不動産用語辞典|宅建初学者が最初に覚えるべき50語
宅建の基本用語50語を、科目別ではなく意味のまとまりで束ねて解説。壁芯と内法、土地の価格4種、宅地の定義など、用語どうしの関係が見える形で条文根拠つきに整理しました。
目次
この記事は、宅建(宅地建物取引士)試験の学習を始めた人が最初につまずく専門用語を、まとめて引ける形にしたものです。各用語の詳しい論点は個別記事で扱っているので、ここでは定義と、用語どうしの関係に絞ります。
最初に、この記事が用語をどう並べているかを述べます。科目別でも五十音順でもなく、意味のまとまりで束ねています。理由は単純で、用語は単独では覚えられないからです。
「善意」を単独で覚えても定着しません。「悪意」と並べ、「対抗」と組み合わせて初めて、なぜ法律がこの言葉を使うのかが見えます。「壁芯」も単独では意味を持ちません。「内法」と並べて初めて、同じ建物なのに面積が二通りあるという事実が理解できます。土地の価格に至っては、4種類を並べないと、なぜ4つもあるのかという問いすら立ちません。
五十音順に並べた辞書は、知らない語を引くには便利ですが、学習の道具としては機能しません。隣に並ぶのが無関係な語だからです。以下、11のまとまりに分けて50語を扱います。
用語を束ねる11のまとまり
先に全体像を示します。
第1群、法律を読むための言葉。善意、悪意、対抗、意思表示の4語です。科目を問わず出てくる、条文を読むための土台になります。
第2群、権利の種類。物権と債権、所有権、賃借権、抵当権、区分所有権と敷地利用権の5語。何が誰にどんな力を与える権利なのかを整理します。
第3群、登記の言葉。登記記録、表題部、甲区、乙区の4語。登記記録は三層構造になっており、どの層に何が載るかが決まっています。
第4群、面積と割合の言葉。壁芯、内法、建築面積、延べ面積、建蔽率、容積率の6語。面積の測り方が複数あり、割合はその組み合わせで決まります。
第5群、価格の言葉。公示価格、基準地の標準価格、相続税路線価、固定資産税評価額、正常な価格の5語。ひとつの土地に複数の価格が付く理由を扱います。
第6群、土地の区分の言葉。宅地、都市計画区域、市街化区域、市街化調整区域、用途地域の5語。「宅地」の定義が法律ごとに違うという最重要の注意点を含みます。
第7群、許可・確認・届出の言葉。開発許可、建築確認、農地転用の許可、事後届出の4語。誰の許可か、何が引き金かで整理します。
第8群、取引の主体の言葉。宅地建物取引業、宅地建物取引業者、宅地建物取引士、専任の宅地建物取引士の4語。
第9群、契約と書面の言葉。媒介、代理、媒介契約、35条書面、37条書面の5語。
第10群、お金と規制の言葉。営業保証金、弁済業務保証金分担金、手付、8種制限の4語。
第11群、税と広告表示の言葉。不動産取得税、固定資産税、登録免許税、新築の4語。
合計50語です。科目でいえば権利関係・宅建業法・法令上の制限・税その他のすべてにまたがりますが、科目の境界をまたぐ束ね方をしているのは意図的です。たとえば「宅地」は宅建業法と盛土規制法で定義が違い、この違いは科目別に並べると絶対に見えません。
なお、この記事で引用する条文はすべて2026年4月1日時点で施行されているものです。宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されるため、令和8年度の基準はこの日付になります。
第1群 法律を読むための言葉(1〜4)
1 善意(ぜんい)
ある事実を知らないことです。日常語の「親切」「好意」とはまったく関係がありません。
この言葉が重要なのは、知っていたかどうかで結論が変わる場面が民法に大量にあるからです。民法96条3項は「詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と定めます。民法95条4項も錯誤について同じ形です。「善意」だけでなく「かつ過失がない」まで要求されている点まで含めて条文の形で覚えてください。意思表示の全体は「意思表示」で扱っています。
2 悪意(あくい)
ある事実を知っていることです。害意や悪だくみという意味はありません。
善意と悪意は排他的な一対で、その事実を知っていたか知らなかったかの二分にすぎません。ただし民法は、善意の上に「過失がない」を重ねたり、悪意の上に「重大な過失」を重ねたりします。善意・悪意という軸と、過失の有無という軸は別物だと理解しておくと、条文の読み間違いが減ります。
3 対抗(たいこう)
自分の権利を第三者に主張することです。「対抗できない」とは、自分に権利があること自体は否定されないが、その第三者に対しては主張が通らない、という意味です。
不動産で最も頻出するのが民法177条の場面です。不動産に関する物権の得喪および変更は、登記をしなければ第三者に対抗することができません。二重譲渡では、先に契約した者ではなく先に登記を備えた者が勝ちます。物権変動の全体は「物権変動」で扱っています。
4 意思表示(いしひょうじ)
法律効果を発生させようとする意思を外部に表明することです。契約の申込みと承諾が典型です。
宅建で問われるのは、この意思表示に問題がある場合の処理です。錯誤(95条)、詐欺・強迫(96条)、心裡留保(93条)、虚偽表示(94条)。それぞれ無効になるのか取り消せるのか、第三者はどう保護されるのかが論点になります。なお2020年4月1日施行の改正で、錯誤の効果は無効から取消しに変わっています。改正の全体は「民法改正まとめ」を参照してください。
第2群 権利の種類(5〜9)
5 物権と債権(ぶっけんとさいけん)
物権は物を直接支配する権利、債権は特定の人に何かを請求する権利です。この区別が権利関係の骨格です。
違いは効力に現れます。物権は誰に対しても主張できる(絶対性)のに対し、債権は相手方にしか主張できません。また物権は法律で定められた種類しか作れません(物権法定主義、民法175条)。所有権、地上権、地役権、抵当権、質権などがこれにあたります。
この区別が実務で問題になるのが賃借権です。賃借権は債権なので、本来は所有者が変わればそれまでです。しかし借地借家法が対抗力を与えることで、物権に近い保護を受けています。
6 所有権(しょゆうけん)
物を自由に使用・収益・処分できる権利です(民法206条)。物権のなかで最も強い権利です。
宅建で問われるのは、複数人で所有する共有の場面です。ここは2023年4月1日施行の改正で整理が変わりました。民法251条1項は、共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が必要としつつ、括弧書きで「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」を除いています。この軽微変更は252条1項により持分の価格の過半数で決せられます。
つまり「共有物の変更は全員一致」という覚え方は、現行法では不正確です。著しい変更は全員一致、軽微変更は過半数、保存行為は単独。この三段が正しい整理です。共有の詳細は「共有」で扱っています。
7 賃借権(ちんしゃくけん)
賃貸借契約に基づいて、賃料を払って他人の物を使用収益する権利です(民法601条)。債権です。
債権なので、本来は所有者が変われば新所有者に主張できません。これを修正するのが対抗要件です。土地の賃借権については借地借家法10条が借地上の建物の登記を、建物の賃借権については同法31条が建物の引渡しを、それぞれ対抗要件としています。賃貸借の全体は「賃貸借」で扱っています。
8 抵当権(ていとうけん)
債権の担保として不動産などに設定する物権です。最大の特徴は、目的物の占有を債権者に移さないことです。住宅ローンで抵当権が設定されても、住み続けられるのはこのためです。
債務が弁済されない場合、抵当権者は目的物を競売にかけ、その代金から他の債権者に優先して弁済を受けられます。同一の不動産に複数の抵当権が設定されている場合、優劣は登記の前後で決まります(民法373条)。抵当権の詳細は「抵当権」で扱っています。
9 区分所有権と敷地利用権(くぶんしょゆうけんとしきちりようけん)
分譲マンションを支える2つの概念です。建物の区分所有等に関する法律2条が定義を置いています。
区分所有権は、一棟の建物のうち構造上区分され独立して住居等の用途に使える部分を目的とする所有権です(2条1項)。その目的となる建物の部分を専有部分といい(2条3項)、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物、規約で共用部分とされた附属の建物を共用部分といいます(2条4項)。
敷地利用権は、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利です(2条6項)。所有権であることが多いですが、借地権のこともあります。
なお区分所有法は令和7年法律第47号により2026年4月1日に改正法が施行され、令和8年度の出題範囲に入ります。専有部分・共用部分・敷地利用権といった用語の定義自体は変わっていませんが、集会の決議要件が大きく変わりました。分母が総数から出席者に変わり、定足数が新設され、段の構成も過半数・3分の2・4分の3・5分の4の四段になっています。決議要件は「区分所有法の決議要件」、区分所有法の全体は「区分所有法」で扱っています。
第3群 登記の言葉(10〜13)
10 登記記録(とうききろく)
一筆の土地または一個の建物ごとに作られる電磁的記録です。表題部と権利部の二層からなり、権利部はさらに甲区と乙区に分かれます。三層構造として理解してください。
登記記録は誰でも手数料を払えば内容を確認できます。読み方の手順は「登記簿の読み方」に、制度の全体は「不動産登記」にまとめてあります。
11 表題部(ひょうだいぶ)
不動産の物理的な現況が記録される部分です。土地なら所在、地番、地目、地積。建物なら所在、家屋番号、種類、構造、床面積です。
表題部には権利は記録されません。ここに記録されるのは「その不動産が何であるか」だけです。表示に関する登記には申請義務があり、たとえば建物を新築した場合は1か月以内に表題登記を申請しなければなりません。
12 甲区(こうく)
権利部のうち、所有権に関する事項が記録される部分です。所有権の保存、移転、差押え、仮処分などがここに載ります。
甲区を見れば、現在の所有者が誰で、どういう経緯で所有権が移ってきたかがわかります。所有権移転の原因(売買、相続、贈与など)も記録されます。
13 乙区(おつく)
権利部のうち、所有権以外の権利に関する事項が記録される部分です。抵当権、根抵当権、地上権、賃借権、地役権などがここに載ります。
甲区と乙区の切り分けは「所有権かそれ以外か」です。この一点だけで判断できます。なお、抵当権が設定されていない不動産には乙区自体が存在しないこともあります。
第4群 面積と割合の言葉(14〜19)
14 壁芯(へきしん・かべしん)
壁の厚みの中心線で囲まれた部分の面積です。分譲マンションのパンフレットに載る専有面積は、通常この壁芯面積です。
15 内法(うちのり)
壁の内側の線で囲まれた部分の面積です。壁の厚みの分だけ壁芯より小さくなります。
この2つは、不動産登記規則115条という1つの条文が両方を定めています。同条は「建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、1平方メートルの100分の1未満の端数は、切り捨てる」と定めます。
つまり、一戸建てなど区分建物でない建物の登記面積は壁芯、区分建物(マンション)の登記面積は内法です。同じ部屋なのに、パンフレットの面積(壁芯)と登記記録の面積(内法)が一致しないのはこのためです。
この差は実害を伴います。住宅ローン控除など、床面積の要件がある税制の優遇は登記面積で判定されるのが原則です。パンフレット上は要件を満たしていても、登記面積では下回ることがありえます。壁芯と内法は、並べて覚えなければ意味をなさない典型です。
16 建築面積(けんちくめんせき)
建築物を真上から見たときの水平投影面積です。おおむね1階の面積になりますが、2階のほうが張り出していればそちらが基準になります。建蔽率の分子です。
17 延べ面積(のべめんせき)
建築物の各階の床面積の合計です。容積率の分子になります。
容積率を計算するときの延べ面積には算入されない部分があります。代表的なのが、住宅の地下室(一定の要件のもとで住宅部分の床面積の3分の1まで)や、共同住宅の共用の廊下・階段です。「延べ面積」といっても、単純な合計とは限らないという点に注意してください。
18 建蔽率(けんぺいりつ)
建築面積の敷地面積に対する割合です。土地に対してどれだけの広さの建物を建てられるかを示します。
用途地域ごとに上限が都市計画で定められます。緩和が2つあり、街区の角にある敷地で特定行政庁が指定するものは10分の1加算、防火地域内の耐火建築物等も一定の場合に10分の1加算です。両方に該当すれば10分の2加算されます。
そして制限そのものが適用されない場合があります。建築基準法53条6項1号は、防火地域(同条1項2号から4号までの規定により建蔽率の限度が10分の8とされている地域に限る)内にある耐火建築物等について、建蔽率の規定を適用しないと定めます。
ここは書き方に注意が必要です。「商業地域で防火地域内の耐火建築物なら100パーセント」という説明を見かけますが、条文が要求しているのは建蔽率の限度が10分の8とされている地域であることであって、商業地域であることではありません。商業地域は指定建蔽率が10分の8なので該当しますが、近隣商業地域や工業地域でも10分の8が指定されていれば同じです。同項2号は巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊その他これらに類するものも適用除外としています。
19 容積率(ようせきりつ)
延べ面積の敷地面積に対する割合です。どれだけの規模の建物を建てられるかを示します。
計算では、都市計画で定められた指定容積率と、前面道路の幅員による制限を比較し、厳しいほう(数値の小さいほう)が適用されます。前面道路の幅員が12メートル未満の場合、幅員のメートル数に住居系用途地域なら10分の4、それ以外なら10分の6を乗じた数値と比較します。
建蔽率と容積率は、分子が違うだけで分母は同じ敷地面積です。建蔽率は平面的な広がりを、容積率は立体的な総量を制限します。計算の手順は「建蔽率と容積率の基礎」と「建蔽率・容積率の計算」で扱っています。
第5群 価格の言葉(20〜24)
ひとつの土地に複数の価格が付きます。なぜ複数あるかというと、目的が違うからです。5語をまとめて扱います。
20 公示価格(こうじかかく)
地価公示法に基づき、国土交通省の土地鑑定委員会が公示する標準地の価格です。同法2条1項は、公示区域内の標準地について、毎年1回、2人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し必要な調整を行って、一定の基準日における単位面積当たりの正常な価格を判定し公示すると定めます。
基準日は毎年1月1日で、公表は3月です。一般の土地取引の指標となるほか、公共事業用地の取得価格の算定の基準になります。
21 基準地の標準価格(きじゅんちのひょうじゅんかかく)
国土利用計画法施行令に基づき、都道府県知事が判定・公表する基準地の価格です。いわゆる基準地価です。基準日は毎年7月1日で、公表は9月です。
公示価格が1月1日、基準地価格が7月1日と半年ずれているのは、年2回のタイミングで地価の動きを把握するためです。主体が国と都道府県で違い、基準日が半年ずれているという2点が試験で問われます。
22 相続税路線価(そうぞくぜいろせんか)
国税庁が相続税・贈与税の課税のために定める、道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額です。基準日は1月1日です。
23 固定資産税評価額(こていしさんぜいひょうかがく)
市町村が固定資産課税台帳に登録する価格です。固定資産税だけでなく、不動産取得税、登録免許税の課税標準にもなります。
特徴は3年ごとに評価替えが行われることです。基準年度の価格が原則として次の評価替えまで据え置かれます。他の3つが毎年更新されるのに対し、これだけが3年周期です。
24 正常な価格(せいじょうなかかく)
地価公示法2条2項が定義する概念で、土地について自由な取引が行われるとした場合における、その取引において通常成立すると認められる価格をいいます。
4つの価格を整理する軸は3つです。誰が公表するか(国土交通省・都道府県・国税庁・市町村)、いつを基準にするか(1月1日・7月1日・1月1日・基準年度の1月1日)、何のためか(取引の指標・取引の指標・相続税と贈与税・固定資産税等)。この3軸で並べると混ざりません。
なお、相続税路線価が公示価格のおおむね8割、固定資産税評価額がおおむね7割という説明が広く流通していますが、これは法令が定めた比率ではなく運用上の目安です。条文にある数字ではないことを理解したうえで扱ってください。4つの価格の詳細は「土地の価格4種」、地価公示制度そのものは「地価公示」、鑑定評価の手法は「不動産鑑定評価」で扱っています。
第6群 土地の区分の言葉(25〜29)
25 宅地(たくち)
この用語は、法律ごとに定義が違います。用語集としてこれを並べて示すことが、この記事の最も重要な役割です。
宅建業法2条1号の宅地は、「建物の敷地に供せられる土地」をいい、加えて「都市計画法8条1項1号の用途地域内のその他の土地で、道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられているもの以外のもの」を含みます。用途地域内であれば、現に建物が建っていなくても宅地に含まれるという広げ方をしています。
盛土規制法2条1号の宅地は、「農地、採草放牧地及び森林並びに道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供されている土地以外の土地」です。引き算による定義であり、建物の敷地かどうかを問いません。
不動産登記の地目としての「宅地」は、建物の敷地およびその維持もしくは効用を果たすために必要な土地を指します。
3つとも違います。問題文が「宅地」と書いていても、どの法律の話かで意味が変わるということです。ここを取り違えると、正しい知識を持っていても誤答します。宅建業法の免許が必要かどうかの判断は「「業に当たる」の判断」、盛土規制法は「宅地造成等規制」で扱っています。
26 都市計画区域(としけいかくくいき)
都市計画法に基づき、一体の都市として総合的に整備・開発・保全する必要がある区域として指定されるエリアです。指定するのは都道府県で、2以上の都府県にまたがる場合は国土交通大臣です。
都市計画区域には、市街化区域と市街化調整区域の区分(区域区分、いわゆる線引き)を定めることができます。定めない都市計画区域もあり、これを非線引き都市計画区域と呼びます。
27 市街化区域(しがいかくいき)
すでに市街地を形成している区域、およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域です。
市街化区域には用途地域を必ず定めます。開発を進める区域だからです。
28 市街化調整区域(しがいかちょうせいくいき)
市街化を抑制すべき区域です。用途地域は原則として定めません。
市街化区域との対比は、進めるか抑えるかの一点から派生します。用途地域を定めるかどうかも、開発許可の面積要件も、農地転用の届出の特例があるかどうかも、すべてこの性格の違いから説明できます。数字を裸で覚えるのではなく、区域の性格と結びつけてください。区域区分の全体は「都市計画法の要点」で扱っています。
29 用途地域(ようとちいき)
建築物の用途を制限するために定められる地域で、全13種類あります。住居系8(第一種低層住居専用、第二種低層住居専用、第一種中高層住居専用、第二種中高層住居専用、第一種住居、第二種住居、準住居、田園住居)、商業系2(近隣商業、商業)、工業系3(準工業、工業、工業専用)です。
用途地域は建築物の用途を制限するだけでなく、建蔽率や容積率の上限、高さ制限の適用の有無にも連動します。用途地域が決まると複数の制限が芋づる式に決まるという構造を押さえてください。覚え方は「用途地域の覚え方」、制限の中身は「用途地域」で扱っています。
第7群 許可・確認・届出の言葉(30〜33)
この4つは、誰の判断を要するのか、何が引き金になるのかで整理すると混ざりません。
30 開発許可(かいはつきょか)
主として建築物の建築の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更(開発行為)について、都道府県知事(指定都市等の区域内では当該指定都市等の長)の許可を受けることです(都市計画法29条1項)。
引き金は面積です。都市計画法施行令19条により、市街化区域は1,000平方メートル以上、区域区分が定められていない都市計画区域と準都市計画区域は3,000平方メートル以上で許可が必要です。都市計画区域および準都市計画区域外は22条の2により1ヘクタール以上です。条例で300平方メートルまで引き下げることができ、三大都市圏の一定区域は500平方メートルとされています。
市街化調整区域だけは面積要件がありません。29条1項1号が規模による除外を認めているのは市街化区域、非線引き都市計画区域、準都市計画区域だけで、市街化調整区域はここに含まれていないからです。抑制すべき区域だからだ、と性格から説明できます。詳細は「開発許可制度」と「開発許可の面積要件」にあります。
31 建築確認(けんちくかくにん)
建築物の計画が建築基準関係規定に適合しているかを、工事着手前に建築主事等が確認することです。確認を受けて確認済証の交付を受けなければ工事に着手できません。
建築基準法6条1項の対象は3号構成です。1号が別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるもの。2号が1号に掲げる建築物を除くほか、2以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超える建築物。3号が1号2号を除くほか、都市計画区域もしくは準都市計画区域、準景観地区内などにおける建築物です。
2号は「又は」なので、どちらか一方を満たせば該当します。平屋で延べ面積150平方メートルなら2号に該当せず、3号の区域内かどうかで決まります。
なお6条2項は、防火地域および準防火地域外において建築物を増築・改築・移転する場合で、その部分の床面積の合計が10平方メートル以内であるときに1項を適用しないと定めます。二重の限定がかかっている点に注意してください。詳細は「建築確認」で扱っています。
32 農地転用の許可(のうちてんようのきょか)
農地法に基づく許可です。3条・4条・5条の区別が問われます。
3条は農地を農地のまま権利移動する場合で、農業委員会の許可。4条は自分の農地を転用する場合で、都道府県知事等の許可。5条は転用目的で権利移動する場合で、同じく都道府県知事等の許可です。
そして市街化区域内の農地については、4条・5条の転用はあらかじめ農業委員会に届け出れば許可不要という特例があります。市街化を進める区域だから、という性格からの説明がここにも現れます。3条には市街化区域の特例がありません。詳細は「農地法の要点」にあります。
33 事後届出(じごとどけで)
国土利用計画法23条1項に基づく届出です。土地売買等の契約を締結した場合に、権利取得者が、契約を締結した日から起算して2週間以内に、当該土地が所在する市町村の長を経由して都道府県知事に届け出ます。
面積要件は23条2項1号にあり、市街化区域は2,000平方メートル、市街化区域以外の都市計画区域は5,000平方メートル、都市計画区域外は10,000平方メートルです。これらの面積未満なら届出不要です。
届出を受けた知事は、利用目的が土地利用に関する計画に適合せず著しい支障があると認めるときに、土地利用審査会の意見を聴いて利用目的の変更を勧告できます。勧告は届出があった日から起算して3週間以内です(24条2項)。2週間は届け出る側、3週間は勧告する側の期間です。詳細は「国土利用計画法の届出」にあります。
第8群 取引の主体の言葉(34〜37)
34 宅地建物取引業(たくちたてものとりひきぎょう)
宅建業法2条2号が定義します。「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」です。
この条文は大きな「又は」で二つに割れています。前半が自ら当事者となる売買・交換、後半が代理・媒介です。そして貸借が出てくるのは後半だけです。したがって自ら貸借は宅地建物取引業に当たりません。自社ビルを賃貸するだけなら免許は不要です。この結論は暗記事項として流通していますが、条文の構文から導けます。
なお78条1項は「この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない」と定めています。自治体が公有地を売り払っても宅建業法は適用されません。
35 宅地建物取引業者(たくちたてものとりひきぎょうしゃ)
宅建業法3条1項の免許を受けて宅地建物取引業を営む者です(2条3号)。
免許は事務所の設置状況で分かれます。2以上の都道府県に事務所を設置する場合は国土交通大臣免許、1つの都道府県内のみなら都道府県知事免許です。有効期間は5年で、更新を受けようとする者は、施行規則3条により有効期間満了の日の90日前から30日前までに免許申請書を提出しなければなりません。免許制度の詳細は「免許制度」で扱っています。
36 宅地建物取引士(たくちたてものとりひきし)
宅建業法22条の2第1項の宅地建物取引士証の交付を受けた者です(2条4号)。試験に合格しただけでは宅建士ではありません。合格、登録、取引士証の交付という三段階を経て初めて宅建士になります。手続は「宅建士の登録」にあります。
宅建士でなければできない行為は3つです。35条1項の重要事項の説明、35条5項の35条書面への記名、37条3項の37条書面への記名です。
37 専任の宅地建物取引士(せんにんのたくちたてものとりひきし)
事務所等に常勤し、専ら宅建業の業務に従事する宅建士です。
宅建業法31条の3第1項は、事務所等ごとに国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅建士を置くことを業者に義務づけます。省令が定める数は、事務所については業務に従事する者5人に1人以上です。
そして同条3項が、既存の事務所等がこれに抵触するに至ったときは2週間以内に適合させる措置を執らなければならないと定めます。詳細は「専任の宅建士」にあります。
第9群 契約と書面の言葉(38〜42)
38 媒介(ばいかい)
契約の成立に向けて当事者の間を取り持つことです。媒介業者は契約の当事者にならず、契約書に署名するのは売主と買主です。
39 代理(だいり)
本人に代わって意思表示を行い、その効果を本人に帰属させることです(民法99条)。代理人が契約を締結し、その効果が本人に及びます。
媒介と代理の違いは、契約を締結するのが誰かの一点です。この違いは報酬の上限にも現れ、代理の場合は媒介の2倍を受領できます。代理制度の詳細は「代理制度」にあります。
40 媒介契約(ばいかいけいやく)
宅建業者が依頼者との間で締結する、売買または交換の相手方を探索する契約です(宅建業法34条の2)。3種類あり、軸ごとに見ると違いが明確になります。
他の業者に重ねて依頼できるか。一般媒介はできます。専任媒介と専属専任媒介はできません。34条の2第3項が「依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約」を専任媒介契約と呼んでいます。
依頼者が自分で見つけた相手と直接契約できるか(自己発見取引)。一般媒介と専任媒介はできます。専属専任媒介はできません。34条の2第9項の括弧書きが、専属専任媒介契約を「依頼者が当該宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結することができない旨の特約を含む専任媒介契約」と定義しています。
指定流通機構(レインズ)への登録義務。一般媒介にはありません。専任媒介は施行規則15条の10により7日以内、専属専任媒介は5日以内です。そして同条2項が「前項の期間の計算については、休業日数は算入しない」と定めています。この休業日不算入は落としやすい点です。
業務処理状況の報告義務。一般媒介にはありません。34条の2第9項により、専任媒介は2週間に1回以上、専属専任媒介は1週間に1回以上です。
有効期間。一般媒介には法律上の制限がありません。専任媒介と専属専任媒介は34条の2第3項により3月を超えることができず、これより長い期間を定めたときはその期間は3月となります。4項により依頼者の申出で更新できますが、更新の時から3月を超えることはできません。
以上を並べると、一般から専任、専属専任へと進むにつれて依頼者の自由が減り、そのぶん業者の義務が重くなるという構造が見えます。数字を個別に覚えるのではなく、この対応関係で覚えてください。詳細は「媒介契約」にあります。
41 35条書面(さんじゅうごじょうしょめん)
重要事項説明書です。宅建業法35条1項は、宅建業者に対し、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして一定事項について説明をさせなければならないと定めます。
3つの要素があります。時期は契約成立前。相手方は買主・借主等(売主には説明不要)。説明するのは宅建士。そして35条5項が、書面の交付に当たっては宅地建物取引士は当該書面に記名しなければならないと定めます。記載事項の全体は「35条書面の完全整理」にあります。
なお、区分所有建物の重要事項説明については、施行規則16条の2が2026年4月1日施行の改正で第9号(第三者管理方式の開示)を新設し、説明事項が9項目から10項目に増えています。令和8年度の出題範囲に入る改正です。「区分所有建物の重要事項説明」で扱っています。
42 37条書面(さんじゅうななじょうしょめん)
契約が成立したときに遅滞なく交付する書面です。契約内容を記録するためのものです。
35条書面との違いは3点です。時期は契約成立後。相手方は契約の両当事者。説明は不要で、交付すれば足ります。そして37条3項は「宅地建物取引業者は、前二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名させなければならない」と定めます。
記名が必要な点は35条と同じですが、条文の名宛人が違います。35条5項は宅建士自身に義務を課し、37条3項は業者に義務を課しています。並べて初めて気づく差です。記載事項は「37条書面の記載事項」、両者の比較は「35条書面と37条書面の横断比較」にあります。
第10群 お金と規制の言葉(43〜46)
43 営業保証金(えいぎょうほしょうきん)
宅建業者が事業を開始する前に、主たる事務所の最寄りの供託所に供託する金銭等です。取引の相手方が損害を受けた場合に、そこから弁済を受けられるようにするための制度です。
額は施行令2条の4により、主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき事務所ごとに500万円です。有価証券でも供託でき、施行規則15条が価額を定めています。国債証券は額面金額の100パーセント、地方債証券または政府保証債は額面金額の90パーセント、それ以外の債券は額面金額の80パーセントです。3段階ある点を落とさないでください。
供託しただけでは足りず、免許権者に届け出て、その届出をした後でなければ事業を開始できません。詳細は「営業保証金」にあります。
44 弁済業務保証金分担金(べんさいぎょうむほしょうきんぶんたんきん)
保証協会に加入する場合に、営業保証金に代えて保証協会に納付する金銭です。施行令7条により、主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき事務所ごとに30万円です。1,000万円と500万円に対して、60万円と30万円。桁が違うのが保証協会に加入する実質的な理由です。
納付の時期に注意が必要です。宅建業法64条の9第1項1号は、保証協会に加入しようとする者について「その加入しようとする日」までに納付しなければならないと定めます。加入してから納付するのではなく、加入までに納めます。
これに対し、同条2項は、既に社員である者が新たに事務所を設置したときは「その日から2週間以内」に納付しなければならないとします。加入時は加入する日まで、事務所新設時は2週間以内。この2つを混同しないでください。3項は、期日までに納付しないときは社員の地位を失うと定めます。詳細は「保証協会」にあります。
45 手付(てつけ)
契約締結時に買主から売主に交付される金銭です。民法557条により、相手方が履行に着手するまでは、買主は手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して契約を解除できます(解約手付)。
宅建業者が自ら売主となる場合には、宅建業法39条が2つの規律を置きます。第一に、代金の額の10分の2を超える手付を受領してはならないこと。第二に、手付は解約手付とみなされ、これに反する買主に不利な特約は無効になることです。
これとは別に、手付金等の保全措置があります。41条は工事完了前の物件について、41条の2は完了後の物件について、原則として保全措置を講じた後でなければ手付金等を受領できないと定めます。ただし書に除外があり、施行令3条の5が定める額は1,000万円です。したがって、未完成物件では代金の5パーセント以下かつ1,000万円以下、完成物件では代金の10分の1以下かつ1,000万円以下であれば保全措置が不要になります。5パーセントと10分の1という割合の違いと、1,000万円という共通の上限をセットで覚えてください。詳細は「手付の制限」にあります。
46 8種制限(はっしゅせいげん)
宅建業者が自ら売主となり、宅建業者でない者が買主となる売買契約に適用される8つの規制の総称です。クーリング・オフ、手付額の制限、手付金等の保全措置、担保責任の特約の制限、損害賠償額の予定等の制限、自己の所有に属しない物件の売買契約締結の制限、割賦販売契約の解除等の制限、所有権留保等の禁止が含まれます。
適用範囲の限定が最重要です。宅建業法78条2項が、33条の2および37条の2から43条までの規定を宅地建物取引業者相互間の取引については適用しないと定めています。したがって業者間取引には8種制限が及びません。また、業者が買主側の媒介をしているだけの場合も、業者は売主ではないので適用されません。
「業者が自ら売主」「買主が業者でない」の2つが揃って初めて適用される。問題文でこの前提を読み飛ばすのが、初学者の典型的な失点パターンです。全体は「8種制限の全体像」、クーリング・オフは「クーリング・オフ」で扱っています。
第11群 税と広告表示の言葉(47〜50)
47 不動産取得税(ふどうさんしゅとくぜい)
不動産の取得に対して課される都道府県税です。取得の時に一度だけ課されます。
地方税法73条の15は「不動産取得税の標準税率は、100分の4とする」と定めます。ただし附則11条の2が、平成18年4月1日から令和9年3月31日までの間に住宅または土地の取得が行われた場合の標準税率を100分の3としています。本則4パーセント、特例3パーセント、期限は令和9年3月31日という三点セットで覚えてください。
課税標準の特例もあります。73条の14第1項は、政令で定める新築住宅の取得について、一戸につき1,200万円を価格から控除すると定めます。詳細は「不動産取得税の軽減」にあります。
48 固定資産税(こていしさんぜい)
固定資産の所有者に課される市町村税です。毎年課されます。
地方税法359条は「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする」と定めます。343条2項により、その日に登記簿または補充課税台帳に所有者として登記・登録されている者が納税義務者です。年の途中で売却しても、その年度の納税義務者は動きません。
350条1項の標準税率は100分の1.4です。351条の免税点は土地30万円、家屋20万円、償却資産150万円。349条の3の2の住宅用地の特例は、小規模住宅用地(1戸あたり200平方メートルまで)で課税標準が6分の1、それを超える部分で3分の1です。
不動産取得税と固定資産税の対比は、課税主体(都道府県と市町村)、課税のタイミング(取得時に一度と毎年)、そして相続の扱い(不動産取得税は非課税、固定資産税は納税義務を承継)の3軸で整理できます。詳細は「固定資産税」にあります。
49 登録免許税(とうろくめんきょぜい)
登記を受けることに対して課される国税です。前2つと違い、不動産の取得や所有ではなく、登記という行為に課されます。
課税標準は登記の種類によって異なり、所有権に関する登記では原則として不動産の価額(固定資産課税台帳の登録価格)、抵当権の設定登記では債権金額です。税率は登記の原因ごとに登録免許税法別表第一が定めており、住宅用家屋については租税特別措置法の軽減措置があります。具体的な税率と軽減の期限は「登録免許税と印紙税」にまとめてあります。
50 新築(しんちく)
広告表示の場面で定義が置かれている用語です。不動産の表示に関する公正競争規約は、「新築」を建築後1年未満であって、居住の用に供されたことがないものと定義しています。築1年未満でも一度でも人が住んだものは新築と表示できず、未入居でも築1年を過ぎれば新築と表示できません。2つの要件を同時に満たす必要があります。
同じ規約から、もうひとつ試験で問われる基準があります。徒歩による所要時間は、道路距離80メートルにつき1分として算出します。信号待ちや坂道は考慮されません。
これらの基準の根拠は、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)に基づく公正競争規約です。宅建業法32条の誇大広告等の禁止、33条の広告開始時期の制限とは別系統の規制であり、法律ではなく規約に基づくという点が、他の用語と違うところです。広告規制の全体は「広告規制」、景品表示法は「不当景品類及び不当表示防止法」で扱っています。
紛らわしい対の見分け方
用語は対で覚えると定着します。初学者が混同しやすい組み合わせを、どの軸で分かれるかという形で整理します。
善意と悪意 ― 分かれる軸は「知っていたか」
道徳的な善悪ではなく、事実を知っていたかどうかです。善意が知らない、悪意が知っている。判断に迷ったら、「その事実を知っていたか」という問いに置き換えてください。
無効と取消し ― 分かれる軸は「はじめから効力がないか」
無効ははじめから効力が生じません。取消しは、取り消されるまでは有効で、取り消されると遡って無効になります。したがって取消しには取消権を行使する人が必要であり、誰が取り消せるかが条文に書かれています。無効にはその手続がありません。錯誤の効果が無効から取消しに変わったことの実質は、ここにあります。
代理と媒介 ― 分かれる軸は「誰が契約するか」
代理は代理人が契約を締結し、効果が本人に帰属します。媒介は業者が当事者にならず、当事者どうしが契約します。報酬の上限が代理で2倍になるのは、業務の重さが違うからです。
壁芯と内法 ― 分かれる軸は「区分建物かどうか」
不動産登記規則115条が、原則を中心線(壁芯)、区分建物の例外を内側線(内法)としています。マンションの登記面積だけが内法だ、と覚えてください。
建蔽率と容積率 ― 分かれる軸は「分子」
分母はどちらも敷地面積です。分子が建築面積なら建蔽率、延べ面積なら容積率。平面か立体かの違いです。
35条書面と37条書面 ― 分かれる軸は「契約の前か後か」
35条は契約前、37条は契約後。目的が違うから時期が違います。35条は契約するかどうかの判断材料、37条は合意内容の記録です。この目的の違いから、説明義務が35条だけにある理由も出てきます。
営業保証金と弁済業務保証金分担金 ― 分かれる軸は「どこに納めるか」
営業保証金は供託所に直接供託し、分担金は保証協会に納付します。額も1,000万円・500万円と60万円・30万円で桁が違います。納付の時期も、営業保証金は事業開始前、分担金は加入しようとする日までです。
不動産取得税と固定資産税 ― 分かれる軸は「一度か毎年か」
不動産取得税は都道府県税で取得時に一度、固定資産税は市町村税で毎年1月1日の所有者に課されます。相続による取得は不動産取得税が非課税である一方、固定資産税は相続人が納税義務を承継します。
市街化区域と市街化調整区域 ― 分かれる軸は「進めるか抑えるか」
用途地域を定めるかどうか、開発許可に面積要件があるかどうか、農地転用に届出の特例があるかどうか。すべてこの一点から導けます。数字を覚える前に、区域の性格を覚えてください。
専任媒介と専属専任媒介 ― 分かれる軸は「自己発見取引ができるか」
他業者への依頼禁止は両方に共通します。違うのは自己発見取引の可否で、専属専任だけができません。そのぶん義務が重くなり、レインズ登録が7日から5日に、報告が2週間に1回から1週間に1回になります。制約が増えれば義務も増えるという対応で覚えます。
試験での出題ポイント
用語の定義そのものが問われるパターンを挙げます。いずれも定義を1文字ずらすことで誤りの肢が作れる場所です。
「宅地」をどの法律の意味で使っているか
宅建業法の宅地は用途地域内の土地を広く含み、盛土規制法の宅地は農地等と公共施設用地の引き算で定まります。問題文が「宅地」と書いていても、どちらの意味かは設問の文脈で決まります。免許の要否を問うなら宅建業法2条1号、造成工事の許可を問うなら盛土規制法2条1号です。
自ら貸借を宅建業に含める肢
宅建業法2条2号の後半に貸借が出てくることを利用して、「自ら貸借を業として行う場合には免許が必要である」という肢が作られます。誤りです。貸借は代理・媒介の側にしか登場しません。
建築確認の対象を旧区分で出す肢
木造は3階以上または延べ面積500平方メートル超、木造以外は2階以上または延べ面積200平方メートル超、という区分は現行の建築基準法6条1項ではありません。現行は3号構成で、2号が「2以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超える」と木造・非木造を区別しない書き方になっています。
保証協会の納付時期をずらす肢
「加入後1週間以内に分担金を納付しなければならない」といった肢が作られます。64条の9第1項1号は「その加入しようとする日まで」です。2週間以内なのは、既に社員である者が事務所を新設した場合(同条2項)です。
レインズ登録の期間で休業日を算入させる肢
専任媒介7日、専属専任媒介5日という数字は正しくても、施行規則15条の10第2項が休業日数を算入しないと定めている点を落とすと誤ります。「契約日から起算して暦の上で7日以内」という書き方は不正確です。
建蔽率の適用除外を「商業地域」で限定する肢
建築基準法53条6項1号が要求しているのは、建蔽率の限度が10分の8とされている地域内で、かつ防火地域内にある耐火建築物等であることです。商業地域であることが要件ではありません。
有価証券の評価を2段階にする肢
施行規則15条は国債100パーセント、地方債・政府保証債90パーセント、それ以外の債券80パーセントの3段階です。3段目を落とした肢が作られます。
4つの価格の主体と基準日を入れ替える肢
公示価格は国土交通省の土地鑑定委員会で1月1日、基準地の標準価格は都道府県知事で7月1日、相続税路線価は国税庁で1月1日、固定資産税評価額は市町村で3年ごとの評価替え。主体と基準日の組み合わせを入れ替えるのが定番です。
共有物の変更を全員一致で固定する肢
民法251条1項の括弧書きにより、形状または効用の著しい変更を伴わない軽微変更は252条1項の管理として過半数で決せられます。「共有物に変更を加えるには常に全員の同意が必要」は、2023年4月1日施行の改正後は誤りです。
「新築」の定義を片方だけにする肢
建築後1年未満かつ未使用の両方が必要です。「未入居であれば築2年でも新築と表示できる」も、「築半年であれば入居歴があっても新築と表示できる」も、いずれも誤りです。
覚え方・整理の仕方
用語は必ず対か群で覚える
単語カードに1語ずつ書くやり方は、この分野には向きません。壁芯の裏に内法、35条の裏に37条、市街化区域の裏に市街化調整区域を書いてください。宅建の問題は、単独の定義よりも「どちらか」を問う形が圧倒的に多いためです。
定義に数字が含まれるものは条文番号ごと覚える
1,000万円と500万円(営業保証金)、60万円と30万円(分担金)、7日と5日(レインズ)、2週間と3週間(国土法)、1,200万円(不動産取得税)。数字だけを並べると混ざります。どの条文の数字かを添えると、思い出すときの手がかりが増えます。
「この法律では」を口癖にする
宅地、業者、許可権者。同じ言葉でも法律が変われば中身が変わります。用語を思い出すときに、どの法律の話かを先に確認する習慣をつけてください。この一手間が、法令上の制限の失点を確実に減らします。
数字より先に趣旨を置く
市街化区域が1,000平方メートルで市街化調整区域が面積不問なのは、前者が市街化を進める区域で後者が抑制する区域だからです。趣旨から数字が導ける状態にしておくと、忘れても推論で辿り着けます。
用語の階層を意識する
宅地建物取引業(行為)、宅地建物取引業者(免許を受けた者)、宅地建物取引士(取引士証の交付を受けた者)、専任の宅地建物取引士(常勤かつ専従の宅建士)。行為から人へ、人から要件を加えた人へという階層になっています。階層で並べると、定義の包含関係が見えます。
分からない用語は「どの群か」から考える
初見の用語に出会ったとき、五十音順の辞書では隣に手がかりがありません。この11の群のどれに属するかを先に考えると、周辺の知識から意味を推測できます。用語の暗記法そのものは「宅建の暗記術」で扱っています。
理解度チェッククイズ
Q1. 分譲マンションの一室について、パンフレットに記載された専有面積と登記記録上の床面積は、通常一致する。
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×:**一致しないのが通常です。**不動産登記規則115条は「建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の**中心線**(**区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線**)で囲まれた部分の水平投影面積により」定めるとしています。つまり、一戸建てなど区分建物でない建物の登記面積は壁芯ですが、**区分建物であるマンションの登記面積は内法**です。一方、分譲マンションのパンフレットに記載される専有面積は通常は壁芯面積なので、壁の厚みの分だけ登記面積より大きくなります。床面積の要件がある税制の優遇は登記面積で判定されるのが原則なので、この差が結論を分けることがあります。Q2. 宅地建物取引業者Aが、自ら所有するビルの一室を業として反復継続して賃貸する場合、宅地建物取引業の免許が必要である。
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×:宅建業法2条2号は宅地建物取引業を「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」と定義しています。**大きな「又は」で二つに割れており、前半が自ら当事者となる売買・交換、後半が代理・媒介です。**貸借が登場するのは後半、すなわち代理・媒介の側だけなので、**自ら貸借は宅地建物取引業に当たりません。**したがって免許は不要です。この結論は「自ら貸借は宅建業ではない」という暗記事項として流通していますが、条文の構文から導けます。なお、他人の物件の貸借の媒介や代理を業として行うなら免許が必要です。Q3. 宅地建物取引業保証協会に加入しようとする宅地建物取引業者は、加入した日から1週間以内に弁済業務保証金分担金を保証協会に納付しなければならない。
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×:宅建業法64条の9第1項1号は、保証協会に加入しようとする者について「**その加入しようとする日**」までに弁済業務保証金分担金を納付しなければならないと定めています。加入してからではなく、**加入までに**納めます。1週間以内でもありません。混同しやすいのが同条2項で、こちらは既に社員である者が**新たに事務所を設置したとき**について「その日から**2週間以内**」に納付しなければならないと定めています。**加入時は加入する日まで、事務所新設時は2週間以内。**3項により、これらの期日までに納付しないときは社員の地位を失います。なお分担金の額は施行令7条により主たる事務所60万円、その他の事務所30万円です。Q4. 市街化調整区域内において1,000平方メートル未満の開発行為を行う場合、開発許可を受ける必要はない。
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×:**市街化調整区域には面積による除外がありません。**都市計画法29条1項1号は「市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、その規模が、それぞれの区域の区分に応じて政令で定める規模未満であるもの」を許可不要としていますが、**この列挙に市街化調整区域は含まれていません。**したがって規模を問わず許可が必要です(同項2号以下の類型に該当する場合を除きます)。市街化調整区域が市街化を抑制すべき区域であることから導ける結論です。なお面積要件は施行令19条により、市街化区域1,000平方メートル、非線引き都市計画区域と準都市計画区域3,000平方メートル、22条の2により都市計画区域および準都市計画区域外は1ヘクタールです。Q5. 建築後1年を経過していない建物であれば、既に人が居住したことがある場合でも、広告において「新築」と表示することができる。
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×:不動産の表示に関する公正競争規約は、「新築」を**建築後1年未満であって、かつ、居住の用に供されたことがないもの**と定義しています。**2つの要件を同時に満たす必要があります。**したがって、築1年未満でも一度でも人が住んだものは「新築」と表示できません。逆に、未入居であっても建築後1年を経過すれば「新築」と表示できません。同じ規約から、徒歩による所要時間は**道路距離80メートルにつき1分**として算出するという基準も出題されます。これらの根拠は不当景品類及び不当表示防止法に基づく公正競争規約であり、**宅建業法32条の誇大広告等の禁止や33条の広告開始時期の制限とは別系統の規制**である点も押さえてください。まとめ
用語は意味のまとまりで束ねる。五十音順や科目別では、隣に並ぶ語が無関係になり、用語どうしの関係が見えない。この記事は11の群に分けている。
同じ言葉が法律ごとに違う意味を持つ。「宅地」は宅建業法2条1号、盛土規制法2条1号、不動産登記の地目でそれぞれ定義が違う。用語を思い出すときに「どの法律の話か」を先に確認する習慣をつける。
対で覚えなければ意味をなさない語がある。壁芯と内法は不動産登記規則115条という1つの条文が両方を定めており、区分建物かどうかで分かれる。35条書面と37条書面、市街化区域と市街化調整区域も同様である。
ひとつの土地に4つの価格が付くのは、目的が違うから。主体・基準日・用途の3軸で並べる。公示価格は国土交通省の土地鑑定委員会で1月1日、基準地の標準価格は都道府県知事で7月1日、相続税路線価は国税庁で1月1日、固定資産税評価額は市町村で3年ごとの評価替え。
数字は条文番号ごと覚える。営業保証金1,000万円と500万円、分担金60万円と30万円、レインズ7日と5日(休業日不算入)、国土法の2週間と3週間、不動産取得税の1,200万円。数字だけを並べると混ざる。
趣旨から数字を導けるようにする。市街化調整区域に開発許可の面積要件がないのは、市街化を抑制すべき区域だからである。忘れても推論で辿り着ける状態にしておく。
各用語の詳細は本文中でリンクした個別記事にあります。この記事は、学習中に「あの言葉は何だったか」となったときに戻ってくる場所として使ってください。
宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングでは、ここで扱った用語が実際にどう問われるかを、1肢ずつ条文根拠つきで確認できます。
肢別演習と年度別演習で、立てた学習計画をそのまま実行に移せます。間違えた肢だけを繰り返す復習にも対応しています。