国土利用計画法の事前届出|注視区域と監視区域
注視区域と監視区域の指定要件、27条の4の事前届出、6週間の契約締結制限、27条の5と27条の8の勧告、47条2号と48条の罰則、遊休土地制度までを条文で解説します。
目次
この記事は、国土利用計画法のうち事前届出制の内側だけを条文で割っていくものです。土地売買等の契約の定義、事後届出の全体像、規制区域の許可制という3層の骨格は国土利用計画法の全体像が担当しているので、そちらを先に読んでから戻ってくると位置関係がつかみやすくなります。法令上の制限という分野のなかで国土利用計画法にどれだけ時間を割くかという配分の話は法令上の制限の頻出論点に譲ります。
先に結論を述べます。事前届出は「事後届出を前倒ししただけの制度」ではありません。条文の作りからして、事後届出ではなく許可制の側に寄せて設計されています。届出事項は事後届出の23条1項各号ではなく、規制区域の許可申請書を定めた15条1項各号を借りています。勧告の内容も、事後届出の「利用目的を変えろ」(24条1項)ではなく「契約の締結をやめろ」(27条の5第1項)です。この二つを押さえると、6週間の意味も、注視区域と監視区域の差も、罰条が二本に分かれている理由も、すべて同じ設計思想から導けます。
なお、国土利用計画法の基準日版は 349AC1000000092_20250601_504AC0000000068(令和4年法律第68号による改正、2025年6月1日施行)、同施行令は 349CO0000000387_20200907_502CO0000000268 です。いずれも令和8年度試験の基準日である2026年4月1日以前に施行されており、以下の条文はこの版によります。
注視区域と監視区域はどう指定されるか
注視区域の指定要件には「国土交通大臣が定める基準」が入る
27条の3第1項は、都道府県知事が注視区域を指定できる区域を、次のように定めています。当該都道府県の区域のうち、地価が一定の期間内に社会的経済的事情の変動に照らして相当な程度を超えて上昇し、又は上昇するおそれがあるものとして国土交通大臣が定める基準に該当し、これによつて適正かつ合理的な土地利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる区域です。
ここで見落とされやすいのが、「国土交通大臣が定める基準に該当し」という部分です。要約すると「地価が相当な程度を超えて上昇し、またはそのおそれがある区域」で止めたくなるところですが、条文は地価上昇の程度を知事の主観に委ねていません。何をもって「相当な程度を超えて上昇」といえるのかは国土交通大臣が基準として示し、知事はその基準に当てはまるかを判定する、という構造です。さらに、地価が上がっているというだけでは足りず、それによって適正かつ合理的な土地利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められることまで要求されています。地価の動きと土地利用への影響が、二つの要件として重ねられているわけです。
監視区域の指定要件は「急激な上昇」と「確保が困難」
これに対して27条の6第1項の監視区域は、地価が急激に上昇し、又は上昇するおそれがあり、これによつて適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると認められる区域です。
注視区域と読み比べると、二か所で言葉が強くなっています。第一に、地価の動きが「相当な程度を超えて上昇」から「急激に上昇」へ。第二に、土地利用への影響が「確保に支障を生ずるおそれ」から「確保が困難となるおそれ」へ。そして注視区域にあった「国土交通大臣が定める基準に該当し」という媒介項が、監視区域にはありません。地価の動きがより深刻な段階に入っている以上、大臣の基準を待たずに知事が動けるようにしてある、と読むのが素直です。
参考までに、さらに上の層である規制区域は12条1項が定めており、土地の投機的取引が相当範囲にわたり集中して行われ、又は行われるおそれがあり、及び地価が急激に上昇し、又は上昇するおそれがあると認められる都市計画区域の全部または一部(1号)、および都市計画区域以外の区域で同じ事態が生じ、その事態を緊急に除去しなければ適正かつ合理的な土地利用の確保が著しく困難となると認められる区域(2号)です。12条1項1号が都市計画法4条2項の都市計画区域を引いている点は、都市計画法の全体像で確認できます。ここで初めて「投機的取引」という語が出てくること、そして「及び」で地価上昇と併記されていることに注意してください。投機的取引という要素は、注視区域にも監視区域にも指定要件としては登場しません(監視区域では後述するとおり勧告の事由として登場します)。
規制区域だけが「指定するものとする」
指定の条文には、もう一つ決定的な差があります。文末です。
12条1項は「規制区域として指定するものとする」。27条の3第1項は「注視区域として指定することができる」。27条の6第1項も「監視区域として指定することができる」。
規制区域は、要件に当たれば指定しなければならない羈束的な作りになっており、注視区域と監視区域は指定するかどうかが知事の裁量に委ねられています。要件が厳しいほど効果が強く、かつ発動が義務づけられる、という並びです。この差は、指定期間の更新の場面にも現れます。12条11項は、指定期間が満了する場合において、調査の結果として指定の事由がなくなっていないと認めるときは規制区域の指定を「行うものとする」と定めていますが、注視区域と監視区域では27条の3第3項・27条の6第3項の読替えによって、この部分が「行うことができる」に変わります。準用のときに文末だけを書き換えているのは、羈束と裁量の差を維持するためです。
意見を先に聴くのか、あとから確認を受けるのか
手続の向きも逆です。
注視区域と監視区域については、27条の3第2項と27条の6第2項が、指定しようとする場合にはあらかじめ、土地利用審査会及び関係市町村長の意見を聴かなければならないと定めています。指定の前に意見を聴く、事前手続型です。
一方、規制区域は12条6項が、指定の公告をしたときはその公告の日から起算して2週間以内に、関係市町村長の意見を付して指定が相当であることについて土地利用審査会の確認を求めなければならないとし、7項が、審査会は確認を求められたときは2週間以内に相当かどうかの決定をして知事に通知しなければならないと定めています。しかも確認を受けられなかったときは、8項の公告により、9項によって指定の時にさかのぼって効力を失うという強い効果まで用意されています。指定を先に打ってから審査会の確認を取る、事後確認型です。
規制区域が事後確認型なのは、投機的取引が集中している区域では指定の情報が事前に漏れること自体が駆け込み取引を誘発するからで、まず効力を発生させてから正当性を検証する、という順序になっています。指定手続を問う選択肢は、この向きを入れ替えて作られます。「注視区域を指定したときは、2週間以内に土地利用審査会の確認を求めなければならない」という文は、条文の主語ごと規制区域から借りてきた誤りです。なお、27条の3第3項・27条の6第3項が準用しているのは12条2項から5項までと10項から12項までであり、6項から9項(事後確認と失効)は準用の対象に入っていません。準用範囲の切り方そのものが、この差を条文上で確定させています。
5年以内・公告・調査・解除は12条の準用でできている
注視区域と監視区域の指定について、期間や効力発生の規定は27条の3・27条の6には直接書かれていません。すべて12条の準用です。準用される内容は次のとおりです。
指定の期間は公告があった日から起算して5年以内で定める(12条2項)。知事は指定する場合にはその旨と区域および期間を公告しなければならない(3項)。指定は公告によって効力を生ずる(4項)。公告をしたときは速やかに国土交通大臣へ報告し、関係市町村長へ通知し、周知させるため必要な措置を講ずる(5項)。指定した場合には、周辺地域の地価の動向や土地取引の状況等を常時把握するための調査を行わなければならない(10項)。期間満了時に事由がなくなっていないと認めるときは再度の指定ができる(11項の読替後)。調査の結果、指定の事由がなくなったと認めるときは、その旨を公告して指定を解除するものとする(12項)。
5年という数字だけを覚えて条文の位置を知らないと、「注視区域の指定は27条の3に5年と書いてある」と思い込むことになります。実際には27条の3第3項が12条2項を準用しているという二段構えで、しかも起算点は「公告があつた日」です。この記事に出てくる期間はすべて起算点と主語がセットになっているので、数字だけを抜き出さないでください。数字を法令横断で並べ直したい場合は法令上の制限の暗記法が担当しています。
強い区域が弱い区域を飲み込む
三つの区域は、重ねて指定できるものではありません。条文はカッコ書きでこれを処理しています。
27条の3第1項のカッコ書きは、注視区域として指定できる区域から「規制区域として指定された区域又は監視区域として指定された区域を除く」としています。27条の6第1項のカッコ書きは、監視区域として指定できる区域から「規制区域として指定された区域を除く」としています。規制区域の12条1項には、こうした除外のカッコ書きがありません。
つまり排他の向きは一方通行で、規制区域が最も強く、次に監視区域、最後に注視区域という序列が、除外のカッコ書きの入れ子だけで表現されています。
さらに、後から強い区域が指定された場合の処理が27条の3第6項です。注視区域の全部または一部が規制区域または監視区域として指定された場合には、当該注視区域の指定が解除され、または当該一部の区域について区域の減少があったものとするとされ、この場合には規制区域や監視区域の指定公告をもって注視区域の解除等の公告があったものとみなされます。解除のための別の手続を踏む必要はありません。同じ規定が監視区域についても27条の6第6項に置かれており、こちらは規制区域として指定された場合だけが対象です。
区域を指定してその内側だけ規制を強めるという法技術は、法令上の制限のほかの分野にも出てきます。盛土規制法26条1項は、特定盛土等規制区域を指定できる範囲を「宅地造成等工事規制区域以外の土地の区域」と書いており、除外を使って重複指定を防ぐという発想は国土利用計画法と同じです。二つの規制区域の中身は盛土規制法の全体像で扱っています。違うのは除外の置き場所と段数で、盛土規制法は指定条文の冒頭に一方向の除外を一つ置くだけなのに対し、国土利用計画法は三つの区域を二段の入れ子で序列づけています。制度ごとに書き方が違うので、条文で確認する癖をつけてください。ここで初めて出てきた土地利用審査会は、39条1項により都道府県に置かれる合議制の機関で、委員は5人以上(同条3項)、知事が都道府県の議会の同意を得て任命します(同条4項)。用語としての整理は不動産用語辞典にもあります。
事前届出の条文は許可申請の条文を借りている
27条の4第1項が引くのは15条1項各号
事前届出の中身を定めているのは27条の4第1項です。条文はこう書かれています。注視区域に所在する土地について土地売買等の契約を締結しようとする場合には、当事者は、第十五条第一項各号に掲げる事項を、国土交通省令で定めるところにより、当該土地が所在する市町村の長を経由して、あらかじめ、都道府県知事に届け出なければならない。
ここが本記事で最初に押さえてほしい箇所です。届出事項として引用されているのは15条1項各号であって、事後届出の23条1項各号ではありません。そして15条は「許可申請の手続」という見出しの条文、すなわち規制区域における14条1項の許可を受けようとする者が提出する申請書の記載事項です。
15条1項各号は6号構成で、次のとおりです。1号、当事者の氏名または名称および住所ならびに法人にあってはその代表者の氏名。2号、土地に関する権利の移転または設定に係る土地の所在および面積。3号、移転または設定に係る土地に関する権利の種別および内容。4号、土地に関する権利の移転または設定の予定対価の額。5号、土地に関する権利の移転または設定後における土地の利用目的。6号、前各号に掲げるもののほか国土交通省令で定める事項。
事後届出の23条1項各号とどこが違うか
比較のために23条1項各号を並べると、こちらは7号構成です。1号が当事者の氏名等、2号が土地売買等の契約を締結した年月日、3号が土地の所在および面積、4号が権利の種別および内容、5号が利用目的、6号が対価の額、7号が省令事項。
差は二つあります。第一に、事後届出には「契約を締結した年月日」という号があります。事後届出は契約締結日から起算して2週間以内という期間管理の制度なので、起算点そのものを届け出させる必要があるからです。事前届出は契約前の届出なので、締結年月日という概念が存在せず、この号がありません。
第二に、対価の書き方です。事後届出の6号は「対価の額」、許可申請と事前届出は「予定対価の額」。契約が済んでいるかどうかの差がそのまま文言に出ています。
つまり事前届出は、契約締結年月日を落とし、対価を予定対価に置き換えた許可申請書を提出する制度です。事後届出とは、対価の扱いが偶然似ているのではなく、そもそも借りてきた条文が違います。この借用関係を知っていると、後で出てくる勧告事由に価額が入ってくることも、既定路線として理解できます。
予定対価という語が意味するもの
「予定対価の額」の定義は14条1項の後段カッコ書きにあり、予定対価が金銭以外のものであるときは、これを時価を基準として金銭に見積つた額とされています。交換のように金銭以外のものが対価になる契約でも、金銭に見積もった額を届け出ることになります。
なお、事前届出であっても対象となる契約は14条1項が定義する「土地売買等の契約」で、事後届出と共通です。対価を得て行われる移転または設定に限られること、予約を含むこと、地上権その他政令で定める使用収益を目的とする権利が含まれることといった定義の中身は国土利用計画法の全体像が扱っているので、そちらを参照してください。定義が共通で、手続と効果だけが層ごとに違うという構造です。
誰がいつ何を届け出るか
主語は「当事者」
27条の4第1項の主語は「当事者」です。事後届出の23条1項が「当該土地売買等の契約により土地に関する権利の移転又は設定を受けることとなる者(権利取得者)」を主語にしているのと違い、事前届出では売主と買主の双方に届出義務があります。
理由は制度の目的から導けます。事後届出は、権利を取得した者がその土地をどう使うつもりかを行政が把握し、必要なら利用目的の変更を求める制度なので、届け出るべき者は取得者だけで足ります。事前届出は、これから結ばれようとしている契約そのものを止められる制度なので、契約の両側の意思を確認する必要があります。誰を規制の名宛人にするかが、届出義務者の範囲を決めています。
条文が「当事者」と書いている以上、売主と買主のどちらか一方が届け出れば足りるという読み方はできません。買主だけが届け出れば足りるとする選択肢は、この主語の違いを突いた誤りです。届出書の様式や提出の方法は国土交通省令に委ねられていますが(27条の4第1項の「国土交通省令で定めるところにより」)、義務の主体が双方であることは法律の条文で決まっています。
市町村長を経由して、あらかじめ
届出先は都道府県知事で、当該土地が所在する市町村の長を経由します。この経由の仕組みは事後届出(23条1項)でも許可申請(15条1項)でも同じです。
経由を受けた市町村長が何をするかは、27条の4第4項が準用する15条2項に書かれています。市町村長は届出書を受理したときは遅滞なくこれを都道府県知事に送付しなければならず、この場合において当該申請書の内容について意見があるときは、その意見を付さなければならないとされています。「意見を付すことができる」ではなく、意見があるときは付すことが義務です。細かい違いですが、条文の文末が「ものとする」「することができる」「しなければならない」のどれなのかを読む訓練として意識してください。
そして「あらかじめ」。事後届出が「その契約を締結した日から起算して2週間以内」と期間で縛るのに対し、事前届出は契約締結より前であることだけを要求します。何日前までという定めはありません。ただし27条の4第3項の契約締結制限が別にかかるので、契約予定日の6週間以上前に届け出ておくのが原則になります。それより早く契約できるのは、後述するただし書に当たる場合、つまり勧告または勧告をしない旨の通知を受けたときだけです。「あらかじめ」という届出時期の定めと、6週間という契約締結制限は別の規定であるという点を分けて持ってください。
変更の届出——減額だけが外れる理由
27条の4第1項には後段があります。その届出に係る事項のうち、土地に関する権利の移転若しくは設定の予定対価の額の変更(その額を減額する場合を除く。)をして、又は土地に関する権利の移転若しくは設定後における土地の利用目的の変更をして、当該契約を締結しようとするときも、同様とする。
つまり届出後に条件を変えて契約しようとするときは、改めて届出が必要です。ただし対象になる変更は二つに限られます。予定対価の額の変更と、利用目的の変更です。そして予定対価については、減額する場合が明文で除かれています。
除外の理由は、この制度が何を防ごうとしているかを考えれば導けます。事前届出は地価の高騰を抑えるための制度で、勧告の事由も予定対価が相当な価額に照らして著しく適正を欠くことです。値段を下げる方向の変更は、制度が防ごうとしている事態から遠ざかる変更なので、改めて審査する必要がありません。規制の目的が、除外の範囲を決めています。
この「減額を除く」という書き方は、14条1項後段の許可の場合とまったく同じです。ここでも事前届出は許可制の条文をなぞっています。
なお、当事者が代わる、土地の面積が変わる、権利の種別が変わるといった変更は、後段の対象ではありません。後段が名指ししているのは予定対価の額と利用目的の二つだけです。もっともその場合でも規制が抜けるわけではなく、締結しようとしている契約が届出済みの契約と別物になる以上、27条の4第1項前段の「土地売買等の契約を締結しようとする場合」に当たり、本文の届出義務が改めてかかります。後段は、当事者も土地も権利も同じまま条件だけを動かす場面を捕まえるための規定である、と位置づけると混乱しません。
適用除外は2号にまとまっている
27条の4第2項は、1項を適用しない場合を2号に分けて定めています。1号が面積による除外(次章で扱います)、2号が「民事調停法による調停に基づく場合、当事者の一方又は双方が国等である場合その他政令で定める場合」です。
事後届出の除外規定である23条2項と見比べると、23条2項は3号構成で、1号が面積、2号が規制区域・注視区域・監視区域に所在する土地の場合、3号が民事調停・国等・政令事項です。2号がずれているのは、事後届出には「もっと強い規制が適用される区域は事後届出の出番がない」という調整が必要だからです。事前届出には、注視区域より強い規制区域が指定されればそもそも注視区域の指定が解除される(27条の3第6項)ので、同種の調整規定を置く必要がありません。条文の号数の違いには理由があります。
政令で定める場合は、事前届出については施行令17条の2に置かれています。裁判所の許可を得て行われる倒産手続上の処分、公有水面埋立法27条1項の許可を要する場合、家事事件手続法による調停、土地収用法によるあっせんや和解、農地法3条1項の許可を受けることを要する場合などが、施行令6条の引用を通じて取り込まれています。農地法3条の許可が必要な取引が国土利用計画法の届出から外れる理由は、別の法律による審査が既にかかっているからです。農地法側の許可権者と対象行為は農地法の3条・4条・5条で整理しています。
事前届出にしかない適用除外
施行令17条の2には、事後届出にはない独自の除外が置かれています。ここは事前届出の性格をよく表しているので、条文の存在だけでも押さえておく価値があります。
一つは、住宅施設や医療施設等の用に供するために造成された宅地である一団の土地について、住宅施設に係る500平方メートル以下の区画などに区分し、区画ごとに予定対価の額が27条の5第1項1号(価額が著しく適正を欠くこと)に該当しない旨の都道府県知事の確認を受けて権利移転を行う場合です(施行令17条の2第1項3号)。条文が要求しているのは、区画ごとに知事の確認を先に取っておくことです。確認の対象は27条の5第1項1号、つまり価額が著しく適正を欠くかどうかだけに絞られており、確認が済んでいる以上、区画ごとに届出を出させて改めて価額を審査する意味がなくなる。個別の届出の代わりに、まとめた事前確認を置いたという構成です。しかも知事が期間を定めて確認した場合には、その期間内に行う移転または設定に限る、というカッコ書きまで付いています。
もう一つは、区分所有建物の敷地に係る権利の移転を区分所有権の移転と併せて行う場合(同4号)、不動産特定共同事業契約に基づく権利移転(同5号)で、いずれも知事の確認を前提としています。
この確認の申請があったときは、知事は申請があった日から起算して6週間以内に、確認をする場合はその旨を、しない場合は理由を付してその旨を通知しなければならず(施行令17条の2第2項)、記載によっては期間内に判断が困難なときは3週間の範囲内で延長できます(同3項)。国土利用計画法の周辺には、6週間と3週間という同じ数字が何度も別の意味で登場します。
6週間は待つ期間ではなく、上限である
27条の4第3項の不作為義務
27条の4第3項はこう定めます。第一項の規定による届出をした者は、その届出をした日から起算して六週間を経過する日までの間、その届出に係る土地売買等の契約を締結してはならない。
主語は届出をした者、内容は「契約を締結してはならない」という不作為義務です。行政が何かをする期限ではありません。ここを取り違えると、後に出てくる勧告期限の6週間と混ざります。
起算点は「その届出をした日」です。知事が受理した日でも、勧告の要否を判断した日でもなく、届出という当事者側の行為の日から数えます。そして問われるのは、6週間を「経過する日まで」であって「経過する日から」ではないという点です。「経過する日」までは締結できないので、締結できるのはその翌日以降になります。同じ「6週間」でも、27条の5第2項の勧告期限は「6週間以内にしなければならない」と書かれており、期間の切り方の語が違います。期間の計算と起算日の扱いは条件と期限、期間計算で整理しています。
ただし書で解ける二つの場合
同項にはただし書があります。ただし、次条第一項の規定による勧告又は同条第三項の規定による通知を受けた場合は、この限りでない。
解ける場合は二つです。第一に、27条の5第1項の勧告を受けたとき。第二に、27条の5第3項の勧告をする必要がないと認めた旨の通知を受けたときです。
勧告を受けた場合にも制限が解けるというのは、直感に反するかもしれません。しかし勧告は行政指導であって契約を禁止する処分ではないので、勧告を受けた当事者が従わずに契約を締結すること自体は可能です。その場合の制裁は、後述する26条準用の公表だけです。6週間の待機義務は「知事の判断が出るまで待て」という趣旨なので、判断が出た時点で、内容が勧告であれ不勧告の通知であれ、待つ理由がなくなるわけです。
したがって「事前届出をした者は、いかなる場合も届出をした日から6週間を経過するまで契約を締結できない」という記述は誤りです。6週間は上限であって、必ず待たされる期間ではありません。この形の断定的な限定語がどう仕込まれるかは引っかけ表現のパターンでも扱います。
知事側の期限も6週間
27条の5第2項は、前条第一項の規定による届出があつた日から起算して六週間以内に勧告をしなければならないと定めています。届出者の待機期間と、知事の勧告期限が、同じ6週間で一致しています。
これは偶然ではなく設計です。知事が6週間以内に勧告するか、勧告の必要がないと認めて3項の通知をするかのいずれかを行うので、6週間が満了する時点では必ず結論が出ています。逆にいえば、6週間が過ぎても何の連絡もなければ、届出者は制限から解放されて契約を締結できます。待機期間と処理期限を同じ長さにすることで、待たせっぱなしになる状態を条文上作らないようにしているわけです。
事後届出には、これに相当する構造がありません。事後届出はそもそも契約後の届出なので、契約締結を制限する規定自体が存在せず、24条2項の3週間という勧告期限だけが置かれています。
この法律に出てくる6週間は五つある
国土利用計画法の6週間は一つではありません。主語と対象を書き分けると次のようになります。
第一に、届出者の不作為義務としての6週間(27条の4第3項)。事前届出をした者が契約を締結してはならない期間です。
第二に、知事の勧告期限としての6週間(27条の5第2項、監視区域は27条の8第2項による準用)。事前届出があった日から起算します。
第三に、知事の処分期限としての6週間(17条1項)。規制区域における14条1項の許可申請があった日から起算して6週間以内に許可または不許可の処分をしなければならず、しかも同条2項により、期間内に処分がされなかったときは期間の満了の日の翌日において許可があったものとみなされます。同じ6週間でも、こちらには「みなし許可」という効果がついています。
第四に、遊休土地の計画届出の期限としての6週間(29条1項)。遊休土地である旨の通知を受けた者が、利用または処分に関する計画を届け出るまでの期間です。
第五に、遊休土地の買取り協議の期間としての6週間(32条2項)。買取りの協議を行う旨の通知があった日から起算します。
そして、これらとは別に、事後届出の勧告期限は3週間(24条2項)で、3週間の範囲内で延長できる(同3項)ため最長6週間になります。この「最長6週間」は上の五つのどれとも違う数字の作られ方をしています。「国土利用計画法の6週間」とだけ覚えていると、この六つが一つに融けます。必ず「誰の、何の期間か」を付けて持ってください。
勧告は何を命じるのか
27条の5第1項の勧告内容
事前届出制の核心はここです。27条の5第1項は、知事は届出に係る事項が各号のいずれかに該当し、当該土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があると認めるときは、土地利用審査会の意見を聴いて、その届出をした者に対し、当該土地売買等の契約の締結を中止すべきことその他その届出に係る事項について必要な措置を講ずべきことを勧告することができると定めています。
一方、事後届出の勧告を定める24条1項は、届出に係る土地の利用目的について必要な変更をすべきことを勧告できるとしています。
命じられる中身がまったく違います。事後届出の勧告は、既に成立した契約はそのままに、これからの土地の使い方だけを変えさせるものです。事前届出の勧告は、契約そのものを結ぶなと言えます。契約前だからこそ言える内容であり、規制区域の許可制が「許可がなければ契約の効力が生じない」(14条3項)としているのと、方向としては同じ側を向いています。
予定対価は「事由」であって「内容」ではない
ここで、事前届出の勧告について「利用目的だけでなく予定対価の額も勧告の対象になる」という説明のされ方をよく見かけます。結論として間違いではないのですが、条文の構造に即していうと「対象」ではなく「事由」です。
27条の5第1項1号は、届出に係る土地に関する権利の移転又は設定の予定対価の額が、相当な価額に照らし、著しく適正を欠くことを、勧告できる場合の一つとして挙げています。これは勧告の引き金であって、勧告の内容ではありません。勧告の内容は柱書に一本化されていて、価額が高すぎるという事由があるときも、知事が言えるのは「その契約を締結するのをやめなさい、その他必要な措置を講じなさい」であって、「価格を○円に下げなさい」ではありません。
この違いは実際の出題で効いてきます。「注視区域における勧告は、届出に係る土地の利用目的について必要な変更をすべきことを内容とする」という文は、24条1項の内容を27条の5第1項に持ち込んだ誤りです。逆に「予定対価の額が著しく適正を欠くときは、知事は予定対価の額を変更すべきことを勧告できる」という文も、事由と内容を取り違えた誤りになります。事由は3種類、内容は1種類。この非対称が事前届出の勧告の形です。
なお、事後届出の勧告事由(24条1項)には価額の要素が一切ありません。事後届出では対価の額が届出事項になっている(23条1項6号)のに、勧告の事由には使われない。届け出させるのは地価動向の把握のためであって、個別の取引価格を是正するためではないからです。
1号の相当な価額はどう算定するか
27条の5第1項1号は、比較の基準となる価額を二段で定めています。
原則は、近傍類地の取引価格等を考慮して政令で定めるところにより算定した土地に関する権利の相当な価額です。近傍類地の取引価格から価格を導くという考え方そのものは不動産鑑定評価の取引事例比較法に連なるもので、背景は不動産の鑑定評価で扱っています。
例外というより特則にあたるのが、カッコ書きです。その届出に係る土地が地価公示法2条1項に規定する公示区域に所在し、かつ同法6条の規定による公示価格を取引の指標とすべきものである場合において、届出に係る権利が所有権であるときは、政令で定めるところにより公示価格を規準として算定した所有権の価額が基準になります。「規準とする」という語は地価公示法11条が、対象土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる一または二以上の標準地との位置・地積・環境等の比較を行い、その結果に基づき当該標準地の公示価格と対象土地の価格との間に均衡を保たせることと定義しており、国土利用計画法の政令もこれと同じ考え方で算定方法を組み立てています。公示区域と公示価格の意味は地価公示法で、公示価格と基準地価格・相続税評価額・固定資産税評価額の関係は土地の4つの公的価格で確認できます。
算定方法は施行令18条が、規制区域の許可基準について定めた施行令7条・8条を読み替えて準用する形で定めています。許可制の価額算定をそのまま届出に流用しているわけで、ここでも事前届出は許可制の条文を借りています。
ただし、借りていながら要件の強さは変えてあります。許可基準である16条1項1号は予定対価が相当な価額に照らし「適正を欠くこと」を不許可事由としているのに対し、27条の5第1項1号は「著しく適正を欠くこと」を勧告事由としています。許可はしないという処分と、勧告という行政指導。効果が弱いほうが要件も緩い、という関係ではなく、効果が弱いほうが要件は厳しいという関係になっている点に注意してください。契約前の段階で行政が介入する場面を絞る趣旨です。
2号と3号
27条の5第1項2号は、届出に係る利用目的が土地利用基本計画その他の土地利用に関する計画に適合しないことです。土地利用基本計画は9条が都道府県に作成を義務づけている計画で、都市地域・農業地域・森林地域・自然公園地域・自然保全地域の5地域の区分などを定めます。
3号は、利用目的が、道路、水道その他の公共施設若しくは学校その他の公益的施設の整備の予定からみて、又は周辺の自然環境の保全上、明らかに不適当なものであることです。
事後届出の24条1項と読み比べると、24条1項は計画への不適合と「当該土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があること」を一文で書いており、しかも土地利用に関する計画について「国土交通省令で定めるところにより、公表されているものに限る」というカッコ書きを置いています。27条の5第1項2号にこのカッコ書きはありません。細部ですが、条文を並べて読むと、事前届出の勧告事由のほうが広く構えてあることが分かります。
届出に対して行政が勧告するという同じ形の制度は、法令上の制限のなかにいくつもあります。都市計画法58条の2の地区計画の区域内における行為の届出は、行為に着手する日の30日前までに市町村長へ届け出るもので、市町村長が言えるのは同条3項の「設計の変更その他の必要な措置をとることを勧告する」までです。届出先も勧告の内容も国土利用計画法とは違います。詳しくは地区計画を参照してください。届出+勧告という形が同じでも、誰に出すか・何を命じられるかは制度ごとに違うという点が、横断で問われるところです。
土地利用審査会という主体
勧告には、区域指定と同じく土地利用審査会の意見を聴く手続が前置されています(27条の5第1項、27条の8第1項、そして事後届出の24条1項も同じ)。
39条9項は、土地利用審査会が12条6項(規制区域の確認)、24条1項(事後届出の勧告)、27条の3第2項(注視区域の指定)、27条の5第1項(注視区域の勧告)、27条の6第2項(監視区域の指定)、27条の8第1項(監視区域の勧告)、31条1項(遊休土地の勧告)などに係る事務を処理するときは、関係市町村長の出席を求め、その意見を聴かなければならないと定めています。区域指定でも勧告でも、審査会を通すたびに市町村の意見が入る構造です。
事前届出には、事後届出にある助言の規定がありません。27条の2は「第二十三条第一項の規定による届出があつた場合において」と明記しており、事後届出限定です。契約を止められる制度に、それより弱い助言を重ねて置く必要がないからです。ただし遊休土地については30条に助言の規定があるので、「国土利用計画法に助言は事後届出だけ」と覚えると、こちらで足をすくわれます。
勧告に従わないときは公表、そのあとにあっせん
27条の5第4項は、25条から27条までの規定を事前届出の勧告について準用しています。三つの条文がまとめて入ってきます。
25条は、勧告をした場合において必要があると認めるときは、勧告を受けた者に対しその勧告に基づいて講じた措置について報告をさせることができるという規定です。この報告をせず、または虚偽の報告をした者には49条1号により30万円以下の罰金が科されます。勧告自体には罰則がないのに、報告義務違反には罰則がある、というねじれた構造です。
26条は、勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その旨及びその勧告の内容を公表することができるという規定です。従わないことに対する制裁は、この公表だけです。契約を締結してしまっても契約は有効で、罰則もありません。
27条は、読替えが入ります。本来の27条は、24条1項の勧告に基づき当該土地の利用目的が変更された場合において必要があると認めるときは、当該土地に関する権利の処分についてのあっせんその他の措置を講ずるよう努めなければならないという規定ですが、27条の5第4項の読替えにより、この部分が「当該土地売買等の契約の締結が中止された場合」に変わります。
つまり、勧告に従って契約をやめた当事者に対しては、知事が別の買い手を探すなどのあっせんをする努力義務を負います。契約を中止させて終わりにしないという制度の後始末が条文に書き込まれているわけで、これは事前届出の勧告が単なる禁止ではなく調整であることを示しています。努力義務なので「講じなければならない」ではない点も、条文の文末として押さえてください。
監視区域だけにある勧告事由
27条の8第1項の二段構え
監視区域における勧告は、27条の5ではなく27条の8が定めています。届出の規定(27条の7第1項)が27条の4を準用しているのに対し、勧告は独立した条文が立てられているのは、注視区域にはない事由が上乗せされているからです。
27条の8第1項1号は、届出に係る事項が27条の5第1項各号のいずれかに該当し、当該土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があることです。つまり注視区域の勧告事由がそっくりそのまま入ってきます。ここまでは同じです。
2号が、監視区域にしかない上乗せです。
2号イからヘは累積要件
27条の8第1項2号は、届出が土地に関する権利の移転をする契約の締結についてされたものである場合において、その届出に係る事項が次のイからヘまでのいずれにも該当し、当該土地を含む周辺の地域の適正な地価の形成を図る上で著しい支障を及ぼすおそれがあること、を勧告事由とします。
イからヘは次のとおりです。
イ、権利を移転しようとする者(売主)が、当該権利を土地売買等の契約により取得したものであること。対価を伴う契約で取得したことが前提なので、相続や時効取得で手に入れた土地は外れます。さらにイ自体のカッコ書きが、その土地売買等の契約が民事調停に基づくものである場合と、権利が国等から取得されたものである場合を除いており、そこに続く「その他政令で定める場合」を施行令18条の3が受けています。同条は、施行令6条2号から8号まで・10号・11号、17条2号から6号まで、17条の2第1項6号に当たる取得と、売買の媒介契約に付された一定の特約に基づく取得を挙げています。
ロ、その者により権利が取得された後、2年を超えない範囲内において政令で定める期間内に届出がされたものであること。ここでいう政令の期間は、施行令18条の4により1年と定められています。法律が上限として2年を示し、政令が実際の期間を1年で切っている、という二段構造です。
ハ、その者が権利を取得した後、届出に係る土地を自らの居住又は事業のための用その他の自ら利用するための用途に供していないこと。一時的な利用や、周辺と比べて利用の程度が著しく劣る利用は「自ら利用するための用途」から除かれます(施行令18条の5)。
ニ、その者が、事業として区画形質の変更等を行った者でも、債権の担保その他の通常の経済活動として権利を取得した者でも、いずれでもないこと。通常の経済活動とは、施行令18条の6により債権の担保または代物弁済を指します。
ホ、権利の移転が、通常の経済活動として行われるものでも、土地を買い取られた者への代替地の提供でも、災害その他やむを得ない理由による特別の事情に基づくものでも、いずれでもないこと。
ヘ、権利の移転を受けようとする者(買主)が、自ら利用するための用途に供しようとする者でも、事業として区画形質の変更等を行った後に権利を移転しようとする者でも、自ら利用する者に確実に移転すると認められる者でも、区画形質の変更等を事業として行おうとする者に確実に移転すると認められる者でも、いずれでもないこと。
条文が「いずれにも該当し」としている以上、これらは累積要件です。一つでも外れれば2号では勧告できません。たとえば買主が自分で住むために買うのであればヘで外れ、売主が相続で取得した土地ならイで外れ、取得から1年を超えていればロで外れます。
この規定が狙い撃つもの
イからヘを並べ直すと、輪郭がはっきりします。対価を払って取得した土地を、1年以内に、自分では何にも使わないまま、開発事業者でも担保取得でもない者が、自分で使うつもりのない者に売る。これは投機的な短期転売そのものです。27条の8第1項2号は、この型の取引を「適正な地価の形成を図る上で著しい支障を及ぼすおそれ」として勧告の対象にしています。
注意すべきは、勧告事由の性質が1号と2号で違う点です。1号は「適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障」、2号は「適正な地価の形成を図る上で著しい支障を及ぼすおそれ」。監視区域の2号だけが、土地利用ではなく地価そのものを守るために置かれています。監視区域の指定要件が「地価が急激に上昇し」であることと、正確に対応しています。土地の取得に投資として関わる場面で国土利用計画法がどう作動するかは不動産投資で作動する法令で扱っています。
もう一つ、条文の構造として押さえておきたいのが柱書の書き方です。27条の5第1項の柱書は「次の各号のいずれかに該当し当該土地を含む周辺の地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があると認めるとき」と、支障の要件を柱書に置いています。これに対して27条の8第1項の柱書は「次の各号のいずれかに該当すると認めるとき」で止まり、支障の要件は1号と2号のそれぞれの末尾に書き分けられています。1号は「適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があること」、2号は「適正な地価の形成を図る上で著しい支障を及ぼすおそれがあること」。守る対象が号ごとに違うから、柱書に一本化できず号の側に降ろしたという構造です。条文を写して並べると、この書き分けが目で見えます。
注視と監視の実質的な違い
以上から、注視区域と監視区域の違いは「面積要件が規則で下がるかどうか」だけではないことが分かります。
第一に、指定要件が違います。注視区域は相当な程度を超える上昇と大臣基準、監視区域は急激な上昇。
第二に、届出対象となる面積が違います。注視区域は事後届出と同じ面積、監視区域は都道府県の規則で定める面積。
第三に、勧告事由が違います。注視区域は27条の5第1項の3事由だけ、監視区域はそれに加えて短期転売型の27条の8第1項2号があります。
第四に、監視区域には27条の9の報告徴収があります(後述)。注視区域にはありません。
面積の話だけを覚えていると、第三と第四が抜け落ちます。試験で監視区域が単独で問われるとき、狙われるのはむしろこちらです。
面積は誰の一団で見るのか
借りているのは面積、変えているのは主語
27条の4第2項1号は、23条2項1号イからハまでに規定する区域に応じそれぞれその面積が同号イからハまでに規定する面積未満の土地について土地売買等の契約を締結する場合には届出を要しないとしています。面積の数値そのものは事後届出から借りているので、注視区域の届出対象面積は事後届出と同じです。数値の意味づけ、すなわちなぜ市街化区域が2,000平方メートルで、それ以外の都市計画区域が5,000平方メートルで、それ以外の区域が10,000平方メートルなのかは国土利用計画法の全体像が扱っています。区域の定義は市街化調整区域と非線引き区域と準都市計画区域を参照してください。準都市計画区域は都市計画区域ではないので、23条2項1号ハの「イ及びロに規定する区域以外の区域」に落ち、10,000平方メートルになります。
問題は、そこに続くカッコ書きです。事後届出の23条2項1号のカッコ書きは、除外から外す場合を「権利取得者が当該土地を含む一団の土地で……面積以上のものについて土地に関する権利の移転又は設定を受けることとなる場合を除く」と書いています。主語は権利取得者、動詞は「受けることとなる」。
これに対して27条の4第2項1号のカッコ書きは、「土地売買等の契約の当事者の一方又は双方が当該土地を含む一団の土地で……面積以上のものについて土地に関する権利の移転又は設定をすることとなる場合を除く」と書いています。主語が「当事者の一方又は双方」に変わり、動詞も「受ける」ではなく「する」になっています。
この文言の差が意味するのは、事前届出では売主側の一団も判定に入るということです。事後届出では買主が細切れに買い集めるケースだけを捕捉すればよかったのに対し、事前届出では、売主が一団の土地を細切れに売る場合も対象になります。届出義務者が当事者双方であることと、判定の基準が当事者双方であることは、同じ設計から出ています。
法令横断の整理として「事後届出は買主基準、事前届出は双方基準」という一行が法令上の制限の横断整理にありますが、根拠はこのカッコ書きの主語です。結論を暗記するのではなく、23条2項1号と27条の4第2項1号を並べて主語を読むほうが、選択肢を切るときに速くなります。
監視区域は規則で定める面積
監視区域については、27条の7第1項が27条の4を準用したうえで読替えを指示しています。読替えの中身は次のとおりです。
27条の4第2項1号の「同号イからハまでに規定する面積未満」を「同号イからハまでに規定する面積に満たない範囲内で都道府県知事が都道府県の規則で定める面積未満」と読み替え、「同号イからハまでに規定する面積以上」を「当該都道府県の規則で定められた面積以上」と読み替える。
ここで効いてくるのが「面積に満たない範囲内で」という限定です。都道府県は好きな面積を規則で定められるのではなく、23条2項1号イからハの面積を上限として、それ未満の範囲でしか定められません。したがって市街化区域内の監視区域であれば、規則で定められる面積は必ず2,000平方メートル未満になります。
この読替えを知っていると、次のような選択肢を根拠つきで切れます。「監視区域内の市街化区域に所在する2,500平方メートルの土地について土地売買等の契約を締結しようとする場合、都道府県の規則で定める面積によっては届出が不要となることがある」。誤りです。規則面積は2,000平方メートル未満でなければならないので、2,500平方メートルは規則面積がいくらであっても必ずそれ以上になり、届出が必要です。結論が同じでも、「規則面積は事後届出より小さい」という説明と「条文が上限を切っている」という説明では、切れる選択肢の範囲が違います。
なお、27条の4第3項の読替えも同時に行われ、契約締結制限のただし書に出てくる「次条第一項」は「27条の8第1項」に、「同条第三項」は「同条第二項において準用する27条の5第3項」に読み替えられます。監視区域でも6週間の制限と、勧告または不勧告通知による解除は同じです。
規則そのものの手続
規則の定め方についても条文があります。
27条の7第2項は、知事は監視区域を指定するときは、読替後の27条の4第2項1号に規定する都道府県の規則を定めなければならないとしています。義務です。監視区域を指定しておいて規則を作らない、という状態は条文上ありえません。
同条3項は、27条の6第3項が準用する12条10項の調査(地価動向等の常時把握)の結果、必要があると認めるときは、規則で定める面積を変更するものとするとしています。
同条4項は、規則を定めようとする場合について27条の6第2項を準用します。すなわち、あらかじめ土地利用審査会及び関係市町村長の意見を聴かなければならないということです。区域を指定するときと同じ手続を、面積を決めるときにも踏ませています。面積の決定が実質的に規制範囲の決定だからです。
面積の境界は「未満」で切れる
条文は「面積未満の土地について……契約を締結する場合」を除外しています。裏返せば、面積ちょうどの土地は届出が必要です。市街化区域内の注視区域で2,000平方メートルちょうどの土地なら、事前届出の対象になります。
面積で規制の要否を決める制度は法令上の制限にいくつもあり、条文の書き方も似ています。開発許可も、都市計画法29条1項ただし書1号が「その規模が、それぞれの区域の区分に応じて政令で定める規模未満であるもの」を許可不要とする形で、面積を除外要件の側に置いています。市街化区域の1,000平方メートルという数値は都市計画法施行令19条1項が定めており、この点は開発許可が必要な面積要件で扱っています。
どちらも「未満なら不要」という書き方なので、境界値ちょうどは規制の対象という結論も共通です。ただし、測る単位が違います。都市計画法29条1項1号が測るのは「開発行為……の規模」であって、条文に「一団の土地」という語は出てきません。これに対して国土利用計画法は、23条2項1号と27条の4第2項1号のカッコ書きで「当該土地を含む一団の土地」という合算の仕組みを明文で置いています。しかもその合算を、事後届出は権利取得者について、事前届出は当事者の一方または双方について行う。同じ「面積」という語でも、何を単位として測り、誰について足し合わせるのかが制度ごとに違います。試験で狙われるのは境界の向きよりも、この合算の主語のほうです。
違反したときに何が起きるか
届出をしなかった場合は47条2号
罰則は条文が分かれています。まず、届出をしないで契約を締結した場合です。
47条は、各号のいずれかに該当する者は6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処するとし、2号に「第二十七条の四第一項(第二十七条の七第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、届出をしないで土地売買等の契約を締結した者」を挙げています。カッコ書きにより監視区域にも同じ罰条が及びます。
同条1号は事後届出(23条1項)と遊休土地の計画届出(29条1項)の不届出、3号は事後届出・事前届出・遊休土地の計画届出についての虚偽届出です。不届出と虚偽届出は同じ法定刑である点、そして事後届出と事前届出の不届出も同じ法定刑である点を確認しておいてください。
6週間待たなかった場合は48条
見落とされやすいのが48条です。第二十七条の四第三項(第二十七条の七第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、土地売買等の契約を締結した者は、五十万円以下の罰金に処する。
届け出たけれども6週間を経過する前に、勧告も不勧告通知も受けないまま契約を締結してしまった場合が、これに当たります。法定刑は50万円以下の罰金だけで、拘禁刑がありません。届け出ていない者(47条2号)より軽い扱いです。
届出をしなかった場合と、届け出たが待たなかった場合は、別の条文・別の法定刑です。事前届出の罰則を「6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」と一本で覚えていると、48条を使う設問に対応できません。逆に、48条の存在を知っていれば、「事前届出をした者が6週間を経過する前に契約を締結した場合、6月以下の拘禁刑に処せられることがある」という文を、法定刑の点で切れます。
刑名がいずれも「拘禁刑」になっているのは、令和4年法律第68号による懲役・禁錮の一本化が2025年6月1日に施行されたためです。国土利用計画法の基準日版が同日施行の版であるのもこの改正によるもので、条文の実体は変わっていません。刑名の変更が資格制度側に与えた影響は拘禁刑と宅建業法の欠格事由で扱っています。令和8年度試験に影響する改正の全体像は令和8年度試験の法改正まとめを参照してください。
無許可契約は46条、そして14条3項
三段目として規制区域を置くと、罰則の階段が見えます。46条は、14条1項に違反して許可を受けないで土地売買等の契約を締結した者を3年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金に処すると定めています。事前届出の不届出(47条2号)の3倍から4倍の重さです。
さらに14条3項が、許可を受けないで締結した土地売買等の契約は、その効力を生じないとしています。刑罰と私法上の無効が重なるのは規制区域だけです。
契約の効力は動かない
事前届出には、14条3項に相当する規定がありません。したがって、届出をせずに締結した契約も、6週間を待たずに締結した契約も、勧告に従わずに締結した契約も、いずれも私法上は有効です。罰則は科されますが、契約の効力は動きません。
勧告に従わなかった場合は、27条の5第4項が準用する26条により、その旨と勧告の内容が公表されることがあります。公表は制裁的な効果を持ちますが、罰則ではありません。無効になる制度と有効なまま残る制度を法令横断で並べたい場合は法令上の制限の横断整理が担当しています。
報告徴収と両罰規定
25条の報告(27条の5第4項・27条の8第2項で準用)をせず、または虚偽の報告をした者は、49条1号により30万円以下の罰金です。41条1項の立入検査を拒み、妨げ、忌避した者も同じく49条2号で30万円以下の罰金になります。
そして50条が両罰規定を置いています。法人の代表者または法人もしくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関して46条から49条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人に対して各本条の罰金刑を科すとされています。宅建業者が業務として事前届出を怠れば、担当者個人だけでなく法人にも罰金が科されうる、ということです。
届け出た土地はその後も見られている
監視区域限定の報告徴収
27条の9は、知事は27条の6第3項が準用する12条10項の調査(地価動向等の常時把握)を適正に行うため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、監視区域に所在する土地について土地売買等の契約を締結した者に対し、当該契約および当該契約に係る土地の利用について報告を求めることができると定めています。
除外の書き方が独特です。カッコ書きは、27条の7第1項において準用する27条の4第1項の規定による届出をした者と、同条2項2号に該当するため届出をしないで契約を締結した者を除いています。前者は既に届出で内容を把握済みだから、後者は民事調停・国等・政令事項という制度的に把握不要な類型だから、という理由です。
裏返すと、面積要件(27条の4第2項1号)で届出が不要だった者は除外されていません。規則面積に満たない小さな土地の取引をした者にも、報告を求めることができます。監視区域では規則面積が事後届出より小さく設定されるため、それでもなお規則面積未満の取引が地価の動きを示すことがあり、その情報を拾うための規定です。求められる報告事項は施行令18条の9が7項目を定めており、契約の相手方、締結年月日、面積、対価の額、移転前後の利用状況と利用目的などが含まれます。この報告義務は、注視区域にはありません。
遊休土地である旨の通知
28条から30条までは、届け出た土地のその後を追う制度です。
28条1項は、知事は、14条1項の許可または23条1項もしくは27条の4第1項(27条の7第1項において準用する場合を含む。)の規定による届出に係る土地を所有している者のその所有に係る土地が、次の各号の要件に該当すると認めるときは、その所有者に当該土地が遊休土地である旨を通知するものとすると定めています。許可・事後届出・事前届出のいずれを経た土地も対象です。なお、都市計画法58条の7第1項の規定による通知に係る土地は明文で除かれています。こちらは都市計画法側の遊休土地転換利用促進地区の制度で、内容は都市計画の種類と決定権者を参照してください。
要件は4号あります。
1号は面積です。その土地が、区域に応じた面積以上の一団の土地であること。イは規制区域で、市街化区域1,000平方メートル、それ以外の都市計画区域3,000平方メートル、それ以外の区域5,000平方メートル。ロは監視区域で、27条の7第2項の都道府県の規則で定める面積(ただしその面積がイの面積に満たないときはイの面積)。ハは規制区域および監視区域以外の区域で、23条2項1号イからハの面積、すなわち2,000・5,000・10,000平方メートルです。注視区域はハに含まれます。注視区域だからといって遊休土地の面積が下がることはありません。
2号はその土地の所有者が当該土地を取得した後2年を経過したこと。3号は住宅の用や事業の用等に供されていないこと、その他政令で定める要件(施行令20条)に該当すること。4号は、土地利用基本計画その他の土地利用に関する計画に照らし、その土地を含む周辺地域の計画的な土地利用の増進を図るため、当該土地の有効かつ適切な利用を特に促進する必要があること。
なお、市町村長は区域内に要件該当地があるときは知事に通知をすべき旨を申し出ることができ(28条2項)、知事は市街化区域内の土地について通知をしたときは遅滞なく市町村長に通知しなければなりません(同3項)。
6週間以内の計画の届出
29条1項は、通知を受けた者は、その通知があつた日から起算して6週間以内に、通知に係る遊休土地の利用または処分に関する計画を、当該土地が所在する市町村の長を経由して都道府県知事に届け出なければならないと定めています。
ここでまた6週間が出てきますが、主語も内容もまったく違います。27条の4第3項の6週間が「届出者が契約を締結してはならない期間」であるのに対し、29条1項の6週間は「通知を受けた者が計画を届け出るべき期限」です。前者は不作為義務の期間、後者は作為義務の期限。この届出を怠ると、47条1号により6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
助言・勧告・買取り協議
計画の届出を受けた知事は、その届出をした者に対し、遊休土地の有効かつ適切な利用の促進に関し必要な助言をすることができます(30条)。
さらに31条1項は、届出に係る計画に従って利用または処分することが有効かつ適切な利用の促進を図る上で支障があると認めるときは、土地利用審査会の意見を聴いて、相当の期限を定めて、計画を変更すべきことその他必要な措置を講ずべきことを勧告できるとしています。ここでも審査会が登場します。
勧告に従わないときは、32条1項により、知事は買取りを希望する地方公共団体、土地開発公社その他政令で定める法人のうちから協議を行う者を定めて通知し、通知を受けた者は正当な理由がなければ買取りの協議を行うことを拒んではならないとされます(同2項)。協議ができる期間は、通知があった日から起算して6週間を経過する日までです。買取り価格は33条が、近傍類地の取引価格等を考慮して政令で定めるところにより算定した相当な価額(公示区域内であれば公示価格を規準として算定した価額)を基準として算定するとしています。27条の5第1項1号と同じ価額算定の枠組みが、ここでも使われています。
国等の配慮義務
最後に27条の10です。国等は、土地売買等の契約を締結しようとする場合には、適正な地価の形成が図られるよう配慮するものとする。
国等は27条の4第2項2号により事前届出の義務を免除されていますが、免除は「何の縛りもない」という意味ではありません。届出という手続に乗せない代わりに、実体的な配慮義務を条文で課しています。国や地方公共団体が高値で土地を買えば、それ自体が地価の形成に影響するからです。土地取引に関する届出制を持つ周辺の法令についてはその他の法令上の制限と許可権者と景観法・品確法で扱っています。とくに公有地の拡大の推進に関する法律の届出は、譲渡しようとする者があらかじめ知事等に届け出るという点で事前届出と形が似ているので、混同しないよう役割を分けて覚えてください。
区域該当性は契約前の調査で確定できる
対象地が注視区域または監視区域に該当するかどうかは、契約前に確定できる事項です。指定は12条3項(27条の3第3項・27条の6第3項で準用)の公告によって行われ、同条4項によりその公告によって効力を生じます。さらに準用される12条5項が、公告をしたときは指定された区域および期間を国土交通大臣に報告し、関係市町村長に通知し、かつ当該事項を周知させるため必要な措置を講じなければならないとしています。区域の範囲と期間が外から確認できる状態に置かれることまで、条文が要求しているわけです。調査の手順は物件調査で扱っています。そして、事前届出が必要な区域に所在することは、宅建業法35条1項2号および同法施行令3条に基づく法令に基づく制限として、重要事項説明の対象になります。説明事項の全体像は35条書面の記載事項一覧を参照してください。
試験での出題ポイント
国土利用計画法は法令上の制限のなかで1問前後を占める分野で、そのうち事前届出が単独で問われる年もあれば、事後届出との対比で問われる年もあります。この1問にどこまで踏み込むかの判断材料は法令上の制限は何問出る?にまとめてあります。以下は、事前届出に固有のすり替えパターンと、どの条文のどの語を見れば切れるかです。
届出義務者を権利取得者だけにする
「注視区域内の土地について土地売買等の契約を締結しようとする場合、権利取得者は、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならない」。誤りです。27条の4第1項の主語は「当事者」であり、売主にも届出義務があります。23条1項の「権利取得者」を持ち込んだ形です。主語だけを見れば切れます。
契約締結制限を「いかなる場合も」にする
「事前届出をした者は、届出をした日から起算して6週間を経過するまでは、いかなる場合も契約を締結することができない」。誤りです。27条の4第3項のただし書により、勧告(27条の5第1項)または勧告をしない旨の通知(同条3項)を受けたときは制限が解けます。「いかなる場合も」「〜に限り」といった限定語が付いたら、条文にただし書がないかを疑ってください。
勧告の内容を利用目的の変更にする
「注視区域における勧告は、届出に係る土地の利用目的について必要な変更をすべきことを内容とする」。誤りです。27条の5第1項の勧告内容は「当該土地売買等の契約の締結を中止すべきことその他必要な措置」です。利用目的の変更は24条1項、すなわち事後届出の勧告の内容です。命じる中身が入れ替えられていないかを確認してください。
予定対価の減額変更にも届出を要求する
「監視区域内の土地について、予定対価の額を変更して契約を締結しようとするときは、その変更が減額である場合を含め、改めて届出をしなければならない」。誤りです。27条の4第1項後段のカッコ書きが「その額を減額する場合を除く」としており、27条の7第1項の準用によって監視区域でも同じです。増額と減額のどちらが除かれるかを入れ替えた形も作られます。
監視区域の規則面積を事後届出と同じにする
「監視区域における届出対象面積は、都道府県の規則で定めるが、事後届出の面積要件を超えて定めることもできる」。誤りです。27条の7第1項の読替えが「同号イからハまでに規定する面積に満たない範囲内で」と上限を切っています。市街化区域なら2,000平方メートル未満でなければなりません。
注視区域の面積判定を買主だけで行わせる
「注視区域において、売主が一団の土地を分割して複数の買主に売る場合、各買主の取得面積が届出対象面積未満であれば、いずれの契約についても届出は不要である」。誤りです。27条の4第2項1号のカッコ書きは「当事者の一方又は双方が」と書いており、売主側の一団も判定に入ります。23条2項1号の「権利取得者が」との読み比べで切れます。
二つの罰条を同じにする
「事前届出をせずに契約を締結した者と、届出後6週間を経過する前に契約を締結した者は、いずれも6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられる」。誤りです。前者は47条2号(6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)、後者は48条(50万円以下の罰金)で、条文も法定刑も違います。
監視区域の勧告事由を注視区域に及ぼす
「注視区域において、土地を取得してから1年以内に自ら利用することなく転売しようとする届出については、都道府県知事は契約の締結を中止すべきことを勧告することができる」。誤りです。短期転売型の勧告事由は27条の8第1項2号にあり、監視区域限定です。注視区域の勧告事由は27条の5第1項の3事由に限られます。
指定手続で事前と事後をすり替える
「都道府県知事は、監視区域を指定したときは、その公告の日から起算して2週間以内に、土地利用審査会の確認を求めなければならない」。誤りです。27条の6第2項は「あらかじめ、土地利用審査会及び関係市町村長の意見を聴かなければならない」と定める事前手続型で、2週間以内の事後確認は12条6項の規制区域の手続です。準用範囲(27条の6第3項は12条2項から5項までと10項から12項まで)に6項が含まれていないことが根拠になります。
数字を別の6週間と入れ替える
「事前届出があった場合、都道府県知事は、届出があった日から起算して3週間以内に勧告をしなければならず、必要があるときは3週間の範囲内で延長できる」。誤りです。3週間と延長は24条2項・3項の事後届出の規定で、事前届出の勧告期限は27条の5第2項の6週間、延長規定はありません。数字が出てきたら、それが誰の何の期間かを条文で特定してください。
覚え方・整理の仕方
条番号の並びで持つ
事前届出は27条の4から27条の9までの塊です。並びに意味があるので、条番号ごと覚えてしまうのが最短です。
27条の3が注視区域の指定。27条の4が(注視区域の)届出。27条の5が(注視区域の)勧告。27条の6が監視区域の指定。27条の7が監視区域の届出(27条の4の読替準用)。27条の8が監視区域の勧告。27条の9が監視区域の報告徴収。27条の10が国等の配慮義務。
指定・届出・勧告という三点セットが、注視区域について27条の3から5、監視区域について27条の6から8に、同じ順で二度繰り返されているという構造です。そして監視区域側だけ27条の9が余分に付いている。この並びが頭に入っていれば、「監視区域の届出について定めた条文は」と問われて27条の7を出せますし、報告徴収が監視区域限定であることも並びから思い出せます。
期間は「誰の義務か」で持つ
数字だけを覚えると混ざります。主語をつけて持ってください。
5年以内は知事の指定期間(12条2項の準用、起算点は公告の日)。6週間は届出者の不作為義務であり、同時に知事の勧告期限(27条の4第3項と27条の5第2項)。1年は監視区域の短期転売型勧告事由の保有期間(27条の8第1項2号ロ、施行令18条の4。法律上の枠は「2年を超えない範囲内」)。2年は遊休土地の保有期間(28条1項2号)。6週間は遊休土地の計画届出の期限(29条1項)と買取り協議の期間(32条2項)。2週間は事後届出の期限(23条1項)と規制区域の事後確認(12条6項・7項)。3週間は事後届出の勧告期限(24条2項)。
同じ数字が別の意味で何度も出るので、数字から制度を引くのではなく、制度から数字を引く方向で覚えます。都市計画法側の期間の数字と混ざりやすい場合は都市計画法の数字で階層ごとに切り分けてください。
規制の強さは「行政が何を言えるか」で並ぶ
三つの層は、面積や期間ではなく、行政が何を言えるかで並べると取り違えません。
事後届出では、行政は「その使い方を変えなさい」としか言えません(24条1項)。契約は既に成立していて、動かせないからです。
事前届出では、行政は「その契約をやめなさい」と言えます(27条の5第1項・27条の8第1項)。まだ契約が成立していないからです。ただし言えるだけで、従わなくても契約は有効に成立します。
規制区域では、行政が何も言わなくても、許可がなければ契約は効力を生じません(14条3項)。言う言わないの問題ではなく、効力の問題になっています。
「使い方を変えろ」「契約をやめろ」「そもそも効力が生じない」という一列に置けば、勧告の内容を取り違えることはなくなります。そして、この一列は届出事項の借用関係とも一致します。事後届出は23条1項各号という独自の列挙を持ち、事前届出は許可申請の15条1項各号を借りている。条文をどこから借りているかが、その制度がどちら側に属するかを示しているわけです。
監視区域にしか出てこない条文を数える
注視区域と監視区域の差を四つ挙げたのは前半の話ですが、覚えるときは「条文の本数を数える」方向に変えると落ちにくくなります。監視区域にだけ存在する条文と項を並べると、次の五つです。
27条の7第2項(規則を定める義務)、同3項(調査の結果による規則面積の変更)、同4項(規則を定めるときの審査会・市町村長の意見聴取)、27条の8第1項2号(短期転売型の勧告事由)、27条の9(報告徴収)。
裏返すと、注視区域にはこの五つが一つもありません。注視区域は27条の3から27条の5までの三か条で完結し、監視区域は27条の6から27条の9までの四か条に加えて、届出条文の中に規則という別の層を持っている。この「条文の本数の差」が、そのまま規制の密度の差です。
もう一つ数えられるのが、遊休土地の面積要件です。28条1項1号は区域をイ・ロ・ハの三つに割っていますが、監視区域だけが独立してロに置かれ、注視区域は規制区域でも監視区域でもない区域としてハに落ちます。注視区域という語は28条1項1号に一度も出てきません。面積が下がるのは監視区域だけ、という結論をここでも条文の位置から確認できます。
理解度チェッククイズ
問1 注視区域内の土地について事前届出をした者は、いかなる場合も、届出をした日から起算して6週間を経過するまでは当該土地売買等の契約を締結することができない。
答え:誤り
27条の4第3項は6週間の契約締結制限を定めていますが、ただし書により、27条の5第1項の勧告または同条3項の勧告をしない旨の通知を受けた場合はこの限りでないとされています。知事の判断が示された時点で待つ理由がなくなるからです。したがって「いかなる場合も」は誤りです。なお、事後届出(23条1項)には契約締結を制限する規定そのものがなく、24条2項の3週間は知事の勧告期限であって当事者を拘束する期間ではありません。この二つを対比して押さえてください。
問2 監視区域内の土地について事前届出をした者が、予定対価の額を減額して当該契約を締結しようとする場合には、改めて届出をしなければならない。
答え:誤り
27条の4第1項後段は、予定対価の額の変更をして契約を締結しようとするときは改めて届出を要するとしていますが、カッコ書きで「その額を減額する場合を除く」としています。27条の7第1項がこの規定を監視区域に準用しているので、監視区域でも同じです。この制度が地価の高騰を抑えるためのものである以上、値段を下げる方向の変更を規制する必要がないからです。なお、利用目的の変更については減額のような除外がなく、変更して契約しようとするときは改めて届出が必要です。同じ後段のなかで扱いが違う点に注意してください。
問3 注視区域における勧告は、届出に係る土地の利用目的について必要な変更をすべきことを内容とする。
答え:誤り
27条の5第1項の勧告の内容は「当該土地売買等の契約の締結を中止すべきことその他その届出に係る事項について必要な措置を講ずべきこと」です。「利用目的について必要な変更をすべきこと」を内容とするのは、事後届出に対する24条1項の勧告です。契約前の届出だからこそ契約そのものを止められる、という制度の性格が勧告の内容に表れています。なお、予定対価の額が相当な価額に照らし著しく適正を欠くことは27条の5第1項1号の勧告の事由であって、勧告の内容ではありません。事由と内容は分けて覚えてください。
問4 監視区域内の土地について事前届出をせずに土地売買等の契約を締結した者は罰則の適用を受けるが、その契約自体は有効である。
答え:正しい
47条2号により、27条の4第1項(27条の7第1項で準用する場合を含む)に違反して届出をしないで契約を締結した者は6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられます。一方、国土利用計画法には、規制区域の14条3項(許可を受けないで締結した契約は効力を生じない)に相当する無効規定が事前届出について置かれていません。したがって契約は私法上有効です。届け出たが6週間を経過する前に契約を締結した場合は別の罰条で、48条の50万円以下の罰金になります。罰条が二本に分かれている点も一緒に押さえてください。
問5 都道府県知事は、監視区域を指定するときは、届出対象面積を都道府県の規則で定めなければならず、その面積は事後届出の面積要件に満たない範囲内で定めなければならない。
答え:正しい
27条の7第2項は、監視区域を指定するときは規則を定めなければならないとしています。任意ではなく義務です。そして同条1項の読替えは「同号イからハまでに規定する面積に満たない範囲内で都道府県知事が都道府県の規則で定める面積未満」としており、23条2項1号イからハの面積が上限になります。市街化区域であれば規則面積は必ず2,000平方メートル未満です。なお、規則を定めようとするときは、27条の7第4項が準用する27条の6第2項により、あらかじめ土地利用審査会および関係市町村長の意見を聴かなければなりません。区域の指定と同じ手続が、面積の決定にも要求されています。
まとめ
事前届出は、事後届出を時間的に前倒ししただけの制度ではありません。届出事項は許可申請の15条1項各号を借り、勧告は契約の締結中止を命じ、待機期間と勧告期限が6週間で噛み合っている。条文の借用関係を追えば、この制度が許可制の側から降りてきたものであることが分かります。
そのうえで、注視区域と監視区域の差は四つ。指定要件に大臣基準があるかどうか、面積が規則で下げられるかどうか、短期転売型の勧告事由(27条の8第1項2号)があるかどうか、報告徴収(27条の9)があるかどうか。面積の話だけを覚えていると、残り三つを問う設問に対応できません。
そして違反の効果は二本立てです。届け出なかった場合の47条2号と、届け出たが待たなかった場合の48条。どちらの場合も契約は有効に成立し、無効になるのは規制区域の無許可契約(14条3項)だけです。
条文の位置と主語を押さえたら、あとは選択肢で手を動かすのが早道です。宅建試験AIブートラボのアプリでは、国土利用計画法の過去問を届出義務者・期間・勧告の内容といった論点別に演習でき、各肢に条文根拠つきの解説が付いています。この記事で整理した対比が実際の選択肢でどう崩されるかを、そちらで確認してみてください。
都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。