不動産投資で作動する法令|宅建の知識が効く場面
不動産投資という場面を入口に、宅建試験で問われる法令がどこで効くかを条文根拠つきで整理。自ら貸借と免許、借家の終了と正当事由、定期借家、借賃増減請求、区分所有、収益還元法まで扱います。
目次
この記事は、不動産投資という場面を入口にして、宅建試験で学ぶ法令が実際にどこで作動するのかを確認するものです。取り上げるのは、宅建業法上の「自ら貸借」の扱い、重要事項説明、8種制限、借地借家法による建物賃貸借の終了と賃料、区分所有法、賃貸住宅管理業法、そして不動産鑑定評価基準の収益還元法です。いずれも本試験の出題範囲に含まれています。
先に、この記事が扱わないことを明示します。利回りの相場、収益性の目安、物件の選び方、投資すべきかどうかの判断は扱いません。宅建試験AIブートラボは宅建試験の学習メディアであって、投資助言を行う立場にありません。加えて、この種の数字は一次情報をたどれるものがほとんどなく、書いても検証できないためです。ここで扱うのは、条文で確かめられる法令の作動点だけです。
そのうえで、この視点には学習上の意味があります。宅建の4分野は、テキストの上では別々の章に分かれています。しかし賃貸経営という一つの場面を置くと、宅建業法、権利関係、法令上の制限、税の各分野が同時に作動します。誰が免許を要するのか、契約をいつ終わらせられるのか、賃料を動かせるのか、管理費の滞納は誰が負うのか。これらは章をまたいで結びついており、場面から見たほうが構造がつかみやすい論点があります。
大家に宅建業の免許は要らない
「自ら貸借」は宅地建物取引業に含まれない
賃貸経営を法令の側から見るとき、最初に確認すべきなのがここです。宅地建物取引業法2条2号は、宅地建物取引業を「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」と定義しています。
この定義を分解すると、対象になる行為は次のとおりです。自ら当事者となる場合は売買と交換だけ。代理と媒介の場合は売買・交換・貸借のすべて。つまり、自ら貸主となって建物を貸す行為、いわゆる「自ら貸借」は、定義から外れています。
したがって、自分が所有する物件を人に貸す行為は、それがどれだけ大規模で反復継続していても宅地建物取引業に当たりません。何十戸を所有して賃貸経営をしていても、宅建業の免許は不要です。定義に「自ら貸借」を書かなかったこと自体が立法の選択であり、うっかり漏れたわけではありません。
転貸も「自ら貸借」に含まれる
見落とされやすいのが転貸です。他人から借りた建物を第三者に又貸しする行為も、転貸人と転借人のあいだでは自ら貸主となる関係なので、「自ら貸借」に含まれます。免許は不要です。
この帰結が、後述するサブリース規制の存在理由につながります。サブリース業者は物件を一括で借り上げてオーナーに賃料を支払い、入居者に転貸します。この形は宅建業法の定義から外れるため、宅建業法の規制も監督も届きません。だからこそ別の法律が必要になりました。
免許が必要になる場面
一方で、投資を続けるうちに免許が必要になる場面はあります。売買の側です。
自ら売主として宅地建物を売る行為は2条2号の定義に含まれるため、これを「業として」行えば免許が要ります。所有していた物件を1件売却するだけなら業に当たりませんが、区画割りして反復継続的に売却するような形になると判断が変わります。「業として行う」の判定は、取引の反復継続性、対象者の範囲、目的、態様などを総合して行われます。判定の枠組みは宅建業の「業」に当たるケースと当たらない例で整理しています。免許制度そのものは宅建業の免許制度を参照してください。
また、他人の物件の貸借を媒介する行為には免許が要ります。自分の物件を貸すのは自由でも、知人の物件の借り手を探して手数料を受け取れば、それは貸借の媒介であり無免許営業になりえます。この線引きは宅建の副業でも触れています。
買う側として作動する法令
重要事項説明で何が渡されるか
宅地建物取引業者が媒介や代理をして物件を購入する場合、契約が成立するまでのあいだに宅地建物取引士から重要事項の説明を受けます(宅建業法35条)。説明する者は宅建士証を提示しなければならず(35条4項)、書面には宅建士の記名が必要です(35条5項)。
35条1項が列挙している説明事項は、登記された権利の種類と内容、法令に基づく制限の概要、私道に関する負担、飲用水・電気・ガスの供給施設および排水施設の整備状況、代金以外に授受される金銭の額と目的、契約の解除に関する事項、損害賠償額の予定または違約金に関する事項などです。項目の一覧は35条書面の記載事項一覧にまとめています。
投資物件の購入で意味を持つのは、この説明が「買主が自分では調べにくい事項を、専門家に調査させて開示させる」制度だという点です。飲用水や排水施設の整備状況、法令上の制限、私道負担は、外から見ただけでは分かりません。調査の実務は不動産の物件調査の方法で扱っています。
区分所有建物ならば説明事項が増える
区分所有建物を買う場合、35条1項6号と施行規則16条の2により、説明事項が追加されます。専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定め、専有部分の管理を委託している場合の委託先、そして計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときはその内容と既に積み立てられている額などです。
投資の観点で決定的なのは、この中に管理費および修繕積立金の滞納額が含まれていることです。滞納があれば説明されます。なぜ滞納額をわざわざ説明させるのかは、次に述べる区分所有法8条の効果と結びついています。追加事項の整理は区分所有建物の重要事項説明にあります。
売主が宅建業者なら8種制限が効く
新築の投資用マンションのように、宅地建物取引業者が自ら売主となって宅建業者でない買主に売る取引では、宅建業法の8種制限が適用されます。
具体的には、クーリング・オフ(37条の2)、手付の額の制限すなわち代金の10分の2を超える手付を受領できないこと(39条1項)、手付金等の保全措置(41条・41条の2)、契約不適合責任についての特約の制限(40条)、損害賠償額の予定等の制限(38条)などです。制度の全体像は8種制限とは、個別にはクーリング・オフ制度、手付金の制限、契約不適合責任の特約制限で扱っています。
ここで押さえるべきなのは適用の範囲です。8種制限は、売主が宅建業者で、かつ買主が宅建業者でない場合にだけ適用されます。宅建業法78条2項は、買主が宅地建物取引業者である場合には8種制限の規定を適用しないと定めています。買主の属性で保護の有無が切り替わる構造です。
この切り替わりは、試験でも実務でも繰り返し問題になります。「売主が業者だから常に保護される」という理解は誤りで、買主自身が業者であれば保護は外れます。
仲介手数料には上限がある
媒介を依頼して物件を取得する場合、宅地建物取引業者が受け取れる報酬には上限があります。宅建業法46条1項は、宅建業者が宅地または建物の売買、交換または貸借の代理または媒介に関して受けることのできる報酬の額は国土交通大臣の定めるところによると定め、同条2項は、その額を超えて報酬を受けてはならないとしています。
上限額は告示で定められており、売買の媒介では代金の額に応じた区分ごとに料率が決まっています。速算式と具体的な計算は仲介手数料の計算方法と上限に、条文と告示の関係は報酬額の制限にまとめています。上限であって定価ではない点、そして依頼者から受け取れるのは原則としてこの範囲に限られる点が、条文の骨格です。
一定面積以上の取引には国土利用計画法の届出が要る
一棟の物件や土地を取得する場合、面積によっては国土利用計画法の事後届出が必要になります。同法23条は、土地に関する権利の移転または設定をする契約を締結した場合、権利取得者は契約を締結した日から起算して2週間以内に、都道府県知事に届け出なければならないと定めています。
届出が必要になる面積は、市街化区域では2,000平方メートル以上、市街化区域を除く都市計画区域では5,000平方メートル以上、都市計画区域外では10,000平方メートル以上です。届出義務を負うのは権利取得者、つまり買主の側である点も特徴です。3層の届出・許可制度の全体像は国土利用計画法で扱っています。
区分マンション1戸の取得でこの面積に達することはまずありませんが、一棟や更地の取得では現実に作動します。法令上の制限の分野が投資の場面に直接顔を出す代表例です。
貸す側として作動する法令
ここからが、賃貸経営の設計を最も強く規定している領域です。建物の賃貸借には借地借家法が適用され、その多くの規定が賃借人に不利な特約を無効とする強行規定になっています。
普通借家は貸主の側から終わらせにくい
期間の定めのある建物賃貸借について、借地借家法26条1項は、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までのあいだに相手方に対して更新をしない旨の通知等をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなすと定めています。通知を怠れば自動的に更新されるということです。
そして、通知をすれば終わるわけでもありません。借地借家法28条は、建物の賃貸人による更新をしない旨の通知や解約の申入れは、建物の賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況および建物の現況、そして立退料の申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができないと定めています。
期間の定めがない場合も同様です。借地借家法27条1項により、賃貸人が解約の申入れをしたときは申入れの日から6か月を経過することによって終了しますが、この解約申入れにも28条の正当事由が要求されます。
つまり、期間を定めていても、期間が来たから明け渡してもらう、という運用は普通借家では成り立ちません。これが賃貸経営の設計を左右する最大の制約です。数年後に建て替える、売却する、自分で使う、といった計画を立てても、普通借家で貸している以上、その時点で退去してもらえる保証はありません。
さらに、借地借家法30条は、26条から28条までの規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは無効とすると定めています。契約書に「期間満了により当然に終了し、更新はしない」と書いても、普通借家である限りその条項は無効です。合意で回避できません。
なお、期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます(借地借家法29条1項)。短い期間を設定して縛りを緩めようとしても、かえって期間の定めがない契約として扱われることになります。借家に関する期間と通知の数字は借地借家法の数字まとめに、制度全体は借地借家法の全体像にまとめています。
正当事由は立退料だけでは決まらない
28条の書き方をもう一度確認してください。考慮要素として最初に挙げられているのは、賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情です。立退料は、条文上「建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出」として、他の事情と並べて考慮されるものと位置づけられています。
したがって、金銭を積めば必ず明け渡させられる、という構造ではありません。立退料は正当事由を補完する要素の一つであって、単独で正当事由を作り出すものではないというのが条文の建て付けです。ここは試験でも「立退料の提供があれば正当事由が認められる」という形で誤りの肢が作られます。
定期建物賃貸借なら期間満了で確定的に終わる
この制約から抜けるために設けられているのが、定期建物賃貸借です。借地借家法38条は、期間の定めがある建物の賃貸借をする場合において、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができるとしています。
要件を分解します。第一に、期間の定めがあること。第二に、書面によって契約すること。「公正証書による等書面によって」という書き方なので、公正証書に限られるわけではありませんが、書面であることは必須です。この書面性は成立要件であって、口頭の合意や、書面のない合意では定期借家になりません。なお、契約の内容を記録した電磁的記録によってされたときは書面によってされたものとみなされます。
第三に、これが最も落としやすい要件ですが、賃貸人はあらかじめ賃借人に対し、契約の更新がなく期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません。この説明をしなかったときは、更新がないこととする旨の定めが無効になります。つまり、契約自体は残り、普通借家として扱われることになります。
事前説明の書面は契約書とは別個独立の書面でなければならない
事前説明の書面については、最高裁判所平成24年9月13日判決が重要な判断を示しています。この判決は、38条が要求する説明の書面は、契約書とは別個独立の書面でなければならないとしました。
契約書のなかに「本契約は定期建物賃貸借であり更新がない」という条項を置き、それを読み聞かせただけでは要件を満たしません。契約書とは別の書面を交付して説明する必要があります。ここを落とすと、書面で契約していても更新がない旨の定めが無効になり、普通借家として更新される結果になります。定期借家の成立要件と終了の仕組みは定期借家契約で詳しく扱っています。
定期借家にすると設計が変わる
定期借家を選ぶかどうかは、賃貸経営の設計を根本から変えます。
普通借家では、契約を終わらせる時期を貸主がコントロールできません。したがって、将来の建て替えや売却や自己使用を前提にした計画は、正当事由の壁に当たる可能性を織り込んでおく必要があります。
定期借家では、期間の満了によって確定的に終了します。期間を定めて貸し、満了時に明け渡しを受けられます。ただし、更新がないということは、継続して貸したい場合は再契約が必要になるということでもあり、再契約は新たな合意なので賃借人の同意が要ります。どちらが有利かという話ではなく、期間の扱いに関する制度設計が違うということです。
なお、期間が1年以上の定期建物賃貸借については、賃貸人は期間の満了の1年前から6か月前までのあいだに賃借人に対し期間の満了により賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を賃借人に対抗できません。定期借家であっても通知が不要になるわけではない点は押さえてください。
造作買取請求権は特約で排除できる
借地借家法33条1項は、建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、賃借人は賃貸借の終了時に賃貸人に対しその造作を時価で買い取るべきことを請求できると定めています。
ここで重要なのが、この規定が強行規定ではないことです。借地借家法37条が賃借人に不利な特約を無効とする対象として挙げているのは31条、34条、35条であり、33条は含まれていません。したがって、造作買取請求権を排除する特約は有効です。
強行規定と任意規定の区別は借地借家法の頻出論点です。更新と正当事由(26条から28条まで、30条により強行規定)は排除できないが、造作買取請求権(33条)は排除できる。この対比で覚えてください。詳細は造作買取請求権と有益費償還請求権にあります。
賃料は合意だけでは固定できない
賃貸経営の収支計算で最も見落とされやすいのが、借地借家法32条の借賃増減請求権です。
同条1項は、建物の借賃が、土地もしくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地もしくは建物の価格の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動により、または近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができると定めています。
「契約の条件にかかわらず」という文言が効いています。契約書で賃料を固定していても、この請求権は行使できます。ただし、同項ただし書は、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合にはその定めに従うとしています。増額しない特約は有効で、減額しない特約は原則として無効という非対称があるわけです。賃借人に不利な方向の特約だけが制限されている、という借地借家法全体の性格がここにも現れています。
投資の設計という観点では、賃料が将来にわたって契約時の水準で固定されるという前提が、条文上は成り立たないということになります。増額を求められる可能性も、減額を求められる可能性も、法律上は開かれています。
定期借家では借賃改定特約が32条を排除する
例外があります。定期建物賃貸借について、借賃の改定に係る特約がある場合には、32条の規定は適用されません。
これは定期借家を選ぶ実質的な理由の一つです。改定のルールを特約で定めておけば、増減請求権による変動を排除して、あらかじめ決めた条件で賃料を動かすことができます。普通借家では合意で固定できない賃料が、定期借家では特約によってコントロールできる。更新の可否だけでなく、賃料の扱いも普通借家と定期借家で違うという点は、両者を比較するときの重要な軸になります。
賃貸借契約全般の論点は賃貸借契約の注意点で条文に沿って整理しています。敷金の扱いは敷金・礼金・仲介手数料を参照してください。
区分所有建物に投資する場合
区分所有建物を対象にすると、建物の区分所有等に関する法律が全面的に作動します。区分所有者になるということは、単に部屋を所有するだけでなく、団体の構成員になるということです。
専有部分と共用部分
区分所有法2条は、区分所有権の目的である建物の部分を専有部分と定義し、専有部分以外の建物の部分を共用部分としています。廊下、階段、エントランス、外壁、屋上といった部分は共用部分であり、区分所有者の共有に属します。
この区別は、修繕の責任の所在を決めます。専有部分の内部は所有者が自分で維持しますが、共用部分の修繕は管理組合が行い、費用は管理費や修繕積立金でまかなわれます。所有している部屋の窓や玄関扉が共用部分に当たる扱いになっている場合、勝手に交換できないことがあります。制度の骨格は区分所有法にまとめています。
敷地利用権は専有部分と分離して処分できない
区分所有法22条1項は、敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者はその有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができないと定めています。ただし、規約に別段の定めがあるときはこの限りでないとされています。
原則として分離処分は禁止で、規約で別段の定めを置けば可能になるという構造です。この規定があるため、区分所有建物の売買では専有部分と敷地利用権が一体で移転します。土地だけ、建物だけを切り離して処分することは原則としてできません。
管理費の滞納は買主に承継される
投資の場面で最も直接的に効いてくるのが、区分所有法8条です。同条は、7条1項に規定する債権、すなわち共用部分等について他の区分所有者に対して有する債権や、規約または集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができると定めています。
管理費や修繕積立金の滞納がある部屋を買った場合、管理組合は買主に対してその滞納分を請求できるということです。売主が払っていない分を、買主が負うことになります。特定承継人には売買による取得者が含まれます。
これが、重要事項説明で管理費等の滞納額を説明させる理由です。買主にとっては、滞納額が価格に反映されるべき情報であるだけでなく、自分が負担する可能性のある債務の額そのものだからです。「前の所有者の未払いだから関係ない」という理解は、条文に照らして誤りです。
決議要件と規約
区分所有法3条は、区分所有者は全員で建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成すると定めています。管理組合は、加入するかどうかを選べる任意団体ではなく、区分所有者になれば当然に構成員となる団体です。
決議には要件があります。通常の管理事項は集会の決議によりますが、共用部分の変更で形状または効用の著しい変更を伴うもの(17条1項)や、規約の設定、変更、廃止(31条1項)は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議が必要です。建替えの決議は各5分の4以上です(62条1項)。決議要件の整理は区分所有法の特別決議で扱っています。
投資の観点でこれが意味するのは、大規模修繕や規約の変更といった建物の価値に関わる決定を、自分ひとりでは決められないということです。区分所有建物への投資は、他の区分所有者との合意形成が前提になる形態だということが、条文の要件から読み取れます。
管理を委託する場合
賃貸住宅管理業法という別の法律
前述のとおり、自ら貸借は宅建業法の規制対象外です。しかし、オーナーから委託を受けて管理を行う事業者や、一括で借り上げて転貸するサブリース業者は、宅建業法の外側で事業を行うことになります。この空白を埋めたのが、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律、いわゆる賃貸住宅管理業法です。2021年6月に全面施行されました。
この法律は、性格の異なる二つの規制を束ねています。ひとつが賃貸住宅管理業に対する登録制度で、管理戸数が200戸以上の事業者に登録義務があります。もうひとつが特定賃貸借契約、すなわちサブリースに対する行為規制です。
サブリース規制は登録の有無を問わない
この二つは対象範囲が違います。登録制度は一定規模以上の事業者だけを対象としますが、サブリースに対する行為規制は、登録を受けているかどうかにかかわらず、また事業規模の大小にかかわらず、すべての特定転貸事業者と勧誘者に及びます。
規制の内容は、誇大広告等の禁止、不当な勧誘等の禁止、そして特定賃貸借契約の締結前における重要事項の説明と書面の交付です。「家賃保証」「空室でも収入が入る」といった表示が、実際には賃料の減額を受ける可能性があるにもかかわらず、その点を明示せずに行われることが問題になりました。この立法の背景には、サブリース契約をめぐる紛争が社会問題化したという経緯があります。
そして紛争の核心にあったのが、前述の借地借家法32条です。サブリース契約も建物の賃貸借であるため、借地借家法が適用され、サブリース業者は賃借人としてオーナーに対して借賃減額請求権を行使できます。「30年間家賃保証」という契約であっても、32条の適用を契約で排除することは原則としてできません。つまり、保証されているように見える賃料が、法律上は減額請求の対象になりうる。この構造が理解されないまま契約が広がったことが、規制立法につながりました。
借地借家法の条文を知っていれば、サブリースの「家賃保証」が何を保証していて何を保証していないのかを読み取れます。宅建の知識が投資の場面で意味を持つ典型例が、ここです。
登録の要件、業務管理者の選任義務、管理受託契約の締結前説明、サブリース規制の各条文といった詳細は賃貸住宅管理業法の全体像にまとめてあります。管理会社が実際に何をしているかは不動産管理会社の仕事内容を参照してください。
収益をどう評価するか
収益還元法は不動産鑑定評価基準上の手法
利回りという言葉を条文の側から見ると、不動産鑑定評価基準の収益還元法に行き着きます。
不動産鑑定評価基準は、価格を求める鑑定評価の手法として、原価法、取引事例比較法、収益還元法の三つを挙げています。原価法は費用性に着目して再調達原価から積算価格を求める手法、取引事例比較法は市場性に着目して取引事例から比準価格を求める手法、そして収益還元法は収益性に着目する手法です。
収益還元法は、対象不動産が将来生み出すと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法とされ、この手法による試算価格を収益価格といいます。賃貸用不動産または賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を求める場合に特に有効とされており、自用の不動産であっても賃貸を想定することにより適用できるとされています。3手法の整理は不動産の鑑定評価にあります。
直接還元法とDCF法
収益還元法には二つの方法があります。
直接還元法は、一期間の純収益を還元利回りによって還元して収益価格を求める方法です。年間の純収益を還元利回りで割ると価格が出る、という関係になります。計算が単純で、一期間の収益が安定して継続すると想定できる場合に用いられます。
DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益と復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法です。将来の収益の変動や、保有期間の終了時に売却して得られる価格まで織り込みます。証券化対象不動産の鑑定評価にあたっては、DCF法を適用しなければならないとされています。
宅建試験では、この二つの区別と、収益還元法が3手法のうちどれに当たるかが問われます。土地の公的価格との関係は土地の価格はどう決まる、地価公示の仕組みは地価公示法で扱っています。
広告の「利回り」との違い
ここまでを踏まえると、物件広告に表示される利回りが何を表しているかも位置づけられます。
物件広告に「利回り」として表示される数値が何を分子と分母に取っているかは、表示する側の定義によります。表面利回りと呼ばれる計算では、年間の賃料収入をそのまま物件価格で割ります。
これに対し、鑑定評価基準の還元利回りは純収益を基礎とします。純収益は総収益から総費用を控除した額であり、賃料収入そのものではありません。分子が違う以上、同じ物件について両者が一致することはありません。
したがって、二つの数値を並べて比較することに意味はありません。これは投資判断の話ではなく、定義が違う数値どうしは比較できないという算術上の話です。鑑定評価基準が純収益という概念をわざわざ定義しているのは、収益から費用を控除するという操作を経なければ収益性を価格に接続できないからです。数値を見たときに確認すべきなのは水準ではなく、何を何で割ったのかという定義のほうです。
税が作動する場面
不動産の取得、保有、譲渡のそれぞれの局面で税が発生します。税率や特例の適用期限は年度ごとに動くため、ここでは制度の位置づけだけを示します。
取得の局面では、不動産取得税、登録免許税、印紙税が問題になります。不動産取得税は都道府県税で、登録免許税は登記に際して課される国税です。印紙税は課税文書の作成に対して課されます。整理は登録免許税と印紙税にあります。
保有の局面では、固定資産税と都市計画税が毎年課されます。住宅用地に対する課税標準の特例など、住宅として使われていることを理由とする軽減措置が置かれています。内容は固定資産税を参照してください。
譲渡の局面では、譲渡所得に対する課税が問題になります。所有期間が5年を超えるかどうかで長期譲渡所得と短期譲渡所得に区分され、税率が異なります。この5年の判定が譲渡した年の1月1日時点を基準とすることは頻出の論点です。居住用財産に関する特例の適用範囲を含めて譲渡所得税の特例で扱っています。
不動産に関する税の全体像は不動産にかかる税金の全体像にまとめています。税制は毎年度改正が入り、宅建試験では試験実施年度の4月1日時点で施行されている内容が出題対象になります。
試験での出題ポイント
「自ら貸借」の扱いを反転させる肢
宅建業法2条2号の定義から自ら貸借が外れていることは、繰り返し問われます。「自ら所有するアパートを不特定多数に反復継続して賃貸する行為は、宅地建物取引業に該当する」という肢は誤りです。規模も反復継続性も関係ありません。
転貸についても同様です。「他人から借り受けた建物を反復継続して転貸する行為は免許を要する」という肢も誤りです。転貸は自ら貸借に含まれます。
逆に、自ら売主として反復継続して売却する行為や、他人の物件の貸借を媒介する行為は免許を要します。「自ら」なら売買と交換だけ、「代理・媒介」なら貸借も含む、という対応で処理してください。
8種制限の適用範囲を広げる肢
8種制限は、売主が宅建業者で買主が宅建業者でない場合にだけ適用されます(78条2項)。「宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約においては、買主が宅地建物取引業者であっても手付の額は代金の10分の2を超えてはならない」という肢は誤りです。
逆に、売主が宅建業者でない個人で、宅建業者が媒介しているだけの取引にも8種制限は及びません。誰が売主かで判定する規定だという点を落とさないでください。
正当事由と立退料の関係を逆にする肢
借地借家法28条は、立退料の申出を正当事由の考慮要素の一つとして位置づけています。「賃貸人が相当額の立退料を提供すれば、正当事由があるものとされる」という肢は誤りです。
考慮要素の筆頭に置かれているのは、賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情です。立退料はこれを補完するものであって、単独で正当事由を作るものではありません。
定期借家の要件を緩める肢
定期建物賃貸借については、要件を一つずつ外した肢が作られます。「口頭の合意でも当事者間で更新がない旨を確認していれば定期建物賃貸借となる」という肢は誤りで、書面によることが必要です。
事前説明の書面についても同様です。「契約書に更新がない旨の条項を設け、その条項を読み上げて説明すれば足りる」という肢は誤りです。最高裁平成24年9月13日判決により、説明の書面は契約書とは別個独立の書面でなければなりません。説明を欠いた場合の効果も問われます。契約全体が無効になるのではなく、更新がないこととする旨の定めが無効になり、普通借家として扱われます。
借賃増減請求権を排除できるかを問う肢
借地借家法32条1項は「契約の条件にかかわらず」増減を請求できるとしています。「賃料を改定しない旨の特約があるときは、借賃増減請求権を行使できない」という肢は、方向によって正誤が変わります。
一定期間増額しない旨の特約は同項ただし書により有効なので、この特約があれば増額請求はできません。これに対し、減額しない旨の特約は賃借人に不利なため、原則として効力が認められません。増額と減額で扱いが違うという非対称を押さえてください。
そして定期建物賃貸借については、借賃の改定に係る特約があれば32条が適用されません。普通借家と定期借家で結論が変わるので、どちらの話かを先に確定させる必要があります。
造作買取請求権を強行規定とする肢
借地借家法37条が強行規定として挙げているのは31条、34条、35条であり、33条の造作買取請求権は含まれていません。「造作買取請求権を排除する特約は賃借人に不利であるため無効である」という肢は誤りです。
更新と正当事由に関する規定(30条により強行規定)と、造作買取請求権(任意規定)を混同させる出題がされます。
管理費の滞納の承継を否定する肢
区分所有法8条により、管理費等の債権は特定承継人に対しても行使できます。「専有部分を買い受けた者は、前所有者が滞納していた管理費を支払う義務を負わない」という肢は誤りです。
この論点は、重要事項説明で滞納額を説明させる規定(35条1項6号、施行規則16条の2)とセットで問われることがあります。説明義務と承継の効果は表裏の関係にあります。
分離処分の禁止に例外がないとする肢
区分所有法22条1項は分離処分を禁止していますが、ただし書で規約に別段の定めがあるときは例外を認めています。「区分所有者は、いかなる場合も専有部分と敷地利用権を分離して処分することができない」という肢は誤りです。原則と例外の両方を持ってください。
収益還元法の方法を入れ替える肢
収益還元法には直接還元法とDCF法があります。「直接還元法は、連続する複数の期間に発生する純収益および復帰価格を現在価値に割り引いて合計する方法である」という肢は誤りで、これはDCF法の説明です。
また、収益還元法が原価法や取引事例比較法と並ぶ手法であること、賃貸用不動産の評価に特に有効とされること、自用の不動産にも賃貸を想定して適用できることが、それぞれ出題されます。
覚え方・整理の仕方
「自ら」と「代理・媒介」で表を頭に作らない
自ら貸借が免許不要であることは、定義の文言をそのまま追えば出てきます。2条2号は「売買若しくは交換」と「売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介」を書き分けており、前者に貸借が入っていません。
覚え方は「自ら貸すのは自由、他人のを扱うなら免許」です。自分の財産をどう使うかは本人の自由なので規制が及ばず、他人の取引に介入するなら規制が及ぶ。この理由づけまで持っておけば、転貸が免許不要であることも同じ理屈で導けます。
借家の終了は「普通は終わらない、定期は終わる」
借地借家法の建物賃貸借は、普通借家と定期借家の二本立てで理解します。
普通借家は、期間が来ても更新され(26条)、更新を拒むには正当事由が要り(28条)、これに反する賃借人に不利な特約は無効です(30条)。要するに、貸主の側から終わらせにくい。
定期借家は、書面で契約し、契約書とは別の書面で事前説明をすれば、期間の満了で確定的に終わります(38条)。要するに、終わる。
この対比を軸にして、賃料の扱いも並べます。普通借家では32条の増減請求を合意で排除できないが、定期借家では借賃改定特約があれば32条が適用されない。終了と賃料の両方で、普通借家は硬く、定期借家は柔らかい。
強行規定かどうかは条文の番号で確認する
借地借家法は、条文ごとに強行規定かどうかが決まっています。30条は26条から28条までを、37条は31条・34条・35条を、それぞれ賃借人に不利な特約を無効とする対象としています。
したがって「賃借人に不利だから無効」と一般化してはいけません。33条の造作買取請求権は、賃借人の権利でありながら、この保護リストに入っていないので特約で排除できます。強行規定かどうかを判定する条文があるのだから、そこを見る、という手順で処理してください。
区分所有は「入ると団体の一員になる」で持つ
区分所有建物を買うと、3条により当然に管理組合の構成員になります。ここから、共用部分の管理は自分ひとりで決められないこと(17条・31条の決議要件)、費用を負担すること(管理費・修繕積立金)、前所有者の未払いを引き継ぐこと(8条)が、すべて同じ根から出てきます。
「部屋を買う」ではなく「団体に加入する」と捉え直すと、8条の承継も納得のいく帰結になります。団体の債権は、その持分を承継した者に対して行使できる、という発想です。
利回りは「何を何で割ったか」を毎回確認する
利回りという語は、定義が一つに定まっていません。広告の表示、還元利回り、実際の収支から出した数値は、それぞれ分子と分母が違います。
鑑定評価基準の側では、純収益を還元利回りで割ると収益価格が出る、という関係が定義されています。純収益は総収益から総費用を控除した額です。試験で問われるのはこの定義のほうなので、数値の水準ではなく「何を何で割ったか」の構造で覚えてください。
理解度チェッククイズ
Q1. 自ら所有する複数の建物を、不特定多数の者に反復継続して賃貸する行為を業として行う場合、宅地建物取引業の免許を受けなければならない。
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×。宅地建物取引業法2条2号は、宅地建物取引業を「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」と定義しています。自ら当事者となる行為として挙げられているのは売買と交換だけで、貸借は含まれていません。したがって自ら貸主となる行為は、規模や反復継続性にかかわらず宅地建物取引業に当たらず、免許は不要です。他人から借り受けた建物を転貸する行為も、転貸人と転借人のあいだでは自ら貸借にあたるため同様です。Q2. 建物の賃貸人が、期間の定めのある建物賃貸借について更新をしない旨の通知をする場合、相当額の立退料を提供すれば正当の事由があるものとされる。
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×。借地借家法28条は、正当の事由の判断において、賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況および現況を考慮するものとし、立退料の申出はこれらの事情と並べて考慮される要素の一つとして位置づけられています。立退料の提供だけで正当事由が認められる構造ではありません。なお、26条1項により、期間の満了の1年前から6か月前までのあいだに通知をしなければ、そもそも従前と同一の条件で更新したものとみなされます。Q3. 定期建物賃貸借を締結する場合、賃貸人は、契約書に更新がない旨の条項を設けたうえで、その条項を賃借人に読み上げて説明すれば、事前説明の要件を満たす。
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×。借地借家法38条は、賃貸人があらかじめ賃借人に対し、更新がなく期間の満了により賃貸借が終了する旨を記載した書面を交付して説明しなければならないとしています。最高裁判所平成24年9月13日判決は、この書面が契約書とは別個独立の書面でなければならないと判断しました。契約書内の条項では要件を満たしません。説明を欠いた場合、契約自体が無効になるのではなく、更新がないこととする旨の定めが無効になり、普通借家として扱われます。Q4. 建物の賃貸借契約において、一定期間借賃を増額しない旨の特約がある場合、賃貸人は借賃の増額を請求することができない。
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○。借地借家法32条1項は、契約の条件にかかわらず当事者が借賃の増減を請求できると定めていますが、同項ただし書は、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合にはその定めに従うとしています。したがって増額しない特約は有効です。これに対し、減額しない旨の特約は賃借人に不利なため原則として効力が認められず、増額と減額で扱いが異なります。なお、定期建物賃貸借について借賃の改定に係る特約がある場合には、32条の規定自体が適用されません。Q5. 区分所有建物の専有部分を買い受けた者は、前の区分所有者が滞納していた管理費について、管理組合から請求されることはない。
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×。建物の区分所有等に関する法律8条は、7条1項に規定する債権について、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができると定めています。売買によって専有部分を取得した者は特定承継人にあたるため、前所有者の滞納分を請求されます。この効果があるからこそ、宅地建物取引業法35条1項6号および施行規則16条の2は、区分所有建物の重要事項説明において管理費等の滞納額を説明させています。説明義務と承継の効果は表裏の関係にあります。Q6. 収益還元法のうち直接還元法は、連続する複数の期間に発生する純収益および復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計して収益価格を求める方法である。
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×。これはDCF法の説明です。直接還元法は、一期間の純収益を還元利回りによって還元して収益価格を求める方法です。不動産鑑定評価基準は、価格を求める手法として原価法、取引事例比較法、収益還元法の三つを挙げており、収益還元法は賃貸用不動産または賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を求める場合に特に有効とされます。自用の不動産であっても、賃貸を想定することにより適用できます。証券化対象不動産の鑑定評価にあたってはDCF法を適用しなければならないとされています。よくある質問
Q. 自分の物件を貸すのに宅建の資格は必要ですか。
必要ありません。自ら貸主となる行為は宅地建物取引業法2条2号の定義に含まれないため、免許も宅建士も不要です。ただし、他人の物件の貸借を媒介して報酬を得る行為には免許が要ります。
Q. 契約書に「期間満了で終了し更新しない」と書けば、期間満了で明け渡してもらえますか。
普通借家では、その条項は無効です。借地借家法30条は、26条から28条までの規定に反する特約で賃借人に不利なものを無効としています。期間満了で確定的に終了させるには、38条の定期建物賃貸借の要件、すなわち書面による契約と、契約書とは別個独立の書面による事前説明を満たす必要があります。
Q. 契約書で家賃を固定しておけば、後から減額を求められることはありませんか。
普通借家では、借地借家法32条1項が「契約の条件にかかわらず」増減を請求できるとしているため、固定する合意があっても減額請求は可能です。増額しない旨の特約は同項ただし書により有効ですが、減額しない旨の特約は賃借人に不利なため原則として効力が認められません。定期建物賃貸借で借賃の改定に係る特約がある場合には、32条自体が適用されません。
Q. サブリースの「家賃保証」は法律上どう位置づけられますか。
サブリース契約も建物の賃貸借であるため借地借家法が適用され、賃借人であるサブリース業者は32条により借賃の減額を請求できます。この点を明示せずに家賃保証をうたう広告や勧誘が問題となり、賃貸住宅管理業法による誇大広告等の禁止、不当な勧誘等の禁止、締結前の重要事項説明が設けられました。これらのサブリース規制は、登録の有無や事業規模にかかわらずすべての特定転貸事業者に及びます。
Q. 管理費が滞納されている中古マンションを買うとどうなりますか。
区分所有法8条により、管理組合は特定承継人である買主に対して滞納分を請求できます。宅地建物取引業者が媒介する取引では、重要事項説明で滞納額が説明されます。
Q. 広告に出ている利回りと、鑑定評価でいう還元利回りは同じものですか。
別の概念です。表面利回りと呼ばれる計算は賃料収入をそのまま物件価格で割りますが、還元利回りは純収益、すなわち総収益から総費用を控除した額を基礎とします。分子が違うため、同じ物件について両者が一致することはありません。
Q. 一棟の物件を買うときに届出が必要になることはありますか。
面積によっては国土利用計画法23条の事後届出が必要です。市街化区域では2,000平方メートル以上、市街化区域を除く都市計画区域では5,000平方メートル以上、都市計画区域外では10,000平方メートル以上が対象で、権利取得者が契約締結の日から起算して2週間以内に都道府県知事へ届け出ます。
まとめ
不動産投資という場面には、宅建の4分野が同時に作動します。
宅建業法の側では、自ら貸借が2条2号の定義から外れているため大家に免許は不要である一方、買う場面では35条の重要事項説明が働き、売主が宅建業者で買主が業者でなければ8種制限が適用されます。権利関係の側では、借地借家法が普通借家の終了を正当事由で縛り(28条・30条)、賃料を合意だけでは固定させず(32条)、区分所有法が管理費の滞納を特定承継人に承継させます(8条)。法令上の制限の側では、面積によって国土利用計画法の事後届出が作動します。そして収益の評価は、不動産鑑定評価基準の収益還元法という枠組みで扱われます。
この記事で扱ったのは、条文で確かめられる作動点だけです。どの物件が良いか、どれだけの収益が見込めるかという判断は扱っていません。宅建の学習が投資の場面で意味を持つとすれば、それは有利な選択を教えてくれるからではなく、契約書や広告に書かれていることが法律上どう扱われるかを自分で確認できるようになる、という一点にあります。サブリースの家賃保証が32条の減額請求とどう関係するかを読み取れることが、その具体例です。
各分野の演習は、宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングと年度別過去問で進められます。
税と価格の評定は毎年ほぼ同じ形で出ます。出題パターンを肢別で押さえれば取りこぼしません。