開発許可が必要な面積要件|市街化区域・調整区域別の整理
開発許可の面積要件を区域別に整理。1,000・3,000・10,000平方メートルの根拠、条例による300平方メートルまでの引下げ、面積の数え方、混同しやすい数字までを条文で解説します。
目次
本記事の役割 — この記事は開発許可の「面積要件(規模要件)」だけを扱います。開発行為の定義から手続、許可基準、工事完了公告までの制度全体は宅建の開発許可制度|建築確認との違いと頻出パターンを攻略に、規模とは無関係に許可が不要となる適用除外の列挙は開発許可が不要な場合|三つの入口で判断するにあります。ここでは数字そのものと、その数字がどこから来ているかに集中します。
開発許可の面積要件は、市街化区域が1,000平方メートル以上、区域区分が定められていない都市計画区域と準都市計画区域が3,000平方メートル以上、都市計画区域および準都市計画区域の外が10,000平方メートル以上、そして市街化調整区域は面積にかかわらず許可が必要、という四つの整理に尽きます。それでも本試験で落とすのは、数字を覚えているだけで、その数字がなぜその区域に割り当てられているかを知らないからです。
数字だけの暗記は、選択肢の中で数字が一つだけ入れ替わったとき、条例による引下げが絡んだとき、市街化調整区域だけ扱いが違う理由を問われたときに崩れます。頼りになるのは「この区域は市街化を進めたいのか、抑えたいのか」という一本の軸です。
面積要件は許可の要否を決める一つの関門にすぎない
二つの条文に分かれて書かれている
開発許可の根拠は都市計画法29条ですが、面積要件は29条1項と29条2項という二つの条文に分けて書かれています。
29条1項は「都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない」と定めたうえで、ただし書として1号から11号までの除外を並べます。その1号が面積要件で、「市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、その規模が、それぞれの区域の区分に応じて政令で定める規模未満であるもの」を許可の対象から外しています。つまり都市計画区域および準都市計画区域の内側では、面積要件は「原則として許可が必要だが、小さいものは許可がいらない」という除外の形で書かれています。
これに対して29条2項は「都市計画区域及び準都市計画区域外の区域内において、それぞれ、政令で定める規模以上の開発行為をしようとする者は……許可を受けなければならない」と定めます。こちらは「一定規模以上のものだけ許可が必要」という積極要件の形で、原則は自由、例外が大規模、という構造です。
書き分けが意味するもの
同じ「面積要件」と呼ばれていても、条文上の位置づけは正反対です。都市計画区域の内側は網が張られていて小さいものだけ抜ける、外側は網がなくて大きいものだけ引っかかる、という関係になっています。
これは立法技術の問題ではありません。都市計画区域は、都市として一体的に整備・開発・保全すべき区域として指定された場所であり(都市計画法5条)、土地利用のコントロールが前提です。一方、都市計画区域の外はそのコントロールが及ばない場所であり、国土全体をそこまで規制する必要はない、という判断が働いています。区域の指定と規制の全体像は都市計画法の基礎|区域区分から地域地区までの骨格で確認できます。
なお、29条1項のただし書は1号だけではなく、2号(農林漁業用の一定の建築物)から11号(通常の管理行為・軽易な行為)まで、規模にかかわらず許可を不要とする除外が続きます。面積要件はあくまで関門の一つで、それだけで結論は出ません。この二段構えは後半で扱い、2号以下の中身そのものは開発許可が不要な場合|三つの入口で判断するに譲ります。
この節の要点
- 面積要件は29条1項1号(都市計画区域・準都市計画区域の内側)と29条2項(外側)に分かれている。
- 内側は「原則許可、小規模を除外」、外側は「一定規模以上だけ許可」で、条文の向きが逆。
- 面積要件を満たしても、29条1項2号以下で許可が不要になる余地が残る。
区域ごとの面積要件を条文の順に読む
面積の具体的な数値は政令に委任されており、29条1項1号の規模は都市計画法施行令19条、29条2項の規模は同施行令22条の2に定められています。
市街化区域は1,000平方メートル以上
施行令19条1項は、市街化区域について1,000平方メートルと定めています。したがって市街化区域内では、開発区域の面積が1,000平方メートル以上の開発行為に許可が必要となり、1,000平方メートル未満であれば29条1項1号により許可は不要です。
境界の扱いに注意してください。条文が「政令で定める規模未満であるもの」を除外している以上、ちょうど1,000平方メートルは除外されず、許可が必要です。「1,000平方メートルを超える」と書いた肢は、この境界をずらす引っかけになります。
三大都市圏の一定区域は500平方メートル以上
施行令19条2項は、市街化区域のうち一定の区域について、1項の1,000平方メートルを500平方メートルに読み替えます。対象となるのは、首都圏整備法の既成市街地および近郊整備地帯、近畿圏整備法の既成都市区域および近郊整備区域、中部圏開発整備法の都市整備区域の内側にある市街化区域です。いわゆる三大都市圏の中心部と、その周辺の整備が進む地帯であり、人口と建築活動が集中して小規模な開発の積み重ねが市街地の環境に与える影響が大きいことから、通常の市街化区域より厳しい線が引かれています。
押さえるべきなのは、この500平方メートルが適用されるのは三大都市圏のすべてではなく、法律で指定された特定の区域内にある市街化区域に限られるという点です。「三大都市圏の市街化区域は一律500平方メートル」は正確ではなく、またこの読み替えは市街化区域についてのものですから、市街化調整区域や非線引き都市計画区域には及びません。
市街化調整区域には面積の基準がない
ここが最重要です。29条1項1号をもう一度読むと、除外の対象として挙げられているのは「市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為」です。市街化調整区域が書かれていません。
条文に書かれていない以上、市街化調整区域内の開発行為には、規模による除外の入口がそもそも存在しません。結果として、市街化調整区域では面積の大小にかかわらず、開発行為であれば原則として開発許可が必要になります。10平方メートルでも、1平方メートルでも同じです。
「市街化調整区域は面積要件がない」という言い方は正確ですが、これを「規制がない」と読み違えないでください。正しくは「規模による除外がない=どんなに小さくても許可が必要」という、最も厳しい扱いです。市街化調整区域そのものの性格と、そこでの建築制限については市街化調整区域の規制|開発と建築にかかる二重の網で詳しく扱っています。
なお、面積による除外がないだけで、29条1項2号以下の適用除外は市街化調整区域にも及びます。市街化調整区域で農林漁業用の建築物のために行う開発行為が許可不要となるのは、面積要件ではなく2号によるものです。
区域区分が定められていない都市計画区域は3,000平方メートル以上
区域区分が定められていない都市計画区域、いわゆる非線引き都市計画区域については、施行令19条1項が3,000平方メートルと定めています。3,000平方メートル以上の開発行為に許可が必要です。
非線引き都市計画区域は、都市計画区域ではあるものの、市街化区域と市街化調整区域への区分(線引き)が行われていない区域です。市街化を積極的に進める区域とも、抑制する区域とも位置づけられていないため、市街化区域より緩い基準が適用されます。この区域の性格は非線引き都市計画区域とは|線引きをしない区域の扱いにまとめてあります。
準都市計画区域も3,000平方メートル以上
準都市計画区域についても、施行令19条1項は同じく3,000平方メートルと定めています。面積要件に関して、非線引き都市計画区域と準都市計画区域は完全に同じ扱いです。準都市計画区域は、都市計画区域の外にありながら、放置すれば将来の都市としての整備に支障が生じるおそれがある区域について指定されるもので(都市計画法5条の2)、無秩序な土地利用を放置できない場所として非線引き都市計画区域と同水準の網がかけられています。
なお、準都市計画区域は29条1項の対象です。「準都市計画区域は都市計画区域ではないから29条2項の10,000平方メートルだ」とする処理は誤りで、29条1項の柱書が「都市計画区域又は準都市計画区域内において」と明記していることを条文で確認しておいてください。
都市計画区域および準都市計画区域外は10,000平方メートル以上
29条2項の規模は施行令22条の2が定めており、1ヘクタール、すなわち10,000平方メートルです。都市計画区域でも準都市計画区域でもない区域では、開発区域の面積が10,000平方メートル以上の開発行為に許可が必要になります。
この規定は1968年の都市計画法制定時にはなく、2000年の法改正で導入されました。都市計画区域の外側で大規模な開発が無秩序に行われた経緯を受けて最低限の網をかけたもので、都市計画区域外は完全な野放しではないが拾うのは大規模開発だけ、という中間的な扱いになっています。
この節の要点
- 市街化区域1,000、非線引き都市計画区域と準都市計画区域3,000、区域外10,000。市街化調整区域は基準なし。
- 三大都市圏の一定区域内にある市街化区域だけ500に読み替わる(施行令19条2項)。
- 準都市計画区域は29条1項の対象で、区域外の10,000平方メートルとは無関係。
なぜこの数字なのか
四つの数字は無関係に決められたものではなく、「その区域で市街化をどう扱うか」という一本の軸の上に並んでいます。その構造から入ると、数字は覚える対象ではなく導ける結論になります。
規制の強さは市街化への態度で決まる
市街化区域は「すでに市街地を形成している区域、およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」(都市計画法7条2項)、市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」(同条3項)です。非線引き都市計画区域はそのどちらとも決められていない区域、準都市計画区域は都市計画区域外で将来に備えて最低限の規制をかける区域、区域外は都市計画のコントロールが及ばない場所です。面積要件は、この態度の違いをそのまま反映しています。
市街化区域の1,000平方メートルは「進めたいから緩い」ではない
ここで誤解しやすいのが市街化区域です。市街化を進めたい区域なのに、なぜ四つの中で最も小さい1,000平方メートル、つまり最も許可がかかりやすい数字なのか。
答えは、市街化区域では開発が現に多数行われるからです。そのすべてを許可にかけると行政も事業者も回らないため、小規模なものを外す必要がある。しかし同時に、市街化区域は人が密集して住む場所ですから、道路・排水施設・公園といった宅地としての最低限の水準は確保させなければならない。そこで宅地開発として意味のある規模である1,000平方メートルに線を引き、それ以上は33条の技術基準によるチェックを受けさせる設計になっています。許可が下りやすい代わりに基準は満たさせる、というのが市街化区域に対する制度の姿勢です。
市街化調整区域に面積要件がない理由
市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」です。抑制するというのは開発を望ましくないものとして扱うということであり、望ましくないものについて「この規模までなら自由にやってよい」という枠を設けるのは区域の目的と矛盾します。だからこそ29条1項1号は市街化調整区域を挙げていません。市街化調整区域で防ぎたいのは、小さな開発が積み重なることによるスプロール(無秩序な市街地の拡散)そのものであり、規模による除外はその防止と正面から衝突するからです。
この理由から入ると、「市街化調整区域は1,000平方メートル以上で許可」といった肢は、数字を思い出す前に区域の性格からして成り立たないと分かります。数字を覚えるのではなく、区域の目的から数字の不存在を導く。これが最も崩れにくい覚え方です。
3,000平方メートルは「決めていない区域」の中間値
非線引き都市計画区域は、都市計画区域でありながら市街化を進めるとも抑えるとも決めていない区域です。都市としての整備を予定している以上まったくの自由にはできませんが、市街化区域のように開発が集中しているわけでもありません。準都市計画区域も同様に、将来の支障を防ぐための最低限の網です。どちらも中間的な性格を持ち、それが市街化区域の1,000と区域外の10,000のちょうど中間である3,000平方メートルに表れています。
10,000平方メートルは「都市計画がない場所で拾う最低ライン」
区域外の10,000平方メートル、すなわち1ヘクタールは、四つの中で最も大きい数字です。都市計画によるコントロールが及ばない場所で、それでも社会的に無視できない規模の開発だけを捕捉するためのラインです。なお、都市計画法では1ヘクタールが「大規模」を意味する目安として他の規定でも使われており、後述する第二種特定工作物の規模要件も1ヘクタールです。この重複が試験での混同を生むので、後で切り分けます。
数字は規制の必要度の順に並んでいる
四つの数字は、市街化調整区域(基準なし、最も厳しい)、市街化区域(1,000)、非線引き都市計画区域および準都市計画区域(3,000)、区域外(10,000、最も緩い)の順に並びます。市街化調整区域を「数字がゼロに等しい」と位置づければ、0・1,000・3,000・10,000という一本の階段になり、その順序は行政がその区域の土地利用にどれだけ関与したいかの順序と一致します。
この節の要点
- 数字の並びは「その区域で市街化をどう扱うか」の反映であり、恣意的な数値ではない。
- 市街化調整区域に規模の除外がないのは、抑制すべき区域に「この規模まで自由」の枠を置けないから。
- 0・1,000・3,000・10,000は規制の強さの順に並ぶ階段として捉える。
条例による引下げはどこまでできるか
面積要件は政令で固定された数値ではなく、地域の実情に応じて条例で引き下げる仕組みが用意されています。原則の数字だけを覚えていると対応できない部分です。
根拠は施行令19条1項のただし書
施行令19条1項は本文で1,000平方メートル・3,000平方メートルという原則を定めたうえで、ただし書で条例による別段の定めを認めています。「市街化の状況により、無秩序な市街化を防止するため特に必要があると認められる場合」に、区域を限って規模を別に定められる、というものです。無条件の引下げではなく、また「区域を限り」ますから、市町村全域を一律に引き下げるのではなく対象区域を特定して定めることが前提になっています。
どの区域で使えるか
引下げが認められているのは、施行令19条1項が規模を定めている区域、すなわち市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域、準都市計画区域です。
市街化調整区域では使えません。そもそも規模の基準がなく、引き下げる対象が存在しないからです。都市計画区域および準都市計画区域の外でも使えません。29条2項の規模を定める施行令22条の2には、19条1項のようなただし書がないためです。区域外の10,000平方メートルは条例で動かせない固定値だと押さえてください。
下限は300平方メートル
引下げの限界は300平方メートルです。市街化区域なら300平方メートル以上1,000平方メートル未満の範囲で、非線引き都市計画区域と準都市計画区域なら300平方メートル以上3,000平方メートル未満の範囲で、条例により規模を定めることができます。したがって「条例で100平方メートルまで引き下げることができる」という肢は誤りです。300という数字は、区域を問わず共通の底として覚えておくと使い勝手がよくなります。
なお、三大都市圏の一定区域内にある市街化区域については施行令19条2項により500平方メートルが基準となりますが、この場合も引下げの下限は300平方メートルです。
引き上げることはできず、定めるのは都道府県
条例でできるのは引下げだけです。市街化区域の1,000平方メートルを2,000平方メートルに引き上げて許可の対象を狭めることはできません。条文が「無秩序な市街化を防止するため特に必要があると認められる場合」を要件としている以上、規制を緩める方向の定めは想定されていないからです。「条例で市街化区域の規模を3,000平方メートルとすることができる」という肢は引上げに当たるため誤りです。
条例を定めるのは都道府県ですが、指定都市等または事務処理市町村の区域内ではその市町村が定めます。開発許可の権限が移譲されている団体が面積要件の条例も担当するという整理で、「市町村が条例で定めることはできない」といった断定的な肢は誤りになります。
この節の要点
- 条例による引下げの根拠は施行令19条1項ただし書。市街化区域・非線引き都市計画区域・準都市計画区域で使える。
- 下限は300平方メートル。それより小さくはできない。
- 市街化調整区域と区域外では条例による引下げの仕組みがない。引上げもできない。
面積は何をどう数えるのか
数字を覚えていても、何の面積を数えるのかを取り違えると結論が変わります。
数えるのは「開発区域」の面積
都市計画法4条13項は「開発区域」を「開発行為をする土地の区域」と定義しており、面積要件で数えるのはこの開発区域の面積です。建築物の建築面積でも、延べ面積でも、建ぺい率や容積率の計算で使う敷地面積でもありません。区画形質の変更を行う土地の区域全体が対象です。建ぺい率・容積率の計算で使う面積との違いは、建ぺい率と容積率の基礎|計算の前提を固めるとあわせて確認しておくと混同を避けられます。
公共施設の予定地も含む
開発区域には、造成後に道路・公園・排水施設といった公共施設となる部分も含まれます。宅地として分譲される部分だけを数えるわけではありません。たとえば市街化区域で分譲宅地部分が900平方メートル、区画内道路が150平方メートルという計画であれば、開発区域は合計1,050平方メートルとなり、1,000平方メートル以上ですから許可が必要です。宅地部分だけを見て「1,000平方メートル未満だから不要」と処理すると誤ります。
一体の開発行為かどうかで結論が変わる
面積要件の潜脱として典型的なのが、一体の開発を形式的に分割して申請するやり方です。市街化区域で1,800平方メートルの土地を造成するとき、900平方メートルずつ二回に分ければ、それぞれ1,000平方メートル未満となって許可を免れるように見えます。
しかしこれは通りません。国土交通省の開発許可制度運用指針は、規模の判断にあたって物理的・計画的に一体性を持つ土地の造成を分割して扱うことを認めない立場を示しています。土地の位置関係が連続しているか、造成計画や工事の施行時期が一体といえるか、事業主体が実質的に同一か、といった要素が考慮されます。
複数の区域にまたがる場合
開発区域が二つ以上の区域にまたがることがあります。最も重要なのは、市街化調整区域の部分が少しでも含まれるケースです。市街化調整区域には規模による除外がありませんから、その部分について開発行為が行われる以上、面積の大小にかかわらず許可が必要になります。「市街化区域側が1,000平方メートル未満、調整区域側もわずかだから全体で不要」という処理は成り立ちません。
そのほかの組合せについては、開発許可制度運用指針が、複数の区域にわたる場合には最も小さい規模の基準により開発区域全体の面積で判断する扱いを示しています。これは政令の規定ではなく運用上の取扱いですので、宅建試験では「市街化調整区域が含まれれば許可が必要」という点だけ押さえておけば足ります。なお、開発行為は「区画形質の変更」(都市計画法4条12項)ですから、今回まったく手を加えない造成済みの土地が隣接していても、その部分は開発区域に含まれないのが原則です。
この節の要点
- 数えるのは開発区域(開発行為をする土地の区域、4条13項)の面積。道路・公園などの公共施設予定地も含む。
- 一体の開発を分割して申請しても、一の開発行為として全体の面積で判断される。
- 市街化調整区域の部分が含まれれば、面積にかかわらず許可が必要。
混同しやすい面積を切り分ける
似た数字を別の制度のものとして仕分けておくと、選択肢の数字が「開発許可の話ではない」と即座に判断できます。
二つの1ヘクタールを分ける
都市計画法には1ヘクタールという数字が二か所に出てきます。
一つ目は、本記事で扱ってきた29条2項・施行令22条の2の規模要件です。都市計画区域および準都市計画区域の外で、開発区域の面積が10,000平方メートル以上のときに許可が必要となる、許可の要否そのものを決める数字です。
二つ目は、第二種特定工作物の規模です。都市計画法4条11項を受けた施行令1条2項は、野球場、庭球場、陸上競技場、遊園地、動物園その他の運動・レジャー施設である工作物で、その規模が1ヘクタール以上のものを第二種特定工作物としています。墓園も1ヘクタール以上のものが該当します。こちらは許可の要否ではなく、そもそも開発行為に当たるかどうかを決める数字です。
この違いが決定的です。第二種特定工作物に当たらなければ、その建設のための土地の区画形質の変更は「開発行為」ではなく、面積要件を検討する場面に入りません。たとえば市街化調整区域で8,000平方メートルの野球場を建設する場合、1ヘクタール未満ですから第二種特定工作物に当たらず、開発許可は不要です。市街化調整区域には面積要件がないから許可が必要、と考えると誤ります。
ゴルフコースは面積を問わない
施行令1条2項1号はゴルフコースを、規模の限定なしに第二種特定工作物としています。1ヘクタール未満の小規模なものであっても第二種特定工作物です。野球場や庭球場は1ヘクタール以上のものだけが該当するのに対し、ゴルフコースだけは面積を問わない。この差が肢の作り分けに使われます。造成規模が大きく地形の改変や排水への影響が構造的に大きいため規模で切り分けない、という理解で覚えるとよいでしょう。
なお、コンクリートプラント、アスファルトプラント、クラッシャープラントなどは第一種特定工作物であり(施行令1条1項)、こちらにも面積の要件はありません。特定工作物の分類そのものは宅建の開発許可制度|建築確認との違いと頻出パターンを攻略で扱っています。
国土利用計画法の届出面積と混ぜない
面積の数字で最も混同しやすいのが、国土利用計画法の事後届出の面積です。同法23条は、市街化区域では2,000平方メートル以上、市街化区域を除く都市計画区域(市街化調整区域および非線引き都市計画区域)では5,000平方メートル以上、都市計画区域外では10,000平方メートル以上の土地について、権利取得者に届出義務を課しています。
開発許可が1,000・3,000・10,000であるのに対し、国土法は2,000・5,000・10,000です。どちらも市街化区域が最も小さく区域外が10,000平方メートルという点で似ているため記憶が混ざりやすいのですが、決定的な違いは市街化調整区域の扱いです。開発許可では市街化調整区域に面積要件がありませんが、国土法では市街化調整区域は「市街化区域を除く都市計画区域」に含まれ、5,000平方メートル以上という基準が働きます。市街化調整区域を見たときに「面積要件なし」と反射的に答えると国土法の問題で誤りますから、どちらの制度の話かを先に確定する癖をつけてください。法令上の制限の数字を横断的に整理する方法は法令上の制限の横断整理|制度をまたいで比較するにまとめてあります。
盛土規制法の500平方メートルと混ぜない
宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)では、宅地造成等工事規制区域内で許可が必要となる工事の一つとして、盛土または切土をする土地の面積が500平方メートルを超えるものが挙げられています。これは開発許可における三大都市圏の500平方メートルとまったく別の制度の数字であり、しかも盛土規制法は「500平方メートルを超える」、開発許可は「500平方メートル以上」です。以上と超えるの違いまで含めて別物として仕分けてください。盛土規制法の規制内容は宅地造成等規制の基礎|盛土規制法の許可と届出で扱っています。
許可基準に出てくる面積とも段階が違う
開発許可が必要と判断されたあと、許可を出すかどうかを決めるのが33条の技術基準です。ここにも施行令25条6号の0.3ヘクタール以上5ヘクタール未満といった面積が出てきますが、これは許可の要否ではなく許可の基準を満たすかどうかを決める数字です。29条の面積要件をクリアしてはじめて33条の土俵に上がる、という階層を意識します。
この節の要点
- 1ヘクタールは「区域外の許可要否」と「第二種特定工作物への該当性」の二か所に出る。
- ゴルフコースは面積を問わず第二種特定工作物。野球場等は1ヘクタール以上のみ。
- 国土法(2,000・5,000・10,000)と盛土規制法(500平方メートル超)は別制度の数字。
面積要件をクリアしても終わらない
面積要件は最初の関門ですが、唯一の関門ではありません。
規模を超えても29条1項2号以下で外れる
面積要件を満たして「許可が必要な規模」となった開発行為でも、29条1項2号以下に該当すれば許可は不要です。たとえば非線引き都市計画区域で5,000平方メートルの土地に農業を営む者の居住用建築物を建てるために造成する場合、面積は3,000平方メートル以上ですが、29条1項2号により許可は不要です。逆に市街化区域で同じことをしても、2号は市街化区域を対象に含めていないため、1,000平方メートル以上であれば許可が必要です。面積要件と適用除外は独立した関門であり、両方を通過してはじめて「許可が必要」という結論になります。2号以下の詳細は開発許可が不要な場合|三つの入口で判断するにあります。
規模に満たなくても他の規制はかかる
面積要件を下回って開発許可が不要になっても、その土地で自由に何でもできるわけではありません。市街化調整区域では43条の建築許可があり、開発許可を受けた区域以外で建築物を新築等する場合には原則として都道府県知事の許可が必要です。建築確認も別の手続で、開発許可が不要でも建築基準法6条の確認は必要です。両者の関係は開発許可と建築確認の違い|二つの手続を混同しない、建築確認の要件は建築確認が必要な建築物|規模と区域で判断するで整理しています。
判断の順序を固定する
許可の要否は次の順序で判断すると安定します。
- その行為は開発行為か(建築物または特定工作物のための区画形質の変更か。特定工作物なら第二種の1ヘクタール要件を確認する)。
- どの区域か。
- 面積要件を満たすか(市街化調整区域なら常に満たすものとして扱う。条例による引下げも確認する)。
- 29条1項2号以下の適用除外に当たらないか。
- 許可が不要でも、43条・建築確認・他法令の規制がかからないか。
特に1と2を飛ばして3から入ると、第二種特定工作物の事例で必ず誤ります。
試験での出題ポイント
面積要件の問われ方はいくつかの型に収束します。
数字を一つだけ入れ替える型
最も基本的な型です。「市街化区域では3,000平方メートル以上の開発行為に許可が必要」「非線引き都市計画区域では1,000平方メートル以上」といったように、四つの数字のうち一つだけを別の区域のものと入れ替えます。対処法は、区域名を読んだ時点で先に自分の中の数字を確定させ、そのあと選択肢の数字と照合することです。選択肢の数字を先に読むと、見慣れた数字であるために違和感が生じにくくなります。
市街化調整区域に面積の基準を持ち込む型
間違えやすい型です。「市街化調整区域内において1,000平方メートルの開発行為を行う場合、許可を受けなければならない」という肢は結論としては正しいのですが、そこに「500平方メートルであれば許可は不要である」と続けて誤りにします。「市街化調整区域では、3,000平方メートル未満の開発行為については許可を要しない」とストレートに書く形もあります。いずれも、29条1項1号に市街化調整区域が列挙されていないという条文の事実で切れます。
条例の引下げ幅を誤らせる型
「条例で、市街化区域における規模を100平方メートルまで引き下げることができる」といった形で、下限の300平方メートルを崩す型です。逆方向として「条例で市街化区域の規模を3,000平方メートルに引き上げることができる」という形もあります。引下げのみで、下限は300平方メートル。この二点を固定しておけば両方に対応できます。
また「市街化調整区域について条例で面積を定めることができる」という肢も出ます。市街化調整区域には引き下げるべき原則規模がないため誤りです。
500平方メートルの適用範囲を広げる型
「三大都市圏では500平方メートル以上で許可が必要」と一般化する肢です。正確には、首都圏整備法の既成市街地・近郊整備地帯、近畿圏整備法の既成都市区域・近郊整備区域、中部圏開発整備法の都市整備区域内にある市街化区域に限られます。
三大都市圏の中でも、これらの区域外にある市街化区域は原則どおり1,000平方メートルです。また、三大都市圏内であっても市街化調整区域や非線引き都市計画区域には500平方メートルは適用されません。「三大都市圏なら500」という粗い覚え方をしていると、この型に対応できません。
区域外と準都市計画区域の扱いをずらす型
「都市計画区域外においては、開発行為について開発許可を受ける必要はない」という肢は、29条2項により10,000平方メートル以上であれば許可が必要ですから誤りです。逆に「規模にかかわらず開発許可が必要」も誤りで、区域外は規制ゼロでも全面規制でもありません。
「準都市計画区域内においては、10,000平方メートル以上の開発行為に許可が必要である」という肢も出ます。準都市計画区域は29条1項の対象で3,000平方メートルが基準ですから誤りです。面積要件については非線引き都市計画区域と同じ、と紐づけて覚えるのが確実です。
特定工作物の面積と混ぜる型
「市街化調整区域内において、5,000平方メートルの野球場を建設するために土地の区画形質の変更を行う場合、開発許可が必要である」という肢が典型です。5,000平方メートルは1ヘクタール未満なので第二種特定工作物に当たらず、その建設のための区画形質の変更は開発行為に当たりませんから、開発許可は不要で誤りです。市街化調整区域という語に反応して「面積要件がないから必要」と処理すると落とします。
ゴルフコースに置き換えた形も出ます。「5,000平方メートルのゴルフコース」であれば面積を問わず第二種特定工作物ですから開発行為に当たり、市街化調整区域には面積要件がないため開発許可が必要です。同じ5,000平方メートルでも結論が逆になります。
面積要件と適用除外を混ぜる型
「市街化区域内において、農業を営む者の居住用建築物を建築するために1,500平方メートルの開発行為を行う場合、開発許可を受ける必要はない」という肢です。29条1項2号の農林漁業の除外は市街化区域には適用されず、1,500平方メートルは1,000平方メートル以上ですから開発許可が必要で、誤りです。
「以上」と「超える」をずらす型
「市街化区域内において、1,000平方メートルを超える開発行為を行う場合に許可が必要である」という肢です。正しくは1,000平方メートル以上ですから、ちょうど1,000平方メートルの場合を取りこぼす点で誤りです。面積の基準は原則としてすべて「以上」で、条文の文言どおりに覚えてください。数字まわりの言い回しの詰め方は法令上の制限の暗記法|数字と手続を落とさないでも扱っています。
覚え方・整理の仕方
区域の性格から数字を導き、「1・3・10」で固定する
暗記が飛んだときは、次の順で自問すると復元できます。その区域は市街化を抑えたい区域か。抑えたいなら市街化調整区域で、規模の除外はない。市街化を進める区域か。進めるなら市街化区域で1,000平方メートル。どちらとも決めていない都市計画区域、または都市計画区域外に置いた準備的な網か。それなら3,000平方メートル。都市計画のコントロールが及ばない場所か。それなら10,000平方メートル。数字を思い出そうとするのではなく、区域の目的を思い出す。これが最も安定します。
覚える数字は実質的に三つです。桁を落として「1・3・10」と並べ、その前に市街化調整区域という空欄を置く。空欄は「除外なし=常に許可」を意味します。区域を規制の強い順に並べると数字が単調に増えるため、順序と数字がセットで固定されます。
300は共通の底、500は読み替え
条例による引下げの下限300平方メートルは、市街化区域でも非線引き都市計画区域でも準都市計画区域でも共通です。「原則は区域ごとに違うが、条例で下げられる底はどこでも300」と一文で覚え、これに「引下げのみ、引上げ不可」「市街化調整区域と区域外には引下げの仕組みなし」を足せば、条例まわりは完成です。
三大都市圏の500平方メートルは、施行令19条2項が1項の1,000平方メートルを読み替える構造ですから、独立した原則ではなく市街化区域の特則です。「市街化区域は1,000。ただし三大都市圏の指定区域内にある市街化区域だけ500」という一文の形で、主語が市街化区域であることごと覚えてください。
二つの1ヘクタールを段階で分ける
1ヘクタールは、開発行為に当たるかどうかを決める場面(第二種特定工作物)と、許可が必要かどうかを決める場面(区域外の規模要件)の二か所に出てきます。前者は「そもそも土俵に上がるか」、後者は「土俵の上で許可がいるか」です。野球場・庭球場・遊園地・墓園といった語が出てきたら第二種特定工作物の1ヘクタール、区域外という語が出てきたら規模要件の1ヘクタール、と反射的に切り替える練習をしてください。都市計画法全体の数字は都市計画法の数字まとめ|期間と面積を一度に押さえるでも横断確認できます。
理解度チェッククイズ
第1問 市街化調整区域内において、500平方メートルの土地について開発行為を行う場合、規模が小さいため開発許可を受ける必要はない。
答え:×。都市計画法29条1項1号は、規模による除外の対象として市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域、準都市計画区域を挙げており、市街化調整区域は含まれていません。市街化調整区域では規模の大小にかかわらず、開発行為であれば原則として開発許可が必要です。500平方メートルは三大都市圏の一定区域内にある市街化区域の基準で、市街化調整区域とは無関係です。
第2問 都道府県は、条例で、市街化区域における開発許可を要する規模を200平方メートル以上と定めることができる。
答え:×。施行令19条1項ただし書による条例の引下げは300平方メートルが下限で、200平方メートルまで引き下げることはできません。なお引上げはできず、市街化調整区域および都市計画区域・準都市計画区域外については、条例で規模を定める仕組み自体がありません。
第3問 準都市計画区域内において、5,000平方メートルの開発行為を行おうとする者は、原則として都道府県知事の開発許可を受けなければならない。
答え:○。準都市計画区域は都市計画法29条1項の対象であり、施行令19条1項により規模は3,000平方メートルです。5,000平方メートルはこれを超えますから、29条1項2号以下の適用除外に当たらない限り開発許可が必要です。区域外と混同して10,000平方メートルを基準にすると誤ります。
第4問 市街化調整区域内において、8,000平方メートルの野球場を建設する目的で土地の区画形質の変更を行う場合、市街化調整区域には面積要件がないため開発許可が必要である。
答え:×。施行令1条2項により、野球場が第二種特定工作物となるのは規模が1ヘクタール以上の場合です。8,000平方メートルは第二種特定工作物に当たらず、その建設を目的とする区画形質の変更は都市計画法4条12項の開発行為に当たりません。開発行為でない以上、面積要件を検討する場面に入らず、許可は不要です。ゴルフコースであれば面積を問わず第二種特定工作物となるため、結論は逆になります。
第5問 都市計画区域および準都市計画区域外の区域内において、8,000平方メートルの開発行為を行う場合、開発許可を受ける必要はない。
答え:○。都市計画法29条2項および施行令22条の2により、区域外で許可が必要となるのは10,000平方メートル(1ヘクタール)以上の開発行為ですから、8,000平方メートルでは開発許可は不要です。なお、この10,000平方メートルは条例で引き下げることができない固定値です。
まとめ
開発許可の面積要件は、市街化区域1,000平方メートル、非線引き都市計画区域と準都市計画区域3,000平方メートル、都市計画区域および準都市計画区域外10,000平方メートル、市街化調整区域は基準なしという四つの整理に集約されます。根拠条文は都市計画法29条1項1号と2項、規模を定めるのは施行令19条と22条の2です。
この数字は、その区域で市街化をどう扱うかという一本の軸の上に並んでいます。抑制すべき区域には規模の除外を置かず、進めるべき区域には実務上意味のある水準で線を引き、都市計画のコントロールが及ばない場所では大規模なものだけを拾う。この構造から数字を導けるようにしておけば、選択肢で数字が入れ替わっていても違和感で気づけます。
条例による引下げは市街化区域・非線引き都市計画区域・準都市計画区域で下限300平方メートルまで、引上げは不可。数えるのは開発区域の面積で、公共施設予定地も含みます。開発行為に当たるかを先に確かめ、区域を確定し、面積を照合し、適用除外を見る。この順序を固定すれば、面積要件は安定した得点源になります。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、開発許可の区域と規模を組み合わせた過去問を論点別にまとめて演習できます。
都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。