ず科される」という記述は誤りで、「両方を科すこともできる」が正しい理解になります。

    これに対して82条と83条は「百万円以下の罰金に処する」「五十万円以下の罰金に処する」とだけ定めており、拘禁刑の定めがありません。拘禁刑がないので併科の余地もありません。罰金だけの段階には身体を拘束する刑がないという区切りは、段階を思い出すときの目印になります。

    刑罰と過料の決定的な違い

    罰金は刑罰です。有罪判決が確定すれば前科となり、宅建業法違反による罰金刑は免許の欠格事由に該当するため、業者は免許を取り消されます。刑の執行を終えてから5年を経過しなければ、あらためて免許を受けることもできません。欠格事由の全体像は宅建業の免許制度で扱っています。

    これに対して過料は、刑罰ではなく行政上の秩序罰です。刑事裁判ではなく非訟事件手続によって科され、前科になりません。免許や登録の欠格事由にも該当しません。宅建業法で過料の対象とされているのは、後述するとおり宅建士証の取扱いに関する義務など、それ自体では取引の相手方に損害を与えない義務違反に限られています。

    この区別は、「10万円以下の過料に処せられた宅建士は、登録を消除される」といった形の誤肢で問われます。過料は登録消除の事由ではありません。

    最も重い罰則(79条)は免許制度そのものを壊す行為

    4つの類型

    79条は「次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定め、4つの類型を挙げています。

    第1に、不正の手段によって3条1項の免許を受けた者(1号)です。虚偽の書類を提出して免許を取得した場合などが該当します。

    第2に、12条1項の規定に違反した者(2号)です。12条1項は「第三条第一項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営んではならない」と定めており、いわゆる無免許事業の禁止です。

    第3に、13条1項の規定に違反して他人に宅建業を営ませた者(3号)です。13条1項は「宅地建物取引業者は、自己の名義をもつて、他人に宅地建物取引業を営ませてはならない」と定める名義貸しの禁止で、名義を貸して実際に営業させた場合がここに入ります。

    第4に、65条2項または4項の規定による業務の停止の命令に違反して業務を営んだ者(4号)です。

    なぜこの4つが最も重いのか

    宅建業法は免許制度を土台にしています。国土交通大臣または都道府県知事が、欠格事由に当たらない者にだけ免許を与え、営業保証金の供託を求め、事務所ごとに専任の宅建士を置かせ、違反があれば監督処分で是正させる。この一連の仕組みが機能して初めて、消費者は目の前の業者を信用して高額な取引に踏み切れます。

    79条が挙げる4類型は、いずれもこの土台を無効化する行為です。無免許営業は審査を受けずに業界に入り込む行為であり、名義貸しは審査を通った看板の裏に審査を受けていない者を立たせる行為です。不正の手段による免許取得は審査そのものを欺く行為であり、業務停止命令違反は是正の仕組みを踏みにじる行為です。

    個別の取引で誰かが損をしたかどうかを問わず、制度が空洞化する。だから最も重い。 この理由づけを持っておけば、「無免許営業と誇大広告のどちらが重いか」といった比較を暗記に頼らず判断できます。

    名義貸しは2つの型で罰則が分かれる

    13条には1項と2項があり、罰則の重さが違います。ここは差がつく論点です。

    13条1項は、自己の名義をもって他人に宅建業を「営ませる」ことの禁止です。これに違反すると79条3号により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金となります。

    13条2項は、自己の名義をもって他人に宅建業を営む旨の「表示をさせ、または広告をさせる」ことの禁止です。こちらの違反は82条2号により100万円以下の罰金にとどまります。

    差が生まれる理由は、実際に営業が行われたかどうかです。無資格者に現実の取引をさせれば消費者が直接被害を受けますが、看板を出させたり広告を打たせたりした段階では、まだ取引は発生していません。同じ「名義貸し」でも、営業させたのか表示・広告をさせただけなのかで段階が1つでは済まないほど変わる、という点を押さえてください。

    同じ構造が無免許側にもあります。12条1項の無免許事業は79条2号で3年以下ですが、12条2項の無免許での表示・広告は82条2号で100万円以下の罰金です。広告に関する規制全般は広告に関する規制で整理しています。

    業務停止処分違反は罰則と免許取消しの両方を招く

    79条4号の業務停止命令違反には、もう一つ押さえるべき効果があります。66条1項9号は、65条2項または4項の業務停止処分に違反したときは免許を取り消さなければならないと定めており、これは「取り消すことができる」ではなく必要的取消しです。

    つまり業務停止処分に違反すると、刑事罰として3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金を受け、行政処分として免許を必ず取り消されます。刑事罰と行政処分は別系統なので、両方が同時に働くわけです。この併存関係については後の章であらためて整理します。

    2番目に重い罰則(79条の2)は相手方をだます行為

    47条1号の不告知・不実告知

    79条の2は、47条の規定に違反して同条1号に掲げる行為をした者を、2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定めています。

    47条1号が禁じているのは、契約の締結について勧誘をするに際し、または申込みの撤回・解除・債権の行使を妨げるため、一定の事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為です。対象となる事項は、35条1項各号・2項各号に掲げる事項(イ)、35条の2各号に掲げる事項(ロ)、37条1項各号・2項各号に掲げる事項(ハ)、そしてこれら以外でも宅地建物の所在・規模・形質、利用の制限、環境、交通の利便、対価の額や支払方法その他の取引条件、業者や取引関係者の資力・信用に関する事項であって相手方等の判断に重要な影響を及ぼすもの(ニ)と広く定められています。

    拘禁刑は軽いのに罰金は同額である理由

    79条と比べると、拘禁刑の上限は3年から2年に下がっていますが、罰金の上限は300万円で同じです。ここに制度の意図が表れています。

    免許制度を壊す行為は、業界全体の信頼を損なうという意味で構造的に重い。一方、重要な事項について嘘をつく行為は、目の前の消費者に直接、しかも回復困難な損害を与えます。人生で最も高額な買い物で騙されるという被害の質を考えれば、金銭的な制裁を軽くする理由がありません。だから拘禁刑では差をつけつつ、罰金は同水準に置かれているわけです。

    35条書面の交付義務違反との関係

    ここで重要な区別があります。重要事項説明そのものを怠ったことに対する罰則は、宅建業法に定められていません。 後の章で詳しく述べますが、35条違反は監督処分の対象にとどまります。

    79条の2が捉えているのは、説明をしなかったことではなく、故意に事実を隠した、あるいは嘘を言ったという点です。重要事項として説明すべき内容について意図的に虚偽を述べれば、47条1号違反として2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金の対象になります。説明義務の範囲そのものは宅建業者の説明義務まとめ、35条書面の記載事項は35条書面の覚え方で扱っています。

    なお47条1号の「故意に」という要件は落とせません。調査を尽くしたが知り得なかった事実を告げなかった場合は、この号には当たりません。過失による説明漏れは監督処分の問題として処理されます。

    1年以下と6月以下の罰則(80条・81条)

    80条は不当に高額の報酬を要求する行為

    80条は、47条の規定に違反して同条2号に掲げる行為をした者を、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定めています。47条2号は「不当に高額の報酬を要求する行為」です。

    この規定でよく問われるのが、要求しただけで成立するという点です。条文は「要求する行為」を禁じており、現実に受領したかどうかを問いません。相手方が拒んで一円も払わなかった場合でも、80条の罰則の対象になります。

    これと区別すべきなのが46条2項です。46条2項は国土交通大臣が定めた報酬額の上限を超えて報酬を「受けて」はならないという規定で、違反すると82条2号により100万円以下の罰金となります。要求しただけの47条2号のほうが重く、実際に受け取った46条2項のほうが軽いという逆転に見えますが、47条2号は「不当に高額」という悪質性の高い場面を捉えているのに対し、46条2項は上限を1円でも超えれば成立する形式的な規定だという違いがあります。報酬額の計算ルールは報酬額の制限にまとめています。

    81条は4つの行為をまとめている

    81条は、6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科として、1号で3つ、2号で1つの行為を挙げています。

    1号が挙げるのは、25条5項(26条2項において準用する場合を含む)、32条、44条の規定に違反した者です。

    25条5項は、営業保証金を供託した旨の届出をした後でなければ事業を開始してはならないという規定です。供託は消費者への弁済原資を確保する仕組みですから、それを済ませずに営業を始めれば、取引相手は無担保の状態に置かれます。営業保証金と保証協会の仕組みは営業保証金と弁済業務保証金の違い保証協会の仕組みで確認できます。

    32条は誇大広告等の禁止です。所在、規模、形質、現在または将来の利用の制限、環境、交通その他の利便、対価の額や支払方法、ローンのあっせんについて、著しく事実に相違する表示や、実際のものより著しく優良・有利であると誤認させる表示を禁じています。

    44条は不当な履行遅延の禁止で、登記、引渡し、対価の支払を不当に遅延する行為が対象です。対象が登記・引渡し・対価の支払の3つに限定されている点が問われます。

    2号が挙げるのは、47条3号に掲げる行為、すなわち手付について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為です。手付金を貸し付けたり、分割払いを認めたり、後払いにしたりして契約を誘引する行為が該当します。手付金を減額することは信用の供与に当たらないため、この号には該当しません。

    誇大広告の法定刑を取り違えない

    誇大広告等の禁止違反を「1年以下」と覚えている受験生が少なくありませんが、条文上は81条の6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金です。1年以下(80条)に該当するのは47条2号の不当に高額な報酬の要求だけです。

    47条の3つの号がそれぞれ違う条文に振り分けられている点も整理しておきます。1号(不告知・不実告知)は79条の2で2年以下、2号(高額報酬の要求)は80条で1年以下、3号(手付の信用供与による誘引)は81条2号で6月以下。47条は号が進むほど軽くなると覚えると崩れません。

    罰金のみが定められている罰則(82条・83条)

    82条は100万円以下の罰金

    82条は8つの号を置いていますが、試験で問われるのは1号と2号です。

    1号は、4条1項の免許申請書または同条2項の書類に虚偽の記載をして提出した者です。79条1号の「不正の手段によって免許を受けた者」との違いは、免許を現に受けたかどうかにあります。虚偽記載をして提出した段階で82条1号、それによって実際に免許を取得すれば79条1号という関係です。

    2号は、12条2項、13条2項、31条の3第3項、46条2項の規定に違反した者です。12条2項は無免許での表示・広告、13条2項は名義貸しによる表示・広告、46条2項は報酬額の上限超過の受領で、いずれもすでに触れました。

    残る31条の3第3項は、専任の宅建士に関する規定です。同項は、業者は専任の宅建士の設置義務に抵触する事務所等を開設してはならず、既存の事務所等が抵触するに至ったときは2週間以内に必要な措置を執らなければならないと定めています。設置義務そのものの内容は専任の宅建士の設置義務に、事務所と案内所の区別は宅建業の事務所の要件にまとめています。

    83条は50万円以下の罰金

    83条は宅建業者の日常業務にかかわる義務違反を広く受け止める規定で、試験で問われる主なものは次のとおりです。

    1号は、9条、50条2項などの規定による届出をせず、または虚偽の届出をした者です。9条は変更の届出(30日以内)、50条2項は案内所等についての事前の届出です。変更の届出の対象事項は宅建業者名簿と変更届で扱っています。

    2号は、37条、46条4項、48条1項、50条1項の規定に違反した者です。37条は37条書面の交付義務、46条4項は事務所ごとの報酬額の掲示義務、48条1項は従業者証明書を携帯させる義務、50条1項は標識の掲示義務です。37条書面の記載事項は37条書面の記載事項を参照してください。

    3号は、45条(秘密を守る義務)などに違反した者です。この罪については83条2項が「告訴がなければ公訴を提起することができない」と定めており、親告罪とされています。被害者本人が望まないのに公開の法廷で秘密が蒸し返される事態を避けるためです。

    3号の2は48条3項の従業者名簿、4号は49条の帳簿についての規定で、備え付けないこと、必要事項を記載しないこと、虚偽の記載をすることのいずれもが対象です。備付け義務の詳細は従業者名簿と帳簿にまとめています。

    5号と6号は、72条などに基づく報告徴収に応じないこと、立入検査を拒み、妨げ、忌避することです。

    なぜ50万円で済むのか

    83条が挙げる義務は、いずれも直接には行政の監督機能を支えるためのものです。変更の届出がなければ名簿が実態と合わなくなり、帳簿や従業者名簿がなければ後から取引を検証できず、標識がなければどの業者の営業所かが分からない。困るのはまず行政であって、個々の取引の相手方に即座に損害が生じるわけではありません。

    だから金額が抑えられており、拘禁刑の定めもありません。手続違反は行政の把握を妨げるにとどまるという位置づけが、そのまま金額に反映されています。

    例外的に見えるのが2号の37条書面の交付義務違反ですが、これも「契約内容を記録した書面を残さない」という記録面の不備であり、契約自体の効力には影響しません。

    過料が科される場合(85条・85条の2・86条)

    86条の10万円以下の過料

    86条は、22条の2第6項もしくは7項、35条4項、または75条の規定に違反した者を10万円以下の過料に処すると定めています。4つの対象を正確に押さえてください。

    22条の2第6項は、宅建士証の返納義務です。登録が消除されたとき、または宅建士証が効力を失ったときは、速やかに交付を受けた都道府県知事に返納しなければなりません。

    22条の2第7項は、宅建士証の提出義務です。68条2項または4項の事務禁止処分を受けたときは、速やかに宅建士証を提出しなければなりません。返納と提出は別の義務で、返納は登録が失われた場合、提出は事務禁止期間中の一時的な預け入れです。事務禁止期間が満了して本人から返還請求があれば、知事は直ちに返還します(22条の2第8項)。宅建士証まわりの手続は宅建士の登録と宅建士証で整理しています。

    35条4項は、重要事項の説明をするときの宅建士証の提示義務です。相手方から請求がなくても提示しなければならず、怠れば過料の対象になります。

    75条は名称の使用制限で、宅地建物取引業協会または宅地建物取引業協会連合会でない者が、その文字を名称中に用いることを禁じる規定です。

    過料の対象を広げすぎない

    過料をめぐる誤りで多いのが、宅建士に関する義務違反を何でも過料に結びつけてしまうことです。

    たとえば20条の変更の登録(登録事項に変更があったときの申請)を怠っても、宅建業法に過料の定めはありません。事務禁止処分に違反した場合も過料ではなく、68条の2第1項4号により登録を消除されます。過料の対象は86条が列挙する4つに限られる、と条文で区切って覚えてください。

    85条と85条の2

    85条は、50条の11の規定による命令に違反した者を30万円以下の過料に処すると定めています。指定流通機構に対する監督上の命令に関する規定です。85条の2は、17条の11第1項に違反して財務諸表等を備え置かないなどした者を20万円以下の過料に処するもので、登録講習機関に関する規定です。

    いずれも宅建業者や宅建士に対する規定ではないため、深入りは不要です。ただし「宅建業法の過料は10万円以下だけである」という記述は正確ではない、という点だけ知っておくと安全です。

    両罰規定(84条)と法人に対する1億円以下の罰金

    条文の構造

    84条は、法人の代表者または法人もしくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する、と定めています。

    1号は79条または79条の2の違反行為で、この場合の法人に対する罰金は1億円以下です。

    2号は80条または81条から83条までの違反行為(83条1項3号を除く)で、この場合は各本条の罰金刑、つまり80条・81条・82条なら100万円以下、83条なら50万円以下がそのまま法人にも科されます。

    1億円以下の対象を正確に切る

    法人に1億円以下の罰金が科されるのは、79条と79条の2の違反に限られます。具体的には、不正の手段による免許取得、無免許事業(12条1項)、名義貸しによる営業(13条1項)、業務停止命令違反、そして重要な事項の故意の不告知・不実告知(47条1号)の5つです。

    ここで注意したいのが、行為者本人に科される罰金の上限は300万円以下のままだという点です。法人だけが1億円以下という桁違いの水準に引き上げられています。個人の資力を基準にした罰金では法人の経済的な違反抑止にならないため、法人に対してのみ上限を大きく引き上げる、という立法技術です。「法人に対しても300万円以下の罰金が科される」という肢は、この一点で誤りになります。

    逆に、80条以下の違反については法人も各本条と同額です。誇大広告(81条)で法人に1億円が科されることはありません。1億円は79条と79条の2の2つだけという線引きを、条文番号で覚えてください。

    除外されている83条1項3号

    84条2号は、対象から「同条第一項第三号を除く」と明示しています。83条1項3号は45条の秘密を守る義務の違反で、前述のとおり親告罪です。被害者の告訴に委ねられている犯罪について、法人まで一律に処罰の対象とすることは適当でないという判断によるものです。細かい規定ですが、条文をそのまま読めば確認できます。

    行為者と法人の両方が罰せられる

    両罰規定の名前のとおり、行為者を罰したうえで法人にも罰金を科す仕組みです。「法人が罰せられる代わりに行為者は免責される」わけではありません。従業者が無免許営業に加担した場合、その従業者は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金の対象となり、法人は1億円以下の罰金の対象となります。

    監督処分・宅建士への処分との違い

    刑事罰と行政処分は別系統で併存する

    罰則は刑事罰であり、裁判所が刑事訴訟手続を経て科します。これに対して監督処分は行政処分であり、国土交通大臣または都道府県知事が行政手続法に基づく手続(聴聞または弁明の機会の付与)を経て行います。主体も手続も効果も別なので、一つの違反行為について両方が働くことがあります。

    先に触れた業務停止処分違反がその典型で、79条4号による刑事罰と、66条1項9号による必要的な免許取消しが同時に成立します。「刑事罰を受けたので監督処分は科されない」「監督処分を受けたので刑事罰は免れる」といった関係にはありません。

    業者に対する監督処分

    宅建業者に対する監督処分は3種類です。指示処分(65条1項・3項)、業務停止処分(65条2項・4項)、免許取消処分(66条・67条)です。業務停止は1年以内の期間を定めて命じられます。

    処分権者にも違いがあります。指示処分と業務停止処分は、免許権者だけでなく、業務を行った区域を管轄する都道府県知事も行うことができます(65条3項・4項)。これに対して免許取消処分は免許権者しかできません。他県で違反した業者に対して、その県の知事は業務停止までは命じられるが免許は取り消せない、という区別が繰り返し問われます。各処分の要件は監督処分と罰則で詳しく扱っています。

    宅建士に対する処分

    宅建士に対する処分も3種類あり、指示処分(68条1項・3項)、事務禁止処分(68条2項・4項)、登録消除処分(68条の2)です。事務禁止処分も1年以内の期間を定めて行われます。

    こちらにも同じ構造の区別があります。指示処分と事務禁止処分は、登録をしている都道府県知事だけでなく、業務を行った区域を管轄する都道府県知事も行うことができます。しかし登録消除処分は登録をしている都道府県知事しかできません。業者側の免許取消しと同じ発想で、資格の存否そのものに関わる処分は資格を与えた側が行う、という整理です。

    業者への処分と宅建士への処分は連動しない

    宅建業者が監督処分を受けたからといって、その従業者である宅建士が自動的に処分を受けるわけではありません。逆も同じです。ただし65条1項4号は、宅建士が68条または68条の2第1項の処分を受けた場合において業者の責めに帰すべき理由があるときは、業者に対して指示処分ができると定めています。連動するのではなく、業者側に落ち度があるときに限って業者にも処分が及ぶ、という構造です。

    罰則が定められていない義務違反

    35条書面の交付義務違反には罰則がない

    最後に、罰則の側から見ておくべき重要な点があります。宅建業法上の義務であっても、罰則が定められていないものがあるということです。

    代表例が35条です。83条1項2号が挙げているのは「第三十七条、第四十六条第四項、第四十八条第一項又は第五十条第一項」であって、35条は含まれていません。宅建業法の罰則規定のどこにも35条違反は登場しません。したがって、重要事項説明を行わなかったこと、35条書面を交付しなかったことに対する刑事罰は存在しません

    では放置されるのかというと、そうではありません。65条2項2号は業務停止処分の事由として35条1項から3項までの違反を明示的に挙げており、情状が特に重ければ66条1項9号により免許取消しに至ります。監督処分でしっかり捕捉されているわけです。さらに、説明の内容について故意に嘘をつけば47条1号違反として79条の2の対象になります。

    37条書面の不交付には50万円以下の罰金があるのに35条書面の不交付にはない、という非対称は覚えにくく感じますが、37条書面が「書面を残すこと」自体を義務の中心に据えているのに対し、35条は「宅建士に説明させること」を中心に据えた行為規制であり、書面はその手段として位置づけられている、という違いから理解できます。

    47条の2にも罰則はない

    47条の2は、断定的判断の提供、威迫行為、その他国土交通省令で定める不当な行為を禁じる規定です。この違反にも罰則の定めはなく、65条2項2号により業務停止処分の対象となるにとどまります。47条(1号から3号まで)には79条の2・80条・81条という罰則があるのに対し、47条の2にはない。条番号が隣接しているうえ内容も似ているため、混同を誘う出題がされます。

    取引態様の明示義務も同様

    34条の取引態様の明示義務にも罰則はなく、監督処分の対象にとどまります。義務の内容は取引態様の明示義務で扱っています。

    「宅建業法上の義務にはすべて罰則がある」と思い込んでいると、これらの肢をすべて誤って正しいと判断してしまいます。罰則があるのは79条から86条までが名指しした条文だけ、という原則に立ち返ってください。

    試験での出題ポイント

    罰則の出題は、次の5つの型に整理できます。宅建業法全体の頻出度は宅建業法の頻出論点で確認できます。

    型1:年数と金額を入れ替える

    最も多いのがこの形です。誇大広告を「1年以下」とする、無免許営業を「2年以下」とする、法人への罰金を「300万円以下」とするといった具合に、正しい枠組みの中の数字だけを差し替えてきます。対策は、段階ごとに代表的な行為を1つずつ紐づけて覚えることです。数字だけを列で覚えると入れ替えに気づけません。宅建業法の数字全般は宅建業法の数字まとめにまとめています。

    型2:監督処分と罰則を取り違える

    「業務停止処分は3年以内の期間を定めて命じられる」(正しくは1年以内)、「業務停止処分に違反した者には50万円以下の罰金が科される」(正しくは3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金)といった形で、行政処分と刑事罰の内容を混ぜてきます。処分は行政、罰則は裁判所、という主体の違いを起点に判断してください。

    型3:両罰規定の対象を誤らせる

    「誇大広告をした法人には1億円以下の罰金が科される」は誤りです。1億円以下は79条と79条の2に限られ、誇大広告は81条なので各本条の100万円以下です。逆に「両罰規定は法人にのみ適用され、個人の事業主には適用されない」も誤りで、84条は「その人に対して各本条の罰金刑を科する」と明記しています。

    型4:過料と罰金をすり替える

    「宅建士証の提示を怠った宅建士は10万円以下の罰金に処せられる」は、過料であって罰金ではないので誤りです。過料は刑罰ではなく前科にならない、という違いまで問われます。

    型5:罰則がないものに罰則を作る

    「重要事項説明を行わなかった業者は50万円以下の罰金に処せられる」は誤りです。35条違反に罰則はありません。47条の2の違反、34条の取引態様の明示義務違反も同様です。この型は難易度が高く、正答できると差がつきます。

    覚え方・整理の仕方

    手順1:段階ではなく「何を壊したか」で覚える

    罰則を7段階の表として覚えようとすると、どの行為がどの段階かを別に暗記することになり、二重の負担が生じます。そうではなく、行為の性質から段階を導く順路を作ります。

    • 免許制度そのものを壊したか → 79条(3年・300万円)
    • 相手方を故意にだましたか → 79条の2(2年・300万円)
    • 相手方から不当に金を取ろうとしたか → 80条(1年・100万円)
    • 相手方に損害を与えうる業務規制に違反したか → 81条(6月・100万円)
    • 業者の資格や取引条件に関わる形式的な規制に違反したか → 82条(100万円)
    • 行政の把握を妨げる手続に違反したか → 83条(50万円)
    • 宅建士証の取扱いを誤ったか → 86条(10万円の過料)

    この7行を上から順に自問すれば、初見の行為でも段階を推定できます。

    手順2:47条の3つの号を軸に据える

    47条は1号・2号・3号がそれぞれ79条の2・80条・81条に対応しており、罰則の中段をまるごと支えています。号が進むほど軽くなるという一点を押さえるだけで、3つの段階が一度に固定できます。1号が嘘、2号が高額報酬の要求、3号が手付の信用供与という中身も、悪質さの順に並んでいるので納得しやすいはずです。

    手順3:ペアで覚える12条と13条

    12条1項と2項、13条1項と2項は、いずれも「営業させたのか、表示・広告をさせただけなのか」で79条と82条に分かれます。4つを個別に暗記するのではなく、「1項は営業だから3年、2項は広告だから100万円」という一組の対応として覚えます。

    手順4:1億円は2つだけと唱える

    両罰規定で1億円以下となるのは79条と79条の2の違反だけです。「1億円は79条と79条の2」と条文番号のまま唱えるのが最短で、行為の一覧に置き換えないほうが確実です。

    手順5:罰則がないものを先に確認する

    35条、47条の2、34条には罰則がありません。学習の最後にこの3つを別枠で書き出しておくと、型5の出題に反応できるようになります。宅建業法全体の中での位置づけは宅建業法とはで俯瞰できます。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 誇大広告等の禁止に違反した宅建業者は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処せられ、またはこれらが併科される。(○か×か)

    答えを見る×:誇大広告等の禁止(32条)の違反は81条1号の対象で、6月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科です。1年以下(80条)に当たるのは47条2号の不当に高額の報酬を要求する行為だけです。罰金額が同じ100万円以下であるため、拘禁刑の年数だけを差し替える形で出題されます。

    Q2. 宅建業者の従業者が業務に関して無免許営業に該当する行為をした場合、行為者が罰せられるほか、法人に対しても1億円以下の罰金刑が科される。(○か×か)

    答えを見る○:84条1号は、79条または79条の2の違反行為について、行為者を罰するほか法人に1億円以下の罰金刑を科すと定めています。無免許事業は12条1項違反として79条2号に当たるため、これに該当します。行為者本人の罰金の上限は300万円以下のままである点もあわせて押さえてください。

    Q3. 宅建業者が重要事項説明を行わずに契約を締結した場合、50万円以下の罰金に処せられる。(○か×か)

    答えを見る×:35条違反に対する罰則は宅建業法に定められていません。83条1項2号が列挙しているのは37条、46条4項、48条1項、50条1項であり、35条は含まれていません。ただし65条2項2号により業務停止処分の対象となり、情状が特に重ければ66条1項9号で免許取消しに至ります。なお説明すべき事項について故意に嘘をつけば、47条1号違反として79条の2の対象になります。

    Q4. 事務禁止処分を受けた宅建士が、速やかに宅建士証を提出しなかった場合、10万円以下の過料に処せられる。(○か×か)

    答えを見る○:22条の2第7項は、68条2項または4項の事務禁止処分を受けたときは速やかに宅建士証を提出しなければならないと定めており、これに違反すると86条により10万円以下の過料の対象となります。過料は刑罰ではないため前科にならず、登録の欠格事由にも該当しません。なお、事務禁止処分そのものに違反した場合は過料ではなく、68条の2第1項4号により登録が消除されます。

    Q5. 宅建業者が自己の名義をもって他人に宅建業を営む旨の広告をさせた場合、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金に処せられ、またはこれらが併科される。(○か×か)

    答えを見る×:これは13条2項の違反で、82条2号により100万円以下の罰金です。3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金となるのは、13条1項に違反して実際に他人に宅建業を営ませた場合(79条3号)です。同じ名義貸しでも、営業させたのか広告をさせただけなのかで段階が大きく変わります。

    まとめ

    宅建業法の罰則は、次の4点に集約できます。

    1. 序列は「何を壊したか」で決まる。免許制度そのものを壊す行為(79条)が最も重く、相手方を故意にだます行為(79条の2)、不当に金を取ろうとする行為(80条)、業務規制違反(81条)、形式的な規制違反(82条)、行政の把握を妨げる手続違反(83条)の順に軽くなり、最後に刑罰ですらない過料(86条)が来る。
    2. 47条の3つの号が中段を支える。1号の不告知・不実告知が79条の2で2年、2号の高額報酬の要求が80条で1年、3号の手付の信用供与が81条で6月。号が進むほど軽い。
    3. 両罰規定(84条)で法人に1億円以下の罰金が科されるのは、79条と79条の2の違反だけ。それ以外は各本条と同額で、行為者本人の罰金上限は300万円以下のまま。
    4. 罰則と監督処分は別系統で併存する。そして35条、47条の2、34条のように、宅建業法上の義務でありながら罰則が定められていないものがある。

    数字の暗記に入る前に、この序列の理由を一度自分の言葉で説明できるようにしておくと、年数や金額を入れ替えた肢に反応できるようになります。

    よくある質問

    Q. 罰金刑を受けた場合、宅建業の免許はどうなりますか。

    A. 宅建業法違反により罰金の刑に処せられると免許の欠格事由に該当し、免許は取り消されます。刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しなければ、あらためて免許を受けることもできません。欠格事由の範囲は宅建業の免許制度で扱っています。

    Q. 過料を科されても免許や登録に影響はありませんか。

    A. 過料は刑罰ではなく行政上の秩序罰なので、前科にならず、免許や登録の欠格事由にも該当しません。ただし、過料の対象となる行為が同時に監督処分の事由にも当たる場合はあります。

    Q. 廃業の届出を怠った場合の罰則はどうなりますか。

    A. 83条1項1号が挙げているのは9条(変更の届出)、50条2項(案内所等の届出)などであり、11条の廃業等の届出は列挙されていません。届出義務の内容と義務者は宅建業の廃業届・免許取消で確認してください。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、宅建業法の肢別演習で罰則と監督処分の出題パターンを確認できます。

    読んだ内容を、宅建業法の肢で確かめる

    宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。

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