宅建試験AIブートラボ 宅建試験AIブートラボ

国土利用計画法|事後届出・事前届出・許可の3層

法令上の制限 読了 約23分

国土利用計画法を、事後届出・事前届出・許可の3層として整理。土地売買等の契約の3要件、面積の数え方、2週間と3週間、勧告と公表、無許可契約の無効までを条文つきで解説。

目次

    この記事は、国土利用計画法の土地取引規制を条文の構造に沿って整理するものです。許可と届出を法令横断で並べたものは法令上の制限の横断整理、数字の一覧は法令上の制限の暗記術が担当します。法令上の制限全体での位置づけは法令上の制限の頻出論点を参照してください。

    結論を先に述べます。この法律の土地取引規制は3層になっています。全国に適用される事後届出、注視区域と監視区域における事前届出、規制区域における許可。層が上がるほど規制が強くなり、違反したときの効果も変わります。事後届出は勧告と公表にとどまり契約は有効なまま、許可制では無許可の契約が効力を生じません。この差を軸に置くと、条文がばらばらに見えなくなります。

    国土利用計画法は何を規制しているか

    1条が掲げる目的

    国土利用計画法1条は、国土利用計画の策定に関し必要な事項について定めるとともに、土地利用基本計画の作成、土地取引の規制に関する措置その他土地利用を調整するための措置を講ずることにより、総合的かつ計画的な国土の利用を図ることを目的とする、としています。

    この法律が生まれた背景には、地価の急激な高騰と投機的な土地取引があります。だから土地の取引そのものを行政が把握し、必要があれば土地の使い道について口を出せる仕組みを置いています。

    ただし、規制の強さは場所によって変えられています。全国一律で最も弱い規制をかけ、地価が問題になっている区域では段階的に強めていく。この設計が3層構造になって現れます。

    規制の3層

    第一層が事後届出です。全国に適用され、一定面積以上の土地について契約を締結したら、後から届け出ます。

    第二層が事前届出です。都道府県知事が注視区域または監視区域を指定した場合に、その区域内では契約を締結する前に届け出ます。

    第三層が許可制です。規制区域が指定された場合、その区域内の土地売買等の契約には都道府県知事の許可が必要になります。

    宅建試験で中心になるのは第一層の事後届出です。事前届出と許可制は、事後届出との違いを問う形で登場することがほとんどです。

    なお、注視区域、監視区域、規制区域が実際にどこに指定されているかは時期によって変動します。指定の有無を前提にした記述は避け、制度としてどう違うかを押さえるのが確実です。

    事後届出の対象になる契約

    14条1項が定める3つの要件

    事後届出の対象は「土地売買等の契約」です。この定義は14条1項が置いており、23条1項がこれを前提にしています。

    定義を分解すると3つの要件になります。第一に契約であること。第二に土地に関する権利の移転または設定であること。第三に対価を得て行われるものであること。この3つがそろって初めて届出の対象になります。

    条文は「予約を含む」としているので、売買の予約を締結した時点で届出の対象になります。予約完結権を行使して本契約を成立させる行為は、すでに届出の対象となった予約に基づくものなので、そこで改めて届出をすることにはなりません。

    契約性を欠くもの

    相続は契約ではありません。被相続人の死亡という事実によって法律上当然に権利が移転するもので、対価の授受もありません。したがって土地売買等の契約に該当せず、届出は不要です。

    遺贈も遺言者の単独行為であって契約ではないので対象外です。包括遺贈でも同じです。時効取得も、当事者の合意によるものではないので対象外になります。

    担保権の実行としての競売による取得も届出を要しません。裁判所の手続を通じた強制的な換価であって、当事者間の合意に基づいて対価を伴って権利を移転する売買契約とは性質が違うからです。滞納処分や強制執行も同様です。物権変動の枠組みそのものは不動産物権変動で扱っています。

    権利性を欠くもの

    対象になる権利は、所有権、地上権、賃借権など、その土地を使用し収益することを目的とする権利です。

    抵当権の設定は対象外です。抵当権は担保のための権利であって、抵当権者がその土地を使うわけではないからです。共有持分の放棄も、契約ではなく単独行為なので対象になりません。

    対価性を欠くもの

    贈与は対象外です。契約ではありますが、対価を得て行われるものではないからです。

    判断が微妙になるのが賃借権や地上権の設定です。権利金その他の一時金の授受を伴う設定は、対価を得て行われるものとして届出の対象になります。これに対し、対価の授受を伴わない賃借権の設定は対価性の要件を欠くので、土地売買等の契約に該当しません。実際の出題でも、無償の賃借権設定について届出不要とする結論が問われています。

    これに対して交換は、金銭の授受がなくても対象になります。相手方の土地という反対給付があるので、対価性を満たすからです。「金銭の授受を伴わない交換だから届出不要」という記述は誤りになります。

    面積はどう数えるか

    3つの面積要件

    23条2項1号が、区域ごとの面積を定めています。イが市街化区域について2,000平方メートル、ロが市街化区域を除く都市計画区域について5,000平方メートル、ハが都市計画区域外について10,000平方メートルです。いずれも「以上」で、ちょうどの面積でも届出が必要になります。

    都市化の度合いが高いほど面積が小さくなっています。都市部では小さな土地の取引でも地価への影響が大きいので、より細かく把握する必要があるという設計です。区域区分の考え方は市街化区域と市街化調整区域で扱っています。

    注意が必要なのが準都市計画区域です。準都市計画区域は都市計画区域ではないので、面積要件はハの10,000平方メートルになります。名前が似ているので5,000平方メートルと取り違えやすいところです。

    市街化調整区域は「市街化区域を除く都市計画区域」にあたるので、5,000平方メートルです。都市計画区域の種類は都市計画法で扱っています。

    権利取得者を基準に合算する

    面積の判定は、個々の契約ごとではなく、権利取得者が取得する一団の土地の合計面積で行います。

    市街化区域を除く都市計画区域内で、C所有の3,500平方メートルとD所有の2,500平方メートルが一団の土地であり、これをEが購入した場合、Eが取得する面積は6,000平方メートルになります。5,000平方メートル以上なので、Eには届出義務が生じます。売主であるCとDは、それぞれ単独では基準に届きませんが、そもそも届出義務者ではありません。

    逆方向の場面もあります。市街化区域内でAが所有する3,500平方メートルの土地を、Bが2,000平方メートル、Cが1,500平方メートルに分けて購入した場合、判定は買主ごとに行います。Bの取得分は2,000平方メートルで基準を満たすので届出が必要、Cの取得分は1,500平方メートルなので届出は不要です。

    もとが一筆の土地であっても、取得する側が別人であれば合算しません。事後届出の義務者が権利取得者だからです。

    一団の土地とは何か

    合算の前提になる「一団の土地」は、単に隣り合っていればよいというものではありません。

    判断には2つの要素があります。ひとつが物理的な一体性で、取得する土地が接続していることです。もうひとつが計画的な一貫性で、一連の計画のもとにまとまった目的で取得されていることです。

    別々の売主から買っても、隣接する土地を同じ目的で取得するなら一団の土地になります。逆に、離れた場所にある土地を別々の目的で取得するなら、合計しても一団の土地にはなりません。

    契約が何本に分かれているかも関係ありません。契約を分ければ面積要件を回避できるとなると、制度が意味をなさなくなるからです。ひとつの目的でまとまった土地を取得しているなら、契約の本数にかかわらず合算します。

    面積を一体で見るという発想は、開発許可の場面にも似た形で現れます。規模で規制の要否を決める制度に共通する考え方です。開発許可の面積要件は開発許可の面積要件で扱っています。

    交換では取得する土地ごとに見る

    交換の場合、当事者の双方が権利を取得します。したがって、それぞれが取得する土地について、その土地の所在する区域を基準に面積要件を判定します。

    市街化区域内の3,000平方メートルと都市計画区域外の12,000平方メートルを交換する場合、前者を取得する側は市街化区域の2,000平方メートル以上を満たし、後者を取得する側は都市計画区域外の10,000平方メートル以上を満たすので、双方に届出義務が生じます。自分が手放す土地ではなく、取得する土地で判定するという点が要点です。

    届出の手続

    2週間以内に、市町村長を経由して知事へ

    23条1項は、土地売買等の契約を締結した場合には、当事者のうち当該契約により権利を取得する者が、その契約を締結した日から起算して2週間以内に、一定の事項を都道府県知事に届け出なければならないと定めています。

    3つの点が問われます。届出義務者は権利取得者、すなわち買主側だけであること。売主に届出義務はありません。期間は契約を締結した日から起算して2週間であること。「翌日から起算」でも「3週間」でも「1か月」でもありません。そして届出先は都道府県知事であることです。

    届出書は土地が所在する市町村の長を経由して提出しますが、届出の相手方はあくまで都道府県知事です。市町村長は経由するだけで、届出先ではありません。ここを入れ替える形の出題があります。

    届出事項に対価の額が含まれる

    23条1項各号が届出事項を列挙しています。当事者の氏名や住所、契約を締結した年月日、土地の所在および面積、権利の移転または設定後における土地の利用目的、そして権利の移転または設定の対価の額です。

    対価の額が届出事項に含まれている点に注意が必要です。「事後届出では対価の額は届出事項ではない」という記述は誤りになります。

    ただし、届出事項であることと、勧告の対象になることは別です。次に見るとおり、事後届出に対する勧告の対象は利用目的に限られます。届け出はさせるが、価格そのものに口出しはしない、という設計です。

    届出のあとに何が起きるか

    3週間以内の勧告

    24条1項は、都道府県知事は、届出があった場合において、その届出に係る土地の利用目的が土地利用基本計画その他の土地利用に関する計画に適合しないなどの事由があるときは、届出があった日から起算して3週間以内に、その届出をした者に対し、利用目的について必要な変更をすべきことを勧告することができるとしています。

    契約後2週間以内に届出、届出後3週間以内に勧告。2と3が続く形で覚えます。

    勧告の対象は利用目的です。対価の額について勧告することはできません。契約はすでに成立しているので、いまさら価格を変えさせても意味がないからです。事後届出という仕組みの性格から導ける結論です。

    助言という別の仕組み

    27条の2は、都道府県知事が、事後届出があった場合において、その届出をした者に対し、権利の移転または設定後における土地の利用目的について必要な助言をすることができると定めています。

    勧告よりも弱い働きかけです。ここでも対象は利用目的に限られており、対価の額は含まれません。実際の出題でも、助言の対象に対価の額を含めた記述が誤りとして問われています。

    勧告に従わなければ公表

    26条は、勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、都道府県知事はその旨および勧告の内容を公表することができると定めています。

    できるのは公表までです。勧告に従わないことに対する罰則はありません。そして、知事が契約を取り消したり、契約を無効にしたりする権限もありません。「勧告に従わない場合、知事は契約を取り消すことができる」という記述は誤りです。

    契約は有効なまま

    ここが事後届出制のもっとも重要な点です。届出をしなかったとしても、契約そのものは有効です。所有権は移転します。

    ただし届出義務違反には罰則があります。47条は、23条1項の規定に違反して届出をしなかった者を、6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処するとしています。なお、かつての「懲役」という刑名は、2025年6月1日施行の刑法改正により拘禁刑に一本化されています。

    整理すると、届出を怠れば罰則はあるが契約は有効、勧告に従わなくても罰則はなく公表されるだけ、という二段構えです。ここを混ぜた記述が繰り返し出題されます。

    届出が不要になる場合

    当事者に国や地方公共団体がいるとき

    23条2項3号により、土地売買等の契約の当事者の一方または双方が国、地方公共団体その他政令で定める法人である場合には、事後届出の規定が適用されません。

    売主が国でも、買主が地方公共団体でも、どちら側にいても届出は不要です。公的機関が当事者であれば適正な土地利用が確保されると考えられるからです。

    この適用除外は面積要件より前に働きます。都市計画区域外で国から一団の11,000平方メートルの土地を購入した場合、面積要件は満たしますが、売主が国なので届出は不要です。面積を計算する前に当事者を確認する、という順序が実戦的です。

    他の法律の手続がある場合

    民事調停法による調停に基づく場合も届出を要しません。裁判所が関与しているので、別途の把握が不要だからです。

    農地法3条1項の許可を受けることを要する場合も除外されます。農地を農地のまま移転する場面は農地法の枠組みで把握されるからです。ただし農地法5条の許可を受ける場合、すなわち転用目的の権利移動については、この除外が働きません。転用によって土地の使い道が変わるので、国土利用計画法の側でも把握する必要があるという整理です。農地法の許可の切り分けは農地法で扱っています。

    このほか、滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売による取得も届出を要しません。

    事前届出制

    注視区域と監視区域

    都道府県知事は、地価が一定の期間内に社会的経済的事情の変動に照らして相当な程度を超えて上昇し、またはそのおそれがある区域を注視区域として、5年以内の期間を定めて指定することができます。

    さらに、地価が急激に上昇し、またはそのおそれがあり、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがある区域については、監視区域として、同じく5年以内の期間を定めて指定することができます。

    どちらの区域でも、事後届出ではなく事前届出が適用されます。

    契約の前に、当事者双方が届け出る

    事前届出では、土地売買等の契約を締結しようとする当事者の双方が、契約を締結する前に届け出ます。

    事後届出が権利取得者だけであるのに対し、事前届出は売主と買主の双方に義務があります。契約前の届出なので、これから契約しようとする両方の意思を確認する必要があるからです。

    そして届出をした者は、届出をした日から起算して6週間を経過する日までは、その契約を締結してはならないとされています。裏返せば、契約締結の少なくとも6週間前までに届け出る必要があるということです。この6週間のあいだに知事が審査し、必要があれば勧告をします。

    勧告の対象に対価が入る

    事前届出に対する勧告では、利用目的だけでなく予定対価の額も対象になります。

    契約前なので、価格が高すぎると判断すれば、契約を結ぶ前に是正を求められるからです。事後届出で対価の額が勧告の対象にならないのと、ちょうど裏返しの関係です。届出のタイミングが結論を決めています。

    6週間を待たずに契約できる場合

    6週間という期間は、知事が審査するための時間です。したがって、審査が早く終われば待つ必要がなくなります。

    届出をした者が、知事から勧告をしない旨の通知を受けたときは、6週間の経過を待たずに契約を締結できます。勧告を受けた場合も、その時点で行政の判断が示されているので、期間の拘束から離れます。

    「事前届出をした場合、いかなる場合も6週間を経過しなければ契約を締結できない」という記述は、この例外を落としているので誤りです。6週間は上限であって、必ず待たされる期間ではありません。

    注視区域と監視区域はどこが違うか

    2つの区域は、いずれも事前届出が適用される点で共通していますが、規制の強さが違います。

    注視区域は、地価が相当な程度を超えて上昇し、またはそのおそれがある区域です。面積要件は事後届出と同じで、市街化区域2,000平方メートル、それ以外の都市計画区域5,000平方メートル、都市計画区域外10,000平方メートルです。

    監視区域は、地価が急激に上昇し、またはそのおそれがあり、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがある区域です。地価の動きがより深刻な区域なので、規制の網を細かくする必要があります。そこで面積要件を都道府県の規則で定めることとし、事後届出の基準より小さい面積から届出の対象にできるようにしています。

    つまり、注視区域は「タイミングを前倒しした事後届出」、監視区域は「さらに網を細かくしたもの」という関係です。どちらも指定は都道府県知事が5年以内の期間を定めて行います。

    監視区域では面積要件が下がる

    面積要件にも違いがあります。注視区域では事後届出と同じ面積要件が使われますが、監視区域では都道府県の規則で届出対象面積を定めます。

    この面積は事後届出の要件より小さく定められます。したがって、市街化区域内の2,500平方メートルの土地であっても、監視区域に指定されていれば事前届出の対象になりえます。市街化区域の2,000平方メートル以上という基準を満たしているので当然ですが、規則によってはさらに小さい面積でも対象になります。

    規制区域の許可制

    契約に許可が必要になる

    規制区域は、投機的取引が相当範囲にわたり集中して行われ、またはそのおそれがあり、地価が急激に上昇し、またはそのおそれがある区域として指定されるものです。

    14条1項は、規制区域内に所在する土地について土地売買等の契約を締結しようとする場合には、当事者は都道府県知事の許可を受けなければならないと定めています。届出ではなく許可です。

    面積要件がありません。規制区域内であれば、面積の大小を問わず許可が必要になります。

    無許可の契約は効力を生じない

    14条3項は、許可を受けないでした土地売買等の契約は、その効力を生じないと定めています。

    ここが3層のなかで決定的に違う点です。事後届出も事前届出も、届出を怠れば罰則はありますが契約自体は有効です。これに対し規制区域では、許可がなければ契約の効力そのものが生じません。代金を払っても所有権は移りません。

    規制の強さが効果に対応しています。届出は行政に知らせる仕組みなので、知らせなかったことを理由に私人間の契約まで無効にはしない。許可は行政の判断を待つ仕組みなので、待たずにした契約には効力を認めない。この対応で覚えます。条件と契約の効力の関係は条件と期限で扱っています。

    区域が指定されると事後届出は使われない

    3層は重ねてかかるものではありません。強いほうが適用されます。

    23条1項は、規制区域、注視区域または監視区域に所在する土地については事後届出の対象から外しています。規制区域なら許可制、注視区域と監視区域なら事前届出が適用されるので、後から届け出させる必要がないからです。

    したがって、ある土地について「事後届出も事前届出も必要」という状態は生じません。その土地がどの区域にあるかで、適用される仕組みが1つ決まります。

    問題文が「注視区域に所在する土地について」と書いていたら、事後届出の知識をいったん外して事前届出の枠で考える。「規制区域内の土地について」と書いていたら許可制で考える。区域の指定が最初の分岐点になります。

    3層の違いを効果で押さえる

    タイミング、義務者、勧告の対象

    3層の違いを3つの軸で並べます。

    届出や許可のタイミングは、事後届出が契約後2週間以内、事前届出が契約前で届出から6週間は締結不可、許可制が契約前です。

    義務を負う者は、事後届出が権利取得者のみ、事前届出が当事者双方、許可制も当事者です。

    行政が口を出せる範囲は、事後届出が利用目的のみ、事前届出が利用目的と予定対価の額、許可制は許可そのものの判断です。

    違反したときの効果

    そして効果です。事後届出を怠れば6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、契約は有効。事前届出を怠って契約を締結した場合も同様に罰則があり、契約は有効。規制区域で許可を受けずに締結した契約は効力を生じません。

    勧告に従わない場合は、事後届出でも事前届出でも公表にとどまり、罰則はありません。

    「届出を怠った場合の罰則」と「勧告に従わない場合の効果」を混ぜる出題が定番なので、この2つは別々に覚える必要があります。

    隣接する届出制度

    公有地の拡大の推進に関する法律

    似た仕組みを持つ法律に、公有地の拡大の推進に関する法律があります。都市計画施設の区域内の土地など一定の土地を有償で譲り渡そうとする者は、あらかじめ都道府県知事に届け出なければなりません。

    国土利用計画法の事後届出と比べると、届出義務者が譲渡人であること、契約の前に届け出ることの2点が違います。同じ「都道府県知事への届出」でも、誰がいつ出すのかが逆になっています。制度の整理はその他の法令上の制限で扱っています。

    重要土地等調査法

    もうひとつ、近年の出題に登場しているのが重要土地等調査法です。防衛関係施設や国境離島などの周辺区域について、特別注視区域内にある一定規模以上の土地等に関する所有権等の移転または設定をする契約を締結する場合に、当事者があらかじめ内閣総理大臣に届け出る義務を負うという制度です。

    面積の基準は200平方メートル以上とされています。届出先が都道府県知事ではなく内閣総理大臣である点が、国土利用計画法との違いです。

    宅建業者はどう関わるか

    宅地建物取引業者が売買を媒介する場合、届出義務を負うのは業者ではなく権利取得者です。しかし実務では、業者が届出書の作成や提出を手伝うのが通例です。

    期限が契約締結日から2週間と短いため、買主が制度を知らないまま放置すると罰則の対象になりかねません。面積要件に該当する取引かどうかは、契約に入る前の物件調査の段階で判定できます。所在する区域と面積が分かれば足りるからです。

    そして、届出が必要になること自体が買主にとっての負担であり、利用目的について勧告を受ける可能性もあります。だから次に見るとおり、重要事項説明の対象になっています。物件調査の進め方は物件調査の実務、媒介の際の手続は媒介契約で扱っています。

    重要事項説明との関係

    国土利用計画法に基づく制限は、宅地建物取引業法35条1項2号の法令に基づく制限として、重要事項説明の対象になります。同法施行令3条が説明すべき制限を列挙しており、国土利用計画法もそこに含まれています。

    もっとも、事後届出は契約締結後の手続なので、説明の場面で問題になるのは主に事前届出や許可が必要な区域に該当するかどうかです。重要事項説明の全体像は重要事項説明で扱っています。

    試験での出題ポイント

    期間と起算日を動かす

    事後届出の期間は、契約を締結した日から起算して2週間以内です。「翌日から起算」「3週間以内」「1か月以内」といった形で、起算日と期間の両方が入れ替えられます。

    勧告の期限は届出があった日から起算して3週間以内、事前届出後に契約を締結できない期間は6週間です。2週間、3週間、6週間の3つを取り違えないようにします。

    届出義務者と届出先をすり替える

    事後届出の義務者は権利取得者のみです。「当事者双方が届け出なければならない」という記述は、事前届出の内容を事後届出に持ち込んだ誤りです。

    届出先は都道府県知事で、市町村長は経由するだけです。「市町村長に届け出る」という記述は誤りになります。

    面積の数え方を変える

    一団の土地の合算は権利取得者ごとに行います。売主が一筆の土地を複数の買主に分割して売った場合、買主ごとに判定するので、それぞれが基準に満たなければ届出は不要です。

    準都市計画区域を都市計画区域として扱わせる形もあります。準都市計画区域は都市計画区域外なので10,000平方メートルです。市街化調整区域は市街化区域を除く都市計画区域なので5,000平方メートルです。

    適用除外を見落とさせる

    当事者の一方または双方が国、地方公共団体等である場合には届出が不要です。面積要件を満たしていても不要になるので、面積の計算に気を取られると誤ります。

    選択肢に「国」「県」「市」が登場したら、まず当事者を確認する、という反応を作っておきます。

    勧告の効果を強くする

    「勧告に従わない場合、知事は契約を取り消すことができる」「勧告に従わない者には罰則が適用される」という記述はいずれも誤りです。公表にとどまります。

    逆に「届出を怠っても罰則はない」という記述も誤りです。47条の罰則があります。勧告に従わないことと、届出を怠ることは別の話です。

    対価の扱いを入れ替える

    対価の額は事後届出の届出事項に含まれます。しかし勧告や助言の対象にはなりません。「届出事項ではない」も「勧告の対象になる」も、どちらも誤りです。

    事前届出では、予定対価の額が勧告の対象になります。事後と事前で結論が逆になる点が狙われます。

    覚え方・整理の仕方

    3要件で対象かどうかを判定する

    土地売買等の契約かどうかは、契約性、権利性、対価性の3つで判定します。

    契約か。使用収益を目的とする権利の移転または設定か。対価を得て行われるか。相続と時効取得と競売は契約性を欠き、抵当権は権利性を欠き、贈与と無償の賃借権設定は対価性を欠く。どの要件で落ちるのかまで言えるようにしておくと、初めて見る場面でも判定できます。

    数字は「2・3・6」と「2・5・10」で持つ

    期間は2週間、3週間、6週間。面積は2,000、5,000、10,000平方メートル。

    期間のほうは、契約から届出まで2週間、届出から勧告まで3週間、事前届出から契約まで6週間。面積のほうは、市街化区域、それ以外の都市計画区域、都市計画区域外の順で大きくなります。数字の横断整理は法令上の制限の暗記術に集めています。

    「事後は目的だけ、事前は値段も」

    勧告の対象は、事後届出が利用目的だけ、事前届出が利用目的と予定対価の額です。

    理由から導けます。事後届出は契約が成立した後なので、いまさら価格を変えさせられない。事前届出は契約の前なので、価格にも口を出せる。タイミングが権限の範囲を決めている、と理解しておけば取り違えません。

    効果は「届出は有効、許可は無効」

    3層のうち、契約の効力に影響するのは許可制だけです。

    届出は行政に知らせる仕組みなので、知らせなくても私人間の契約は有効。許可は行政の判断を待つ仕組みなので、待たずにした契約は効力を生じない。この一言で、事後届出も事前届出も規制区域もまとめて処理できます。

    判定は「当事者、面積、区域」の順で見る

    問題文を読む順序も決めておきます。

    まず当事者を見る。国や地方公共団体が入っていれば、そこで終わりです。次に取得する面積を見る。権利取得者ごとに合算します。最後に土地の所在する区域を見て、2,000か5,000か10,000かを当てはめる。

    面積から入ると、適用除外を見落とします。当事者から入るのが安全です。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 市街化区域内において、Aが所有する面積3,500平方メートルの土地について、Bが2,000平方メートル、Cが1,500平方メートルをそれぞれ分割して購入した場合、BとCはいずれも事後届出を行わなければならない。

    答えを見る 誤り。事後届出の義務者は権利取得者であり、面積の判定もその者が取得した面積を基準に行います(国土利用計画法23条1項、23条2項1号イ)。市街化区域の基準は2,000平方メートル以上なので、Bの取得分2,000平方メートルは届出が必要ですが、Cの取得分1,500平方メートルは基準に満たないため届出は不要です。もとが一筆の土地であっても、取得する者が別であれば合算しません。

    Q2. 都市計画区域外において、国が所有する一団の土地である6,000平方メートルと5,000平方メートルの土地を購入した者は、事後届出を行う必要がある。

    答えを見る 誤り。国土利用計画法23条2項3号により、土地売買等の契約の当事者の一方または双方が国、地方公共団体その他政令で定める法人である場合には、事後届出の規定が適用されません。売主が国であるため、買主が取得する面積を問わず届出は不要です。なお面積だけを見れば、都市計画区域外の基準である10,000平方メートル以上を合計11,000平方メートルで満たしていますが、当事者による適用除外が先に働きます。

    Q3. 事後届出をした者が、都道府県知事の勧告に従わなかった場合、知事はその土地売買等の契約を取り消すことができる。

    答えを見る 誤り。勧告を受けた者がこれに従わないときに知事ができるのは、その旨および勧告の内容を公表することにとどまります(26条)。契約を取り消したり無効にしたりする権限はなく、勧告に従わないこと自体への罰則もありません。契約の効力が否定されるのは、規制区域内で許可を受けずに締結した場合だけです(14条3項)。

    Q4. 事後届出において、権利の移転または設定の対価の額は届出事項ではない。

    答えを見る 誤り。23条1項各号が届出事項を列挙しており、そこには権利の移転または設定の対価の額が含まれています。ただし、届出事項であることと勧告の対象になることは別です。事後届出に対する勧告および助言の対象は土地の利用目的に限られ、対価の額は含まれません(24条1項、27条の2)。事前届出では予定対価の額も勧告の対象になるので、対比して覚えます。

    Q5. 監視区域に指定された市街化区域内に所在する2,500平方メートルの土地について売買契約を締結しようとする当事者は、契約締結の少なくとも6週間前までに事前届出を行わなければならない。

    答えを見る 正しい。監視区域では、都道府県の規則で定める届出対象面積以上の一団の土地について土地売買等の契約をしようとする当事者が、契約締結前にあらかじめ届け出なければなりません。この面積は事後届出の要件より小さく定められるため、市街化区域内の2,500平方メートルは対象になりえます。そして届出をした者は、届出をした日から起算して6週間を経過する日までその契約を締結できません。事後届出が権利取得者のみであるのに対し、事前届出は当事者双方が義務を負う点も押さえます。

    まとめ

    国土利用計画法の土地取引規制を整理します。

    規制は3層です。全国に適用される事後届出、注視区域と監視区域における事前届出、規制区域における許可制。層が上がるほど規制が強くなります。

    事後届出の対象は「土地売買等の契約」で、契約性、権利性、対価性の3要件を満たすものです(14条1項)。相続、遺贈、時効取得、競売は契約性を欠き、抵当権の設定は権利性を欠き、贈与や無償の賃借権設定は対価性を欠くため対象外です。交換は金銭の授受がなくても対象になります。

    面積要件は、市街化区域が2,000平方メートル以上、市街化区域を除く都市計画区域が5,000平方メートル以上、都市計画区域外が10,000平方メートル以上です(23条2項1号)。準都市計画区域は都市計画区域外の扱いになります。判定は権利取得者が取得する一団の土地の合計で行います。

    手続は、権利取得者が契約を締結した日から起算して2週間以内に、市町村長を経由して都道府県知事に届け出ます(23条1項)。対価の額は届出事項に含まれますが、勧告と助言の対象は利用目的に限られます(24条1項、27条の2)。勧告は届出があった日から起算して3週間以内で、従わない場合は公表されるにとどまります(26条)。届出を怠れば6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金ですが(47条)、契約は有効なままです。

    事前届出は当事者双方が契約前に行い、届出から6週間は契約を締結できません。勧告の対象に予定対価の額が加わります。規制区域では許可が必要で、許可を受けないでした契約は効力を生じません(14条3項)。契約の効力に影響するのは許可制だけ、という一点が3層の決定的な違いです。

    宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングでは、法令上の制限の問22にあたる国土利用計画法の肢を論点別に演習できます。当事者、面積、区域の順に確認する手順で進めてください。

    読んだ内容を、法令上の制限の肢で確かめる

    都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。

    関連記事

    法令上の制限

    令和8年度に影響する法改正まとめ

    Android版アプリの先行テスターを募集しています

    正式公開に先立ち、先行してご利用いただける方を募集しています。学習記録や有料プランはWeb版と同じアカウントで、そのまま引き継げます。3ステップで、通常その場で使い始められます。

    1
    テスターグループに参加する

    お使いのGoogleアカウントで参加ボタンを押すだけです。承認を待つ必要はありません。

    参加ページを開く
    2
    テスト版を受け取る

    手順1と同じGoogleアカウントでログインしたAndroid端末で受け取りページを開き、「テスターになる」を押してGoogle Playからインストールします。

    受け取りページを開く
    3
    いつものアカウントでログインする

    Web版と同じメールアドレス・パスワードでログインすれば、学習記録がそのまま表示されます。

    「まだご利用いただけません」と表示された場合は、反映待ちの可能性があります。時間をおいて再度お試しいただくか、info@takken-bootlab.com までお知らせください。