法令上の制限の暗記法|語呂合わせと横断整理テクニック
宅建の法令上の制限を覚えるための記事。面積・期間・許可権者の数字を法律をまたいで整理し、語呂合わせを制度趣旨とつなげる方法と、取り違えの型を条文根拠つきで解説します。
目次
この記事は、法令上の制限で問われる数字と主体を、法律をまたいで整理して覚えるための記事です。論点ごとの中身は個別記事に譲り、ここでは「どう覚えるか」「なぜ取り違えるか」に絞ります。許可と届出の一覧を通しで確認したい場合は法令上の制限の横断整理|許可と届出の分かれ目を、どの論点から手をつけるかを決めたい場合は法令上の制限の頻出論点|3層に分けて攻めるを先に見ておくと、本記事の位置づけがはっきりします。
結論を先に述べます。法令上の制限で点が伸びない原因は、覚えた量の不足ではなく、覚え方の粒度が細かすぎることにあります。「市街化区域は1,000平方メートル」という数字を単体で覚えると、隣にある「市街化区域は2,000平方メートル」と衝突して両方が壊れます。数字は単体で覚えるのではなく、「どの法律の、何を判断する場面の、どの区域の数字か」という四つの情報を一組にして覚える。そして語呂合わせは、その一組を思い出すための引き金として使い、語呂そのものを答えにしない。この二つを徹底するだけで、混同による失点は大きく減ります。以下、具体的に展開します。
なお本記事の条文は、令和8年度試験の出題範囲である2026年4月1日時点で施行されている法令に合わせています。宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されるため、それより後に施行された改正は範囲に入りません。この点は暗記法そのものに直結するので、後半に一節を立てて扱います。
なぜ法令上の制限は覚えたそばから崩れるのか
数字が似ているから混ざる
法令上の制限は、都市計画法、建築基準法、国土利用計画法、農地法、土地区画整理法、盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)にまたがります。令和4年度から令和7年度までの本試験を見ると、いずれも問15から問22までの8問がこの分野で、問15・問16が都市計画法、問17・問18が建築基準法、問19が盛土規制法、問20が土地区画整理法、問21が農地法、問22が国土利用計画法という並びが続いています。配点と守備範囲の考え方は法令上の制限は何問出る?8問の内訳で扱っています。
問題は、これら別々の法律が、たまたま似た数字を使っていることです。「市街化区域」「1,000」「2,000」「500」「2週間」「知事」といった語は、どの法律にも顔を出します。人間の記憶は、文脈から切り離された数字を保持するのが苦手で、似た数字が並ぶと互いに干渉して混ざります。覚えたはずの数字が試験本番で出てこないのは、記憶が消えたのではなく、隣の数字と混線しているケースがほとんどです。
干渉は、似ていれば似ているほど強く起きます。たとえば「500平方メートル」は、開発許可の三大都市圏の特例(都市計画法施行令19条2項)にも、盛土規制法で宅地造成に当たるかどうかを決める面積(同法施行令3条5号)にも出てきます。数字が同じで、しかもどちらも土地をいじる行為の規制で、どちらも都道府県知事が関わる。共通点が多い組み合わせほど、記憶の中で融合しやすいわけです。逆にいえば、混ざりやすい組み合わせはあらかじめ特定できます。特定できるなら、そこだけ狙って区別を書き込んでおけばよいことになります。
語呂合わせだけだと問われ方が変わった瞬間に崩れる
語呂合わせは有効な道具ですが、それ単体では脆いところがあります。「市街化区域は千」と覚えていても、問題文が「市街化区域内において、1,000平方メートルの開発行為を行う場合、開発許可は不要である」と書いてきたときに答えられません。1,000という数字は合っているのに、条文が「1,000平方メートル未満」を許可不要と定めているため、1,000平方メートルちょうどは許可が必要になるからです。語呂は数字を運んできますが、「未満」なのか「以上」なのかまでは運んでくれません。
もうひとつの弱点は、法改正への追随です。建築確認の要否は長く「木造は3階建て以上または延べ面積500平方メートル超、非木造は2階建て以上または延べ面積200平方メートル超」という区分で教えられ、それに合わせた語呂合わせが広く出回っていました。しかし2025年4月施行の建築基準法改正でこの区分は再編され、現在の6条1項2号は「二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超える建築物」となって、木造か否かで基準が分かれる構造ではなくなっています。古い語呂をそのまま唱えると誤答に直結します。語呂は覚えた当時の法令を凍結して運んでしまう、という性質があります。
語呂そのものの作り方と、語呂を当ててよい数字・当ててはいけない数字の線引きは宅建の語呂合わせ|使う数字と使わない数字で扱っています。本記事は、作った語呂を法令上の制限という分野の構造にどう接続するか、という側から書きます。
覚える単位を「数字」から「一問一答」に変える
対処は単純です。覚える最小単位を数字ではなく、問いと答えの組にします。「1,000平方メートル」ではなく、「都市計画法の開発許可について、市街化区域内で許可が不要になるのはどの規模か。答え、1,000平方メートル未満」という形です。この形にすると、法律名、判断する場面、区域、境界の向きが自動的にセットで入ります。
一見すると覚える量が増えたように見えますが、実際には逆です。文脈のある情報は互いに支え合うので、干渉が起きにくく、一部を忘れても残りから復元できます。裸の数字を10個覚えるより、文脈つきの問答を10組覚えるほうが、結果として保持率が高くなります。暗記の一般的な技法、とくに復習間隔の設計は宅建の暗記術|忘却と復習の設計にまとめています。
数字を覚える前に押さえる三つの軸
法令上の制限の規制は、形が驚くほど揃っています。どの法律も、結局のところ「誰が」「いつまでに」「どこで」「どの規模から」を定めているだけです。この四つのうち、数字が入るのは後ろの二つで、前の二つは言葉です。まず言葉のほうから固めると、数字が入る場所が用意されます。
軸1 誰が判断するか
規制のかたちは、大きく許可制と届出制に分かれます。許可は行政の判断を待って初めて行為ができる仕組み、届出は行為の事実を知らせる仕組みで、拘束の強さが違います。そして誰に対して手続をするかは、法律ごとに決まっています。
開発許可は都道府県知事(都市計画法29条1項。地方自治法上の指定都市・中核市の区域内では当該指定都市等の長)、盛土規制法の許可も都道府県知事(同法12条1項、30条1項)、農地法3条は農業委員会(同法3条1項)、4条と5条は都道府県知事または指定市町村の長(条文はこれを「都道府県知事等」と略しています。同法4条1項)、国土利用計画法の事後届出は市町村長を経由して都道府県知事(同法23条1項)、建築確認は建築主事等または指定確認検査機関(建築基準法6条1項、6条の2第1項)です。
この並びで異質なのが建築確認です。ほかがすべて行政庁または行政委員会であるのに対し、建築確認だけは民間の指定確認検査機関でもできます。建築確認は行為の適法性を技術的に審査するもので、政策的な裁量判断ではないから、という違いによります。この「建築確認だけ毛色が違う」という感覚を持っておくと、「建築確認は都道府県知事が行う」という誤りの選択肢に反応できます。
なお建築主事のほかに建築副主事という職が置かれ、条文の主語が「建築主事等」に変わったのは、令和4年法律第69号のうち2025年4月1日に施行された部分によります。2024年4月1日施行の版まで、6条1項の主語は「建築主事」の一語でした。建築副主事の確認は大規模建築物以外に限られます(6条1項括弧書き)。基準日の2026年4月1日より前の施行なので令和8年度の範囲に入りますが、試験でここまで細かく問われる可能性は高くありません。条文を引いたときに「建築主事等」と書いてあって戸惑わないよう、名称だけ知っておけば足ります。
軸2 いつまでにするか
許可は原則として行為の前に受けます。開発許可も、盛土規制法の許可も、農地法の許可も、行為に着手する前でなければ意味がありません。これに対して届出は、前のものと後のものが混在します。
国土利用計画法の事後届出は、その名のとおり契約を締結した後に行います。一方、農地法4条1項7号・5条1項6号の市街化区域内の特例による届出は、あらかじめ農業委員会に行う必要があります。盛土規制法27条1項の特定盛土等規制区域内の届出も、工事に着手する日の30日前までという事前の届出です。同じ「届出」でも向きが逆であるという点が、そのまま出題箇所になります。
軸3 どこで効くか
区域の考え方は、法律ごとに切り口が違います。都市計画法と国土利用計画法は、市街化区域、市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域(非線引き区域)、準都市計画区域、それ以外という区分で規制の強さを変えます。建築基準法の集団規定は、41条の2により都市計画区域および準都市計画区域の内側でのみ適用されます。盛土規制法は、都道府県知事が指定する宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域という、独自の区域を使います。
つまり「市街化区域」という言葉が出てきたら都市計画法系か国土法系、「規制区域」が出てきたら盛土規制法、と当たりをつけられます。区域の枠組みそのものは都市計画法の全体像|区域区分・用途地域・開発許可で押さえておくと、以降の数字が入りやすくなります。市街化調整区域だけは規制の作りが他と違うので、市街化調整区域|「抑制」という語から読むで別に固めておくと、面積の暗記が一段軽くなります。
この三軸を先に固めておくと、数字は「軸の交点に置く値」になります。裸の数字として浮かんでいる状態より、格段に落ちにくくなります。
- 誰が、は言葉で覚える。数字より先に固める。
- いつまでに、は許可なら前、届出は法律ごとに向きが違う。
- どこで、は区域の名前で法律の見当がつく。
面積の数字を横断で整理する
面積は最も混同が起きる領域です。ここは法律ごとに分けて覚えるのではなく、あえて並べて、違いの理由まで書き込むのが有効です。
開発許可が不要になる規模
都市計画法29条1項は、都市計画区域または準都市計画区域内での開発行為に許可を要求したうえで、同項1号で一定規模未満を除外しています。政令が定める規模は、市街化区域では1,000平方メートル、区域区分が定められていない都市計画区域および準都市計画区域では3,000平方メートルです(施行令19条1項)。ただし首都圏の既成市街地・近郊整備地帯、近畿圏の既成都市区域・近郊整備区域、中部圏の都市整備区域を含む市町村等では、市街化区域の1,000平方メートルが500平方メートルに読み替えられます(同条2項)。さらに、市街化の状況により無秩序な市街化を防止するため特に必要があると認められる場合には、条例で区域を限って、市街化区域なら300平方メートル以上1,000平方メートル未満、非線引き区域と準都市計画区域なら300平方メートル以上3,000平方メートル未満の範囲で、別の規模を定めることができます。条例で下げられる下限が300平方メートルである、という言い方より、「300平方メートルより下には下げられない」と覚えるほうが正確です。
都市計画区域および準都市計画区域のいずれにも含まれない区域では、条文の作りが変わります。29条2項が、政令で定める規模以上の開発行為に許可を要求しており、その規模は1ヘクタール、すなわち10,000平方メートルです(施行令22条の2)。ここだけ「以上で許可が必要」という書き方になっているのは、区域外には原則として規制がなく、大規模なものだけを例外的に捕まえる構造だからです。
市街化調整区域だけは、規模による除外がありません。29条1項1号の対象区域に市街化調整区域が入っていないからで、1平方メートルでも開発行為であれば許可が要ります。理由は明快で、市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域だからです。小規模だから見逃すという発想が、区域の目的と矛盾します。この「調整区域に面積の線引きはない」という一点を、他の数字より先に固定してください。面積以外の除外事由まで含めた全体像は開発許可が不要な場合|三つの系統に分けて判断すると開発許可が必要な面積要件|市街化区域・調整区域別の整理で確認できます。
国土利用計画法の事後届出が必要になる規模
国土利用計画法23条1項は、土地売買等の契約を締結した場合に、権利を取得することとなる者へ届出を課しています。そのうえで2項1号が、面積が一定規模未満の土地についての契約を適用除外としています。除外される規模は、市街化区域では2,000平方メートル、市街化区域以外の都市計画区域では5,000平方メートル、それ以外の区域では10,000平方メートルです。
ここで注意すべきは真ん中と最後の区分です。条文は「都市計画法第四条第二項に規定する都市計画区域(市街化区域を除く)」で5,000平方メートルと書いています。都市計画区域とは5条の指定を受けた区域のことで、準都市計画区域は5条の2に基づく別の区域ですから、ここには入りません。したがって準都市計画区域は最後の「それ以外の区域」に落ち、10,000平方メートルになります。開発許可では準都市計画区域が3,000平方メートルで非線引き区域と同じ扱いだったのに、国土法では区域外と同じ扱いになる。この非対称は本試験で狙われます。届出制度の細部は国土利用計画法|事後届出・事前届出・許可の3層で、注視区域・監視区域における事前届出は国土利用計画法の事前届出|注視区域と監視区域で扱っています。
盛土規制法の面積は五つの入口のひとつにすぎない
盛土規制法で「500平方メートル」を覚えている人は多いのですが、この数字は五つ並んだ入口の五番目です。同法施行令3条は、宅地造成等に当たる土地の形質の変更として、盛土で高さ1メートルを超える崖を生じるもの、切土で高さ2メートルを超える崖を生じるもの、盛土と切土を同時にして高さ2メートルを超える崖を生じるもの、崖を生じない盛土で高さが2メートルを超えるもの、そして以上のいずれにも当たらない盛土または切土で面積が500平方メートルを超えるもの、の五つを挙げています。
つまり面積要件は、高さの要件に引っかからなかったときに最後に働く受け皿です。「500平方メートル以下なら許可不要」と覚えていると、面積が小さくても崖の高さで引っかかる事例を落とします。1メートルは盛土、2メートルは切土、と高さの側から先に思い出す癖をつけてください。区域の構造と許可・届出の全体像は盛土規制法|規制区域と許可・届出の全体像に、指定の効果が違う造成宅地防災区域は造成宅地防災区域と特定盛土等規制区域にあります。
二つが混ざる理由と、混ざった場合の帰結
開発許可と国土法の数字が混ざるのは、どちらも「市街化区域」という同じ言葉で区域を切り、しかもどちらの条文も「その規模未満なら手続が要らない」という同じ形をしているからです。違うのは数字だけで、条文の構えは同じです。似ているものを似ていないと思い込むと、かえって記憶が不安定になります。ここは「二つとも未満で外れる。数字が1,000と2,000で違うだけ」と、共通点の側から覚えたほうが安定します。
制度目的そのものは逆を向いています。開発許可は無秩序な市街地の拡散を防ぐもので、小さな行為まで捕まえる必要がない。国土法は地価の高騰と土地の投機的取引を抑えるためのもので、大きな取引ほど問題になる。ただし条文の技術としては、どちらも「小さいものを除外する」という同じ書き方が選ばれています。目的の違いは数字の大小に表れており、境界語の向きには表れていない、と整理してください。
ここを取り違えると、たとえば市街化区域内で1,500平方メートルの土地を取得して開発する事例で、「開発許可は不要、国土法の届出も不要」と両方外してしまいます。正しくは、開発許可は1,000平方メートル未満ではないので必要、国土法の届出は2,000平方メートル未満なので不要です。数字の混同はふつう一問の失点で済みますが、複合事例では二重に効きます。
覚え方
区域の順序を「市街化区域、調整区域や非線引き、区域外」で固定したうえで、開発許可は「1・3・1万、ただし調整はゼロ」、国土法は「2・5・1万」と唱えます。開発許可の3,000は非線引き区域と準都市計画区域の値で、調整区域には数字がない、という並びです。国土法の1万には準都市計画区域が含まれる、と最後に一言添えてください。この一言が、先ほどの非対称を守ります。
そのほかの面積の数字
面積が出てくる場面は他にもあります。建築基準法6条1項1号の特殊建築物は、その用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるものが確認の対象です。同項2号は、それ以外の建築物のうち二以上の階数を有するものまたは延べ面積が200平方メートルを超えるものを対象とします。同条2項により、防火地域および準防火地域外で増築・改築・移転をする場合において、その部分の床面積の合計が10平方メートル以内であるときは確認が不要です。都市計画法の第二種特定工作物は、ゴルフコースについては規模を問わず該当し、それ以外の運動・レジャー施設と墓園は1ヘクタール以上のものが該当します(施行令1条2項)。
これらは所属する法律がはっきり違うので、開発許可と国土法ほど混ざりません。ただし「超」と「以上」と「未満」の使い分けは共通の弱点なので、次の節で正面から扱います。数字の一覧そのものは都市計画法の数字|階層で分けて取り違えを防ぐと建築基準法の数字|意味から覚える整理法で横断的に見直せます。
「未満・以上・超・以下」を制度の側から復元する
法令上の制限の失点で、数字そのものの記憶違いより多いのが境界語の取り違えです。ここは丸暗記できる量ではないので、条文の書き方の型から復元できるようにします。
四語の意味を確定させる
「以」の字が入る語は境界の値を含みます。以上はその数を含んで大きい側、以下はその数を含んで小さい側。「以」の字が入らない語は境界の値を含みません。超はその数を含まず大きい側、未満はその数を含まず小さい側。ここまでは国語の問題です。
問題は、条文が規制する側から書いているか、除外する側から書いているかで、境界の値がどちらに転ぶかが変わることです。試験は、まさにこの転び方を突いてきます。
型1 「未満」で除外する条文は、境界の値が規制側に入る
都市計画法29条1項1号は、政令で定める規模「未満」の開発行為を許可の対象から外しています。市街化区域の政令規模は1,000平方メートルですから、1,000平方メートルちょうどは「未満」に当たりません。除外から漏れる、つまり許可が必要です。
国土利用計画法23条2項1号も同じ形です。市街化区域では2,000平方メートル「未満」の土地についての契約を適用除外としているので、2,000平方メートルちょうどは除外されず、届出が必要になります。
この型では、条文が数えているのは「手続が要らない範囲」です。だから境界の値は、手続が要る側に落ちます。都市計画法と国土利用計画法という、面積で最も混同されやすい二法が、そろってこの型です。片方を思い出せれば、もう片方も同じだと分かる。
型2 「超」で取り込む条文は、境界の値が規制の外に出る
建築基準法6条1項1号は、特殊建築物のうち用途部分の床面積の合計が200平方メートルを「超える」ものを確認の対象にしています。したがって200平方メートルちょうどでは確認が要りません。同項2号の延べ面積200平方メートルも同じです。
盛土規制法施行令3条5号も「面積が五百平方メートルを超えるもの」と書いているので、500平方メートルちょうどでは、他の号に当たらない限り規制対象になりません。同条1号の「高さが一メートルを超える崖」、2号の「高さが二メートルを超える崖」も同じ書き方です。
この型では、条文が数えているのは「手続が要る範囲」です。だから境界の値は、手続が要らない側に落ちます。
境界の値ひとつで四つを検算する
以上をまとめると、覚えるべきは四つの事実だけです。1,000平方メートルちょうどの開発行為は許可が要る。2,000平方メートルちょうどの取得は届出が要る。200平方メートルちょうどの特殊建築物は確認が要らない。500平方メートルちょうどの切土は(崖の高さで引っかからない限り)許可が要らない。
この四つを口に出せる状態にしておくと、境界語を思い出さなくても答えが出ます。そして逆向きにも使えます。たとえば「1,000平方メートルちょうどは許可が要った」ことを覚えていれば、条文が「未満」で除外している型だと復元でき、そこから「2,000平方メートルちょうども届出が要るはずだ」と国土法まで届きます。数字と境界語を別々に覚えるより、境界の値での挙動を四つ覚えるほうが、単位が大きい分だけ壊れにくいのです。
「以下」と「以内」が出てくる場所
法令上の制限で「以下」「以内」が使われるのは、規制を外す方向の緩和規定に集中します。建築基準法6条2項の10平方メートル以内の増築等、都市計画法施行令22条3号の10平方メートル以内の増築等がその例です。どちらも境界の値を含むので、ちょうど10平方メートルなら手続は要りません。「緩和は境界を含む」と覚えておくと、この種の選択肢で迷わなくなります。
引っかけの作り方そのものを型として押さえておきたい場合は宅建の引っかけ表現のパターンが使えます。境界語の入れ替えは、宅建業法や権利関係でも同じ形で使われます。
期間の数字を横断で整理する
期間は面積ほど数が多くありませんが、その分だけ一つ落とすと痛い領域です。
国土利用計画法の三つの期間
事後届出は、契約を締結した日から起算して2週間以内に行います(23条1項)。届出を受けた都道府県知事が勧告をするときは、届出があった日から起算して3週間以内にしなければなりません(24条2項)。実地の調査を行うため必要があるときその他合理的な理由があるときは、さらに3週間の範囲内で期間を延長できます(24条3項)。つまり勧告をするかどうかは最長でも6週間で決着します。ここで「しなければならない」のは期間の守り方であって、勧告そのものではありません。勧告をするか否かは24条1項が「勧告することができる」としています。
覚えるべきは「2・3・6」の並びですが、それぞれの主語が違うことに注意が必要です。2週間は届出をする側の義務、3週間と6週間は知事の側の期間です。問題文が「知事は届出があった日から2週間以内に勧告しなければならない」と書いてきたら、数字と主語の両方が入れ替わっていることになります。届出をする側の2週間を、知事の側の期間として書き写す、というのがこの論点の定番の崩し方です。
あわせて、勧告の対象が土地の利用目的に限られ、対価の額には及ばないという点も落とせません。24条1項が勧告できるのは「土地の利用目的について必要な変更をすべきこと」だけです。届出事項には対価の額が含まれています(23条1項6号)が、届け出させることと是正させることは別だ、という条文の作りになっています。勧告に従わないときの措置は26条の公表であり、契約が無効になるわけでもありません。届出をしなかった場合は47条1号により6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象となりますが、これも契約の効力とは切り離されています。
盛土規制法の届出期間と、区域による違い
盛土規制法21条は、宅地造成等工事規制区域について三つの届出を定めています。区域の指定があった際、すでにその区域内で宅地造成等に関する工事を行っている工事主は、指定があった日から21日以内に届け出ます(1項)。擁壁等に関する工事その他政令で定める工事をしようとする者は、工事に着手する日の14日前までに届け出ます(3項)。公共施設用地を宅地または農地等に転用した者は、転用した日から14日以内に届け出ます(4項)。
「21・14・14」と並べたうえで、真ん中だけが事前の届出であることを意識してください。工事は行われてしまうと元に戻せないので事前、それ以外は状態の報告なので事後、という整理です。
もうひとつ、特定盛土等規制区域では届出の期間が変わります。27条1項の届出は、工事に着手する日の30日前までです。知事は届出を受理した日から30日以内に限り、計画の変更その他必要な措置を勧告できます(同条3項)。「規制区域は14日前、特定盛土等規制区域は30日前」という対比で覚えると、二つの区域の性格の違い(前者は市街地に近く許可でコントロールし、後者は広い範囲を届出で網にかける)まで一緒に入ります。
建築基準法は日数で縛る法律
建築基準法は、法令上の制限の6法のなかで最も日数が細かく決まっています。建築主事等は、6条1項1号または2号に係る確認申請なら受理した日から35日以内、3号に係るものなら7日以内に審査し、適合を確認したときは確認済証を交付しなければなりません(6条4項)。合理的な理由があるときは35日の範囲内で延長できます(同条6項)。工事が完了したときの完了検査の申請は、工事完了日から4日以内に建築主事等に到達するようにしなければならず(7条2項)、検査は申請を受理した日から7日以内に行われます(同条4項)。
「35と7、4と7」という並びは、一見すると覚えにくいのですが、意味を添えると落ちにくくなります。35日は本格的な審査、7日は簡易な審査。4日は申請を出す側の期限で、到達主義であること(発信ではなく到達で数える)まで含めて条文に書いてあります。手続の流れそのものは建築確認|対象となる規模と検査の流れにまとめています。
期間を取り違えるとどう間違うか
期間の出題は、たいてい数字そのものではなく、起算点か主語をずらしてきます。「契約を締結した日の翌日から2週間」「引渡しを受けた日から2週間」「売主が2週間以内に届け出る」といった具合です。数字だけを暗記していると、2週間という語が目に入った時点で正しいと判断してしまいます。
したがって期間は、数字と一緒に「誰が」「何の日から」を三点セットで覚えます。国土法なら「権利取得者が、契約締結の日から起算して、2週間以内に」。この形で唱えておけば、主語や起算点をずらされた選択肢に違和感が生じます。
数字が決まっていない場所も覚える
期間の暗記で見落とされがちなのが、「日数が定められていない手続」の存在です。ここを空白のままにしておくと、もっともらしい日数を書かれたときに判断できません。
開発許可には処分の期限がない
都市計画法35条1項は、開発許可の申請があったときは「遅滞なく、許可又は不許可の処分をしなければならない」と定めているだけで、日数を切っていません。2項は、処分をするには文書で申請者に通知しなければならないと定めます。工事が完了したときの検査も、36条2項が「遅滞なく」検査すると書き、3項が「遅滞なく」工事完了の公告をすると書くのみです。
つまり「開発許可の申請があった場合、都道府県知事は30日以内に処分しなければならない」という選択肢は、数字が何であっても誤りになります。同じ理屈で、「工事完了の届出があった日から14日以内に検査済証を交付しなければならない」といった作りも誤りです。
なぜ建築確認には日数があり、開発許可にはないのか
理由は審査の性格にあります。建築確認は、提出された計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを技術的に判定する手続で、判断の材料が申請書の中で完結します。だから35日という標準的な期間を法律で切ることができ、切っても実務が回ります。
これに対して開発許可は、33条・34条の基準に照らして、道路や排水施設の設計、周辺の土地利用との関係、市街化調整区域なら立地の適否まで見ます。関係機関との協議も入ります。案件によって必要な時間が大きく違うので、一律の日数になじまない。だから「遅滞なく」という一般的な義務にとどめている、という説明が成り立ちます。二つの制度の独立性は開発許可と建築確認|二つの制度は独立しているで詳しく比較されています。
「あらかじめ」「速やかに」も期間の一種として扱う
農地法4条1項7号の市街化区域内の特例は「あらかじめ農業委員会に届け出て」と書いており、何日前という指定がありません。盛土規制法21条2項・12条4項の公表と通知は「速やかに」です。これらは日数の定めがない代わりに、順序だけが決まっている規定です。
期間の復元シートを作るときは、「日数あり」の欄と「日数なし(遅滞なく・速やかに・あらかじめ)」の欄を分けて書いてください。後者の欄が空欄のままだと、そこを狙った選択肢に対して手が出ません。空欄そのものを覚えておくのが、この分野の期間対策の仕上げになります。
数字の少ない法律は「時点」で覚える
法令上の制限の6法のうち、土地区画整理法だけは覚えるべき数字がほとんどありません。そのぶん、何がいつ切り替わるかという時点の管理が問われます。数字がないからといって手薄にすると、8問のうち1問をそのまま落とすことになります。
仮換地の指定で切り替わるもの
仮換地が指定されると、従前の宅地について権原に基づき使用・収益できる者は、仮換地の指定の効力発生の日から換地処分の公告がある日まで、仮換地について従前の宅地と同じ内容の使用・収益をすることができます。反対に、従前の宅地については使用も収益もできなくなります(土地区画整理法99条1項)。仮換地に使用収益の障害となる物件があるときなど特別の事情があるときは、使用収益を開始できる日を別に定めることができ(同条2項)、その場合は指定の効力発生日と使用収益開始日がずれます。
ここで切り替わるのは使用収益権だけで、処分権は動きません。売買や抵当権の設定は、あくまで従前の宅地について行います。登記されているのは従前の宅地だからです。「使えるのは仮換地、売れるのは従前地」という一組で覚えると、「仮換地の指定を受けた者は仮換地を売却できる」という誤りの選択肢に反応できます。
換地処分の公告で切り替わるもの
換地処分の公告があると、換地計画で定められた換地は、公告があった日の翌日から従前の宅地とみなされます(104条1項)。清算金は公告があった日の翌日に確定し(同条8項)、保留地は同じく翌日に施行者が取得します(同条11項)。事業により設置された公共施設は、原則として公告があった日の翌日に、その所在する市町村の管理に属します(106条1項)。
いずれも「翌日」です。他方、換地を定めなかった従前の宅地について存する権利は「その公告があつた日が終了した時」に消滅します(104条1項後段)。消えるものはその日の終わりに消え、生まれるものは翌日に生まれる。同じ時点を、消滅側と発生側から二通りに書き分けているだけなので、矛盾ではありません。ここは日数を伴わないため語呂が作りにくく、そのまま言葉として口に出して覚えるほうが早い箇所です。
施行地区内の建築制限
施行地区内では、事業の施行の障害となるおそれのある土地の形質の変更、建築物その他の工作物の新築・改築・増築、政令で定める移動の容易でない物件の設置や堆積について、許可が必要です(76条1項)。許可権者は、国土交通大臣が施行する事業では国土交通大臣、その他の事業では都道府県知事です。ただし市の区域内で個人施行者・組合・区画整理会社が施行する事業、および市が施行する事業では、当該市の長が許可権者になります。
ここでも許可権者は施行者ではありません。施行者は許可の申請があったときに意見を聴かれる立場です(同条2項)。「許可するのは知事等、意見を言うのが施行者」という役割分担を、前節の「誰が判断するか」の軸にそのまま並べて覚えられます。仕組みの詳細は土地区画整理法|仮換地と換地処分の仕組み、施行者の種類ごとの手続の差は土地区画整理法の施行者|7類型と手続の差で確認できます。
許可権者と届出先を「人」で覚える
数字と並んで狙われるのが、手続の相手方です。ここは登場人物が限られているので、人物ごとに担当を割り振って覚えると安定します。
農地法の3条・4条・5条
農地法は、この分野で最も出題が安定している論点です。3条は農地または採草放牧地を農地等のまま権利移動する場合で、許可権者は農業委員会です(3条1項)。4条は自分の農地を農地以外に転用する場合、5条は転用目的で権利移動する場合で、どちらも都道府県知事等、すなわち都道府県知事または農林水産大臣が指定する指定市町村の長が許可権者です(4条1項)。
そして市街化区域内には特例があります。4条1項7号と5条1項6号により、市街化区域内にある農地について、あらかじめ農業委員会に届け出れば許可が不要になります。3条にはこの特例がありません。
なぜ3条だけ特例がないのか。市街化区域は市街化を促進すべき区域なので、農地を転用して宅地にすることは政策と矛盾せず、手続を軽くしてよい。しかし3条は転用を伴わず、農地が農地のまま誰かの手に渡るだけの話です。市街化区域だからといって、誰に耕作させてもよいことにはなりません。特例の理由が転用の促進にある以上、転用しない3条には及ばないわけです。この理由まで押さえておくと、「市街化区域内であれば3条の許可も届出で足りる」という誤りの選択肢に即座に反応できます。詳細は農地法|3条・4条・5条の切り分けと許可権者を、取引実務の側から見た転用の流れは農地転用の手続き|農地を宅地にする前に読むを参照してください。
語呂を趣旨につなぐ
「3条は農委、4条5条は知事等、市街化は4・5だけ届出」という語呂は使えます。ただし唱えるときに、必ず「3条は転用しないから特例がない」と一言添えてください。語呂だけを唱えると、なぜそうなのかが失われ、少しひねられた出題で崩れます。逆に理由がついていれば、語呂を忘れても導けます。
なお、農地かどうかは登記簿上の地目ではなく現況で判断されます。農地法2条1項が「農地」を「耕作の目的に供される土地」と定義しており、登記の記載を基準にしていないからです。登記地目が原野でも、現に耕作されていれば農地です。許可権者の暗記と併せて、この現況主義も一組にしておくと得点が安定します。
開発許可と盛土規制法は知事、建築確認は別系統
開発許可は都道府県知事、盛土規制法の許可も都道府県知事です。どちらも土地の造成や区画形質の変更という、まちのかたちに関わる判断なので、広域の行政庁が担います。
これに対して建築確認は、建築主事等または指定確認検査機関が行います。個別の建築物が技術基準に適合しているかを審査する手続であり、政策判断ではないため、民間機関にも開放されています。単体規定と集団規定という建築基準法の全体の作りは建築基準法の全体像|単体規定と集団規定で確認できます。
国土法だけが「経由」
国土利用計画法の事後届出は、届出先が都道府県知事でありながら、当該土地が所在する市町村の長を経由して提出します(23条1項)。この二段構えは他の法律にない特徴なので、それだけで記憶のフックになります。「国土法だけ市町村長を通す」と覚えておけば、「都道府県知事に直接届け出る」という選択肢の誤りに気づけます。
同じ「経由」でも、農地法4条2項の申請は農業委員会を経由して都道府県知事等に提出します。経由するのが市町村長なのか農業委員会なのかで法律が特定できる、という覚え方もできます。主要6法以外の法令については、許可権者を「誰がその区域を管理しているか」から復元する手順がその他の法令上の制限|許可権者を復元する手順とその他の法令上の制限|許可権者と景観法・品確法に整理されています。
手続を欠いたときの効果を一本の軸で覚える
許可や届出を怠ったときに何が起きるかは、法律ごとにばらばらに見えます。しかし「私法上の効力が消えるのはどこか」という一点で切ると、覚えるべきことは一つに減ります。
農地法3条6項は「第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない」と定めています。許可のない権利移動は、当事者間でも所有権が移りません。これが法令上の制限の6法のなかで唯一、契約の効力そのものを断つ規定です。4条・5条の違反は、転用という事実行為に対する規制なので、効力ではなく51条の原状回復命令等や64条の罰則(3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金。4条・5条違反の法人には67条1号により1億円以下の罰金刑)で対応します。
国土利用計画法の事後届出を怠っても、契約は有効です。届出は取引の後に行うもので、契約の成立要件ではないからです。制裁は47条1号の罰則にとどまります。開発許可を受けずに工事をした場合も、契約が無効になるのではなく、監督処分と罰則の問題です。
したがって「無効になるのは農地法3条だけ」と覚えておけば足ります。例外が一つしかないパターンは、例外の側を覚えるのが最も安上がりです。違反したときの効果を法律ごとに並べて確認したい場合は法令上の制限の横断整理|許可と届出の分かれ目にまとまっています。
用途地域と高さ制限は「理由」を持って渡す
この二つは個別記事のほうが詳しいので、ここでは暗記の観点から要点だけ置きます。
13種類の並び順に意味を持たせる
用途地域は都市計画法9条が定める13種類です。第一種低層住居専用地域から順に、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域という住居系8種類、近隣商業地域と商業地域の商業系2種類、準工業地域、工業地域、工業専用地域の工業系3種類です。
この並びは恣意的なものではありません。9条は各地域の目的を順に定義しており、住居の環境を保護する度合いが強い順に並んで、そこから商業、工業へと移っていきます。第一種低層住居専用地域が最も規制が厳しく、工業専用地域では住宅そのものが建てられません。この「静かな住宅地から順に緩んでいき、最後は住めなくなる」という流れを掴んでおくと、個別の建築制限を一つずつ暗記しなくても、多くは推論で埋められます。
田園住居地域が住居系の最後に置かれているのは、2018年に追加された比較的新しい地域だからです。ただし9条8項の定義は「農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護する」であり、実質は低層住居専用地域の仲間です。だから55条1項の絶対高さ制限がかかり、56条1項3号の北側斜線制限で低層系と同じ5メートルの立ち上がりになります。「田園住居は低層の仲間」という一言を持っていれば、田園住居地域を絡めた選択肢の多くはその場で処理できます。並び順を定着させる方法は用途地域13種の覚え方|境界線で押さえる暗記法、建築制限の中身は用途地域13種類と建築制限で扱っています。
高さ制限は「なぜそこには要らないか」で覚える
高さの制限は複数あり、それぞれ適用される地域が違います。絶対高さ制限(建築基準法55条1項)は第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域で、10メートルまたは12メートルのうち都市計画で定めた値です。道路斜線制限(56条1項1号)はすべての用途地域と用途地域の指定のない区域に適用されます。隣地斜線制限(56条1項2号)は、条文のイからニまでが適用対象を列挙する形になっており、その中身は中高層住居専用地域から先の用途地域、高層住居誘導地区内の一定の建築物、用途地域の指定のない区域です。第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域は、どこにも入っていません。北側斜線制限(56条1項3号)は低層住居専用地域、田園住居地域、中高層住居専用地域に適用されます。
隣地斜線が低層系に適用されない理由は、すでに絶対高さ制限で10メートルまたは12メートルに抑えられているからです。上限が決まっている場所に、さらに斜線で高さを削る意味がありません。この理由を知っていれば、「第一種低層住居専用地域では隣地斜線制限が適用される」という誤りの選択肢を、暗記に頼らず判断できます。
北側斜線が住居専用系に限られるのは、北側の隣地の日照を守るという目的が、住宅地でこそ意味を持つからです。「道路は全部、隣地は低層以外、北側は住専プラス田園」という語呂は使えますが、この三つの理由を添えて唱えてください。制限ごとの数値と緩和は高さ制限と斜線制限|どの地域に何がかかるかにあります。
建ぺい率の緩和は「加算」と「不適用」を区別する
建ぺい率の緩和は建築基準法53条3項が定めています。防火地域内(1項2号から4号までの規定により限度が10分の8とされている地域を除く)にある耐火建築物等は10分の1を加算、準防火地域内にある耐火建築物等または準耐火建築物等も10分の1を加算。特定行政庁が指定する角地等にある敷地内の建築物も10分の1を加算。両方に該当すれば合計10分の2の加算です。
さらに53条6項1号により、建ぺい率の限度が10分の8とされている地域内で、かつ防火地域内にある耐火建築物等については、1項から5項までの規定が適用されません。加算ではなく適用除外である、という点が重要です。「80パーセントに20パーセントを足して100パーセント」ではなく、「そもそも建ぺい率の制限がかからない」という構造です。結論としての数値は近くなりますが、条文の作りが違うので、選択肢の言い回しで問われます。防火地域・準防火地域そのものの規制は防火地域と準防火地域|構造規制と建蔽率の緩和、計算の手順は建ぺい率と容積率の計算問題攻略|角地緩和・前面道路制限で確認できます。
改正で使えなくなる語呂と、基準日という考え方
暗記法の記事で最後に扱うべきなのは、覚えた内容が古びる仕組みです。ここを持っていないと、正しく覚えるほど誤答が増えるという逆転が起きます。
判定は施行日ひとつで足りる
宅建試験は、当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されます。令和8年度(2026年10月18日実施)なら、基準日は2026年4月1日です。したがって改正の情報に触れたときにまずすべきことは、内容を読むことではなく、施行日を確認することです。基準日以前に施行されていれば覚える、後なら今年は覚えない。この一段の足切りで、改正情報の大半は処理できます。
覚えなくてよい例を挙げます。都市計画法・建築基準法・土地区画整理法には2026年5月27日施行の改正があり、不動産登記法と民法には2026年6月24日施行の改正があります。いずれも基準日より後なので、令和8年度の出題範囲には入りません。加えて、これらは条単位で比較しても本則がほとんど動いておらず、面積要件や期間の数字は従前どおりです。「改正があったらしい」という情報だけで手持ちの数字を書き換えると、かえって崩れます。
覚え直しが要る例
一方、基準日までに施行され、しかも数字が動いたものは覚え直しが必要です。令和8年度で言えば次のようなものがあります。
区分所有法は令和7年法律第47号により2026年4月1日から改正法が施行され、決議要件の分母が区分所有者および議決権の総数から出席者へ変わり、定足数が新設されました。段も三段から四段になり、過半数、3分の2、4分の3、5分の4という構えになっています。17条1項ただし書にあった「区分所有者の定数を規約で過半数まで減ずることができる」という規定は削除されました。旧法の定番だった「区分所有者と議決権で扱いが違う」という語呂は、条文上の根拠を失っています。改正後の決議要件は区分所有法の特別決議|改正後の決議要件を整理で整理しています。
宅地建物取引業法施行規則16条の2には第9号が新設され、区分所有建物の重要事項説明事項が9項目から10項目になりました。旧9号(維持修繕の実施状況の記録)は10号に繰り下がっています。号数で覚えていた語呂は、ここから先すべて一つずつずれます。項目の中身と番号の対応は区分所有建物の重要事項説明|35条の追加事項で確認してください。
税では、新築住宅に係る固定資産税の減額措置の床面積要件が、50平方メートル以上280平方メートル以下から40平方メートル以上240平方メートル以下に変わりました(地方税法施行令附則12条。2026年4月1日施行)。減額の対象となる床面積が120平方メートル以下という部分は変わっていません。市販の教材でも旧要件のまま書かれているものが残っているので、数字の出所を確かめる価値がある箇所です。詳しくは固定資産税|賦課期日・住宅用地の特例・新築減額にあります。
建築確認の区分再編は、冒頭で触れたとおりです。木造と非木造で階数・面積の基準を分けていた旧6条1項の構造は再編され、現在の2号は「二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超える建築物」です。令和8年度に関係する改正をまとめて確認したい場合は令和8年度試験に影響する法改正まとめを見てください。
語呂を作り直す工程
ここから引き出せる教訓は二つあります。ひとつは、語呂合わせは覚えた時点の法令を凍結して運ぶので、改正のあった論点では必ず現行の条文で作り直す必要があるということ。もうひとつは、市販の教材やインターネット上の語呂を無批判に取り込まないことです。
作り直しの工程は決まっています。条文を引く、施行日が基準日以前かを確認する、数字と境界語(未満・以上・超・以下)を書き写す、主語と起算点を書き写す、そのうえで語呂を当てる。この五段のうち、語呂を当てるのは最後の一段だけです。語呂は自分で作るほうが記憶に残りやすいと言われますが、それ以上に、自分で作れば元にした条文を確認する工程が必ず入る、という点に価値があります。民法側で同じ問題がどう起きるかは民法の語呂合わせ|壊れる語呂と使える語呂で扱っています。
試験での出題ポイント
法令上の制限の選択肢は、正しい知識のどこか一箇所だけを差し替えて作られます。差し替えられる箇所は六つに類型化できます。
数字の置き換え
最も素直な作り方です。1,000を3,000に、2週間を1か月に、200平方メートルを100平方メートルに置き換えます。数字を正確に覚えていれば対応できますが、前述のとおり境界の値での挙動まで含めて覚えていないと、「1,000平方メートルの開発行為は許可不要」のような、数字は合っていて境界だけが誤っている選択肢を取り逃がします。
主体の置き換え
農業委員会を都道府県知事に、都道府県知事を市町村長に、建築主事等を特定行政庁に置き換えます。数字より見落としやすいのは、主体が文の途中に埋もれるからです。問題文を読むときは、主体に印をつけながら読む習慣をつけてください。とくに土地区画整理法76条のように、施行者の種類によって許可権者が分岐する規定は、「知事」と書いてあるだけでは正誤が決まりません。
原則と例外の反転
「原則として許可が必要」を「原則として許可は不要」に、「適用される」を「適用されない」に反転させます。開発許可における市街化調整区域の扱い、農地法3条における市街化区域特例の不存在、隣地斜線制限の適用除外などが好まれます。いずれも「なぜそうなっているか」を押さえていれば見抜ける箇所です。逆に理由を持たずに暗記していると、反転されたほうが自然に見えてしまいます。
区域の置き換え
市街化区域を市街化調整区域に、都市計画区域外を準都市計画区域に置き換えます。区域ごとに数字が違う論点では、数字を正解に保ったまま区域だけをずらすという作り方ができるので、非常に狙われます。とくに準都市計画区域は、開発許可では非線引き区域と同じ3,000平方メートル、国土法では区域外と同じ10,000平方メートルという二重人格なので、ここを突く選択肢は繰り返し出ます。二つの例外的な区域の性格は非線引き区域と準都市計画区域|例外側の二区域で整理されています。
「以上・超・未満・以下」の入れ替え
同じ数字でも、条文が「未満」で除外している型(開発許可、国土法の事後届出)と、「超」で取り込む型(建築確認の面積、盛土規制法の高さと面積)では、境界の値の扱いが逆になります。この境界語だけを差し替えた選択肢は、ぱっと見でほぼ判別できません。数字を口に出すときに必ず「ちょうどのときどうなるか」まで言う、という訓練だけが対策になります。
存在しない数字の挿入
最後に、条文にそもそも期限がない場所へ日数を書き込む型があります。開発許可の処分は「遅滞なく」であって日数の定めがなく、工事完了の検査と公告も同様です。「知事は申請を受けた日から30日以内に処分しなければならない」という選択肢は、日数が何であっても誤りになります。数字がない場所を覚えておくのは、数字を覚えるのと同じくらい配点に直結します。
出題のされ方をまとめて確認したい場合は法令上の制限の頻出論点|3層に分けて攻めるが使えます。
覚え方・整理の仕方
語呂は「引き金」、答えは「文」
繰り返しになりますが、語呂合わせの役割は答えそのものではなく、記憶を引き出す引き金です。「に・ご・いち」と唱えて2,000・5,000・10,000を引き出したら、そこで止めずに「国土利用計画法の事後届出は、市街化区域では2,000平方メートル以上、市街化区域以外の都市計画区域では5,000平方メートル以上、それ以外の区域では10,000平方メートル以上のときに必要で、権利取得者が契約締結の日から起算して2週間以内に、市町村長を経由して都道府県知事に届け出る」という文まで復元する。この復元まで含めて一回の練習と数えてください。
語呂から文へ、という一方向の練習を繰り返していると、試験中も同じ経路が働きます。語呂だけを高速で唱える練習は、唱える速度が上がるだけで得点には結びつきません。
白紙に書き出して穴を見つける
理解しているつもりと、思い出せることは別です。週に一度、何も見ずに白紙へ書き出す時間をとってください。書き出す単位は、本記事の軸に沿って四枚にします。
一枚目は許可権者の一覧です。開発許可、盛土規制法の許可、農地法3条・4条・5条、国土法の事後届出、建築確認、区画整理法76条の許可について、相手方を書きます。二枚目は面積の一覧です。開発許可の四区分と調整区域、国土法の三区分、建築確認の200平方メートル、盛土規制法の高さと面積を並べます。三枚目は期間の一覧で、日数のあるものと「遅滞なく・速やかに・あらかじめ」で済むものを二列に分けます。四枚目は境界の値での挙動で、1,000・2,000・200・500のちょうどの場合に手続が要るかどうかを書きます。
書けなかった箇所が、そのまま次の一週間で潰すべき対象になります。テキストを読み返すより、この白紙復元のほうが弱点の検出精度が高いのは、思い出せないことが目に見える形で残るからです。
崩れやすい順に戻る
復習の間隔をどう広げるかという一般論は宅建の暗記術|忘却と復習の設計に譲り、ここでは「四枚のうちどれから崩れるか」だけを書きます。実際に崩れる順序は、覚えている情報の支えの少なさで決まります。
いちばん先に崩れるのは四枚目の境界の値です。1,000・2,000・200・500という数字そのものは残っていても、そのちょうどのときに手続が要るかどうかは、条文の型(未満で除外するのか、超で取り込むのか)を経由しないと出てきません。次に崩れるのが三枚目の期間のうち「日数のない側」で、都市計画法35条1項と36条2項・3項の「遅滞なく」、農地法4条1項7号の「あらかじめ」、盛土規制法12条4項・21条2項の「速やかに」は、思い出そうとしても何も引っかからないため、空欄のまま放置されやすい欄です。
逆に最も残るのは一枚目の許可権者です。農業委員会・都道府県知事等・市町村長経由・指定確認検査機関という登場人物は数が少なく、制度の趣旨と結びついているからです。したがって戻るときは、四枚目、三枚目の日数なし欄、二枚目の面積、一枚目の許可権者、という逆順で見るのが効率的です。
法令上の制限は暗記の比重が大きい分、直前期の詰め込みが効きやすい科目でもあります。ただし土台がない状態での直前の詰め込みは、混同を大量に生むだけです。三軸の言葉の部分を早い時期に固め、数字を直前に上塗りする、という順序が現実的です。直前期の配分は宅建の直前期の過ごし方|残り1ヶ月でやることで扱っています。
横断ノートは「法律ごと」ではなく「軸ごと」に作る
自分でまとめを作るとき、法律ごとにページを分ける人が多いのですが、混同を防ぐ目的からは逆効果です。混同は法律をまたいで起きるので、まとめも法律をまたいで作らなければ検出できません。
「面積」というページに、開発許可も国土法も盛土規制法も並べて書く。「許可権者」というページに、六法すべての相手方を並べて書く。並べた瞬間に、自分がどこで混ざっていたかが目に見えます。他の科目でも同様の数字の集約が有効で、宅建業法の数字まとめ|混同しない覚え方で整理のような科目単位の一覧と組み合わせると、試験全体の数字が一望できます。
覚えたかどうかの判定基準を決めておく
最後に、到達判定を自分で持ってください。この分野で「覚えた」と言える状態は、次の三つが同時に満たされたときです。第一に、区域名を言われたら数字と境界語がセットで出る。第二に、境界の値ちょうどのときにどうなるかを即答できる。第三に、なぜその数字なのかを一文で説明できる。三つ目が言えないうちは、少しひねられた選択肢で崩れます。
逆に、この三つが言えるなら、多少の出題の変形には耐えます。判定基準を持たずに回数だけ増やすと、「見たことがある」という感覚だけが強化され、実際には思い出せない状態が続きます。
理解度チェッククイズ
Q1. 市街化区域内において1,000平方メートルの開発行為を行う場合、開発許可は不要である。○か×か。
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×。都市計画法29条1項1号および施行令19条1項により、市街化区域内で開発許可が不要となるのは1,000平方メートル「未満」の場合です。1,000平方メートルちょうどは未満に当たらないため、許可が必要になります。数字は合っていても境界の値の扱いで誤りになる、という典型的な出題です。なお三大都市圏の一定の区域では500平方メートル未満、条例による引下げがある地域では300平方メートル以上1,000平方メートル未満の範囲で別に定められた規模が基準になります。Q2. 市街化調整区域内で行う開発行為であっても、その規模が1,000平方メートル未満であれば開発許可は不要である。○か×か。
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×。都市計画法29条1項1号が規模による除外の対象としているのは、市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域、準都市計画区域の三つで、市街化調整区域は入っていません。市街化を抑制すべき区域であり、小規模であることを理由に開発を自由にする理由がないためです。ただし農林漁業用の一定の建築物のための開発行為(同項2号)など、面積とは別の観点による除外は存在します。Q3. 準都市計画区域内において5,000平方メートルの土地について売買契約を締結した場合、権利取得者は国土利用計画法の事後届出をしなければならない。○か×か。
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×。国土利用計画法23条2項1号ロが5,000平方メートルとしているのは「都市計画法第四条第二項に規定する都市計画区域(市街化区域を除く)」であり、準都市計画区域は同法5条の2に基づく別の区域なので、ここには含まれません。準都市計画区域は同号ハの「それ以外の区域」に落ちるため、10,000平方メートル未満であれば届出は不要です。開発許可では準都市計画区域が3,000平方メートルで非線引き区域と同じ扱いなので、この非対称がそのまま出題箇所になります。Q4. 市街化区域内の農地について、農地のまま所有権を移転する場合、あらかじめ農業委員会に届け出れば農地法3条の許可は不要である。○か×か。
答えを見る
×。市街化区域内の届出による特例は、農地法4条1項7号(転用)と5条1項6号(転用目的の権利移動)にのみ認められており、3条にはありません。特例の趣旨が市街化区域における転用の促進にある以上、転用を伴わない3条には及ばないからです。3条の許可権者は農業委員会で、同条6項により、許可を受けないでした行為は効力を生じません。私法上の効力が否定されるのは、法令上の制限の6法のなかでこの規定だけです。Q5. 都道府県知事は、開発許可の申請があった場合、その申請を受理した日から30日以内に許可または不許可の処分をしなければならない。○か×か。
答えを見る
×。都市計画法35条1項は「遅滞なく、許可又は不許可の処分をしなければならない」と定めるだけで、日数を切っていません。同条2項により、処分は文書で申請者に通知します。これに対し建築確認は、建築基準法6条4項が6条1項1号・2号に係るものは受理した日から35日以内、3号に係るものは7日以内と定めています。日数が定められている手続と定められていない手続を区別しておかないと、もっともらしい数字を書かれたときに判断できません。Q6. 第一種低層住居専用地域内の建築物には、絶対高さ制限に加えて隣地斜線制限も適用される。○か×か。
答えを見る
×。隣地斜線制限(建築基準法56条1項2号)の条文は、適用対象をイからニまでで列挙しており、その内容は中高層住居専用地域から先の用途地域、高層住居誘導地区内の一定の建築物、用途地域の指定のない区域です。第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域は含まれていません。これらの地域では55条1項の絶対高さ制限により10メートルまたは12メートルという上限がすでにかかっており、さらに斜線で削る必要がないためです。適用地域を暗記していなくても、この理由から導けます。まとめ
法令上の制限で崩れるのは、覚えていないからではなく、覚え方の単位が細かすぎるからです。数字は「どの法律の、何を判断する場面の、どの区域の、境界の値がどちらに転ぶか」まで含めて一組で覚える。語呂合わせはその一組を呼び出す引き金として使い、呼び出したあとは必ず文の形まで復元する。この二点が本記事の核心です。
境界語は四つの単語を丸暗記するのではなく、条文が「未満」で除外する型か「超」で取り込む型かで復元します。1,000ちょうどは許可が要る、2,000ちょうどは届出が要る、200ちょうどは確認が要らない、500ちょうどは許可が要らない。この四つを言えるようにしておけば、境界を狙った選択肢はほぼ処理できます。
横断整理は、法律ごとではなく軸ごとに作ります。許可権者、面積、期間、境界の値の四枚を白紙に書き出す訓練を週に一度入れると、混同している箇所が自分で見えるようになります。そして改正のあった論点では、流通している古い語呂をそのまま使わず、施行日が基準日以前かを確かめたうえで、現行条文から作り直してください。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、法令上の制限の肢別トレーニングと年度別過去問演習に取り組めます。
肢別演習と年度別演習で、立てた学習計画をそのまま実行に移せます。間違えた肢だけを繰り返す復習にも対応しています。