令和8年度に影響する法改正まとめ
令和8年度宅建試験の基準日2026年4月1日で切ったとき、実体改正が入った法令は4件だけです。動いた法令と動いていない法令を、改正法令番号と施行日つきで科目横断に確定させます。
目次
本記事の役割 — この記事は、令和8年度(2026年10月18日実施)の出題範囲で実際に条文が動いた法令と、動いていない法令を一枚に並べる横断ハブです。各改正の中身そのものは各科目の記事に置いてあり、ここでは「何が、いつ、どの階層で動いたか」と「それをどこで読むか」だけを確定させます。試験日程や受験手数料といった制度面は令和8年度の宅建試験日程、宅建業法内部の改正年表は宅建業法の改正ポイント、権利関係の民法改正は権利関係の民法改正まとめにあります。
法改正の記事を読むとき、多くの受験者が求めているのは「今年は何が変わったか」の一覧です。ところが宅建試験において、その一覧はそれ単独では役に立ちません。変わったかどうかを決めるのは改正の有無ではなく、基準日という一本の線をその改正が越えているかどうかだからです。そしてこの線は、公布日でも、ニュースが出た日でも、施行日そのものでもありません。
さらにやっかいなのは、線を越えた改正であっても、条文が動いたとは限らないことです。令和8年度に関して言えば、「宅地建物取引業法が2026年4月1日に改正・施行された」というのは事実ですが、法律の本則は一字も動いていません。逆に、法律ではなく府省令のほうで、重要事項説明の項目数が静かに1つ増えています。この二つを取り違えると、勉強し直す必要のない条文を読み返し、読み直すべき条文を素通りすることになります。
そこでこの記事は、改正の一覧ではなく判定装置として組み立てます。基準日で切る、階層で分ける、本則と附則を分ける。この三つの操作を通したあと、令和8年度に残る実体改正は4件しかありません。以下、その4件を確定させ、逆に「直さなくてよいと確認済み」の法令も同じ精度で並べます。
改正を「4月1日で切る」だけでは足りない理由
三つの日付を最初に分離する
改正の話がこじれる原因は、性質の違う三つの日付が同じ「改正の日」という言葉で語られることにあります。順に分けます。
公布日は、法律が官報に載って世の中に知らされた日です。この時点では効力がありません。施行日は、その法律が実際に効力を持ち、条文が書き換わる日です。公布から施行までは数か月から数年空くことがあります。懲役と禁錮を拘禁刑に一本化した令和4年法律第68号は2022年6月17日に公布されましたが、関係法令の条文が実際に書き換わったのは2025年6月1日で、3年近い間隔がありました。
そして三つ目が基準日です。宅建試験は、当該年度の4月1日現在施行されている法令から出題されます。令和8年度なら2026年4月1日が基準日です。この日に施行されている条文だけが正解を決めます。
三つを分けると、判定は単純な不等式になります。施行日が基準日以前なら範囲内、基準日より後なら範囲外。公布日は判定に一切使いません。改正のニュースが流れた日付や、出版社が「最新法令対応」と書いた日付も同様に使いません。
「最新の条文」は正解ではない
この試験でいちばん危険な発想が、「せっかくだから最新の情報に更新しておこう」です。法令は年間を通じて改正され続けます。基準日の翌日以降に施行された改正を反映して覚えると、その部分だけ確実に誤答するという状態が作れてしまいます。しかも本人には間違えた自覚が生まれません。より新しい情報を持っているという確信があるからです。
実際、令和8年度についてはこの罠が複数の法令で開いています。都市計画法・建築基準法・土地区画整理法は2026年5月27日に、民法と不動産登記法は2026年6月24日に、それぞれ改正法が施行されました。いずれも基準日より後です。今日の日付で法令検索サイトを開けば、これらは改正後の姿で表示されます。画面に出ている条文が令和8年度の正解とは限らないという前提を、最初に固定しておいてください。
なお、ここで言っている「変更の有無」は法令の話であって、試験制度の話ではありません。試験日程・受験手数料・出題形式といった制度面については別軸で、そちらの確定情報は令和8年度の宅建試験日程にまとめてあります。制度は変わっていないが法令は動いている、という状況が普通に起きるので、どちらの話をしているかを常に区別してください。
「施行された」ことと「条文が変わった」ことは別
もうひとつ、基準日を越えた改正についても、そのまま鵜呑みにはできません。改正法が施行されたことは、本則の条文が動いたことを意味しないからです。
法律は本則と附則でできています。本則は条文の実体、附則は施行期日・経過措置・他法令の整備といった手続の部分です。改正法の中には、本則には触れずに附則だけを付け加えるもの、あるいは本則の改正を「公布から◯月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」と先送りするものがあります。この場合、改正法は確かに施行されていますが、受験者が覚えている条文は1文字も変わりません。
令和8年度でこれに当たるのが宅地建物取引業法です。令和7年法律第68号が2026年4月1日に施行されており、施行日は基準日以前なので形式的には範囲内です。ところが条単位で突き合わせると、本則には差分がなく、付加されたのは附則だけでした。同じことが都市計画法でも起きています(後述)。施行された改正の中には、条文を1文字も動かさないものがあるということです。
したがって判定は二段階になります。第一段階で施行日と基準日を比べ、第二段階で本則が動いたかを確かめる。この二段階を通ったものだけが「覚え直す対象」です。次の節で、その二段階を通過した法令を確定させます。
令和8年度に実体改正が入った法令は4つしかない
科目をまたいで数え上げると、令和8年度の基準日をまたいで実体改正が入った法令は4件です。ここでは各件の中身には立ち入らず、改正法令番号・施行日・影響が及ぶ範囲の三点だけを確定させます。中身は各論の記事に置いてあります。
1件目 建物の区分所有等に関する法律
改正法令は令和7年法律第47号、施行日は2026年4月1日です。影響が及ぶのは権利関係の区分所有法の1問と、宅建業法側の区分所有建物の重要事項説明です。
動いたのは決議のしくみそのもので、条文でいえば17条・31条・61条・62条という決議要件の各条と、過料の条番号です。旧法を前提にした問題集は、決議の割合を扱う肢のほぼ全部が影響を受けます。令和8年度でもっとも書き換え量が多いのがこの1件で、何がどう動いたかは次の節でまとめて扱います。
2件目 宅地建物取引業法施行規則16条の2
改正法令は令和7年内閣府・国土交通省令第2号、施行日は2026年4月1日です。影響が及ぶのは宅建業法の35条書面、なかでも区分所有建物の追加説明事項です。
動いたのは説明事項の数と、それに伴う号数です。同じ内容の号が16条の4の6(信託受益権の売買等における説明)と19条の2の5にも入っており、これらの条についても号数がずれます。法律ではなく府省令の改正であるという点がこの件の性格を決めており、その意味は本記事の宅建業法の節で扱います。
3件目 令和8年度の地方税の改正(地方税法および同施行令)
改正法令は令和8年法律第2号(地方税法本体)と令和8年政令第83号(地方税法施行令)で、施行日はいずれも2026年4月1日です。影響が及ぶのは税・その他の地方税1問、具体的には不動産取得税と固定資産税です。
動いたのは金額と面積の数字で、座標は四つあります。新築住宅に係る固定資産税の減額措置の床面積要件(施行令附則12条)、新築住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例の床面積要件(施行令37条の16)、既存住宅に係る同特例の床面積要件(施行令37条の18)がいずれも引き下げられ、あわせて不動産取得税の免税点(法73条の15の2)が引き上げられました。税は毎年度改正が入るため、この欄は年度ごとに書き換わる前提で読んでください。
4件目 不動産登記法76条の5
改正法令は令和3年法律第24号(民法等の一部を改正する法律)、施行日は2026年4月1日です。所有権の登記名義人の氏名・名称・住所に変更があったときは、変更があった日から2年以内に変更登記を申請しなければならないという義務が課され、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料(164条2項)が科されます。影響が及ぶのは権利関係の不動産登記法1問です。
この件は、四つのうちで唯一「新しい義務が生まれた」形の改正です。ほかの三件が既存の条文の内側(決議の分母、床面積や金額、説明事項の号)を入れ替えたのに対し、76条の5は条そのものが新設され、それまで存在しなかった申請義務が生まれました。基準日の直前である2026年2月2日時点の版には、この条は存在しません。同じ改正法による相続登記の義務化(76条の2)が2024年4月1日に先行して施行され、住所等変更のほうが2年遅れて2026年4月1日に施行された、という時差の結果です。
したがって出題の中心は、先に義務化された相続登記(76条の2、知った日から3年以内、違反は164条1項の10万円以下の過料)との数字の対比になります。2年・5万円が住所等変更、3年・10万円が相続という組み合わせの分解は住所等変更登記の義務化で扱っています。
基準日より前に入った改正も、当然に範囲内である
4件という数え方は「令和8年度に新しく入った改正」の数であって、「令和8年度に出題されうる改正」の数ではありません。基準日より前の年度に施行された改正は、その後も範囲内であり続けます。
代表例が報酬告示です。令和6年6月21日国土交通省告示第949号が2024年7月1日に施行され、低廉な空家等の特例が「400万円以下・18万円」から「800万円以下・30万円の1.1倍」に組み替えられました。令和7年度に「新しい改正」として扱われた論点ですが、令和8年度でも当然に出題範囲です。計算そのものは宅建の報酬計算にあります。
同じく2025年6月1日施行の拘禁刑への一本化、2022年5月18日施行の押印の廃止と電磁的方法の解禁、2021年9月30日施行の住宅瑕疵担保履行法の基準日の年1回化なども、すべて範囲内のままです。この種の「既往分」の年表は宅建業法まわりについては宅建業法の改正ポイントが持っているので、そちらで通してください。新しい改正だけを追うと、既往分が抜け落ちます。
区分所有法 — まとめとして押さえるのは「分母」と「段の数」だけ
区分所有法の改正は範囲が広く、決議の割合を一つずつ追いかけると必ず混線します。この記事では分母と段の数の二点だけを扱い、割合と条文の対応は各論に渡します。
分母が「総数」から「出席者」へ動いた
改正前の条文は、共用部分の変更も規約の設定変更も、区分所有者および議決権の総数を分母にしていました。総会に来なかった区分所有者は、実質的に反対票として数えられていたわけです。
改正後は、条文の文言が「出席した区分所有者及びその議決権の各◯分の◯以上」に変わりました。分母が出席者になっています。同時に、決議が成立するための出席水準として区分所有者の過半数であって議決権の過半数を有するものの出席という定足数が条文に書き込まれました。つまり、改正前は一階建てだった要件が、定足数と多数決要件の二階建てになったということです。
ただし、すべての決議の分母が出席者になったわけではありません。建替え決議を定める62条1項は「区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各五分の四以上の多数で」と書かれており、総数基準のままです。ここに定足数もありません。「改正で全部が出席者基準になった」と丸めると、この一点で誤ります。
段が三段から四段になった
改正前の多数決要件は、過半数・4分の3・5分の4の三段でした。改正後は、この間に3分の2の段が入って四段になっています。3分の2の段がどの決議に対応するかは条文が二か所に分かれており、割合と条文の対応は区分所有法の特別決議で段ごとに整理してあります。この記事で持つべき情報は「段が一つ増えた」までです。
古い教材を見分けるための検出語
改正の影響を実感として掴むには、旧知識のどこが誤りに転ぶかを見るのが早道です。次の記述が残っていたら、その教材は改正前を前提にしています。
- 「共用部分の変更については、区分所有者の定数を規約で過半数まで減ずることができる」— 17条1項のただし書は削除されました。改正後は4分の3という割合自体を、2分の1を超える範囲で規約により引き下げる形に変わっており、区分所有者の定数だけを別に動かす規定は条文上存在しません。
- 「建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の復旧は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による」— 大規模滅失の復旧決議は4分の3ではなくなりました。
- 「規約や議事録の保管を怠った管理者は、71条により20万円以下の過料に処せられる」— 過料の条文は71条から91条へ移動しています。あわせて10万円以下の過料を定める92条が新設されました。条番号だけを問う肢は作りにくいものの、条文を引くときに旧番号のままだと迷います。
改正8点の逐一と、専有部分・共用部分・規約・集会・復旧建替え・団地といった区分所有法の総論は区分所有法の総まとめが持っています。区分所有法が実生活のどの場面で効くのかという入口はマンションと戸建ての違いにあります。
宅建業法 — 「法律は動いていないが府省令が動いた」という形
令和8年度の宅建業法まわりは、法改正の階層構造を理解するのに最適な教材になっています。同じ2026年4月1日に、法律のほうは動かず、府省令のほうが動いたからです。
法律・政令・府省令という三階建て
法令は階層になっています。国会が作る法律、内閣が定める政令(施行令)、各省の大臣等が定める府省令(施行規則)です。宅建業法の分野では、法律が宅地建物取引業法、政令が同法施行令、府省令が同法施行規則です。
受験者が覚えている数字や項目のかなりの部分は、実は法律ではなく施行規則に書かれています。35条1項6号は、区分所有建物であるときに説明すべき事項を「契約内容の別に応じて国土交通省令・内閣府令で定めるもの」と書いているだけで、具体的な項目は施行規則16条の2に置かれています。法律を読んでも項目は出てこないという構造です。
したがって「宅建業法は改正されましたか」という問いは、そのままでは答えられません。どの階層の話かを指定して初めて答えが決まります。
法律のほうは本則が動いていない
宅地建物取引業法については、令和7年法律第68号が2026年4月1日に施行されています。施行日は基準日以前なので範囲内です。しかし条単位で機械比較すると、第1条から第86条まで、および別表に新設・削除・本文変更のいずれもなく、付加されたのは附則だけでした。免許の基準(5条)も、宅建士の登録の基準(18条)も、重要事項説明(35条)も、条文としては前年度と同一です。
つまり、この改正を理由に宅建業法の条文を覚え直す必要はありません。にもかかわらず「令和8年4月1日、宅建業法改正」という見出しだけが独り歩きすると、動いていない条文を読み返すことになります。改正の有無ではなく、本則の差分の有無で判断するというのは、この場面のためにあります。
府省令のほうは項目が1つ増えた
一方、宅地建物取引業法施行規則16条の2には第9号が新設されました。令和7年内閣府・国土交通省令第2号、施行日は同じ2026年4月1日です。これにより区分所有建物について説明すべき事項が9項目から10項目になり、旧9号だった維持修繕の実施状況の記録は10号へ繰り下がりました。
ここで実務的に効くのが、号数で書かれた記述がまとめてずれるという点です。「16条の2第9号は維持修繕の実施状況の記録である」と書いてあるノートは、改正後は誤りになります。同じ号が16条の4の6(信託受益権の売買等における説明)と19条の2の5にも入ったため、これらの条についても同様に号数がずれます。条文番号を暗記の手がかりにしていた人ほど、この改正の影響を受けます。
なお、16条の2の柱書は改正されていません。建物の貸借の契約については「第三号及び第八号に掲げるもの」と書かれたままで、新設された9号は貸借では説明事項になりません。10項目を号ごとに何を説明するのか、貸借でなぜ3号と8号だけになるのかは区分所有建物の重要事項説明が号単位で扱っています。35条書面の記載事項一覧そのものは重要事項説明書の記載事項です。
改正前後で肢の正誤がどう反転するかという形での整理は宅建業法の改正ポイントにあります。この記事は「どの階層が動いたか」まで、あちらは「どの肢が反転したか」までという分担です。
税 — 数字が入れ替わった箇所と、旧数字が残る教材の見分け方
税の改正は、条文の構造ではなく数字だけが動くため、読み流すと気づきません。しかも動いたのが法律なのか施行令なのかで、探しに行く場所が変わります。ここではどの座標の数字が動いたかを確定させ、制度の中身は各論に渡します。
固定資産税側 — 新築住宅の減額措置の床面積要件
地方税法施行令附則12条が令和8年政令第83号で改正され、新築住宅に係る固定資産税の減額措置の床面積要件が、50平方メートル以上280平方メートル以下から、40平方メートル以上240平方メートル以下に変わりました。減額の対象となる床面積が120平方メートルまでという上限は改正されていません。
ここで注意が要るのは、下限には例外があることです。同条1項8号の基準住居部分の定義は、原則を40平方メートルとしたうえで、サービス付き高齢者向け住宅である貸家の用に供される部分については30平方メートル、特別区の区域内の特定都市再生緊急整備地域にあって貸家の用以外に供される部分については50平方メートルと定めています。したがって固定資産税側で「40平方メートル」と書くときは、原則40平方メートルと書かなければ正確になりません。要件と減額の効き方は固定資産税の特例で扱っています。
不動産取得税側 — 課税標準の特例の床面積要件
同じ政令で、地方税法施行令37条の16も改正されました。法73条の14第1項の課税標準の特例(新築住宅の1,200万円控除)の対象となる住宅の建築について、共同住宅等以外の住宅も共同住宅等も、いずれも床面積40平方メートル以上240平方メートル以下と定められています。
固定資産税側と数字は揃っていますが、条文の作りは違います。改正前の37条の16は、1号2号のどちらについても「50平方メートル(貸家の用に供されるものは40平方メートル)以上240平方メートル以下」と書いており、貸家かどうかで下限が分かれていました。改正でこの場合分けが解消され、いまの条文には貸家かどうかによる区別がありません。上限の240平方メートルは、不動産取得税側ではもともと240で、この改正で動いていない点にも注意してください。上限まで動いたのは固定資産税側(280から240)だけです。
結果として、不動産取得税については「貸家かどうかを問わず40平方メートル以上240平方メートル以下」と書けます。逆に固定資産税については、先に見たとおり「原則40平方メートル」と書かなければ不正確です。
この違いは、改正の中身をそろえて見ると理解できます。改正前は、二つの税のどちらも下限を原則50平方メートルとし、貸家について40平方メートルに下げるという同じ構造を持っていました。改正はその40を原則に引き上げた操作です。不動産取得税側では貸家の枝がそのまま不要になって消え、固定資産税側では貸家より下のサービス付き高齢者向け住宅の30平方メートルが残り、さらに特別区の特定都市再生緊急整備地域について50平方メートルという新しい枝が加わりました。同じ40という数字にたどり着きながら、片方は枝が消え、片方は枝が組み替わったわけです。まとめて一文で処理すると必ず片方が誤りになるので、税目ごとに書き分けてください。
もうひとつ、同じ政令で動いた座標があります。既存住宅を自己の居住の用に供するために取得した場合の課税標準の特例(法73条の14第3項)について、その対象を定める施行令37条の18第1項も、床面積の下限が引き下げられて40平方メートル以上240平方メートル以下になりました。新築だけが動いたと理解していると、既存住宅の肢で旧下限のまま判断することになります。不動産取得税側は37条の16と37条の18の二か所が動いていると数えてください。耐震基準への適合要件など、この特例のその他の要件は改正されていません。控除額の年次区分を含む中身は不動産取得税の軽減にあります。
免税点は法律のほうで動いた
不動産取得税の免税点を定める地方税法73条の15の2も、令和8年法律第2号によって2026年4月1日から引き上げられました。ここで押さえておきたいのは金額そのものよりも階層です。床面積要件は施行令、免税点は法律で動いており、改正法令番号が別です。「地方税法施行令を確認したから税は大丈夫」という追い方では免税点を取りこぼします。改正前の金額(土地10万円、建築に係る家屋23万円、その他12万円)が書かれた教材は旧版だと判定できます。金額の内訳と、宅地評価土地の特例・住宅用土地の減額との関係は不動産取得税の軽減にあります。
税は毎年度改正されるので、法令リストを固定できない
以上をまとめると、税の改正はその年度に何が動いたかを毎年洗い直すしかないという性質を持ちます。他の科目であれば「主要法令はここ数年動いていない」という前提が置けますが、地方税法・地方税法施行令・租税特別措置法・印紙税法・登録免許税法はいずれも毎年度の税制改正で書き換わります。実際、令和8年度についても、地方税法の現行版は2026年7月31日施行で基準日を外しており、印紙税法・登録免許税法も基準日より後に複数の改正が施行済みです。現行版を引いた時点で外しているという状態が、税では標準的に起こります。
税・その他8問全体の中で改正論点にどれだけの配分を割くかという設計は税・その他の得点戦略で扱っています。改正で動いた数字は狙われやすい一方、税の1問に対する投資としては上限があるので、そちらと合わせて配分を決めてください。
法令上の制限の8問には、令和8年度の実体改正がない
この記事が法令上の制限のカテゴリに置かれている理由が、この節です。結論から書くと、法令上の制限で出題される6法令には、令和8年度固有の実体改正がありません。8問の内訳そのものは法令上の制限の出題数にあるので、ここでは改正の有無だけを扱います。
都市計画法・建築基準法・土地区画整理法
この三法は、令和8年法律第23号(都市再生特別措置法等の一部を改正する法律)によって改正されています。しかし施行日は2026年5月27日で、基準日より約2か月後です。第一段階の判定で範囲外になります。
さらに第二段階も通してあります。条単位で比較した結果、都市計画法は本則164条すべて同一、建築基準法は本則291条すべて同一、土地区画整理法は本則219条すべて同一でした。都市計画法については附則が1件追加されており、実体的な改正部分は「公布から6月を超えない範囲内において政令で定める日」からの施行とされているため、まだ動いていません。つまり範囲外であるうえに、そもそも本則が変わっていないという二重の理由で、この三法の記事は書き換え不要です。各法令の内容は都市計画法の全体像、建築基準法の要点、土地区画整理法の仕組みにあります。
都市計画法施行令は動いたが、開発許可の面積要件は無傷
政令のほうは動いています。都市計画法施行令には令和7年政令第205号(2025年7月1日)と令和8年政令第66号(2026年4月1日)の改正があり、後者は基準日以前なので範囲内です。
ただし変更されたのは21条の1条だけで、102条中101条は同一でした。21条26号は、国または地方公共団体が設置する建築物について開発許可を不要とする規定の除外リストで、そこにそれぞれ「乳児等通園支援事業」「オンライン診療受診施設」が追加されただけです。
したがって、開発許可の面積要件を定める施行令19条は無傷です。市街化区域1,000平方メートル、区域区分が定められていない都市計画区域および準都市計画区域3,000平方メートル、条例で300平方メートルまで引き下げ可能、三大都市圏の一定の区域500平方メートル、22条の2の1ヘクタールは、すべて従前どおりです。開発許可でもっとも出題される数字が動いていない以上、この分野の学習は前年度の教材のままで足ります。面積要件そのものの解説は開発許可の面積要件にあります。
盛土規制法・農地法・国土利用計画法
この三法についても、令和8年度固有の改正はありません。混同されやすいのは、いずれも数年前に大きな改正があったことです。
盛土規制法は、令和4年法律第55号により2023年5月26日に宅地造成等規制法から宅地造成及び特定盛土等規制法へと改組されました。宅地造成等工事規制区域に加えて特定盛土等規制区域が設けられ、法律名そのものが変わっています。これは令和5年度以降ずっと範囲内であって、令和8年度に新しく入った改正ではありません。制度の全体像は盛土規制法の要点、区域まわりの各論は造成宅地防災区域と特定盛土等規制区域にあります。
農地法についても同様で、3条の許可要件から下限面積要件(いわゆる50アール要件)が削除されたのは2023年4月1日です。3条・4条・5条の切り分けは農地法の許可で扱っています。国土利用計画法についても、事後届出・注視区域・監視区域の枠組みは動いていません。
拘禁刑への一本化は、法令上の制限の罰則にも一斉に及んでいる
科目横断でひとつだけ、法令上の制限側にも及んでいる改正があります。懲役・禁錮を拘禁刑に一本化した令和4年法律第68号による改正で、施行日は2025年6月1日です。基準日より前なので範囲内です。
この改正は特定の法律だけの話ではなく、罰則を持つ法令に一斉に及びました。実際に条文を引くと次のようになっています。
- 農地法64条 — 3条1項・4条1項・5条1項・18条1項の規定に違反した者は「三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金」。
- 国土利用計画法47条 — 23条1項・29条1項の届出をしなかった者等は「六月以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」。事前届出をめぐる罰則も同じ条文です。国土利用計画法の届出制度そのものは国土利用計画法の届出にあります。
- 宅地造成及び特定盛土等規制法55条1項 — 12条1項・16条1項等に違反して工事をしたときは「三年以下の拘禁刑又は千万円以下の罰金」。
- 宅地建物取引業法5条1項5号・18条1項6号 — 免許の基準・登録の基準における欠格事由が「拘禁刑以上の刑に処せられ」に置き換わっています。
つまり、罰則の条文を引いて「懲役」と書いてあれば、それは2025年5月31日以前の版ということです。個別の記事はそれぞれ自分の1条について注記していますが、横断で見ると同じ日付で一斉に動いた一つの改正です。施行日は2025年6月1日で統一して覚えてください。なお、拘禁刑への置き換えは刑名の変更であって、年数や罰金額は動いていません。数字を覚え直す必要はありません。
施行日が基準日より後の改正を、根拠をもって捨てる
改正対策で失点を増やすもうひとつの経路が、捨てるべき改正を拾ってしまうことです。「改正があった」という情報だけで教材を書き換えると、範囲外の内容を覚え込みます。ここでは、令和8年度において「捨ててよい」と確認できている法令を並べます。確認できているという点が重要で、施行日だけを見て捨てているわけではありません。
民法(令和8年法律第45号、2026年6月24日施行)
施行日が基準日より後なので、第一段階で範囲外です。そのうえで基準日版と施行後版を条単位で比較したところ、本則1,173条すべてに差分がありませんでした。新設も削除も本文変更もゼロです。
宅建で問われる範囲に限っても、危険負担(536条、および削除済みの旧534条・535条)、危険の移転(567条)、解除(541条・542条・543条・545条)を含めて一字も動いていません。範囲外であるうえに中身も同一という二重の理由で、民法の学習内容に影響はありません。債権法・物権法・相続法という系統別の改正内容そのものは権利関係の民法改正まとめが持っています。同記事も「民法の2026年改正は内容に影響しない」という結論を置いており、この記事と同じ判定です。
借地借家法(令和4年法律第48号、2026年5月21日施行)
こちらも施行日が基準日より後です。条単位の比較では、64条すべてで新設・削除がなく、本文が変わったのは61条のみでした。その61条も民事訴訟法第1編第8章の準用に関する手続規定で、秘匿決定関連の条項を準用対象から外す内容です。
存続期間・更新・対抗要件・定期借家・借賃増減請求といった実体規定は一切変わっていません。借地借家法は宅建の権利関係で毎年出題される分野なので、「改正があった」という情報だけで身構えると無駄が大きくなります。契約実務側から見た借地借家法の要点は賃貸借契約の注意点にあります。
不動産登記法(令和8年法律第46号、2026年6月24日施行)
施行日が基準日より後です。比較の結果、本則175条中で変更があったのは133条2項のみでした。筆界特定の申請通知の公示方法を、掲示から電子的閲覧措置の併用へ変更したもので、到達みなしの2週間という期間は不変です。
ここで注意したいのは、同じ不動産登記法が「動いた法令」と「動いていない法令」の両方に登場することです。76条の5の住所等変更登記の義務化は2026年4月1日施行で範囲内、令和8年法律第46号による133条2項の改正は2026年6月24日施行で範囲外です。法令単位ではなく条文単位で判定する必要があるという典型例になっています。
この節の判断が何に依っているか
以上の三法令について、「捨ててよい」ではなく「捨ててよいと確認できている」と書いているのは、判断の根拠が条単位の機械比較にあるからです。基準日版と施行後版の全文を取得し、条を単位に辞書化して、新設・削除・本文変更を出す。目視では確実に見落とします。次の節で、その手順を具体的に示します。
改正情報を自分で検証する手順
改正情報は、伝言のたびに精度が落ちます。「4月1日から改正」という一文が、公布日の話なのか施行日の話なのか、法律の話なのか政令の話なのか、本則の話なのか附則の話なのかは、伝言の途中で落ちます。一次情報にたどり着く手順を持っておくと、この記事の内容も自分で検算できます。
e-Gov 法令検索のAPIで基準日版を指定する
e-Gov 法令検索には、法令データを機械可読な形で返すAPIがあります。使うのは主に二つです。
https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_revisions/<law_id> は、その法令の全リビジョン(版)の一覧を返します。各リビジョンには amendment_enforcement_date(改正の施行日)が付いているので、この値が2026年4月1日以前で最も新しいものを選べば、それが令和8年度の基準日版です。
https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/<law_revision_id> は、そのリビジョンの全文を返します。取得した二つの版を条単位で比べれば、本則が動いたかどうかが確定します。
実際に踏む癖が四つある
第一に、law_data はパス形式でないと取れません。law_data?law_revision_id= のようにクエリ文字列で渡すと404が返ります。law_data/<id> と、パスの一部として渡してください。
第二に、法令名の検索は完全一致です。laws?law_title= で引くとき、通称では引けません。「盛土規制法」では0件で、「宅地造成及び特定盛土等規制法」でなければ引けません。
第三に、laws が返すのは現行版だけです。現行版が基準日版と一致するとは限りません。むしろ税法では一致しないほうが普通で、令和8年度について言えば地方税法・印紙税法・登録免許税法・消費者契約法はいずれも現行版が基準日より後の施行になっています。現行版で引いて満足すると、そこで外します。
第四に、同じ施行日のリビジョンが複数並ぶことがあります。改正法ごとに版が作られるため、複数の改正法が同じ日に施行されると、amendment_enforcement_date が同値のリビジョンが何本も返ってきます。実際、地方税法には2026年4月1日施行のリビジョンが6本あり、令和4年法律第1号によるものから令和8年法律第2号によるものまで並んでいます。この場合に取るべきなのは最も新しい改正法によるもの、つまり令和8年法律第2号の版です。ここを間違えると、施行日は基準日と一致しているのに条文が旧いという、いちばん気づきにくい外し方をします。現に、同じ2026年4月1日施行でも令和7年法律第87号による版を開くと、不動産取得税の免税点は改正前の土地10万円のままです。施行日が合っていることは、基準日版であることを保証しません。
本則と附則を分けて抽出する
条単位の比較で必ず踏むのが、附則の条が本則の同番号の条を上書きするという問題です。多くの法令は附則にも「第一条」「第二条」と番号を振っているため、条番号だけを鍵にして辞書化すると、あとから読んだ附則の条が本則の条を潰します。宅地建物取引業法であれば、11条・12条が附則の同番号の条に置き換わり、その2条だけ差分が出たように見えます。
対処は単純で、SupplProvision タグの配下を除外してから条を抽出することです。この記事で「本則1,173条すべてに差分なし」「本則86条に差分なし」と書けているのは、この分離を通したうえでの比較結果です。逆に言えば、この分離をしていない比較結果は信用できません。
APIを使わない場合の読み方
コマンドを叩かない場合でも、e-Gov 法令検索の画面から同じ判定はできます。法令を開いたときに表示される版の情報と、沿革のページに並ぶ施行日の一覧を見てください。確認するのは次の三点です。
第一に、いま画面に出ている条文がいつ施行された版か。第二に、その施行日が2026年4月1日以前かどうか。第三に、基準日より後の版がある場合、その改正がどの条に及んでいるか。三点目については、改正法の新旧対照表が官報や所管省庁のサイトに出ていることが多く、条番号だけでも拾えれば「自分の学習範囲に当たるかどうか」は判定できます。
この手順は、教材や解説サイトの記述と自分の理解が食い違ったときに効きます。どちらが正しいかを議論するのではなく、基準日版の条文を開いて終わらせるという処理ができるようになります。
試験での出題ポイント
改正論点は「新設事項を問う肢」では効かない
改正が出題に効く場面を誤解しないでください。新設された事項をそのまま問う肢は、実はそれほど怖くありません。知らなければ解けませんが、知っていれば素直に解けます。
改正が本当に効くのは、旧知識のまま解くと自信を持って誤答する肢です。改正前の条文で考えて正しい結論にたどり着き、その結論が現在は誤りである、という形です。本人には迷いが生まれないので、見直しでも拾えません。令和8年度で言えば、区分所有法の決議を総数で計算する、新築住宅の床面積要件を50平方メートル以上で判断する、区分所有建物の説明事項を9項目で数える、といった処理がこれに当たります。
作られ方のパターン
改正論点の肢は、次のような形で作られます。
公布日と施行日を入れ替える。「令和4年法律第68号により、懲役は拘禁刑に改められた。この改正は2022年6月17日から施行されている」といった形です。2022年6月17日は公布日で、施行は2025年6月1日です。日付を出してくる肢は、それが公布日なのか施行日なのかを最初に疑ってください。
基準日より後の改正を反映済みとして書く。都市計画法や民法について、2026年5月27日・6月24日施行の改正内容を前提とする肢がこれに当たります。もっとも、これらの改正は本則を動かしていないため、実際には出題のしようがありません。逆に言えば「都市計画法が令和8年に改正されたので◯◯が変わった」という記述は、それ自体が誤りです。
改正されていない法令を改正されたことにする。「令和8年4月1日施行の改正により、宅地建物取引業法35条の重要事項説明の内容が変更された」という形です。法律の本則は動いていないので誤りですが、「改正があったらしい」という記憶だけがあると引っかかります。
号数の繰下げを利用して条文番号をずらす。施行規則16条の2の9号と10号の入れ替わりを使う形です。号数まで含めて出題されることはまれですが、条文を引いて確認する場面では確実に効きます。
法律本体の改正と府省令の改正を混同させる。「宅地建物取引業法が改正され、区分所有建物の説明事項が10項目になった」という肢は、結論だけ見ると正しく見えます。しかし10項目にしたのは施行規則であって法律ではありません。この種の肢は、正誤の判定としては微妙なので単独では出しにくいものの、階層を意識していないと解説を読んでも腑に落ちません。
旧数字を混ぜる。50平方メートル、280平方メートル、9項目、71条、4分の3といった数字を、正しい文脈に紛れ込ませる形です。改正で動いた数字は、動く前の数字とセットで狙われます。
この種の「作られ方」を横断的に集めたものは引っかけ表現のパターンにあります。改正論点に限らず、肢の作り方には型があるので、そちらと合わせて読むと処理が速くなります。
改正対策にどこまで時間を割くか
投資判断としては、改正論点は薄く広く、深追いしないが基本です。理由は二つあります。
第一に、改正が影響しうる範囲は、この記事で確定させた4件の内側に限られます。区分所有法のように分野ごと書き換わった年は範囲が広くなりますが、それでも50問全体から見れば局所です。動いていない法令が圧倒的に多いのだから、投資の配分もそれに従うのが筋です。第二に、改正対策の本質は新しい知識を足すことではなく、古い知識を捨てることにあります。捨てる作業は、対象さえ特定できれば時間がかかりません。この記事の「動いた4件」を頭に入れておけば、問題演習中に旧数字に当たったときその場で処理できます。
合格点との関係で言えば、改正論点だけで合否が決まることはまずありません。ただし改正で正誤が反転する肢を落とすと、本来取れるはずの1問を失います。合格点の水準から逆算した配分の考え方は合格点の推移と令和8年度の見通しにあります。直前期に改正と統計をどう詰めるかという時期別の運用は直前期の詰め方で扱っています。
覚え方・整理の仕方
年表で覚えない
改正を年表で覚えようとすると失敗します。年表は年度が変わるたびに伸び続け、しかも古い項目が消えないので、記憶量だけが増えます。宅建で必要なのは基準日の時点でどうなっているかであって、いつ変わったかの履歴ではありません。
代わりに、三つの箱で持ってください。
箱1 — 基準日で切る
一つ目の箱には、判定の手順だけを入れます。「令和8年度の基準日は2026年4月1日」「施行日が基準日以前なら範囲内」「公布日は使わない」「施行されていても本則が動いたとは限らない」。この四つです。
改正の情報に触れたら、まずこの箱を通します。日付が出てこない改正情報は、その時点で判定不能なので、施行日を調べるまで教材に反映しません。
箱2 — 動いた4件を、科目ではなく階層で並べる
二つ目の箱には、令和8年度に実体改正が入った4件を入れます。並べる軸は科目ではなく法令の階層にしてください。
法律の階層で動いたのが、区分所有法(令和7年法律第47号)、地方税法の免税点(令和8年法律第2号)、不動産登記法76条の5(令和3年法律第24号)。政令の階層で動いたのが、地方税法施行令の床面積要件(令和8年政令第83号。附則12条・37条の16・37条の18の三か所)。府省令の階層で動いたのが、宅建業法施行規則16条の2第9号(令和7年内閣府・国土交通省令第2号)。
階層で並べる利点は、探しに行く場所が決まることです。「宅建業法の改正を確認する」と考えると法律を見て終わりますが、「府省令が動いた」と覚えていれば施行規則を開きます。
箱3 — 動いていない7法令を、確認済みとして持つ
三つ目の箱には、「直さなくてよいと確認できている」法令を入れます。民法、都市計画法、建築基準法、土地区画整理法、不動産登記法の本則(76条の5を除く)、借地借家法、宅地建物取引業法の本体。この7つです。
この箱の役割は、不安を打ち消すことです。改正の話題を見かけるたびに教材を疑っていては勉強が進みません。7法令については条単位の比較まで済んでいるので、疑う対象から外して構いません。
旧数字は捨てずに「検出語」として残す
改正対策で意外に効くのが、古い数字をあえて覚えておくことです。捨てるのではなく、教材や過去問を判定するためのセンサーとして残します。
検出語として使えるのは次の五つです。「280平方メートル」(新築住宅の床面積要件の旧上限)、「50平方メートル以上」(同じく旧下限)、「9項目」(区分所有建物の説明事項)、「71条」(区分所有法の過料)、「総数の4分の3」(大規模滅失の復旧決議)。
ただし、検出語は単語だけで判定してはいけません。とくに床面積の二つは、いまの条文にもそのまま残っています。50平方メートルは、地方税法施行令附則12条1項8号が、特別区の区域内の特定都市再生緊急整備地域にあって貸家の用以外に供される部分について定める下限です。280平方メートルも、同条7項が市街地再開発事業の施行に伴い与えられた家屋について定める上限として現に生きています。検出語が引っかかったら、その数字が新築住宅の減額措置の要件として書かれているかを必ず確認してください。文脈まで一致して初めて、その教材は令和8年度に対応していないと判定できます。
同じ注意は「総数の4分の3」にも要ります。改正後も62条2項は、耐震・防火の基準に適合しない場合など5つの類型について建替え決議の5分の4を4分の3に緩めており、62条1項が総数基準である以上、この4分の3も総数基準です。つまり「総数の4分の3」という言い回し自体は現行法にも存在します。旧版の徴候になるのは、それが大規模滅失の復旧決議について書かれているときだけです。
「71条」も同じで、条番号そのものが消えたわけではありません。改正後の71条は団地内建物敷地売却決議の規定として現に使われており、団地の話で71条が出てくるぶんには正しい引用です。旧版の徴候になるのは、71条を過料の条として引いているときだけです。条番号が空くのではなく別の内容で埋め直される、というのは条文の改正では珍しくないので、番号だけを見て判定しないでください。
五つのうち文脈を問わず使えるのは「9項目」だけです。区分所有建物の追加説明事項が9項目である、という記述には改正後の居場所がありません。教材が改正に対応しているかを店頭で判定する手順は宅建のテキストの選び方にあります。上の検出語を索引で引き、それぞれ文脈まで確認すれば、数分で判定できます。
過去問に当たったときの処理手順を固定する
過去問演習中に改正論点に当たったとき、毎回考え込むのは非効率です。処理手順を固定してください。
第一に、その肢が改正の影響を受けるかを判定します。上の検出語に当たるか、動いた4件のいずれかに関係するかで足ります。第二に、影響を受ける場合は現在の条文でどうなるかを確認します。解説が古い場合があるので、条文まで戻ります。第三に、元の肢は解き直さず、現在の条文で作り直した肢として記録します。改正前の肢をそのまま繰り返し解くと、旧知識が強化されるだけです。
理解度チェッククイズ
問1 令和8年度の宅地建物取引士資格試験では、2026年6月24日に施行された民法の改正内容が出題範囲に含まれる。
答え:×。宅建試験は当該年度の4月1日現在施行されている法令から出題されるため、令和8年度の基準日は2026年4月1日です。2026年6月24日施行の改正(令和8年法律第45号)は基準日より後なので、出題範囲に入りません。加えて、基準日版と施行後版を条単位で比較した結果、民法の本則1,173条すべてに差分がなく、新設・削除・本文変更はゼロでした。危険負担(536条)、危険の移転(567条)、解除(541条以下)も一字も動いていません。したがってこの肢は、範囲外であることと本則が同一であることの二重の理由で誤りです。改正のニュースを見たら、まず施行日を基準日と比べる習慣をつけてください。
問2 令和8年4月1日に宅地建物取引業法の改正法が施行されたことにより、同法35条の重要事項説明に関する規定が変更されたため、条文を確認し直す必要がある。
答え:×。2026年4月1日に宅地建物取引業法を改正する法律(令和7年法律第68号)が施行されたことは事実ですが、条単位で比較すると第1条から第86条まで、および別表に差分がなく、付加されたのは附則だけでした。35条も、免許の基準を定める5条も、宅建士の登録を定める18条も、法律の条文としては動いていません。同じ2026年4月1日に実体改正が入ったのは、法律ではなく宅地建物取引業法施行規則16条の2(令和7年内閣府・国土交通省令第2号)で、区分所有建物について説明すべき事項に第9号(第三者管理方式の開示)が新設され、9項目から10項目になりました。「改正法が施行された」ことと「本則の条文が動いた」ことは別であり、階層(法律か府省令か)も区別する必要があります。
問3 令和8年度の試験では、新築住宅に係る固定資産税の減額措置について、床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下であることが要件となる。
答え:×。地方税法施行令附則12条が令和8年政令第83号により改正され、2026年4月1日から床面積要件は「50平方メートル以上280平方メートル以下」から「40平方メートル以上240平方メートル以下」に変わりました。施行日が基準日と同日なので範囲内であり、令和8年度は新しい数字で解答します。なお、下限の40平方メートルには例外があり、同条1項8号は、サービス付き高齢者向け住宅である貸家の用に供される部分は30平方メートル、特別区の区域内の特定都市再生緊急整備地域にあって貸家の用以外に供される部分は50平方メートルと定めています。したがって「一律40平方メートル」ではなく「原則40平方メートル」と押さえてください。減額対象となる床面積が120平方メートルまでという上限は、この改正で動いていません。
問4 建替え決議は、令和7年法律第47号による区分所有法の改正により、出席した区分所有者およびその議決権の各5分の4以上の多数で決することとされた。
答え:×。改正により決議要件の分母が総数から出席者へ変わったのは事実ですが、すべての決議がそうなったわけではありません。建替え決議を定める62条1項は「区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各五分の四以上の多数で」と書かれており、総数基準のままです。定足数の規定も置かれていません。一方、共用部分の変更(17条1項)や規約の設定・変更・廃止(31条1項)は、区分所有者の過半数であって議決権の過半数を有するものの出席という定足数のうえで、出席者を分母とする多数決要件に改められています。「改正で全部が出席者基準になった」と丸めると、この一点で誤ります。段ごとの割合と条文の対応は区分所有法の特別決議で確認してください。
問5 都市計画法施行令の改正により、市街化区域内で開発許可が不要となる開発行為の規模の要件が変更された。
答え:×。都市計画法施行令には令和7年政令第205号(2025年7月1日)と令和8年政令第66号(2026年4月1日)の改正があり、後者は基準日以前なので範囲内です。しかし、変更されたのは21条の1条だけで、102条中101条は同一でした。21条26号は国または地方公共団体が設置する建築物を許可不要とする規定の除外リストで、項目が追加されただけです。開発許可の面積要件を定める施行令19条は無傷であり、市街化区域1,000平方メートル、区域区分が定められていない都市計画区域および準都市計画区域3,000平方メートル、条例で300平方メートルまでの引下げ、三大都市圏の一定の区域500平方メートル、22条の2の1ヘクタールは従前どおりです。「政令が改正された」という事実だけで面積要件が動いたと判断してはいけません。
まとめと、この記事の更新時点
令和8年度(基準日2026年4月1日)について、確定していることを再掲します。
- 実体改正が入ったのは4件。区分所有法(令和7年法律第47号)、宅地建物取引業法施行規則16条の2第9号の新設(令和7年内閣府・国土交通省令第2号)、令和8年度の地方税改正(令和8年法律第2号および令和8年政令第83号)、不動産登記法76条の5の新設(令和3年法律第24号)。いずれも施行日は2026年4月1日です。
- 宅地建物取引業法の本体は動いていない。令和7年法律第68号は施行されているが、本則86条に差分がなく附則の付加のみ。
- 法令上の制限の6法令に、令和8年度固有の実体改正はない。都市計画法・建築基準法・土地区画整理法の改正法は2026年5月27日施行で範囲外、かつ本則も同一。都市計画法施行令の変更は21条26号のみで、開発許可の面積要件は無傷。
- 民法・借地借家法・不動産登記法本則は、条単位の比較で影響なしと確認済み。捨ててよいのではなく、捨ててよいと確認できています。
- 拘禁刑への一本化は2025年6月1日施行で範囲内。宅建業法5条・18条だけでなく、農地法64条、国土利用計画法47条、盛土規制法55条など各法の罰則条文に一斉に及んでいます。
出典は、e-Gov 法令検索の各法令の基準日版リビジョン(amendment_enforcement_date が2026年4月1日以前で最新のもの)です。条文の引用はすべてこの版から取っています。この記事は令和8年度の基準日を前提に書かれており、令和9年度以降にはそのまま使えません。
次年度に向けて、いつ何を確認し直すか
この記事は毎年更新する前提のハブです。次年度(基準日2027年4月1日)に向けた更新の設計を書いておきます。
3月下旬から4月上旬に、まず税法を洗い直します。地方税法・地方税法施行令・租税特別措置法・印紙税法・登録免許税法は、年度替わりで必ず何かが動きます。法令リストを固定できないのはこのためで、「去年のリストを見て終わり」という更新はできません。law_revisions を引いて、amendment_enforcement_date が新しい基準日以前で最新のリビジョンを取り直すところから始めます。
次に、前年度に「範囲外」として捨てた改正を拾い直します。令和8年度で範囲外だった令和8年法律第23号(2026年5月27日施行、都市計画法・建築基準法・土地区画整理法)と令和8年法律第45号・第46号(2026年6月24日施行、民法・不動産登記法)は、令和9年度では範囲内になります。ただし本則が動いていない部分については、範囲内になっても書き換える内容がありません。範囲に入ったことと、覚え直しが必要なことは別です。ここでも条単位の比較を通してから判断します。
最後に、前年度の「動いた4件」を既往分に移します。令和9年度において区分所有法の改正は「新しい改正」ではなくなりますが、範囲内であることは変わりません。新規の欄から既往の欄へ移すだけで、削除はしません。
なお、統計は法改正とは別枠です。問48で問われる新設住宅着工戸数・地価公示・宅建業者数などの数値は、法令の改正とは無関係に毎年入れ替わります。基準日の考え方も異なるので、この記事では扱いません。確定値と出典は令和8年度の統計数値にまとめてあります。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、ここで挙げた改正論点について、改正前の記述と改正後の条文を対比する形式の演習を用意しています。旧数字が残っていないかの点検にお使いください。
都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。