都市計画法の全体像|区域区分・用途地域・開発許可
都市計画法の骨格を条文に沿って解説。都市計画区域と準都市計画区域、区域区分と用途地域の関係、地域地区の上乗せ構造、三段階の都市計画制限、決定手続までを整理します。
目次
この記事は、都市計画法の骨格を一本の筋で通すための総論記事です。区域の指定から地域地区、都市計画制限、決定手続までをつなげて理解し、各論は個別記事に渡す構成にしています。開発許可の要件と手続は宅建の開発許可制度|建築確認との違いと頻出パターンを攻略、許可が不要になる場合の一覧は開発許可の不要な開発行為一覧|面積要件と例外に分けてあるので、本記事では位置づけの説明にとどめます。
結論を先に述べます。都市計画法は、一枚の大きな地図に何層も規制を重ねていく法律です。まず都市計画区域という外枠を引き、その内側を市街化区域と市街化調整区域に分け、市街化区域には用途地域という土台を敷き、その上に特別用途地区や高度地区といった層を重ね、さらに細かい単位で地区計画を載せる。並行して、道路や公園を都市施設として計画し、その予定地には段階的に強さの違う建築制限をかける。この「外枠から内側へ、土台から上乗せへ」という順序を掴めば、個々の条文がどこに刺さるのかが見えてきます。以下、この順に展開します。
都市計画法は何のための法律か
1条が掲げる目的
都市計画法1条は、都市計画の内容および決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする、としています。
この条文の並びは、そのまま法律の構成を示しています。都市計画の内容(何を決めるか)、決定手続(どう決めるか)、都市計画制限(決めた計画をどう守るか)、都市計画事業(どう実現するか)。法律を読み進めるときに自分がどのパートにいるのかを見失いがちな分野なので、この四つの箱を最初に持っておくと迷いません。
現実の課題としてこの法律が想定しているのは、いわゆるスプロール現象です。市街地の周辺に、道路も下水道も学校もないまま住宅が虫食い状に広がっていくと、後から公共施設を整備する費用が跳ね上がり、防災上も生活上も水準の低い市街地が固定されてしまいます。市街化を止めるのではなく、市街化する場所と時期を計画的に決める、というのが制度の発想です。
2条の基本理念
2条は、都市計画は農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活および機能的な都市活動を確保すべきこと、そしてこのためには適正な制限のもとに土地の合理的な利用が図られるべきことを基本理念とする、と定めています。
「適正な制限のもとに」という一句が、この法律のすべての規制の根拠です。土地の所有権は本来自由に使えるはずのものですが、都市という共同の場では、互いに制限し合うことでかえって全体の利用価値が上がる。用途地域も建築制限も、この理念から出てきています。試験で理念そのものが問われることは多くありませんが、個別の制度がなぜそうなっているかを説明する材料として使えます。
都市計画が扱う三つの対象
4条1項は、都市計画を「都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画」と定義しています。土地利用、都市施設、市街地開発事業の三本柱です。
土地利用は、どこにどういう建物を建てられるかを決める部分で、区域区分と地域地区がここに入ります。都市施設は、道路や公園といった都市の骨格をなす施設をどこに置くかを決める部分です。市街地開発事業は、土地区画整理事業や市街地再開発事業のように、面的に市街地を作り替える事業を計画する部分です。以下の各節は、この三本柱のどれを扱っているかを意識しながら読むと整理しやすくなります。
都市計画区域と準都市計画区域
都市計画区域は行政区画にとらわれない
都市計画区域は、都市計画法が本格的に適用される外枠です。5条1項により、都道府県が、市または政令で定める要件に該当する町村の中心の市街地を含み、一体の都市として総合的に整備し、開発し、保全する必要がある区域として指定します。
ここで押さえたいのが、指定が行政区画に縛られないことです。5条1項後段は、必要があるときは当該市町村の区域外にわたって指定できるとしています。都市としての一体性は市町村の境界と一致しないので、実態に合わせて線を引けるようになっています。そして二以上の都府県の区域にわたる都市計画区域は、国土交通大臣が関係都府県の意見を聴いて指定します(5条4項)。
指定にあたって都道府県は、あらかじめ関係市町村および都道府県都市計画審議会の意見を聴くとともに、国土交通大臣に協議してその同意を得なければなりません(5条3項)。大臣の同意まで要る、という点が次に述べる準都市計画区域との違いになります。
準都市計画区域は土地利用の整序のために置く
準都市計画区域は、都市計画区域の外側に置かれる区域です。5条の2第1項により、都道府県が、都市計画区域外のうち、相当数の建築物等の建築や敷地の造成が現に行われまたは行われると見込まれる区域を含み、そのまま放置すれば将来の都市としての整備、開発および保全に支障が生じるおそれがあると認められる一定の区域について指定できます。
高速道路のインターチェンジ周辺のように、都市計画区域の外なのに開発圧力が高まっている場所を想定した制度です。積極的に市街地を作るのではなく、放置すると困る土地利用を整序するのが目的なので、規制の道具立ても限定されています。
手続面では、都道府県はあらかじめ関係市町村および都道府県都市計画審議会の意見を聴かなければなりませんが、国土交通大臣の同意は要りません(5条の2第3項)。都市計画区域の指定には大臣の同意が要り、準都市計画区域には要らない、という差が問われます。
準都市計画区域に定められるものと定められないもの
8条2項により、準都市計画区域について都市計画に定めることができる地域地区は、用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域、高度地区、景観地区、風致地区、緑地保全地域、伝統的建造物群保存地区の八つに限られます。なお高度地区については、準都市計画区域では建築物の高さの最高限度のみを定めることになっています。
定められないものの筆頭が区域区分です。準都市計画区域は市街化を進める場所ではないので、市街化区域と市街化調整区域に分ける意味がありません。都市施設や市街地開発事業も定められず、地区計画も定められません。積極的に整備するための道具は入っていない、と理解すると覚えやすくなります。この区域の位置づけは非線引き区域と準都市計画区域の扱いでも扱っています。
区域外にも規制が及ぶ場面
都市計画区域の外は規制がまったくない、というわけではありません。二つの例外があります。
ひとつは開発許可です。29条2項により、都市計画区域および準都市計画区域外の区域内でも、1ヘクタール以上の開発行為には都道府県知事の許可が必要です。もうひとつは都市施設で、11条1項は都市計画区域について都市施設を定めるとしたうえで、特に必要があるときは当該都市計画区域外においても定めることができるとしています。区域外に処理施設や道路を計画する必要が生じる場面を想定した規定です。
区域区分(線引き)
定めるかどうかは原則として選択
区域区分は、都市計画区域の内側を市街化区域と市街化調整区域に分ける仕組みです。7条1項本文は、都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に区域区分を定めることができる、としています。
原則は「できる」であって「しなければならない」ではありません。区域区分を定めていない都市計画区域が、いわゆる非線引き区域です。ただし7条1項ただし書により、首都圏整備法の既成市街地・近郊整備地帯、近畿圏整備法の既成都市区域・近郊整備区域、中部圏開発整備法の都市整備区域を含む都市計画区域と、指定都市の区域を含む都市計画区域については、区域区分を定めるものとされています。大都市圏では線引きが義務、それ以外は選択、という構造です。
市街化区域と市街化調整区域の性格
7条2項は、市街化区域を「すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」と定義しています。「おおむね10年以内」という時間の枠が入っている点が特徴で、市街化区域は将来にわたる約束ではなく、当面の整備の対象を示すものだと分かります。
7条3項は、市街化調整区域を「市街化を抑制すべき区域」と定義しています。条文はこれだけで、積極的な内容を持ちません。市街化を進めないという方針そのものが区域の内容になっている、という点が後の制度に効いてきます。両区域の違いは市街化区域と市街化調整区域の違いで詳しく扱っています。
用途地域の定め方が区域で変わる
区域区分と用途地域の関係を定めているのが13条1項7号です。地域地区に関する都市計画基準として、市街化区域については少なくとも用途地域を定めるものとし、市街化調整区域については原則として用途地域を定めないものとする、と規定しています。
市街化区域に必ず用途地域を定めるのは、10年以内に市街化を図る以上、どこに何を建てるかをあらかじめ決めておかなければ計画的な整備にならないからです。逆に市街化調整区域に用途地域を定めないのは、そもそも建築を想定していない区域に、どこに何を建てられるかの地図を描く意味がないからです。「原則として」とあるとおり例外的に定めることは否定されていませんが、原則を押さえておけば足ります。
非線引き区域では、用途地域を定めることも定めないこともできます。線引きをしていない以上、一律の扱いを課す理由がないからです。この三区域の扱いの差は、そのまま出題箇所になります。用途地域13種の中身は用途地域13種類と建築制限、覚え方は用途地域13種の覚え方で扱っているので、本記事では立て付けの説明にとどめます。
地域地区は「上乗せ」の仕組み
用途地域という土台と、その上の層
地域地区は8条1項が列挙しており、用途地域はその1号に置かれています。用途地域が土台で、それ以外の地域地区は目的に応じて上に重ねる層、という関係で理解すると全体像が掴めます。
重ねる層は、どこに定められるかで三つに分かれます。用途地域の内側にしか定められないもの、用途地域が定められていない区域に定めるもの、用途地域と無関係に定められるものです。この分類が出題の軸になります。
用途地域内にしか定められないもの
特別用途地区は、9条14項により、用途地域内の一定の地区における当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため、当該用途地域の指定を補完して定める地区とされています。「補完して定める」とあるとおり、土台となる用途地域があって初めて意味を持つ制度です。
高度地区(9条18項)と高度利用地区(9条19項)も、条文がいずれも「用途地域内において」「用途地域内の市街地における」と限定しています。特定街区や高層住居誘導地区も、用途地域を前提とした制度です。
用途地域外に定めるもの
特定用途制限地域は、9条15項により、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く)内において、良好な環境の形成または保持のため、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域とされています。
ここには二つの限定があります。用途地域が定められていない区域であること、そして市街化調整区域を除くことです。市街化調整区域が除かれるのは、この区域では開発許可制度によってすでに強い規制がかかっており、重ねて用途制限を課す必要がないからです。「市街化調整区域に特定用途制限地域を定めることができる」という選択肢は誤りになります。
用途地域と無関係に定められるもの
風致地区(9条22項)は都市の風致を維持するため定める地区で、用途地域の内外を問いません。防火地域および準防火地域(9条21項)も、市街地における火災の危険を防除するため定める地区で、用途地域とは別の観点から指定されます。景観地区も同様です。
目的が用途の配分とは別のところにあるものは、用途地域の枠に縛られない。この理由から整理しておけば、個別に暗記しなくても判断できます。
高度地区と高度利用地区
名前が似ていて混同を招くのが、この二つです。高度地区は、市街地の環境を維持し、または土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区です(9条18項)。扱うのは高さです。
高度利用地区は、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るため、建築物の容積率の最高限度および最低限度、建蔽率の最高限度、建築面積の最低限度、壁面の位置の制限を定める地区です(9条19項)。扱うのは容積率などで、高さそのものは対象になっていません。
「高度」という語が、前者では物理的な高さを、後者では土地の利用度合いを指している、という言葉のずれが混同の原因です。高度利用の「高度」は「高い程度に利用する」という意味だと理解すれば取り違えません。地域地区の全体像は都市計画の種類と決定手続き|マスタープラン・地域地区にもまとめがあります。
都市施設と市街地開発事業
都市施設は区域外にも定められる
11条1項は、都市計画区域について都市計画に都市施設で必要なものを定めるとし、特に必要があるときは都市計画区域外においても定めることができるとしています。都市施設には、道路、都市高速鉄道、駐車場などの交通施設、公園、緑地、広場、墓園などの公共空地、水道、電気供給施設、下水道、ごみ焼却場などの供給施設・処理施設、河川、学校、病院、市場などが含まれます。
区域外にも定められるという点は、前述のとおり都市計画区域の外にまったく規制が及ばないわけではないことの一例です。ごみ焼却場や墓園のように、市街地の外に置かざるを得ない施設があることを考えれば、必要性は理解できます。
必ず定めなければならない都市施設
13条1項11号は、市街化区域および区域区分が定められていない都市計画区域については、少なくとも道路、公園および下水道を定めるものとし、住居系用途地域については義務教育施設をも定めるものとする、としています。
道路、公園、下水道の三つは、市街地が市街地として機能するための最低限の基盤です。そして人が住む地域には学校が要る。この理由づけで並べておけば、「市街化調整区域についても道路、公園および下水道を定めなければならない」という誤りに気づけます。条文が挙げているのは市街化区域と非線引き区域だけです。
市街地開発事業は市街化調整区域に定められない
12条1項は、市街地開発事業として、土地区画整理事業、新住宅市街地開発事業、工業団地造成事業、市街地再開発事業、新都市基盤整備事業、住宅街区整備事業、防災街区整備事業の七つを挙げています。いずれも面的に市街地を作り替える事業です。
13条1項13号は、市街地開発事業を市街化区域または区域区分が定められていない都市計画区域内において定めることとしています。裏を返せば、市街化調整区域には定められません。市街化を抑制すべき区域で市街地を積極的に整備する事業を行うのは、区域の性格と矛盾するからです。土地区画整理事業の仕組みは土地区画整理法|仮換地・換地処分の仕組みを解説で扱っています。
都市計画制限は三段階で強くなる
計画を決めただけでは、予定地に建物が建ってしまえば実現できません。そこで計画の熟度に応じて、段階的に強い建築制限がかけられます。この強さの差が問われるので、三段階として並べて覚えてください。
第一段階 都市計画施設等の区域内(53条・54条)
都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければなりません(53条1項)。政令で定める軽易な行為、非常災害のため必要な応急措置として行う行為、都市計画事業の施行として行う行為などは除かれます。
規制の対象は建築物の建築だけです。土地の形質の変更や工作物の建設は含まれていません。そして54条3号は、階数が二以下で地階を有せず、主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であって、容易に移転または除却することができると認められる建築物については、知事等は許可をしなければならないとしています。
「許可をしなければならない」という書き方が重要です。裁量ではなく、要件を満たせば必ず許可されます。計画は決まったがまだ事業に着手していない段階なので、簡易な建物であれば認めるという均衡が取られています。この段階の制限は都市計画制限|都市計画施設の区域内の建築制限で詳しく扱っています。
第二段階 市街地開発事業等予定区域内(52条の2)
市街地開発事業等予定区域の区域内において、土地の形質の変更を行い、または建築物の建築その他工作物の建設を行おうとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければなりません(52条の2第1項)。
第一段階との違いは二つあります。規制の対象行為が広く、建築物の建築だけでなく土地の形質の変更と工作物の建設も含まれること。そして54条のような、要件を満たせば必ず許可するという規定が置かれていないことです。二階建ての木造なら通る、という保証はありません。
第三段階 都市計画事業の事業地内(65条)
都市計画事業の認可または承認の告示があった後は、事業地内において、当該都市計画事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設、政令で定める移動の容易でない物件の設置または堆積を行おうとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければなりません(65条1項)。
ここでは「事業の施行の障害となるおそれがある」行為が対象で、障害になるなら許可されません。事業が現実に動き出している段階なので、最も強い制限がかかります。あわせて67条により、事業地内の土地建物等を有償で譲り渡そうとする者は、あらかじめ施行者に届け出なければならず、施行者が買い取ることができるという先買いの仕組みも働きます。
三段階を並べて覚える
計画が具体化するほど制限が強くなる、という一本の流れとして押さえます。都市計画施設の区域内は建築物だけが対象で簡易な建物なら必ず許可、予定区域内は対象行為が広がり必ず許可の保証はなし、事業地内は障害になる行為は許可されず先買いまで付く。段階が進むほど、対象が広がり、裁量が強まる、という方向で一貫しています。
地区計画
どこに定められるか
地区計画は、街区単位の細かいまちづくりを行うための計画です。12条の5第1項により、用途地域が定められている土地の区域と、用途地域が定められていない土地の区域のうち一定の要件に該当するものについて定めることができます。
後者に含まれるのは、住宅市街地の開発などの事業が行われる、または行われた土地の区域、建築物の建築や敷地の造成が無秩序に行われるおそれがあり不良な街区の環境が形成されるおそれがある区域、そして良好な居住環境や優れた街区の環境がすでに形成されている区域です。放置すると悪くなる場所と、すでに良い状態を守るべき場所の両方が対象になります。
内容と、届出制という選択
地区計画の内容は、区域の整備・開発および保全に関する方針と、地区整備計画から成ります。方針が大枠を示し、地区整備計画が具体的な建築物の用途、容積率、高さ、壁面の位置、垣や柵の構造などを定めます。
規制の方法として選ばれているのが届出制です。58条の2第1項により、地区整備計画が定められている区域内で土地の区画形質の変更、建築物の建築その他政令で定める行為を行おうとする者は、行為に着手する日の30日前までに、行為の種類、場所、設計または施行方法、着手予定日などを市町村長に届け出なければなりません。
市町村長は、届出に係る行為が地区計画に適合しないと認めるときは、設計の変更その他必要な措置をとることを勧告することができます(58条の2第3項)。届け出れば行為はできるのが原則で、市町村長にできるのは勧告までで、命令はできません。
許可制ではなく届出制が選ばれているのは、地区計画が住民に身近な単位の計画であり、住民の合意を土台に運用される制度だからです。強制ではなく誘導によって実現する、という設計思想が現れています。届出先が都道府県知事ではなく市町村長であることも、この身近さから理解できます。地区計画の種類と運用は地区計画とは?地区計画の種類と届出制度で扱っています。
都市計画の決定手続
誰が決めるか
15条1項は、都市計画区域について定められる都市計画を都道府県または市町村が定めるとしたうえで、都道府県が定めるものを列挙しています。都市計画区域の整備、開発および保全の方針、区域区分、都市再開発方針等、広域的な見地から決定すべき一定の地域地区や都市施設、一定の市街地開発事業などです。列挙されていないものは市町村が定めます。
分担の考え方は広域性です。複数の市町村にまたがる判断や、都市圏全体の方針にかかわるものは都道府県、地域に密着したものは市町村、という切り分けになっています。用途地域や地区計画が市町村の決定になるのは、この理由からです。
住民の関与は二段構え
16条1項は、都道府県または市町村は、都市計画の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする、としています。「必要があると認めるとき」という条件が付いているので、公聴会の開催は常に義務ではありません。ここは頻出の引っかけ箇所です。
17条1項は、都市計画を決定しようとするときは、あらかじめその旨を公告し、都市計画の案を、決定しようとする理由を記載した書面を添えて、公告の日から二週間公衆の縦覧に供しなければならないとしています。こちらは義務です。そして17条2項により、関係市町村の住民および利害関係人は、縦覧期間満了の日までに意見書を提出することができます。
意見書を出せるのが「住民及び利害関係人」である点に注意してください。住民に限られず、区域外に住んでいても利害関係があれば提出できます。縦覧期間の二週間という数字とあわせて狙われます。期間の数字は都市計画法の数字まとめ|面積・期間の暗記一覧で横断的に確認できます。
審議会と協議、そして告示
都道府県が定める場合は、関係市町村の意見を聴き、都道府県都市計画審議会の議を経て決定します(18条1項)。一定の都市計画については、あらかじめ国土交通大臣に協議し、その同意を得なければなりません(18条3項)。
市町村が定める場合は、市町村都市計画審議会(置かれていないときは都道府県都市計画審議会)の議を経て決定し(19条1項)、あらかじめ都道府県知事に協議しなければなりません(19条3項)。ここは協議であって、知事の同意は要件になっていません。大臣に対しては協議と同意、知事に対しては協議のみ、という差が問われます。
そして20条により、決定の告示があった日から都市計画の効力が生じます。決定した日でも縦覧した日でもなく、告示の日です。
提案制度
21条の2は、住民等の側から都市計画の決定や変更を提案できる制度を定めています。都市計画区域または準都市計画区域のうち、政令で定める規模(0.5ヘクタール)以上の一団の土地について、その土地の所有権または建物所有を目的とする対抗要件を備えた地上権もしくは賃借権を有する者が、都道府県または市町村に提案できます。まちづくりの推進を目的とするNPO法人や一般社団法人等も提案主体になります。
提案には、対象となる土地の区域内の土地所有者等の三分の二以上の同意が必要です。この三分の二は人数と地積の両面で判断されます。行政が一方的に計画を作るのではなく、土地の側から提案できる回路を開いた制度だと理解してください。
開発許可制度の位置づけ
開発許可は都市計画法の中で最も出題される論点ですが、本記事では骨格の中での位置づけだけを述べます。
29条1項は、都市計画区域または準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければならないとし、29条2項はこれらの区域外でも1ヘクタール以上の開発行為に許可を要求しています。開発行為とは、4条12項により、主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいいます。
制度の位置づけは、区域区分を実効化する装置です。市街化区域には計画的に市街化してよいという方針があり、市街化調整区域には市街化を抑制するという方針がある。しかし方針を都市計画に書いただけでは、実際の造成工事を止められません。そこで土地の区画形質の変更という入口を許可制で押さえ、区域ごとに違う基準を適用することで、方針を現実の土地に反映させています。
許可基準が33条と34条に分かれているのも、この構造から説明できます。33条は全区域に適用される技術的な基準で、道路や排水施設が適切に配置されているかを見ます。34条は市街化調整区域にのみ追加で適用される立地基準で、そもそもその場所で開発してよいかを見ます。市街化を抑制すべき区域だから立地そのものを審査する、という理屈です。
要件と手続の詳細は宅建の開発許可制度、許可が不要になる類型は開発許可の不要な開発行為一覧、面積基準は開発許可が必要な面積要件、建築確認との区別は開発許可と建築確認の違いを参照してください。
試験での出題ポイント
「できる」と「しなければならない」の入れ替え
この法律には、義務と裁量が混在しています。区域区分は原則として「定めることができる」であり、大都市圏では「定めるものとする」。公聴会は「必要があると認めるとき」に講ずるもので常に義務ではなく、縦覧は義務。54条の許可は要件を満たせば「しなければならない」。市街化区域の用途地域は「少なくとも定めるものとする」。
条文の語尾を入れ替えるだけで誤りの選択肢が作れるため、この分野では特に多用されます。制度を覚えるときに、義務なのか裁量なのかを必ず添えてください。
区域の入れ替え
市街化調整区域を市街化区域に、準都市計画区域を都市計画区域に置き換える形です。市街地開発事業を市街化調整区域に定められるか、特定用途制限地域を市街化調整区域に定められるか、準都市計画区域に区域区分を定められるか。いずれも区域の性格から答えが出ます。市街化調整区域は市街化を抑制する区域なので積極的に整備する道具は入らない、準都市計画区域は整序のための区域なので整備の道具は入らない、という筋で判断できます。
主体の入れ替え
地区計画の届出先を都道府県知事に、開発許可の権者を市町村長に、都市計画区域の指定権者を市町村に置き換える形です。都市計画区域と準都市計画区域はいずれも都道府県が指定し、二以上の都府県にまたがる都市計画区域だけが国土交通大臣です。地区計画の届出は市町村長。この二つは特に狙われます。
似た名称の取り違え
高度地区と高度利用地区、特別用途地区と特定用途制限地域が代表です。前者は高さと容積率等、後者は用途地域内と用途地域外という違いがあり、いずれも条文の定義に「用途地域内において」「用途地域が定められていない土地の区域」と書き分けられています。名称の似た制度が出てきたら、定義の冒頭部分を思い出す習慣をつけてください。
制限の強さのすり替え
都市計画施設の区域内の制限と、事業地内の制限を入れ替える形です。都市計画施設の区域内なら二階建て以下の木造等は必ず許可されるのに対し、事業地内では事業の障害となるおそれがあれば許可されません。「都市計画事業の事業地内であっても、階数が二以下で地階を有しない木造の建築物であれば許可を受けることができる」といった選択肢は、段階の違いを無視した誤りになります。
数字の入れ替え
縦覧の二週間、地区計画の届出の30日前、提案制度の0.5ヘクタールと三分の二、市街化区域のおおむね10年以内、区域外の開発許可の1ヘクタール。数字は多くないので、主語を添えて確実に固めてください。許可と届出の相手方を法律横断で確認したい場合は法令上の制限の横断整理が使えます。
覚え方・整理の仕方
外枠から内側へ、順番に描く
白紙に、大きな四角を描いて都市計画区域とし、その内側を二つに割って市街化区域と市街化調整区域とする。市街化区域の中を塗り分けて用途地域とし、その一部に斜線を重ねて特別用途地区や高度地区とする。さらに小さな枠を描いて地区計画とする。外側に別の四角を描いて準都市計画区域とする。
この絵を毎回同じ手順で描けるようになると、どの制度がどの層にあるかが自然に整理されます。用途地域の上にしか載らないもの、用途地域がない場所に載るもの、どこにでも載るものの区別も、絵の上で位置を確認できます。表を暗記するより、描く手順を覚えるほうが崩れにくくなります。
区域の性格から答えを導く
市街化区域は10年以内に市街化する場所、市街化調整区域は市街化を抑制する場所、非線引き区域は線を引いていない場所、準都市計画区域は整序だけする場所。この四つの性格を一言ずつ言えるようにしておけば、多くの選択肢はその場で判断できます。
市街化調整区域に用途地域を定めるか、市街地開発事業を定めるか、特定用途制限地域を定めるか。いずれも「市街化を抑制する場所に、市街化のための道具を置くか」という問いに読み替えられます。個別に暗記する必要はありません。
制限は「計画の熟度」で並べる
都市計画制限の三段階は、計画がどこまで進んだかという一本の軸に並べます。決めただけの段階、事業予定として区域が定まった段階、事業が認可された段階。進むほど対象行為が広がり、許可の裁量が強まる。この方向を覚えておけば、個別の条文を思い出せなくても大小関係で判断できます。
決定手続は流れで唱える
案の作成、必要があれば公聴会、公告して二週間の縦覧、住民および利害関係人の意見書、審議会の議、大臣への協議と同意または知事への協議、告示で効力発生。この流れを口に出して一続きに言えるようにしておきます。
途中の一箇所だけを差し替えて誤りを作るのが定番なので、順序ごと覚えていれば違和感が生じます。都市計画法と建築基準法は表裏の関係にあるので、用途地域の建築制限まで進むなら建築基準法の頻出ポイントに接続してください。
理解度チェッククイズ
Q1. 準都市計画区域については、都市計画に区域区分を定めることができる。○か×か。
答えを見る
×。準都市計画区域に定めることができる地域地区は、8条2項により用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域、高度地区、景観地区、風致地区、緑地保全地域、伝統的建造物群保存地区の八つに限られ、区域区分は含まれません。準都市計画区域は土地利用の整序を目的とする区域であり、市街化を計画的に進めるための線引きを行う場所ではないためです。都市施設や市街地開発事業、地区計画も定められません。Q2. 市街化区域については、都市計画に少なくとも用途地域を定めるものとされている。○か×か。
答えを見る
○。13条1項7号が、市街化区域については少なくとも用途地域を定めるものとし、市街化調整区域については原則として用途地域を定めないものとする、と規定しています。市街化区域はおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域(7条2項)であり、どこに何を建てられるかを事前に定めなければ計画的な整備にならないためです。なお非線引き区域では、定めることも定めないこともできます。Q3. 特定用途制限地域は、用途地域が定められていない土地の区域であれば、市街化調整区域内にも定めることができる。○か×か。
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×。9条15項は、特定用途制限地域を「用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)」内において定めるものとしており、市街化調整区域は明文で除かれています。市街化調整区域には開発許可制度による強い規制がすでに及んでいるため、重ねて用途制限を課す必要がないからです。用途地域内にしか定められない特別用途地区(9条14項)との対比で覚えてください。Q4. 地区計画の区域内で建築物の建築をしようとする者は、着手する日の30日前までに都道府県知事の許可を受けなければならない。○か×か。
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×。誤りが二つあります。まず相手方は都道府県知事ではなく市町村長です。次に、これは許可ではなく届出です(58条の2第1項)。地区整備計画が定められている区域内で土地の区画形質の変更や建築物の建築等を行おうとする者は、着手する日の30日前までに市町村長に届け出ます。市町村長は地区計画に適合しないと認めるとき、設計の変更その他必要な措置を勧告することができるにとどまり、命令はできません(同条3項)。Q5. 都市計画事業の認可の告示があった後、事業地内において階数が二以下で地階を有しない木造の建築物を建築しようとする場合、都道府県知事等は必ず許可をしなければならない。○か×か。
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×。階数が二以下で地階を有せず木造等であれば許可をしなければならないとするのは、都市計画施設の区域内および市街地開発事業の施行区域内の制限に関する54条3号の規定です。都市計画事業の事業地内については65条1項が適用され、事業の施行の障害となるおそれがある行為は許可されません。計画が事業として動き出した段階では、より強い制限がかかるという段階の違いを問う出題です。まとめ
都市計画法は、外枠から内側へ、土台から上乗せへと規制を重ねていく法律です。都道府県が都市計画区域を指定し(5条)、必要に応じて市街化区域と市街化調整区域に分け(7条)、市街化区域には必ず用途地域を敷き(13条1項7号)、その上に特別用途地区や高度地区を重ね、さらに細かい単位で地区計画を載せる。この順序を絵として描けるようにしておくと、個々の制度の位置が定まります。
区域の性格を一言ずつ言えることが、この分野の判断力を支えます。市街化調整区域は市街化を抑制する場所なので、市街地開発事業も特定用途制限地域も定められません。準都市計画区域は整序のための区域なので、区域区分も都市施設も地区計画も定められません。個別に暗記するより、性格から導くほうが確実です。
都市計画制限は、計画の熟度に応じて三段階で強くなります。都市計画施設の区域内は建築物の建築のみが対象で簡易な建物なら必ず許可(53条・54条)、市街地開発事業等予定区域内は対象行為が広がり必ず許可の保証はなく(52条の2)、都市計画事業の事業地内は障害となる行為が許可されず先買いも付く(65条・67条)。この大小関係を押さえてください。
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都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。