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造成宅地防災区域と特定盛土等規制区域|工事規制区域との違い

法令上の制限 読了 約63分

盛土規制法の5章から8章を条文で読み解く。特定盛土等規制区域の30日前届出と許可、造成宅地防災区域の指定基準と解除規定、罰則の階層まで。

目次

    宅地造成及び特定盛土等規制法(以下「盛土規制法」)は、宅地造成等工事規制区域だけの法律ではない。条文の分量でいえば、規制区域を扱う第三章・第四章よりも、特定盛土等規制区域を扱う第五章・第六章のほうが長い。そして造成宅地防災区域を扱う第七章・第八章には、他の二つの区域には存在しない規定が置かれている。

    本記事は、この法律の第五章から第八章までを担当する。法律の全体像、旧宅地造成等規制法からの改正経緯、法2条の定義、宅地造成等工事規制区域の指定(法10条)と同区域内の許可規模は 盛土規制法(宅地造成等規制法)の全体像 が扱っているので、そちらを先に読んでほしい。ここでは、規制区域の外側にかかる二つの区域を、条文の項番号まで降りて追いかける。

    先に結論を言う。特定盛土等規制区域は「届出が原則、大規模なものだけが許可」という二段構えで、その届出は勧告と措置命令を背負っており、放置していい届出ではない。造成宅地防災区域は工事を止める区域ではなく、すでに出来上がっている造成宅地の危険を扱う区域で、この法律で唯一「指定を解除するものとする」という条文を持っている。この二点が、宅地造成等工事規制区域との決定的な違いだ。

    なお、条文は令和8年度試験の基準日である2026年4月1日時点で施行されているもの(法は 336AC0000000191_20250601_504AC0000000068、施行令は 337CO0000000016_20230526_504CO0000000393)による。

    特定盛土等規制区域はどこに、どういう手順で指定されるか

    章立てが「指定する章」と「規制する章」の3ペアでできている

    条文を読む前に、法律の骨組みを見ておくと迷わない。盛土規制法の第三章から第八章までは、区域を指定する章と、その区域内の規制を定める章のペアが3組並ぶという構造になっている。

    第三章「宅地造成等工事規制区域」は法10条だけの短い章で、指定の手続しか書いていない。区域内で何が規制されるかは、次の第四章「宅地造成等工事規制区域内における宅地造成等に関する工事等の規制」(法11条から法25条)に置かれている。同じ形が繰り返される。第五章「特定盛土等規制区域」は法26条だけ、第六章(法27条から法44条)がその区域内の規制。第七章「造成宅地防災区域」は法45条だけ、第八章「造成宅地防災区域内における災害の防止のための措置」(法46条から法48条)がその区域内の措置。そして第九章が雑則(法49条から法54条)、第十章が罰則(法55条から法61条)である。

    この3ペアが見えていると、「法26条は指定の条文だから規制の中身は書いていない」「法45条を読んでも所有者の義務は出てこない、それは法46条だ」という当たり前のことが、条文を開く前にわかる。本記事はこのうち第五章から第八章まで、つまり宅地造成等工事規制区域の外側にかかる部分を担当する。

    法26条1項は「宅地造成等工事規制区域以外の土地の区域」から始まる

    法26条1項は、都道府県知事が基本方針に基づき、かつ基礎調査の結果を踏まえて、宅地造成等工事規制区域以外の土地の区域であって、一定の条件からみて特定盛土等または土石の堆積が行われた場合に居住者等の生命または身体に危害を生ずるおそれが特に大きいと認められる区域を、特定盛土等規制区域として指定することができる、と定める。

    冒頭の「宅地造成等工事規制区域以外の土地の区域」という一句が、この条文でいちばん問われる。二つの区域は重ならない。同じ土地が両方の区域に指定されることはないし、宅地造成等工事規制区域の中に特定盛土等規制区域を切ることもできない。試験ではここを反転させて「特定盛土等規制区域は、宅地造成等工事規制区域の内外を問わず指定できる」という肢が作られる。誤りである。

    自然的条件と社会的条件という両輪

    法26条1項が挙げる判断材料は二つある。ひとつは自然的条件で、条文は「土地の傾斜度、渓流の位置その他の自然的条件」と書く。もうひとつは社会的条件で、「周辺地域における土地利用の状況その他の社会的条件」と書く。傾斜がきつく渓流が近いというだけでは足りず、その下流や周辺に人が住んでいるかどうかという土地利用の状況が併せて考慮される。

    これに対して、宅地造成等工事規制区域を定める法10条1項は「宅地造成等に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地若しくは市街地となろうとする土地の区域又は集落の区域」という書き方をしており、傾斜度や渓流といった自然的条件を明示していない。市街地・集落という場所の性質で切っているのが法10条、地形と土地利用の組合せで切っているのが法26条だ、と対比して覚えるとよい。

    「市街地等区域」という定義語は法10条1項から借りている

    法26条1項には「市街地等区域その他の区域の居住者その他の者」という表現が出てくる。この「市街地等区域」は法26条では定義されていない。定義は法10条1項の括弧書きにあり、そこで「市街地若しくは市街地となろうとする土地の区域又は集落の区域(これらの区域に隣接し、又は近接する土地の区域を含む。第五項及び第二十六条第一項において『市街地等区域』という。)」と定められている。つまり法26条は、法10条が作った定義語をそのまま借用している。

    一方、「居住者等」という語は法26条1項の括弧書きが作った定義語で、「市街地等区域その他の区域の居住者その他の者(第五項及び第四十五条第一項において『居住者等』という。)」とある。この語は法45条1項(造成宅地防災区域の指定)でも使われる。定義語がどの条から来ているかを追うと、第五章と第七章が同じ語彙でつながっていることが見えてくる。

    危害の基準が一段高い

    法10条1項が「災害が生ずるおそれが大きい」と書くのに対し、法26条1項は「居住者等の生命又は身体に危害を生ずるおそれが特に大きい」と書く。「災害」ではなく「生命又は身体に対する危害」であり、「大きい」ではなく「特に大きい」である。宅地造成等工事規制区域の外に例外的に規制を及ぼす区域なので、要件が一段重くなっていると理解しておけばよい。

    2項から6項までの手続

    法26条2項以下の手続は、法10条2項以下とほぼ同じ形をしている。

    2項は、指定しようとするときは関係市町村長の意見を聴かなければならない。任意ではなく義務である。

    3項は、指定は「この法律の目的を達成するため必要な最小限度のものでなければならない」。必要以上に広く指定してはならないという歯止めで、規制区域の法10条3項と同じ文言だ。

    4項は、指定をするときは主務省令で定めるところにより当該特定盛土等規制区域を公示するとともに、その旨を関係市町村長に通知しなければならない。

    5項は、市町村長の側からの申出権である。市町村長は、特定盛土等または土石の堆積に伴う災害により当該市町村の区域の居住者等の生命または身体に危害を生ずるおそれが特に大きいため指定をする必要があると認めるときは、その旨を都道府県知事に申し出ることができる。あくまで「申し出ることができる」であって、市町村長が指定するわけでも、申出に知事が拘束されるわけでもない。

    6項は効力発生時期で、「第一項の指定は、第四項の公示によつてその効力を生ずる」。通知ではなく公示が効力発生要件である点が、細かく問われうる。

    指定権者は都道府県知事、都市計画区域とは連動しない

    指定権者は都道府県知事である。厳密にいうと、法5条1項の括弧書きが「都道府県知事(指定都市又は中核市の区域内の土地については、それぞれ指定都市又は中核市の長。第五十条を除き、以下同じ。)」と定めており、この読替えが法5条以降の全条文に及ぶ。だから法26条の「都道府県知事」も、指定都市・中核市の区域内では当該市の長を指す。読替えから外れているのが法50条(市町村長の意見の申出)だけなのは、そこで意見を申し出る側が市町村長だからで、読み替えると申出先と申出人が同一になってしまうためである。

    ここで注意したいのは、この区域が都市計画区域や区域区分と連動していないことだ。市街化区域・市街化調整区域の線引きについては 市街化区域と市街化調整区域 が扱っているが、特定盛土等規制区域はその線引きとは無関係に、地形と土地利用の状況だけを見て指定される。都市計画区域外にも、区域区分が定められていない都市計画区域にも指定できる。

    もうひとつ、法2条3号の「特定盛土等」は「宅地又は農地等において行う盛土その他の土地の形質の変更」と定義されている。農地・採草放牧地・森林(法2条1号括弧書きの「農地等」)が対象地に含まれるので、農地で行う盛土がこの法律の規制にかかることがある。もっとも、盛土規制法の届出や許可を受けたからといって農地法の許可が要らなくなるわけではない。農地法3条・4条・5条の許可は 農地法の3条・4条・5条 が扱うとおり別個にかかる。二つの法律の手続が重畳するのが原則で、後述する都市計画法との「みなし」のような調整規定は、農地法との間には置かれていない。

    着手30日前の届出は、勧告と命令を背負った届出である

    法27条1項の届出

    特定盛土等規制区域内における規制の入口は、許可ではなく届出である。法27条1項は、「特定盛土等規制区域内において行われる特定盛土等又は土石の堆積に関する工事については、工事主は、当該工事に着手する日の三十日前までに、主務省令で定めるところにより、当該工事の計画を都道府県知事に届け出なければならない」と定める。

    主語は工事主である。法2条7号は工事主を「宅地造成、特定盛土等若しくは土石の堆積に関する工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないで自らその工事をする者」と定義しており、請負人である工事施行者(法2条8号)とは別人格になる。届出義務者を工事施行者に置き換える肢は誤りだ。

    対象行為に注意したい。法27条1項が挙げるのは「特定盛土等又は土石の堆積」であって、宅地造成が入っていない。宅地造成(法2条2号)は宅地以外の土地を宅地にするための形質変更であり、宅地造成等工事規制区域の規制対象語である「宅地造成等」(法10条1項括弧書きで宅地造成・特定盛土等・土石の堆積の総称と定義)に含まれるが、第六章では使われていない。

    ただし、ここで一段深く読む必要がある。同じ物理的な工事が、定義上「宅地造成」に当たらなくても「特定盛土等」に当たることはある。法2条3号の特定盛土等は「宅地又は農地等において行う盛土その他の土地の形質の変更で、当該宅地又は農地等に隣接し、又は近接する宅地において災害を発生させるおそれが大きいものとして政令で定めるもの」であって、「宅地にするために行う」という目的の限定がない。したがって、特定盛土等規制区域内で行われる盛土が令3条の規模に達していれば、それが結果として宅地を造る工事であるかどうかにかかわらず、特定盛土等として法27条の届出対象になりうる。「特定盛土等規制区域内で宅地造成をするには知事の許可が必要」という肢が誤りなのは、そこで使われている条文上の概念が第六章に存在しないからであって、宅地を造る工事がこの区域で野放しになるという意味ではない。

    どこまで重なるかは、法2条1号の土地の三分類を当てはめれば正確に出る。1号は「宅地」を、農地等(農地・採草放牧地・森林)と公共施設用地(道路・公園・河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供されている土地)以外の土地と定義する。裏返せば、この国の土地は宅地・農地等・公共施設用地の三つに尽きる。特定盛土等(法2条3号)は「宅地又は農地等において行う」ものなので、三つのうち公共施設用地だけが外れる。他方、宅地造成(法2条2号)は「宅地以外の土地を宅地にする」ものなので、農地等または公共施設用地を宅地に変える工事である。二つを重ねると、農地等を宅地にする盛土は宅地造成であると同時に特定盛土等でもあり、第六章では後者として捕まる。これに対し、公共施設用地を宅地にする盛土は宅地造成ではあるが特定盛土等ではないので、特定盛土等規制区域では捕まらない。「宅地造成という語が第六章にない」ことの実質的な穴は、この公共施設用地の場合に限られる。

    届出が不要になる工事

    法27条1項ただし書は、「特定盛土等又は土石の堆積に伴う災害の発生のおそれがないと認められるものとして政令で定める工事」を除外する。この政令は令27条で、その中身は「第五条第一項各号に掲げるもの」とだけ書かれている。令5条1項は宅地造成等工事規制区域の許可不要工事(法12条1項ただし書)を定めた条で、鉱山保安法13条1項の届出に係る工事、鉱業法63条1項の届出等に係る施業案の実施に係る工事、採石法33条等の認可に係る工事、砂利採取法16条等の認可に係る工事、そしてこれらと同等以上に災害のおそれがないと認められるものとして主務省令で定めるもの、の5号構成である。

    つまり除外リストは二つの区域で共通だ。他法令の許認可体系がすでに保安を担保している工事を重ねて規制しない、という発想で、区域が違っても発想は変わらない。

    届出の後に知事が動く三つの局面

    法27条を「届出だから出せば終わり」と読むと、この条文の2項以下を落とす。

    2項は、知事は届出を受理したときは、速やかに、工事主の氏名または名称、工事が施行される土地の所在地その他主務省令で定める事項を公表するとともに、関係市町村長に通知しなければならない、と定める。届出情報が公表される仕組みは、盛土の所在を周辺に知らせるという発想で、規制区域側の法21条2項にも同じ規定がある。

    3項が実質的な核心である。知事は、届出があった場合において、届出に係る工事の計画について災害の防止のため必要があると認めるときは、当該届出を受理した日から三十日以内に限り、届出をした者に対し、当該工事の計画の変更その他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。「30日」がここでも出てくるが、意味が違う。法27条1項の30日は「着手日の30日前まで」という事前の期間であり、3項の30日は「受理した日から30日以内」という知事側の権限行使期間である。前者は工事主の義務の起算、後者は知事の勧告の除斥期間だ。この二つを混同させる肢は定番なので、必ず区別する。

    4項は、知事は3項の勧告を受けた者が正当な理由がなくて勧告に係る措置をとらなかったときは、その者に対し、相当の期限を定めて、当該勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。勧告は行政指導だが、従わなければ措置命令という行政処分に切り替わる。そしてこの命令に違反すると、法56条3号により1年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科され、法人の場合は法60条2号により1億円以下の罰金という重い両罰が働く。

    届出制でありながら、勧告・命令・刑罰という梯子が最後までかかっている。この構造を条文で押さえておくと、「届出制なので知事は工事内容に関与できない」「届出には罰則がない」という肢を一目で切れる。

    変更の届出(法28条)

    いったん届出をした後に計画を変えるときは、法28条1項が働く。届出をした者は、届出に係る工事の計画の変更(主務省令で定める軽微な変更を除く)をしようとするときは、当該変更後の工事に着手する日の三十日前までに、変更後の工事の計画を知事に届け出なければならない。起算点が「変更後の工事に着手する日」である点に注意したい。当初の着手日ではない。

    そして法28条3項が、法27条2項から4項までを準用する。つまり変更の届出についても、公表と関係市町村長への通知、受理から30日以内の勧告、勧告に従わない場合の措置命令が、そのまま働く。準用の範囲は「2項から4項まで」であって、1項(届出そのもの)ではないことにも注意しておきたい。

    届出義務に違反した場合の罰則は、命令違反とは別に用意されている。法57条は、「第二十七条第一項又は第二十八条第一項の規定による届出をしないでこれらの規定に規定する工事を行い、又は虚偽の届出をしたとき」は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金とする。命令違反の法56条(300万円)より罰金額が低いが、拘禁刑の上限は同じ1年である。届出をしなかったこと自体が独立の犯罪類型として置かれている、という点が重要だ。

    届出制にも濃淡がある

    許可・届出・協議という制度類型の中で法27条がどこに位置するかは、法令上の制限の横断整理 で軸を立てて眺めるとつかみやすい。ここでは、同じ「着手30日前までの届出」を持つ他制度と比べておく。

    都市計画法58条の2の届出、すなわち地区計画の区域内で土地の区画形質の変更や建築物の建築等をしようとする者が行う届出も、行為に着手する日の30日前までという同じ期間を持つ。詳細は 地区計画 に譲るが、こちらは勧告止まりで措置命令の規定がない。同じ30日前届出でも、背後にぶら下がる強制力が違う。

    届出に勧告がぶら下がる型としては、国土利用計画法の事後届出も同型である。国土利用計画法の届出 が扱うとおり、こちらは契約締結後2週間以内の事後届出で、利用目的について勧告ができ、従わないときは公表という制裁になる。刑罰による裏づけがある盛土規制法の措置命令とは、担保の仕方が異なる。

    さらに、注視区域・監視区域では届出が事前になり、届出後の待機期間が設けられる。注視区域・監視区域の事前届出 と読み比べると、「事前届出+待機期間」「事前届出+期間限定の勧告権」「事後届出+勧告」という三つの設計が並び、届出制と一口に言っても濃淡があることが見えてくる。

    大規模なものだけが許可に上がる:四つの許可基準と手続の順序

    法30条1項が拾う範囲

    法30条1項は、「特定盛土等規制区域内において行われる特定盛土等又は土石の堆積(大規模な崖崩れ又は土砂の流出を生じさせるおそれが大きいものとして政令で定める規模のものに限る。)に関する工事については、工事主は、当該工事に着手する前に、都道府県知事の許可を受けなければならない」と定める。ただし書で除外される工事は、令29条1項により令5条1項各号、つまり法27条のただし書と同じリストである。

    規制区域の法12条1項が「宅地造成等に関する工事」を規模の限定なしに許可対象としているのに対し、法30条1項は括弧書きで規模を絞っている。ここが二段構えの分岐点だ。特定盛土等規制区域では、小規模なものは法27条の届出で処理し、大規模なものだけが法30条の許可に上がる。

    法30条5項は、この二階建てを条文で整理している。「第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る工事については、第二十七条第一項の規定による届出をすることを要しない」。許可と届出が二重にかかることはない。

    法30条2項の四つの許可基準

    許可基準は法30条2項の4号で、これが法12条2項と同じ構造になっている。違うのは対象行為を指す語(法12条2項は「宅地造成等」、法30条2項は「特定盛土等又は土石の堆積」)と、1号が参照する技術的基準の条番号(法13条か法31条か)だけで、掲げる基準そのものは同じ四つだ。なお柱書は「次に掲げる基準に適合しないと認めるとき、又はその申請の手続がこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定に違反していると認めるときは、同項の許可をしてはならない」という禁止形で書かれている。基準を満たせば許可しなければならないという羈束処分の書き方であって、知事に「基準を満たしていても許可しない」裁量を与える条文ではない。

    1号は、当該申請に係る工事の計画が法31条の技術的基準に適合するものであること。法31条1項は、擁壁等の設置その他災害を防止するため必要な措置が講ぜられたものでなければならないとし、その技術的基準を政令に委ねる。令30条1項は規制区域側の令7条から令17条まで・令20条を準用する形で、二区域の技術的基準を揃えている。法31条2項は、講ずべき措置のうち政令で定めるものの工事は政令で定める資格を有する者の設計によらなければならないとし、令31条が令21条・令22条を引く。

    2号は、工事主に当該工事を行うために必要な資力及び信用があること。

    3号は、工事施行者に当該工事を完成するために必要な能力があること。2号と3号で名宛人と要求内容が入れ替わっている。工事主には金と信用、工事施行者には施工能力。ここを逆にした肢が作られる。

    4号は、当該工事をしようとする土地の区域内の土地について「所有権、地上権、質権、賃借権、使用貸借による権利又はその他の使用及び収益を目的とする権利を有する者の全ての同意」を得ていること。列挙されている権利の幅が広い。所有権だけでなく地上権・質権・賃借権、さらに使用貸借による権利まで含む。そして要求されるのは「全ての同意」である。

    「全ての同意」の例外と、開発許可との違い

    法30条2項4号には括弧書きの除外がある。「土地区画整理法第二条第一項に規定する土地区画整理事業その他の公共施設の整備又は土地利用の増進を図るための事業として政令で定めるものの施行に伴うものを除く」。この政令が令29条2項で、令5条2項各号を引く。列挙されているのは、土地区画整理事業、土地収用法26条1項の告示に係る事業、都市再開発法の第一種市街地再開発事業、大都市地域住宅等供給促進法の住宅街区整備事業、密集市街地整備法の防災街区整備事業、所有者不明土地特措法の地域福利増進事業のうち使用権設定土地において行うもの、の6つである。

    いずれも、事業の枠組みの中で権利関係の調整がすでに済んでいる(あるいは強制取得の手続を経ている)事業だ。先頭に置かれた土地区画整理事業については 土地区画整理法 を参照してほしい。換地処分によって権利関係が法律上組み替えられる事業に、重ねて全員同意を要求する意味がないという整理である。

    ここで対比しておきたいのが開発許可だ。開発許可制度 が扱うとおり、都市計画法33条1項14号の基準は、当該開発行為をしようとする土地等について「相当数の同意」を得ていることである。全員ではない。盛土規制法が全員同意を要求するのに対し、開発許可は相当数で足りる。この差を入れ替えて、「盛土規制法30条1項の許可を受けるには相当数の同意で足りる」あるいは「開発許可には権利者全員の同意が必要」とする肢が作られる。盛土規制法は全員、開発許可は相当数、と口に出して覚えてしまうのが早い。

    許可の前後に置かれた手続

    法29条は住民への周知を定める。工事主は、次条第一項の許可の申請をするときは、あらかじめ、工事の施行に係る土地の周辺地域の住民に対し、説明会の開催その他の工事の内容を周知させるため必要な措置を講じなければならない。

    条文が「次条第一項の許可の申請をするときは」と書いていることから、この義務がかかるのは法30条1項の許可申請の場面に限られる。法27条1項の届出をするだけの工事には及ばない。規制区域側でも同じ建て付けで、法11条が「次条第一項の許可の申請をするときは」として法12条1項の許可申請だけに周知義務を課している。届出工事にも説明会が必要だとする肢は誤りだ。

    法30条3項は、知事は許可に、工事の施行に伴う災害を防止するため必要な条件を付することができると定める。4項は、許可をしたときは速やかに工事主の氏名等を公表し、関係市町村長に通知しなければならないとする。届出の場合(法27条2項)と同じく、許可情報も公表される。

    法33条は許可証である。1項で知事は申請があったときは遅滞なく許可または不許可の処分をしなければならず、2項で許可のときは許可証を交付し、不許可のときは文書で通知する。そして3項が実務上いちばん効く。「特定盛土等又は土石の堆積に関する工事は、前項の許可証の交付を受けた後でなければ、することができない」。工事着手の起点は許可の日ではなく許可証の交付である。規制区域側の法14条3項も同じ文言だ。4項で許可証の様式は主務省令に委ねられる。

    条例による上乗せは「厳しくする方向」にしか動かない

    法32条は、都道府県は法30条1項の許可について、災害を防止するために必要があると認める場合においては、同項の政令で定める規模を「当該規模未満で条例で定める規模」とすることができる、と定める。条例で許可が必要になる規模を引き下げられる、つまり規制対象を広げられるということだ。逆に引き上げて規制を緩めることはできない。

    同じ形の上乗せ規定が二つある。法37条4項は中間検査について、政令で定める規模を当該規模未満で条例で定める規模とし、または特定工程として条例で定める工程を追加することができるとする。法38条2項は定期報告について、規模を当該規模未満とし、主務省令で定める期間を当該期間より短い期間で条例で定め、報告事項に条例で必要な事項を付加することができるとする。

    いずれも「未満」「より短い」「付加」という語で、厳格化の方向にしか動けないように書かれている。「条例で許可を要する規模を引き上げることができる」という肢は、この一語を見れば切れる。

    「2・5・5・5・3000」の出所を政令の参照連鎖で辿る

    数字は覚えるものではなく、辿るもの

    盛土規制法の数字が覚えにくいのは、似た数字が複数の制度に散らばっているように見えるからだ。しかし施行令を開くと、実際には一組の数字を複数の条が引用しているだけだとわかる。出所は令23条である。

    令23条は「中間検査を要する宅地造成又は特定盛土等の規模」という見出しで、法18条1項の政令で定める規模として5つを挙げる。

    1号は、盛土であって、当該盛土をした土地の部分に高さが2メートルを超える崖を生ずることとなるもの。2号は、切土であって、当該切土をした土地の部分に高さが5メートルを超える崖を生ずることとなるもの。3号は、盛土と切土とを同時にする場合において、当該盛土および切土をした土地の部分に高さが5メートルを超える崖を生ずることとなるときにおける当該盛土および切土(1号2号に該当するものを除く)。4号は、1号または3号に該当しない盛土であって、高さが5メートルを超えるもの。5号は、いずれにも該当しない盛土または切土であって、当該盛土または切土をする土地の面積が3,000平方メートルを超えるもの。

    「2・5・5・5・3000」という並びは、この5号がそのまま数字になったものだ。

    令23条を引用している四つの条

    ここからが本題である。令23条を丸ごと引用している政令の条が、令23条自身を含めて五つの制度で使われている

    令25条1項は、「法第十九条第一項の政令で定める規模の宅地造成又は特定盛土等は、第二十三条各号に掲げるものとする」。宅地造成等工事規制区域における定期報告の規模である。

    令28条1項は、「法第三十条第一項の政令で定める規模の特定盛土等は、第二十三条各号に掲げるものとする」。特定盛土等規制区域における許可の規模である。

    令32条1項は、「法第三十七条第一項の政令で定める規模の特定盛土等は、第二十三条各号に掲げるものとする」。特定盛土等規制区域における中間検査の規模である。

    令33条1項は、「法第三十八条第一項の政令で定める規模の特定盛土等は、第二十三条各号に掲げるものとする」。特定盛土等規制区域における定期報告の規模である。

    つまり、規制区域の中間検査、規制区域の定期報告、特定盛土等規制区域の許可、特定盛土等規制区域の中間検査、特定盛土等規制区域の定期報告は、すべて同じ一組の数字で動いている。五つの制度に五つの数字表があるのではなく、令23条という一つの表を四つの条が指しているだけだ。この参照関係を先に頭に入れれば、覚えるべきは「2・5・5・5・3000」の一組と、「令23条を四か条が引用している」という事実だけになる。

    令3条との対照

    これに対して令3条は、法2条2号(宅地造成)および3号(特定盛土等)の「政令で定める土地の形質の変更」を定める条である。数字は「盛土で高さ1メートル超の崖」「切土で高さ2メートル超の崖」「同時に行い高さ2メートル超の崖」「1号または3号に該当しない盛土で高さ2メートル超」「いずれにも該当しない盛土または切土で面積500平方メートル超」で、いわゆる「1・2・2・2・500」だ。

    4号を「崖を生じない盛土で高さ2メートル超」と要約している解説は多いが、条文はそう書いていない。令3条4号の文言は「第一号又は前号に該当しない盛土であつて、高さが二メートルを超えるもの」である。したがって、崖は生じるがその高さが1メートル以下にとどまる盛土であっても、盛土自体の高さが2メートルを超えれば4号で拾われる。「崖を生じない」という要約は1号・3号の裏返しを言い換えたつもりの言葉で、崖の高さが基準に届かない場合を落としてしまう。令23条4号も同じ構造(「第一号又は前号に該当しない盛土であつて、高さが五メートルを超えるもの」)なので、両方とも条文どおり「1号または3号に該当しない盛土」で覚えたほうが安全だ。

    この令3条が本記事で意味を持つのは二点である。第一に、法27条1項の届出は「特定盛土等又は土石の堆積に関する工事」を対象とするから、そもそも特定盛土等に当たるかどうかが令3条で決まる。届出の入口が令3条、許可の入口が令28条(=令23条)という二段になっている。第二に、令3条と令23条は同じ5号構成で、数字だけが「1・2・2・2・500」と「2・5・5・5・3000」に置き換わっている。構造が同じで数字が違うという関係なので、試験では両者を入れ替えた肢が作りやすい。なお、宅地造成等工事規制区域内の許可規模がなぜ令3条で決まるのかという点は 盛土規制法の全体像 が扱っている。

    土石の堆積は別系統で、しかも二段になっている

    土石の堆積の数字は、崖の高さの系列とは別に走っている。

    出発点は令4条で、法2条4号の「政令で定める土石の堆積」を、1号「高さが2メートルを超える土石の堆積」、2号「前号に該当しない土石の堆積であつて、当該土石の堆積を行う土地の面積が500平方メートルを超えるもの」の2号構成で定める。ここで重要なのは、1号の高さ要件に面積の条件が付いていないことだ。高さ2メートル超であれば、面積が何平方メートルであろうと単独で土石の堆積に当たる。面積500平方メートル超が問題になるのは、高さ2メートル以下の場合(=1号に該当しない場合)に限られる。「高さ2メートル超かつ面積300平方メートル超」といった形で高さと面積を「かつ」で結ぶ肢は誤りである。

    もう一段が令25条2項で、法19条1項の定期報告を要する土石の堆積の規模として、1号「高さが5メートルを超える土石の堆積であつて、当該土石の堆積を行う土地の面積が1,500平方メートルを超えるもの」、2号「前号に該当しない土石の堆積であつて、当該土石の堆積を行う土地の面積が3,000平方メートルを超えるもの」を定める。こちらの1号は「かつ」でつながっている。高さと面積の両方を満たさなければ1号には当たらず、その場合は2号の面積3,000平方メートル超で拾われる。

    そして令28条2項が「法第三十条第一項の政令で定める規模の土石の堆積は、第二十五条第二項各号に掲げるものとする」とし、令33条2項も同じく令25条2項各号を引く。特定盛土等規制区域における土石の堆積の許可規模と定期報告の規模は、この二段目で決まる。

    整理すると、土石の堆積は「令4条=そもそも規制対象になるか(高さ2メートル超、または面積500平方メートル超)」と「令25条2項=許可・定期報告に上がるか(高さ5メートル超かつ面積1,500平方メートル超、または面積3,000平方メートル超)」の二段構造で、and条件が現れるのは令25条2項1号だけである。

    面積で切る法律と、高さで切る法律

    数字の切り方そのものを比べておくと理解が定着する。開発許可が使う規模の指標は面積だけである。開発許可の面積要件 が扱うとおり、市街化区域1,000平方メートル、区域区分が定められていない都市計画区域および準都市計画区域3,000平方メートル、都市計画区域および準都市計画区域外10,000平方メートル(都市計画法施行令19条・22条の2)という具合で、高さや土量は一切出てこない(市街化調整区域には面積の下限すら置かれておらず、規模を問わず許可がかかる)。

    盛土規制法は違う。主たる指標は崖の高さであり、面積は「いずれの号にも該当しない場合」の受け皿として最後に置かれている。守ろうとしているものが違うからだ。開発許可は市街地の無秩序な拡大を面積で制御するが、盛土規制法は崖崩れと土砂の流出(法2条5号の「災害」の定義がまさにこれである)を防ぐので、崩れる高さが第一の指標になる。この違いを意識しておくと、どちらの数字を答えるべきかで迷わなくなる。

    検査・中間検査・定期報告・変更手続を、区域ごとに置き直す

    完了検査と、土石の堆積についての「確認」(法36条)

    法36条1項は、特定盛土等に関する工事について法30条1項の許可を受けた者は、当該許可に係る工事を完了したときは、主務省令で定める期間内に、その工事が法31条1項の規定に適合しているかどうかについて、知事の検査を申請しなければならないと定める。2項で、知事は検査の結果適合していると認めた場合においては検査済証を交付しなければならない。

    4項が別立てになっている。土石の堆積に関する工事について許可を受けた者は、当該許可に係る工事(堆積した全ての土石を除却するものに限る)を完了したときは、主務省令で定める期間内に、堆積されていた全ての土石の除却が行われたかどうかについて、知事の確認を申請しなければならない。5項で、確認の結果全ての土石が除却されたと認めた場合においては確認済証を交付しなければならない。

    盛土や切土は「造ったものが基準に適合しているか」を見るので検査・検査済証、土石の堆積は「置いたものを片づけたか」を見るので確認・確認済証。法2条4号が土石の堆積を「一定期間の経過後に当該土石を除却するものに限る」と定義していることの帰結である。項番号でいえば、1項2項が検査、4項5項が確認で、3項は後述する都市計画法との調整規定が挟まっている。規制区域側の法17条もまったく同じ配列(1項2項が検査、3項が調整規定、4項5項が確認)になっている。

    中間検査は特定盛土等だけ(法37条)

    法37条1項は、法30条1項の許可を受けた者は、当該許可に係る特定盛土等(政令で定める規模のものに限る)に関する工事が政令で定める工程(特定工程)を含む場合において、当該特定工程に係る工事を終えたときは、その都度主務省令で定める期間内に、知事の検査を申請しなければならないと定める。2項で、適合していると認めた場合においては当該特定工程に係る中間検査合格証を交付する。

    ここで対象行為が絞られている点を落としてはいけない。中間検査の対象は「特定盛土等」だけで、土石の堆積は入らない。規制区域側の法18条1項も「宅地造成又は特定盛土等」であって、やはり土石の堆積が外れている。工事の途中の工程を検査する制度なので、土を積んで後で除去する行為にはなじまないという整理だ。

    一方、定期報告は土石の堆積も対象に含む。法38条1項は「特定盛土等又は土石の堆積に関する工事に係るもの」と書き、規制区域側の法19条1項も「宅地造成等」(=宅地造成・特定盛土等・土石の堆積)と書く。中間検査は土石の堆積を含まず、定期報告は含む。この非対称は毎回問える形をしているので、対象行為を必ずセットで覚える。

    特定工程の中身(令24条・令32条)

    特定工程が具体的に何かは政令にある。令24条1項は、法18条1項の政令で定める工程を「盛土をする前の地盤面又は切土をした後の地盤面に排水施設を設置する工事の工程」と定める。2項は、その工程に係る法18条3項の政令で定める工程(後続工程)を「前項に規定する排水施設の周囲を砕石その他の資材で埋める工事の工程」と定める。

    特定盛土等規制区域側は令32条で、2項が「法第三十七条第一項の政令で定める工程は、第二十四条第一項に規定する工程とする」、3項が「法第三十七条第三項の政令で定める工程は、第二十四条第二項に規定する工程とする」。ここでも二区域は同じ内容を共有している。

    特定工程が排水施設の設置であることには理由がある。盛土の崩壊は水が抜けないことで起きるので、盛土に埋まって二度と見えなくなる排水施設を、埋める前に検査する。だから法37条3項は「特定工程ごとに政令で定める当該特定工程後の工程に係る工事は、前項の規定による当該特定工程に係る中間検査合格証の交付を受けた後でなければ、することができない」と定める。合格証が出るまで、砕石で埋める工程に進めない。規制区域側の法18条3項も同じである。

    そして法37条5項は、中間検査で法31条1項に適合することを認められた特定工程に係る工事については、法36条1項の完了検査において当該工事に係る部分の検査をすることを要しないとする。中間検査で見た部分を完了検査で二度見しない、という省略規定だ。「完了検査そのものが不要になる」わけではない点に注意したい。

    変更の許可と軽微な変更の届出(法35条)

    法35条1項は、法30条1項の許可を受けた者が工事の計画の変更をしようとするときは、知事の許可を受けなければならないとし、ただし書で「主務省令で定める軽微な変更をしようとするときは、この限りでない」とする。2項は、軽微な変更をしたときは遅滞なく、その旨を届け出なければならない。変更が原則許可、軽微な変更だけが事後の届出、という組み方だ。

    3項は、変更の許可について法30条2項から4項まで、法31条から法33条まで、法34条1項を準用する。したがって四つの許可基準も技術的基準も許可証の交付も、変更許可にそのまま働く。4項は、変更後の内容を法30条1項の許可の内容とみなすことで、法36条から法38条までの検査・中間検査・定期報告が変更後の計画を基準に動くようにしている。

    軽微な変更の届出を怠った場合の制裁が、この法律の中で特異である。法61条は「第十六条第二項又は第三十五条第二項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、三十万円以下の過料に処する」と定める。過料であって刑罰ではない。前科にならず、両罰規定(法60条)の対象にもならない。刑罰でない制裁がこの法律で使われているのはこの一か条だけなので、「軽微な変更の届出違反=過料30万円」はそのまま覚えてしまってよい。

    都市計画法の開発許可との接続は「みなし」でできている

    同じ土地に二つの法律がかかるとき

    宅地を造成する工事は、都市計画法の開発行為でもあり、盛土規制法の宅地造成・特定盛土等でもありうる。二つの法律が同じ工事にかかったとき、条文はどう処理しているか。答えは「みなし規定で片方に寄せる」である。開発許可制度そのものは 開発許可制度、都市計画法全体の骨格は 都市計画法の全体像 に譲り、ここでは接続部分だけを条文で確認する。

    届出のみなし(法27条5項)

    法27条5項は、「特定盛土等規制区域内において行われる特定盛土等について都市計画法第二十九条第一項又は第二項の許可の申請をしたときは、当該特定盛土等に関する工事については、第一項の規定による届出をしたものとみなす」と定める。

    開発許可の申請をすれば、盛土規制法の届出をしたものとみなされる。ここで注意すべき点が三つある。第一に、みなされるのは開発許可を「受けたとき」ではなく「申請をしたとき」である。第二に、対象は特定盛土等に限られ、土石の堆積には及ばない。第三に、向きは開発許可から盛土規制法へであって、逆ではない。

    許可のみなし(法34条2項)

    法34条2項は、「特定盛土等規制区域内において行われる特定盛土等について当該特定盛土等規制区域の指定後に都市計画法第二十九条第一項又は第二項の許可を受けたときは、当該特定盛土等に関する工事については、第三十条第一項の許可を受けたものとみなす」と定める。規制区域側の法15条2項がまったく同じ形をしている。

    こちらは「許可を受けたとき」である。届出のみなし(申請で足りる)と許可のみなし(受けることが必要)で条件が違う。そして「当該特定盛土等規制区域の指定後に」という限定が付く。区域指定より前に受けた開発許可では、みなしは働かない。ここも対象は特定盛土等に限られ、土石の堆積は含まれない。土石の堆積は土地の形質の変更ではないので、そもそも開発行為に当たらないことの反映である。

    なお、開発許可が不要な工事では当然このみなしは働かない。開発許可が不要になる場合 が扱う適用除外に当たる工事であっても、盛土規制法の届出や許可は別途必要になる。開発許可が要らないことは、盛土規制法の手続が要らないことを意味しない。

    変更手続のみなし(法35条5項・法28条2項)

    変更の場面にもみなしが用意されている。法35条5項は、法34条2項により法30条1項の許可を受けたものとみなされた特定盛土等に関する工事に係る都市計画法35条の2第1項の許可または同条3項の届出は、当該工事に係る法35条1項の許可または2項の届出とみなす、と定める。都市計画法35条の2は開発許可を受けた者の変更許可・軽微変更の届出の条文で、その手続がそのまま盛土規制法の変更手続に読み替えられる。

    同じ形が届出側にもある。法28条2項は、法27条5項により届出をしたものとみなされた特定盛土等に関する工事に係る都市計画法35条の2第1項の許可の申請は、当該工事に係る法28条1項の規定による変更の届出とみなす。

    完了検査のみなし(法36条3項)

    法36条3項は、法34条2項により許可を受けたものとみなされた特定盛土等に関する工事に係る都市計画法36条1項の届出または同条2項により交付された検査済証は、当該工事に係る法36条1項の申請または2項の検査済証とみなす、と定める。都市計画法36条の工事完了届出と検査済証が、盛土規制法の完了検査申請と検査済証を兼ねる。規制区域側の法17条3項が同じ規定である。

    入口(許可申請・許可)から出口(完了検査・検査済証)まで、変更手続を挟んで一貫してみなしがかかっている。開発許可のルートに乗った工事は、盛土規制法の手続を二重に踏まなくてよいという設計だ。

    もっとも、みなし規定があることと、制度が一体化していることは別である。開発許可と建築確認の関係 で扱うとおり、法令上の制限では「別個独立の手続が同じ土地に重なってかかる」のが原則で、みなしはあくまで明文がある場面に限った例外だ。明文のない組合せ(たとえば農地法との関係)では、それぞれの手続を別々に踏む。

    法34条1項の協議みなし

    法34条1項は別系統のみなしである。「国又は都道府県、指定都市若しくは中核市が特定盛土等規制区域内において行う特定盛土等又は土石の堆積に関する工事については、これらの者と都道府県知事との協議が成立することをもつて第三十条第一項の許可があつたものとみなす」。

    名宛人の範囲が問われる。国、都道府県、指定都市、中核市の四つで、市町村一般は含まれない。指定都市でも中核市でもない市や町村が行う工事は、通常どおり許可を受ける必要がある。規制区域側の法15条1項も同じ範囲だ。そして、こちらのみなしは対象行為が「特定盛土等又は土石の堆積」で、開発許可のみなしと違って土石の堆積を含む点にも注意しておきたい。

    区域指定に伴う三つの届出、土地の保全、そして監督処分と罰則の階層

    法40条の三つの届出

    区域が指定されると、工事の許可・届出とは別に、区域内の土地について三つの届出義務が生じる。法40条がこれを定め、規制区域側の法21条と鏡像の関係にある。

    1項は、指定の際に既に工事中の場合である。特定盛土等規制区域の指定の際、当該区域内において行われている特定盛土等または土石の堆積に関する工事の工事主は、その指定があつた日から二十一日以内に、当該工事について知事に届け出なければならない。事後の届出で、期間は21日。着手前の届出ではないので、工事をいったん止める必要はない。

    2項は届出の受理後の処理で、知事は速やかに工事主の氏名等を公表し、関係市町村長に通知しなければならない。法27条2項と同じ規定である。

    3項は擁壁等の除却工事である。特定盛土等規制区域内の土地(公共施設用地を除く)において、擁壁等に関する工事その他の工事で政令で定めるものを行おうとする者は、その工事に着手する日の十四日前までに届け出なければならない。政令は令34条で、令26条1項に定める工事、すなわち「擁壁若しくは崖面崩壊防止施設で高さが二メートルを超えるもの、地表水等を排除するための排水施設又は地滑り抑止ぐい等全部又は一部の除却の工事」である。高さ2メートル超という限定が付くのは擁壁と崖面崩壊防止施設だけで、排水施設と地滑り抑止ぐい等には高さの要件がない。また「全部又は一部」なので、一部の除却でも届出が要る。

    4項は公共施設用地の転用である。特定盛土等規制区域内において、公共施設用地を宅地または農地等に転用した者は、その転用した日から十四日以内に届け出なければならない。こちらは事後の届出で14日以内。3項の「14日前まで」と4項の「14日以内」は、同じ14でも前後が逆になる。

    各項の括弧書きが除いている人

    3項と4項には、それぞれ括弧書きで名宛人から除かれる者が並ぶ。「第三十条第一項若しくは第三十五条第一項の許可を受け、又は第二十七条第一項、第二十八条第一項若しくは第三十五条第二項の規定による届出をした者を除く」。

    理由は単純で、すでに許可または届出の手続に乗っている者は、そのルートで知事が把握しているから重ねて届け出させる必要がない。規制区域側の法21条3項・4項も同じ趣旨だが、除外される手続の列挙が「第十二条第一項若しくは第十六条第一項の許可を受け、又は同条第二項の規定による届出をした者」となっており、届出制がない分だけ短い。第六章には届出制があるので、除外リストが長くなっている。この差は条文の構造をそのまま反映している。

    土地の保全と改善命令(法41条・法42条)

    法41条1項は、特定盛土等規制区域内の土地の所有者、管理者または占有者は、特定盛土等または土石の堆積(特定盛土等規制区域の指定前に行われたものを含む)に伴う災害が生じないよう、その土地を常時安全な状態に維持するように努めなければならない、と定める。努力義務であり、括弧書きで区域指定前の盛土も対象に含めている点が要点だ。自分が造ったものでなくても、今その土地を所有・管理・占有している者に努力義務がかかる。

    2項は勧告で、知事は災害の防止のため必要があると認める場合においては、その土地の所有者、管理者、占有者、工事主または工事施行者に対し、擁壁等の設置または改造その他必要な措置をとることを勧告することができる。1項の努力義務の名宛人が三者なのに対し、2項の勧告の相手方は工事主・工事施行者を加えた五者に広がっている。名宛人の広狭は問われやすい。

    法42条1項は改善命令である。必要な擁壁等が設置されておらず、もしくは極めて不完全であり、または土石の堆積に伴う災害の防止のため必要な措置がとられておらず、もしくは極めて不十分であるために、これを放置するときは災害の発生のおそれが大きいと認められるものがある場合において、災害の防止のため必要であり、かつ土地の利用状況その他の状況からみて相当であると認められる限度において、当該土地または擁壁等の所有者、管理者または占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、擁壁等の設置もしくは改造、地形もしくは盛土の改良または土石の除却のための工事を行うことを命ずることができる。

    2項は行為者への命令で、土地所有者等以外の者の不完全な工事その他の行為によって災害の発生のおそれが生じたことが明らかであり、その行為をした者に工事を行わせることが相当と認められ、かつ土地所有者等に異議がないときは、その行為をした者に命ずることができる。括弧書きで「その行為が隣地における土地の形質の変更又は土石の堆積であるときは、その土地の所有者を含む」とされる。3項は法39条5項から7項までを準用する。

    努力義務・勧告・改善命令という三段階そのものは規制区域側(法22条・法23条)と共通で、盛土規制法の全体像 が扱っている。ここで押さえたいのは、命令できる工事の内容に「土石の除却」が含まれること、そして2項の行為者への命令という層があることの二点だ。

    立入検査と報告徴取(法43条・法44条)

    法43条1項は、知事は法27条4項(法28条3項準用を含む)、法30条1項、法35条1項、法36条1項・4項、法37条1項、法39条1項から4項まで、法42条1項・2項の権限を行うために必要な限度において、職員に土地に立ち入り検査させることができる、と定める。3項で、この権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならないと明記される。行政調査であって捜査ではない。法44条は報告の徴取で、知事は区域内の土地の所有者、管理者または占有者に対して報告を求めることができる。

    法39条の監督処分

    法39条1項は、偽りその他不正な手段により法30条1項もしくは法35条1項の許可を受けた者、またはその許可に付した条件に違反した者に対して、その許可を取り消すことができると定める。

    2項は工事に対する命令である。名宛人が広い。「当該工事主又は当該工事の請負人(請負工事の下請人を含む)若しくは現場管理者」がまとめて「工事主等」とされ、これらに対して工事の施行の停止を命じ、または相当の猶予期限を付けて災害防止措置をとることを命ずることができる。対象となる工事は4号列挙で、無許可工事、許可条件違反の工事、法31条1項の技術的基準に適合していない工事、法37条1項の中間検査を申請しないで施行する工事である。下請人や現場管理者まで名宛人に含まれることは、その他の法令上の制限 で扱う「許可権者と名宛人を条文から復元する」という読み方の格好の練習材料になる。

    3項は土地に対する処分である。無許可で工事が施行された土地、完了検査を申請せずまたは不適合とされた土地、土石の除却の確認を申請せずまたは除却されていないと認められた土地、中間検査を申請しないで特定盛土等が施行された土地について、土地の所有者・管理者・占有者または工事主(「土地所有者等」)に対して、当該土地の使用を禁止し、若しくは制限し、または相当の猶予期限を付けて災害防止措置をとることを命ずることができる。工事を止めるだけでなく、土地の使用そのものを禁止・制限できる点が2項との違いだ。

    4項は緊急時の特則で、2項により工事の施行の停止を命じようとする場合において、緊急の必要により弁明の機会の付与を行うことができないときは、2項に規定する工事に該当することが明らかな場合に限り、弁明の機会の付与を行わないで停止を命ずることができる。さらに、工事主等が現場にいないときは、当該工事に従事する者に対して作業の停止を命ずることができる。行政手続法の不利益処分の手続を、緊急性を理由に省略できる例外規定である。

    5項から7項が、知事自らが手を下す仕組みだ。5項は、命令を受けた者が期限までに措置を講じないとき・講じても十分でないとき・講ずる見込みがないとき(1号)、過失がなくて命ずべき者を確知することができないとき(2号)、緊急に措置を講ずる必要があり命ずるいとまがないとき(3号)に、知事が自ら災害防止措置の全部または一部を講ずることができるとする。2号に該当する場合には、相当の期限を定めて、措置を講ずべき旨と、期限までに講じないときは知事が自ら講じて費用を徴収することがある旨を、あらかじめ公告しなければならない。公告の方法は令38条で、公報その他所定の手段により行うほか、その公告を行つた日から十日間、当該土地の付近の適当な場所に掲示して行う。

    6項は費用の負担で、知事は自ら措置を講じたときは、要した費用を工事主等または土地所有者等に負担させることができる。7項は、その徴収について行政代執行法5条および6条の規定を準用する。代執行そのものではなく、費用の徴収手続だけを借りてくる形になっている。

    罰則の階層

    盛土規制法の罰則は第十章(法55条から法61条)に置かれ、条番号が進むほど刑が軽くなるという素直な並びになっている。

    法55条1項が最も重く、3年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金。1号が法12条1項・法16条1項違反の工事(規制区域の無許可工事・無許可変更)、2号が法30条1項・法35条1項違反の工事(特定盛土等規制区域の無許可工事・無許可変更)、3号が偽りその他不正な手段による許可の取得、4号が法20条2項から4項まで・法39条2項から4項までの命令違反、すなわち監督処分違反である。2項は技術的基準に違反した設計をした者、3項は工事主等の故意による場合の科刑を定める。

    法56条は1年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金。1号が法17条1項・4項、法18条1項、法36条1項・4項、法37条1項の申請をせずまたは虚偽の申請をしたとき(完了検査・確認・中間検査の申請義務違反)、2号が法19条1項・法38条1項の定期報告義務違反、3号が法23条1項・2項、法27条4項(法28条3項準用を含む)、法42条1項・2項、法47条1項・2項の命令違反、4号が法24条1項(法48条準用を含む)・法43条1項の立入検査の拒否・妨害・忌避である。法27条4項の措置命令違反がこの3号に入ることは、届出制の実効性を考えるうえで重要だ。

    法57条は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、法27条1項・法28条1項の届出をしないで工事を行い、または虚偽の届出をしたとき。届出義務違反だけを取り出した独立の条文である。

    法58条は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。1号が法5条1項の土地の立入り拒否・妨害、2号が法6条1項の無許可の障害物伐除・試掘等、3号が法21条1項・4項、法40条1項・4項の届出義務違反、4号が法21条3項・法40条3項の届出をしないで工事を行いまたは虚偽の届出をしたとき、5号が法25条(法48条準用を含む)・法44条の報告義務違反である。区域指定に伴う三つの届出の違反は、すべてこの法58条にまとまっている。

    法59条は50万円以下の罰金で、法49条の標識掲示義務違反。刑罰を定めた法55条から法59条までのうち、拘禁刑の選択肢がない唯一の条である(後述する法61条も拘禁刑を科さないが、あちらは刑罰ではなく過料なので別枠になる)。

    法60条が両罰規定で、法人の代表者や従業者が違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して罰金刑を科す。金額が三段になっている。1号は法55条の違反について3億円以下、2号は法56条3号(命令違反)について1億円以下、3号はそれ以外(法56条1号・2号・4号、法57条から法59条まで)について各本条の罰金刑である。法人重科が働くのは重い二つだけで、他は個人と同額という設計だ。宅建業法の罰則の水準とどれくらい違うかは 宅建業法の罰則 と読み比べるとわかる。

    法61条は前述のとおり過料30万円で、法16条2項・法35条2項の軽微な変更の届出違反。刑罰ではないので両罰規定の対象外である。

    なお、これらの条文が「懲役」ではなく「拘禁刑」と書かれているのは、刑法等の一部改正により2025年6月1日から拘禁刑に一本化されたことによる。改正そのものの内容と、宅建業法の欠格事由への影響は 拘禁刑への一本化と欠格事由 が扱う。

    標識の掲示と市町村長の意見の申出

    法49条は、「第十二条第一項若しくは第三十条第一項の許可を受けた工事主又は第二十七条第一項の規定による届出をした工事主は、当該許可又は届出に係る土地の見やすい場所に、氏名又は名称その他の主務省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない」と定める。名宛人に届出をした工事主が含まれている点が特徴的だ。許可を受けた者だけに標識義務がかかるとする肢は誤りになる。

    法50条は、市町村長は、宅地造成等工事規制区域、特定盛土等規制区域および造成宅地防災区域内における災害の防止に関し、都道府県知事に意見を申し出ることができるとする。法26条5項の申出が「区域を指定してほしい」という指定段階の申出であるのに対し、法50条は指定後も含めた一般的な意見の申出で、三つの区域すべてを対象にしている。

    造成宅地防災区域:指定の基準と、この法律で唯一の解除規定

    法45条1項を分解する

    第七章は法45条の一か条だけである。1項は、都道府県知事は、基本方針に基づき、かつ基礎調査の結果を踏まえ、この法律の目的を達成するために必要があると認めるときは、「宅地造成又は特定盛土等(宅地において行うものに限る。第四十七条第二項において同じ。)に伴う災害で相当数の居住者等に危害を生ずるものの発生のおそれが大きい一団の造成宅地(これに附帯する道路その他の土地を含み、宅地造成等工事規制区域内の土地を除く。)の区域であつて政令で定める基準に該当するものを、造成宅地防災区域として指定することができる」と定める。

    分解すると要件が四つある。

    第一に、対象となる行為が「宅地造成又は特定盛土等(宅地において行うものに限る)」に限られる。土石の堆積が入っていない。第六章と違い、この区域では土石の堆積が視野に入っていないので、後述するとおり法47条1項の改善命令の内容にも「土石の除却」が現れない。また特定盛土等については「宅地において行うものに限る」という限定が付き、農地等で行う特定盛土等は外れる。

    第二に、被害の広がりの要件がある。「相当数の居住者等に危害を生ずるもの」。一戸や二戸ではなく、まとまった数の居住者に危害が及ぶおそれが必要だ。この「居住者等」は前述のとおり法26条1項括弧書きの定義語で、第五章と第七章が語彙を共有している。

    第三に、対象地が「一団の造成宅地」であること。単独の宅地ではなく、まとまりのある区域として指定する。括弧書きで「これに附帯する道路その他の土地を含み」とされるので、宅地に付随する道路も区域に取り込める。

    第四に、括弧書きの「宅地造成等工事規制区域内の土地を除く」。ここが特定盛土等規制区域と共通する排他要件である。造成宅地防災区域も、宅地造成等工事規制区域の外に指定される。

    なお「造成宅地」は法2条9号が「宅地造成又は特定盛土等(宅地において行うものに限る。)に関する工事が施行された宅地」と定義する。すでに工事が終わって出来上がっている宅地である。ここが決定的で、造成宅地防災区域はこれから行う工事を規制する区域ではなく、すでに存在する造成宅地の危険を扱う区域だ。だから第八章には許可も届出も検査も出てこない。

    令35条の指定基準

    法45条1項の「政令で定める基準」は令35条にある。1項が二つの号を立てる。

    1号は、次のいずれかに該当する一団の造成宅地の区域(盛土をした土地の区域に限る)であって、安定計算によつて、地震力及びその盛土の自重による当該盛土の滑り出す力がその滑り面に対する最大摩擦抵抗力その他の抵抗力を上回ることが確かめられたもの、とされる。そのうえで、

    イは「盛土をした土地の面積が三千平方メートル以上であり、かつ、盛土をしたことにより、当該盛土をした土地の地下水位が盛土をする前の地盤面の高さを超え、盛土の内部に浸入しているもの」。

    ロは「盛土をする前の地盤面が水平面に対し二十度以上の角度をなし、かつ、盛土の高さが五メートル以上であるもの」。

    イが「広くて水を含んだ盛土」、ロが「傾いた地盤の上の高い盛土」である。いずれも、安定計算で滑り出す力が抵抗力を上回ることが確かめられて初めて基準に該当する。単に面積が3,000平方メートル以上であるだけでは足りない。

    2号は、盛土または切土をした後の地盤の滑動、宅地造成または特定盛土等に関する工事により設置された擁壁の沈下、盛土または切土をした土地の部分に生じた崖の崩落その他これらに類する事象が生じている一団の造成宅地の区域。1号が計算で将来の危険を予測するのに対し、2号は現に事象が生じている区域である。予測型と現況型の二本立てになっている。

    なお、令35条2項は1号の安定計算に必要な数値を定める。1号で地震力について「当該盛土の自重に、水平震度として〇・二五に建築基準法施行令88条1項に規定するZの数値を乗じて得た数値を乗じて得た数値」とされ、2号で自重、3号で抵抗力の計算方法(イの区域は複数の円弧または直線で構成される滑り面、ロの区域は単一の円弧で構成される滑り面)が定められる。数値そのものを覚える必要は薄いが、「0.25という水平震度が政令に書いてある」ことは、この区域の指定が技術的な計算に裏づけられていることの証拠として押さえておきたい。

    この基準に出てくる「地下水位」「地盤面の傾斜」「盛土の高さ」といった要素は、そのまま問48・問49の土地の知識と重なる。盛土造成地の危険、切土と盛土の境目、谷埋め型と腹付け型といった論点は 土地・建物の知識 が扱っており、令35条を読んだ後に見るとつながりがよく見える。

    法45条2項の解除は「するものとする」

    法45条2項は、この法律の中で異彩を放つ条文だ。「都道府県知事は、擁壁等の設置又は改造その他前項の災害の防止のため必要な措置を講ずることにより、造成宅地防災区域の全部又は一部について同項の指定の事由がなくなつたと認めるときは、当該造成宅地防災区域の全部又は一部について同項の指定を解除するものとする」。

    二つの点に注目したい。

    第一に、「解除することができる」ではなく「解除するものとする」である。要件を満たせば解除すべきであるという羈束的な書き方で、知事の裁量が絞られている。1項の指定が「指定することができる」という裁量的な規定であるのと対照的だ。

    第二に、他の二つの区域には対応する解除規定が置かれていない。法10条にも法26条にも解除の条文はない(実務上は指定の変更や解除がありうるが、条文に明文の解除規定を持つのは法45条2項だけである)。これは区域の性質の違いから来る。宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域は「これから行われる工事を規制する区域」なので、地形と土地利用がある限り規制の必要は続く。これに対して造成宅地防災区域は「特定の造成宅地に現に存在する危険」を捉えた区域なので、擁壁を設置するなどして危険が除かれれば、指定を維持する理由が消える。だから解除が用意されている。

    法45条3項は、法10条2項から6項までの規定を、1項の指定および2項の解除の双方について準用する。つまり解除の場面でも、関係市町村長の意見聴取、必要最小限度の原則、公示と関係市町村長への通知、市町村長の申出、公示による効力発生が働く。解除も公示によって効力を生じる。

    「一度指定されたら永久に外れない」という肢は、この法45条2項で切れる。逆に「宅地造成等工事規制区域は指定の事由がなくなったときは解除するものとされている」という肢は、条文がないので誤りになる。

    造成宅地防災区域内の措置と、行為者に向かう命令

    法46条の努力義務と勧告

    第八章は法46条から法48条までの三か条しかないが、第六章の構造を圧縮して持っている。

    法46条1項は、造成宅地防災区域内の造成宅地の所有者、管理者又は占有者は、法45条1項の災害が生じないよう、その造成宅地について擁壁等の設置又は改造その他必要な措置を講ずるように努めなければならない、と定める。法41条1項が「土地を常時安全な状態に維持するように努める」という状態維持の書き方なのに対し、法46条1項は「擁壁等の設置又は改造その他必要な措置を講ずる」という積極的な作為の書き方になっている。すでに危険な造成宅地が対象だからだ。

    2項は勧告で、知事は災害の防止のため必要があると認める場合においては、その造成宅地の所有者、管理者又は占有者に対し、擁壁等の設置または改造その他必要な措置をとることを勧告することができる。ここで、法41条2項の勧告の相手方が五者(所有者・管理者・占有者・工事主・工事施行者)だったのに対し、法46条2項は三者しかいない。工事が終わった後の宅地を扱う章なので、工事主や工事施行者が名宛人として登場しない。名宛人の数の違いは、章の性格をそのまま反映している。

    法47条1項の改善命令

    法47条1項は、造成宅地防災区域内の造成宅地で、法45条1項の災害の防止のため必要な擁壁等が設置されておらず、または極めて不完全であるために、これを放置するときは災害の発生のおそれが大きいと認められるものがある場合において、災害の防止のため必要であり、かつ土地の利用状況その他の状況からみて相当であると認められる限度において、当該造成宅地または擁壁等の所有者、管理者又は占有者(「造成宅地所有者等」)に対して、相当の猶予期限を付けて、「擁壁等の設置若しくは改造又は地形若しくは盛土の改良のための工事」を行うことを命ずることができる、と定める。

    命令できる工事の内容を法42条1項と比べると、違いがひとつある。法42条1項は「擁壁等の設置若しくは改造、地形若しくは盛土の改良又は土石の除却のための工事」と書くのに対し、法47条1項には土石の除却が入っていない。理由は前述のとおりで、造成宅地防災区域の対象行為(法45条1項)に土石の堆積が含まれていないからだ。命令の内容は、区域が捉えている行為の範囲に対応している。この対応関係を理解しておけば、「造成宅地防災区域の改善命令として土石の除却を命じられる」という肢を条文の構造から切れる。

    要件の側もていねいに読みたい。「災害の防止のため必要であり、かつ、土地の利用状況その他の状況からみて相当であると認められる限度において」という二重の絞りがかかり、命令には「相当の猶予期限」を付さなければならない。即時の履行を命じることはできない。

    法47条2項:造成宅地所有者等以外の者に命じる

    第八章でいちばん見落とされやすいのが法47条2項である。条文はこう定める。1項の場合において、造成宅地所有者等以外の者の宅地造成または特定盛土等に関する不完全な工事その他の行為によって法45条1項の災害の発生のおそれが生じたことが明らかであり、その行為をした者に1項の工事の全部または一部を行わせることが相当であると認められ、かつ、これを行わせることについて当該造成宅地所有者等に異議がないときは、知事は、その行為をした者に対して、1項の工事の全部または一部を行うことを命ずることができる。

    三つの要件が並ぶ。因果が明らかであること、行わせることが相当であること、造成宅地所有者等に異議がないこと。とくに三つ目が特徴的で、現在の所有者等が反対していれば、行為者に命じることはできない。所有者の意思に反して第三者を自分の土地に立ち入らせる結果になるからだ。

    括弧書きも押さえたい。「その行為をした者(その行為が隣地における土地の形質の変更であるときは、その土地の所有者を含む。以下この項において同じ。)」。隣の土地の造成が原因で危険が生じた場合には、実際に工事をした者だけでなく、その隣地の所有者も名宛人になりうる。

    この2項は、法23条2項(宅地造成等工事規制区域)、法42条2項(特定盛土等規制区域)とまったく同じ構造で置かれている。三つの区域すべてに「行為者に向かう命令」の層があるということだ。ただし括弧書きの対象は少しずつ違い、法23条2項と法42条2項は「隣地における土地の形質の変更又は土石の堆積」であるのに対し、法47条2項は「隣地における土地の形質の変更」だけである。ここでも土石の堆積が落ちている。

    3項は、法20条5項から7項までの規定を準用する。知事が自ら措置を講じる権限、費用の負担、行政代執行法5条・6条の準用が、造成宅地防災区域にもそのまま及ぶ。準用元が法39条ではなく法20条(宅地造成等工事規制区域の監督処分)である点は、条文を引くときに間違えやすい。ちなみに法42条3項の準用元は法39条5項から7項までだ。準用の公告方法は令38条が一括して定めており、法20条5項(法23条3項・法47条3項準用を含む)と法39条5項(法42条3項準用を含む)のいずれについても、公報その他所定の手段による公告に加えて10日間の現地掲示が必要になる。

    法48条の準用

    法48条は、「第二十四条の規定は都道府県知事が前条第一項又は第二項の規定による権限を行うため必要がある場合について、第二十五条の規定は造成宅地防災区域内における造成宅地の所有者、管理者又は占有者について準用する」と定める。

    法24条は立入検査、法25条は報告の徴取である。造成宅地防災区域には第六章の法43条・法44条に相当する固有の条文がないので、第四章の規定を借りてくる形になっている。準用の効果として、法56条4号の立入検査拒否の罰則も「第二十四条第一項(第四十八条において準用する場合を含む)」と書かれ、法58条5号の報告義務違反も「第二十五条(第四十八条において準用する場合を含む)」と書かれている。準用が罰則まで貫いていることが、条文を突き合わせるとわかる。

    報告を求められる事項は令39条が定める。1号が「土地の面積及び崖の高さ、勾配その他の現況」、2号が「擁壁、崖面崩壊防止施設、排水施設及び地滑り抑止ぐい等の構造、規模その他の現況」、3号が「土地に関する工事の計画及び施行状況」の三つである。この令39条は法25条(法48条準用を含む)と法44条の双方を対象にしており、ここでも二つの章が同じ政令を共有している。

    なぜ35条書面で造成宅地防災区域だけが別扱いなのか

    最後に宅建業法とのつながりを、条文の配置という角度から見ておく。

    宅地造成等工事規制区域内・特定盛土等規制区域内である旨は、宅建業法35条1項2号の「法令に基づく制限」として処理される。同号の政令が宅建業法施行令3条で、その1項27号に「宅地造成及び特定盛土等規制法第十二条第一項、第十六条第一項、第二十七条第一項、第二十八条第一項、第三十条第一項及び第三十五条第一項」と列挙されている。並んでいるのはすべて許可または届出の条文だ。つまり「この土地では工事に許可や届出が要る」という制限の説明として位置づけられている。そして施行令3条1項は柱書で「宅地又は建物の貸借の契約以外の契約については」と限定し、宅地の貸借については2項が別に範囲を定める(27号は除外されていないので宅地の貸借でも説明が要る)。建物の貸借については3項が新住宅市街地開発法等の三つだけを挙げるので、盛土規制法は入らない。

    これに対して造成宅地防災区域内である旨は、宅建業法施行規則16条の4の3第1号に置かれている。同条は法35条1項14号イ・ロの省令事項を定める条で、柱書が四つの取引類型それぞれについて対象となる号の範囲を指定するのだが、その四つの範囲はいずれも「第一号から」で始まる。どの類型にも第1号が入っているので、造成宅地防災区域内である旨は四つの取引類型すべてで説明事項になる。号ごとの範囲が類型によってどう変わるかは 物件調査の進め方 が類型別に整理しているので、そちらに譲る。

    配置が違うのは、性格が違うからだ。工事規制区域は「これから工事をするなら手続が要る」という行為の制限であり、造成宅地防災区域は「すでに危険がある土地だ」という既存の危険情報である。前者は建物を借りるだけの人には関係が薄いが、後者は誰にとっても関係がある。だから前者は施行令3条の法令制限リストに、後者は施行規則16条の4の3の災害情報の並びに置かれた。この条文配置の理由がわかっていれば、「造成宅地防災区域内である旨は建物の貸借では説明不要」という肢を、暗記ではなく理屈で切れる。

    説明事項の一覧そのもの、および災害関連4項目の位置づけは 重要事項説明の全体像 が、貸借の場合の説明事項の差は 貸借の重要事項説明 が扱う。

    本記事が担当するのは、そこから一段下がった問いのほうだ。すなわち「なぜ盛土規制法だけ、同じ法律の中の区域が二か所に分かれて書かれているのか」である。答えは、施行令3条が拾っているのが法12条1項・16条1項・27条1項・28条1項・30条1項・35条1項という手続を要求する条文だけだという点にある。造成宅地防災区域には、そもそも許可も届出も存在しない。法45条から法48条までを読んでも、区域内の者が自分から踏むべき手続を定めた条文は一つもなく、あるのは努力義務・勧告・改善命令という事後の是正の仕組みと、知事が動いたときに応じる立入検査・報告徴取(法48条による法24条・法25条の準用)だけだ。だから施行令3条の様式に載せようがなく、災害情報を並べた施行規則16条の4の3のほうに置かれた。区域に手続があるかないかが、そのまま重説での置き場所を決めている、と条文の側から説明できる。

    試験での出題ポイント

    届出と許可のすり替え

    もっとも多いのが、法27条(届出)と法30条(許可)を入れ替える型だ。「特定盛土等規制区域内で特定盛土等に関する工事を行う場合、工事主は工事に着手する前に知事の許可を受けなければならない」という肢は、規模の限定を落としているので誤り。許可が要るのは令28条の規模(=令23条各号、および令25条2項各号)に達するものだけで、それ未満は法27条1項の届出である。逆に「大規模なものであっても届出で足りる」も誤り。規模で分岐するという一点を落とさない。

    30日の意味をずらす型

    法27条1項の「着手する日の30日前まで」と、法27条3項の「届出を受理した日から30日以内」を混ぜる肢が作られる。「知事は、工事の着手前30日以内に限り勧告できる」といった書き方は、期間の起算点を工事主側に付け替えているので誤りだ。義務の30日と権限の30日を分けて記憶する。

    「届出だから罰則がない」型

    「法27条1項の届出を怠っても、勧告を受けることがあるにとどまり、罰則の適用はない」という肢は誤り。法57条が届出義務違反に1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を定めている。さらに勧告に従わずに法27条4項の措置命令を受け、それにも違反すると法56条3号で300万円以下の罰金、法人なら法60条2号で1億円以下の罰金になる。

    中間検査に土石の堆積を含める型

    法37条1項の中間検査は「特定盛土等」に限られ、土石の堆積は対象外である。一方、法38条1項の定期報告は土石の堆積も含む。「土石の堆積に関する工事について許可を受けた者は、特定工程を終えたときは中間検査を申請しなければならない」は誤り、「土石の堆積に関する工事について許可を受けた者も定期の報告を要する場合がある」は正しい。中間検査は含まず、定期報告は含む

    令23条と令3条の数字を入れ替える型

    「盛土であって高さ1メートルを超える崖を生ずるものは、特定盛土等規制区域では許可が必要」といった肢は、令3条の数字を令28条(=令23条)の場面に持ち込んだ誤りだ。規制対象になるかどうかが令3条の「1・2・2・2・500」、許可・中間検査・定期報告に上がるかどうかが令23条の「2・5・5・5・3000」という役割の違いで判別する。

    土石の堆積の高さと面積を「かつ」でつなぐ型

    令4条1号は高さ2メートル超だけで足り、面積の要件は付かない。「高さ2メートルを超え、かつ面積が一定以上のもの」とする肢は誤りである。and条件が現れるのは令25条2項1号(高さ5メートル超かつ面積1,500平方メートル超)だけだ。

    造成宅地防災区域の位置づけをずらす型

    「造成宅地防災区域は、宅地造成等工事規制区域のうち特に危険性が高い部分について指定される」という肢は誤り。法45条1項の括弧書きが「宅地造成等工事規制区域内の土地を除く」と明記している。特定盛土等規制区域についても法26条1項が「宅地造成等工事規制区域以外の土地の区域」と書く。規制区域の中に他の区域は切れない

    解除規定を落とす型

    「造成宅地防災区域は、一度指定されると解除されることはない」は誤り。法45条2項が「指定を解除するものとする」と定める。裏返して、「宅地造成等工事規制区域は指定の事由がなくなったときは解除するものとされている」という肢も、条文がないので誤りになる。

    改善命令の名宛人を所有者に絞る型

    法47条1項の名宛人は造成宅地または擁壁等の「所有者、管理者又は占有者」で、所有者に限られない。さらに法47条2項により、三つの要件を満たせば造成宅地所有者等以外の行為者に命じることができる。「改善命令は造成宅地の所有者に対してのみ行うことができる」は誤りだ。

    許可基準の同意を「相当数」にする型

    法30条2項4号は権利者の「全ての同意」である。開発許可(都市計画法33条1項14号)の「相当数の同意」と混ぜる肢が作られる。逆向きに「開発許可には全員の同意が必要」とする肢も同じ型だ。なお法30条2項4号は令29条2項が引く事業(土地区画整理事業等)に伴うものを除くという例外があるので、「例外なく全員の同意が必要」という書き方も厳密には誤りになりうる。

    みなし規定の向きを逆にする型

    法34条2項は「開発許可を受けたときは、盛土規制法30条1項の許可を受けたものとみなす」であって、その逆ではない。「盛土規制法30条1項の許可を受けたときは、開発許可を受けたものとみなされる」は誤り。法27条5項も同じで、開発許可の申請が届出とみなされるのであって逆ではない。加えて、みなしの対象が特定盛土等に限られ土石の堆積に及ばないこと、法34条2項は「区域の指定後に」受けた開発許可に限られることも、それぞれ独立した引っかけどころになる。こうした反転や条件落としの型は 引っかけ表現のパターン で一般化して整理している。

    出題量と法令の基準日

    盛土規制法は法令上の制限の中では出題頻度がそれほど高くないが、出題されれば区域の違いを問う形になりやすい。科目全体の中でどこに時間を割くかは 法令上の制限で得点する戦略、論点の優先順位は 法令上の制限の頻出論点 を参照してほしい。なお、本記事が引いた盛土規制法の条文は2025年6月1日施行の版で、令和8年度の基準日である2026年4月1日時点で施行済みであるから、出題範囲に入る。令和8年度に影響する改正の全体は 令和8年度の法改正まとめ にまとめてある。

    覚え方・整理の仕方

    章立ての3ペアを紙に書く

    最初にやるべきは、数字を覚えることではなく、章の並びを書き出すことだ。第三章と第四章が宅地造成等工事規制区域、第五章と第六章が特定盛土等規制区域、第七章と第八章が造成宅地防災区域。各ペアの前半が「指定する章」で一か条だけ、後半が「区域内の規制を定める章」で複数条。これを紙の上に三行で書く。

    そのうえで、条番号を三列に並べる。左列(宅地造成等工事規制区域)は10条から25条までの16か条。中列(特定盛土等規制区域)は26条から44条までの19か条。右列(造成宅地防災区域)は45条から48条までの4か条。

    並べると対応が見える。指定は10条・26条・45条。住民周知は11条・29条。許可は12条・30条。技術的基準は13条・31条。許可証は14条・33条。許可の特例は15条・34条。変更は16条・35条。完了検査は17条・36条。中間検査は18条・37条。定期報告は19条・38条。監督処分は20条・39条。区域指定に伴う届出は21条・40条。土地の保全は22条・41条・46条。改善命令は23条・42条・47条。立入検査は24条・43条(右列は48条で準用)。報告徴取は25条・44条(右列は48条で準用)。

    対応から外れる条は三つしかない。中列の27条・28条(届出とその変更届出)と、中列の32条(許可を要する規模を条例で引き下げる条)である。27条・28条が左列にないのは、宅地造成等工事規制区域には工事の計画についての届出制がなく、規模に達すればすべて許可だからだ(左列の21条にも「届出」の語はあるが、あちらは区域指定の際に工事中だった場合などの届出で、着手前に計画を出させる制度ではない)。32条が左列にないのは、法12条1項の許可がそもそも規模で絞られていないため、引き下げるべき「政令で定める規模」が存在しないからである。左列の条例規定は独立の条ではなく、法18条4項(中間検査)と法19条2項(定期報告)の中に項として埋め込まれていて、この二つは中列の法37条4項・法38条2項と対応している。

    右列が4か条しかない理由もはっきりしている。造成宅地防災区域は工事を規制する区域ではないので、許可・届出・検査・監督処分の列がまるごと落ち、土地の保全(46条)と改善命令(47条)と準用(48条)しか残らない。中列は届出制が加わって長く、右列は工事を伴わないので短い。この過不足の理由まで言えるようになれば、条番号は自然に定着する。

    数字は列ではなく参照関係で持つ

    数字を「規制区域は1・2・2・2・500、特定盛土等規制区域は2・5・5・5・3000」という縦二列で持つと、どの制度にどちらを使うのかで迷う。そうではなく、令23条という表が一つあり、それを四つの条が指しているという参照関係で持つ。

    指し先は、令25条1項(規制区域の定期報告)、令28条1項(特定盛土等規制区域の許可)、令32条1項(同区域の中間検査)、令33条1項(同区域の定期報告)の四つ。加えて令23条自身が規制区域の中間検査を定める。これで五つの制度が一つの数字表を共有していることになる。「令23条を四か条が引用している」と一度覚えてしまえば、五つの場面で数字を思い出す必要がなくなる。

    土石の堆積は別の連鎖で、令4条(規制対象か)と令25条2項(許可・定期報告に上がるか)の二段。令25条2項を令28条2項と令33条2項が引く。and条件が出るのは令25条2項1号だけという一点で、令4条との違いを覚える。

    日数は「前」と「後」で二つずつに仕分ける

    期間の数字は四つしかない。事前のものが二つ、事後のものが二つだ。

    事前は、30日前まで(法27条1項の届出、法28条1項の変更の届出)と、14日前まで(法21条3項・法40条3項の擁壁等の除却工事の届出)。

    事後は、21日以内(法21条1項・法40条1項の区域指定の際に工事中の場合)と、14日以内(法21条4項・法40条4項の公共施設用地の転用)。

    そして、これらとは別に知事側の期間が一つある。受理した日から30日以内(法27条3項の勧告)。工事主の義務の期間と知事の権限の期間を混ぜないよう、リストを分けて書く。数字の暗記法を体系的に扱った 法令上の制限の数字の覚え方 と併用するとよい。

    制裁は条番号の順に軽くなる

    罰則は法55条から法59条まで、条番号が進むほど軽い。3年・1,000万円(55条)、1年・300万円(56条)、1年・100万円(57条)、6月・30万円(58条)、罰金50万円のみ(59条)。そして法60条が両罰(55条は3億円、56条3号は1億円、他は各本条)、法61条が過料30万円。

    対応させる義務も順に思い出す。無許可工事と監督処分違反がいちばん重い55条。検査・報告・命令違反・立入検査拒否が56条。届出をしないで工事をしたのが57条。区域指定に伴う三つの届出と報告徴取違反が58条。標識が59条。軽微な変更の届出だけが過料の61条。重い順に並んでいるので、条番号を思い出せば刑の重さも思い出せる

    語呂に頼る前に構造を使う

    この分野の数字は、語呂で覚えると似た数字同士が干渉しやすい。「2・5・5・5・3000」と「1・2・2・2・500」は語呂にすると紛らわしくなる典型だ。そこで、まず構造(3ペアの章立て、令23条の参照連鎖、条番号の対応表)で骨組みを作り、どうしても残る数字だけを語呂で補う。語呂に向く数字と構造で覚えるべき数字の線引きは 語呂合わせの基本 が扱っている。

    理解度チェッククイズ

    第1問

    特定盛土等規制区域は、宅地造成等工事規制区域の内外を問わず、災害のおそれが特に大きい区域について指定することができる。

    答え:×

    法26条1項は「宅地造成等工事規制区域以外の土地の区域であつて」と明記している。二つの区域は重ならず、宅地造成等工事規制区域の中に特定盛土等規制区域を指定することはできない。同じ排他要件は造成宅地防災区域にもあり、法45条1項の括弧書きが「宅地造成等工事規制区域内の土地を除く」としている。なお法26条1項の危害の要件は「居住者等の生命又は身体に危害を生ずるおそれが特に大きい」で、法10条1項の「災害が生ずるおそれが大きい」より一段重い書き方になっている。

    第2問

    特定盛土等規制区域内で行う特定盛土等に関する工事について法27条1項の届出をした者は、届出をしたことによって手続を終えたことになり、都道府県知事から工事の計画の変更を勧告されることはない。

    答え:×

    法27条3項は、知事は届出があった場合において災害の防止のため必要があると認めるときは、当該届出を受理した日から30日以内に限り、届出をした者に対し工事の計画の変更その他必要な措置をとるべきことを勧告することができる、と定める。さらに4項で、正当な理由がなくて勧告に係る措置をとらなかったときは、相当の期限を定めて措置をとるべきことを命ずることができる。この命令に違反すると法56条3号により1年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(法人は法60条2号で1億円以下の罰金)が科される。届出制であっても勧告・命令・刑罰の梯子がかかっている。なお法28条3項により、変更の届出についても法27条2項から4項までが準用される。

    第3問

    特定盛土等規制区域内において法30条1項の許可を受けるには、原則として、工事をしようとする土地の区域内の土地について所有権、地上権、質権、賃借権、使用貸借による権利その他の使用収益を目的とする権利を有する者の全ての同意を得ている必要がある。

    答え:○

    法30条2項4号がそのとおり定めており、宅地造成等工事規制区域の法12条2項4号と同一の文言である。開発許可の基準(都市計画法33条1項14号)が「相当数の同意」で足りるのと対照的で、この差がよく問われる。ただし同号には括弧書きの例外があり、令29条2項が引く令5条2項各号の事業(土地区画整理事業、土地収用法26条1項の告示に係る事業、第一種市街地再開発事業、住宅街区整備事業、防災街区整備事業、所有者不明土地特措法の地域福利増進事業のうち使用権設定土地において行うもの)の施行に伴う工事は、全員同意の対象から外れる。設問が「原則として」としているので○になる。

    第4問

    土石の堆積に関する工事について法30条1項の許可を受けた者は、当該工事が政令で定める特定工程を含む場合、その特定工程に係る工事を終えたときに都道府県知事の中間検査を申請しなければならない。

    答え:×

    法37条1項の中間検査の対象は「当該許可に係る特定盛土等(政令で定める規模のものに限る)に関する工事」であって、土石の堆積は含まれない。宅地造成等工事規制区域側の法18条1項も「宅地造成又は特定盛土等」で、やはり土石の堆積が外れている。一方、法38条1項の定期報告は「特定盛土等又は土石の堆積」を対象とするので、土石の堆積も報告義務の対象になりうる(規模は令33条2項→令25条2項各号)。中間検査は含まず、定期報告は含む、という非対称が要点である。なお特定工程は令24条1項により「盛土をする前の地盤面又は切土をした後の地盤面に排水施設を設置する工事の工程」であり、擁壁の設置ではない。

    第5問

    造成宅地防災区域は、必要な措置が講じられて指定の事由がなくなったと都道府県知事が認めるときは、その全部または一部について指定が解除される。

    答え:○

    法45条2項が「擁壁等の設置又は改造その他前項の災害の防止のため必要な措置を講ずることにより、造成宅地防災区域の全部又は一部について同項の指定の事由がなくなつたと認めるときは……同項の指定を解除するものとする」と定める。「することができる」ではなく「するものとする」という羈束的な書き方である点、そして宅地造成等工事規制区域(法10条)と特定盛土等規制区域(法26条)には対応する解除規定が置かれていない点が、この条文の特徴だ。法45条3項により、解除についても法10条2項から6項までが準用されるので、関係市町村長の意見聴取と公示が必要で、解除は公示によって効力を生じる。

    盛土規制法は条文の対応関係を突き合わせて覚える分野なので、条番号を意識しながら肢を繰り返すのが効く。アプリの法令上の制限の肢別演習に、区域の違いと数字の出所を問う問題を収録しているので、本記事で確認した条番号を手がかりに解いてみてほしい。

    読んだ内容を、法令上の制限の肢で確かめる

    都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。

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