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土地の価格はどう決まる?4つの公的価格を比較

不動産の基礎知識 読了 約23分

土地の4つの公的価格を目的・実施主体・基準日で整理。地価公示、都道府県地価調査、相続税路線価、固定資産税評価額の根拠条文と、水準に差が出る理由を解説します。

目次

    本記事の役割 — この記事は四つの公的価格を並べて比べることに徹します。地価公示法の中身は地価公示法、鑑定評価の用語は不動産の鑑定評価、三手法の計算構造は鑑定評価3手法の計算構造と使い分けにそれぞれまとめてあります。その年の変動率などの数値は宅建試験の統計数値まとめへ送ります。

    同じ一筆の土地に、公的な価格が四つ付いています。地価公示による公示価格、都道府県地価調査による基準地の標準価格、相続税路線価、固定資産税評価額。この状態を「一物四価」と呼ぶことがあります。

    なぜ四つもあるのか。答えは単純で、それぞれ違う目的のために作られているからです。取引の目安を示すための価格と、税を課すための価格では、求められる性質が違います。目的が違えば主体も基準日も水準も違ってくる。この対応関係を目的から辿れるようにするのが、この記事の狙いです。

    試験でこの分野が落とされるのは、四つの属性を丸暗記して混線するからです。実施主体を入れ替える、基準日を入れ替える、根拠法を入れ替える。目的を先に押さえれば、属性は目的から導けます。

    なぜ一つの土地に四つの価格があるのか

    二つの群に分かれる

    四つを並べる前に、大きく二群に分かれることを押さえてください。

    第一群が取引の目安を示すための価格です。地価公示による公示価格と、都道府県地価調査による基準地の標準価格がここに入ります。目的は適正な地価の形成であり、実際に自由な取引が行われたらいくらで成立するかを示すことを目指します。

    第二群が課税のための価格です。相続税路線価と固定資産税評価額がここに入ります。目的は課税の公平であり、多数の土地を毎年あるいは定期的に、統一された基準で評価しなければなりません。

    この違いが、性質の違いをほぼすべて説明します。取引の目安なら実際の市場に近い水準を狙い、課税のためなら安定性と安全性が要る。課税のための二つが公示価格より低い水準に置かれているのは、この要請から出てきます。

    「一物四価」という言い方

    この状態を指して「一物四価」という言い方がされます。一つの物に四つの価格がある、という意味です。実際の取引価格である実勢価格を数に入れて「一物五価」と呼ぶこともあります。

    言葉としては便利ですが、四つが横並びに競合しているかのような印象を与える点には注意が要ります。実際には後で見るとおり、四つは互いに参照し合っており、公示価格を軸にした構造を持っています。基準地の標準価格は公示区域内では公示価格を規準としますし、相続税の倍率方式は固定資産税評価額を入力に使います。

    「四つ並んでいる」ではなく「一つを軸に三つがぶら下がっている」と捉えるほうが、制度の実態に近い理解になります。

    目的から属性が導ける

    二群に分けたうえで、目的から属性を導いてみます。

    取引の目安なら、評価の専門家が丁寧に見る必要があります。だから不動産鑑定士の鑑定評価を経ます。他方、課税のための価格は膨大な筆数を対象にするので、一筆ごとに鑑定士を入れることはできません。だから路線価という、道路に価格を付けて面する土地に割り振る方式が採られます。固定資産税評価額が三年ごとの評価替えになっているのも、毎年全筆を見直す負担を避けるためです。

    「なぜその仕組みなのか」を目的から説明できれば、属性の暗記はほとんど要りません。

    地価公示による公示価格

    制度の骨格

    公示価格は、地価公示法にもとづき土地鑑定委員会が公示する、標準地の正常な価格です。

    土地鑑定委員会は国土交通省に置かれる合議制の機関で(地価公示法12条1項)、委員七人をもって組織されます(14条1項)。委員会は公示区域内の標準地について、毎年一回、二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って、一定の基準日における標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、これを官報で公示します(2条1項、6条)。

    「正常な価格」とは、自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価格をいい、建物その他の定着物や地上権等の権利が存する場合にはこれらが存しないものとして通常成立すると認められる価格です(2条2項)。

    基準日は法律が「一定の基準日」と定めて省令に委ねていますが、国土交通省は「毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示」と案内しています。基準日は1月1日、公表は3月です。

    効力の三段階

    公示価格には場面ごとに違う効力があります。一般の土地取引を行う者は、公示価格を指標として取引を行うよう努めなければならない(1条の2)。これは努力義務です。他方、不動産鑑定士が公示区域内の土地の正常な価格を求めるとき(8条)と、公共事業を行う者が公示区域内の土地の取得価格を定めるとき(9条)は、公示価格を規準としなければならないという義務が課されます。

    一般人には努力義務、専門家と公権力には義務。この非対称が試験でよく問われます。標準地の選定、公示事項、規準とすることの意義といった詳細は地価公示法にまとめています。

    都道府県地価調査による基準地の標準価格

    根拠は法律ではなく政令

    基準地価格と呼ばれるものは、正式には基準地の標準価格です。根拠は地価公示法ではなく、国土利用計画法施行令9条にあります。法律ではなく政令が根拠である点が、地価公示との構造的な違いの一つです。

    同条1項は、都道府県知事は、自然的および社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域(規制区域を除く)において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる画地を選定し、その画地について、毎年一回、一人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って、国土交通省令で定める一定の基準日における当該画地の単位面積当たりの標準価格を判定する、と定めます。

    国土交通省は、この制度について「都道府県知事が、毎年7月1日時点における標準価格を判定するもの」と案内しています。公表は例年9月です。国土利用計画法という法律そのものの枠組みは国土利用計画法にあります。

    定義は同じ、接続もしている

    中身は地価公示とよく似ています。標準価格の定義(同条2項)も、自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価格であり、定着物や権利が存する場合にはこれらが存しないものとして通常成立すると認められる価格とされています。地価公示法2条2項と同じ構造です。

    さらに同条3項が両制度を接続しています。都道府県知事は標準価格を判定するにあたって、基準地が地価公示法にいう公示区域内に所在する土地であるときは、公示価格を規準とし、公示区域内の森林の土地であり、または公示区域外に所在するときは、近傍類地の取引価格から算定される推定の価格、近傍類地の地代等から算定される推定の価格および同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額を勘案して行うとしています。

    公示区域の中では地価公示に接続し、外では地価公示法4条と同じ三つを勘案する。二つの制度は独立ではなく、地価公示を軸に組み合わさっています。

    補完関係の意味

    なぜ似た制度が二つあるのか。実務的な意味は二つあります。

    第一に、時点をずらして年に二回、地価の動きを把握できること。1月1日と7月1日で半年ずつ、推移が見えます。第二に、対象範囲を補えること。地価公示の公示区域は都市計画区域その他土地取引が相当程度見込まれる区域に限られますが、都道府県地価調査の対象地域にはこうした限定が置かれていません。公示が届かない地域を地価調査が拾うという関係です。

    相続税路線価

    法律が求めているのは「時価」

    相続税路線価は、国税庁が相続税および贈与税の課税のために定める価格です。

    出発点となる条文は相続税法22条(評価の原則)で、この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈または贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による、と定めています。法律が要求しているのは「時価」であって、公示価格の何割という数字ではありません。

    では時価をどう求めるか。個々の相続ごとに鑑定評価を行うのは現実的でないため、国税庁が財産評価基本通達により統一的な評価方法を定めています。土地についてはその中心が路線価です。

    路線価方式と倍率方式

    国税庁は土地の評価方法を二つ示しています。

    路線価方式は、路線価が定められている地域の土地を評価する方法です。ここでいう路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額をいいます。道路に価格を付け、その道路に面する宅地に割り振っていく発想です。実際の評価では、これに間口や奥行、形状などに応じた補正を加えます。

    倍率方式は、路線価が定められていない地域の土地を評価する方法で、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します。市街地以外では路線価が整備されていないため、既にある固定資産税評価額を流用する仕組みです。

    ここに注目してください。倍率方式では、四つの公的価格のうち二つが直接つながっています。相続税評価が固定資産税評価額を入力として使う。四つが独立に並んでいるのではないという例です。

    基準日と公表

    評価の基準となる時点は1月1日で、公表は例年7月です。相続税は人が亡くなった時点で発生するため、年の途中で相続が起きても、その年の路線価で評価することになります。相続における土地の扱いは相続不動産の基礎知識、贈与税・相続税の枠組みは贈与税と相続税、相続そのものの法律関係は相続にまとめています。

    固定資産税評価額

    条文が定めているのも「適正な時価」

    固定資産税評価額は、市町村(東京23区は都)が固定資産税等の課税のために決定する価格です。

    地方税法341条5号は、固定資産税に関する用語として「価格 適正な時価をいう」と定義しています。相続税法22条と同じく、法律が要求しているのは時価です。

    評価の統一を担保するのが固定資産評価基準で、388条1項は、総務大臣は固定資産の評価の基準ならびに評価の実施の方法および手続を定め、これを告示しなければならないと定めます。そして403条1項が、市町村長は固定資産評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならない、としています。

    基準を定めるのは総務大臣、価格を決定するのは市町村長。この役割分担は入れ替えられやすい部分です。

    三年ごとの評価替え

    固定資産税評価額の最大の特徴が、毎年見直されないことです。

    地方税法341条6号は「基準年度」を、昭和31年度および昭和33年度ならびに昭和33年度から起算して三年度または三の倍数の年度を経過したごとの年度と定義します。7号が第二年度(基準年度の翌年度)、8号が第三年度(第二年度の翌年度)です。

    そして349条1項が、基準年度に係る賦課期日に所在する土地または家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、基準年度に係る賦課期日における価格で課税台帳に登録されたものとする、と定めます。2項と3項により、第二年度と第三年度は原則として基準年度の価格が据え置かれます。ただし地目の変換、家屋の改築または損壊その他これらに類する特別の事情や、市町村の廃置分合または境界変更があった場合には、類似する土地家屋の基準年度の価格に比準する価格によります。

    つまり三年に一度の評価替えで決めた価格を、三年間使うという仕組みです。毎年判定される公示価格や路線価との決定的な違いになります。

    賦課期日と手続

    賦課期日は359条が定めており、当該年度の初日の属する年の1月1日です。

    市町村長は評価調書に基づいて固定資産の価格等を毎年3月31日までに決定しなければなりません(410条1項)。決定したときは、遅滞なく、地域ごとの宅地の標準的な価格を記載した書面を一般の閲覧に供します(同条2項)。

    価格等の登録に誤りがあった場合の手当ても置かれています。417条1項は、市町村長は、価格等の全てを登録した旨の公示の日以後において登録がなされていないこと、または登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合には、直ちに、課税台帳に登録された類似の固定資産の価格と均衡を失しないように価格等を決定し、または修正して課税台帳に登録しなければならず、遅滞なくその旨を納税義務者に通知しなければならない、と定めています。

    さらに416条1項は縦覧の制度を置いています。市町村長は、納税者が自分の土地家屋の価格と市町村内の他の土地家屋の価格とを比較できるよう、毎年4月1日から、4月20日または当該年度の最初の納期限の日のいずれか遅い日以後の日までの間、土地価格等縦覧帳簿および家屋価格等縦覧帳簿を納税者の縦覧に供しなければなりません。自分の評価額が近隣と比べて妥当かを確認できる仕組みが法律に組み込まれているということです。

    使われる場面が広い

    固定資産税評価額は、固定資産税だけのものではありません。他の税の課税標準としても流用されます。

    条文で確認できる例が不動産取得税です。地方税法73条の21第1項は、道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする、と定めています。ただし増築、改築、損かい、地目の変換その他特別の事情がある場合において当該価格により難いときは別で、その場合は固定資産評価基準によって決定します(同条2項)。

    つまり、市町村が決めた価格を、都道府県が不動産取得税の課税標準としてそのまま使うわけです。相続税の倍率方式で使われることも先に見たとおりで、登録免許税の課税標準にもなります。一度決まると複数の税に波及するため、実務上の影響が大きい価格です。

    固定資産税の課税標準の特例は固定資産税固定資産税を安くする方法、不動産取得税の軽減は不動産取得税の非課税・軽減まとめ、登録免許税は登録免許税と印紙税、税全体の見取り図は不動産にかかる税金の全体像にまとめています。

    評価額に不服があるとき

    波及の範囲が広いということは、評価額が誤っていたときの影響も大きいということです。そのため、争う手続が用意されています。

    地方税法432条1項は、固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合においては、所定の期間内に、文書をもって固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができると定めています。期間は、価格等の登録を公示した日から納税通知書の交付を受けた日後三月を経過する日までなどとされています。

    注意したいのは、争える対象が「価格」に限られることです。税額の計算や特例の適用といった価格以外の事項に不服がある場合は、審査の申出ではなく別の不服申立ての枠組みによります。前述の縦覧の制度(416条)は、この審査の申出を検討するための材料を納税者に与える仕組みでもあります。縦覧で比較し、価格に納得できなければ審査の申出をするという流れが法律に組み込まれています。

    水準に差が出る理由

    法律はどちらも「時価」と書いている

    ここが最も誤解されやすい部分です。

    相続税法22条は「時価」と定め、地方税法341条5号は「適正な時価」と定めています。法律の文言としては、課税のための二つも時価を求めているのです。「公示価格の8割」「7割」という比率は、法律が定めたものではありません。

    では何なのか。多数の土地を統一的に評価するにあたって、時価を下回らないようにするための運用上の目途です。地価は変動しますし、評価と課税の間には時間差があります。評価時点で時価ぴったりに置くと、地価が下落した局面で評価額が時価を上回り、納税者に過大な負担が生じかねません。そこで安全側に幅を持たせている、という説明になります。

    一般に、相続税路線価は公示価格のおおむね8割、固定資産税評価額はおおむね7割の水準とされます。ただしこれは運用上の目途であり、法令が比率を定めているわけではないので、数字を断定的に扱わないでください。この記事でも「おおむね」以上には踏み込みません。

    評価の頻度が水準を左右する

    もう一つ、水準の差を説明する要素があります。どのくらいの頻度で見直すかです。

    公示価格と基準地価格は毎年判定されます。相続税路線価も毎年です。これに対して固定資産税評価額は三年ごとで、間の二年間は据え置かれます。

    据え置く期間が長いほど、その間に地価が動いたときのずれが大きくなります。地価が下落する局面では、据え置かれた評価額が現実の時価を上回ってしまう。これを避けるには、評価の時点でより大きな余裕を取っておくしかありません。固定資産税評価額が四つの中で最も低い水準に置かれているのは、この構造から説明できます。

    なお、据置きには例外も用意されています。地方税法349条2項ただし書は、地目の変換、家屋の改築または損壊その他これらに類する特別の事情や、市町村の廃置分合または境界変更があるため基準年度の価格によることが不適当である場合等には、類似する土地家屋の基準年度の価格に比準する価格によるとしています。据え置くのが原則だが、事情が変われば動かせるという設計です。

    覚えるべきは順序

    比率そのものより、順序を押さえるほうが実用的です。

    高いほうから、公示価格および基準地価格(取引の目安として市場に近い水準を狙う)、次に相続税路線価、最も低いのが固定資産税評価額。取引の目安が上、課税のための二つが下、そのうち固定資産税評価額が最も低い。

    順序が理由から導けることも確認しておいてください。取引の目安は市場に近づける必要があるので高い。課税のための価格は安全側に置くので低い。そして固定資産税は毎年課税され、しかも三年間据え置かれるので、より大きな余裕が要る。だから固定資産税評価額が最も低い。

    実勢価格との関係

    公的価格は取引価格そのものではない

    四つの公的価格はいずれも、実際にその土地が売買される価格そのものではありません。

    公示価格は「自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価格」であって、現実の取引価格ではありません。しかも定着物や権利が存しないものとして判定されるので、建物が建っている土地の実際の売買価格とは前提が違います。

    現実の取引価格は、売り急ぎや買い進みといった個別の事情、当事者の交渉力、時期によって動きます。不動産鑑定評価基準が事情補正という手続を置いているのは、まさにこうしたずれを取り除くためです。公的価格と実勢価格が一致しないのは制度の欠陥ではなく、そもそも測っているものが違うと理解してください。

    逆算は目安にしかならない

    路線価を0.8で割る、固定資産税評価額を0.7で割る、といった逆算が紹介されることがあります。おおよその見当をつける手段としては使えますが、比率自体が運用上の目途である以上、逆算の結果も目安を超えません。

    土地ごとの個別的要因(形状、間口と奥行、接道の状況、高低差など)は逆算では反映されません。実際の価格を知りたい場合は、取引事例を調べるか、専門家の評価を求めることになります。三手法による評価の考え方は鑑定評価3手法の計算構造と使い分けにまとめています。

    なお、公示価格や基準地価格は国土交通省が運営する不動産情報ライブラリで検索でき、同システムでは実際の取引価格の情報も公開されています。公的価格と現実の取引価格を並べて見られるので、両者のずれの幅を自分で確かめることができます。路線価は国税庁の路線価図・評価倍率表、固定資産税評価額は納税通知書や固定資産評価証明書で確認します。

    場面ごとにどれを見るか

    売買の価格を考えるときに参照するのは、公示価格と基準地価格です。近隣の標準地・基準地の価格を見て水準感をつかみ、実際の取引事例と突き合わせます。取引の流れ全体は不動産売買の流れにあります。

    相続税や贈与税を計算するときは路線価です。路線価が定められていない地域なら倍率方式で、固定資産税評価額に倍率を乗じます。

    固定資産税の額を確認するときは固定資産税評価額です。納税通知書に記載されるほか、縦覧の制度(地方税法416条)で他の土地と比較できます。不動産取得税や登録免許税の計算でもこの評価額が使われます。

    投資判断をするときは、公的価格だけでは足りません。収益性を見る必要があるので、賃料水準と利回りの検討が入ります。この観点は不動産投資の基礎知識で扱っています。

    公示価格は「そのまま使う」ものではない

    ここで一点補っておきます。公示価格を参照するといっても、近くの標準地の価格をそのまま自分の土地に当てはめるわけではありません。

    地価公示法11条は「公示価格を規準とする」ことの意義を定義しており、対象土地の価格を求めるに際して、当該対象土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる一または二以上の標準地との位置、地積、環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因についての比較を行い、その結果に基づき、標準地の公示価格と対象土地の価格との間に均衡を保たせることをいう、としています。

    比較を経て均衡を保たせる作業であって、数値をそのまま持ってくることではありません。標準地はあくまで物差しの目盛りであり、目盛りを自分の土地に当てるには比較の手続が要るということです。この比較の考え方が、鑑定評価における取引事例比較法の地域要因・個別的要因の比較と同じ発想であることも押さえておくと、四つの価格と鑑定評価がひとつながりに見えてきます。

    試験での出題ポイント

    実施主体の入れ替え

    最も多いのがここです。公示価格は土地鑑定委員会、基準地価格は都道府県知事、路線価は国税庁、固定資産税評価額は市町村長。「地価公示は国土交通大臣が行う」「固定資産税評価額は都道府県知事が決定する」といった入れ替えが定番です。

    固定資産税については、評価基準を定めるのが総務大臣(地方税法388条1項)、価格を決定するのが市町村長(403条1項)という二段構えも狙われます。

    基準日と鑑定士の人数

    公示価格は1月1日で二人以上、基準地価格は7月1日で一人以上。この二組の対応を入れ替える形が繰り返し使われます。路線価の基準日も1月1日、固定資産税の賦課期日も1月1日(地方税法359条)なので、7月1日なのは都道府県地価調査だけという覚え方もできます。

    根拠法の入れ替え

    公示価格は地価公示法という法律、基準地価格は国土利用計画法施行令という政令、相続税路線価は相続税法と財産評価基本通達、固定資産税評価額は地方税法。「基準地価格は国土利用計画法に直接規定されている」という記述は、根拠が施行令9条である以上、正確ではありません。

    評価替えの周期

    「固定資産税評価額は毎年評価替えが行われる」は誤りです。地方税法341条6号の基準年度の定義により三年ごとで、第二年度・第三年度は原則として基準年度の価格が据え置かれます(349条2項・3項)。ただし地目の変換や家屋の改築等の特別の事情がある場合には、据置きの例外があります。

    水準の断定

    「路線価は法律により公示価格の80%と定められている」は誤りです。相続税法22条が定めているのは「時価」であり、8割という比率は運用上の目途です。同様に、地方税法341条5号が定めているのも「適正な時価」です。法令の文言と運用の水準を混同させる選択肢に注意してください。

    「存しないものとして」

    公示価格も基準地の標準価格も、定着物や権利が存しないものとして判定されます(地価公示法2条2項、国土利用計画法施行令9条2項)。「建物が存する場合は建物を含めた価格を公示する」は誤りです。

    覚え方・整理の仕方

    二群に分けてから属性を足す

    四つを一列に並べて属性を暗記しようとすると混線します。まず二群に分けてください。

    上の群が取引の目安(公示価格・基準地価格)、下の群が課税のため(路線価・固定資産税評価額)。上の群は鑑定士の鑑定評価を経て、市場に近い水準を狙う。下の群は多数の土地を統一的に評価し、安全側の水準に置く。

    群が決まれば、水準の上下も、鑑定士が入るかどうかも自動的に決まります。そのうえで、群の中の二つを区別する属性だけを覚えれば足ります。

    上の群は「1と2、7と1」

    取引の目安の二つは、基準日と鑑定士の人数を対にすると混線しません。公示は1月1日で二人以上、地価調査は7月1日で一人以上。「公示は1と2、調査は7と1」と唱えてください。

    そのうえで実施主体を足します。公示は土地鑑定委員会、調査は都道府県知事。根拠も、公示は法律、調査は政令。国が上、都道府県が下、という上下関係で全部そろいます。

    下の群は「誰の税か」で分ける

    課税のための二つは、どの税のための価格かで分けます。

    路線価は国税である相続税・贈与税のため。だから決めるのは国税庁。固定資産税評価額は地方税である固定資産税等のため。だから決めるのは市町村。国税と地方税の切り分けは宅建試験の税金を横断整理にまとめています。

    そして水準は、国税のほうが高く(おおむね8割)、地方税のほうが低い(おおむね7割)。評価替えの周期も、路線価は毎年、固定資産税評価額は三年ごと。毎年見直すほうが高い水準を維持でき、三年据え置くほうは余裕が要ると考えれば、水準の差と周期の差が同じ理由から出ていることが分かります。

    1月1日が三つ、7月1日が一つ

    基準日は、例外を覚えるほうが速い論点です。公示価格、路線価、固定資産税の賦課期日はいずれも1月1日。7月1日なのは都道府県地価調査だけ。

    公表時期も並べておきます。公示価格が3月、路線価が例年7月、基準地価格が例年9月。基準日から公表までの間隔は、いずれも数か月あくという共通点があります。評価には時間がかかるからです。なお公表時期は運用によるので、最新は各実施主体の公表で確認してください。その年の具体的な数値は宅建試験の統計数値まとめ統計問題の対策にあります。

    四つは互いにつながっている

    最後に、独立して並んでいるのではないことを押さえてください。

    基準地の標準価格は、公示区域内では公示価格を規準とします(国土利用計画法施行令9条3項)。相続税の倍率方式は、固定資産税評価額に倍率を乗じて求めます。不動産鑑定士が公示区域内の土地の正常な価格を求めるときは公示価格を規準とします(地価公示法8条)。

    公示価格を軸に、他の三つがぶら下がっている構造だと捉えると、四つの関係が一枚の絵になります。この分野の学習配分は税・その他の得点戦略、免除を受けない場合の範囲は免除科目5問の攻略法を参照してください。

    理解度チェッククイズ

    問1 都道府県地価調査における基準地の標準価格は、都道府県知事が毎年7月1日時点について、二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求めて判定する。

    答え:×。鑑定士の人数が違います。国土利用計画法施行令9条1項は、都道府県知事が画地を選定し、毎年一回、一人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って標準価格を判定するものとしています。二人以上の鑑定評価を求めるのは地価公示のほう(地価公示法2条1項)です。基準日が7月1日であること、実施主体が都道府県知事であることは正しく、国土交通省もそのように案内しています。なお根拠は地価公示法ではなく国土利用計画法施行令9条という政令である点も、あわせて押さえておいてください。

    問2 固定資産税評価額は、地方税法の規定により、地価公示価格の70%と定められている。

    答え:×。地方税法341条5号が定めているのは「価格 適正な時価をいう」であり、地価公示価格に対する比率を法律が定めているわけではありません。おおむね7割とされる水準は、多数の土地を統一的に評価するにあたって時価を上回らないようにするための運用上の目途です。相続税路線価についても同様で、相続税法22条は「取得の時における時価」と定めているだけです。法令の文言と運用の水準を混同しないでください。

    問3 固定資産税評価額は、原則として3年ごとに評価替えが行われ、第二年度および第三年度は基準年度の価格が据え置かれる。

    答え:○。地方税法341条6号は基準年度を「昭和31年度及び昭和33年度並びに昭和33年度から起算して三年度又は三の倍数の年度を経過したごとの年度」と定義し、7号・8号が第二年度・第三年度を定めています。349条1項が基準年度の課税標準を基準年度に係る賦課期日における価格とし、2項・3項により第二年度・第三年度は原則として基準年度の価格が据え置かれます。ただし地目の変換、家屋の改築または損壊その他これらに類する特別の事情等がある場合には例外があります。

    問4 相続税の課税価格の計算において、路線価が定められていない地域の宅地は、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価する。

    答え:○。国税庁は土地の評価方法として路線価方式と倍率方式を示しており、倍率方式は路線価が定められていない地域の土地を評価する方法で、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算するとしています。路線価方式で用いる路線価は「路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額」です。倍率方式は、四つの公的価格のうち相続税評価と固定資産税評価が直接つながっている例になります。

    問5 固定資産の評価の基準ならびに評価の実施の方法および手続を定めて告示するのは市町村長であり、これに基づいて総務大臣が価格を決定する。

    答え:×。主体が逆です。地方税法388条1項は、総務大臣が固定資産評価基準を定め、これを告示しなければならないと定めています。そして403条1項が、市町村長は固定資産評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならないとしています。基準を定めるのが総務大臣、価格を決定するのが市町村長という役割分担です。なお市町村長は価格等を毎年3月31日までに決定しなければならず(410条1項)、決定後は地域ごとの宅地の標準的な価格を記載した書面を一般の閲覧に供します(同条2項)。国が基準を作り、市町村が個々の価格を決め、その結果を住民が確認できるようにする、という三段構えになっています。

    まとめ

    • 四つの公的価格は目的で二群に分かれます。取引の目安である公示価格(地価公示法、土地鑑定委員会、1月1日、二人以上の鑑定士)と基準地の標準価格(国土利用計画法施行令9条、都道府県知事、7月1日、一人以上の鑑定士)。課税のための相続税路線価(国税庁、1月1日)と固定資産税評価額(市町村長、賦課期日1月1日、三年ごとの評価替え)。7月1日なのは都道府県地価調査だけです。
    • 水準の差は法令が定めたものではありません。相続税法22条も地方税法341条5号も「時価」と定めており、路線価がおおむね8割、固定資産税評価額がおおむね7割とされるのは、多数の土地を統一的に評価するための運用上の目途です。比率を断定せず、取引の目安が上、課税のための二つが下、そのうち固定資産税評価額が最も低いという順序と、その理由を押さえてください。
    • 四つは独立していません。基準地の標準価格は公示区域内では公示価格を規準とし(国土利用計画法施行令9条3項)、相続税の倍率方式は固定資産税評価額に倍率を乗じ、不動産鑑定士は公示区域内の土地の正常な価格を求めるとき公示価格を規準とします(地価公示法8条)。公示価格を軸に他の三つがぶら下がる構造です。

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