宅建試験AIブートラボ 宅建試験AIブートラボ

その他の法令上の制限|許可権者を復元する手順

法令上の制限 読了 約23分

その他の法令の1問を、区域・行為・許可か届出か・誰かの4つの問いに分解して解く手順を示します。管理者系・大臣系・知事系の3系統と、35条書面との接続まで整理。

目次

    この記事は、主要6法以外の法令から出題される1問を、法律名を見て許可権者と手続を復元できるようにするための手順を示すものです。景観法と品確法を中心とした個別の法律の中身は景観法と品確法が担当するので、ここでは判断の型と、重要事項説明との接続に集中します。論点を性質ごとに仕分ける考え方は法令上の制限の頻出論点で扱っています。

    結論を先に述べます。この1問で問われているのは知識量ではなく、対応関係の正確さです。「この区域でこの行為をするには、誰の許可がいるか」という同じ形の問いが4つ並んでいるだけで、法律ごとに深い理解を求められることはありません。したがって、法律名から許可権者を引き出す経路さえ作っておけば、初めて見る法律が混ざっていても3つは処理できます。以下、その経路の作り方を示します。

    なぜ「その他の法令」がまとめて1問になるのか

    主要6法とそれ以外

    法令上の制限で問われる法律のうち、都市計画法、建築基準法、国土利用計画法、農地法、宅地造成及び特定盛土等規制法、土地区画整理法の6つは、それぞれ単独で1問または2問を構成します。範囲が広く、論点も深いからです。

    これに対して、道路法、河川法、海岸法、港湾法、自然公園法、森林法、文化財保護法、生産緑地法、都市緑地法、急傾斜地法、地すべり等防止法、砂防法、土壌汚染対策法、自然環境保全法、公有地の拡大の推進に関する法律といった法律は、1つずつでは1問分の分量になりません。そこで4つの選択肢に別々の法律を割り当てて、まとめて1問にする形が定着しています。

    宅地造成の規制については、2023年5月26日に宅地造成等規制法が宅地造成及び特定盛土等規制法、いわゆる盛土規制法へと改組されています。旧法名で書かれた教材は現行制度を反映していないので注意が必要です。制度の内容は宅地造成と盛土規制法で扱っています。

    出題の形が決まっている

    まとめて1問になる以上、1つの法律について踏み込んで問うことができません。結果として、出題は次の形に固定されます。

    ある区域の名前を挙げ、そこで一定の行為をしようとする者が、誰の許可を受けなければならないか、あるいは誰に届け出なければならないかを述べる。その対応関係が正しいかどうかを判定させる。

    つまり選択肢の作り方が「区域・行為・手続・主体」の4点セットになっており、そのどれかを入れ替えて誤りを作ります。この構造を知っていれば、読むべき箇所が決まります。

    どこまでやるかを先に決める

    対象になりうる法律は数十あります。全部を同じ深さで学ぶのは現実的ではありません。

    割り切り方は2つあります。1つは、頻度の高い法律だけを対応関係のレベルで押さえること。もう1つは、知らない法律が出たときに法律名から推測する経路を持っておくことです。この記事は後者に重点を置きます。4つの選択肢のうち2つか3つを確実に処理できれば、正解にはたどり着けるからです。

    判断の手順|4つの問いに分解する

    問い1|どの区域の話か

    まず、選択肢が挙げている区域名を確認します。砂防指定地、保安林、海岸保全区域、河川区域、急傾斜地崩壊危険区域、地すべり防止区域、要措置区域、生産緑地地区、特別地域、普通地域。

    区域名そのものが入れ替えられていることがあります。「地すべり危険区域」は存在せず、正しくは「地すべり防止区域」です。区域名は法律が定めた固有名詞なので、似た語に置き換えられていないかを最初に見ます。

    問い2|どの行為が規制されているか

    次に、その区域で何をしようとしているかを確認します。工作物の新築、土地の掘削、土石の採取、立木の伐採、土地の形質変更、土地の占用。

    ここは比較的入れ替えが少ない部分です。どの法律も、その区域を守る目的から見て支障となる行為を規制しているので、常識的な範囲に収まります。河川区域で土地を掘れば河川の機能に影響し、保安林で木を伐れば森林の機能に影響する。目的から行為が導けるので、ここで悩むことは多くありません。

    問い3|許可か届出か

    3つ目が手続の種類です。許可は、行政庁の判断を待ってから行為ができる仕組み。届出は、知らせれば足りる仕組みです。

    規制の強さがそのまま現れます。守る必要が強い区域では許可、弱い区域では届出になります。自然公園法で特別地域が許可、普通地域が届出とされているのは、この対応です。許可と届出の横断整理は法令上の制限の横断整理で扱っています。

    問い4|誰の許可・届出か

    最後が主体です。この1問の得点はここに集約されます。次の節で3系統に分けて整理します。

    4つの問いのうち、問い1と問い4に誤りが仕込まれることがほとんどです。読むときは区域名と主体に印を付ける、という読み方を習慣にすると処理が速くなります。

    規制がかからない場合も用意されている

    4つの問いを通したうえで、もう1つ確認すべきことがあります。許可や届出が要る行為であっても、法律が適用除外を置いている場合があります。

    多くの法律に共通して置かれているのが、非常災害のために必要な応急措置として行う行為、通常の管理行為や軽易な行為、そして国または地方公共団体が行う行為です。森林法10条の2第1項ただし書は、国または地方公共団体が行う場合、火災、風水害その他の非常災害のために必要な応急措置として行う場合などを許可の対象から外しています。

    理屈は共通しています。災害が起きている最中に許可を待たせては人命に関わる。日常的な手入れまで許可にかからせては制度が回らない。国や自治体が行う行為は、別の手続で公益性が確保されている。

    出題では、この適用除外を落として「いかなる場合も許可が必要である」とする形や、逆に適用除外を広げすぎる形が作られます。「非常災害のための応急措置」という語が選択肢に出てきたら、原則として許可不要の方向に働く、と反応できるようにしておきます。

    主要6法の側にも同じ形の論点がある

    許可権者を問う出題は6法にもある

    その他の法令の1問だけが許可権者を問うわけではありません。主要6法の側にも、同じ形の論点があります。

    都市計画法53条1項は、都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者に、都道府県知事等の許可を受けることを求めています。開発許可も都道府県知事です。都市計画法の制限は都市計画法の制限、開発許可は開発許可で扱っています。

    土地区画整理法76条1項は、施行地区内での土地の形質の変更や建築物の新築などについて許可を要求していますが、許可権者は国土交通大臣が施行する事業では国土交通大臣、その他の者が施行する事業では都道府県知事、市の区域内において個人施行者や組合などが施行する事業ではその市の長です。組合が施行者であっても許可を出すのは組合ではありません。詳細は土地区画整理法で扱っています。

    農地法では、3条の権利移動が農業委員会、4条の転用と5条の転用目的の権利移動が都道府県知事等というように、同じ法律の中で条ごとに権者が変わります。国土利用計画法の事後届出は都道府県知事に対して行いますが、提出は市町村長を経由します。農地法は農地転用の基礎、国土利用計画法は国土利用計画法で扱っています。

    6法とその他を同じ一覧に乗せる

    したがって、許可権者の一覧を作るときは、その他の法令だけを対象にしないほうが効率的です。主要6法も含めて1枚に並べると、原則が都道府県知事であること、そこから外れるのが管理者・大臣・農業委員会・市町村長・市長であることが一目で見えます。

    問題を解いている最中に、その他の法令の選択肢と主要6法の選択肢が同じ問いの中に混ざることもあります。法令の区分ではなく主体の区分で持っておくほうが、実戦では役に立ちます。

    許可権者は3つの系統に分かれる

    系統1|管理者が許可する法律

    第一の系統は、その施設や区域を管理している主体が許可を出すものです。

    道路法では、道路に工作物や物件を設けて継続して使用しようとする場合に道路管理者の許可が必要です(道路法32条)。河川法では、河川区域内の土地の占用、土石の採取、工作物の新築・改築・除却、土地の掘削や盛土などについて河川管理者の許可が必要です(河川法24条から27条)。海岸法では、海岸保全区域内での土地の占用、土石の採取、施設や工作物の新設・改築に海岸管理者の許可が必要です(海岸法7条、8条)。

    港湾法37条1項は、港湾区域内において、または港湾管理者が指定する港湾隣接地域内において、水域もしくは公共空地の占用、港湾区域内水域における土砂の採取、水域施設や外郭施設などの建設または改良などをしようとする者は、港湾管理者の許可を受けなければならないと定めています。港湾区域だけでなく港湾隣接地域についても許可であって、届出ではありません。

    この4つに共通するのは、対象が公共の施設または公物であることです。国や自治体が管理者として日常的に管理しているのだから、その管理者が判断する。行政区画に対応する知事ではなく、管理主体が出てくる理由がここにあります。

    系統2|大臣または文化庁長官が許可する法律

    第二の系統は、国のレベルで判断する必要があるものです。

    自然公園法では、国立公園の特別地域における工作物の新築、木竹の伐採、土石の採取などに環境大臣の許可が必要です。国定公園については同じ行為に都道府県知事の許可が必要です(自然公園法20条3項)。国が指定して国が管理するのが国立公園、国が指定して都道府県が管理するのが国定公園という違いが、そのまま許可権者に反映しています。

    文化財保護法では、重要文化財に関し現状を変更し、またはその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときに、文化庁長官の許可が必要です(文化財保護法43条1項)。

    もう1つ、周知の埋蔵文化財包蔵地についての規定があります。文化財保護法93条1項は、土木工事その他埋蔵文化財の調査以外の目的で周知の埋蔵文化財包蔵地を発掘しようとする場合に、工事に着手しようとする日の60日前までに文化庁長官に届け出なければならないと定めています。

    条文上の届出先は文化庁長官です。ただし同法184条とその施行令により、この事務は都道府県や指定都市などの教育委員会に委任されているため、実際の提出先は都道府県の教育委員会(市町村の教育委員会を経由)になります。「文化庁長官への届出」と「都道府県教育委員会が受理する」は矛盾しません。条文上の主体と実務の窓口が違うだけです。ここは許可ではなく届出である点、期限が60日前である点とあわせて押さえます。

    系統3|都道府県知事、そして市町村長

    第三の系統が原則です。上の2系統に入らないものは、ほぼ都道府県知事の許可になります。

    森林法では、地域森林計画の対象となっている民有林において一定規模を超える開発行為をしようとする者に、都道府県知事の許可が必要です(森林法10条の2)。保安林においては、立木の伐採に都道府県知事の許可が必要です(同法34条1項)。保安林の指定および解除は農林水産大臣または都道府県知事が行いますが、区域内の行為の許可は都道府県知事です。

    砂防法では、砂防指定地内における一定の行為が制限され、都道府県知事の許可を受けることになります。ここで注意したいのは、砂防指定地を指定するのは国土交通大臣である点です。指定する主体と、区域内の行為を許可する主体が違います。

    地すべり等防止法では、地すべり防止区域内で地下水を誘致し停滞させる行為、地下水の排水施設の機能を阻害する行為、工作物の新築・改築、のり切や切土などをしようとする場合に、都道府県知事の許可が必要です(同法18条)。地すべり防止区域を指定するのは主務大臣です。ここでも指定と許可で主体が分かれます。

    急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律では、急傾斜地崩壊危険区域内で水を放流し停滞させる行為、のり切、切土、掘削、立木竹の伐採、工作物の設置などをしようとする場合に、都道府県知事の許可が必要です。区域の指定も都道府県知事が行います。急傾斜地とは傾斜度が30度以上の土地をいいます。

    土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律では、土砂災害特別警戒区域内における特定開発行為に都道府県知事の許可が必要です。土砂災害警戒区域のほうには行為制限がなく、警戒避難体制の整備が中心である点が対比になります。

    自然環境保全法にも自然公園法と似た構造があり、原生自然環境保全地域と自然環境保全地域については環境大臣、都道府県自然環境保全地域については都道府県知事が関与します。

    そして例外的に市町村長が出てくるのが生産緑地法です。生産緑地地区内において建築物その他の工作物の新築・改築・増築、宅地の造成や土石の採取などをしようとする者は、市町村長の許可を受けなければなりません(生産緑地法8条1項)。生産緑地地区は市街化区域内の農地等を市町村が都市計画で定めるものなので、市町村のレベルで完結します。

    面積要件にも注意が必要です。生産緑地地区の面積要件は原則として500平方メートル以上ですが、2017年の改正により、市町村が条例を定めることで300平方メートルまで引き下げられるようになりました。「300平方メートル以上」とだけ覚えていると、条例を定めていない市町村の事例で誤ります。

    都市緑地法、密集市街地整備法、都市再開発法、津波防災地域づくり法、公有地の拡大の推進に関する法律の内容は景観法と品確法で扱っています。

    代表的な区域では何が規制されるのか

    河川区域と河川保全区域は二重になっている

    河川法の区域は2層です。河川区域は流水が及ぶ範囲そのもので、ここでの土地の占用、土石の採取、工作物の新築・改築・除却、土地の掘削や盛土に河川管理者の許可が必要です(24条から27条)。

    その外側に河川保全区域があります。河川管理施設を保全するために河川区域に隣接する区域を指定するもので(54条)、ここでも土地の掘削、盛土、切土その他土地の形状を変更する行為、工作物の新築・改築に河川管理者の許可が必要です(55条1項)。

    河川区域の中に私有地があることも、河川保全区域に宅地が含まれることもあります。「河川の中の話だから自分の土地には関係ない」とはならない点が、重要事項説明で問題になる理由です。

    海岸保全区域と港湾区域は占用が中心

    海岸保全区域では、土地の占用、土石の採取、施設や工作物の新設・改築が海岸管理者の許可の対象です(海岸法7条、8条)。港湾区域と港湾隣接地域では、水域または公共空地の占用、港湾区域内水域における土砂の採取、水域施設や外郭施設の建設・改良が港湾管理者の許可の対象です(港湾法37条1項)。

    どちらも「占用」が最初に来ます。公共の用に供されている場所を特定の者が排他的に使う行為なので、管理者の判断が要るという構造です。

    砂防指定地と防災3法は土をいじる行為

    砂防指定地、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域は、いずれも土砂の移動によって災害が起きうる場所です。したがって規制されるのは土をいじる行為が中心になります。

    土地の掘削、のり切、切土、盛土、土石の採取。これに工作物の新築・改築が加わり、地すべり等防止法では地下水を誘致し停滞させる行為や、地下水の排水施設の機能を阻害する行為という、この法律に固有の類型が入ります。地すべりは地下水が引き金になるため、水の扱いが規制の中心に来ます。

    急傾斜地法では立木竹の伐採も規制されます。木の根が斜面を保持しているので、伐ると崩れやすくなるからです。区域の目的を考えると、なぜその行為が規制されるのかが導けます。

    保安林は木を伐る行為

    保安林で規制されるのは、立木の伐採、立木の損傷、家畜の放牧、下草や落葉の採取、土石や樹根の採掘、それに土地の形質を変更する行為です。

    森林の機能を維持することが目的なので、森林そのものを損なう行為が並びます。都道府県知事の許可を受けなければなりません(森林法34条1項)。

    これに対して地域森林計画対象民有林の開発許可(10条の2)は、森林を宅地などに転換する場面の規制です。同じ森林法でも、保護の対象が違えば規制する行為も違います。

    埋蔵文化財包蔵地と土壌汚染の区域は土を掘る行為

    周知の埋蔵文化財包蔵地で問題になるのは発掘、すなわち土を掘る行為です。地中の遺跡を壊さないための規制なので、建物を建てるための掘削も対象になります。

    土壌汚染対策法の2つの区域で問題になるのは土地の形質の変更です。汚染された土を動かすと汚染が広がるので、動かす行為そのものを規制します。

    どちらも地面より下を扱う法律で、地表に何を建てるかではなく、土をどう動かすかが規制の対象です。建築基準法や都市計画法が地表より上を規律しているのと対照的で、建築基準法都市計画法の制限をクリアしていても、これらの規制は別にかかります。

    許可なのか、届出なのか

    届出で足りる典型

    規制の強さに応じて、許可ではなく届出で足りる場面があります。

    自然公園法の普通地域では、一定規模以上の工作物の新築などについて届出が必要です。特別地域が許可であるのに対し、普通地域は届出。同じ法律の中で区域によって手続が変わる典型です。

    公有地の拡大の推進に関する法律では、都市計画施設の区域内の土地など一定の土地を有償で譲り渡そうとする者が、あらかじめ都道府県知事に届け出なければなりません。届出の対象が有償譲渡に限られるので、相続や贈与は対象外です。

    文化財保護法93条1項の埋蔵文化財包蔵地の発掘も届出です。60日前までという期限とセットで問われます。

    土壌汚染対策法の2つの区域

    許可と届出の対比がもっともはっきり出るのが土壌汚染対策法です。

    要措置区域では、土地の形質の変更が原則として禁止されます。都道府県知事が汚染の除去等の措置を指示する区域なので、勝手に土を動かされては困るからです。

    形質変更時要届出区域では、土地の形質の変更をしようとする者が、着手する日の14日前までに都道府県知事に届け出ることになります。汚染はあるが、適切に管理すれば健康被害のおそれがない区域なので、禁止ではなく届出で足ります。

    区域の名前が手続を語っている点が覚えやすいところです。「要措置」は措置が要る区域だから形質変更は原則禁止。「形質変更時要届出」は形質変更するときに届出が要る区域。名前をそのまま読めば結論が出ます。

    なお、一定規模以上の土地の形質の変更をしようとする者は、着手する日の30日前までに都道府県知事に届け出なければならず、知事が必要と認めるときは調査を命じることがあります。一定規模は原則3,000平方メートル以上ですが、現に有害物質使用特定施設が設置されている工場等の敷地については、より小さい面積が基準になります。

    許可と届出を見分ける一言

    許可は「待つ」、届出は「知らせる」。この一言で足ります。

    許可制の場面では、申請して処分を受けるまで行為ができません。届出制の場面では、届け出れば足り、行政庁の応答を待つ必要がありません。選択肢が「届け出て、その承認を受けなければならない」のような書き方をしていたら、許可と届出を混ぜた誤りである可能性があります。

    重要事項説明とのつながり

    35条1項2号と施行令3条

    その他の法令の知識は、試験の1問で終わりません。宅地建物取引業法35条1項2号が、都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別に応じて政令で定めるものの概要を、重要事項として説明することを求めています。

    その政令が宅地建物取引業法施行令3条です。同条1項が売買・交換の場合を定め、都市計画法・建築基準法をはじめ60を超える法律の規定を列挙しています。この記事で扱ってきた法律の多くが、ここに名を連ねています。

    つまり「その他の法令」は、試験対策のための寄せ集めではありません。宅建士が説明すべき制限として法令が指定している範囲そのものです。重要事項説明の全体像は重要事項説明で扱っています。

    実務では調査の順序になる

    条文の話を実務に置き換えると、この記事の内容はそのまま物件調査の手順になります。

    宅建業者が物件を調査するとき、登記記録を取り、公図と現地を確認したうえで、役所を回ります。都市計画課で用途地域と都市計画施設の有無を確認し、建築指導課で接道と建築制限を確認し、そこから先が「その他の法令」の領域です。

    その土地が河川区域や海岸保全区域にかかっていないか。砂防指定地や地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域に入っていないか。保安林や地域森林計画対象民有林ではないか。周知の埋蔵文化財包蔵地に含まれていないか。土壌汚染対策法の要措置区域または形質変更時要届出区域に指定されていないか。

    いずれも、かかっていれば買主が自由に建てられなくなる事項です。だから施行令3条が説明対象として列挙しています。試験で覚える対応関係は、そのまま「どの窓口に何を聞くか」の一覧になります。物件調査の進め方は物件調査の実務で扱っています。

    契約の類型で範囲が変わる

    施行令3条は、契約の類型によって説明対象の範囲を変えています。

    1項が売買・交換で、範囲がもっとも広くなります。2項が宅地の貸借で、1項の制限からいくつかの規定を除いた範囲です。そして3項が建物の貸借で、ここは新住宅市街地開発法32条1項、新都市基盤整備法51条1項、流通業務市街地の整備に関する法律38条1項という3つの規定に基づく制限だけが対象です。

    建物を借りるだけの人にとって、その建物を建て替えるときの制限や、敷地に係る開発の制限は判断材料になりません。だから範囲が絞られています。この結論は「建物の貸借では都市計画法・建築基準法の制限は説明不要」という形で頻出します。

    そして、この3項に挙がっている新住宅市街地開発法、新都市基盤整備法、流通業務市街地整備法が、その他の法令として法令上の制限でも登場します。どちらの科目で出会っても同じ法律なので、往復して覚えると効率がよくなります。

    試験での出題ポイント

    許可権者の入れ替え

    もっとも多い作り方です。正しい主体を、もっともらしい別の主体に置き換えます。

    保安林の立木の伐採を農林水産大臣の許可とする。河川区域内の工作物の新築を都道府県知事の許可とする。生産緑地地区内の建築を都道府県知事の許可とする。港湾区域内の水域の占用を国土交通大臣の許可とする。いずれも誤りです。

    読むときは、法律名と主体だけを先に照合します。行為の内容が正しくても、主体が違えばその選択肢は誤りなので、内容を精読する必要がありません。

    許可と届出の取り違え

    手続の種類を入れ替える形です。自然公園法の普通地域を許可とする、埋蔵文化財包蔵地の発掘を許可とする、形質変更時要届出区域の形質変更を許可とする。いずれも正しくは届出です。

    逆に、要措置区域内の形質変更を届出で足りるとする選択肢も誤りです。要措置区域では原則禁止です。

    区域名のすり替え

    区域の名称を似た語に置き換えます。地すべり防止区域を地すべり危険区域とする、海岸保全区域を海岸保護区域とする、形質変更時要届出区域を形質変更届出区域とする。法律が定めた固有名詞なので、一字でも違えば誤りです。

    指定する主体と許可する主体を混ぜる

    砂防指定地は国土交通大臣が指定しますが、区域内の行為を許可するのは都道府県知事です。地すべり防止区域は主務大臣が指定しますが、行為の許可は都道府県知事です。

    この2つを混ぜて「砂防指定地内で工作物を新築するには国土交通大臣の許可が必要」とする形の選択肢が作られます。指定と許可は別だ、という一手を持っておく必要があります。

    知らない法律が混ざったときの処理

    4つの選択肢のうち1つか2つは、聞いたことのない法律であることがあります。ここで手が止まると、時間を失ったうえに他の選択肢の判断まで乱れます。

    処理の順序を決めておきます。まず、知っている法律の選択肢から判定します。3つを確実に切れれば、残った1つが答えです。知らない法律の中身を検討する必要はありません。

    それでも判定が付かないときに、初めて法律名から推測します。名称に管理される対象が入っていれば管理者、国が指定するものであれば大臣、それ以外は都道府県知事。この当たりの付け方で、多くの場合は方向が合います。

    そして、どうしても決められないときは深追いしません。この1問に時間をかけるより、都市計画法や建築基準法の問題を丁寧に解くほうが期待値が高いからです。全体の時間配分の考え方は法令上の制限の得点戦略で扱っています。

    改正で数字が変わった箇所

    森林法の開発許可は、面積が引き下げられた場面があります。太陽光発電設備の設置を目的とする開発行為については、0.5ヘクタールを超えるものが許可の対象になりました。従来の1ヘクタール超という数字だけを覚えていると、太陽光の事例で誤ります。

    生産緑地地区の面積要件も、条例による引下げが可能になっています。「300平方メートル以上」を一律の要件として覚えるのではなく、原則500平方メートル以上で条例により300平方メートルまで引下げ可能、と押さえます。

    宅地造成については、宅地造成等規制法という法律名がすでに存在しません。旧法名を使った選択肢や教材は、それ自体が現行制度を反映していないという合図になります。

    覚え方・整理の仕方

    法律名から主体を復元する3ステップ

    初めて見る法律が出てきたときの手順を決めておきます。

    第一に、法律名に「道路」「河川」「海岸」「港湾」のような、管理される対象の名前が入っていないかを見ます。入っていれば、その対象の管理者が許可権者です。

    第二に、国のレベルで守るべきものかを考えます。国立公園、重要文化財、埋蔵文化財のように国が価値を認めて指定するものであれば、環境大臣や文化庁長官が出てきます。

    第三に、どちらでもなければ都道府県知事と判断します。防災系の法律はほぼここに入ります。例外として、市街化区域内の農地を扱う生産緑地法だけが市町村長です。

    この3ステップで、知らない法律でも当たりが付けられます。

    「誰が管理しているか」に戻す

    管理者系がなぜ管理者なのかを一度理解しておくと、記憶が持ちます。

    道路も河川も海岸も港湾も、国や自治体が日常的に管理している公共の施設です。そこに工作物を置いたり土砂を採ったりすれば、管理者の管理そのものに直接影響します。だから管理者が判断する。行政区画の長である知事が出てくる筋合いがありません。

    「その施設を毎日管理しているのは誰か」と問い直せば、答えが出ます。

    防災系は知事でまとめる

    砂防法、地すべり等防止法、急傾斜地法、土砂災害防止法。いずれも災害から住民を守るための法律で、区域内の行為の許可はすべて都道府県知事です。

    災害対応は都道府県の役割なので、まとめて知事と覚えて構いません。ただし区域の指定については、砂防指定地が国土交通大臣、地すべり防止区域が主務大臣というように、国が出てくる場合があります。「行為の許可は知事、指定は法律による」と2段に分けて持ちます。

    例外だけを名前で持つ

    原則を都道府県知事に固定すると、覚えるべき例外は次の数だけになります。

    • 道路法、河川法、海岸法、港湾法は、それぞれの管理者
    • 自然公園法は、国立公園が環境大臣、国定公園が都道府県知事
    • 文化財保護法は文化庁長官(重要文化財の現状変更は許可、埋蔵文化財包蔵地の発掘は60日前までの届出)
    • 生産緑地法は市町村長

    7つの法律を覚えれば、残りは知事と判断できます。数字の横断整理は法令上の制限の暗記術、各法令で何が問われるかは法令上の制限の得点戦略に集めています。

    区域名は「目的が名前に出ている」と読む

    区域名を正確に覚えるのは大変ですが、名前が目的を語っていると読むと崩れにくくなります。

    地すべり「防止」区域は、地すべりを防ぐための区域。海岸「保全」区域は、海岸を保全するための区域。急傾斜地崩壊「危険」区域は、崩壊の危険がある区域。要措置区域は、措置が必要な区域。

    「防止」なのか「危険」なのかは、その区域が何をしようとしているかで決まります。地すべりは防ぐ対象、急傾斜地の崩壊は危険として指定する対象、という違いです。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 保安林において立木を伐採しようとする者は、農林水産大臣の許可を受けなければならない。

    答えを見る 誤り。保安林における立木の伐採には都道府県知事の許可が必要です(森林法34条1項)。保安林の指定および解除については農林水産大臣または都道府県知事が行いますが、区域内の行為の許可権者は都道府県知事です。指定する主体と許可する主体を混ぜた選択肢は、この分野の典型的な誤りの作り方です。

    Q2. 港湾管理者が指定する港湾隣接地域内において水域の占用をしようとする者は、港湾管理者に届け出れば足りる。

    答えを見る 誤り。港湾法37条1項は、港湾区域内において、または港湾管理者が指定する港湾隣接地域内において、水域もしくは公共空地の占用などをしようとする者は港湾管理者の許可を受けなければならないと定めています。港湾隣接地域についても許可であって、届出ではありません。なお主体が港湾管理者である点は正しく、道路法・河川法・海岸法と同じく、管理者が許可を出す系統に属します。

    Q3. 周知の埋蔵文化財包蔵地において土木工事をしようとする者は、工事に着手しようとする日の60日前までに届け出なければならない。

    答えを見る 正しい。文化財保護法93条1項は、土木工事その他埋蔵文化財の調査以外の目的で周知の埋蔵文化財包蔵地を発掘しようとする場合に、着手しようとする日の60日前までに文化庁長官に届け出なければならないと定めています。同法184条とその施行令により、この事務は都道府県や指定都市などの教育委員会に委任されているため、実際の提出は都道府県の教育委員会に対して行います。許可ではなく届出である点も押さえます。

    Q4. 土壌汚染対策法の形質変更時要届出区域内において土地の形質の変更をしようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。

    答えを見る 誤り。形質変更時要届出区域では、着手する日の14日前までに都道府県知事に届け出ることになります。許可ではありません。一方、要措置区域では土地の形質の変更が原則として禁止されます。区域の名前が手続を語っており、「形質変更時要届出」は届出、「要措置」は原則禁止と読み取れます。

    Q5. 生産緑地地区内において建築物を新築しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。

    答えを見る 誤り。生産緑地法8条1項により、生産緑地地区内で建築物その他の工作物の新築・改築・増築、宅地の造成、土石の採取などをしようとする者は、市町村長の許可を受けなければなりません。生産緑地地区は市街化区域内の農地等について市町村が都市計画で定めるものなので、市町村のレベルで完結します。その他の法令のなかで市町村長が許可権者になる数少ない例です。

    まとめ

    その他の法令の1問を取りに行くための整理をします。

    出題は「この区域でこの行為をするには、誰の許可または届出が必要か」という同じ形で4つ並びます。読むべきは区域名と主体で、誤りはほぼこの2か所に仕込まれます。行為の内容は目的から導けるので、精読の必要が薄い部分です。

    許可権者は3系統に分かれます。管理者系は道路法(道路管理者、32条)、河川法(河川管理者、24条から27条)、海岸法(海岸管理者、7条・8条)、港湾法(港湾管理者、37条1項。港湾隣接地域も許可)。大臣系は自然公園法の国立公園(環境大臣、20条3項)と文化財保護法(文化庁長官。重要文化財の現状変更は43条1項の許可、埋蔵文化財包蔵地の発掘は93条1項の60日前までの届出)。残りは都道府県知事で、生産緑地法だけが市町村長(8条1項)です。

    数字では改正が入った箇所に注意します。森林法の開発許可は原則1ヘクタール超ですが、太陽光発電設備の設置を目的とする場合は0.5ヘクタール超が対象です。生産緑地地区の面積要件は原則500平方メートル以上で、条例により300平方メートルまで引き下げられます。宅地造成の規制は盛土規制法に改組されており、宅地造成等規制法という法律名は現存しません。

    そして、ここで扱った法律の多くは宅地建物取引業法施行令3条に列挙され、重要事項説明の対象になっています。契約の類型で範囲が変わり、建物の貸借では新住宅市街地開発法32条1項、新都市基盤整備法51条1項、流通業務市街地整備法38条1項の3つだけが対象です。試験の1問と、宅建士の実務が同じ条文でつながっています。

    宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングでは、法令上の制限のうちその他の法令にあたる肢を法律別に演習できます。区域名と主体の2点に印を付けながら進めてください。

    読んだ内容を、法令上の制限の肢で確かめる

    都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。

    関連記事

    法令上の制限

    令和8年度に影響する法改正まとめ

    Android版アプリの先行テスターを募集しています

    正式公開に先立ち、先行してご利用いただける方を募集しています。学習記録や有料プランはWeb版と同じアカウントで、そのまま引き継げます。3ステップで、通常その場で使い始められます。

    1
    テスターグループに参加する

    お使いのGoogleアカウントで参加ボタンを押すだけです。承認を待つ必要はありません。

    参加ページを開く
    2
    テスト版を受け取る

    手順1と同じGoogleアカウントでログインしたAndroid端末で受け取りページを開き、「テスターになる」を押してGoogle Playからインストールします。

    受け取りページを開く
    3
    いつものアカウントでログインする

    Web版と同じメールアドレス・パスワードでログインすれば、学習記録がそのまま表示されます。

    「まだご利用いただけません」と表示された場合は、反映待ちの可能性があります。時間をおいて再度お試しいただくか、info@takken-bootlab.com までお知らせください。