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盛土規制法|規制区域と許可・届出の全体像

法令上の制限 読了 約26分

宅建試験の盛土規制法(旧・宅地造成等規制法)を条文に沿って解説。宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域の違い、許可・届出の規模要件、検査と報告、造成宅地防災区域との区別を出題される粒度で整理します。

目次

    この記事は、宅建試験「法令上の制限」で例年1問が割り当てられる盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)を、条文の順序どおりに一本で通す本記事です。法令上の制限を科目全体として組み立てたい場合は法令上の制限の横断整理を、どの法律から手を付けるかを決めたい場合は法令上の制限の頻出論点ランキングを先に見てください。

    結論から書きます。盛土規制法は「区域を指定する → その区域で一定規模を超える行為をするには許可(または届出)が要る → 工事中と工事後も検査・報告で見張る → 違反すれば処分と罰則」という一直線の構造です。ここに、これから行う工事とは別枠の「造成宅地防災区域」という既存宅地向けの制度がぶら下がります。この二階建てを分けて理解できるかどうかが分かれ目で、あとは区域によって数字の意味が変わるという一点だけが厄介です。


    盛土規制法が生まれた経緯と、旧法が抱えていた限界

    旧「宅地造成等規制法」が守っていた範囲

    2023年(令和5年)5月26日より前、この分野は「宅地造成等規制法」、いわゆる宅造法として出題されていました。名前のとおり、規制の入口は「宅地の造成」でした。宅地造成工事規制区域を指定し、その区域内で宅地にするための切土・盛土を行うなら知事の許可を要する、という組み立てです。

    この設計にも合理性はありました。人が住む場所の足元が崩れれば直接人命に関わるので、宅地に絞って濃く規制する。逆にいえば、宅地にしない土地の土いじりは視野の外です。農地に土を積む、森林を削って残土を置く、資材置場に土砂を山積みする。こうした行為は宅地造成に当たらないため、宅造法では規制しようがなかったのです。

    2021年の熱海市土石流と「規制の隙間」

    2021年7月、静岡県熱海市の逢初川で大規模な土石流が発生し、多数の犠牲者が出ました。この災害では、上流部に不適切に造成されていた盛土が被害を拡大させた要因の一つとされ、政府の検証を経て、盛土の規制に制度上の隙間があることが明らかになりました。

    隙間は二つの意味でありました。一つは土地の用途による隙間、すなわち宅地でなければ規制が及ばないこと。もう一つは法律ごとの縦割りによる隙間です。森林法、農地法、砂防法、都市計画法、各自治体の残土条例と、盛土に触れうる法令は複数あったものの、目的が違うため、どれにも引っかからない盛土が生まれていました。農地法は農業生産力の確保が目的であって、崩落の危険を審査する法律ではない、というのが典型例です。

    法律名が変わったことの意味

    そこで宅造法は抜本改正され、「宅地造成及び特定盛土等規制法」となりました。法律名に「特定盛土等」が加わったことが、そのまま改正の中身を表しています。守るべきものは、盛土等による災害からの国民の生命・身体(法1条)。規制の入口は「どんな土地か」ではなく「どの区域で、どんな規模の行為をするか」に置き換えられました。

    ここは発想の転換として押さえる価値があります。都市計画法の開発許可が「建築物の建築等のため」という目的で規制対象を切り出すのに対し(開発許可制度の全体像を参照)、盛土規制法は目的を問わず「崖を生じさせるか、どれだけの土を動かすか」という物理量で切り出します。同じ土地の形質の変更でも、切り出し方がまったく違うということです。

    区域指定の前段にある仕組み

    条文の並びとしては、規制区域の指定の前に、主務大臣(国土交通大臣および農林水産大臣)が基本方針を定め(法3条)、都道府県が基礎調査を行う(法4条)という段取りが置かれています。基礎調査とは、災害防止のために行う地形・地質・土地利用の状況などの調査です。区域指定はこの調査結果を土台にする、という建て付けになっています。試験で基本方針や基礎調査そのものが問われることはまずありませんが、この法律が国の基本方針と都道府県の調査を前提に動いていることを知っていれば、指定権者が都道府県知事等であることは自然に腑に落ちます。


    定義を先に押さえる(法2条)

    盛土規制法の問題は、定義を知らないまま読むと日本語として意味が取れません。法2条の用語を先に片付けます。

    宅地と農地等

    宅地とは、農地、採草放牧地および森林ならびに道路・公園・河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供されている土地以外の土地をいいます(法2条1号)。定義が引き算になっている点に注意してください。宅地に建物が建っている必要はなく、駐車場も資材置場も更地も、農地等でも公共施設用地でもなければ宅地です。

    農地等とは、農地、採草放牧地および森林をいいます(法2条2号)。旧法では規制の外にあったこれらが、条文上の主役の一角として登場したことが、改正の象徴といえます。

    宅地造成

    宅地造成とは、宅地以外の土地を宅地にするために行う盛土その他の土地の形質の変更で、政令で定めるものをいいます(法2条3号)。

    ここは旧法から定義が変わった箇所です。旧法の「宅地造成」には「宅地において行う土地の形質の変更」も含まれていましたが、現行法の宅地造成は宅地以外から宅地への転換に限られます。では、すでに宅地である土地の中で行う盛土はどうなるのか。それは次の「特定盛土等」が受け止めます。定義の担当範囲を移し替えただけで、規制が緩んだわけではありません。

    特定盛土等

    特定盛土等とは、宅地または農地等において行う盛土その他の土地の形質の変更で、当該宅地または農地等に隣接し、または近接する宅地において災害を発生させるおそれが大きいものとして政令で定めるものをいいます(法2条4号)。

    条文が「隣接し、又は近接する宅地において災害を発生させるおそれ」と書いていることに意味があります。守ろうとしているのは、盛土をしたその土地ではなく、その下や隣にある人の生活の場です。熱海の災害が下流の市街地を襲ったことを思い出せば、この書きぶりの理由が分かります。

    土石の堆積

    土石の堆積とは、宅地または農地等において行う土石の堆積で政令で定めるもの(一定期間の経過後に当該土石を除却するものに限る)をいいます(法2条5号)。

    盛土は土を置いて地形にしてしまう行為ですが、堆積は「いずれどける前提で積んである」行為です。永久に残す気がないから危険がない、とはなりません。仮置きの土砂の山が雨で崩れれば、下にいる人には同じ被害が及びます。「一時的な仮置きだから規制されない」は誤りだと即断できるようにしておいてください。

    崖と工事主

    政令は、を「地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地で硬岩盤以外のもの」と定義しています(令1条)。許可の要否は「高さ何メートルの崖を生ずるか」で判定されるため、この30度が判定の起点になります。

    工事主は、宅地造成等に関する工事の請負契約の注文者、または請負契約によらないで自らその工事をする者をいいます(法2条)。許可を申請するのも、検査を申請するのも、報告するのも工事主です。施工業者ではないという点は、手続の名宛人を問う問題で効いてきます。


    二つの規制区域(法10条・法26条)

    宅地造成等工事規制区域

    都道府県知事等は、宅地造成、特定盛土等または土石の堆積(あわせて「宅地造成等」)に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地もしくは市街地となろうとする土地の区域または集落の区域(これらに隣接し、または近接する土地の区域を含む)であって、工事について規制を行う必要があるものを、宅地造成等工事規制区域として指定できます(法10条1項)。

    この区域が守ろうとしているのは「人がいま住んでいる、またはこれから住む場所の足元」です。「隣接し、又は近接する土地の区域を含む」という括弧書きがあるので、市街地の外縁も取り込めます。旧法の宅地造成工事規制区域を、対象行為を広げたうえで引き継いだ区域だと考えてください。

    特定盛土等規制区域

    都道府県知事等は、宅地造成等工事規制区域以外の土地の区域であって、土地の傾斜度・渓流の位置その他の自然的条件および周辺地域における土地利用の状況その他の社会的条件からみて、その区域内で特定盛土等または土石の堆積が行われた場合に、これに伴う災害により居住者等の生命または身体に危害を生ずるおそれが特に大きいと認められる区域を、特定盛土等規制区域として指定できます(法26条1項)。

    こちらは「崩れたら人が住んでいる場所に届く上流側」を押さえる区域なので、山間部や農地・森林が入ってきます。判断材料に自然的条件と社会的条件の両方が挙がっているのは、傾斜が急でも下流に誰もいなければ危害は生じず、逆に緩やかでも直下に集落があれば危険だからです。

    面積として広くなるのはむしろ特定盛土等規制区域のほうですが、規制の密度は宅地造成等工事規制区域のほうが濃い。この「広さと濃さが逆」という関係が、後で見る規模要件の差につながります。

    指定権者と手続、そして両区域の排他関係

    指定するのは、いずれも都道府県知事です。指定都市・中核市の区域内の土地についてはそれぞれの市長が行うため、条文上は「都道府県知事等」と表記されます。指定にあたっては関係市町村長の意見を聴かなければならず、指定は公示によってその効力を生じます(法10条2項・3項、法26条2項)。

    見落としやすいのが排他関係です。特定盛土等規制区域は法26条1項の文言どおり「宅地造成等工事規制区域以外の土地の区域」に指定されるため、同じ土地が両方の区域に重複して指定されることはありません。

    都市計画区域との関係

    盛土規制法の規制区域は、都市計画区域の内外を問わず指定でき、市街化区域と市街化調整区域の線引きとも連動しません。都市計画法の開発許可が都市計画区域等を前提に組み立てられているのと対照的で、災害防止という目的が都市計画の枠外まで及ぶことの表れです(都市計画法の全体像)。

    • 両区域とも指定は都道府県知事等、関係市町村長の意見聴取が必要、効力は公示で発生
    • 特定盛土等規制区域は工事規制区域以外に指定されるので重複はせず、都市計画区域の内外も問わない

    宅地造成等工事規制区域内の規制

    許可が必要となる規模(法12条、令3条)

    宅地造成等工事規制区域内で行われる宅地造成等に関する工事については、工事主は、工事に着手する前に都道府県知事等の許可を受けなければなりません(法12条1項)。災害の発生のおそれがないものとして政令で定める工事は除かれます。

    「一定規模」の中身は令3条が定めています。次のいずれかに当たれば許可が必要です。

    • 盛土で、高さが1メートルを超える崖を生ずることとなるもの
    • 切土で、高さが2メートルを超える崖を生ずることとなるもの
    • 盛土と切土を同時にする場合で、高さが2メートルを超える崖を生ずることとなるもの(上の二つに当たるものを除く)
    • 上のいずれにも当たらない盛土で、高さが2メートルを超えるもの
    • 上のいずれにも当たらない盛土または切土で、面積が500平方メートルを超えるもの

    盛土が1メートル、切土が2メートルという非対称には理由があります。切土は元からそこにあった地山を削る行為なので、露出するのは締まった地盤です。これに対し盛土は、外から運んできた土を人工的に積む行為で、締固めが不十分なら水を含んで滑ります。人工物であるぶん盛土のほうが崩れやすい。だから盛土のほうが低い高さで網にかかる。この理屈を押さえておけば、選択肢で数字が入れ替わっていても違和感で気づけます。

    四つ目の「崖を生じない盛土でも高さ2メートル超なら許可」は落としやすい要件です。平坦な土地に緩い勾配で土を盛れば崖はできませんが、荷重は地盤にかかり、盛土そのものが滑る危険は残ります。崖の有無だけで判定してはいけません。

    土石の堆積の規模(令4条)

    土石の堆積については、令4条が別建てで規模を定めています。高さが2メートルを超え、かつ面積が300平方メートルを超えるもの、または、これに当たらないもので面積が500平方メートルを超えるものです。

    高さと面積を「かつ」で結ぶ要件と、面積だけの要件が並ぶ構造に注目してください。高く積めば落差が大きく、広く積めば量が多い。どちらの危険も拾えるようにしてあります。盛土の規模要件とは数字も組み方も違うので、混ぜないでください。

    技術的基準と、有資格者の設計を要する工事(法13条、令21条)

    許可を受ければ何をしてもよいわけではありません。工事は政令で定める技術的基準に従い、擁壁・排水施設その他の政令で定める施設の設置その他必要な措置が講じられたものでなければなりません(法13条1項)。政令は、崖面を擁壁で覆うこと、盛土前の地盤面の段切り、盛土の締固め、地下水を排除する施設の設置などを定めています。

    さらに、講ずべき措置のうち政令で定めるものの工事は、政令で定める資格を有する者の設計によらなければなりません(法13条2項)。その対象が令21条で、高さが5メートルを超える擁壁の設置と、切土または盛土をする土地の面積が1,500平方メートルを超える土地における排水施設の設置です。「5メートル超の擁壁」「1,500平方メートル超の土地の排水施設」というこの二つは旧法から引き継がれた頻出数値で、そのまま出ます。

    なお、都道府県知事等は許可に、工事の施行に伴う災害を防止するため必要な条件を付すことができます(法12条)。

    変更の許可と軽微な変更の届出(法16条)

    許可を受けた者が工事の計画を変更しようとするときは、原則として変更の許可が必要ですが(法16条1項)、主務省令で定める軽微な変更をしたときは遅滞なく届け出れば足ります(法16条2項)。「計画変更には常に改めて許可が必要」とする選択肢は誤りです。

    区域指定に伴う三つの届出(法21条)

    許可とは別に、区域が指定されたことによって発生する届出が三つあります。数字が三つとも違うので、まとめて覚えます。

    第一に、区域指定の際に既に工事に着手している場合です。宅地造成等工事規制区域の指定の際、その区域内で行われている宅地造成等に関する工事の工事主は、指定があった日から21日以内に届け出なければなりません(法21条1項)。既に始まっている工事に「着手前の許可」を求めるのは不可能なので、届出で存在を把握するという処理です。

    第二に、擁壁等に関する一定の工事を行う場合です。区域内の土地において、高さ2メートルを超える擁壁、地表水等を排除するための排水施設、地滑り抑止ぐい等の全部または一部を除却する工事を行おうとする者は、工事に着手する日の14日前までに届け出なければなりません(法21条2項、令26条)。作る側ではなく壊す側を捕まえる規定であることがポイントです。安全施設を勝手に撤去されては、せっかくの許可制が骨抜きになります。

    第三に、公共施設用地を転用した場合です。区域内において、公共施設用地を宅地または農地等に転用した者は、転用した日から14日以内に届け出なければなりません(法21条3項)。公共施設用地は宅地の定義から外れており、そのままでは規制の網の外にあります。転用によって網の内側に入ってきたことを申告させる規定です。

    三つを並べると、「既存工事は21日以内、除却は14日前まで、転用は14日以内」となります。前までなのは除却だけで、あとの二つは事後の以内である、という対比で覚えると取り違えません。


    特定盛土等規制区域内の規制

    対象行為から「宅地造成」が抜けている

    まず前提として、特定盛土等規制区域で規制されるのは特定盛土等と土石の堆積であって、宅地造成は入っていません(法27条1項、法30条1項)。この区域は市街地から離れた場所に指定されるため、宅地への転換それ自体を災害防止の観点から一律に捕まえる必要が薄い、という整理です。「特定盛土等規制区域内で宅地造成をするには知事の許可が必要」という選択肢は、対象行為の点で誤りになります。

    30日前までの届出(法27条)

    特定盛土等規制区域内で行われる特定盛土等または土石の堆積に関する工事については、工事主は、工事に着手する日の30日前までに、工事の計画を都道府県知事等に届け出なければなりません(法27条1項)。

    届出の対象となる規模は、宅地造成等工事規制区域における許可の規模と同じです。すなわち、盛土で1メートル超の崖、切土で2メートル超の崖、同時で2メートル超の崖、崖を生じない盛土で高さ2メートル超、面積500平方メートル超。土石の堆積は高さ2メートル超かつ面積300平方メートル超、または面積500平方メートル超です。

    ここが本試験でもっとも狙われる箇所です。同じ数字が、区域を変えると許可から届出に変わる。数字だけを丸暗記していると、「盛土で高さ1メートルを超える崖を生ずる工事は、特定盛土等規制区域内では知事の許可を受けなければならない」という選択肢に引っかかります。正しくは届出。数字は必ず「どちらの区域の、許可か届出か」とセットで覚えてください。

    許可が必要となる大規模なもの(法30条、令28条・令29条)

    特定盛土等規制区域内であっても、大規模な崖崩れまたは土砂の流出を生じさせるおそれが大きいものとして政令で定める規模の工事については、着手に都道府県知事等の許可が必要です(法30条1項)。

    その規模が令28条・令29条です。特定盛土等については、盛土で高さ2メートルを超える崖切土で高さ5メートルを超える崖同時に行い高さ5メートルを超える崖崖を生じない盛土で高さ5メートル超面積3,000平方メートル超。土石の堆積については、高さ5メートル超かつ面積1,500平方メートル超、または面積3,000平方メートル超です。

    宅地造成等工事規制区域の許可基準と見比べると、崖の高さは1メートルが2メートルに、2メートルが5メートルに、面積は500平方メートルが3,000平方メートルに引き上げられています。人家から離れた区域なので、同じ危険度に達するまでの余裕が大きい、という価値判断です。

    二段構えになっている理由

    市街地から離れた広大な区域で小規模な土工事のすべてに許可を求めれば、行政も事業者も回りません。そこで、中程度の規模は届出で存在を把握し、大規模なものだけ許可で事前審査するという濾過装置にしてあります。なお、特定盛土等規制区域についても、区域指定の際に既に着手している工事の届出など、宅地造成等工事規制区域と同じ趣旨の規定が法第6章に置かれています。


    工事中と工事後を見張る仕組み

    中間検査(法18条)

    許可を受けた者は、その工事が政令で定める規模のものである場合において、政令で定める工程(特定工程)に係る工事を終えたときは、その都度、主務省令で定める期間内に都道府県知事等の検査を申請しなければなりません(法18条1項)。

    中間検査は旧法にはなかった仕組みです。趣旨は単純で、盛土で覆ってしまうと後から確認できなくなる部分を、覆う前に見ることにあります。完了検査だけでは、地盤の段切りが行われたか、擁壁の基礎が図面どおりかを表面から判定できません。政令が特定工程として盛土をする前の地盤面や擁壁の設置に関する工程を挙げているのは、この発想によるものです。対象は許可を受けた工事のうち一定規模以上のものに限られます。

    完了検査と、土石の堆積についての「確認」(法17条)

    宅地造成または特定盛土等に関する工事について許可を受けた者は、工事を完了したときは、主務省令で定める期間内に都道府県知事等の検査を申請しなければならず、技術的基準に適合していると認められれば検査済証が交付されます(法17条1項・2項)。

    一方、土石の堆積に関する工事を完了したときは、都道府県知事等の確認を申請し、基準に適合していると認められれば確認済証が交付されます(法17条3項・4項)。堆積は「後で除却するもの」なので、完了時に見るのは構造物の出来ではなく、土石が除却され跡地が安全な状態になっているかどうかです。だから「検査・検査済証」ではなく「確認・確認済証」という別の語が使われています。用語の違いをそのまま問う出題があり得るので、対応関係で覚えてください。

    定期の報告(法19条)

    許可を受けた者のうち、政令で定める規模の工事に係る者は、主務省令で定める期間ごとに、工事の状況を都道府県知事等に報告しなければなりません(法19条1項)。これも旧法にはなかった制度で、許可・中間検査・完了検査という点の管理に加えて、工事期間中の状況を線で押さえる役割を担います。

    なお、これらの検査申請や報告の具体的な日数は主務省令に委ねられており、本試験で日数そのものが問われることはまずありません。押さえるべきは、中間検査・定期報告のいずれも旧法にはなかった仕組みであること、そして申請・報告の義務を負うのは工事主(許可を受けた者)であることの二点です。


    造成宅地防災区域(法45条から法47条)

    何のための区域か

    ここまでは「これから行う工事」への規制でした。しかし、危険な宅地は既にできあがっている場合があります。古い擁壁が傾いている、盛土でつくられた造成地が地震時に滑動するおそれがある。こうした既存の造成宅地に対応するのが造成宅地防災区域です。

    都道府県知事等は、宅地造成または特定盛土等(宅地において行うものに限る)に伴う災害で相当数の居住者その他の者に危害を生ずるものの発生のおそれが大きい一団の造成宅地の区域であって、政令で定める基準に該当するものを、造成宅地防災区域として指定することができます(法45条1項)。指定にあたっては関係市町村長の意見を聴きます。

    宅地造成等工事規制区域の「外」に指定される

    法45条1項の括弧書きは、造成宅地から「宅地造成等工事規制区域内の土地を除く」と明記しています。つまり造成宅地防災区域は、宅地造成等工事規制区域のに指定されます。

    理由は制度の役割分担にあります。宅地造成等工事規制区域の中であれば、既存の宅地についても、土地の保全の努力義務(法22条1項)、知事等の勧告(法22条2項)、改善命令(法23条)という手当てが既に用意されています。区域の中にわざわざ別の区域を重ねる必要がないのです。区域の外にある、しかし放置できない造成宅地をすくい上げるための受け皿が造成宅地防災区域だ、と理解してください。

    「造成宅地防災区域は宅地造成等工事規制区域のうち特に危険な部分について指定される」という選択肢は、この点で誤りです。形を変えて繰り返し問われるので、確実に切れるようにしておきましょう。

    指定された区域内で何が起きるか

    造成宅地防災区域内の造成宅地の所有者・管理者・占有者は、災害が生じないよう、その造成宅地について擁壁等の設置または改造その他必要な措置を講ずるよう努めなければなりません(法46条1項)。これは努力義務です。そのうえで、都道府県知事等は、必要があると認める場合には、これらの者に対し勧告をすることができ(法46条2項)、さらに、擁壁等が設置されていないか極めて不完全であるために放置すれば災害の発生のおそれが大きいと認められる場合には、相当の猶予期限を付けて改善命令を発することができます(法47条)。

    努力義務、勧告、改善命令という三段階です。まず所有者等の自主的な対応を促し、それでも動かなければ行政が命じる。この段階構造は、宅地造成等工事規制区域内の土地についての法22条・法23条とまったく同じです。「区域の内側は22条・23条、外側は46条・47条、中身は同じ三段階」と対応づけて覚えると負担が半分になります。


    監督処分・罰則・責務、そして宅建業法との接点

    監督処分(法20条)

    都道府県知事等は、偽りその他不正な手段により許可を受けた者などに対して、許可を取り消すことができます(法20条1項)。また、災害の防止のため必要があると認めるときは、工事主・工事施行者に対し工事の施行の停止を命じ、または相当の猶予期限を付けて擁壁等の設置その他必要な措置をとるべきことを命ずることができます(法20条2項)。

    重要なのは、命令の名宛人が工事主や工事施行者に限られないことです。土地の所有者・管理者・占有者に対しても必要な措置を命ずることができます(法20条3項)。無許可工事をした者が資力を失って所在不明になっても、危険な土地はそこに残る。だから現在の所有者にも手が届くようにしてあります。

    罰則

    罰則は旧法から大幅に引き上げられました。無許可で工事をした者などに対する上限は、3年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれの併科です(法55条)。さらに両罰規定により、法人に対しては3億円以下の罰金が科されます。旧法の上限が1年以下の懲役または50万円以下の罰金であったことと比べると、桁が違います。なお「拘禁刑」は懲役と禁錮を一本化した刑種で、2022年に成立した刑法等の一部改正法により2025年6月1日から施行されています。教材によっては「3年以下の懲役」と表記されていますが、指している内容は同じです。

    法人重科が3億円という水準に置かれたのは、残土の処分が収益を伴う事業だからです。罰金が適正な処分費用より安ければ違反したほうが得になってしまう、それを潰すための金額だと理解すると数字が記憶に残ります。

    土地所有者等の責務(法22条)

    宅地造成等工事規制区域内の土地の所有者・管理者・占有者は、宅地造成等に伴う災害が生じないよう、その土地を常時安全な状態に維持するように努めなければなりません(法22条1項)。都道府県知事等は、必要があると認める場合には、擁壁等の設置または改造その他必要な措置をとることを勧告でき(法22条2項)、要件を満たせば改善命令に進みます(法23条)。

    条文の主語が「所有者、管理者又は占有者」であって「工事をした者」ではない点に注意してください。自分で盛土をしていなくても、危険な土地を持つ以上は保全に努める立場に立たされます。「過去に他人が行った盛土について、現在の所有者は何らの義務も負わない」は誤りです。

    宅建業法の重要事項説明との接点

    盛土規制法は、実務では重要事項説明を通じて宅建業者の仕事に直結します。ここは科目をまたいで問われうる箇所です。

    宅地造成等工事規制区域内・特定盛土等規制区域内である旨は、法令に基づく制限として、売買・交換の重要事項説明の対象になります(宅建業法35条1項2号、同法施行令3条)。一方、造成宅地防災区域内にあるときはその旨は、宅建業法施行規則16条の4の3第1号により、売買・交換だけでなく貸借の場合にも説明しなければなりません。同条は土砂災害警戒区域内である旨、津波災害警戒区域内である旨と並べてこれを規定しており、災害リスクの告知として一括りに扱われています。

    35条書面の全体像は重要事項説明の完全整理35条書面の記載事項で、貸借の場合の切り分けは賃貸借の重要事項説明で扱っています。


    試験での出題ポイント

    盛土規制法は、法令上の制限のなかでは得点しやすい部類です。条文量が多くなく、問われる論点がほぼ固定しているからです。落とすとすれば、区域と数字の対応を取り違えたときです。

    狙われ方その一、区域の混同

    もっとも多いのが、三つの区域を入れ替える出題です。「特定盛土等規制区域は宅地造成等工事規制区域の中に指定される」「造成宅地防災区域は工事規制区域内の危険箇所に指定される」「規制区域を指定するのは市町村長である」。いずれも誤り。指定権者は都道府県知事等で統一、特定盛土等規制区域と造成宅地防災区域はどちらも工事規制区域の外、という二点で大半が処理できます。

    狙われ方その二、許可と届出のすり替え

    数字を正しく覚えていても、区域とセットにしていないと落ちます。盛土1メートル超の崖という同じ数字が、宅地造成等工事規制区域では許可の基準、特定盛土等規制区域では届出の基準です。選択肢はまず区域名、次に許可か届出か、最後に数字という順で読んでください。数字から読むと引っかかります。

    狙われ方その三、対象行為の広さ

    「農地における盛土は規制の対象外である」「一時的な土石の堆積は規制されない」といった、旧法の感覚に引きずらせる選択肢です。現行法は土地の用途を問わず、除却予定の仮置きも対象に取り込んでいます。逆方向として「特定盛土等規制区域内で宅地造成をするには許可が必要」という、対象行為を広げすぎた誤りもあります。

    狙われ方その四、新設された手続と細かい数値

    中間検査、定期の報告、土石の堆積についての確認・確認済証。いずれも旧法にはなかった、または旧法と用語が異なるものです。「中間検査は旧法から存在した」「土石の堆積の工事完了後には検査済証が交付される」はどちらも誤りになります。数値では、高さ5メートル超の擁壁と面積1,500平方メートル超の土地の排水施設は有資格者の設計による(令21条)、崖とは30度を超える角度をなす土地をいう(令1条)、区域指定の際の既着手工事の届出は21日以内(法21条1項)の三つで差がつきます。数字をまとめて処理したい場合は法令上の制限の暗記法、科目全体での得点設計は法令上の制限で確実に得点する、出題傾向の全体像は宅建試験の出題傾向を参照してください。


    覚え方・整理の仕方

    数字は「区域の縦二列」で持つ

    数字をばらばらに暗記すると必ず混ざります。盛土の崖・切土の崖・同時の崖・崖なし盛土・面積という五つの軸を固定したうえで、覚えるのは宅地造成等工事規制区域の許可が「1・2・2・2・500」、特定盛土等規制区域の許可が「2・5・5・5・3000」という二列だけです。

    そして、特定盛土等規制区域の届出の数字は、左の列(1・2・2・2・500)をそのまま流用します。三列目を新たに覚える必要はありません。「左の列は、右の区域では届出に落ちる」と一言で処理します。

    三つの区域は「時間軸と場所」で仕分ける

    これから工事をするのか、既にできあがっているのか、が第一の軸。市街地等の内側か外側か、が第二の軸。宅地造成等工事規制区域は「これから、内側」、特定盛土等規制区域は「これから、外側」、造成宅地防災区域は「既に、外側」。四つ目の枠(既に、内側)が空いているように見えますが、そこは法22条・法23条が既にカバーしているので区域を立てる必要がない、という理解までセットにすると盤石です。

    三つの届出日数は「前まで」だけ抜き出す

    法21条の21日以内・14日前まで・14日以内は、三つとも数字が近くて紛らわしい。事前の届出は擁壁等の除却(14日前まで)だけと覚えて、残る二つは事後の届出(既着手工事は21日以内、公共施設用地の転用は14日以内)と処理します。「まだ壊していないうちに止めなければ意味がない」ので除却だけが事前、という趣旨で紐づけると定着します。

    三段階は共通フォーマットとして持つ

    努力義務、勧告、改善命令という並びは、宅地造成等工事規制区域内(法22条・法23条)でも造成宅地防災区域内(法46条・法47条)でも同じです。自主的対応を促してから権力的手段に進むという行政法の一般的な作りでもあるので、他の法令にも応用が利きます。語呂に頼る前に構造の共通性を見つけるほうが効率的ですが、数字そのものの語呂は宅建の語呂合わせ基礎も参考になります。

    他法令との関係を一度だけ整理しておく

    同じ土地の造成に、都市計画法の開発許可(開発許可制度の全体像開発許可が不要になる場合)と盛土規制法の許可が同時にかかることがあります。目的が違うので、一方が不要でも他方は必要になる、という関係です。建築行為そのものへの規制は建築基準法の基本、その他の法令の許可権者の整理はその他の法令上の制限


    理解度チェッククイズ

    Q1. 盛土規制法の規制区域は、宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域の2種類であり、いずれも都道府県知事等が指定する。

    答えを見る **○ 正しい** 規制区域は宅地造成等工事規制区域(法10条1項)と特定盛土等規制区域(法26条1項)の2種類で、いずれも都道府県知事が指定します(指定都市・中核市の区域内の土地についてはその市長が行うため、条文上は「都道府県知事等」)。指定にあたっては関係市町村長の意見を聴かなければならず、効力は公示によって生じます。「市町村長が指定する」「国土交通大臣が指定する」はいずれも誤りです。

    Q2. 特定盛土等規制区域内において、盛土で高さ1.5メートルの崖を生ずる工事を行おうとする工事主は、都道府県知事等の許可を受けなければならない。

    答えを見る **× 誤り** 盛土で高さ1メートルを超える崖を生ずる工事は、**宅地造成等工事規制区域内**であれば許可が必要ですが(令3条)、**特定盛土等規制区域内**では着手30日前までの**届出**で足ります(法27条1項)。同区域で許可が要るのは、盛土で高さ2メートルを超える崖を生ずるものなど令28条の大規模なものに限られます。

    Q3. 造成宅地防災区域は、宅地造成等工事規制区域の中で特に危険な部分について指定される。

    答えを見る **× 誤り** 造成宅地防災区域は、宅地造成等工事規制区域**内の土地を除いた**造成宅地の区域について指定されます(法45条1項の括弧書き)。規制区域の内側は、土地の保全の努力義務(法22条1項)、勧告(法22条2項)、改善命令(法23条)で既にカバーされているため、重ねて区域を指定する必要がありません。

    Q4. 宅地造成等工事規制区域の指定の際、当該区域内で既に宅地造成に関する工事を行っている工事主は、あらためて都道府県知事等の許可を受けなければならない。

    答えを見る **× 誤り** 許可ではなく**届出**です。指定があった日から**21日以内**に都道府県知事等に届け出ます(法21条1項)。許可は工事の着手前に受けるものなので、既に着手している工事に許可を求めることはできません。なお、高さ2メートルを超える擁壁等を除却する工事は着手日の14日前までの届出(法21条2項)、公共施設用地を宅地または農地等に転用した場合は転用の日から14日以内の届出(法21条3項)です。

    Q5. 宅地造成等工事規制区域内の土地の所有者は、自らその土地で盛土を行っていない場合であっても、当該土地を常時安全な状態に維持するよう努めなければならない。

    答えを見る **○ 正しい** 法22条1項は、宅地造成等工事規制区域内の土地の所有者・管理者・占有者に対し、その土地を常時安全な状態に維持する努力義務を課しています。工事を行った者かどうかを問いません。さらに知事等は必要な措置を勧告でき(法22条2項)、要件を満たせば改善命令に進みます(法23条)。監督処分としての措置命令も土地の所有者等を名宛人としうる点(法20条3項)とあわせて押さえてください。

    まとめ

    盛土規制法は、区域を指定し、区域ごとに違う規模の行為に許可または届出をかけ、検査と報告で工事を追跡し、違反には処分と罰則で応じる法律です。骨格だけ確認します。

    1. 旧法からの移行:2021年の熱海市の土石流を契機に宅地造成等規制法が抜本改正され、2023年5月26日に施行。規制の入口は土地の用途から「区域と行為の規模」へ移った。
    2. 二つの規制区域:宅地造成等工事規制区域(法10条)と特定盛土等規制区域(法26条)。都道府県知事等が関係市町村長の意見を聴いて指定し、公示で効力が生じる。両者は排他的で重複しない。
    3. 数字は二列:宅地造成等工事規制区域の許可が「1・2・2・2・500」、特定盛土等規制区域の許可が「2・5・5・5・3000」。特定盛土等規制区域の届出(着手30日前まで)の規模は前者と同じ。
    4. 検査と報告:中間検査(法18条)と定期の報告(法19条)は旧法になかった。完了時は宅地造成・特定盛土等が「検査・検査済証」、土石の堆積が「確認・確認済証」。
    5. 造成宅地防災区域と責務:工事規制区域の外に指定し(法45条)、努力義務・勧告(法46条)・改善命令(法47条)で既存宅地を是正させる。区域内の土地所有者等も常時安全な状態に維持する努力義務を負う(法22条)。罰則は3年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金(法55条ほか)。

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    宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングでは、盛土規制法の許可・届出の規模要件を区域ごとに切り分けて出題しているので、この記事を読んだあとに続けて演習してみてください。

    読んだ内容を、法令上の制限の肢で確かめる

    都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。

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