宅建業の免許制度|要否・免許権者・更新
宅建業の免許制度を条文の順に解説。免許が必要になる場面、免許権者の決まり方、有効期間5年と更新、免許換え、届出義務、無免許事業の禁止までを条番号つきで整理します。
目次
この記事は、宅地建物取引業の免許制度そのものを、条文の並びに沿って一から説明する入口の記事です。宅建業法という科目全体の中での位置づけは宅建業法の全体像で、免許の手続きを宅地建物取引士の登録制度と突き合わせて横断整理したものは宅建業の免許制度を横断整理で扱っています。ここでは対比よりも、制度がどう組み立てられているかの理解に重点を置きます。
結論を先に述べます。免許制度は、宅建業を営もうとする者を入口で選別し(3条1項、5条1項)、その資格を5年ごとに見直し(3条2項)、事務所の分布が変われば免許自体を取り替えさせ(7条1項)、業をやめるときには行政に知らせて名簿から消す(11条1項)という、一本の流れとして設計されています。個々の数字を暗記の対象として並べるのではなく、この流れのどこに置かれた数字なのかを意識すると、条文の順番がそのまま記憶の順番になります。
免許制度は何のために置かれているのか
参入規制という手段
宅地建物の取引は、一般の消費者にとって一生に数えるほどしか経験しない取引でありながら、動く金額は最も大きい部類に入ります。売主や貸主、仲介者が持つ情報と、買主や借主が持つ情報には埋めがたい差があり、これを放置すれば知識のない者が一方的に不利な条件をのまされます。
宅建業法1条は、この法律の目的として、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、業務の適正な運営と取引の公正を確保することを掲げています。免許制度は、購入者等の利益の保護という目的を実現するための最初の手段として、条文上名指しされています。
参入規制としての免許制度は、三つの局面で働きます。第一に、免許を受けようとする段階で欠格事由を審査し、財産的な信用を欠く者や過去に不正を行った者を排除します(5条1項)。第二に、免許を受けた後も、有効期間の満了ごとに同じ審査を繰り返します(3条2項・3項)。第三に、業務に違反があれば監督処分によって市場から退場させます(65条、66条)。入口、途中、出口のすべてに関門が置かれている、と捉えてください。
免許は譲れず、貸せず、相続もできない
免許は、申請者に欠格事由がないか、事務所に専任の宅地建物取引士が置かれているかを個別に審査したうえで与えられます。したがって免許は一身専属的な性質を持ち、他人に譲渡することも、名義を貸すことも、相続によって当然に承継させることもできません。
この性質は条文の随所に現れています。13条1項が自己の名義をもって他人に宅建業を営ませることを禁じているのは、審査を通った看板の裏に審査を受けていない者が立つことを防ぐためです。11条1項1号が業者の死亡について相続人からの届出を求めているのも、免許が相続の対象にならないことの裏返しで、相続人が事業を引き継ぐなら自身が新たに免許を受けなければなりません。
免許を受けただけでは営業を始められない
見落とされやすいのが、免許の取得と営業の開始が別の段階だという点です。宅建業者は、営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託し(25条1項)、その旨を免許権者に届け出た後でなければ、事業を開始することができません(25条4項・5項)。
免許権者は、免許をした日から3か月以内に供託の届出がないときは、届出をすべき旨の催告をしなければならず(25条6項)、催告が到達した日から1か月以内になお届出がないときは、免許を取り消すことができます(25条7項)。免許を取っただけで放置すると、免許そのものを失うということです。供託額の計算、還付、保管替えの手続きは営業保証金の供託と還付で扱っています。
どういう場合に免許が必要になるのか
2条2号の定義を分解する
宅建業法2条2号は、宅地建物取引業を「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」と定義しています。読みにくい条文ですが、二段構えになっています。前半が行為の型を列挙し、後半の「業として行うもの」がその行為を反復継続の観点から絞り込む、という構造です。
前半を整理すると、自ら当事者となって行うのは売買と交換の二つだけです。自ら当事者となる貸借、つまり自分が所有する物件を自分で貸す行為は、この列挙に入っていません。これに対して代理と媒介については、売買、交換、貸借のすべてが対象になります。したがって、自ら貸借だけが免許不要という結論が導かれます。
自ら貸借が外れているのは、条文の書き落としではありません。自ら貸主となる場合、取引の相手方は貸主本人と直接交渉できますし、賃貸借については借地借家法という別の法律が借主を強く保護しています。宅建業法による特別の規制を重ねる必要が乏しい、という判断です。所有するマンションを多数の入居者に反復継続して賃貸しても免許は不要ですし、他人から借り上げた建物を転貸するいわゆるサブリースも、自ら貸借に当たるため免許は不要です。
宅地とは何か(2条1号)
免許の要否は「宅地」または「建物」の取引であることを前提にしています。この宅地の定義が、思っているより広く設定されています。
2条1号は、宅地を、建物の敷地に供せられる土地をいい、都市計画法8条1項1号の用途地域内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のものを含む、と定めています。政令で定める施設は広場と水路です(施行令1条)。
つまり判断は二段になります。まず、現に建物の敷地となっている土地、および将来建物を建てる目的で取引される土地は、場所を問わず宅地です。用途地域の外にある土地でも、建物の敷地であれば宅地に当たります。次に、用途地域の内にある土地は、現に建物が建っていなくても、農地であっても山林であっても原則として宅地として扱われます。ただし、道路、公園、河川、広場、水路として現に公共の用に供されている土地だけは除かれます。
用途地域内の農地を売買する媒介には免許が必要で、用途地域外の農地の売買の媒介には原則として免許が不要になる、という結論の差は、この定義から出てきます。宅地に当たるかどうかの具体的な判定は宅建業の「業」に当たるケースと当たらない例で網羅的に扱っています。
なお建物については条文上の定義がありませんが、住宅に限らず、倉庫、工場、店舗、事務所なども含みます。マンションの一室のように建物の一部も対象です。
「業として行う」の判断要素
行為の型に当てはまっても、それが業として行われていなければ免許は不要です。業として行うとは、不特定多数の者を相手方として、反復継続して取引を行うことを指します。実務上は、次の要素を総合して判断されます。
- 取引の対象者が不特定多数か、特定の少数者に限られているか
- 取引の目的が、事業として利益を得ることにあるか、自らの居住や社宅の処分といった別の目的にあるか
- 取引物件の取得経緯が、転売目的の購入か、相続や自己使用のための取得か
- 取引の態様が、自ら販売するか、宅建業者に代理や媒介を依頼するか
- 反復継続性があるか、一回限りの取引か
重要なのは、これが総合判断であって、一つの要素だけで結論が決まるわけではないという点です。相続で取得した土地であっても、区画割りして不特定多数に反復して分譲すれば業に当たります。逆に、自社の従業員だけを対象とした分譲は、相手方が特定されているため業に当たらないと解されています。また、宅建業者に販売の代理を依頼したとしても、売主自身が業として売買を行っている以上、売主にも免許が必要です。依頼先が免許を持っていることは、依頼者の免許を不要にする理由にはなりません。
免許の種類と免許権者
事務所の分布だけで決まる
宅建業法3条1項は、免許権者を二つに振り分けています。2以上の都道府県の区域内に事務所を設置してその事業を営もうとする場合は国土交通大臣の免許を、1の都道府県の区域内にのみ事務所を設置して営もうとする場合は当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない、というものです。
基準は事務所の所在地だけです。資本金の額、従業者の数、取引の件数、そして営業活動の範囲は、いずれも免許権者の決定に影響しません。したがって、A県にのみ事務所を持つA県知事免許の業者が、B県にある物件をB県在住の顧客に媒介することは何ら問題ありません。「知事免許の業者は当該都道府県内の物件しか取り扱えない」という記述は、免許制度で最も繰り返される誤りです。免許権者の違いは、その業者を監督する行政庁がどこかという違いにすぎません。
何が「事務所」に当たるか
免許権者が事務所の分布で決まる以上、どこまでが事務所かの線引きが結論を左右します。事務所とは、本店および支店その他政令で定めるものをいい、継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くものを指します。
注意すべき扱いが二つあります。一つは、支店が宅建業を営んでいれば、本店が宅建業をまったく営んでいなくても本店は事務所として扱われる点です。本店には全社を統括する機能があり、支店の営業から生じる責任も及ぶと考えられるためです。もう一つは、その裏返しで、支店が宅建業をまったく営んでいなければ、その支店は宅建業法上の事務所ではないという点です。建設業だけを営む支店を他県に置いても、免許換えの問題は生じません。
事務所に当たれば、専任の宅建士の設置義務(31条の3第1項)、営業保証金の供託額の算定(25条2項)、標識の掲示(50条1項)、報酬額の掲示(46条4項)、従業者名簿と帳簿の備付け(48条3項、49条)が一斉に発生します。事務所の要件そのものは宅建業の事務所の要件、専任の宅建士の人数と補充の期間は専任の宅建士の設置義務、備付け書類は従業者名簿と帳簿で扱っています。
なお、案内所やモデルルーム、展示場は事務所ではありません。ただし、契約の締結または契約の申込みの受付を行う案内所等については、業務を開始する日の10日前までに、免許権者と案内所等の所在地を管轄する都道府県知事の双方に届け出なければならず(50条2項)、成年者である専任の宅建士を1人以上置く必要があります。事務所の5人に1人以上とは基準が違います。
申請の窓口と免許証番号
大臣免許を申請する場合であっても、申請書を直接国土交通大臣に提出するのではなく、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して提出します(78条の3第1項)。窓口は都道府県だが免許を与えるのは大臣、という構造です。知事免許の場合は、その都道府県知事に直接申請します。
免許証番号は、大臣免許であれば「国土交通大臣( )第 号」、知事免許であれば「○○県知事( )第 号」と表示されます。かっこ内の数字は免許の更新回数を示し、新規の免許は(1)で、更新のたびに増えていきます。後で述べる免許換えは新規の免許を受け直す手続きなので、この数字は(1)に戻ります。
免許の申請から免許証の交付まで
申請書の記載事項
免許を受けようとする者は、免許申請書を提出します。4条1項が定める記載事項は、商号または名称、法人である場合はその役員の氏名および政令で定める使用人があるときはその者の氏名、個人である場合はその者の氏名および政令で定める使用人があるときはその者の氏名、事務所の名称および所在地、事務所ごとに置かれる専任の宅建士の氏名、そして他に事業を行っているときはその事業の種類です。
この六つが、後で見る宅地建物取引業者名簿の登載事項(8条2項)とほぼ重なるのは、申請書に書かせたものを名簿に載せる関係だからです。申請書には、欠格事由に該当しないことを誓約する書面などを添付します(4条2項)。
免許の拒否と免許の条件
免許権者は、申請者が5条1項各号のいずれかに該当する場合、または申請書やその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、もしくは重要な事実の記載が欠けている場合には、免許をしてはなりません。これは裁量の余地がない羈束的な処分です。免許をしない場合には、その理由を示して申請者に通知しなければなりません(5条2項)。
一方で、免許には条件を付し、また付した条件を変更することができます(3条の2第1項)。ここでいう条件は、宅建業の適正な運営と宅地建物の取引の公正を確保するため必要な最小限度のものでなければなりません(同条2項)。免許は与えるか拒むかの二択ではなく、条件付きで与えるという中間の選択肢があります。
免許証の交付と標識との違い
免許をしたときは、免許権者は免許証を交付します(6条)。商号や主たる事務所の所在地が変わって免許証の記載と実態がずれた場合は、免許証の書換え交付を申請します。
ここで区別しておきたいのが、免許証と標識の違いです。掲示義務があるのは免許証ではなく標識(業者票)のほうで、事務所ごとに、公衆の見やすい場所に掲げなければなりません(50条1項)。免許証は免許を受けたことの証票にすぎず、事務所に掲示する義務はありません。「免許証を事務所に掲示しなければならない」という肢は誤りです。
有効期間5年と更新の手続き
5年という区切りの意味
免許の有効期間は5年です(3条2項)。大臣免許と知事免許で期間は変わらず、どちらも5年です。
この5年は、免許を受けた者が引き続き適格であるかを定期的に確認するための区切りです。更新の際には、改めて5条1項の欠格事由に該当しないかが審査され、事務所ごとの専任の宅建士が法定数を満たしているかも確認されます。免許を一度取れば安泰という制度ではありません。
申請は90日前から30日前まで
免許の更新を受けようとする者は、有効期間満了の日の90日前から30日前までの間に更新の申請をしなければなりません(3条3項、施行規則3条)。始点と終点の両方が定められているのは、早すぎる申請では審査の時点と新たな有効期間の開始時点が離れすぎて審査の意味が薄れ、遅すぎる申請では満了までに審査が終わらないからです。
「満了の90日前まで」「満了の30日前から」といった言い換えは、いずれも誤りになります。始点が90日前、終点が30日前という向きを取り違えないでください。案内所等の届出の「10日前まで」と並べて、前から数える数字として覚えると混ざりにくくなります。宅建業法に出てくる数字を横断的に整理したものは宅建業法の数字まとめにあります。
審査中に有効期間が満了したとき
期間内に更新の申請をしたにもかかわらず、満了の日までに免許権者の処分がされないことがあります。この場合、従前の免許は有効期間の満了後も、処分がされるまでの間はなお効力を有します(3条4項)。申請者に落ち度のない事情で営業ができなくなるのは不合理だからです。この間、業者は宅建業を適法に営むことができます。
そして更新がされたときは、新たな免許の有効期間は、従前の免許の有効期間の満了の日の翌日から起算します(3条5項)。更新の処分がされた日からではありません。審査が長引いた分だけ有効期間が後ろにずれて得をする、という結果にはならないわけです。「満了後に更新されたので、新たな5年は更新処分の日から数える」という選択肢は誤りです。
更新しなかった場合
期間内に更新の申請をしないまま有効期間が満了すれば、免許は失効します。再び宅建業を営むには、新規の免許申請が必要です。
ただし、失効した瞬間にすべての行為が違法になるわけではありません。76条は、有効期間の満了などにより免許が効力を失ったときは、その者または一般承継人は、宅建業者が締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては、なお宅建業者とみなすと定めています。すでに締結した契約の履行、決済、引渡しといった後始末は続けられるということです。逆にいえば、新たに媒介契約を締結したり、新規の売買契約を結んだりすることはできません。この規定は、廃業等による失効の場合にも、免許の取消処分を受けた場合にも同じように働きます。
免許換え
免許換えが必要になる三つの場面
事務所の分布が変われば、あるべき免許権者も変わります。宅建業法7条1項は、免許を受けた者が次のいずれかに該当して引き続き宅建業を営もうとする場合に、新たな免許権者の免許を受けたときは従前の免許が効力を失うと定めています。
- 大臣免許の業者が、事務所を廃止して1の都道府県の区域内にのみ事務所を有することとなったとき。その都道府県知事の免許に換える。
- 知事免許の業者が、当該都道府県内の事務所を廃止して、他の1の都道府県の区域内に事務所を設置することとなったとき。移転先の都道府県知事の免許に換える。
- 知事免許の業者が、2以上の都道府県の区域内に事務所を有することとなったとき。大臣免許に換える。
申請先は、換えた後の免許権者です。大臣免許に換える場合は主たる事務所の所在地を管轄する知事を経由して大臣に、他県の知事免許に換える場合は移転先の知事に申請します。従前の免許権者に申請するのではありません。
裏返せば、同一の都道府県の中で事務所を移転したり、同一県内に支店を増設したりしても、免許権者は変わらないので免許換えは不要です。この場合は事務所の名称および所在地の変更として、9条の変更の届出で処理します。問題文が事務所の新設と廃止を同時に書いてくることがあるので、最終的にいくつの都道府県に事務所が残るのかを数えてから判断してください。
免許換えの効果と有効期間
免許換えによって受ける免許は、新規の免許です。したがって有効期間は、新たな免許の日から5年です。従前の免許の残存期間を引き継ぐわけではありません。免許証番号のかっこ内の数字が(1)に戻るのも、新規の免許として扱われることの現れです。
なお、従前の免許が効力を失うのは新たな免許を受けた時であり、申請をした時ではありません。申請から新免許の交付までの間も、従前の免許で適法に営業を続けられます。
免許換えを怠るとどうなるか
免許換えは「してもよい」ではなく義務です。7条1項各号のいずれかに該当しているのに新たな免許を受けていないことが判明したときは、免許権者は免許を取り消さなければなりません(66条1項)。裁量のない必要的取消しです。
もっとも、この取消しは5年の欠格事由には当たりません。次に述べるとおり、5年間免許を受けられなくなる取消しは三つの事由に限られており、免許換えの懈怠はそこに含まれていないからです。免許換えを怠って取り消された者は、事務所の体制を整えて直ちに免許を申請し直すことができます。
免許を受けられない事由と、免許が取り消される場合
5条1項の骨格
5条1項は、免許権者が免許をしてはならない場合を列挙しています。号の数は多いのですが、排除の理由で束ねると次の系統に分かれます。
- 経済的信用と判断能力にかかわるもの。破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者(1号)、心身の故障により宅建業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの(10号)。
- 過去に免許を取り消されたことにかかわるもの。66条1項8号または9号に該当して取り消され、取消しの日から5年を経過しない者(2号)。
- 処分を免れるための廃業にかかわるもの。取消処分の聴聞の期日および場所が公示された日から処分がされるまでの間に、相当の理由なく廃業等の届出をした者で、届出の日から5年を経過しない者(3号)。
- 刑罰にかかわるもの。拘禁刑以上の刑に処せられた者は罪名を問わず(5号)、宅建業法違反、暴力的な犯罪、背任罪については罰金刑でも(6号)、その執行を終わりまたは執行を受けることがなくなった日から5年。
- 反社会的勢力にかかわるもの。暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(7号)、暴力団員等がその事業活動を支配する者(14号)。
- 組織の人的構成にかかわるもの。営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が欠格である場合(11号)、法人でその役員または政令で定める使用人が欠格である場合(12号)、事務所に専任の宅建士を置いていない者(15号)。
このうち破産者だけは、期間ではなく状態で判断します。復権を得れば直ちに免許を受けることができ、5年を待つ必要はありません。心身の故障も同様に、状態が解消すれば足ります。逆に、暴力団員でなくなった者には5年の経過が求められます。「該当しなくなれば直ちに」と「該当しなくなってから5年」の区別が、そのまま出題の的になります。
5号が「拘禁刑以上の刑」となっているのは、懲役と禁錮を一本化した改正刑法が2025年6月1日に施行されたためです。施行日前に懲役または禁錮に処せられた者は従前の例によるとされ、欠格の範囲も5年という期間も変わっていません。
号ごとの詳細、控訴・上告中の扱い、執行猶予が満了した場合の扱いは宅建業の免許の欠格事由にまとめてあります。拘禁刑への一本化が欠格事由に与えた影響は拘禁刑と宅建業法の欠格事由で扱っています。
5年の欠格につながる取消しは三つだけ
5条1項2号が引用している66条1項8号と9号の中身は、不正の手段により免許を受けたとき、業務停止処分の事由に該当し情状が特に重いとき、業務停止処分に違反したときの三つです。いわゆる三大取消事由と呼ばれるものです。
免許の取消しにはこれ以外にも、欠格事由に該当するに至ったとき、免許換えを受けていないことが判明したとき、免許を受けてから1年以内に事業を開始せず引き続き1年以上事業を休止したとき、廃業等の届出がないまま該当事実が判明したときなどがありますが、これらによる取消しは5年の欠格事由になりません。取消しと聞いたら反射的に5年と結びつけるのではなく、取消しの理由が三つのどれかに当たるかを確認する、という手順を踏んでください。監督処分の全体像は宅建業者への監督処分で扱っています。
免許を受けた後の届出義務
宅地建物取引業者名簿(8条)
国土交通省および都道府県には、宅地建物取引業者名簿が備えられます(8条1項)。登載される主な事項は、免許証番号および免許の年月日、商号または名称、法人であれば役員の氏名と政令で定める使用人の氏名、個人であればその者の氏名と政令で定める使用人の氏名、事務所の名称および所在地、事務所ごとに置かれる専任の宅建士の氏名、そして指示処分または業務停止処分を受けたときはその年月日および内容です(8条2項各号)。このほか国土交通省令により、宅建業以外の事業を行っているときはその事業の種類も登載されます。
名簿は一般の閲覧に供されます(10条)。取引の相手方が、その業者が実在するか、処分歴があるかを自分で確認できるようにするための制度で、監督処分の履歴が公開されることは処分の実効性を支える仕組みでもあります。
変更の届出は30日以内(9条)
宅建業者は、8条2項2号から6号までに掲げる事項に変更があった場合、30日以内にその旨を免許権者に届け出なければなりません(9条)。対象は、商号または名称、役員および政令で定める使用人の氏名、個人業者の氏名と政令で定める使用人の氏名、事務所の名称および所在地、専任の宅建士の氏名です。
ここで押さえるべきは、名簿の登載事項と変更の届出の対象が一致していないことです。免許証番号と免許の年月日(1号)は業者の都合で変わるものではありません。処分の年月日と内容(7号)は免許権者自身が処分したのですから業者が届け出る必要はありません。そして省令で定める兼業の種類は、名簿には載るが変更の届出の対象からは外れています。「宅建業以外の事業を始めたので30日以内に届け出た」という肢は誤りです。
もう一つの落とし穴が住所です。役員の氏名は届出の対象ですが、役員の住所は名簿の登載事項ではないため、住所が変わっても届出は不要です。届出を怠った場合は50万円以下の罰金の対象となります(83条1項1号)。対象事項の細かい切り分けは宅建業者名簿と変更届で扱っています。
廃業等の届出と失効の時点(11条)
宅建業者が業をやめる場面は五つに類型化され、それぞれ届出義務者が異なります(11条1項各号)。
- 個人業者が死亡したとき。届け出るのは相続人。
- 法人が合併により消滅したとき。届け出るのは消滅した法人を代表する役員であった者。
- 破産手続開始の決定があったとき。届け出るのは破産管財人。
- 法人が合併および破産手続開始の決定以外の理由により解散したとき。届け出るのは清算人。
- 宅建業を廃止したとき。届け出るのは業者であった個人、または業者であった法人を代表する役員。
届出期間はいずれもその日から30日以内ですが、死亡の場合だけは、相続人がその事実を知った日から30日以内です。相続人が死亡を知らないうちに期間が進行するのは酷だからです。この一点だけ起算点が違う、という形で覚えると確実です。
より問われるのが、免許がいつ効力を失うかです。死亡と合併による消滅の二つについては、免許は届出を待たずに当然に効力を失います。人が死に、あるいは法人が消滅すれば、免許を受けた主体そのものが存在しなくなる以上、届出があるまで免許が残ると考える余地がないからです。これに対して、破産手続開始の決定、解散、廃止の三つでは、免許は届出の時に効力を失います(11条2項)。破産手続が始まっても法人は存在しており、解散しても清算の目的の範囲内で法人格は残り、廃止に至っては業者本人がやめると決めただけです。主体が存在し続ける以上、行政に届出がされた時点で免許を消す、という整理になります。
とくに破産が誤りやすいところです。届出義務者は破産管財人という特殊な立場の者なのに、失効の時点は破産手続開始決定の時ではなく届出の時。義務者の特殊さに引きずられると、そのまま失点します。各事由の詳細は廃業等の届出で扱っています。
無免許事業の禁止と、免許を受ける必要がない者
無免許事業の禁止(12条)
免許を受けない者は、宅建業を営んではなりません(12条1項)。さらに、免許を受けない者は、宅建業を営む旨の表示をし、または宅建業を営む目的をもって広告をしてはなりません(12条2項)。実際に取引をしたかどうかを問わず、表示や広告の段階で違法になります。免許の申請中の者が「近日開業」と広告を出す行為も、これに触れます。
罰則は段階が分かれます。12条1項の無免許事業は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科(79条2号)で、宅建業法で最も重い部類です。これに対して12条2項の無免許での表示・広告は100万円以下の罰金にとどまります(82条2号)。実際に取引をさせたかどうかで、被害の現実性が変わるためです。
名義貸しの禁止(13条)
宅建業者は、自己の名義をもって他人に宅建業を営ませてはなりません(13条1項)。また、自己の名義をもって他人に宅建業を営む旨の表示をさせ、または広告をさせてはなりません(13条2項)。無免許の者が免許業者の看板を借りて営業できてしまえば、参入規制も欠格事由の審査も無意味になるからです。
罰則の構造は無免許事業と対称で、13条1項違反は79条3号、13条2項違反は82条2号です。加えて、79条の違反行為については両罰規定が働き、法人には1億円以下の罰金が科されます(84条1号)。行為者本人の罰金の上限が300万円のままである点と対比して押さえてください。罰則の全体像は宅建業法の罰則一覧にまとめてあります。
監督上も、名義貸しは重く扱われます。名義を貸した業者は業務停止処分の対象となり、情状が特に重いときは免許を取り消されます(66条1項)。この取消しは三大取消事由に当たるため、取消しの日から5年間は免許を受けられません。
国および地方公共団体(78条1項)
宅建業法の規定は、国および地方公共団体には適用されません(78条1項)。国や地方公共団体が宅地を分譲しても免許は不要です。公的主体には利益追求の動機がなく、別の法制度によって行為の適正が担保されているためです。独立行政法人都市再生機構や地方住宅供給公社も、それぞれの根拠法により宅建業法の適用について地方公共団体とみなされ、免許を要しません。
注意すべきなのは、免許不要とされるのがこの範囲に限られることです。農業協同組合、学校法人、社会福祉法人などは、公共性が高くても免許が必要です。「公的な性格の団体だから不要」という感覚で広げると誤ります。
信託会社および信託銀行(77条)
信託会社については、免許に関する3条から7条までの規定および無免許事業の禁止(12条)が適用されません(77条1項)。信託業法による免許を受けて監督に服しており、重ねて宅建業の免許を求める必要が乏しいためです。信託業法の免許を受けた信託銀行も同じ扱いになります。
ただし、免許を受けなくてよいだけであって、宅建業法の適用そのものから外れるわけではありません。宅建業を営む信託会社は、国土交通大臣の免許を受けた宅建業者とみなされ(77条2項)、宅建業を営もうとするときはその旨を国土交通大臣に届け出なければなりません(77条3項)。したがって、専任の宅建士の設置、重要事項の説明、37条書面の交付、営業保証金の供託といった義務はすべて負い、指示処分や業務停止処分の対象にもなります。免許の規定が適用されない結果として免許の取消処分を受けない、という点だけが違いです。「信託会社には宅建業法が適用されない」と読み替えると誤りになります。
なお、制度上の適用除外とは別に、そもそも業として行うものに当たらないために免許が不要となる場合もあります。破産管財人が裁判所の許可を得て破産財団に属する宅地建物を売却する行為は、裁判所の監督のもとで行われる清算行為であり、反復継続しても業として行うものには当たらないと解されています。
試験での出題ポイント
免許制度は、単独で問われることもあれば、他の論点の前提として問われることもあります。狙われ方は次の型に集約されます。
第一に、免許の要否の判定です。自ら貸借を取引に含める肢、代理や媒介の貸借を取引から外す肢が定番で、宅建業者に代理を依頼したから売主は免許不要という誤りもよく出ます。
第二に、免許権者の判定です。事務所の分布だけで決まるのに、営業エリアや物件の所在地を混ぜてきます。「甲県知事免許の業者は乙県の物件を媒介できない」という肢が、その典型です。
第三に、免許換えと変更の届出の切り分けです。同一県内の移転か、県をまたぐ設置・廃止かを読み取らせます。免許換え後の有効期間が新たに5年である点も、あわせて狙われます。
第四に、更新の数字の向きです。90日前から30日前まで、という区間の始点と終点を入れ替えてきます。審査中に満了した場合の3条4項と、更新後の起算が満了日の翌日である3条5項は、セットで問われると考えてください。
第五に、届出の期間と義務者です。変更の届出が30日以内であること、廃業等の届出も30日以内だが死亡だけ「知った日から」であること、そして五つの事由それぞれの届出義務者と失効時点の組合せです。義務者だけを正しくして失効時点を誤らせる作り方が多いので、両方を言えるようにしてください。
第六に、免許不要の範囲です。国・地方公共団体は適用そのものが除外されるのに対し、信託会社は免許が不要でも大臣免許業者とみなされて義務を負う、という段差を突いてきます。
第七に、宅地建物取引士の登録制度との混同です。免許に有効期間があるのに登録にはないこと、業者の変更の届出が30日以内で宅建士の変更の登録が遅滞なくであること、免許換えが義務で登録の移転が任意であること。この三組の対比は宅建業の免許制度を横断整理で、登録制度そのものの手続きは宅建士の登録と宅建士証で扱っています。
覚え方・整理の仕方
免許の要否は上から順に落とす
免許が必要かを問われたら、いきなり結論を考えずに三段階で落としてください。第一に、対象が宅地または建物か。第二に、その行為が2条2号の列挙に当たるか、すなわち自ら貸借でないか。第三に、業として行うものか。この順で見れば、用途地域外の農地の売買の媒介は第一段階で、サブリースは第二段階で、従業員限定の分譲は第三段階で、それぞれ落ちます。どの段階で落ちたのかを言えるようにしておいてください。
数字は「前から数えるもの」を先に分ける
免許制度の数字は、前から数えるものと後から数えるものに分けると混ざりません。前から数えるのは、更新申請の90日前から30日前までと、案内所等の届出の10日前までの二つだけです。残りはすべて、事由が発生した後から数えます。変更の届出は変更があった日から30日以内、廃業等の届出はその日から30日以内、専任の宅建士の補充は不足が生じてから2週間以内、営業保証金の供託の催告は免許の日から3か月以内です。
失効の時点は「主体が消えたか」で決める
廃業等の届出の五つの事由について、失効の時点を個別に暗記する必要はありません。免許を受けた主体そのものが消えたかどうかだけを見てください。死亡と合併消滅は主体が消えるので、届出を待たずに失効する。破産、解散、廃止は主体がまだ存在するので、届出をもって失効する。この一つの基準で五つすべてが割り切れます。
取消しは「理由を読んでから」5年と結びつける
取消しという言葉を見た瞬間に5年と反応するのは危険です。5年の欠格につながる三つを「不正取得・情状重大・停止違反」と唱えて固定しておき、免許換えの懈怠や1年以上の休業による取消しはここに入らない、と切り分けます。
免許制度を営業保証金まで一続きで見る
免許を受ける、営業保証金を供託する、その旨を届け出る、そこで初めて事業を開始できる(25条5項)。この順序を一本の線で持っておくと、免許制度がどこに接続しているかが見えます。宅建業法の出題範囲の見取り図は宅建業法の全体像をつかむで確認できます。
理解度チェッククイズ
Q1. 自ら所有する複数の建物を、不特定多数の者に反復継続して賃貸する場合、宅建業の免許を受けなければならない。(○か×か)
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×:2条2号が列挙する行為のうち、自ら当事者となるものは売買と交換だけで、自ら貸借は含まれていません。したがって、反復継続して不特定多数に賃貸しても宅建業には当たらず、免許は不要です。他人から借り上げた建物を転貸するサブリースも同じ理由で免許は不要です。ただし、貸借の代理や媒介は取引に含まれるため、他人の物件の賃貸を媒介するには免許が必要です。Q2. 甲県内にのみ事務所を設置している宅建業者が、乙県内に所在する宅地の売買の媒介を業として行おうとする場合、国土交通大臣の免許を受けなければならない。(○か×か)
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×:免許権者は事務所をどこに設置しているかだけで決まります(3条1項)。事務所が甲県内にのみあるのなら甲県知事免許であり、乙県内の物件を媒介しても免許の種類は変わりません。大臣免許が必要になるのは、2以上の都道府県の区域内に事務所を設置する場合です。営業活動の範囲や物件の所在地は、免許権者の決定に影響しません。Q3. 免許の更新の申請を有効期間満了の日の40日前に行ったが、満了の日までに処分がされなかった場合、その業者は満了の日の翌日から宅建業を営むことができない。(○か×か)
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×:更新の申請期間は有効期間満了の日の90日前から30日前までであり(3条3項、施行規則3条)、40日前の申請は期間内です。期間内に申請があり満了の日までに処分がされないときは、従前の免許は処分がされるまでの間なお効力を有します(3条4項)。したがって適法に営業を続けられます。なお更新されたときの新免許の有効期間は、処分の日からではなく満了の日の翌日から起算します(3条5項)。Q4. 甲県知事の免許を受けている宅建業者が乙県内に新たに事務所を設置し、甲県と乙県の双方に事務所を有することとなった場合、甲県知事を経由して国土交通大臣に免許換えの申請をし、新たに受けた免許の有効期間は従前の免許の残存期間となる。(○か×か)
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×:申請の経路は正しく、大臣免許の申請は主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事を経由します(78条の3第1項)。誤りは有効期間で、免許換えによって受ける免許は新規の免許なので、有効期間は新たな免許の日から5年です(3条2項)。従前の残存期間を引き継ぐのは宅建士の登録の移転による宅建士証のほうで、免許換えと逆になります。Q5. 宅建業者である法人が破産手続開始の決定を受けた場合、その日から30日以内に代表役員が届け出なければならず、免許は破産手続開始の決定があった時に効力を失う。(○か×か)
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×:二重に誤りです。届出義務者は代表役員ではなく破産管財人です(11条1項3号)。また、届出を待たずに当然に失効するのは死亡と合併による消滅の二つだけで、破産、解散、廃止の三つは届出の時に失効します(11条2項)。届出義務者と失効時点を入れ替えて出題する定番の型なので、五つの事由について両方を言えるようにしておいてください。まとめ
免許制度は、免許の要否の判定(2条1号・2号)から始まり、免許権者の決定(3条1項)、欠格事由の審査(5条1項)、免許証の交付(6条)、有効期間と更新(3条2項から5項)、事務所の分布の変更に伴う免許換え(7条1項)、名簿への登載と変更の届出(8条、9条)、そして廃業等の届出と失効(11条)へと続く、一本の流れとして条文が並んでいます。数字を単独で覚えるのではなく、この流れのどこで登場する数字なのかとセットで押さえてください。
とくに落としてはならないのは、自ら貸借が取引に含まれないこと、免許権者は事務所の所在地だけで決まること、更新の申請が90日前から30日前までであること、免許換え後の有効期間が新たに5年であること、廃業等の届出で死亡と合併消滅だけが届出を待たずに失効することの五つです。理由まで言葉にできれば、細部を忘れても復元できます。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、免許制度に関する肢を年度をまたいで連続して演習できるので、この記事で整理した条文の流れが本試験ではどの角度から切り出されるかを確かめてみてください。
宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。