宅建業法の頻出論点|どこで確実に取るか
宅建業法の論点を条番号から整理し、35条・37条・8種制限を先に固める順序を示します。主語の取り違え、数字の混同、適用場面の見落としという失点原因の潰し方まで解説。
目次
本記事の役割 — この記事は宅建業法の論点を横断し、どこで確実に取るかを示すハブです。制度の流れと学習順序の設計は宅建業法の全体像、得点の精度を上げる具体策は宅建業法で18問以上取るにあります。ここでは論点ごとに「何が問われるか」「どこで間違えるか」を書き、詳細は個別記事へ送ります。
宅建業法は、権利関係とは性質が違います。条文の要件をそのまま問う出題が中心なので、正確に覚えれば取り切れる設計になっています。判例の立場を読み解く必要はほとんどなく、条文の主語、期限、金額、適用場面を押さえれば結論が確定します。
だからこそ、失点したときの原因も明確です。覚えていなかったのではなく、覚えていたのに条文の別の部分と取り違えたというケースが大半を占めます。専任の宅建士の話と宅建士証の話を混ぜる。8種制限の数字を保全措置の数字と混ぜる。業者間取引で適用されない規定を適用してしまう。
この記事では、まず宅建業法で失点する四つの原因を示し、そのうえで出題が集中する論点を条番号から整理します。順序としては、35条書面と37条書面、次いで8種制限を先に固め、そこから免許・登録、保証金、媒介契約・広告・報酬、監督処分へ広げていきます。
宅建業法で失点する四つの原因
主語の取り違え
宅建業法の条文は、宅地建物取引業者を主語とするものと宅地建物取引士を主語とするものが交互に出てきます。ここを混ぜると、正しい知識を持っていても選択肢を誤判定します。
たとえば35条1項は「宅地建物取引業者は……宅地建物取引士をして……説明をさせなければならない」と書かれています。説明義務を負っているのは業者で、宅建士は業者に説明させられる立場です。37条3項も「宅地建物取引業者は……宅地建物取引士をして、当該書面に記名させなければならない」で、書面を作成し交付する義務は業者にあります。
届出の場面ではもっとはっきり分かれます。宅建業者の変更の届出は業者が行い(9条)、宅建士の登録事項に関する届出は本人が行います(21条)。選択肢を読むとき、最初に主語を丸で囲むだけで判別の精度が上がります。主体別の整理は宅建業者と宅建士の義務にまとめています。
数字の混同
宅建業法には同じ数字が別の場面で何度も出てきます。5年は免許の有効期間(3条2項)でもあり、宅建士証の有効期間(22条の2第3項)でもあり、欠格事由の期間(5条1項5号)でもあります。2週間は専任の宅建士が不足したときの是正期間(31条の3第3項)でもあり、新たな事務所設置時の弁済業務保証金分担金の納付期限(64条の9第2項)でもあります。30日は業者の変更の届出(9条)と廃業等の届出(11条1項)と宅建士の届出(21条)に共通します。10分の2は損害賠償額の予定等(38条1項)と手付の額(39条1項)に共通します。
数字だけを一覧で覚えると、どの場面の数字か分からなくなります。数字ではなく「場面+数字」で覚えるのが唯一の対処です。数字を場面ごとに束ねた整理は宅建業法の数字まとめにあります。
適用場面の見落とし
規定には適用範囲があり、そこを見落とすと正誤が反転します。代表格が8種制限で、これは宅建業者が自ら売主となり、かつ買主が宅建業者でない場合にだけ適用されます。根拠は78条2項で、「第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない」と定めています。
もうひとつ見落とされるのが供託所等に関する説明です。35条の2は「説明をするようにしなければならない」という文言で、努力義務として書かれています。しかも相手方等から「宅地建物取引業者に該当する者を除く」と明記されています。詳細は供託所等に関する説明義務で条文から扱っています。
「しなければならない」と「できる」の読み分け
条文の末尾は、義務なのか裁量なのかを決めています。「しなければならない」は義務、「することができる」は裁量、「するようにしなければならない」は努力義務です。
25条を例に取ると、6項は「催告をしなければならない」で免許権者の義務ですが、7項は「その免許を取り消すことができる」で裁量です。同じ条文の中で切り替わっているので、条文を読むときに末尾へ意識を向ける習慣が要ります。66条1項の免許取消しは「取り消さなければならない」で必要的取消し、同条2項の条件違反による取消しは「取り消すことができる」で任意的取消しです。この対比は監督処分で扱っています。
まず35条書面と37条書面を固める
二つの書面は「時期・相手・関与」で分かれる
35条書面と37条書面は、宅建業法で最も出題が集中する領域です。まずこの二つを固めるのが合理的です。
35条1項は、宅建業者は、相手方等に対して、その者が取得しまたは借りようとしている宅地建物に関し、その売買、交換または貸借の契約が成立するまでの間に、宅建士をして、所定の事項について書面を交付して説明をさせなければならない、と定めます。契約前であること、説明の対象が取得または賃借しようとしている者であることが条文から読み取れます。
37条1項は、売買または交換について、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方および代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく書面を交付しなければならない、と定めます。貸借については2項が対応します。そして3項が、業者は交付すべき書面を作成したときは宅建士をして記名させなければならないと定めます。
整理すると、35条は契約成立前に交付して説明まで、37条は契約成立後に遅滞なく交付するだけで説明義務はない。どちらも宅建士の記名は要る。この三軸で対比してください。詳細は35条書面と37条書面の違いにあります。
記載事項の帰属で迷わないために
出題の中心は、ある項目が35条の記載事項か37条の記載事項か、という帰属の判定です。
35条の記載事項は「契約するかどうかを判断するために必要な情報」で、登記された権利、法令上の制限、私道負担、飲用水・電気・ガスの供給と排水施設、未完成物件の完了時の形状構造といった物件の状態と制約が並びます。項目の全体像は35条書面の記載事項一覧、覚え方は35条書面の覚え方にあります。
37条の記載事項は「合意した内容の記録」で、当事者の氏名住所、物件の表示、代金の額と支払時期・方法、引渡しの時期、移転登記の申請の時期といった契約条件そのものです。しかも37条1項各号には、必ず記載する事項と「定めがあるときは、その内容」という条件付きの事項が混在しています。契約の解除に関する定め(7号)、損害賠償額の予定または違約金に関する定め(8号)、天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め(10号)などが後者です。この区別は37条書面の記載事項で扱っています。
貸借の場合に何が落ちるか
もうひとつの定番が、売買と貸借で記載事項が違う点です。37条2項が貸借について別に列挙しているのは、移転登記の申請の時期や租税公課の負担のように、貸借では観念できない項目があるからです。35条側でも、貸借に固有の項目(台所・浴室・便所等の設備の整備状況など)と、売買にのみ必要な項目が分かれます。
貸借固有の整理は賃貸の重要事項説明、区分所有建物で追加される項目は区分所有建物の重要事項説明、オンラインでの説明は重要事項説明のIT化にあります。
8種制限は「前提の確認」から入る
適用の前提を毎回確認する
8種制限は、条文を覚える前に適用の前提を確認する習慣をつけるほうが効果的です。前提は二つ。売主が宅建業者であること、そして買主が宅建業者でないこと。78条2項が業者相互間の取引への適用を除外しているからです。
問題文を読んだら、まず「誰が売主か」「買主は業者か」を確認する。この二点を満たさなければ、以下の数字はすべて無関係になります。適用されないケースの整理は8種制限が「適用されない」ケースにあります。
条文の範囲にも注意が要ります。78条2項が挙げるのは「33条の2及び37条の2から43条まで」です。間の34条から37条までは飛んでいます。媒介契約(34条の2)、重要事項説明(35条)、37条書面(37条)は業者間取引でも適用されるということです。
8項目と数字を条文で押さえる
8種制限の内訳を条文順に確認します。
33条の2は自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限で、業者は自己の所有に属しない物件について自ら売主となる売買契約(予約を含む)を締結してはなりません。ただし取得する契約を締結しているときは可能で、その取得契約からは「効力の発生が条件に係るもの」が除かれます。
37条の2がクーリング・オフです。事務所等以外の場所で買受けの申込みをした者または売買契約を締結した買主は、書面により申込みの撤回等ができます。ただし、撤回等ができる旨と方法を告げられた日から起算して8日を経過したとき、または引渡しを受けかつ代金の全部を支払ったときはできません。撤回等は書面を発した時に効力を生じます(2項)。業者は撤回等に伴う損害賠償や違約金を請求できません。
38条は損害賠償額の予定等の制限で、予定額と違約金を合算した額が代金の額の10分の2を超える定めをしてはならず、反する特約は超える部分について無効です(2項)。
39条は手付の額の制限等で、代金の額の10分の2を超える額の手付を受領できません。手付がいかなる性質のものであっても、買主は放棄し、業者は倍額を現実に提供して解除できます(2項)。買主に不利な特約は無効です(3項)。
40条は担保責任についての特約の制限で、民法566条に規定する期間について引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法より買主に不利な特約をしてはなりません。
41条・41条の2が手付金等の保全です。42条が割賦販売の契約の解除等の制限で、30日以上の相当の期間を定めて書面で催告することを求めます。43条が所有権留保等の禁止で、引渡しまで(引渡しまでに代金の額の10分の3を超える額の支払を受けていない場合は10分の3を超える額の支払を受けるまで)に登記その他の義務を履行しなければなりません。
全体像は8種制限とは、軸ごとの比較は8種制限の横断整理、個別にはクーリング・オフ制度、手付金の制限、損害賠償の予定額の制限、契約不適合責任の特約制限があります。
保全措置は「以下かつ以下」の裏返し
手付金等の保全は、条文の書き方が独特なので誤読が起きます。41条1項ただし書は、手付金等の額が代金の額の百分の五以下であり、かつ政令で定める額以下であるときは保全措置が不要だと定めます。政令で定める額は1,000万円です(施行令3条の5)。41条の2第1項ただし書(完成物件)は「代金の額の十分の一以下であり、かつ」に変わります。
つまり保全措置が必要になるのは、この「以下かつ以下」を裏返した場合です。未完成物件なら5%を超えるか、または1,000万円を超えるかのいずれかに当たるとき。完成物件なら10%を超えるか1,000万円を超えるとき。免除要件が「かつ」なので、必要要件は「または」になるという論理を押さえておくと、数字を思い出しやすくなります。
ただし書にはもう二つの除外があります。買主への所有権移転の登記がされたとき、および買主が所有権の登記をしたときです。所有権が確保されていれば保全の必要がないという趣旨で、こちらは見落とされがちです。計算問題の解き方は手付金等の保全措置にあります。
免許と登録は条文の主語で判別する
有効期間はどちらも5年
免許の有効期間は5年です(3条2項)。宅建士証の有効期間も5年です(22条の2第3項)。同じ5年でも別の制度なので、選択肢がどちらの話をしているかを主語で判別してください。
免許は有効期間の満了後も引き続き営もうとする者が更新を受けます(3条3項)。更新の申請があった場合に満了日までに処分がなされないときは、従前の免許が処分がなされるまで効力を有し(4項)、更新されたときの有効期間は従前の満了日の翌日から起算します(5項)。
宅建士証の交付を受けようとする者は、知事が指定する講習で交付の申請前6月以内に行われるものを受講しなければなりません。ただし試験に合格した日から1年以内に交付を受けようとする者は不要です(22条の2第2項)。登録の移転があると宅建士証は効力を失い(4項)、移転後の知事は従前の有効期間が経過するまでを有効期間とする宅建士証を交付します(5項)。事務禁止処分を受けたときは速やかに提出し(7項)、登録が消除されたときや宅建士証が効力を失ったときは速やかに返納します(6項)。提出と返納は別の語で、場面も違います。詳細は宅建士の登録と宅建士証にあります。
届出は期限と義務者をセットで
届出はいずれも30日以内ですが、義務者が場面ごとに違います。
業者の変更の届出は、業者自身が30日以内に免許権者へ提出します(9条1項)。廃業等の届出は11条1項が場面ごとに義務者を指定しており、死亡なら相続人(事実を知った日から起算)、合併消滅なら法人を代表する役員であった者、破産なら破産管財人、解散なら清算人、廃業なら個人または法人を代表する役員です。
ここで見落とされやすいのが11条2項です。3号から5号まで(破産・解散・廃業)の届出があったときに免許が効力を失うと定めており、裏返せば1号の死亡と2号の合併消滅は届出を待たず事由の発生によって当然に失効します。届出義務者の一覧は宅建業の廃業届・免許取消、業者名簿の変更届は宅建業者名簿と変更届にあります。
宅建士側は21条で、死亡なら相続人(事実を知った日から)、18条1項1号から8号までに該当するに至った場合は本人、12号(心身の故障)の場合は本人またはその法定代理人もしくは同居の親族が、30日以内に届け出ます。
欠格事由は改正の反映を確認する
免許の欠格事由(5条1項)と登録の欠格事由(18条1項)は、内容が大きく重なります。系統ごとの整理は宅建業の免許の欠格事由、両制度の対応は宅建業の免許制度を横断整理にあります。
この領域は改正の反映漏れが起きやすいので、二点だけ確認しておいてください。
第一に、刑罰に関する文言です。現行の5条1項5号は「拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者」です。登録側は18条1項6号で同じ文言。2025年6月1日に懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されたことを受けた改正で、「禁錮以上の刑」は現行法の表現ではありません。経過措置まで含めた解説は拘禁刑とは?宅建業法の欠格事由への影響にあります。
第二に、成年被後見人・被保佐人を一律に欠格とする条項は削除済みで、現行は5条1項10号の「心身の故障により宅地建物取引業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの」に置き換わっています。登録側は18条1項12号です。免許制度そのものの枠組みは宅建業の免許制度、業に当たるかどうかの判定は宅建業の「業」に当たるケースを参照してください。
営業保証金と保証協会は期限で覚える
金額は政令にある
営業保証金は主たる事務所のもよりの供託所に供託します(25条1項)。額は主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき事務所ごとに500万円です(施行令2条の4)。
保証協会の社員になる場合は、弁済業務保証金分担金を納付します。額は主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき事務所ごとに30万円です(施行令7条)。供託先が供託所か協会か、金額が万単位か十万単位かで対比すると混同しません。比較は営業保証金と弁済業務保証金の違い、協会の仕組みは保証協会の仕組みにあります。
期限の構造が出題される
営業保証金では、供託しただけでは足りません。供託したときは供託書の写しを添えて免許権者に届け出なければならず(25条4項)、その届出をした後でなければ事業を開始してはなりません(5項)。免許権者は免許をした日から3月以内に届出がないときは催告をしなければならず(6項)、催告が到達した日から1月以内に届出がないときは免許を取り消すことができます(7項)。義務と裁量が切り替わる典型例です。
保証協会側は、加入しようとする者は加入しようとする日までに分担金を納付します(64条の9第1項1号)。納付後に新たに事務所を設置したときは、その日から2週間以内に納付しなければならず(2項)、納付しないときは社員の地位を失います(3項)。
媒介契約・広告・報酬
媒介契約は「期間・登録・報告」の三軸
媒介契約を締結したときは、遅滞なく所定事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者に交付します(34条の2第1項)。記名押印であって記名だけではない点、宅建士ではなく業者が行う点が35条・37条との違いです。
三つの軸で覚えます。期間は、専任媒介契約の有効期間が3月を超えることができず、これより長い期間を定めたときはその期間は3月になります(3項)。登録は、専任媒介契約を締結したときに省令で定める期間内に指定流通機構へ登録する義務で(5項)、その期間は専任媒介が締結の日から7日、専属専任媒介が5日、いずれも休業日数を算入しません(施行規則15条の10)。報告は9項が定め、専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上、業務の処理状況を報告します。
ここで注意すべき点があります。34条の2第8項は、媒介契約を締結した業者は、目的物の売買または交換の申込みがあったときは遅滞なくその旨を依頼者に報告しなければならない、と定めています。主語が「媒介契約を締結した宅地建物取引業者」なので、一般媒介契約にも及びます。9項の定期報告が専任型に限られるのとは別の義務です。「一般媒介には報告義務がない」とまとめると誤ります。3項から6項まで、8項、9項に反する特約は無効です(10項)。
3類型の比較は媒介契約の3類型、書面の記載事項は媒介契約書の記載事項にあります。
広告規制は32条・33条・34条・36条の守備範囲
広告規制は四つの条文の守備範囲の違いが問われます。
32条の誇大広告等の禁止は「著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない」と定めます。条文は表示すること自体を禁じており、契約が成立したかどうかも、実際に損害が生じたかどうかも要件になっていません。実害がなくても違反が成立するのはこのためです。
33条の広告の開始時期の制限は、工事完了前においては、必要な許可等の処分があった後でなければ「当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない」と定めます。「その他の業務」とあるので、貸借の広告も含まれます。
36条の契約締結等の時期の制限は、同じく許可等の処分があった後でなければ「自ら当事者として、若しくは当事者を代理してその売買若しくは交換の契約を締結し、又はその売買若しくは交換の媒介をしてはならない」と定めます。条文が売買と交換に限定しているので、貸借の契約は対象外です。
33条は貸借も規制するが、36条は貸借を規制しない。この非対称が定番の出題です。34条の取引態様の明示は、広告をするときと、注文を受けたときに遅滞なく、の二場面で必要になります。詳細は広告に関する規制と取引態様の明示義務にあります。
報酬は告示の構造を知っておく
報酬の額は、業者が受けることのできる額として国土交通大臣の定めるところによるとされ(46条1項)、その額を超えて受けてはならず(2項)、事務所ごとに公衆の見やすい場所に掲示しなければなりません(4項)。
具体的な率は昭和45年10月23日建設省告示第1552号にあります。売買・交換の媒介については、200万円以下の金額は100分の5.5、200万円を超え400万円以下の金額は100分の4.4、400万円を超える金額は100分の3.3を乗じて得た金額を合計した金額以内で、依頼者の一方から受けることができる額です。告示の率は消費税等相当額を含む数値で、基礎となる代金の額からは消費税等相当額を除きます。よく使われる「3%+6万円」といった速算式は、この区分計算を一つの式にまとめた計算上の便法です。
代理は、媒介の計算方法により算出した金額の2倍以内で、依頼者と相手方から受ける報酬の合計額もこの2倍を超えてはなりません。貸借の媒介は、双方から受ける報酬の合計額が借賃の1月分の1.1倍以内です。
この告示は令和6年6月21日国土交通省告示第949号により改正されており、低廉な空家等の特例が置かれています。価額800万円以下の宅地建物の売買・交換の媒介については、媒介に要する費用を勘案して原則の計算による金額を超えて報酬を受けることができ、その上限は30万円の1.1倍に相当する金額です。あわせて長期の空家等の貸借の媒介についての特例も設けられ、双方から受ける報酬の合計額の上限が借賃の1月分の2.2倍とされています。計算の型は報酬額の制限と報酬額計算のパターン別攻略にあります。
監督処分と罰則は性質の違いで分ける
監督処分は行政処分、罰則は刑事罰です。課す主体も手続も別物なので、混ぜて覚えないでください。
業者に対する監督処分は、指示処分(65条1項)、業務停止処分(同条2項、1年以内の期間)、免許取消処分(66条、67条)の三段階です。免許取消しには、66条1項各号に該当すれば取り消さなければならない必要的取消しと、3条の2第1項の条件に違反したときに取り消すことができる任意的取消し(66条2項)があります。66条1項1号は、5条1項1号、5号から7号まで、10号または14号のいずれかに該当するに至ったときを挙げており、拘禁刑以上の刑に処せられることは、免許を受けられない事由であると同時に免許を失う事由でもあります。
宅建士に対しては、指示処分と事務禁止処分(68条)、登録消除処分(68条の2)があります。処分の種類と権限者の整理は監督処分にあります。
罰則は79条以下に置かれ、行為の悪質性に応じて刑の重さが分かれます。監督処分と罰則は併科されうる関係にあり、一方があれば他方がないという構造ではありません。刑の一覧は宅建業法の罰則一覧、業務上の禁止行為は宅建業法47条の禁止行為にあります。
試験での出題ポイント
主語の入れ替え
「宅地建物取引士は、重要事項を記載した書面を交付しなければならない」という形の選択肢は誤りです。35条1項の交付義務の主語は宅建業者であり、宅建士は説明をさせられる立場です。同じ形で「宅建業者が重要事項の説明をしなければならない」も、条文の構造上は業者が宅建士をして説明させる建付けなので、記述の仕方に注意が要ります。
業者間取引の適用除外
8種制限を業者間取引に適用する選択肢は誤りです。判定の手順は、売主が業者か、買主が業者か、の二点を確認するだけです。逆に、媒介契約や35条書面・37条書面を業者間取引では不要とする選択肢も誤りになります。78条2項の除外範囲は33条の2および37条の2から43条までに限られるからです。
努力義務を義務にすり替える
供託所等に関する説明について「説明しなければならない」と書かれていれば、35条の2の文言が「説明をするようにしなければならない」である以上、条文の引用としては食い違います。相手方が宅建業者である場合には説明の対象外である点もあわせて狙われます。
貸借が入るか入らないか
33条の広告開始時期の制限には貸借が含まれ、36条の契約締結時期の制限には含まれません。「工事完了前でも、必要な許可を受ける前に貸借の媒介契約を締結することはできない」という趣旨の選択肢は、36条が売買と交換に限定している以上、誤りになります。
数字の場面すり替え
「専任媒介契約の有効期間は3月」を「専属専任媒介契約は1月」に変える、指定流通機構への登録期間の7日と5日を入れ替える、損害賠償額の予定の10分の2を所有権留保の10分の3と入れ替える。数字自体は正しいが場面が違うという作り方が最も多く、単純な数字暗記では対応できません。
「超える部分について無効」か「全部無効」か
38条2項は、損害賠償額の予定等について代金の額の10分の2を超える部分について無効とします。契約全体や特約全体が無効になるわけではありません。一方、39条3項は買主に不利な特約を無効とし、40条2項は特約自体を無効として民法の原則に戻します。無効の範囲が条文ごとに違う点を確認しておいてください。
覚え方・整理の仕方
条文を「主語+末尾」で読む
宅建業法の条文は、冒頭の主語と末尾の助動詞だけを抜き出すと骨格が見えます。「宅地建物取引業者は……しなければならない」なのか、「国土交通大臣又は都道府県知事は……することができる」なのか。
学習のときに、条文ごとに主語と末尾をノートの左右に書き出してみてください。35条1項なら「業者は/させなければならない」、35条の2なら「業者は/するようにしなければならない」、25条7項なら「大臣又は知事は/できる」。この二点だけで正誤が決まる選択肢が相当数あることに気づけます。
数字は「場面の名前」を先に言う
数字の混同を防ぐには、想起の順序を逆にします。「5年は何だったか」ではなく「免許の有効期間は」「宅建士証の有効期間は」と場面から入る。
具体的には、場面名だけを並べたリストを作り、右側の数字を隠して答える練習をします。免許の有効期間、宅建士証の有効期間、欠格の期間、専任媒介の有効期間、専任媒介のレインズ登録期限、専属専任のレインズ登録期限、専任媒介の報告頻度、専属専任の報告頻度、クーリング・オフの期間、専任宅建士の是正期間、分担金の追加納付期限、変更の届出期限。場面を主語にして初めて、数字は一意に定まります。
8種制限は「前提二つ+条文の並び」
8種制限は、前提の確認を儀式化してください。売主は業者か。買主は業者でないか。この二問に答えてから中身に入る。
条文の並びも、33条の2が単独で先にあり、37条の2から43条までが連続している、という形で覚えると78条2項の除外範囲がそのまま頭に入ります。「33条の2と、37条の2から43条まで」と条番号で唱えるのが、8項目を列挙するより速く正確です。
33条と36条は「広告は広い、契約は狭い」
広告開始時期の制限(33条)と契約締結時期の制限(36条)は、広告のほうが守備範囲が広いと覚えます。広告は売買・交換・貸借のすべてを規制し、契約は売買・交換だけ。
理由から押さえると忘れません。広告は不特定多数に届き、実現するか分からない物件の情報が流通する弊害が大きい。他方、貸借の契約は建物が完成していなくても引渡しまでに完成すれば足りる場面があり、売買のように所有権が移転して代金が動く取引とは危険の質が違う。規制の広さは弊害の大きさに対応しているという筋で理解してください。
二つの書面は「前・後」を起点にする
35条と37条は、契約成立を挟んで前と後という一点を起点にすれば、他の違いが導けます。契約前だから、判断材料としての説明が要る。契約後だから、合意内容の記録として交付するだけでよい。交付先も、前は判断する側(取得・賃借しようとする者)、後は合意した当事者全員。
「なぜその時期なのか」から「だから何が要るのか」を導く練習をしておくと、記載事項の帰属で迷ったときにも、それが判断材料なのか合意内容の記録なのかで振り分けられます。
理解度チェッククイズ
問1 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地の売買契約において、買主も宅地建物取引業者である場合、手付金等の保全措置を講じる必要はないが、37条書面の交付は必要である。
答え:○。宅建業法78条2項は「第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない」と定めています。手付金等の保全(41条、41条の2)はこの範囲に含まれるため業者間取引では適用されません。一方、37条書面の交付義務(37条)は除外範囲に入っていないため、業者間取引でも必要です。媒介契約(34条の2)や重要事項説明(35条)も同様に適用されます。
問2 宅地建物取引業者は、宅地の造成工事の完了前において、必要な許可等の処分を受ける前であっても、当該宅地の貸借の媒介契約を締結することができる。
答え:○。33条の広告の開始時期の制限は「売買その他の業務に関する広告」を対象としており貸借の広告も規制しますが、36条の契約締結等の時期の制限は「自ら当事者として、若しくは当事者を代理してその売買若しくは交換の契約を締結し、又はその売買若しくは交換の媒介をしてはならない」と定めており、貸借は対象に含まれていません。したがって貸借の媒介契約は締結できます。ただし当該物件の広告をすることは33条により制限されます。
問3 宅地建物取引業者は、その相手方等に対し、契約が成立するまでの間に、営業保証金を供託した供託所およびその所在地について説明しなければならない。
答え:×。35条の2は「説明をするようにしなければならない」と定めており、努力義務として規定されています。「説明しなければならない」という義務規定ではありません。さらに同条は説明の相手方から「宅地建物取引業者に該当する者を除く」と明記しており、相手方が宅建業者である場合には対象外です。35条の重要事項説明が業者間取引でも必要であることとの違いに注意してください。
問4 一般媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、当該媒介契約の目的物である宅地の売買の申込みがあっても、依頼者に報告する義務を負わない。
答え:×。34条の2第8項は「媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、当該媒介契約の目的物である宅地又は建物の売買又は交換の申込みがあつたときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければならない」と定めており、主語が媒介契約一般なので一般媒介契約にも及びます。専任型に限られるのは同条9項の業務処理状況の定期報告(専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上)のほうです。この二つは別の義務です。
問5 宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約において、損害賠償額の予定と違約金を合算した額が代金の額の10分の3となる特約を定めた場合、当該特約は全体が無効となる。
答え:×。38条1項は損害賠償額の予定と違約金を合算した額が代金の額の10分の2を超える定めをしてはならないとし、同条2項は「前項の規定に反する特約は、代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする」と定めています。特約全体が無効になるのではなく、10分の2を超える部分だけが無効となり、10分の2までは有効です。手付の額(39条)や担保責任の特約(40条2項)とは無効の範囲が異なる点に注意してください。
まとめ
- 宅建業法は条文の要件をそのまま問う出題が中心で、取り切る設計が成り立ちます。失点の原因は知識の欠落より取り違えにあり、主語(業者か宅建士か)、数字の場面、適用範囲(業者間取引か、貸借を含むか)、条文末尾(義務か裁量か努力義務か)の四点を確認する習慣で大半が潰せます。
- 着手順序は35条書面と37条書面から。契約成立を挟んで前と後という一点を起点にすれば、交付時期も交付先も説明義務の有無も導けます。次に8種制限を、売主は業者か・買主は業者でないかという前提の確認から入り、78条2項の除外範囲を「33条の2と、37条の2から43条まで」と条番号で押さえます。
- 改正の反映は最優先で確認してください。欠格事由の文言は「禁錮以上の刑」ではなく「拘禁刑以上の刑」(5条1項5号、18条1項6号)、成年被後見人等の一律欠格条項は削除され心身の故障の要件(5条1項10号、18条1項12号)に置き換わっています。報酬についても低廉な空家等の特例が告示に置かれています。
論点ごとの演習は、宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングで条文単位に絞り込んで進められます。
宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。