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条件と期限の違い|期間計算と初日不算入

権利関係 読了 約40分

民法127条以下の条件と期限を条文から解説。停止条件と解除条件、確定期限と不確定期限、条件成就の妨害、期限の利益、138条から143条の期間計算と初日不算入、宅建業法の「起算して」との関係を整理します。

目次

    この記事は、民法の法律行為の付款である条件・期限(127条から137条)と、期間の計算(138条から143条)を扱います。法律行為そのものの有効・無効の枠組みは「無効と取消しの違い」、期間の経過が権利を得させたり失わせたりする制度は「時効」で扱っているので、あわせて読むと位置づけがはっきりします。権利関係全体のなかでの位置は「権利関係の全体像」を参照してください。

    条件と期限は、どちらも「将来の事実に法律行為の効力をかからせる」という点で同じです。分かれ目はただ一つ、その事実の成否が不確定かどうかです。不確定なら条件、確実に来るなら期限。この一点から、あとの結論はすべて導けます。先にこの分岐を頭に固定してください。

    そして、この記事の後半で扱う期間の計算のほうが、実は出題される機会が多い論点です。民法138条から143条は民法の中の規定ですが、138条自身が「特別の定めがある場合を除き、この章の規定に従う」と宣言しているため、宅建業法の期間規定にも及びます。クーリング・オフの8日、指定流通機構への登録の7日と5日、届出の30日。これらの数え方の違いは、条文に「起算して」という言葉があるかないかで決まります。この見方を身につけると、数字の暗記が条文を読む力に変わります。

    先に結論を六つ述べます。

    第一に、条件は成否が不確定な事実、期限は到来が確実な事実です。停止条件付法律行為は成就した時から効力を生じ(127条1項)、解除条件付法律行為は成就した時から効力を失います(同条2項)。

    第二に、「出世したら返す」のような約束について、判例は不確定期限と解しています。出世しないことが確定した時点で期限が到来する、という処理になります。

    第三に、条件の成就を故意に妨げた場合、相手方は成就したものとみなすことが「できます」(130条1項)。自動的にみなされるのではありません。2020年4月1日施行の改正で新設された2項は、逆に不正に成就させた場合に、成就しなかったものとみなすことができるとしています。

    第四に、期限は債務者の利益のために定めたものと「推定」します(136条1項)。放棄できますが、相手方の利益を害することはできません(同条2項)。

    第五に、期間は初日を算入しないのが原則です(140条本文)。例外は「その期間が午前零時から始まるとき」だけです(同条ただし書)。

    第六に、末日が休日でも自動的に翌日に延びるわけではありません。142条は「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」と限定しています。この限定が最も落ちやすい部分です。

    なお、宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されます。この記事で引用する民法・宅地建物取引業法・同法施行規則・農地法の条文は、すべて2026年4月1日時点で施行されているものです。民法は令和8年法律第45号により2026年6月24日に改正・施行されていますが本則1,173条に差分はなく、宅地建物取引業法も令和7年法律第68号により2026年4月1日に改正されているものの本則86条に差分はありません。この記事の内容に影響する改正はありません。

    条件と期限を分ける一点

    付款とは何か

    契約などの法律行為には、その効力の発生や消滅を将来の事実にかからせる特約を付けることができます。これを付款といいます。条件と期限は、この付款の代表的な二つです。

    法律行為そのものが有効に成立していることが前提になります。意思能力や行為能力に問題がある、内容が公序良俗に反する、意思表示に瑕疵がある、といった場合は、条件や期限の話に入る前に法律行為の効力自体が否定されます。この順序は「無効と取消しの違い」で扱っている三層の判断枠組みと同じです。付款の話は、法律行為が有効であることを確認したうえで、その効力がいつ発生し、いつ消滅するかを調整する段階にあります。

    分岐点は「確実に来るか」だけ

    条件と期限を分ける基準は一つしかありません。その事実が確実に到来するかどうかです。

    到来するかどうか分からない事実にかからせれば条件です。「宅地建物取引士試験に合格したら」「転勤になったら」「建築確認が下りたら」。いずれも起こるかもしれないし、起こらないかもしれません。

    必ず到来する事実にかからせれば期限です。「来年の4月1日に」「父が死亡したら」。日付は必ず来ますし、人はいつか必ず亡くなります。

    いつ来るかが分かっているかどうかは、条件と期限を分ける基準ではありません。期限のほうを、いつ来るかが分かっている確定期限と、いつ来るかは分からないが必ず来る不確定期限に細分するときの基準です。ここを一段ずらして覚えると、「父が死亡したら」を条件だと答えてしまいます。

    判定は二段階です。第一段階で「必ず来るか」を問い、来ないかもしれなければ条件で終わり。必ず来るなら第二段階に進み、「いつ来るか決まっているか」を問う。決まっていれば確定期限、決まっていなければ不確定期限です。

    「出世したら返す」はどちらか

    古くから議論されてきた例です。金を借りるときに「出世したら返す」と約束した場合、これは条件でしょうか期限でしょうか。

    出世するかどうかは不確実に見えるので、条件だと考えたくなります。しかし判例は、これを不確定期限と解しています。理屈は、出世するか、出世しないことが確定するか、そのどちらかは必ず訪れる、という点にあります。つまり「出世した時、または出世しないことが確定した時」を期限の到来とみるわけです。

    この処理には実際上の意味があります。条件だとすると、出世しないまま推移する限り債務の効力はいつまでも発生せず、貸主は永久に返済を受けられないことになりかねません。不確定期限と構成すれば、出世しないことが確定した時点で期限が到来し、返済を請求できるという結論になります。

    不確定期限だと何が変わるのか

    条件か不確定期限かで、履行遅滞の起算点が変わります。ここが実務にも試験にも効いてくる部分です。

    民法412条は、履行期と履行遅滞の関係を三つに分けています。1項は「債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う」。2項は「債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う」。3項は「債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う」。

    確定期限なら到来しただけで遅滞になりますが、不確定期限では到来だけでは足りません。債務者が請求を受けるか、到来を知るか、そのどちらか早いほうが必要です。理由は明らかで、いつ来るか分からない期限では、債務者が到来に気づかないまま遅滞の責任を負わされるのは酷だからです。履行遅滞と債務不履行の全体像は「債務不履行」で扱っています。

    • 分岐は「必ず来るか」の一点。来ないかもしれなければ条件
    • 「いつ来るか」は期限を確定・不確定に分けるときの基準
    • 「出世したら返す」は不確定期限。判例の処理
    • 確定期限は到来だけで遅滞、不確定期限は請求または知った時が必要(412条)

    停止条件と解除条件(127条)

    127条1項 ― 成就した時から効力を生ずる

    停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。(民法127条1項)

    停止条件は、成就するまで効力の発生を「止めている」条件です。「宅地建物取引士試験に合格したら、この土地を贈与する」という契約では、合格が停止条件です。合格するまで贈与の効力は発生しません。

    条件の成否が未定である間、法律行為は成立してはいるが効力が発生していない、という状態にあります。成立と効力発生がずれるという点が、この制度の特徴です。

    条件が成就すれば、その時から効力が発生します。逆に、成就しないことが確定すれば、効力は永久に発生しません。試験に不合格が確定すれば、贈与の効力は生じないまま終わります。

    127条2項 ― 成就した時から効力を失う

    解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。(民法127条2項)

    解除条件は、成就したときに効力を消滅させる条件です。「転勤になったら、この建物の使用貸借を終了する」という契約では、転勤が解除条件です。

    停止条件と逆に、契約時からすでに効力が発生しています。条件の成否が未定である間も、当事者は契約に拘束されます。条件が成就すればその時から効力を失い、成就しないことが確定すれば、効力はそのまま存続します。

    127条3項 ― 遡及の合意はできる

    当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。(民法127条3項)

    1項・2項はいずれも「成就した時から」と定めていますが、これは任意規定です。当事者が合意すれば、成就の効果を過去にさかのぼらせることができます。

    したがって「条件成就の効果は常に将来に向かってのみ生じ、遡及させることはできない」という選択肢は誤りです。3項が明文で遡及の合意を認めています。原則は不遡及、合意があれば遡及、という二段で押さえてください。

    二つの見分け方

    停止条件か解除条件かは、条件が成就したときに効力が「生じる」のか「失われる」のかで決まります。契約文言だけを眺めるのではなく、成就した場面を想像して、そこで契約が動き出すのか止まるのかを考えるのが確実です。

    同じ事実でも、契約の書き方次第でどちらにもなります。「合格したら贈与する」は停止条件ですが、「贈与するが、不合格が確定したら返す」と書けば、不合格の確定が解除条件になります。事実の中身ではなく、効力への働き方で分類するという点を押さえてください。

    条件の成否が未定の間の法律関係(128条・129条)

    条件付法律行為は、成否が未定の間も無関係な状態ではありません。民法は二か条を置いて、この中間状態を保護しています。

    128条 ― 相手方の利益を害することができない

    条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。(民法128条)

    条件が成就すれば相手方が得るはずの利益を、成就前に壊してはならない、という規定です。停止条件付きで贈与すると約束した土地を、成就前に第三者に売却して引き渡してしまう、といった行為がこれに当たります。

    条文は「各当事者は」と書いており、停止条件でも解除条件でも、どちらの当事者にも及びます。義務に違反すれば、債務不履行として損害賠償の責任を負うことになります。

    129条 ― 処分・相続・保存・担保

    条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。(民法129条)

    条件付きの権利は、それ自体が財産的価値を持つものとして扱われます。処分できるし、相続の対象にもなるし、保存行為もできるし、担保に供することもできます。

    「条件が成就するまでは何の権利もないのだから、譲渡も相続もできない」という発想は誤りです。条文が四つの行為を列挙してこれを否定しています。四つのうち一つだけを外した選択肢が作られることがあるので、列挙を丸ごと覚えておくと安全です。

    166条3項との接続

    条件付権利については、時効の側にも規定があります。166条3項は「前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない」と定め、ただし書で「権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる」としています。

    停止条件付きの権利の目的物を第三者が占有し始めれば、その時から取得時効が進行してしまう。権利者はそれを止めるために承認を求められる、という構造です。時効制度の全体像は「時効」で扱っています。

    条件成就の妨害と不正な成就(130条)

    1項 ― 故意に妨げた場合

    条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。(民法130条1項)

    条件が成就すると困る立場の者が、わざと成就を妨げた。そのときは、妨げられた側が「成就したことにする」と主張できる、という規定です。信義に反する行動によって利益を得ることを許さない、という考え方の現れです。

    要件は三つです。第一に、条件の成就によって不利益を受ける当事者であること。第二に、故意に妨げたこと。第三に、条件の成就を妨げたこと。

    2項 ― 不正に成就させた場合

    条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。(民法130条2項)

    2020年4月1日施行の改正で新設された規定です。1項と鏡合わせの関係にあり、条件が成就すると得をする立場の者が、不正な手段で成就させた場合を扱います。効果も鏡合わせで、相手方は「成就しなかったことにする」と主張できます。

    1項と2項の文言の違い

    1項は「故意に」、2項は「不正に」と書かれており、文言が違います。この違いは条文を読めば分かる事実で、覚えておく価値があります。

    1項は妨害する側の主観に着目し、故意であることを要求します。2項は成就させる行為の態様に着目し、不正であることを要求します。単に自分に有利になるよう努力しただけでは2項に当たらない、という含みを持たせた書き分けです。選択肢で「故意に」と「不正に」を入れ替えてくる可能性があるので、どちらの項の話かを確認してください。

    「みなすことができる」の意味

    両項とも「みなすことができる」であって、「みなす」ではありません。

    条件が自動的に成就したことになるのではなく、相手方がそう主張するかどうかを選べる、という構造です。相手方が何も言わなければ、条件は成就していない状態のままです。

    これは相手方にとって合理的な仕組みです。妨害されたとしても、成就したことにするより、条件が成就しないまま契約の効力が発生しないほうが有利な場面もありえます。選択権を相手方に与えるという条文の書き方だと理解すれば、「自動的にみなされる」という選択肢を迷わず切れます。

    効力を否定される条件(131条から134条)

    条件を付けたことによって、法律行為そのものの効力が否定される場合があります。四か条が並んでおり、いずれも結論が「無効」か「無条件」に振り分けられます。

    131条 ― 既成条件

    条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
    2 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。(民法131条1項・2項)

    法律行為の時点で成否がすでに決まっている条件を既成条件といいます。本来、条件は成否が不確定な事実でなければならないので、すでに決まっているなら条件としての機能を持ちません。そこで条文が結論を四通りに書き分けています。

    整理すると次のようになります。すでに成就していた場合、停止条件なら効力を止める理由がないので無条件、解除条件なら成立と同時に効力を失うことになるので無効。成就しないことがすでに確定していた場合、停止条件なら効力が永久に発生しないので無効、解除条件なら効力を失う契機が来ないので無条件。

    四通りのうち二つが無効、二つが無条件です。丸暗記するより、成就した場面を思い浮かべて「効力が動き出すか、止まるか」を考えるほうが確実です。

    3項は「前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第百二十八条及び第百二十九条の規定を準用する」と定めます。当事者が既成であることを知らずにいる間は、通常の条件付法律行為と同じ保護を与えるという趣旨です。

    132条 ― 不法条件

    不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。(民法132条)

    後段まで含めて覚える必要があります。「不法な行為をしたら」を条件とする法律行為が無効になるのは分かりやすいのですが、「不法な行為をしなかったら」を条件とするものも同様に無効です。

    理由は、不法な行為をしないことに対価を与えること自体が、不法な行為をしうる立場を前提にしており、社会的に許容できないためです。「しない」ほうも無効という後段が落とされた選択肢が作られます。

    なお、無効になるのは条件だけでなく法律行為全体です。条件部分だけが無効になって残りが有効に存続する、という処理ではありません。

    133条 ― 不能条件

    不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。
    2 不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。(民法133条1項・2項)

    実現不可能な事実を条件とした場合です。停止条件であれば効力が発生する見込みがないので無効、解除条件であれば効力を失う契機が来ないので無条件。131条2項と同じ考え方で結論が決まります。

    134条 ― 随意条件

    停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。(民法134条)

    「気が向いたら贈与する」のように、条件の成否が債務者の意思だけで決まる場合です。それでは債務を負う意思があったといえないので、無効とされます。

    条文が無効としているのは、停止条件で、かつ債務者の意思のみに係る場合だけです。この二重の限定を落とさないでください。解除条件が債務者の意思のみに係る場合や、停止条件が債権者の意思のみに係る場合は、134条の対象外です。条文が「停止条件付法律行為は」「単に債務者の意思のみに係るときは」と二か所で絞っていることを、条文の文言で確認しておいてください。

    期限(135条から137条)

    135条 ― 始期と終期

    法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。
    2 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。(民法135条1項・2項)

    1項の書き方に注意してください。始期については「効力を生じない」とは書かれていません。「その法律行為の履行は……これを請求することができない」と書かれています。

    停止条件について127条1項が「効力を生ずる」と書いているのと対照的です。始期付法律行為は効力自体はすでに発生しており、履行を請求できないだけ、という構造になっています。

    一方、2項の終期については「効力は、期限が到来した時に消滅する」と書かれ、解除条件についての127条2項と同じ形です。始期だけが書き方が違うという点を、条文の文言で押さえてください。

    確定期限と不確定期限

    期限は、到来する時期が確定しているかどうかで二つに分かれます。

    確定期限は、到来の時期が暦の上で特定できるものです。「令和9年4月1日に」「契約の日から1年後に」といった定め方です。

    不確定期限は、到来することは確実だが、いつ来るかが分からないものです。「父が死亡したら」が典型例です。人の死亡は必ず訪れるので条件ではなく、しかしいつ訪れるかは分からないので確定期限でもありません。

    前述のとおり、この区別は履行遅滞の起算点を決めるうえで意味を持ちます(412条1項・2項)。

    136条 ― 期限の利益とその放棄

    期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
    2 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。(民法136条1項・2項)

    期限の利益とは、期限が到来するまで履行しなくてよいという利益です。1項は、それが債務者のためのものだと推定します。

    「推定する」であって「みなす」ではありません。反証があれば覆ります。そして、この推定が覆りうることは、条文の構造そのものが示しています。2項ただし書が「これによって相手方の利益を害することはできない」と定めているのは、期限に相手方の利益が伴う場合がありうることを条文が前提にしているからです。相手方に何の利益もないなら、放棄によって害される利益もありません。

    2項本文により、期限の利益は放棄できます。債務者が期限前に弁済することは自由です。ただし、それによって相手方の利益を害することはできない、というのがただし書の制約です。

    137条 ― 期限の利益の喪失

    次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
    一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
    二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
    三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。(民法137条)

    三つの事由が列挙されています。いずれも、債務者の信用や担保が損なわれた場面で、債権者に期限まで待たせるのが不公平になるケースです。

    条文の書き方にも注目してください。「期限が到来する」とは書かれておらず、「債務者は、期限の利益を主張することができない」と書かれています。効果の書き方が一段控えめです。

    2号は「債務者が」担保を滅失させた場合に限られます。第三者の行為や不可抗力によって担保が滅失した場合は、条文の文言に当たりません。「担保が滅失したとき」と主語を落とした選択肢は、この点で誤りになります。

    なお、実務では契約書に期限の利益喪失条項を置き、137条の三つより広い事由を定めるのが通例です。137条は法定の最低限であって、特約による上乗せを禁じる規定ではありません。

    期間の計算(1)通則と起算

    ここからが、実際には最も出題される部分です。民法138条から143条の六か条を、条文の順に読みます。

    138条 ― この章は通則である

    期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。(民法138条)

    この条文が、期間計算の話を民法の外へ広げる入口です。民法の期間計算の規定は、民法の中だけの話ではなく、法令一般に適用される通則として置かれています。宅建業法にも、法令上の制限の各法にも、原則としてこの章の規定が及びます。

    同時に、138条は三つの例外を認めています。法令に特別の定めがある場合、裁判上の命令に特別の定めがある場合、法律行為に別段の定めがある場合です。個別の法令が独自の数え方を定めていれば、そちらが優先します。

    この構造を理解しておくと、後述する宅建業法の期間規定を機械的に処理できるようになります。まず特別の定めを探し、なければ民法に戻る。この順序です。

    139条 ― 時間による期間

    時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。(民法139条)

    「今から3時間」のように時間単位で定めた場合は、即時から数えます。初日不算入のような調整は入りません。時間単位なら端数が生じないので、そのまま数えれば足りるからです。

    140条 ― 初日不算入の原則

    日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。(民法140条)

    日以上の単位で期間を定めたときは、初日を数えない。これが初日不算入の原則です。

    理由は端数の処理にあります。4月1日の午後3時に契約して「その日から10日間」と定めた場合、4月1日は9時間しか残っていません。この半端な1日を1日と数えると、実質的に10日に足りないことになります。そこで、半端な初日を切り捨てて、翌日から丸1日ずつ数える、という扱いにしています。

    ただし書はこの理由の裏返しです。期間が午前零時から始まるなら、初日に端数が生じないので、そのまま算入します。「4月1日午前0時から10日間」であれば、4月1日を1日目として数えます。

    具体例で確認します。4月1日に契約し、その日から10日間と定めた場合。初日不算入により4月2日から起算し、4月2日が1日目、4月11日が10日目です。4月1日午前0時から10日間なら、4月1日が1日目、4月10日が10日目になります。同じ「10日間」でも末日が1日ずれます。

    初日不算入は原則にすぎない

    140条は「特別の定めがなければ」という前提の上にある規定です。138条が最初に例外を認めているので、個別の法令や当事者の合意が別の数え方を定めれば、そちらが優先します。

    「期間の初日は常に算入しない」という選択肢は、この構造を無視しているため正しくありません。140条自身にただし書があり、さらに138条が特別の定めを優先させています。原則と例外の関係を意識してください。

    • 138条は通則であり、法令・裁判上の命令・法律行為による特別の定めが優先する
    • 139条は時間単位。即時から起算する
    • 140条は日以上の単位。初日不算入が原則、午前零時から始まるときは算入する

    期間の計算(2)満了

    141条 ― 末日の終了をもって満了

    前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。(民法141条)

    「前条の場合には」と書かれている点に注意してください。141条が対象とするのは140条の場合、つまり日・週・月・年によって定めた期間です。139条の時間単位の期間には適用されません。

    満了するのは末日の「終了」時、つまりその日の24時です。末日の午前中に何かをすれば足りる、というわけではなく、末日いっぱいまで時間があります。

    142条 ― 「慣習がある場合に限り」

    期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。(民法142条)

    この条文で最も落ちやすいのが「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」という限定です。

    末日が日曜日や祝日に当たれば自動的に翌日に延びる、と覚えている人が多いのですが、条文はそう書いていません。休日に当たることと、その日に取引をしない慣習があること、この二つが揃って初めて翌日に満了します。

    条文が列挙しているのは「日曜日」「国民の祝日に関する法律に規定する休日」「その他の休日」の三つです。土曜日が明示的に挙げられているわけではありません。

    「期間の末日が国民の祝日に当たるときは、期間はその翌日に満了する」という選択肢は、慣習の要件を落としているため誤りです。条文の文言をそのまま覚え、「限り」という語を落とさないことが、この条文への対策になります。

    143条1項 ― 暦に従って計算する

    週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。(民法143条1項)

    週・月・年の単位では、日数に換算せずに暦をそのまま使います。1か月を30日と換算するのではありません。2月なら28日または29日、3月なら31日が、それぞれ1か月です。

    「1か月は30日として計算する」という選択肢は、この条文に反します。日数換算をするのは、当事者が「30日間」と日単位で定めた場合です。「1か月」と「30日」は違う定め方であり、結論もずれます。

    143条2項本文 ― 応当日の前日に満了

    週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。(民法143条2項本文)

    月の途中から数え始めるときの規定です。最後の月の、起算日と同じ日付の「前日」が末日になります。

    4月1日に契約して「その日から1か月」と定めた場合を追います。まず140条本文により初日不算入で、起算日は4月2日です。次に143条2項本文により、最後の月である5月において起算日に応当する日は5月2日、その前日である5月1日の終了をもって満了します。

    4月15日に契約して「その日から1か月」なら、起算日は4月16日、応当日は5月16日、その前日の5月15日が末日です。

    なぜ「前日」なのかは、初日不算入と対になっていると考えると分かります。4月2日から数え始めて5月2日まで数えると、1か月と1日になってしまう。始点を後ろにずらしたぶん、終点も手前で止める、という調整です。

    143条2項ただし書 ― 応当日がないとき

    ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。(民法143条2項ただし書)

    起算日が31日で、最後の月が30日までしかない、といった場合の処理です。

    1月30日に契約して「その日から1か月」と定めた場合を追います。初日不算入で起算日は1月31日。最後の月である2月において1月31日に応当する日は「2月31日」ですが、そんな日はありません。そこでただし書により、2月の末日の終了をもって満了します。平年なら2月28日、閏年なら2月29日です。

    ただし書の効果は「その月の末日に満了」であって、「末日の前日」ではありません。本文が「前日」と書いているのに引きずられて前日にしないよう注意してください。

    月の初めから起算する場合

    143条2項は「週、月又は年の初めから期間を起算しないときは」という限定つきの規定です。起算日が月の初日であれば、2項は適用されません。

    1月31日に契約して「その日から1か月」と定めた場合。初日不算入により起算日は2月1日で、これは月の初めです。2項の適用場面ではないので、1項の暦計算により、2月がまるごと1か月となり、2月の末日の終了をもって満了します。

    同じ「2月末日満了」でも、1月30日契約のケースは2項ただし書、1月31日契約のケースは1項による、という違いがあります。結論が同じでも根拠条文が違う点は、条文の構造を理解しているかどうかの分かれ目です。

    • 141条は「前条の場合には」。日以上の単位の期間についての規定
    • 142条は「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」。自動延長ではない
    • 143条1項は暦計算。1か月=30日ではない
    • 143条2項本文は応当日の前日、ただし書は応当日がなければその月の末日

    宅建業法の期間規定に当てはめる

    138条が入口になる

    宅建業法には期間を定めた規定が数多くあります。それらをどう数えるかは、138条から出発して機械的に判断できます。

    手順は二段階です。第一に、その法令に特別の定めがあるかを確認する。第二に、なければ民法140条以下に戻る。

    そして、宅建業法の条文を読むときの鍵になるのが「起算して」という表現です。「その日から起算して八日」と書かれていれば、その日を1日目として数える趣旨で、初日を算入します。「その日から三十日以内」とだけ書かれていれば、特別の定めがないので民法140条本文に戻り、初日を算入しません。

    「起算して」を使う条文は宅建業法本則に三つだけ

    宅地建物取引業法の本則で「起算して」という語が使われているのは、次の三か所です。

    第一に、3条6項。免許の更新がされたときは、その免許の有効期間は、従前の免許の有効期間の満了の日の翌日から起算する、と定めています。

    第二に、16条の3。指定試験機関の指定の基準を定めた条文で、刑の執行を終わった日から起算して2年、指定を取り消された日から起算して2年、といった欠格期間の書き方をしています。

    第三に、37条の2第1項1号。クーリング・オフの8日です。

    逆に言えば、それ以外の期間規定には「起算して」がありません。5条1項の免許の基準に並ぶ5年の欠格期間も、「その取消しの日から五年を経過しない者」「執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者」という書き方で、「起算して」を使っていません。

    この事実は条文を検索すれば誰でも確かめられます。数字を覚える代わりに、条文の書き方を確認する習慣を持てば、初日算入かどうかで迷わなくなります。

    クーリング・オフの8日 ― 初日を算入する

    一 買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令・内閣府令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して八日を経過したとき。(宅地建物取引業法37条の2第1項1号)

    「その告げられた日から起算して八日」と書かれています。告げられた日そのものが1日目です。

    4月1日に告知書面を受け取ったなら、4月1日が1日目、4月8日が8日目。8日を経過するのは4月9日ですから、4月8日中に撤回の書面を発すれば間に合います。

    ここは140条の原則の例外になっている、最も出題される場面です。「初日不算入だから4月2日が1日目」と考えると、末日を1日後ろにずらしてしまいます。クーリング・オフの制度全体は「クーリング・オフ」で、事例つきで詳しく扱っています。

    なお、起算点は「告げられた日」であって、申込みをした日でも契約を締結した日でもありません。そして告げられていなければ8日は進行しません。数え方の問題に入る前に、起算点そのものを確認することが必要です。

    指定流通機構への登録 ― 7日と5日、そして休業日

    法第三十四条の二第五項の国土交通省令で定める期間は、専任媒介契約の締結の日から七日(専属専任媒介契約にあつては、五日)とする。
    2 前項の期間の計算については、休業日数は算入しないものとする。(宅地建物取引業法施行規則15条の10)

    こちらは「締結の日から七日」と書かれており、「起算して」がありません。したがって民法140条本文に戻り、初日は算入しません。契約締結日の翌日から数えます。

    そのうえで、2項が「休業日数は算入しないものとする」という特別の定めを置いています。これはまさに138条が言う「法令に特別の定めがある場合」で、民法にはない数え方です。休業日はカウントから外すので、休業日が2日挟まれば、暦の上では9日後が末日になります。

    同じ条文のなかに、民法に戻る部分(初日不算入)と、民法を上書きする部分(休業日不算入)が同居しているという例です。138条の構造を理解していれば、この二段を自然に処理できます。媒介契約の全体像は「媒介契約の種類」を参照してください。

    届出の30日 ― 初日不算入

    宅地建物取引業者は、第四条第一項第一号から第五号までに掲げる事項について変更があつた場合においては、国土交通省令の定めるところにより、三十日以内に、当該変更に係る事項を記載した届出書を……提出しなければならない。(宅地建物取引業法9条)

    変更の届出です。「三十日以内に」とあるだけで「起算して」がないので、初日不算入です。変更があった日の翌日から30日を数えます。

    廃業等の届出も同じです。11条1項は「その日(第一号の場合にあつては、その事実を知つた日)から三十日以内に」と定めており、やはり「起算して」がありません。1号の相続の場合だけ起算点が「その事実を知つた日」になっている点は、起算点そのものの論点として別に押さえてください。届出の種類ごとの整理は「廃業等の届出」と「変更の届出」にあります。

    数字の一覧と組み合わせて使う

    宅建業法の期間・日数の数字そのものは「宅建業法の数字まとめ」に横断整理があります。この記事で扱っているのは、その数字をどう数えるかという一段手前の話です。

    数字を覚えるだけでは、「4月1日に告げられた場合、いつまでにクーリング・オフができるか」という形の問いに答えられません。数字と数え方を組み合わせて初めて、具体的な日付を答えられます。計算問題全般への向き合い方は「宅建の計算問題」も参考になります。

    • まず「起算して」があるかを見る。あれば初日算入
    • なければ138条経由で民法140条に戻り、初日不算入
    • 施行規則15条の10第2項の休業日不算入は、138条が言う「特別の定め」の典型例

    条件が宅建業法の結論を変える場面

    条件の理解が、そのまま宅建業法の結論を左右する条文があります。

    33条の2第1号の括弧書き

    宅地建物取引業者は、自己の所有に属しない宅地又は建物について、自ら売主となる売買契約(予約を含む。)を締結してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
    一 宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得する契約(予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているときその他宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で国土交通省令・内閣府令で定めるとき。(宅地建物取引業法33条の2第1号)

    他人物売買の禁止と、その例外を定めた条文です。業者がその物件を取得する契約を締結していれば例外にあたるのですが、括弧書きが「その効力の発生が条件に係るものを除く」と定めています。

    つまり、取得契約に停止条件が付いている場合は、例外にあたりません。業者が確実に物件を取得できるとはいえないからです。取得できるかどうかが不確定な段階で買主と売買契約を結ばせるわけにはいかない、という趣旨です。

    「業者が所有者と売買契約を締結していれば、自ら売主となって転売できる」という選択肢は、この括弧書きを落としています。その取得契約が停止条件付きなら例外にあたらず、33条の2違反になります。8種制限としての位置づけは「自己の所有に属しない物件の売買制限」と「8種制限とは」で扱っています。

    期限付きなら例外にあたる

    括弧書きが除いているのは「効力の発生が条件に係るもの」だけです。期限が付いているだけの取得契約は除かれません。

    「令和9年4月1日に所有権を移転する」という始期付きの取得契約であれば、期限は必ず到来するので、業者が物件を取得できることは確実です。条文の趣旨にも文言にも反しません。

    条件と期限の区別が、そのまま結論の分かれ目になります。冒頭で述べた「成否が不確定かどうか」という一点が、ここで業法の結論を決めています。これが、条件と期限の区別を正確に持っておく実際的な理由です。

    法定条件と約定条件

    条件には、当事者が合意で付けるもののほかに、法律が効力の発生要件として定めているものがあります。後者を法定条件と呼ぶことがあります。

    農地法3条6項は「第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない」と定めています。農地について権利を移転する契約は、許可を受けなければ効力が生じません。これは当事者の合意によるものではなく、法律が定めた効力要件です。農地法の許可制度の全体像は「農地法」で扱っています。

    このような場合に、当事者が契約書のなかで「許可を停止条件とする」と明示的に定めることもあります。そう定めれば、127条1項以下の条件の規定が適用される約定の停止条件になります。法律上当然に効力が生じないことと、当事者が条件として合意することは、重なってはいても別の事柄です。

    試験での出題ポイント

    「父が死亡したら」を条件とする肢

    最も定番の引っかけです。人の死亡は必ず訪れるので条件ではなく不確定期限です。「いつ来るか分からないから条件だ」という誤った推論を誘っています。判定の第一段階は「必ず来るか」であって「いつ来るか分かるか」ではない、という順序を守ってください。

    停止条件と解除条件を入れ替える肢

    127条1項と2項を入れ替えた肢です。「停止条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力を失う」という形。条件が成就した場面で契約が動き出すのか止まるのかを想像すれば、迷いません。

    遡及効を否定する肢

    「条件成就の効果を遡及させることはできない」という形。127条3項が明文で当事者の合意による遡及を認めているため誤りです。原則は不遡及、合意があれば遡及という二段で押さえます。

    条件付権利の処分等を否定する肢

    「条件の成否が未定である間は、条件付権利を処分することができない」という形。129条が処分・相続・保存・担保供与の四つを認めているため誤りです。四つのうち一つだけを外してくる形もあります。

    130条を自動効果にする肢

    「故意に条件の成就を妨げた場合、条件は成就したものとみなされる」という形。条文は「みなすことができる」であり、相手方の選択に委ねられています。選択権があるかどうかが問われています。

    130条1項と2項の文言を入れ替える肢

    1項は「故意に」妨げた場合、2項は「不正に」成就させた場合です。文言を入れ替えたり、2項を改正前から存在した規定として扱ったりする形が考えられます。2項は2020年4月1日施行の改正で新設されたものです。民法改正で新設・変更された規定の一覧は「民法改正のポイント」で整理しています。

    132条の後段を落とす肢

    「不法な条件を付した法律行為は無効であるが、不法な行為をしないことを条件とするものは有効である」という形。後段が「同様とする」と定めているため誤りです。

    134条の限定を外す肢

    「条件が単に当事者の一方の意思のみに係るときは、その法律行為は無効である」という形。134条は停止条件で、かつ債務者の意思のみに係る場合に限っています。二つの限定のどちらかを外してくる肢に注意してください。

    135条1項を「効力を生じない」に書き換える肢

    始期について「期限が到来するまで効力を生じない」とする形。条文は「その法律行為の履行は……これを請求することができない」と書いています。停止条件の127条1項とは書き方が違います。

    136条1項を「みなす」にする肢

    「期限は、債務者の利益のために定めたものとみなす」という形。条文は「推定する」です。推定なら反証で覆せますが、みなしなら覆せません。

    137条の主語を落とす肢

    「担保が滅失したときは、債務者は期限の利益を主張することができない」という形。条文は「債務者が担保を滅失させ」と主語を置いています。第三者の行為や不可抗力による滅失は文言に当たりません。

    初日不算入の例外を落とす肢、または広げる肢

    「期間の初日は、常に算入しない」という形。140条ただし書と138条の存在を無視しています。逆に「初日は常に算入する」という形もありえます。原則は不算入、例外は午前零時から始まるとき、そして特別の定めがあればそちらが優先という三段で持ってください。

    142条から「慣習」を落とす肢

    「期間の末日が日曜日に当たるときは、期間はその翌日に満了する」という形。「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」が抜けています。この条文で最も狙われる箇所です。

    1か月を30日に換算する肢

    143条1項は「暦に従って計算する」と定めています。1か月を30日と換算するのは、当事者が日単位で定めた場合の話です。

    143条2項ただし書を「前日」にする肢

    応当日がないときの末日を「その月の末日の前日」とする形。ただし書の効果は「その月の末日に満了」です。本文の「前日」に引きずられないでください。

    クーリング・オフに初日不算入を持ち込む肢

    「告げられた日の翌日から8日」とする形。37条の2第1項1号は「その告げられた日から起算して八日」と定めており、初日を算入します。条文に「起算して」があるかを確認するのが最短の判断です。

    33条の2の括弧書きを落とす肢

    「業者が物件の所有者と停止条件付きの売買契約を締結していれば、自ら売主となって当該物件を転売できる」という形。1号の括弧書きが「その効力の発生が条件に係るものを除く」と定めているため誤りです。

    覚え方・整理の仕方

    二段階の質問を固定する

    条件か期限かを問われたら、順番に二つの質問を投げます。

    第一問「その事実は必ず来るか」。来ないかもしれなければ条件で終わり。ここで終わることが多いので、まずこれを問います。

    第二問「いつ来るか決まっているか」。第一問で「必ず来る」と答えた場合だけ進みます。決まっていれば確定期限、決まっていなければ不確定期限。

    質問の順番を逆にしないことが要です。「いつ来るか分からない」を先に見ると、不確定期限を条件と誤ります。

    条文の述語で覚える

    条件と期限の条文は、述語が一つずつ違います。

    127条1項(停止条件)は「効力を生ずる」。127条2項(解除条件)は「効力を失う」。135条1項(始期)は「履行は……請求することができない」。135条2項(終期)は「効力は……消滅する」。

    四つのうち始期だけが述語の形が違うという覚え方をすると、135条1項を「効力を生じない」と書き換えた肢に反応できます。

    無効か無条件かは「効力が動くか」で決める

    131条から134条の結論は、暗記の対象になりがちですが、考えれば出ます。成就が確定した場面を想像し、その法律行為の効力が発生する見込みがあるかを問う。見込みがなければ無効、条件が意味を失うだけなら無条件。

    停止条件で成就しないと確定 → 効力が永久に発生しない → 無効。解除条件で成就しないと確定 → 効力を失う契機がない → 無条件。不能の停止条件 → 無効。不能の解除条件 → 無条件。同じ理屈が繰り返し使えます。

    130条は「できる」で締める

    130条は1項も2項も「みなすことができる」で終わります。両項とも語尾が同じなので、まとめて「130条は『できる』で終わる」と覚えます。そのうえで、1項は妨害で「故意に」、2項は不正な成就で「不正に」と、要件語だけを別に持ちます。

    期間計算は「三つの質問」で処理する

    具体的な日付を答える問いには、次の三つを順に処理します。

    第一「特別の定めがあるか」。「起算して」があるか、休業日不算入のような規定があるか。あればそれに従います。

    第二「起算日はいつか」。特別の定めがなければ140条本文で初日不算入、翌日が起算日。午前零時から始まるならその日が起算日。

    第三「末日はいつか」。日単位なら起算日から数える。月・年単位なら143条2項で応当日の前日、応当日がなければその月の末日。そして142条で末日が休日かつ取引をしない慣習があれば翌日。

    この三段を固定すれば、法令が変わっても同じ手順で処理できます。

    「起算して」を目印にする

    宅建業法の期間規定を見たら、まず「起算して」を探します。あれば初日算入、なければ初日不算入。条文の一語で結論が決まるという関係を覚えておくと、クーリング・オフの8日だけを例外として暗記する必要がなくなります。

    宅建業法本則で「起算して」を使うのは3条6項・16条の3・37条の2第1項1号の三か所だけです。このうち試験で数え方が問われるのは37条の2第1項1号です。

    142条は「限り」を声に出す

    142条は、条文を音読して「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」の部分を強く読む、という覚え方が有効です。限定語を落とした肢が最も多いので、限定語のほうを記憶の核にします。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 「私が死亡したら、この土地をあなたに贈与する」という契約は、停止条件付法律行為である。


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    ×。人の死亡は将来必ず到来する事実なので、条件ではなく期限です。いつ到来するかは分からないため、不確定期限にあたります。条件と期限を分ける基準は「その事実が確実に到来するか」の一点であり、「いつ到来するか分かるか」ではありません。判定は二段階で、第一段階が「必ず来るか」、第二段階が「いつ来るか決まっているか」です。この順序を逆にすると、いつ来るか分からないという理由で不確定期限を条件と誤ります。なお、不確定期限であることが確定すると、履行遅滞の起算点は412条2項により「期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時」になります。確定期限であれば412条1項により到来した時から遅滞になるので、両者は扱いが違います。

    Q2. 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げた場合、その条件は成就したものとみなされ、相手方は改めて主張する必要はない。


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    ×。130条1項は「相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる」と定めています。自動的にみなされるのではなく、相手方が主張するかどうかを選べるという構造です。相手方が何も主張しなければ、条件は成就していない状態のままです。選択権を相手方に与えているのは、成就したことにするより、条件が成就しないまま契約の効力が発生しないほうが相手方にとって有利な場面もありうるためです。同条2項も「条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる」と、同じ語尾で書かれています。2項は2020年4月1日施行の改正で新設された規定です。1項が「故意に」、2項が「不正に」と要件語を書き分けている点も、あわせて押さえてください。

    Q3. 4月1日に契約を締結し、その日から1か月間と期間を定めた場合、期間は5月1日の終了をもって満了する。


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    ○。二段階で処理します。まず140条本文により初日不算入なので、4月1日は数えず、起算日は4月2日です。次に143条2項本文により、月の初めから起算していないため、「最後の月においてその起算日に応当する日の前日」に満了します。最後の月は5月、起算日4月2日に応当する日は5月2日、その前日である5月1日が末日です。そして141条により、末日の終了をもって満了するので、5月1日の24時までです。なお「1か月」を30日と換算してはいけません。143条1項が「暦に従って計算する」と定めているためです。もしこの契約が「4月1日午前0時から1か月」であれば、140条ただし書により初日を算入して起算日が4月1日となり、応当日5月1日の前日である4月30日が末日になります。同じ「1か月」でも起算の仕方で末日が1日ずれます。

    Q4. 期間の末日が国民の祝日に当たるときは、期間はその翌日に満了する。


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    ×。142条は「期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する」と定めています。休日に当たることだけでは足りず、その日に取引をしない慣習があることが必要です。この肢は「慣習がある場合に限り」という限定を落としているため誤りです。142条で最も狙われるのがこの限定語で、条文を覚えるときは限定のほうを記憶の核にしてください。なお、条文が列挙しているのは「日曜日」「国民の祝日に関する法律に規定する休日」「その他の休日」の三つで、土曜日が明示されているわけではありません。

    Q5. 宅地建物取引業者Aが、宅地建物取引業者でないBに対し、4月1日に宅地の買受けの申込みを受けた場所以外の場所で、クーリング・オフができる旨およびその方法を書面で告げた場合、Bは4月9日に撤回の書面を発しても、なお申込みを撤回することができる。


    答えを見る
    ×。37条の2第1項1号は「その告げられた日から起算して八日を経過したとき」に撤回等ができなくなると定めています。「起算して」とあるため初日を算入し、4月1日が1日目、4月8日が8日目です。8日を経過するのは4月9日なので、4月9日に発した書面ではもはや撤回できません。4月8日中に発していれば有効です。ここは民法140条の初日不算入の例外にあたる場面で、「告げられた日の翌日から8日」と数えると末日を1日後ろにずらしてしまいます。138条が「法令に特別の定めがある場合」を除外しているため、「起算して」という文言を持つ宅建業法の規定が民法140条に優先する、という構造です。なお、撤回等の効力は書面を発した時に生じます(同条2項)。到達時ではないため、8日目に投函して9日目に到達しても有効です。

    Q6. 宅地建物取引業者Aが、宅地の所有者Cとの間で、当該宅地を取得する停止条件付きの売買契約を締結した場合、Aは、宅地建物取引業者でないDを買主として、当該宅地の売買契約を締結することができる。


    答えを見る
    ×。33条の2は、業者が自己の所有に属しない物件について自ら売主となる売買契約を締結してはならないと定め、1号で例外を置いています。その1号は「宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得する契約(予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く。)を締結しているとき」と規定しており、括弧書きが停止条件付きの取得契約を明示的に除いています。条件が成就しなければAは宅地を取得できず、Dへの引渡しができなくなるおそれがあるからです。したがってAはDと売買契約を締結できません。これに対し、取得契約に期限が付いているだけであれば、期限は必ず到来するのでAが取得できることは確実であり、括弧書きに当たらず例外が適用されます。条件と期限の区別が、そのまま業法の結論を分ける場面です。

    まとめ

    • 条件と期限を分ける基準は「その事実が確実に到来するか」の一点です。不確定なら条件、確実なら期限。「いつ来るか分かるか」は、期限を確定期限と不確定期限に分けるときの第二段階の基準であって、条件と期限を分ける基準ではありません。「父が死亡したら」は不確定期限です。
    • 「出世したら返す」について、判例は不確定期限と解しています。出世した時、または出世しないことが確定した時に期限が到来する、という処理です。不確定期限になると、履行遅滞の起算点は412条2項により「請求を受けた時」または「到来を知った時」の早いほうになります。
    • 127条1項は停止条件で「効力を生ずる」、2項は解除条件で「効力を失う」、3項は当事者の合意による遡及を認めています。原則は不遡及、合意があれば遡及です。
    • 128条は条件成否未定の間の相手方の利益を保護し、129条は条件付権利の処分・相続・保存・担保供与を認めます。「条件成就まで何の権利もない」という理解は誤りです。
    • 130条1項は故意の妨害、2項は不正な成就。効果はいずれも「みなすことができる」です。自動的にみなされるのではなく、相手方が選べます。2項は2020年4月1日施行の改正で新設されました。1項が「故意に」、2項が「不正に」と要件語を書き分けています。
    • 131条から134条は結論が無効か無条件かに振り分けられます。成就が確定した場面で効力が動き出す見込みがあるかを問えば導けます。132条は後段(不法な行為をしないことを条件とするもの)まで無効、134条は停止条件かつ債務者の意思のみという二重の限定つきです。
    • 135条1項の始期は「効力を生じない」ではなく「履行を請求することができない」と書かれています。四つの付款の条文のうち、始期だけが述語の形が違います。
    • 136条1項は「推定する」であって「みなす」ではありません。2項ただし書が「相手方の利益を害することはできない」と定めていること自体が、期限に相手方の利益が伴う場合を条文が前提にしている証拠です。137条の三事由は、いずれも主語が「債務者が」であり、効果は「期限の利益を主張することができない」という書き方です。
    • 138条が期間計算の入口です。法令・裁判上の命令・法律行為に特別の定めがあればそちらが優先し、なければ民法140条以下に戻ります。この二段階を固定してください。
    • 140条は初日不算入が原則、例外は「午前零時から始まるとき」だけです。141条は末日の終了で満了、142条は「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」翌日満了、143条1項は暦計算(1か月は30日ではない)、143条2項本文は応当日の前日、ただし書は応当日がなければその月の末日(前日ではありません)。
    • 宅建業法では「起算して」の有無が数え方を決めます。クーリング・オフの8日は37条の2第1項1号に「起算して」があるので初日算入。指定流通機構への登録の7日・5日(施行規則15条の10)と、変更の届出・廃業等の届出の30日(9条・11条)には「起算して」がないので初日不算入。さらに施行規則15条の10第2項の休業日不算入は、138条が言う「法令に特別の定めがある場合」の典型例です。
    • 条件の理解は業法の結論を変えます。33条の2第1号の括弧書きは「その効力の発生が条件に係るものを除く」と定めており、取得契約が停止条件付きなら他人物売買の例外にあたりません。期限が付いているだけなら例外にあたります。

    宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングでは、条件・期限の過去問と、宅建業法の期間規定を条文ごとに絞り込んで演習できます。期間計算は「特別の定めを探す」「起算日を決める」「末日を決める」の三段階を毎回口に出して当てはめる練習をすると、法令が変わっても同じ手順で処理できるようになります。

    読んだ内容を、権利関係の肢で確かめる

    民法・借地借家法・区分所有法など、条文だけでは判断しづらい論点は、過去問の肢で覚えるのが最短です。

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