贈与税と相続税|宅建で問われる範囲を条文で
贈与税と相続税を条文で整理します。基礎控除110万円の根拠が租税特別措置法にあること、令和6年から変わった相続時精算課税と生前贈与加算7年、住宅取得等資金の非課税と小規模宅地等の特例まで扱います。
目次
本記事の役割 — 贈与税と相続税のうち、宅建試験で問われる範囲を条文にあたって整理します。相続そのものの民法上のルールは相続の基本ルール、相続した不動産の共有・登記・実務は相続した不動産の基礎にあります。
税目全体の見取り図は不動産にかかる税金の全体像、国税と地方税の横断整理は宅建試験の税金を横断整理を参照してください。ここは贈与税・相続税そのものを一段細かく扱う場所です。
先に結論を三つ述べます。
第一に、贈与税の基礎控除110万円は、相続税法には書かれていません。相続税法21条の5が定めるのは60万円で、これを110万円に引き上げているのは租税特別措置法70条の2の4です。本法と特別法の二階建てになっているという構造そのものが、この分野の理解の起点になります。
第二に、令和6年1月1日から二つの制度が変わりました。相続時精算課税に年110万円の基礎控除が入り、暦年課税の生前贈与加算が相続開始前3年から7年に延びました。従来広く説明されてきた「相続時精算課税を選ぶと110万円の控除が使えなくなる」という整理は、現在の条文とは一致しません。
第三に、特例はほとんどが申告を適用要件にしています。贈与税の配偶者控除、相続時精算課税の特別控除、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例。いずれも条文が申告書への記載や添付を要件として明記しています。「要件を満たせば自動的に適用される」という肢は、この点で誤りになります。
なお、本記事の条文はすべて2026年4月1日時点で施行されている版によっています。相続税法は 325AC0000000073_20260401_506AC0000000008、租税特別措置法は 332AC0000000026_20260401_508AC0000000012、租税特別措置法施行令は 332CO0000000043_20260401_508CO0000000098、地方税法は 325AC0000000226_20260401_508AC0000000002 です。宅建試験は当該年度の4月1日現在施行されている法令から出題されるため、この時点の条文が令和8年度の基準になります。
宅建試験でこの二つの税がどう問われるか
出題される範囲は限られている
宅建試験の税・その他は8問で、そのうち5問が登録講習修了者の免除対象です。免除されない3問のうち、国税から2問、地方税から1問という構成が続いています。贈与税と相続税は、この国税2問の枠の一部を占めるにすぎません。
したがって、税理士試験のような網羅は不要です。むしろ問われる論点が限られていることを利用して、そこだけを条文の水準で正確に押さえるほうが効率的です。
問われるのは金額と要件、そして「どの税か」
出題の型は三つに絞れます。
一つ目が、金額と割合です。基礎控除110万円、相続税の基礎控除の算式、相続時精算課税の特別控除2,500万円、小規模宅地等の限度面積と割合。数字そのものが正誤を決めます。
二つ目が、適用要件です。年齢、続柄、婚姻期間、所得金額、床面積、居住の時期。要件を一つ入れ替えるだけで肢が作れるため、量産されます。
三つ目が、税目の切り分けです。相続による取得に不動産取得税が課されるか、登録免許税はどうか、といった横断の問いです。贈与税・相続税そのものより、この切り分けのほうが出題されやすいという面があります。
民法の相続とは分けて扱う
法定相続分や代襲相続、遺留分といった民法の論点は権利関係の範囲で、税の論点とは別に問われます。ただし相続税の基礎控除の計算には「相続人の数」が入るため、民法側の理解が前提になる場面があります。相続人の範囲と法定相続分は相続の基本ルール、放棄の効果は相続放棄にまとめています。
贈与税の基礎控除は本法60万円、措置法が110万円にしている
相続税法21条の5が定めるのは60万円
意外に知られていませんが、相続税法21条の5は「贈与税については、課税価格から六十万円を控除する」とだけ定めています。110万円という数字は本法のどこにもありません。
引き上げているのは租税特別措置法70条の2の4
租税特別措置法70条の2の4が「平成13年1月1日以後に贈与により財産を取得した者に係る贈与税については、相続税法第21条の5の規定にかかわらず、課税価格から百十万円を控除する」と定めています。
同条2項は、この規定により控除された額は、相続税法その他の法令の適用については相続税法21条の5により控除されたものとみなすとしています。特別法で引き上げたうえで、本法の控除として扱うという建て付けです。
この構造を知っておく意味
三つあります。
第一に、条文を引いたときに迷わないこと。相続税法だけを見て110万円を探しても見つかりません。
第二に、「租税特別措置法」という名前の意味が分かること。措置法は本法の原則を政策目的で修正する法律であり、だからこそ適用期限が付いていたり、頻繁に改正されたりします。後述する住宅取得等資金の非課税や小規模宅地等の特例も措置法にあります。
第三に、改正の入り口がどこかが分かること。金額が動くときは、たいてい措置法の側が動きます。
なお、贈与税は暦年課税が原則で、1月1日から12月31日までの1年間に贈与により取得した財産の合計額が課税価格になります。基礎控除110万円は、贈与者ごとではなく受贈者ごとに年間で1回です。父から110万円、母から110万円を同じ年に受け取れば、合計220万円から110万円を控除した110万円が課税価格になります。
納税義務者は受贈者
贈与税を納めるのは、贈与をした者ではなく贈与により財産を取得した者です。贈与契約は無償で財産を移転させるものですから、担税力が生じるのは受け取った側だという理解になります。相続税も同様に、財産を取得した者が納税義務者です。
相続時精算課税は令和6年から二階建てになった
制度の骨格
相続時精算課税は、贈与の時点では軽く課税し、相続の時点で贈与財産を相続財産に足し戻して精算する方式です。暦年課税と選択制になっています。
相続税法21条の9第1項が要件を定めています。贈与により財産を取得した者がその贈与をした者の推定相続人(その贈与をした者の直系卑属である者のうち、その年1月1日において18歳以上であるものに限る)であり、かつ、その贈与をした者が同日において60歳以上である場合に、この制度の適用を受けることができます。
条文を丁寧に読むと、年齢はいずれもその年の1月1日で判定されること、受贈者は推定相続人でありかつ直系卑属であることが分かります。配偶者は直系卑属ではないので対象外です。なお同条4項は、年の中途で養子になったなどの事由で推定相続人となった場合、推定相続人となる前の贈与には適用がないとしています。
選択したら撤回できない
21条の9第2項が、適用を受けようとする者は届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならないと定め、3項が、その届出書に係る贈与をした者からの贈与については届出書に係る年分以後この方式で計算すると定めています。
そして6項が「相続時精算課税適用者は、第2項の届出書を撤回することができない」と明記しています。いったんこの方式を選ぶと、その贈与者からの贈与について暦年課税に戻ることはできません。
5項は、届出書を出した者が特定贈与者の推定相続人でなくなった場合でも、その特定贈与者からの贈与には引き続きこの方式が適用されるとしています。推定相続人でなくなっても外れないということです。
特別控除は累計2,500万円
21条の12第1項が特別控除を定めています。特定贈与者ごとに、次の二つのうちいずれか低い金額を控除します。一つが2,500万円(既にこの条の適用を受けて控除した金額があるときは、その合計額を控除した残額)、もう一つが後述する基礎控除後の課税価格です。
つまり2,500万円は年ごとの枠ではなく、特定贈与者ごとの累計の枠です。使い切れば以後は控除がありません。
同条2項が「期限内申告書に…記載がある場合に限り、適用する」としており、申告が適用要件です。3項に、やむを得ない事情がある場合の救済があります。
令和6年から年110万円の基礎控除が入った
ここが最も重要な改正点です。
相続税法21条の11の2第1項は、相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した財産に係る贈与税について、課税価格から60万円を控除すると定めています。暦年課税の21条の5と同じく、本法の数字は60万円です。
そして租税特別措置法70条の3の2第1項が、「令和6年1月1日以後に…相続時精算課税適用者がその年中において特定贈与者からの贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、同法第21条の11の2第1項の規定にかかわらず、贈与税の課税価格から百十万円を控除する」としています。
つまり令和6年1月1日以後、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除があるということです。
従来の説明が変わった
改正前は、相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与について暦年課税の110万円の基礎控除が使えなくなる、という整理でした。この説明は現在の条文とは一致しません。
現在は、特定贈与者からの贈与について毎年110万円の基礎控除があり、その控除後の金額について累計2,500万円の特別控除が働き、それも超えた部分に一律20パーセントの税率がかかる、という三段構えになっています。控除の順序は21条の12第1項が明示しており、基礎控除が先、特別控除が後です。
古い教材や解説記事はこの点を反映していないものが少なくありません。数字が問われる論点なので、条文にあたって確認する価値があります。
この節の要点
- 贈与者は1月1日に60歳以上、受贈者は同日に18歳以上の推定相続人かつ直系卑属(21条の9第1項)。
- 届出書は撤回できない(同条6項)。
- 基礎控除は年110万円(措法70条の3の2、令和6年1月1日以後)。特別控除は累計2,500万円(21条の12)。順序は基礎控除が先。
- 特別控除は期限内申告書への記載が要件。
生前贈与加算は7年になった
条文の見出しがすでに変わっている
相続税法19条の見出しは「相続開始前七年以内に贈与があつた場合の相続税額」です。同条1項は、相続または遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内に被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合、その贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算すると定めています。
かつては3年以内でしたが、条文上すでに7年です。
延長された4年分には100万円の控除がある
同項の括弧書きが重要です。加算対象贈与財産のうち「当該相続の開始前3年以内に取得した財産以外の財産」については、「当該財産の価額の合計額から百万円を控除した残額」を加算するとしています。
つまり、相続開始前3年以内の贈与は全額加算、それより前の4年分については合計額から100万円を控除した残額を加算する、という二段構えです。100万円は年ごとではなく、4年分の合計に対して一度だけ控除されます。
加算されるのは贈与税がかかった財産とは限らない
条文は「贈与により取得した財産(21条の2第1項から第3項まで、21条の3および21条の4の規定により当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限る)」としています。
課税価格計算の基礎に算入されるものであればよく、基礎控除110万円以下で結果として贈与税がかからなかったものも含まれます。「贈与税を納めていないから加算されない」という理解は誤りです。
配偶者控除を受けた部分は加算されない
19条1項が「特定贈与財産を除く」としており、2項がその定義を置いています。婚姻期間が20年以上である配偶者から贈与により取得した居住用不動産または金銭のうち、次項で扱う21条の6の配偶者控除の適用を受けた部分(または適用があるものとした場合に控除されることとなる部分)です。
配偶者控除で非課税にした部分を、相続のときに足し戻してしまっては制度の意味がなくなるため、加算対象から外しているわけです。
相続時精算課税との違い
暦年課税の生前贈与加算が「相続開始前7年以内」という期間で切られるのに対し、相続時精算課税では期間の制限なく、特定贈与者からの贈与財産が相続財産に加算されます。これが「精算」課税と呼ばれるゆえんです。
ただし、令和6年以後の相続時精算課税の年110万円の基礎控除の範囲内の部分は、相続財産への加算の対象になりません。この点も改正後の重要な帰結です。
贈与税の配偶者控除
要件は四つ
相続税法21条の6第1項が定める配偶者控除は、要件が明確です。
第一に、婚姻期間が20年以上である配偶者からの贈与であること。
第二に、贈与の目的物が専ら居住の用に供する土地もしくは土地の上に存する権利もしくは家屋(居住用不動産)または金銭であること。金銭でもよい点が特徴です。
第三に、その年の前年以前のいずれかの年において、贈与により当該配偶者から取得した財産に係る贈与税につきこの条の適用を受けた者でないこと。つまり同一の配偶者からは一生に一度しか使えません。
第四に、取得の日の属する年の翌年3月15日までに居住用不動産をその者の居住の用に供し、かつその後引き続き居住の用に供する見込みであること。金銭の場合は、同日までにその金銭で居住用不動産を取得し、居住の用に供し、引き続き供する見込みであること。
控除額は2,000万円
控除額は課税価格から2,000万円です。ただし、贈与により取得した居住用不動産の価額と、金銭のうち居住用不動産の取得に充てられた部分の金額との合計額が2,000万円に満たない場合は、その合計額が限度になります。
暦年課税の基礎控除110万円と併用できるため、実際には合計2,110万円まで課税価格から控除される計算になります。
申告が要件
21条の6第2項が、28条1項の申告書または更正請求書に、控除を受ける金額その他控除に関する事項と、その控除を受けようとする年の前年以前の各年分の贈与税につきこの規定の適用を受けていない旨を記載した書類その他財務省令で定める書類の添付がある場合に限り適用すると定めています。
3項に、添付がなかったことにやむを得ない事情があると税務署長が認める場合の救済があります。
住宅取得等資金の贈与の非課税
適用期間が条文に書かれている
租税特別措置法70条の2第1項は、「令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間にその直系尊属からの贈与により住宅取得等資金の取得をした特定受贈者が…」と定めています。
適用期間が条文に明記されている点が、本法の制度との違いです。措置法の特例は期限つきであり、期限そのものが問われうると考えてください。令和8年度試験が行われる2026年は、この期間内にあたります。
贈与者は直系尊属
贈与者の側の要件は「直系尊属」であることです。父母、祖父母などが該当します。配偶者の父母(義父母)は直系尊属ではないので対象外です。年齢の要件は課されていません。相続時精算課税が贈与者に60歳以上という年齢要件を課しているのと対照的です。
受贈者は18歳以上、所得2,000万円以下
70条の2第2項1号が「特定受贈者」を定義しています。住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の1月1日において18歳以上であって、その年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下である者です。
ここに括弧書きの例外があります。住宅取得等資金を充てて新築・取得・増改築等をした住宅用の家屋の床面積が政令で定める規模未満である場合には、1,000万円以下に下がります。この政令で定める規模は、租税特別措置法施行令40条の4の2第1項により50平方メートルです。
つまり、床面積が50平方メートル未満の場合だけ所得要件が1,000万円以下に厳しくなるという二段構えです。この点を落とした説明が多いので、条文で確認しておく価値があります。
床面積は40平方メートル以上240平方メートル以下
床面積の要件は施行令40条の4の2第2項にあります。1号が「一棟の家屋で床面積が二百四十平方メートル以下で、かつ、四十平方メートル以上であるもの」、2号が区分所有の場合について、区分所有する部分の床面積が同じ範囲にあるものとしています。
さらに同項柱書が、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら居住の用に供されるものに限るとし、居住の用に供する家屋が二以上ある場合には主として居住の用に供すると認められる一の家屋に限るとしています。
非課税限度額は1,000万円と500万円
70条の2第2項6号が「住宅資金非課税限度額」を定めています。
イに該当する場合が1,000万円です。イは二つの類型を挙げており、(1)が新築または建築後使用されたことのない住宅用の家屋で、エネルギーの使用の合理化に著しく資するものとして政令で定めるもの、(2)がエネルギーの使用の合理化に資する住宅用の家屋(新築・未使用のものを除く)、地震に対する安全性に係る基準に適合する住宅用の家屋、または高齢者等が自立した日常生活を営むのに必要な構造・設備の基準に適合する住宅用の家屋として政令で定めるものです。
ロに該当する場合、すなわちイ以外の住宅用の家屋である場合が500万円です。
いずれにも該当する場合は、いずれか多い金額になります。
翌年3月15日までという期限
70条の2第1項の各号が共通して求めているのが、贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を新築・取得・増改築等の対価に充て、その家屋を居住の用に供すること、または同日後遅滞なく居住の用に供することが確実であると見込まれることです。
同条4項は、翌年3月15日後に要件を満たさないこととなった場合について、その日から2月以内に修正申告書を提出し、納付すべき税額を納付しなければならないと定めています。
増改築等は工事費100万円以上
70条の2第2項4号イが、増改築等について「当該工事に要した費用の額が百万円以上であること」を要件としています。ロが、工事をした家屋が特定受贈者が主としてその居住の用に供すると認められるものであることを求めています。
他の控除との併用
この非課税は課税価格に算入しないという形をとるため、暦年課税の基礎控除110万円とも、相続時精算課税の基礎控除・特別控除とも併用できます。住宅の取得に関わる他の制度は住宅ローン控除、購入の流れ全体は不動産売買の流れを参照してください。
この節の要点
- 適用期間は令和6年1月1日から令和8年12月31日まで(措法70条の2第1項)。
- 贈与者は直系尊属(年齢要件なし)、受贈者は1月1日に18歳以上で合計所得金額2,000万円以下。床面積50平方メートル未満なら1,000万円以下。
- 床面積は40平方メートル以上240平方メートル以下、うち2分の1以上が専ら居住用(措令40条の4の2)。
- 非課税限度額は省エネ等の要件を満たすもの1,000万円、それ以外500万円。
- 翌年3月15日までに全額を充てて居住等。要件を欠いたら2月以内に修正申告。
相続税の基礎控除と配偶者の税額軽減
基礎控除は3,000万円プラス600万円掛ける相続人の数
相続税法15条1項は、相続税の総額を計算する場合に、課税価格の合計額から「三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額」を控除すると定めています。これが遺産に係る基礎控除額です。
課税価格の合計額がこの額以下であれば相続税はかからず、申告も不要です。27条1項が申告義務を「合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合」に限っているためです。
「相続人の数」には二つの調整がある
15条2項が、この「相続人の数」の数え方を定めています。ここに二つの調整が入っており、出題されるのはむしろこちらです。
一つ目が養子の数の制限です。相続人の数に算入する養子の数は、被相続人に実子がある場合または実子がなく養子が1人である場合は1人、実子がなく養子が2人以上である場合は2人が上限です。養子を無制限に増やして基礎控除を膨らませることを防ぐ規定です。
二つ目が相続放棄の扱いです。同項の括弧書きが「相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする」と定めています。民法上は放棄すると初めから相続人でなかったものとみなされますが(民法939条)、相続税の基礎控除の計算では放棄をなかったものとして数えます。民法と相続税法で扱いが逆になる典型例です。
なお15条3項は、特別養子縁組による養子、被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった者などを実子とみなすとしています。養子の数の制限を受けない類型があるということです。
配偶者の税額軽減
19条の2第1項が定める配偶者の税額軽減は、条文の書き方が独特です。配偶者について算出した相続税額から、一定の金額を控除し、残額があればそれが納付すべき税額、控除する金額のほうが大きければ納付すべき税額はないものとする、という構造をとっています。
控除する金額の計算に使うのが、同項2号のイとロのうちいずれか少ない金額です。
イが、課税価格の合計額に配偶者の法定相続分(相続の放棄があった場合は放棄がなかったものとした場合の相続分)を乗じて算出した金額です。ただしその金額が1億6,000万円に満たない場合には1億6,000万円とします。相続人が配偶者のみである場合は課税価格の合計額そのものになります。
ロが、配偶者が実際に取得した財産に係る課税価格に相当する金額です。
結果として、配偶者が取得した財産のうち、法定相続分相当額と1億6,000万円のいずれか多い額までは相続税がかからないという帰結になります。よく使われるこの言い方は条文そのものではなく、イとロの比較から導かれる結論だという点を押さえておくと、ひねった出題に対応できます。
未分割だと使えない
19条の2第2項が重要です。27条の申告書の提出期限までに、相続または遺贈により取得した財産の全部または一部が共同相続人または包括受遺者によってまだ分割されていない場合、その分割されていない財産は1項2号ロの課税価格の計算の基礎とされる財産に含まれません。つまり軽減の対象になりません。
ただし同項ただし書に救済があります。その財産が申告期限から3年以内に分割された場合には、その分割された財産についてはこの限りでないとされています。訴えの提起その他政令で定めるやむを得ない事情があり税務署長の承認を受けたときは、分割ができることとなった日として政令で定める日の翌日から4月以内に延びます。
遺産分割が終わっていないと配偶者の税額軽減が使えないという帰結は、実務上も試験上も重要です。遺産分割の進め方は遺産分割にまとめています。
ここでも申告が要件
19条の2第3項が、27条の申告書または更正請求書に、この規定の適用を受ける旨および計算に関する明細を記載した書類等の添付がある場合に限り適用すると定めています。
配偶者の税額軽減を使った結果として税額がゼロになる場合でも、申告そのものは必要だということになります。「税額がゼロなら申告不要」という肢は、この点で誤りです。
小規模宅地等の特例
条文は「減額」ではなく「20パーセントに圧縮」と書いている
租税特別措置法69条の4第1項は、限度面積要件を満たす小規模宅地等について、相続税の課税価格に算入すべき価額を「当該小規模宅地等の価額に次の各号に掲げる小規模宅地等の区分に応じ当該各号に定める割合を乗じて計算した金額とする」と定めています。
1号が、特定事業用宅地等・特定居住用宅地等・特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等について100分の20。2号が、貸付事業用宅地等である小規模宅地等について100分の50です。
つまり条文は「80パーセント減額」とは書いておらず、「20パーセントを乗じた金額を課税価格に算入する」と書いています。結果は同じですが、課税価格に算入する側の割合が条文の数字だという点は知っておく価値があります。計算問題で「課税価格に算入すべき価額」を問われたときに、減額される額と混同せずに済みます。計算の型は税金の計算問題を攻略を参照してください。
限度面積は三つ
69条の4第2項が限度面積要件を定めています。
1号が、特定事業用宅地等または特定同族会社事業用宅地等(あわせて特定事業用等宅地等)について、面積の合計が400平方メートル以下であること。
2号が、特定居住用宅地等について、面積の合計が330平方メートル以下であること。
3号が、貸付事業用宅地等について、後述する計算により求めた面積の合計が200平方メートル以下であること。
したがって「居住用330で20パーセント算入(80パーセント減額)、事業用400で20パーセント算入、貸付用200で50パーセント算入」という三つが基本形になります。
併用すると按分計算になる
見落とされやすいのが69条の4第2項3号の計算方法です。貸付事業用宅地等を選択する場合、次のイ・ロ・ハを合計した面積が200平方メートル以下でなければなりません。
イが、特定事業用等宅地等である選択特例対象宅地等がある場合、その面積の合計に400分の200を乗じて得た面積。
ロが、特定居住用宅地等である選択特例対象宅地等がある場合、その面積の合計に330分の200を乗じて得た面積。
ハが、貸付事業用宅地等である選択特例対象宅地等の面積の合計。
つまり、貸付事業用を混ぜると、他の区分の面積が200平方メートルの枠に換算されて食い込んできます。逆に言えば、貸付事業用を選ばなければ、特定事業用等の400平方メートルと特定居住用の330平方メートルは完全併用でき、合計730平方メートルまで使えます。この非対称は出題の的になります。
選択が必要
条文は繰り返し「選択をしたもの」「選択特例対象宅地等」という語を使っています。特例対象宅地等が複数ある場合、どれについて適用を受けるかを納税者が選択するという建て付けです。自動的に有利なものが適用されるわけではありません。
そして、この特例も申告を適用要件としています。前述の配偶者の税額軽減と同じく、適用の結果として税額がゼロになる場合でも申告が必要です。
相続・贈与と他の税目の関係
相続による取得は不動産取得税が非課税
地方税法73条の7は「形式的な所有権の移転等に対する不動産取得税の非課税」という見出しで、道府県が不動産取得税を課することができない場合を列挙しています。その1号が「相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による不動産の取得」です。
括弧書きが重要です。非課税になるのは、相続そのものだけでなく、包括遺贈と、被相続人から相続人に対してなされた遺贈も含みます。裏を返せば、相続人以外の者に対する特定遺贈は非課税の対象になりません。遺贈だから常に非課税、という理解は誤りです。
理由づけとしては、相続が被相続人の地位をそのまま承継するもので、新たに担税力のある財産を取得したとは評価しにくいという説明がされます。同条2号以下も、法人の合併、一定の分割、共有物の分割など、実質的な移転を伴わない類型を並べています。
これに対し、贈与による取得には不動産取得税が課されます。同じ無償の取得でも、相続と贈与で扱いが分かれるという対比が、この論点の核心です。不動産取得税側の軽減は不動産取得税の軽減にまとめています。
登録免許税は相続でも課される
相続によって不動産を取得した場合、不動産取得税は課されませんが、所有権移転登記に係る登録免許税は課されます。税率は売買による移転より低く設定されています。非課税と軽減は別のことだ、という点で対比になります。登録免許税の全体像は登録免許税と印紙税を参照してください。
課税標準に使われる評価額
相続税と贈与税の課税価格の計算では、土地について相続税評価額(路線価等)が使われます。これは国税庁が毎年1月1日時点で評価するもので、固定資産税評価額とは評価主体も時点も水準も違います。四つの公的価格の関係は土地の価格4種類、固定資産税側は固定資産税にまとめています。
申告と期限
相続税は知った日の翌日から10月以内
相続税法27条1項は、課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超え、かつ相続税額があるときに、「その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内」に申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならないと定めています。
起算点が「相続の開始の日」ではなく「相続の開始があったことを知った日の翌日」である点が要点です。被相続人の死亡を後から知った場合には、その時点から起算します。
贈与税は翌年2月1日から3月15日まで
相続税法28条1項は、贈与により財産を取得した者について、贈与税額がある場合などに、「その年の翌年二月一日から三月十五日まで」に申告書を提出しなければならないと定めています。
所得税の確定申告期間(2月16日から3月15日まで)とは開始日が違います。終期の3月15日は共通です。
相続時精算課税では税額がなくても申告する
28条1項は、贈与税額がある場合に加えて、「当該財産が第21条の9第3項の規定の適用を受けるものである場合(第21条の11の2第1項の規定による控除後の贈与税の課税価格がある場合に限る)」にも申告義務を課しています。
つまり相続時精算課税を選択した場合、特別控除によって納付税額がゼロになるときでも、基礎控除110万円を控除した後の課税価格が残るなら申告が必要です。特別控除は期限内申告書への記載が適用要件(21条の12第2項)でもあるため、申告しなければそもそも控除を受けられません。
特例は申告して初めて使える
ここまで見てきた特例は、条文がそろって申告を適用要件としています。贈与税の配偶者控除は21条の6第2項、相続時精算課税の特別控除は21条の12第2項、配偶者の税額軽減は19条の2第3項、小規模宅地等の特例は69条の4の関連規定です。
申告納税方式の税では、特例は自分から使いに行くものだと理解しておいてください。賦課課税方式の固定資産税で住宅用地の特例が自動的に適用されるのとは、制度の性格が違います。
試験での出題ポイント
数字を隣の制度から持ってくる
最も多い型です。贈与税の基礎控除110万円を120万円にする、相続時精算課税の2,500万円を2,000万円(贈与税の配偶者控除の額)にする、小規模宅地等の居住用330平方メートルを400平方メートル(事業用の数字)にする。同じ分野の中に似た数字が複数あるため、隣から持ってくるだけで肢が作れます。
年齢と続柄をずらす
相続時精算課税は贈与者が60歳以上、受贈者が18歳以上で、いずれもその年の1月1日での判定です。受贈者は推定相続人かつ直系卑属である必要があります。住宅取得等資金の非課税は贈与者が直系尊属で年齢要件がなく、受贈者は1月1日に18歳以上です。贈与者に年齢要件があるのは相続時精算課税だけという切り分けで覚えると混ざりません。
「自動的に適用される」と書く
特例はいずれも申告が要件です。「要件を満たせば申告をしなくても適用される」「税額がゼロになる場合は申告が不要」という肢は誤りになります。とくに配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は、適用の結果ゼロになることが多いため、この型が作りやすくなっています。
民法と税法で扱いが違う点を突く
相続放棄の扱いが典型です。民法939条では放棄した者は初めから相続人とならなかったものとみなされますが、相続税法15条2項の基礎控除の計算では放棄がなかったものとした場合の相続人の数で数えます。19条の2第1項2号イの法定相続分の計算でも同じ調整が入ります。
相続と遺贈をひとまとめにする
不動産取得税が非課税になるのは、相続、包括遺贈、および被相続人から相続人に対してなされた遺贈です(地方税法73条の7第1号)。相続人以外への特定遺贈は非課税になりません。「遺贈による取得は不動産取得税が非課税である」という肢は、この限定を落としています。
改正前の説明をそのまま出す
相続時精算課税に年110万円の基礎控除がないとする記述、生前贈与加算を3年とする記述は、いずれも令和6年1月1日以後は現行の条文と一致しません。教材や解説記事の更新が追いついていない領域なので、条文で確認する価値があります。
期限の起算点をずらす
相続税は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内」で、開始の日からではありません。贈与税は「翌年2月1日から3月15日まで」で、所得税の確定申告期間とは開始日が違います。住宅取得等資金の非課税は「贈与を受けた年の翌年3月15日まで」に居住等が必要です。
覚え方・整理の仕方
「本法と措置法」で二階建てを意識する
110万円は措置法70条の2の4、相続時精算課税の110万円は措置法70条の3の2、住宅取得等資金の非課税は措置法70条の2、小規模宅地等の特例は措置法69条の4。金額が動くものは措置法にあると覚えておくと、条文を引くときにも改正を追うときにも迷いません。本法である相続税法にあるのは、60万円、2,500万円、2,000万円、3,000万円プラス600万円、1億6,000万円です。
二つの110万円を並べる
暦年課税の基礎控除110万円と、相続時精算課税の基礎控除110万円。令和6年からどちらにもあるという形で覚えます。違いは、暦年課税が受贈者ごとに年1回であるのに対し、相続時精算課税は特定贈与者ごとである点です。
相続時精算課税は三段で覚える
年110万円の基礎控除、累計2,500万円の特別控除、超過部分に一律20パーセント。控除の順序は基礎控除が先(21条の12第1項が「前条第1項の規定による控除後の…課税価格から」と書いています)。この三段を口に出せるようにしておきます。
期間は「7年・3年・100万円」
生前贈与加算は7年。うち3年以内は全額、残りの4年分は合計から100万円を控除。7から3を引いた4年分に100万円という言い方で固定します。
面積は用途で対にする
小規模宅地等は、事業用400・居住用330・貸付用200。数字が大きいほど保護が厚いわけではなく、貸付用だけは割合も50パーセント算入と扱いが軽い点をセットにします。貸付用を混ぜると按分になり、混ぜなければ事業用400と居住用330が完全併用できる、という帰結まで一組で持ちます。
住宅取得等資金は「40・240・50・2,000・1,000」
床面積は40平方メートル以上240平方メートル以下。そのうち50平方メートル未満だと所得要件が2,000万円から1,000万円に下がる。非課税限度額は省エネ等1,000万円、その他500万円。数字が多いので、床面積の三つ(40・240・50)と金額の三つ(2,000・1,000・500)に分けて覚えます。
婚姻期間20年は配偶者控除だけ
婚姻期間20年以上という要件が出てくるのは、贈与税の配偶者控除(21条の6)だけです。相続税の配偶者の税額軽減(19条の2)には婚姻期間の要件がありません。贈与のほうにだけ20年があると押さえます。
申告が要件であることを一括で覚える
贈与税の配偶者控除、相続時精算課税の特別控除、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例。四つとも申告が要件です。個別に覚えるのではなく、「国税の特例は申告して使う」という原則で束ねます。
理解度チェッククイズ
次の記述の正誤を判定してください。
問1. 贈与税の基礎控除額110万円は、相続税法21条の5に定められている。
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答えは誤りです。相続税法21条の5が定めているのは「課税価格から**六十万円**を控除する」であり、110万円ではありません。110万円としているのは租税特別措置法70条の2の4で、平成13年1月1日以後に贈与により財産を取得した者について、相続税法21条の5の規定にかかわらず課税価格から110万円を控除するとしています。同条2項により、控除された額は相続税法21条の5により控除されたものとみなされます。本法の原則を措置法が修正するという二階建ての構造で、住宅取得等資金の非課税(措置法70条の2)や小規模宅地等の特例(措置法69条の4)も同じく措置法にあります。問2. 相続時精算課税を選択した場合、その特定贈与者からの贈与については、暦年課税の基礎控除に相当する控除を一切受けられない。
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答えは誤りです。改正前の説明であり、現在の条文とは一致しません。租税特別措置法70条の3の2第1項は、**令和6年1月1日以後**、相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税について、相続税法21条の11の2第1項の規定にかかわらず課税価格から**110万円**を控除すると定めています。したがって現在は、年110万円の基礎控除を差し引いたうえで、その後の課税価格から累計2,500万円の特別控除(相続税法21条の12第1項)を適用し、なお超える部分に一律20パーセントの税率がかかるという三段構えです。控除の順序は基礎控除が先である点も条文が明示しています。問3. 相続税の遺産に係る基礎控除額を計算する際の「相続人の数」は、相続の放棄をした者を除いて数える。
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答えは誤りです。相続税法15条2項の括弧書きは「相続の放棄があつた場合には、**その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数**とする」と定めています。民法939条により放棄した者は初めから相続人とならなかったものとみなされますが、相続税の基礎控除の計算では放棄をなかったものとして数えます。民法と相続税法で扱いが逆になる典型例です。同じ調整は配偶者の税額軽減における法定相続分の計算(19条の2第1項2号イ)にも入っています。なお同項では養子の数にも制限があり、実子がある場合は1人、実子がなく養子が2人以上いる場合は2人までしか算入できません。問4. 小規模宅地等の特例において、特定居住用宅地等は330平方メートルまで、特定事業用宅地等は400平方メートルまでが限度面積であり、両方を選択する場合は合計330平方メートルが上限となる。
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答えは誤りです。限度面積が330平方メートル(租税特別措置法69条の4第2項2号)と400平方メートル(同項1号)である点は正しい記述ですが、両者を選択する場合の扱いが違います。貸付事業用宅地等を選択しない限り、特定事業用等宅地等の400平方メートルと特定居住用宅地等の330平方メートルは完全に併用でき、**合計730平方メートル**まで適用できます。按分計算が必要になるのは貸付事業用宅地等を選択する場合で、同項3号により、特定事業用等宅地等の面積に400分の200を、特定居住用宅地等の面積に330分の200を乗じた面積と、貸付事業用宅地等の面積との合計が200平方メートル以下であることが求められます。問5. 被相続人から相続人以外の者に対してなされた特定遺贈による不動産の取得については、不動産取得税が課されない。
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答えは誤りです。地方税法73条の7第1号が非課税としているのは「相続(**包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。**)による不動産の取得」です。非課税になるのは、相続、包括遺贈、そして被相続人から**相続人に対して**なされた遺贈に限られます。相続人以外の者に対する特定遺贈は、この括弧書きに含まれないため非課税の対象になりません。なお、相続による取得であっても所有権移転登記に係る登録免許税は課されます(税率は売買による移転より低く設定されています)。非課税と軽減は別のことである点もあわせて押さえてください。問6. 配偶者の税額軽減の適用を受けた結果、配偶者の納付すべき相続税額がゼロとなる場合には、相続税の申告書を提出する必要はない。
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答えは誤りです。相続税法19条の2第3項は、同条1項の規定は、27条の申告書または更正請求書にこの規定の適用を受ける旨および計算に関する明細を記載した書類等の添付がある場合に限り適用すると定めています。したがって申告をしなければ軽減自体が受けられず、結果としてゼロになる場合でも申告が必要です。同じ構造は贈与税の配偶者控除(21条の6第2項)、相続時精算課税の特別控除(21条の12第2項)、小規模宅地等の特例にも共通しています。また19条の2第2項により、申告期限までに遺産が分割されていない財産は軽減の対象になりません(申告期限から3年以内に分割された場合等の救済があります)。まとめ
金額の根拠がどの法律にあるかを押さえてください。贈与税の基礎控除110万円は相続税法ではなく租税特別措置法70条の2の4にあります(本法21条の5は60万円)。住宅取得等資金の非課税は措置法70条の2、小規模宅地等の特例は措置法69条の4です。措置法にある制度は適用期限つきで改正も入りやすく、実際に住宅取得等資金の非課税は令和6年1月1日から令和8年12月31日までと条文に期間が書かれています。
令和6年1月1日から二つの制度が変わりました。相続時精算課税に年110万円の基礎控除が入り(措置法70条の3の2)、暦年課税の生前贈与加算が相続開始前3年から7年になりました(相続税法19条1項)。延長された4年分については合計額から100万円を控除します。相続時精算課税は、年110万円の基礎控除、特定贈与者ごと累計2,500万円の特別控除、超過部分に一律20パーセント、という三段構えです。贈与者は1月1日に60歳以上、受贈者は同日に18歳以上の推定相続人かつ直系卑属で、届出書は撤回できません。
相続税の基礎控除は3,000万円と600万円に相続人の数を乗じた額の合計です(15条1項)。相続人の数は、養子について実子がある場合1人・実子がなく養子2人以上の場合2人が上限で、相続放棄があっても放棄がなかったものとして数えます。配偶者の税額軽減は、法定相続分相当額と1億6,000万円のいずれか多い額まで税額が生じない結果になりますが、申告期限までに分割されていない財産は対象外です(19条の2第2項)。
小規模宅地等の特例は、条文上は「課税価格に算入すべき価額に割合を乗じる」形です。特定事業用・特定居住用・特定同族会社事業用が100分の20、貸付事業用が100分の50を乗じた額を算入します(69条の4第1項)。限度面積は事業用400平方メートル、居住用330平方メートル、貸付用200平方メートル。貸付事業用を選ばなければ事業用と居住用は完全併用でき、選ぶと按分計算になります。
特例は申告して初めて使えます。贈与税の配偶者控除、相続時精算課税の特別控除、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例は、いずれも条文が申告書への記載や添付を適用要件としています。適用の結果として税額がゼロになる場合でも申告が必要です。申告期限は、相続税が相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内(27条1項)、贈与税が翌年2月1日から3月15日まで(28条1項)です。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、贈与税・相続税の肢を金額・要件・申告手続の別に絞って演習でき、似た数字を取り違えた箇所だけを繰り返せます。
税と価格の評定は毎年ほぼ同じ形で出ます。出題パターンを肢別で押さえれば取りこぼしません。