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地価公示法|標準地・公示価格の仕組みと効力

税・その他 読了 約22分

地価公示法を条文から整理。土地鑑定委員会、公示区域、標準地の選定、2人以上の鑑定評価、正常な価格の意味、指標と規準の使い分け、都道府県地価調査との違いを解説します。

目次

    本記事の役割 — この記事は地価公示法という制度そのものを扱います。不動産鑑定評価基準の用語と手法は不動産の鑑定評価、公示価格を含む四つの公的価格の比較は土地の価格はどう決まる?、その年の変動率などの最新数値は宅建試験の統計数値まとめにそれぞれ譲ります。

    地価公示法は、条文数が少なく、覚えるべき事項もはっきりしています。ところが試験ではよく落とされます。理由は単純で、条文の言葉を一語だけ入れ替えた選択肢が作られるからです。

    土地鑑定委員会を国土交通大臣に。2人以上を1人以上に。「存しないものとして」を「存するものとして」に。「指標」を「規準」に。いずれも一文字から数文字の差ですが、正誤は完全に反転します。この分野は意味を理解するだけでは足りず、条文の語をそのまま覚える必要があります。

    以下、目的、実施体制、正常な価格の意味、公示までの手続、公示価格の効力の順に、条番号を添えて整理します。あわせて、混同されやすい都道府県地価調査との違いも条文レベルで押さえます。

    法律は何のために置かれたか

    目的規定を分解する

    地価公示法1条は、この法律の目的を次のように定めます。

    この法律は、都市及びその周辺の地域等において、標準地を選定し、その正常な価格を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もつて適正な地価の形成に寄与することを目的とする。

    この一文には、制度の全体像が入っています。やることは「標準地を選定し、その正常な価格を公示する」こと。直接の効果は二つで、一般の土地の取引価格に対して「指標を与え」ることと、公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に「資する」こと。そして最終的な目的が「適正な地価の形成に寄与する」ことです。

    注目してほしいのは、一般の取引について使われている語が「指標を与え」であることです。「規準とさせ」ではありません。この語の選び方が、後で見る効力の違いに直結します。

    取引を行う者の責務

    1条の2は、土地の取引を行う者の責務を定めます。都市及びその周辺の地域等において土地の取引を行う者は、取引の対象土地に類似する利用価値を有すると認められる標準地について公示された価格を指標として取引を行うよう努めなければならない、と。

    「努めなければならない」ですから努力義務です。公示価格から離れた価格で取引しても、それ自体が違法になるわけではありません。公示価格は取引価格を統制する道具ではなく、参照点を提供する道具であるという位置づけが、この条文に表れています。

    誰が、どこで、どうやって

    土地鑑定委員会が国土交通省に置かれる

    地価公示を行うのは土地鑑定委員会です。12条1項が、この法律および不動産の鑑定評価に関する法律に基づく権限を行わせるため、国土交通省に土地鑑定委員会を置くと定めています。

    国土交通大臣ではありません。ここは入れ替えの定番です。委員会は国土交通省に置かれる合議制の機関で、14条1項により委員七人をもって組織され、同条2項によりそのうち六人は非常勤とされています。委員は、不動産の鑑定評価に関する事項または土地に関する制度について学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て国土交通大臣が任命します(15条1項)。委員の任期は三年で、再任されることができます(同条5項・6項)。

    任命するのは国土交通大臣ですが、公示を行うのは委員会です。「任命権者」と「公示の主体」を混ぜないことが要点になります。

    委員の資格と身分

    委員会が公示という重い判断を担うため、委員の身分にも条文が置かれています。

    委員となれないのは、破産者で復権を得ないものと、拘禁刑以上の刑に処せられた者です(15条4項)。この「拘禁刑以上の刑」という文言は、2025年6月1日に懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されたことを受けた表現で、以前は「禁錮以上の刑」と書かれていました。改正の中身は拘禁刑とは?宅建業法の欠格事由への影響で扱っています。宅建業法の欠格事由と同じ改正が、地価公示法の委員の欠格条項にも及んでいるわけです。

    委員が在任中にこれらに該当するに至った場合は、その職を失います(15条7項)。また国土交通大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、または委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない行為があると認めるときは、両議院の同意を得て罷免することができます(同条8項)。任命にも罷免にも両議院の同意が要る構造で、行政の一存で委員を入れ替えられないようにしています。

    委員会には委員長が置かれ、委員の互選によって定められます(16条1項)。国土交通大臣が指名するのではありません。委員長は会務を総理し、委員会を代表します(同条2項)。

    公示区域とは何か

    対象となる区域も条文が定めています。2条1項は、土地鑑定委員会は、都市計画法4条2項に規定する都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれるものとして国土交通省令で定める区域(国土利用計画法12条1項の規定により指定された規制区域を除く。以下「公示区域」という)内の標準地について、と書き出しています。

    三点を押さえてください。第一に、都市計画区域だけではありません。「その他の土地取引が相当程度見込まれるものとして国土交通省令で定める区域」が並列されており、都市計画区域外にも公示区域は広がりえます。都市計画区域そのものの定義は都市計画法の基本にあります。

    第二に、規制区域は除かれます。規制区域は国土利用計画法にもとづき、投機的取引が集中するおそれがある区域等について知事が指定するもので、区域内の土地取引には許可制がかかります。自由な取引が制限されている区域で「自由な取引が行われるとした場合の価格」を公示しても意味がない、という理屈です。国土利用計画法の枠組みは国土利用計画法で扱っています。

    第三に、この区域を条文が「公示区域」と定義していることです。後に出てくる8条や9条は、この定義語を使って適用範囲を画しています。

    標準地はどう選ばれるか

    3条が標準地の選定を定めます。標準地は、土地鑑定委員会が、国土交通省令で定めるところにより、自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる一団の土地について選定するものとする、と。

    「通常と認められる」という語が効いています。極端に広い土地や特殊な形状の土地、周囲から浮いた使われ方をしている土地は標準地になりません。その地域を代表する平均的な土地を選ぶという趣旨です。代表性のない土地を選べば、そこから比準する周辺の価格も歪みます。

    「正常な価格」という語の意味

    定義は2条2項にある

    公示されるのは「正常な価格」です。この語の定義は2条2項が置いており、この記事で最も重要な条文です。

    前項の「正常な価格」とは、土地について、自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格(当該土地に建物その他の定着物がある場合又は当該土地に関して地上権その他当該土地の使用若しくは収益を制限する権利が存する場合には、これらの定着物又は権利が存しないものとして通常成立すると認められる価格)をいう。

    括弧書きが核心です。土地の上に建物があっても、地上権や賃借権が設定されていても、それらが「存しないものとして」価格を判定します。現況をそのまま評価するのではありません。

    「存しないものとして」を「存するものとして」に置き換えた選択肢は繰り返し作られます。建物がある土地でも、建物がない状態、すなわち更地としての価格が公示されると覚えてください。

    なお定義の本文には、農地、採草放牧地または森林の取引(これら以外のものとするための取引を除く)を除く、という括弧書きも置かれています。農地としての取引ではなく、宅地等に転用するための取引を前提に考える、という趣旨です。

    なぜ現況を無視するのか

    理由は制度の目的から出てきます。地価公示は、個別の土地の売買価格を当てるためのものではなく、地価の水準を示す物差しを提供するためのものです。

    建物の有無や借地権の有無は土地ごとにばらばらで、それを織り込んだ価格を並べても比較できません。定着物や権利を取り払った状態に揃えることで、はじめて地点間の比較が成り立ちます。物差しは目盛りが揃っていなければ役に立たないという発想です。

    このため、標準地の選定基準(3条の「通常と認められる」)と、正常な価格の定義(2条2項の「存しないものとして」)は、同じ目的に奉仕しています。土地そのものの条件を揃え、土地の上の事情も取り払う。二段構えで比較可能性を確保しているわけです。

    鑑定評価から公示までの手続

    2人以上の不動産鑑定士

    2条1項は、土地鑑定委員会が公示区域内の標準地について、毎年一回、国土交通省令で定めるところにより、二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行つて、一定の基準日における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、これを公示する、と定めます。

    「2人以上」は最も入れ替えられやすい数字です。1人ではありません。複数の鑑定士に独立して評価させ、その結果を委員会が突き合わせることで、一人の判断に依存しない仕組みにしています。

    そして委員会がやるのは鑑定評価そのものではなく、求めた鑑定評価の結果を審査し、必要な調整を行って価格を判定することです。鑑定評価を行うのは不動産鑑定士、判定と公示を行うのは委員会。役割が分かれています。不動産鑑定士という資格の位置づけは不動産鑑定士と宅建士の違いにあります。

    また、価格は単位面積当たりで判定されます。一区画の総額ではなく、1平方メートル当たりの価格として示されるということです。

    鑑定評価で勘案する三つ

    4条は標準地についての鑑定評価の基準を定めます。不動産鑑定士は標準地の鑑定評価を行うにあたっては、国土交通省令で定めるところにより、近傍類地の取引価格から算定される推定の価格近傍類地の地代等から算定される推定の価格及び同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額を勘案してこれを行わなければならない、と。

    この三つは、不動産鑑定評価基準の三手法に対応しています。取引価格からの推定は取引事例比較法、地代等からの推定は収益還元法、造成費用の額は原価法にあたります。条文が三手法の考え方を勘案せよと求めている構造です。三手法それぞれの中身は不動産の鑑定評価、計算の型は鑑定評価の3手法の計算例で扱っています。

    条文の言い回しにも注意してください。いずれも「推定の価格」「推定の費用の額」であり、確定した実額ではありません。そして三つとも「勘案して」行うもので、どれか一つを選ぶわけではありません。

    鑑定評価を行った不動産鑑定士は、土地鑑定委員会に対し、鑑定評価額その他国土交通省令で定める事項を記載した鑑定評価書を提出しなければなりません(5条)。

    公示される事項

    6条は、委員会が正常な価格を判定したときは、すみやかに、次に掲げる事項を官報で公示しなければならないとして、五つを列挙しています。

    標準地の所在の郡、市、区、町村及び字並びに地番(1号)。標準地の単位面積当たりの価格及び価格判定の基準日(2号)。標準地の地積及び形状(3号)。標準地及びその周辺の土地の利用の現況(4号)。その他国土交通省令で定める事項(5号)。

    公示の方法は官報です。そして基準日について、法律は2条1項で「一定の基準日」と定めるにとどめ、具体的な日は国土交通省令に委ねています。実務上は毎年1月1日時点の価格が判定され、国土交通省は「毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示」と案内しています。基準日は1月1日、公表は3月という関係を押さえてください。

    その年の変動率や調査地点数といった具体的な数値は、統計問題の守備範囲になります。宅建試験の統計数値まとめ統計問題の対策を参照してください。

    公示後の周知

    7条1項は、委員会が公示をしたときは、速やかに、関係市町村の長に対して、公示した事項のうち当該市町村が属する都道府県に存する標準地に係る部分を記載した書面及び当該標準地の所在を表示する図面を送付しなければならない、と定めます。そして2項が、関係市町村の長は、政令で定めるところにより、これらの図書を当該市町村の事務所において一般の閲覧に供しなければならないとしています。

    官報に載せて終わりではなく、市町村の窓口で誰でも見られる状態にするところまでが制度に組み込まれています。なお、この閲覧に供する事務は第一号法定受託事務とされています(7条3項)。国が本来果たすべき役割に係る事務を市町村が処理する形で、市町村が独自に判断して閲覧を拒むといったことはできません。

    公示価格を広く知らせることは、1条の目的にある「一般の土地の取引価格に対して指標を与え」ることの前提です。知られていない価格は指標として働かないため、官報での公示に加えて市町村での閲覧まで法律が手当てしています。

    公示価格の効き方は三段階ある

    指標(努力義務)

    ここが最頻出の論点です。公示価格の効力は、場面によって強さが違います。

    一般の土地取引について働くのが1条の2で、土地の取引を行う者は公示価格を指標として取引を行うよう努めなければならないとされています。努力義務であって、公示価格に拘束されるわけではありません。

    規準(義務)

    これに対して、三つの場面では「規準としなければならない」という義務が課されます。

    8条は不動産鑑定士の土地についての鑑定評価の準則です。不動産鑑定士は、公示区域内の土地について鑑定評価を行う場合において、当該土地の正常な価格を求めるときは、公示価格を規準としなければならない

    適用範囲に二重の限定があることに注意してください。公示区域内であること、そして求めるのが正常な価格であること。公示区域外の土地の鑑定評価や、限定価格・特定価格を求める場合には、この義務は及びません。価格の四類型については不動産の鑑定評価で扱っています。

    この8条は、不動産鑑定評価基準の側からも呼応しています。同基準は鑑定評価額の決定について、公示区域において土地の正常価格を求めるときは公示価格を規準とする旨を定めており、法律と基準の両方から同じ規律がかかる構造になっています。

    9条は公共事業の用に供する土地の取得価格の算定の準則です。土地収用法その他の法律によって土地を収用することができる事業を行う者は、公示区域内の土地を当該事業の用に供するため取得する場合において、当該土地の取得価格を定めるときは、公示価格を規準としなければならない

    この条文には括弧書きが二つ入っています。対象となる場面は、当該土地に地上権その他その土地の使用または収益を制限する権利が存する場合においては「当該土地を取得し、かつ、当該権利を消滅させる場合」であり、そのときの取得価格には「当該権利を消滅させるための対価を含む」とされています。土地を買うだけでなく、上に乗っている権利を消してもらう対価まで含めて公示価格を規準に算定せよ、ということです。

    10条は収用する土地に対する補償金の額の算定の準則です。土地収用法71条の規定により公示区域内の土地について、当該土地に対する同法71条の事業の認定の告示の時における相当な価格を算定するときは、公示価格を規準として算定した当該土地の価格を考慮しなければならない

    10条だけ語尾が違います。8条と9条は「規準としなければならない」、10条は「規準として算定した価格を考慮しなければならない」です。細かい差ですが、条文どおりに問われる可能性があります。また10条は、算定の基準となる時点を「事業の認定の告示の時」と特定している点も条文どおりの要点です。

    「規準とする」とは何をすることか

    では「規準とする」とは具体的に何をすることなのか。これも条文が定義しています。11条です。

    前三条の場合において、公示価格を規準とするとは、対象土地の価格(当該土地に建物その他の定着物がある場合又は当該土地に関して地上権その他当該土地の使用若しくは収益を制限する権利が存する場合には、これらの定着物又は権利が存しないものとして成立すると認められる価格)を求めるに際して、当該対象土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる一又は二以上の標準地との位置、地積、環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因についての比較を行ない、その結果に基づき、当該標準地の公示価格と当該対象土地の価格との間に均衡を保たせることをいう。

    読み解くと三段階です。第一に、類似する利用価値を有すると認められる一または二以上の標準地を選ぶ。第二に、位置、地積、環境等の客観的価値に作用する諸要因について比較を行う。第三に、その結果に基づき標準地の公示価格と対象土地の価格との間に均衡を保たせる

    「公示価格をそのまま使う」ことではありません。比較を経て均衡を保たせる作業です。また、比較の対象となる標準地は一つとは限らず「一又は二以上」とされています。そして11条の括弧書きにも、2条2項と同じ「存しないものとして」が現れます。規準とする場面でも、定着物や権利は取り払って考えるということです。

    都道府県地価調査との違い

    根拠が法律ではなく政令にある

    地価公示と混同されやすいのが、都道府県が行う地価調査です。基準地の標準価格、いわゆる基準地価と呼ばれるものです。

    根拠は地価公示法ではなく、国土利用計画法施行令9条にあります。同条1項は、都道府県知事は、自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域(規制区域を除く)において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる画地を選定し、その選定された画地について、毎年一回一人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って、国土交通省令で定める一定の基準日における当該画地の単位面積当たりの標準価格を判定するものとする、と定めます。

    地価公示との違いを条文で並べると、実施主体が土地鑑定委員会か都道府県知事か、鑑定士の人数が二人以上か一人以上か、対象が標準地か基準地(画地)か、判定するものが正常な価格か標準価格か、となります。基準日は実務上、地価公示が1月1日、都道府県地価調査が7月1日です。

    定義と手法はほぼ同じ

    一方で、中身はよく似ています。標準価格の定義(同条2項)も、自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価格であり、定着物や権利が存する場合にはこれらが存しないものとして通常成立すると認められる価格とされています。地価公示法2条2項と同じ構造です。

    さらに同条3項が接続関係を定めています。都道府県知事は標準価格を判定するにあたって、その基準地が地価公示法2条1項に規定する公示区域内に所在する土地であるときは、公示価格を規準とし、公示区域内の森林の土地であり、または公示区域外に所在するときは、近傍類地の取引価格から算定される推定の価格、近傍類地の地代等から算定される推定の価格及び同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額を勘案して行うものとする、と。

    公示区域の中では地価公示に接続し、外では地価公示法4条と同じ三つを勘案する。二つの制度が互いに独立ではなく、地価公示を軸に組み合わさっていることが読み取れます。

    さらに同条4項は、推定の価格や推定の費用の額を求めるにあたって、近傍類地の取引価格または地代等が投機的取引、当該土地を特別な用途に供するための取引その他の特別な事情を反映して形成されていると認められるときは、その事情を考慮して補正する旨を定めています。不動産鑑定評価基準が取引事例の選択について投機的取引の事例を排除し、特殊な事情を含む事例に事情補正を求めているのと同じ発想です。制度の名前は違っても、価格を歪める要素を取り除くという考え方は共通しています。

    二つの制度が補い合う理由

    なぜ似た制度が二つあるのか。実務的には、判定時点をずらして年に二回、地価の動きを把握するためです。地価公示が1月1日時点、都道府県地価調査が7月1日時点を捉えるので、両者を並べれば半年ごとの推移が見えます。

    対象区域も補い合っています。地価公示の公示区域は都市計画区域その他土地取引が相当程度見込まれる区域に限られますが、都道府県地価調査の対象地域にはこうした限定が置かれていません。公示が届かない地域を地価調査が拾うという関係になっています。

    他の公的価格との関係

    土地の価格を示す公的な指標は四つあります。地価公示による公示価格、都道府県地価調査による基準地の標準価格、相続税や贈与税の課税のために国税庁が定める相続税路線価、そして固定資産税等の課税のために市町村が決定する固定資産税評価額です。

    このうち後ろの二つは課税のための評価額で、公示価格を基礎としつつ、実務上はそれより低い水準に設定されています。相続税路線価はおおむね8割、固定資産税評価額はおおむね7割という目安が知られていますが、これは法律が定めた比率ではなく運用上の水準です。数字を断定的に覚えるより、課税目的の評価額は公示価格より低い水準に置かれているという関係を押さえるほうが安全です。

    固定資産税評価額は三年ごとの基準年度に評価替えが行われる点も、毎年判定される公示価格との違いになります。四つの価格の比較は土地の価格はどう決まる?、固定資産税の課税標準の特例は固定資産税、譲渡時の課税は譲渡所得税の特例、税分野全体の見取り図は不動産にかかる税金の全体像にあります。

    試験での出題ポイント

    主体の入れ替え

    「地価公示は国土交通大臣が行う」「市町村長が標準地を選定する」といった選択肢は誤りです。公示も標準地の選定も土地鑑定委員会が行います(2条1項、3条)。委員会は国土交通省に置かれ(12条1項)、委員を任命するのは国土交通大臣ですが(15条1項)、任命権者と実施主体は別です。

    人数の入れ替え

    「標準地の鑑定評価は一人の不動産鑑定士が行う」は誤りです。2条1項は二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求めるとしています。都道府県地価調査が一人以上(国土利用計画法施行令9条1項)であることとの対比で、数字が入れ替えられます。

    「存しないものとして」の反転

    「建物が存する土地については、当該建物が存するものとして正常な価格を判定する」は誤りです。2条2項は定着物や権利が存しないものとして通常成立すると認められる価格をいうと定めています。11条の規準の定義にも同じ括弧書きが置かれています。

    指標と規準

    「土地の取引を行う者は、公示価格を規準として取引を行わなければならない」は誤りです。1条の2は指標として取引を行うよう努めなければならないという努力義務にとどめています。他方、不動産鑑定士が公示区域内の土地の正常な価格を求めるとき(8条)と、公共事業を行う者が公示区域内の土地の取得価格を定めるとき(9条)は規準としなければならないという義務です。

    適用範囲の限定

    8条の義務は、公示区域内の土地について正常な価格を求める場合に限られます。「不動産鑑定士は、いかなる土地の鑑定評価を行う場合でも公示価格を規準としなければならない」は誤りになります。公示区域外の土地や、限定価格・特定価格を求める場合は対象外です。

    公示区域の範囲

    「標準地は都市計画区域内からのみ選定される」は誤りです。2条1項は都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれるものとして国土交通省令で定める区域としています。逆に、規制区域は公示区域から除かれることも押さえてください。

    委員会の組織

    「土地鑑定委員会の委員長は国土交通大臣が指名する」は誤りです。16条1項は委員の互選によって定めるとしています。委員は七人で、うち六人は非常勤(14条)、任期は三年で再任されることができます(15条5項・6項)。細部まで問われる頻度は高くありませんが、主体と手続を入れ替える材料になりうる箇所です。

    基準日と公示方法

    基準日は毎年1月1日、公示は官報で行われます(6条柱書)。公表は3月です。都道府県地価調査の7月1日と入れ替えた選択肢に注意してください。

    覚え方・整理の仕方

    「委員会が判定し、鑑定士が評価する」

    主体の混同を防ぐには、役割を動詞で結び直すのが確実です。不動産鑑定士は鑑定評価する、土地鑑定委員会は鑑定評価の結果を審査し、調整し、判定し、公示する、国土交通大臣は委員を任命する、市町村長は書面と図面を受け取って閲覧に供する

    四つの主体それぞれに動詞を一つ割り当てておけば、「市町村長が公示する」「大臣が判定する」といった入れ替えに即座に反応できます。

    「指標は努力、規準は義務」

    効力の区別は、語と法的性質をセットで唱えます。指標は努力義務、規準は義務。そのうえで、規準が働く場面を三つ数えます。不動産鑑定士(8条)、公共事業の取得価格(9条)、収用の補償金の算定(10条)。

    覚え方としては、「一般人は努力、プロと公共は義務」と大づかみにしてから条番号を足すと定着しやすくなります。一般の取引当事者には強制せず、専門家と公権力には義務を課す。制度の趣旨から見ても筋が通っています。

    「揃えるための二段構え」

    正常な価格の「存しないものとして」は、丸暗記すると反転させられます。なぜ取り払うのかから覚えてください。

    地価公示は地点間で比較できる物差しを作る制度です。だから、標準地の選定では利用状況や環境が通常と認められる土地を選び(3条)、価格の判定では建物や権利を存しないものとして扱う(2条2項)。土地の条件を揃え、土地の上の事情も取り払う。二段構えで目盛りを揃えていると理解しておけば、「存するものとして」という選択肢に違和感を持てます。

    公示と地価調査は「1・2」と「7・1」

    二つの制度の数字は、基準日と鑑定士の人数を対にすると混線しません。地価公示は1月1日で2人以上、都道府県地価調査は7月1日で1人以上。「公示は1と2、調査は7と1」と唱えてください。

    そのうえで実施主体を足します。公示は土地鑑定委員会、調査は都道府県知事。根拠も、公示は地価公示法という法律、調査は国土利用計画法施行令という政令です。法律か政令かという違いも、選択肢の材料になりえます。

    税・その他の中での位置づけ

    地価公示法は、鑑定評価と交互に問われる関係にあります。両方を一度に仕上げると効率がよく、しかもどちらも条文と用語で決着するので、投じた時間が素直に点数に変わります。税・その他全体の時間配分は税・その他の得点戦略、免除を受けない場合に押さえるべき範囲は免除科目5問の攻略法にまとめています。

    理解度チェッククイズ

    問1 地価公示法にもとづき標準地を選定し、その正常な価格を判定して公示するのは、国土交通大臣である。

    答え:×。土地鑑定委員会です。2条1項は土地鑑定委員会が二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って正常な価格を判定し、これを公示するものとしており、3条も標準地の選定を土地鑑定委員会が行うものとしています。委員会は国土交通省に置かれ(12条1項)、委員七人をもって組織されます(14条1項)。国土交通大臣は両議院の同意を得て委員を任命する立場です(15条1項)。任命権者と実施主体を分けて覚えてください。

    問2 標準地の正常な価格は、当該土地に建物が存する場合には、その建物が存する状態を前提として判定される。

    答え:×。2条2項は、当該土地に建物その他の定着物がある場合または地上権その他当該土地の使用もしくは収益を制限する権利が存する場合には、これらの定着物又は権利が存しないものとして通常成立すると認められる価格をいう、と定めています。建物や借地権があっても、それらがない状態、すなわち更地としての価格が判定されます。同じ括弧書きは、公示価格を規準とすることの意義を定める11条にも置かれています。

    問3 土地の取引を行う者は、取引の対象土地に類似する利用価値を有すると認められる標準地について公示された価格を規準として取引を行わなければならない。

    答え:×。1条の2は「公示された価格を指標として取引を行うよう努めなければならない」と定めており、努力義務です。「規準としなければならない」という義務が課されるのは、不動産鑑定士が公示区域内の土地について正常な価格を求める場合(8条)と、公共事業を行う者が公示区域内の土地の取得価格を定める場合(9条)です。一般の取引当事者は指標として努力すれば足ります。

    問4 不動産鑑定士は、公示区域外に所在する土地について鑑定評価を行う場合であっても、公示価格を規準としなければならない。

    答え:×。8条の義務は「公示区域内の土地について鑑定評価を行う場合において、当該土地の正常な価格を求めるとき」に限られます。公示区域外の土地については及びません。また、公示区域内であっても限定価格や特定価格を求める場合は「正常な価格を求めるとき」に当たらないため、この義務の対象外です。適用範囲が二重に限定されている点に注意してください。

    問5 都道府県地価調査における基準地の標準価格は、都道府県知事が一人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求めて判定する。

    答え:○。国土利用計画法施行令9条1項が、都道府県知事は類似の利用価値を有すると認められる地域において土地の利用状況、環境等が通常と認められる画地を選定し、毎年一回、一人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って標準価格を判定するものとしています。地価公示が土地鑑定委員会による二人以上の鑑定評価であること(地価公示法2条1項)との対比で押さえてください。なお同令9条3項により、基準地が公示区域内に所在する土地であるときは公示価格を規準とします。

    まとめ

    • 地価公示は、土地鑑定委員会が公示区域内の標準地について、毎年一回、二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査・調整して単位面積当たりの正常な価格を判定し、官報で公示する制度です(2条1項、6条)。委員会は国土交通省に置かれ(12条1項)、委員は国土交通大臣が両議院の同意を得て任命します(15条1項)。基準日は1月1日で、公表は3月です。
    • 「正常な価格」とは、自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価格をいい、建物その他の定着物や地上権等の権利が存する場合には、これらが存しないものとして成立すると認められる価格です(2条2項)。同じ括弧書きは11条にも置かれています。
    • 公示価格の効き方は二段階です。一般の土地取引では指標として取引を行うよう努めなければならない努力義務(1条の2)、不動産鑑定士が公示区域内の土地の正常な価格を求めるとき(8条)と公共事業の用に供する土地の取得価格を定めるとき(9条)は規準としなければならない義務。都道府県地価調査は国土利用計画法施行令9条にもとづき、都道府県知事が一人以上の鑑定評価を求めて基準地の標準価格を判定します。

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