拘禁刑とは?宅建業法の欠格事由への影響を解説
2025年6月1日施行の拘禁刑への一本化を条文から解説。宅建業法5条1項5号・18条1項6号の文言変更、人の資格に関する経過措置、罰金刑で欠格になる罪名、執行猶予の扱いまで整理します。
目次
本記事の役割 — この記事は拘禁刑への一本化と、それが宅地建物取引業法の欠格事由に与えた影響に絞って扱います。欠格事由そのものの全体像は宅建業の免許の欠格事由|5条1項を系統別に整理、免許制度の枠組みは宅建業の免許制度を参照してください。
2025年(令和7年)6月1日、改正刑法が施行され、懲役と禁錮が廃止されて拘禁刑に一本化されました。刑法は明治40年法律第45号として明治40年4月24日に公布された法律ですから、100年以上にわたって維持されてきた自由刑の二本立てが、ここで解消されたことになります。
この改正は刑事政策の話であって、宅建の学習には関係ないように見えます。ところが実際には、宅地建物取引業法の欠格事由の条文がまるごと書き換わりました。5条1項5号の免許の基準も、18条1項6号の宅建士の登録も、「禁錮以上の刑」という文言が「拘禁刑以上の刑」に改まっています。改正前に作られた教材やウェブ記事には旧文言がそのまま残っているものが多く、条文の引用として現行法と食い違う状態になっています。
もうひとつ、この改正には誤解されやすい経過措置があります。文言が「拘禁刑以上」に変わったのだから、過去に懲役刑を受けた者は「拘禁刑」に処せられていない以上、欠格事由から外れるのではないか。そう読みたくなりますが、そうはなりません。整理法に置かれた条文が、そう読めないように手当てしています。以下、改正の中身、条文がどこでどう変わったか、経過措置がどういう建付けか、の順に見ていきます。
懲役と禁錮という二本立てはなぜ解消されたか
改正前の自由刑は二種類あった
改正前の刑法は、身体の自由を奪う刑(自由刑)として懲役と禁錮の二つを置いていました。
懲役は、刑事施設に拘置したうえで所定の作業を行わせる刑でした。作業が刑の内容そのものに組み込まれており、受刑者には作業に従事する義務がありました。これに対して禁錮は、刑事施設に拘置するだけで作業を義務づけない刑でした。刑法9条が定める主刑の順序では懲役が禁錮より上位に置かれており、禁錮のほうが軽い刑という位置づけです。
禁錮は主として過失犯や、動機に酌むべき事情があるとされた犯罪に科される刑として設計されていました。作業を強制しないことに、刑としての性格の違いを持たせていたわけです。
区別の意義が実務上失われていた
ところが運用の実態は、この設計から離れていきました。禁錮受刑者の多くが、義務ではないにもかかわらず自ら申し出て作業に従事していたからです。作業をしないまま長期間拘置されることは、生活の張りという意味でも、出所後の生活設計という意味でも、受刑者にとって望ましいものではありませんでした。
結果として、懲役と禁錮の違いは条文上のものにとどまり、施設内での処遇の実質はほとんど変わらなくなっていました。二つの刑を維持する立法上の必要が薄れていた、というのが一本化の背景です。
拘禁刑は「作業か指導か」を選べる刑になった
改正後の刑法12条は、拘禁刑を次のように定めています。1項が「拘禁刑は、無期及び有期とし、有期拘禁刑は、一月以上二十年以下とする」、2項が「拘禁刑は、刑事施設に拘置する」、そして3項が「拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる」です。
3項の書きぶりに注目してください。「作業を行わせる」ではなく「行わせ、又は必要な指導を行うことができる」です。作業が刑の必須の内容から外れ、改善更生という目的のために作業と指導を組み合わせて選べる建付けに変わりました。高齢受刑者に無理な作業を課すより教育や指導に時間を充てたほうがよい場面、若年受刑者に学習支援を行ったほうがよい場面など、対象者に応じた処遇を組めるようにする趣旨です。
なお、旧13条(禁錮)は削除され、条文としては空になっています。また拘留についても16条2項に同様の規定が置かれ、改善更生を図るため必要な作業を行わせ、または必要な指導を行うことができるとされました。
この節の要点
- 改正前は、作業義務のある懲役と作業義務のない禁錮の二本立てだった。
- 禁錮受刑者の多くが希望して作業に従事しており、区別の実質が失われていた。
- 拘禁刑では作業は必須要素ではなく、改善更生のために作業または指導を行うことができる(刑法12条3項)。
刑の種類と重さの順序
主刑は五種類、付加刑は没収
「拘禁刑以上の刑」という文言の外延を確定させるには、刑の種類と順序を条文で押さえる必要があります。
刑法9条は「死刑、拘禁刑、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする」と定めます。そして10条1項が「主刑の軽重は、前条に規定する順序による」と定めています。9条に並んでいる順序が、そのまま重さの順序だという建付けです。
したがって重い順に、死刑、拘禁刑、罰金、拘留、科料となります。「拘禁刑以上の刑」に含まれるのは、死刑と拘禁刑の二つだけです。罰金、拘留、科料は含まれません。
罰金・拘留・科料の中身
区別を確かなものにするため、下位三つの内容も条文で確認しておきます。罰金は1万円以上とされ、これを減軽する場合は1万円未満に下げることができます(15条)。拘留は1日以上30日未満で、刑事施設に拘置します(16条1項)。科料は千円以上1万円未満です(17条)。
拘留は身体を拘束する刑でありながら、順序としては罰金より下位に置かれています。「身体を拘束するかどうか」と「刑としての重さ」が一致していない点は、混同のもとになるので注意してください。拘留に処せられても、それだけでは宅建業法の欠格事由に該当しません。
この節の要点
- 順序は死刑、拘禁刑、罰金、拘留、科料(刑法9条、10条1項)。
- 「拘禁刑以上」=死刑と拘禁刑の二つ。
- 拘留は身体拘束を伴うが罰金より下位。欠格事由には当たらない。
宅建業法のどこが書き換わったか
免許の基準は5条1項5号
宅地建物取引業の免許の基準を定める宅建業法5条1項は、免許をしてはならない場合を各号に列挙しています。その5号が、現在は次のように定めています。
拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者。
改正前は「禁錮以上の刑に処せられ」でした。文言はこの一箇所が置き換わっただけで、期間の5年も、起算点の書きぶりも変わっていません。
この改正を行ったのは刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)で、宅建業法についての施行日は2025年6月1日です。刑法本体を改正した刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)は2022年6月17日に公布され、こちらも同じ日に施行されました。公布から施行まで約3年の準備期間が置かれた改正です。
宅建士の登録は18条1項6号
宅地建物取引士の登録の欠格事由を定める18条1項でも、同じ置き換えが行われています。その6号が「拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者」です。
免許の5条1項5号と、登録の18条1項6号。号数は違いますが文言は同一です。免許制度と登録制度の対応関係は宅建業の免許制度を横断整理、登録手続の全体像は宅建士の登録と宅建士証にまとめています。
法人の役員と政令使用人にも及ぶ
法人が免許を受ける場合、その役員または政令で定める使用人のうちに5条1項1号から10号までのいずれかに該当する者があるときは、法人自身が免許を受けられません(5条1項12号)。個人の場合も、政令で定める使用人に該当者があれば同様です(同項13号)。
ここでいう役員には、業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者に加えて、相談役、顧問その他いかなる名称を有するかを問わず、法人に対しこれらの者と同等以上の支配力を有すると認められる者が含まれます(5条1項2号括弧書きの定義)。名称ではなく支配力の実質で判断する定義になっており、非常勤かどうかで区別する規定は置かれていません。
条文の文言が変わっただけで範囲は変わっていない
大事な確認をしておきます。この改正で欠格となる刑の範囲は実質的に変わっていません。
改正前の「禁錮以上の刑」は、禁錮と懲役と死刑を指していました。改正後の「拘禁刑以上の刑」は、拘禁刑と死刑を指します。懲役と禁錮が拘禁刑という一つの刑に統合された結果として、指し示す対象は同じままです。欠格期間の5年も動いていません。刑法側の刑の種類が整理されたことに合わせて、それを引用している宅建業法の文言を機械的に置き換えた、という性格の改正です。
近年の宅建業法改正の流れは宅建業法の改正ポイント、権利関係側の改正は権利関係の民法改正まとめで扱っています。
この節の要点
- 免許は5条1項5号、宅建士の登録は18条1項6号。文言は同一。
- 改正法は令和4年法律第68号、宅建業法についての施行日は2025年6月1日。
- 法人は役員・政令使用人に該当者があれば免許を受けられない(5条1項12号)。役員は支配力の実質で判断する。
経過措置は「みなす」で作られている
素朴に読むと生じる疑問
ここがこの改正で最も誤解を招くところです。
条文は「拘禁刑以上の刑に処せられ」と書かれています。では、2025年6月1日より前に懲役の刑に処せられた者はどうなるのでしょうか。その人は「拘禁刑」に処せられたわけではありません。文言を素直に当てはめると、5条1項5号にも18条1項6号にも該当しないことになりそうです。改正によって欠格事由から外れてしまうのか、という疑問です。
結論は外れません。そう読めないように、法律が明示的に手当てしています。
整理法443条1項が置いた「みなし」規定
根拠は、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)の443条(人の資格に関する経過措置)です。その1項は次のように定めています。
懲役、禁錮又は旧拘留に処せられた者に係る人の資格に関する法令の規定の適用については、無期の懲役又は禁錮に処せられた者はそれぞれ無期拘禁刑に処せられた者と、有期の懲役又は禁錮に処せられた者はそれぞれ刑期を同じくする有期拘禁刑に処せられた者と、旧拘留に処せられた者は拘留に処せられた者とみなす。
読み解きます。まず適用場面が「人の資格に関する法令の規定の適用については」と限定されています。宅建業の免許の基準や宅建士の登録の欠格事由は、まさにこの「人の資格に関する法令の規定」に当たります。
そのうえで、過去に懲役または禁錮に処せられた者を、拘禁刑に処せられた者とみなすと定めています。無期の懲役・禁錮なら無期拘禁刑、有期の懲役・禁錮なら刑期を同じくする有期拘禁刑です。みなされる以上、5条1項5号の「拘禁刑以上の刑に処せられ」という要件を満たすことになります。
つまり、2025年6月1日より前に懲役2年の刑を受けた者は、いまも「有期拘禁刑2年に処せられた者」として扱われ、執行を終わった日から5年を経過するまで免許を受けられません。改正の前後で結論はまったく変わりません。
「なお従前の例による」型の条文との違い
法改正の経過措置には、「なお従前の例による」という書き方がよく使われます。同じ整理法の中にも、441条1項が施行前にした行為の処罰について、442条が懲役・禁錮・旧拘留の確定裁判の効力とその執行について、それぞれ「なお従前の例による」と定めています。
ただし、資格制限について働いているのは443条の「みなす」規定であって、「なお従前の例による」ではありません。この違いは実質的です。「従前の例による」は旧法の規定をそのまま適用する処理ですが、「みなす」は新法の要件に当てはめ直す処理です。宅建業法5条1項5号は現行の「拘禁刑以上の刑」という条文がそのまま適用され、過去の懲役刑がその要件を満たすものとして読み替えられる。この構造で覚えておいてください。
なお443条2項は逆向きの読み替えを定めています。他の法律の規定によりなお従前の例によることとされる旧い資格制限規定を適用する場面では、拘禁刑に処せられた者を禁錮に処せられた者とみなす、という内容です。新旧どちらの方向にも橋が架けられている、と理解すれば十分です。
この節の要点
- 根拠は整理法443条1項。過去の懲役・禁錮は、人の資格に関する法令の適用上、拘禁刑に処せられたものとみなされる。
- したがって改正によって欠格事由から外れる者は生じない。
- 資格制限に働くのは「みなす」規定であって「なお従前の例による」ではない。
罰金刑で欠格になるのは限定列挙された罪だけ
拘禁刑以上との決定的な違い
拘禁刑以上の刑は、どんな犯罪によるものであっても欠格事由になります。条文が罪名を限定していないからです。
これに対して罰金刑は違います。5条1項6号は、罰金刑で欠格事由になる場合を次のように限定しています。すなわち、この法律(宅建業法)もしくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したことにより、または刑法204条、206条、208条、208条の2、222条もしくは247条の罪もしくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者、です。宅建士の登録側は18条1項7号に同じ内容が置かれています。
なお、暴力団対策法については括弧書きで一部の規定が除かれています(32条の3第7項および32条の11第1項)。
六つの刑法犯を条文で確認する
列挙されている刑法の条番号を、条文の見出しで確認します。204条が傷害、206条が現場助勢、208条が暴行、208条の2が凶器準備集合及び結集、222条が脅迫、247条が背任です。
前の五つは暴力に関わる罪でひとまとまりになっており、最後の247条の背任だけが財産犯です。他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図りまたは本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加える罪です。他人の財産を預かって取引を仲介する宅建業の性格上、背任がここに入っているのは筋が通っています。
詐欺と窃盗が入っていないことの意味
よく問われるのが、詐欺罪(刑法246条)や窃盗罪(同235条)の扱いです。これらは列挙に入っていません。したがって詐欺罪で罰金刑に処せられても、それだけでは5条1項6号の欠格事由に該当しません。
ただし、ここで止めると誤ります。詐欺罪の法定刑には罰金刑がなく、拘禁刑が科されます。そして拘禁刑以上の刑であれば、罪名を問わず5条1項5号に該当します。「詐欺は罰金の列挙に入っていないから欠格にならない」という結論は誤りで、正しくは「罰金刑で欠格になる罪の列挙には入っていないが、拘禁刑に処せられれば5号で欠格になる」です。
宅建業法違反の罰則そのものは宅建業法の罰則一覧、免許取消しなどの監督処分は監督処分の種類と違いにまとめています。監督処分による免許取消しは、5条1項2号という別の号で5年の欠格事由になります。
この節の要点
- 拘禁刑以上は罪名を問わず欠格。罰金刑は限定列挙された罪のみ。
- 列挙は、宅建業法違反、暴力団対策法違反、刑法204条・206条・208条・208条の2・222条・247条、暴力行為等処罰法。
- 詐欺・窃盗は罰金の列挙外だが、拘禁刑に処せられれば5号で欠格になる。
5年の起算点と執行猶予の扱い
「執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日」から
条文は、5年の起算点を「その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日」と定めています。判決が確定した日でも、刑期が始まった日でもありません。
「執行を終わり」は、刑期を満了した場合です。仮釈放された場合は、仮釈放の日ではなく残刑期間が満了した日が起算点になります。「執行を受けることがなくなつた」は、刑の時効が完成した場合や、恩赦によって刑の執行の免除を受けた場合などを指します。
いずれにせよ、刑の執行が現実に終わってから、さらに5年が必要です。判決確定から5年ではないという点は、選択肢の作り方として狙われます。宅建業法に出てくる期間の数字をまとめて整理したい場合は宅建業法の数字まとめを参照してください。
執行猶予は猶予期間の満了で直ちに解ける
執行猶予付きの判決を受けた場合の扱いは、この論点の中でも最重要です。
刑法25条1項は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の言渡しを受けたときに、情状により裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができると定めます。そして27条1項が決定的です。「刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。」
刑の言渡しそのものが効力を失うのですから、その人はもはや「拘禁刑以上の刑に処せられ」た者ではなくなります。したがって、猶予期間が満了した時点で直ちに欠格事由から外れます。そこからさらに5年を待つ必要はありません。
ここが最も出題される箇所です。「執行猶予期間の満了後、さらに5年を経過しなければ免許を受けられない」という選択肢は誤りになります。逆に、猶予期間が満了する前は刑の言渡しが効力を保っているので、その間は欠格事由に該当します。猶予されているのは刑の執行であって、言渡しではないからです。
なお27条2項以下には、猶予期間内に更に犯した罪について公訴が提起されている場合に言渡しの効力が一定期間続くという例外が置かれています。試験で正面から問われる場面は考えにくいものの、27条1項が無条件の規定ではないことは頭の隅に置いておいてください。
刑の消滅(10年)と混同しない
似た規定として刑法34条の2があります。拘禁刑以上の刑の執行を終わりまたはその執行の免除を得た者が、罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したときは、刑の言渡しは効力を失う、というものです。罰金以下の刑については5年です。
宅建業法の欠格期間の5年と、刑法34条の2の10年は別の制度です。宅建業法が求めているのは執行終了から5年の経過であって、刑の言渡しが効力を失うことではありません。数字が近いので混線しやすい箇所です。「宅建業法の5年」と「刑法の10年」は別物と切り分けて覚えてください。
この節の要点
- 起算点は執行終了日または執行を受けることがなくなった日。判決確定日ではない。
- 執行猶予は猶予期間の満了で刑の言渡しが効力を失い(刑法27条1項)、直ちに欠格でなくなる。猶予期間中は欠格。
- 刑法34条の2の10年は別制度。宅建業法の5年と混同しない。
すでに免許や登録を持っている者が該当したらどうなるか
免許は必要的に取り消される
ここまでは、これから免許や登録を受けようとする者の話でした。では、すでに免許を受けている宅建業者が、営業中に拘禁刑以上の刑に処せられたらどうなるのでしょうか。
宅建業法66条1項1号が答えを置いています。国土交通大臣または都道府県知事は、その免許を受けた宅建業者が5条1項1号、5号から7号まで、10号または14号のいずれかに該当するに至ったときは、当該免許を取り消さなければならない、と定めています。「取り消すことができる」ではなく「取り消さなければならない」ですから、裁量の余地のない必要的取消しです。
列挙されている号を確認してください。1号が破産、5号が拘禁刑以上の刑、6号が限定列挙された罪による罰金刑、7号が暴力団員等、10号が心身の故障、14号が暴力団員等による事業活動の支配です。拘禁刑以上の刑に処せられることは、免許を受けられない事由であると同時に、すでに受けている免許を失う事由でもあります。
法人の場合も同じ構造です。役員または政令で定める使用人のうちに5条1項1号から7号までまたは10号に該当する者があるに至ったときは、法人の免許が取り消されます(66条1項3号)。個人で政令使用人に該当者が生じた場合も同様です(同項4号)。監督処分の全体像は監督処分の種類と違いで扱っています。
登録も必要的に消除される
宅建士側も対応する規定があります。都道府県知事は、その登録を受けている宅建士が18条1項1号から8号までまたは12号のいずれかに該当するに至ったときは、当該登録を消除しなければならない(68条の2第1項1号)。拘禁刑以上の刑は18条1項6号ですから、この範囲に含まれます。宅建士証の交付を受けていない登録者についても、同じ扱いです(同条2項1号)。
届け出るのは本人
該当したことを行政に知らせる義務も条文にあります。18条1項の登録を受けている者が同項1号から8号までのいずれかに該当するに至った場合、その旨を届け出るのは本人であり、期限は該当することとなった日から30日以内、届出先は登録をしている都道府県知事です(21条2号)。
拘禁刑以上の刑に処せられた本人が、自分で登録の失格を届け出る。仕組みとしては奇妙に見えますが、条文はそうなっています。届出義務者が誰かを問う出題は定番なので、破産も、拘禁刑も、罰金刑も、暴力団員等に該当するに至った場合も、届け出るのは本人とまとめて覚えてください。なお12号の心身の故障の場合だけは、本人またはその法定代理人もしくは同居の親族が届け出ます(21条3号)。登録手続の全体像は宅建士の登録と宅建士証にあります。
この節の要点
- 拘禁刑以上に該当すれば、免許は必要的に取り消され(66条1項1号)、登録は必要的に消除される(68条の2第1項1号)。
- 法人は役員・政令使用人の該当でも免許を取り消される(66条1項3号)。
- 登録者が18条1項1号から8号に該当した場合の届出義務者は本人、期限は30日以内(21条2号)。
欠格事由の条文は改正で動いてきた
拘禁刑への一本化は、宅建業法の欠格事由が改正で動いた最新の例ですが、初めての例ではありません。この条文は数年おきに書き換わっており、古い教材の記述が現行法と食い違いやすい箇所です。
直近の大きな改正が、成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第37号)によるものです。宅建業法については2019年9月14日に施行され、成年被後見人および被保佐人を一律に欠格とする条項が削除されました。
代わりに置かれたのが、現行の5条1項10号「心身の故障により宅地建物取引業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの」です。宅建士の登録側にも、18条1項12号として「心身の故障により宅地建物取引士の事務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの」が置かれています。
改正の方向性は明確です。後見や保佐という制度を利用しているという形式的な事実で一律に排除するのをやめ、業務を適正に行えるかという実質で個別に判断する建付けに変えた、というものです。成年後見制度そのものの仕組みは制限行為能力者制度で扱っています。
古い教材で「成年被後見人は宅建業の免許を受けられない」という記述を見かけたら、それは2019年9月14日より前の条文です。「禁錮以上の刑」と同じく、現行法の表現ではありません。欠格事由の学習では、手元の教材がどの時点の条文を写しているかを確認する習慣を持ってください。
試験での出題ポイント
旧文言との入れ替えが最も狙われる
改正から日が浅いため、「禁錮以上の刑」という旧文言を使った選択肢が誤りとして出される可能性があります。現行法の条文は「拘禁刑以上の刑」です。条文の引用として旧文言が示されていれば、その時点で誤りと判断できます。
裏返しの出題もありえます。「拘禁刑の創設により欠格事由の範囲が拡大された」「欠格期間が5年から3年に短縮された」といった、改正の効果を誇張する選択肢です。実質的な範囲も期間も変わっていないというのが正解です。
経過措置の誤りが二番目に狙われる
「2025年6月1日より前に懲役の刑に処せられた者は、拘禁刑に処せられた者ではないため欠格事由に該当しない」という趣旨の選択肢は誤りです。整理法443条1項により、人の資格に関する法令の適用上、拘禁刑に処せられた者とみなされます。
この論点は、改正直後の年度に出やすい典型です。改正で結論が変わったのか変わらなかったのかを問う形は、過去の改正でも繰り返し使われてきました。
刑の重さの順序を使う出題
「拘留に処せられた者は欠格事由に該当する」という選択肢は誤りです。拘留は罰金より下位の刑であり(刑法9条、10条1項)、「拘禁刑以上」に含まれません。科料も同じです。身体を拘束する刑だから重い、という直感で判断すると引っかかります。
罰金刑の限定列挙を使う出題
「傷害罪で罰金刑に処せられた者は、拘禁刑以上の刑ではないから欠格事由に該当しない」は誤りです。刑法204条は5条1項6号の列挙に入っています。
逆に「窃盗罪で罰金刑に処せられた者は欠格事由に該当する」も誤りです。窃盗罪は列挙に入っていません。列挙に入っているか否かを一つずつ確認するしかない論点で、六つの条番号と、宅建業法違反・暴力団対策法違反・暴力行為等処罰法という枠を覚えておく必要があります。
執行猶予を使う出題
「執行猶予期間が満了した者は、その満了の日から5年を経過しなければ免許を受けられない」は誤りです。猶予期間の満了により刑の言渡しが効力を失うため(刑法27条1項)、直ちに免許を受けられます。この論点は改正前から繰り返し出題されており、拘禁刑への一本化とは無関係に重要です。
法人の役員を使う出題
法人の役員に欠格事由該当者がいれば法人も免許を受けられません(5条1項12号)。役員の範囲は、相談役や顧問であっても、法人に対し取締役等と同等以上の支配力を有すると認められる者を含みます。名称ではなく支配力の実質で判断するという定義を押さえておいてください。
覚え方・整理の仕方
「上・以上・限定」の三段で刑を仕分ける
刑の重さと欠格事由の対応は、三段で整理すると迷いません。
一段目は「拘禁刑以上」、すなわち死刑と拘禁刑。ここは罪名を問わず全部が欠格です。二段目は罰金。ここは列挙された罪だけが欠格です。三段目は拘留と科料。ここは何をしても欠格にならない。
選択肢を読んだら、まず刑の種類を見て一段目・二段目・三段目のどこに落ちるかを決める。一段目なら罪名を見る必要はなく即座に該当。三段目なら即座に非該当。罪名を確認しなければならないのは二段目だけです。判断の手数が最も少ない順に処理することで、時間も正確性も稼げます。
罰金の列挙は「暴力五つ+背任」で束ねる
刑法の六つの条番号を数字で並べて覚えると混線します。中身で束ねてください。204条の傷害、206条の現場助勢、208条の暴行、208条の2の凶器準備集合、222条の脅迫が暴力系の五つ。そこに247条の背任が一つだけ財産犯として加わります。
「暴力が五つ、財産は背任だけ」と唱えられるようにしておけば、詐欺や窃盗や横領が出てきたときに「財産犯で入っているのは背任だけだった」と即断できます。ここに宅建業法違反、暴力団対策法違反、暴力行為等処罰法という三つの法律違反を足せば列挙は完成です。語呂の作り方そのものは宅建の語呂合わせ基礎で扱っています。
経過措置は「みなす」の一語で覚える
経過措置の条文をまるごと覚える必要はありません。「過去の懲役は、資格制限の場面では拘禁刑とみなされる」という一文で足ります。
そのうえで、なぜこの手当てが必要だったのかを一度考えておくと忘れません。文言を置き換えただけだと、過去に懲役刑を受けた人が条文の網から抜け落ちてしまう。それを防ぐために、新しい条文の要件に当てはまるよう読み替える規定を置いた。改正の目的が刑罰体系の整理であって欠格事由の緩和ではない以上、結論を変えないための手当てが必要だった、という筋道です。
「5年」と「10年」を置き場所で分ける
数字の混線を防ぐには、どの法律の数字かで箱を分けます。宅建業法の5年は欠格期間、つまり「免許や登録を受けられない期間」です。刑法34条の2の10年は刑の消滅、つまり「前科としての言渡しが効力を失うまでの期間」です。測っているものがそもそも違います。
執行猶予の扱いも同じ整理で処理できます。猶予期間の満了で効力を失うのは刑の言渡し(刑法27条1項)。言渡しが消えれば「処せられた者」でなくなるので、宅建業法の5年を待つ場面自体が生じない。刑法側で何が消えるのかを見てから、宅建業法の要件に当てはめるという順序で考えてください。
理解度チェッククイズ
問1 2025年6月1日より前に懲役1年の刑に処せられ、その執行を終わった者は、宅地建物取引業法5条1項5号が「拘禁刑以上の刑」と定めている以上、同号の欠格事由には該当しない。
答え:×。刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)443条1項は、懲役または禁錮に処せられた者に係る人の資格に関する法令の規定の適用については、有期の懲役または禁錮に処せられた者を刑期を同じくする有期拘禁刑に処せられた者とみなすと定めています。したがって過去の懲役1年は有期拘禁刑1年に処せられたものとして扱われ、執行を終わった日から5年を経過するまでは5条1項5号の欠格事由に該当します。改正によって欠格事由から外れる者は生じません。
問2 拘留に処せられ、その執行を終わった日から5年を経過しない者は、宅地建物取引業の免許を受けることができない。
答え:×。刑法9条は主刑を死刑、拘禁刑、罰金、拘留、科料の順に掲げ、10条1項が主刑の軽重はこの順序によると定めています。拘留は罰金より下位の刑であり、「拘禁刑以上の刑」には含まれません。身体を拘束する刑ではありますが、宅建業法5条1項5号の欠格事由には該当しません。科料も同様です。
問3 傷害罪により罰金の刑に処せられた者は、拘禁刑以上の刑に処せられたわけではないため、その執行を終わってもただちに宅地建物取引業の免許を受けることができる。
答え:×。宅建業法5条1項6号は、刑法204条(傷害)、206条(現場助勢)、208条(暴行)、208条の2(凶器準備集合及び結集)、222条(脅迫)、247条(背任)の罪、宅建業法違反、暴力団対策法違反、暴力行為等処罰法の罪により罰金の刑に処せられた者を、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない間は欠格事由としています。傷害罪は刑法204条であり、この列挙に含まれます。
問4 拘禁刑の刑の全部の執行を猶予された者は、その猶予期間が満了しても、満了の日から5年を経過しなければ宅地建物取引業の免許を受けることができない。
答え:×。刑法27条1項は、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは刑の言渡しは効力を失うと定めています。言渡しが効力を失えば「拘禁刑以上の刑に処せられ」た者ではなくなるため、猶予期間の満了により直ちに欠格事由から外れます。5年を待つ必要はありません。なお、猶予期間が満了する前は刑の言渡しが効力を保っているため、その間は欠格事由に該当します。
問5 拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、または必要な指導を行うことができる。
答え:○。刑法12条3項がそのとおり定めています。改正前の懲役では所定の作業を行わせることが刑の内容に組み込まれていましたが、拘禁刑では作業が必須の要素ではなくなり、改善更生という目的のために作業と指導を組み合わせて行うことができる建付けになりました。「拘禁刑に処せられた者は必ず作業に従事しなければならない」という記述は誤りです。
まとめ
- 刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)により懲役と禁錮が拘禁刑に一本化され、2025年6月1日に施行されました。拘禁刑は刑事施設に拘置する刑で、改善更生を図るため必要な作業を行わせ、または必要な指導を行うことができます(刑法12条2項・3項)。
- これに伴い、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)が宅地建物取引業法の文言を改め、免許の基準は5条1項5号、宅建士の登録は18条1項6号が、いずれも「拘禁刑以上の刑」となりました。刑の種類の整理に伴う置き換えであり、欠格となる刑の範囲も5年という期間も実質的に変わっていません。
- 経過措置は整理法443条1項の「みなす」規定で作られており、過去に懲役または禁錮に処せられた者は、人の資格に関する法令の適用上、拘禁刑に処せられた者とみなされます。「拘禁刑以上」に含まれるのは死刑と拘禁刑のみで、罰金は限定列挙された罪のみ、拘留と科料は欠格事由になりません。執行猶予は猶予期間の満了で刑の言渡しが効力を失い(刑法27条1項)、直ちに欠格でなくなります。
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