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物件調査|35条の説明事項から逆算して決める

不動産の基礎知識 読了 約34分

物件調査は35条の説明義務を裏返したものです。宅建業法に調査義務の条文はなく、条文の書きぶりが調査の要否を分けます。石綿と耐震診断に調査義務がない理由を条文から解説します。

目次

    本記事の役割 — 物件調査を、35条の説明事項を裏返したものとして整理します。何を説明する義務があるかで、何を調べる必要があるかが決まるからです。
    説明事項そのものの一覧と解説は35条書面の記載事項一覧、区分所有建物の追加事項は区分所有建物の重要事項説明、貸借に固有の項目は賃貸の重要事項説明にあります。この記事は調査という行為の側から書きます。

    物件調査を「登記簿、役所、現地、インフラ」という調査先の分類で覚えると、項目の羅列になります。項目が抜けたときに気づく手段もありません。

    先に結論を三つ述べます。

    第一に、宅地建物取引業法には「調査しなければならない」と定めた条文がありません。35条は「説明をさせなければならない」という説明義務の規定です。それでも調査が必要になるのは、説明できる状態を作らなければ説明義務を履行できないからです。したがって調査の範囲は、説明事項から逆算する以外に決めようがありません。説明事項が調査範囲の定義そのものです。

    第二に、条文の書きぶりが、調査義務の有無を分けています。「その区域内にあるときは、その旨」と書かれている事項は、調べなければ該当するかどうかが分かりません。これに対し「記録されているときは、その内容」と書かれている事項は、あれば説明し、なければ説明しないだけで、記録を作りに行く義務はありません。石綿と耐震診断がこれにあたります。この非対称が、この記事で最も重要な部分です。

    第三に、調査すべき範囲は契約類型で大きく変わります。とくに法令上の制限は、政令で列挙されたものに限られ、しかも売買・交換、宅地の貸借、建物の貸借で三段に分かれています。建物の貸借では、法令上の制限として説明すべきものは三つしかありません。用途地域も建蔽率も容積率も入りません。

    以下では、調査義務の所在を確認し、書きぶりによる区別を立て、そのうえで説明事項ごとに何をどこまで調べるのかを見ていきます。条文番号は、断りのない限り宅地建物取引業法のものです。

    宅建業法に「調査義務」の条文はない

    35条は説明義務の規定である

    35条1項は「宅地建物取引業者は、(中略)その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない」と定めています。

    義務づけられているのは説明であって、調査ではありません。条文のどこにも「調査しなければならない」とは書かれていません。

    それでも調査が必要になるのは、単純な理由です。説明する内容を持っていなければ、説明という行為ができないからです。登記記録に何が記録されているかを知らずに、登記された権利の種類と内容を説明することはできません。調査は、説明義務を履行するための前提として要求されているのであって、それ自体が独立した義務として定められているわけではありません。

    この理解が実務上も学習上も効きます。調査項目のリストは、35条1項各号と、そこから委任された政令・省令の条文そのものです。別のリストを覚える必要はありません。

    明文で調査に近い義務を課しているのは34条の2第2項

    例外的に、調べることを正面から求めている条文が一つあります。媒介契約の規定です。

    34条の2第1項は、売買または交換の媒介契約を締結したときに交付する書面の記載事項を定めており、その2号が「当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額」です。そして同条2項が「宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない」と定めています。

    根拠を明らかにする以上、根拠になる情報を持っている必要があります。取引事例、公的な価格指標、物件の個別事情。価額の意見について、条文が実質的に調査を要求している形です。媒介契約の規律全体は媒介契約の3類型にまとめています。

    なお、この根拠の明示は書面によることまでは条文が求めていません。求められているのは根拠を明らかにすることです。

    47条1号は「故意」を要件としている

    もう一つ、調査と関係する条文が47条です。

    47条1号は、契約の締結について勧誘をするに際し、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為を禁止しています。対象となる事項は四つに分かれていて、イが35条1項各号・2項各号に掲げる事項、ロが35条の2各号(供託所等に関する説明)、ハが37条1項各号・2項各号(1号を除く)、そしてニが、これら以外の「宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件」などで、相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるものです。

    ここで押さえるべきは二点です。

    第一に、要件が「故意」であることです。知っていて告げなかった場合を捉える規定なので、調べなかったために知らなかった場合は、この条文には直接あたりません。47条は調査義務の根拠としては働きません。

    第二に、ニの範囲が35条より広いことです。35条1項各号に列挙されていない事項でも、判断に重要な影響を及ぼすものであれば、知っていて告げないことは禁止されます。環境や交通の利便がここに入っている点が要点で、現地で見て分かることを黙っていてよいわけではないということです。禁止行為の全体は宅建業法47条の禁止行為、説明義務が条文ごとにどう違うかは宅建業者の説明義務にまとめています。

    三つの条文の関係

    整理すると、こうなります。

    35条が説明事項を列挙し、そこから逆算して調査すべき範囲が決まります。34条の2第2項が、価額の意見について根拠を持つことを求めます。47条1号が、知った事実を隠すことを禁じ、しかも対象は35条の列挙より広い。

    調べる範囲を決めるのは35条、調べた結果を隠せなくするのが47条という役割分担です。そして47条ニの広さがあるため、35条の列挙だけを機械的に埋めれば足りるわけではないという帰結になります。

    条文の書きぶりが調査の要否を分ける

    ここが本記事の中心です。

    二つの型を見分ける

    35条とその委任先の条文を読むと、説明事項の書きぶりが二つの型に分かれていることが分かります。

    第一の型は「〜であるときは、その旨」「〜にあるときは、その旨」です。該当するかどうかは客観的に決まっていて、調べれば分かります。逆に言えば、調べなければ該当するかどうかが分かりません。この型の事項には、事実上の調査が必要になります。

    第二の型は「〜が記録されているときは、その内容」「〜を受けたものであるときは、その内容」です。この型では、記録や結果が存在するかどうかが要件になっています。存在すれば内容を説明し、存在しなければ説明する対象がありません。そして、存在しないものを作りに行く義務は条文のどこにもありません。

    石綿の使用の有無の調査(施行規則16条の4の3第4号)

    第二の型の代表例です。条文はこう定めています。

    「当該建物について、石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容

    「調査の結果が記録されているとき」が要件です。したがって、宅地建物取引業者がしなければならないのは、そのような記録が存在するかどうかを売主や管理者に確認し、あればその内容を説明することです。

    記録がない場合に、業者が石綿の調査を実施する義務はありません。専門的な分析を要する調査であり、それを媒介業者に義務づける条文は存在しません。記録がなければ「記録がない」という状態のまま取引に進みます。

    ここは繰り返し狙われる部分です。「宅地建物取引業者は、建物について石綿使用の有無の調査を実施し、その結果を説明しなければならない」という記述は誤りです。実施義務と説明義務を入れ替える形の作問になります。

    耐震診断(同5号)

    同じ型がもう一つあります。

    「当該建物(昭和五十六年六月一日以降に新築の工事に着手したものを除く。)が建築物の耐震改修の促進に関する法律第四条第一項に規定する基本方針のうち同条第二項第三号の技術上の指針となるべき事項に基づいて次に掲げる者が行う耐震診断を受けたものであるときは、その内容

    要点は三つです。

    第一に、「耐震診断を受けたものであるとき」が要件です。石綿と同じく、業者に耐震診断を実施する義務はありません。

    第二に、昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手した建物は除かれます。新耐震基準が適用される建物なので対象外という趣旨です。「以降」であって「以前」ではない点、そして基準になるのが新築工事に着手した日であって完成日や引渡し日ではない点を確認してください。

    第三に、診断を行う者が条文で限定されています。指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関、地方公共団体の四つです。この四つ以外の者が行った診断は、この号の対象になりません。

    建物状況調査(35条1項6号の2)

    既存の建物については、35条1項6号の2が二つの事項を定めています。

    が「建物状況調査(実施後国土交通省令で定める期間を経過していないものに限る。)を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要」。

    が「設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況」です。

    イも第二の型に近いのですが、書きぶりが少し違います。「実施しているかどうか」を説明させるので、実施していない場合には「実施していない」と説明することになります。記録がなければ説明対象がない石綿とは、ここが違います。ただし、業者が建物状況調査を実施する義務がない点は同じです。

    「国土交通省令で定める期間」は施行規則16条の2の2が定めており、1年です。ただし鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等については2年とされています。この期間を過ぎた調査は、実施していないものとして扱われます。

    ロの「国土交通省令で定める書類」は施行規則16条の2の3が列挙しており、建築確認の申請書と確認済証、検査済証、建物状況調査の結果についての報告書、既存住宅に係る建設住宅性能評価書などが挙がっています。ここで説明するのは書類の内容ではなく「保存の状況」、つまりあるかないかです。

    なお、建物状況調査を実施する者も限定されています。施行規則15条の8により、建築士であって、かつ国土交通大臣が定める講習を修了した者です。両方を満たす必要があります。

    そして媒介契約の側では、34条の2第1項4号が、既存の建物のときは建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を媒介契約書面に記載させています。あっせんであって、実施ではありません。

    「調べないと分からない」型はこちら

    これに対して、第一の型に属するのが災害関連の四つです。施行規則16条の4の3の1号から3号の2までがこれにあたります。

    造成宅地防災区域内にあるときは、その旨。土砂災害警戒区域内にあるときは、その旨。津波災害警戒区域内にあるときは、その旨。そして水防法施行規則11条1号の図面に位置が表示されているときは、その図面における所在地

    いずれも、区域の指定は公表されているので、調べれば必ず分かります。分かる以上、調べていなければ説明を落とすことになります。この型には実質的な調査が必要です。

    登記記録(1号)、法令上の制限(2号)、私道負担(3号)、供給施設と排水施設(4号)も同じで、いずれも調べなければ説明内容が手元に生じません。

    区別を一文で持っておく

    「あるかないかが客観的に決まっているもの」は調べる。「記録や結果が存在するかどうか」が要件になっているものは、存在を確認するだけで足り、作りに行く義務はない。

    石綿、耐震診断、建物状況調査。この三つが「調査義務のない説明事項」です。三つとも建物についての事項である点も、まとめて覚える助けになります。

    登記記録の調査(35条1項1号)

    条文が求めているもの

    1号は「当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあつては、その名称)」と定めています。

    求められているのは二つです。登記された権利の種類と内容、そして登記名義人または表題部所有者の氏名。氏名だけであって、住所までは条文に書かれていません。

    この事項は四つの契約類型すべてで必要です。建物を借りるだけの人にも説明します。借りようとしている建物に抵当権が設定されていれば、実行されたときに明渡しを求められる可能性があるからです。

    どこを見るか

    登記記録は表題部、権利部の甲区、権利部の乙区の三層でできています。表題部が不動産の物理的な現況、甲区が所有権に関する事項、乙区が所有権以外の権利に関する事項です。

    1号の「登記された権利」は甲区と乙区の両方にまたがります。甲区で確認するのは所有権の登記名義人と、差押えや仮処分、買戻特約といった所有権に関する登記です。乙区で確認するのは抵当権、根抵当権、地上権、地役権、賃借権などです。表題部からは、所有権の登記がない不動産について表題部所有者の氏名を取ります。

    読み方そのものは不動産登記簿の読み方に甲区・乙区の構造から整理してあるので、この記事では繰り返しません。

    条文が求めていないもの

    調査の範囲を決めるうえで、求められていないものを確認しておくほうが実益があります。

    登記されていない権利は、1号の対象ではありません。未登記の賃借権や、登記のない占有者の存在は、この号では拾えません。ただし、知っていて告げなければ47条1号ニの問題になります。

    登記記録の内容が真実かどうかの調査も求められていません。日本の不動産登記に公信力はなく、登記名義人が真の所有者であることは保証されていません。1号が求めているのは、登記記録にそう記録されているという事実の説明です。

    面積の実測も求められていません。登記記録上の地積と実測面積が食い違うことは珍しくありませんが、1号の説明対象は登記された権利であって面積ではありません。売買の目的物の面積は、37条書面の記載事項(宅地建物を特定するために必要な表示)として別に扱われます。記載事項の切り分けは37条書面の記載事項にあります。

    法令上の制限の調査(35条1項2号)

    政令で列挙されたものに限られる

    2号は「都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別に応じて政令で定めるものに関する事項の概要」と定めています。

    「政令で定めるもの」という限定が入っています。世の中のあらゆる法令上の制限が説明対象になるのではなく、宅地建物取引業法施行令3条が列挙した条項に基づく制限だけが対象です。ここが2号の構造です。

    施行令3条1項は、都市計画法、建築基準法、古都保存法、都市緑地法、生産緑地法、景観法、土地区画整理法、農地法、宅地造成及び特定盛土等規制法、自然公園法、文化財保護法など、多数の法律について条項を特定して列挙しています。「農地法」とだけ書かれているのではなく、農地法3条1項、4条1項および5条1項という形で条項が指定されています。許可の切り分けは農地法にまとめています。

    三段構えになっている

    施行令3条は三つの項に分かれており、これが調査範囲を決定的に変えます。

    1項が、宅地または建物の貸借の契約以外の契約、つまり売買と交換についてのものです。列挙は最も広く、都市計画法の開発許可や建築制限、建築基準法の接道義務・用途制限・建蔽率・容積率・高さ制限、農地法、盛土規制法などが並びます。

    2項が、宅地の貸借の契約についてのものです。1項に規定する制限のうち、都市計画法52条の3第2項・4項、57条2項・4項、67条1項・3項などいくつかの規定に基づくものを除いたもの、という書き方をしています。1項から一部を引いた形です。

    3項が、建物の貸借の契約についてのものです。ここが劇的に変わります。条文はこう定めています。

    「法第三十五条第一項第二号の法令に基づく制限で政令で定めるものは、建物の貸借の契約については、新住宅市街地開発法第三十二条第一項、新都市基盤整備法第五十一条第一項及び流通業務市街地の整備に関する法律第三十八条第一項の規定に基づく制限で、当該建物に係るものとする。」

    三つだけです。

    建物の貸借では用途地域も建蔽率も説明事項ではない

    この帰結は、実務でも試験でも重い意味を持ちます。

    建物を借りようとしている人に対して、用途地域を説明する義務はありません。建蔽率も容積率も、接道義務も、開発許可の要否も、農地法の許可も、盛土規制法の規制区域も、2号の説明事項には入りません。施行令3条3項が挙げる三つの法律の制限だけです。

    理由は考えれば分かります。これらの制限は、その土地に建物を建てたり土地の形質を変更したりする人に向けられたものです。すでに建っている建物を借りて使う人にとって、建蔽率が何パーセントかは行動の前提になりません。説明事項は、その立場の人が判断に使う情報に絞られているという設計です。

    したがって調査の側も変わります。建物の賃貸借の媒介で、役所の都市計画課に用途地域を確認する作業は、2号の履行としては不要です。もちろん、別の理由で確認する価値がある場合はありますが、35条の説明義務から要求されるものではありません。

    主要な法律を押さえる

    売買・交換の場合に調査対象となる主要なものを挙げておきます。いずれも施行令3条1項に条項が列挙されています。

    都市計画法。開発許可(29条1項・2項)、市街化調整区域内の建築制限(43条1項)、都市計画施設等の区域内の建築制限(53条1項)、地区計画等の区域内の制限(58条の2)など。制度は開発許可制度都市計画制限にあります。

    建築基準法。接道義務(43条)、道路内の建築制限(44条1項)、用途地域内の用途制限(48条)、容積率(52条)、建蔽率(53条)、高さ制限(55条・56条)、防火地域・準防火地域(61条)など。接道義務は接道義務、建蔽率と容積率は建ぺい率と容積率、用途制限は用途地域13種類と建築制限にまとめています。

    宅地造成及び特定盛土等規制法(2023年5月26日に旧・宅地造成等規制法から改組されたもので、盛土規制法と略されます)。宅地造成等工事規制区域内の許可(12条1項)、特定盛土等規制区域内の許可(30条1項)と届出(27条1項)などが列挙されています。区域と手続の全体像は盛土規制法にあります。

    農地法。3条1項、4条1項、5条1項の許可です。

    なお、国土利用計画法の事後届出は、施行令3条1項の列挙に含まれていません。届出義務は契約後に買主に生じるもので、35条の説明事項としてではなく別の枠組みで扱われます。制度そのものは国土利用計画法にあります。

    私道に関する負担(35条1項3号)

    3号は「当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは、私道に関する負担に関する事項」と定めています。

    条文の書き方に注意してください。「建物の貸借の契約以外のもの」なので、除かれるのは建物の貸借だけです。宅地の売買・交換はもちろん、宅地の貸借でも必要です。「貸借では不要」と大づかみに覚えると、宅地の貸借で誤ります。

    理由も同じ発想で説明できます。私道の負担は、土地の所有者や土地を使う者に及ぶものです。建物を借りる人は敷地の負担を引き受ける立場にないため、除かれています。宅地を借りる人は敷地そのものを使うので、除かれません。

    調査としては、対象地が接している道路が公道か私道かを確認し、私道であればその負担の内容、すなわち私道部分の面積、持分、通行に関する取決め、維持管理費用の分担などを確認します。

    道路の調査は二つの説明事項にまたがる

    道路の調査は、単独の説明事項ではありません。35条1項2号(法令上の制限)と3号(私道負担)の両方にまたがるため、独立させて確認しておく価値があります。

    建築基準法上の「道路」かどうかが先

    建築基準法43条1項は「建築物の敷地は、道路(中略)に二メートル以上接しなければならない」と定めています。接道義務です。

    ここでいう「道路」は日常語ではなく、42条が定義しています。42条1項は「この章の規定において『道路』とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(特定行政庁が指定する区域内においては、六メートル)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう」として、五つの号を挙げています。道路法による道路、都市計画法や土地区画整理法などによる道路、この章の規定が適用されるに至った際に現に存在する道、事業計画があり2年以内に執行予定として特定行政庁が指定したもの、そして5号が位置指定道路、すなわち特定行政庁からその位置の指定を受けた道です。

    したがって、接している道が建築基準法上の道路にあたるかどうかは、幅員と、42条1項各号のどれに該当するかで決まります。これは現地で見ただけでは判定できず、特定行政庁の窓口で確認する必要があります。道路の調査が役所調査になる理由がここにあります。

    接道義務の詳細と例外は接道義務にまとめています。

    42条2項道路とセットバック

    42条2項は「都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更(中略)によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(前項の区域内においては三メートル)の線をその道路の境界線とみなす」と定めています。

    要件を分解すると三つです。幅員が4メートル未満であること。この章の規定が適用されるに至った際に現に建築物が立ち並んでいたこと。特定行政庁が指定したこと。三つ目が要件になっているので、幅員4メートル未満の道がすべて2項道路になるわけではありません。指定の有無は役所で確認します。

    そして効果が、中心線から2メートルの線を道路境界線とみなすことです。実際の道の端より敷地側に境界線が引かれるので、建物を建てられる範囲がその分だけ後退します。これがセットバックです。みなされた境界線から道路側の部分は道路として扱われるため、建蔽率や容積率を計算するときの敷地面積にも算入されません。

    ただし書もあります。道が崖地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合は、中心線からではなく、その崖地等の道の側の境界線から道の側に水平距離4メートルの線が道路境界線とみなされます。反対側に後退の余地がないため、片側だけで4メートルを確保する形です。

    調査で確認する三点

    以上から、道路について確認すべきことは三つに絞れます。

    第一に、接している道が建築基準法上の道路にあたるか、あたるなら42条1項各号のどれか、あるいは2項道路か。これで接道義務を満たすかどうかと、セットバックの要否が決まります。

    第二に、その道が公道か私道か。私道であれば35条1項3号の私道負担の説明が必要になります。位置指定道路は私道であることが通常なので、42条1項5号に該当する場合は3号の調査が続きます。

    第三に、幅員。4メートル未満なら2項道路の指定を受けているかを確認し、指定があればセットバックの量を算出します。

    一つの調査で二つの説明事項が埋まるので、法令上の制限の調査と私道負担の調査は同時に進めるのが自然です。

    供給施設と排水施設(35条1項4号)

    4号は「飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)」と定めています。

    括弧書きが要点です。整備されている場合は整備の状況を説明すれば足ります。整備されていない場合は、それだけでは足りず、整備の見通しと、その整備について特別の負担があるかどうかまで説明することになります。

    「整備されていないので説明することはありません」とはならない、という点を押さえてください。未整備であることが、追加の説明を発生させます。

    この事項は四つの契約類型すべてで必要です。建物を借りる人にとっても、水道が来ているか、ガスが都市ガスかどうかは判断に直結します。

    調査は、水道であれば市町村の水道担当部署、下水道であれば下水道担当部署、ガスであれば供給事業者、電気であれば電力会社に対して行います。前面道路に本管が来ているか、敷地内への引込みがあるか、引込みがない場合に工事の負担が誰に生じるか、というのが確認の中身になります。

    なお、4号の対象は飲用水・電気・ガス・排水の四つです。通信回線や、給湯・冷暖房といった設備は含まれません。建物の貸借に限っては、施行規則16条の4の3第7号が「台所、浴室、便所その他の当該建物の設備の整備の状況」を別に定めているので、そちらで拾われます。

    未完成物件の調査(35条1項5号)

    完成していないものをどう説明するか

    5号は「当該宅地又は建物が宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、その完了時における形状、構造その他国土交通省令・内閣府令で定める事項」と定めています。

    未完成の物件では、現地に行っても対象物が存在しません。現況を観察するという調査方法が使えない類型です。したがって調査の対象は物件そのものではなく、設計図書、造成計画、建築確認の内容といった書面になります。何が出来上がるのかを、図面から読み取って説明することになります。

    図面の交付が要求されるのは5号だけ

    35条1項の柱書に、見落としやすい定めがあります。宅地建物取引士をして、掲げる事項について「これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない」。

    35条書面で図面の交付が要求されているのは、5号だけです。他の号については、図面がなければ説明できないという場合であっても、条文上は書面の交付で足ります。5号だけが、言葉では伝わらない形状と構造を扱うため、図面を必要とするときは図面まで交付させる建て付けになっています。

    建築確認との関係

    未完成物件では、建築確認を受けているかどうかも実務上の重要な確認事項になります。ただし注意が必要で、建築確認を受けたかどうかは35条1項各号に列挙されていません。

    建築確認と関係するのは、むしろ36条です。「宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第二十九条第一項又は第二項の許可、建築基準法第六条第一項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあつた後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物につき、自ら当事者として、若しくは当事者を代理してその売買若しくは交換の契約を締結し、又はその売買若しくは交換の媒介をしてはならない」。

    説明の問題ではなく、契約締結時期の制限の問題として処理されています。そして条文が挙げているのは売買と交換だけなので、貸借はこの制限の対象外です。未完成の建物について賃貸借の契約を締結すること自体は、36条では禁じられていません。建築確認の対象と手続は建築確認にまとめています。

    説明事項と、契約できる時期の制限は別の条文だという切り分けを持っておいてください。5号は未完成物件でも説明の対象になり、しかも貸借を除いていません。36条は売買・交換だけを止めます。

    災害関連の調査(施行規則16条の4の3第1号〜3号の2)

    四つとも全類型で必要

    35条1項14号イの委任を受けた施行規則16条の4の3は、柱書で契約類型ごとの振り分けを定めています。1号から3号の2までは、宅地の売買・交換、建物の売買・交換、宅地の貸借、建物の貸借のすべてに含まれます。災害関連の四つだけは、どの類型でも落ちません。

    1号が造成宅地防災区域です。盛土規制法45条1項により指定された区域内にあるときは、その旨を説明します。

    2号が土砂災害警戒区域です。土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律7条1項により指定された区域が対象です。警戒区域であって、特別警戒区域に限られていません。

    3号が津波災害警戒区域です。津波防災地域づくりに関する法律53条1項により指定された区域が対象です。

    水害ハザードマップは「所在地」を説明する

    3号の2の書きぶりは、他の三つと違います。

    「水防法施行規則第十一条第一号の規定により当該宅地又は建物が所在する市町村の長が提供する図面に当該宅地又は建物の位置が表示されているときは、当該図面における当該宅地又は建物の所在地

    説明するのは「危険である旨」でも「浸水想定の深さ」でもなく、その図面における所在地です。つまり、市町村が配布している水害ハザードマップを示して、対象物件がその図面上のどこに位置するかを示す、という内容になります。

    そして要件は「図面に位置が表示されているとき」です。市町村がハザードマップを作成していない場合や、作成されていても対象物件が図面の範囲外にある場合は、この号による説明の対象になりません。その場合は「提供されていない」旨を伝えることになります。

    「浸水想定区域内にあるときはその旨を説明する」という理解は、条文の書きぶりと違います。ここは正確に押さえてください。

    調査は区域指定の確認である

    四つとも、区域の指定や図面の提供は公表されています。市町村や都道府県の窓口、公表されている図面で確認できます。調べれば分かる以上、調べていないことは説明を落とす理由になりません。第一の型そのものです。

    既存建物と区分所有建物の追加調査

    既存建物(35条1項6号の2)

    前述のとおり、建物状況調査の実施の有無と結果の概要、および書類の保存の状況です。

    調査の実務としては、売主または管理者に対して、建物状況調査を実施したかどうか、実施していればその報告書があるか、実施日はいつかを確認します。実施日の確認が要るのは、1年(鉄筋コンクリート造等の共同住宅は2年)という期間の制限があるからです。期間を過ぎていれば、実施していないものとして扱います。

    書類については、施行規則16条の2の3の列挙に沿って、確認済証、検査済証、建物状況調査の報告書、建設住宅性能評価書などの有無を確認します。内容の当否ではなく、保存されているかどうかを確認する作業です。

    中古建物の状態そのものについては瑕疵(契約不適合)とはも参照してください。

    区分所有建物(35条1項6号・施行規則16条の2)

    区分所有建物のときは、35条1項6号を受けて施行規則16条の2が追加の説明事項を定めています。

    2026年4月1日施行の改正により、この条は1号から10号までになりました。新たに9号として「管理者等が管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者である場合にあつては、その旨」が置かれ、従来9号だった「当該一棟の建物の維持修繕の実施状況が記録されているときは、その内容」は10号に繰り下がっています。説明事項が9項目から10項目に増えました。

    柱書の扱いは改正の前後で変わっていません。建物の貸借の契約にあっては3号と8号の二つだけが対象で、売買・交換では10号すべてが対象です。

    なお、10号(旧9号)の維持修繕の実施状況も「記録されているときは、その内容」という第二の型です。記録がなければ説明対象はなく、記録を作る義務もありません。

    調査は管理組合または管理会社に対して行います。項目ごとの中身と、管理費・修繕積立金の滞納の扱いは区分所有建物の重要事項説明にまとめています。

    現地で見るものは35条の外にもある

    ここまでは35条から逆算してきましたが、現地調査だけは35条の列挙に収まりません。

    理由は47条1号ニです。所在、規模、形質、現在または将来の利用の制限、環境、交通等の利便その他の取引条件で、相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるものについて、故意に事実を告げないことが禁止されています。35条1項各号に列挙されていない事項も、ここに含まれます。

    47条は故意を要件とするので、調べなかったこと自体を捉える規定ではありません。しかし、現地に行けば当然に目に入るものについて「知らなかった」と言えるかは別問題です。隣地との高低差、擁壁の状態、越境物、境界標の有無、周辺の施設や環境。これらは現地に立てば見えます。

    なお、心理的瑕疵、とくに人の死に関する事項の告知については、国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しています。扱いは心理的瑕疵と告知義務にまとめています。

    35条の列挙は調査範囲の下限であって、上限ではないということです。

    契約類型で調査範囲がどう変わるか

    四つの類型で何が変わるかを、軸ごとに確認します。

    宅地の売買・交換

    法令上の制限は施行令3条1項の全部が対象で、最も広くなります。私道負担が必要。供給施設と排水施設が必要。登記記録が必要。施行規則16条の4の3からは1号から3号の2まで、つまり災害関連の四つが入ります。

    石綿と耐震診断は入りません。いずれも建物についての事項なので、宅地の取引では対象外です。

    建物の売買・交換

    法令上の制限は施行令3条1項が対象。私道負担が必要。供給施設と排水施設が必要。登記記録が必要。施行規則16条の4の3からは1号から6号までが入るので、災害関連の四つに加えて、石綿(4号)、耐震診断(5号)、住宅性能評価を受けた新築住宅である旨(6号)が加わります。既存建物なら6号の2の建物状況調査、区分所有建物なら施行規則16条の2の10項目も加わります。

    最も調査範囲が広いのがこの類型です。

    宅地の貸借

    法令上の制限は施行令3条2項なので、1項から一部を除いたもの。私道負担は必要です(除かれるのは建物の貸借だけ)。供給施設と排水施設が必要。登記記録が必要。施行規則16条の4の3からは1号から3号の2まで、および8号から13号まで。災害関連の四つに加えて、契約期間と更新、定期借地権である旨、用途その他の利用に係る制限、敷金等の精算、管理の委託先、そして13号の契約終了時における建物の取壊しに関する事項が入ります。13号は宅地の貸借だけの項目です。

    建物の貸借

    法令上の制限は施行令3条3項の三つだけ私道負担は不要。供給施設と排水施設は必要。登記記録は必要。施行規則16条の4の3からは1号から5号まで、および7号から12号まで。災害関連の四つ、石綿、耐震診断が入り、7号の設備の整備の状況が加わります。区分所有建物なら施行規則16条の2の3号と8号の二つだけです。

    6号(住宅性能評価を受けた新築住宅である旨)と13号(建物の取壊し)は入りません。

    貸借の全体像は賃貸の重要事項説明にまとめています。

    変わるものと変わらないもの

    四類型で共通して必要なのは、登記記録(1号)、供給施設と排水施設(4号)、災害関連の四つです。この六つはどの取引でも調べます。

    最も大きく変わるのが法令上の制限で、建物の貸借では三つに縮みます。私道負担は建物の貸借だけ落ちます。建物についての事項(石綿、耐震診断、建物状況調査)は、宅地の取引では丸ごと落ちます。

    試験での出題ポイント

    実施義務と説明義務の入れ替え

    最も繰り返される型です。石綿の使用の有無の調査、耐震診断、建物状況調査。この三つについて「実施しなければならない」「調査したうえで説明しなければならない」とする肢が作られます。いずれも実施義務はありません。条文が「記録されているときは」「受けたものであるときは」「実施しているかどうか」と書いていることを根拠にしてください。

    昭和56年6月1日の向き

    耐震診断の説明義務は、昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものを除きます。「以前に着手したものを除く」と反転させる肢、「昭和56年5月31日」とずらす肢、「新築の工事に着手した日」を「完成日」や「引渡し日」に置き換える肢が考えられます。三か所とも読む必要があります。

    貸借で落ちる項目の範囲

    私道に関する負担は「建物の貸借の契約以外」で必要です。「貸借では不要」とだけ覚えていると、宅地の貸借で誤ります。逆に、法令上の制限は建物の貸借でも完全にゼロになるわけではなく、施行令3条3項の三つが残ります。「全部必要」と「全部不要」のどちらでもないという点が問われます。

    供給施設が未整備の場合

    「整備されていない場合は、その旨を説明すれば足りる」という肢は誤りです。条文の括弧書きが、整備の見通しと、整備についての特別の負担まで説明させています。

    水害ハザードマップの説明内容

    説明するのは「図面における所在地」であって、危険度や浸水深ではありません。また要件は「図面に位置が表示されているとき」なので、市町村が図面を提供していない場合の扱いも問われます。

    法令上の制限は政令の列挙に限られる

    「宅地建物取引業者は、当該物件に適用されるすべての法令上の制限を説明しなければならない」という肢は誤りです。2号は「政令で定めるもの」に限っており、施行令3条が条項を特定して列挙しています。

    2項道路は「指定」が要件

    幅員4メートル未満の道がすべて42条2項道路になるわけではありません。条文は、この章の規定が適用されるに至った際に現に建築物が立ち並んでいる道で、特定行政庁が指定したものとしています。指定を落として「幅員4メートル未満の道は中心線から2メートル後退した線が境界線とみなされる」とする肢は誤りです。また、崖地等に沿う場合は中心線からではなく崖地等の側の境界線から道の側に4メートルである点も、ずらして出題できる箇所です。

    5号の説明義務と36条の制限を混ぜる

    未完成物件について、35条1項5号は貸借を含めたすべての類型で説明を要求します。これに対し36条の契約締結時期の制限は、条文が売買と交換だけを挙げているので貸借に及びません。「未完成の建物については、建築確認を受けた後でなければ賃貸借の媒介をしてはならない」という肢は誤りです。また、35条1項の柱書により図面の交付が要求されるのは5号だけという点も確認しておいてください。

    区分所有建物の号数

    2026年4月1日施行の改正で、施行規則16条の2は10号構成になりました。新9号が第三者管理方式の開示、10号が維持修繕の実施状況の記録です。改正前の教材では9号が維持修繕になっているので、号数を問う形の記述に出会ったら施行日で判断してください。

    法令の基準日

    出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです。令和8年度なら2026年4月1日です。上記の施行規則16条の2の改正と、区分所有法の改正(令和7年法律第47号)はいずれも同日施行なので範囲内、民法・不動産登記法(2026年6月24日施行)、都市計画法・建築基準法(同年5月27日施行)、借地借家法(同年5月21日施行)の各改正は範囲外です。

    覚え方・整理の仕方

    調査項目を覚えず、条文の順に読む

    物件調査のリストを別途暗記する必要はありません。35条1項1号から順に読み、政令・省令への委任があればそこへ飛ぶ。これで調査範囲は復元できます。1号が登記、2号が法令上の制限で施行令3条へ、3号が私道負担、4号が供給施設と排水施設、5号が未完成物件、6号が区分所有で施行規則16条の2へ、6号の2が既存建物、14号が施行規則16条の4の3へ。

    書きぶりの二つの型

    「〜であるとき、その旨」なら調べる。「記録されているとき、その内容」なら確認するだけ。

    前者は該当の有無が客観的に決まっているので、調べなければ分かりません。後者は記録の存在が要件なので、なければそれまでです。石綿・耐震診断・建物状況調査の三つが後者で、三つとも建物についての事項です。

    「建物の貸借だけ落ちる」ものと「建物だけ入る」もの

    私道負担は建物の貸借だけ落ちます。法令上の制限は建物の貸借で三つに縮みます。

    逆に、石綿と耐震診断は建物の取引にだけ入ります。設備の整備の状況(7号)は建物の貸借にだけ入ります。

    落ちるものと入るものを別々に覚えるのではなく、「その立場の人が判断に使うか」で毎回導いてください。建物を借りる人は敷地の負担を引き受けず、土地に建物を建てることもしません。だから私道負担も建蔽率も要りません。建物の中で生活するので、石綿と耐震性と設備は要ります。理由から引けば、暗記量はほとんどゼロになります。

    四類型で共通する六つ

    登記記録、供給施設と排水施設、そして災害関連の四つ(造成宅地防災区域、土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域、水害ハザードマップ)。この六つはどの取引でも調べると覚えておけば、迷ったときの土台になります。

    道路は三つ確認すれば足りる

    建築基準法上の道路にあたるか。公道か私道か。幅員はいくつか。この三点で、接道義務の充足、セットバックの要否、私道負担の説明の要否がすべて決まります。一つの調査で35条1項2号と3号の両方が埋まるので、まとめて処理してください。

    覚えておく数字は四つ

    昭和56年6月1日は耐震診断の説明義務の分かれ目。この日以降に新築工事に着手した建物は除かれます。

    1年と2年は建物状況調査の有効な期間。原則1年で、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等は2年です。

    三つは建物の貸借における法令上の制限の数(施行令3条3項)。

    10号は改正後の施行規則16条の2の号数。うち建物の貸借は3号と8号の二つだけです。

    理解度チェッククイズ

    第1問

    宅地建物取引業者は、建物の売買の媒介を行うにあたり、当該建物について石綿の使用の有無の調査を実施し、その結果を重要事項として説明しなければならない。○か×か。

    答えは×です。施行規則16条の4の3第4号は「当該建物について、石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容」と定めています。要件は記録が存在することであり、宅地建物取引業者に調査を実施する義務はありません。記録の有無を売主等に確認し、あればその内容を説明すれば足ります。実施義務と説明義務を入れ替える形は繰り返し作られるので、条文が「記録されているときは」と書いている点を根拠にしてください。同じ構造が耐震診断(同5号)にもあります。

    第2問

    昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手した建物については、耐震診断を受けたものであっても、その内容を重要事項として説明する必要はない。○か×か。

    答えは○です。施行規則16条の4の3第5号は、対象となる建物から「昭和五十六年六月一日以降に新築の工事に着手したもの」を除いています。新耐震基準が適用される建物なので対象外とする趣旨です。基準になるのは新築の工事に着手した日であって、完成日でも引渡し日でもありません。なお同号の対象になる場合でも、説明が必要なのは診断を「受けたものであるとき」で、診断を実施する義務はありません。診断を行う者も、指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関、地方公共団体の四つに限定されています。

    第3問

    建物の貸借の媒介においては、当該建物の敷地に適用される用途地域および建蔽率の制限について、重要事項として説明しなければならない。○か×か。

    答えは×です。35条1項2号は法令に基づく制限のうち「契約内容の別に応じて政令で定めるもの」に限っており、施行令3条3項は、建物の貸借の契約について新住宅市街地開発法32条1項、新都市基盤整備法51条1項、流通業務市街地の整備に関する法律38条1項の三つだけを定めています。用途地域も建蔽率も容積率も接道義務も入りません。すでに建っている建物を借りて使う人にとって、これらの制限は行動の前提にならないからです。なお売買・交換であれば施行令3条1項の広い列挙が対象になります。

    第4問

    私道に関する負担に関する事項は、宅地の貸借の契約においては重要事項の説明を要しない。○か×か。

    答えは×です。35条1項3号は「当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは、私道に関する負担に関する事項」と定めています。除かれるのは建物の貸借だけなので、宅地の貸借では必要です。宅地を借りる人は敷地そのものを使う立場にあり、私道の負担が及ぶからです。「貸借では不要」と大づかみに覚えると誤ります。同じく、供給施設と排水施設(4号)や登記記録(1号)は四つの契約類型すべてで必要です。

    第5問

    飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設が整備されていない場合、宅地建物取引業者は、その旨を説明すれば足りる。○か×か。

    答えは×です。35条1項4号は「これらの施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)」と定めています。未整備であることは説明の終わりではなく、整備の見通しと、整備についての特別の負担まで説明する必要があります。未整備であることが追加の説明を発生させる、という構造です。なお対象は飲用水・電気・ガス・排水の四つで、建物の貸借に限っては施行規則16条の4の3第7号が台所・浴室・便所その他の設備の整備の状況を別に定めています。

    まとめ

    第一に、宅地建物取引業法に「調査しなければならない」という条文はありません。35条は説明義務の規定であり、調査が必要になるのは説明できる状態を作らなければ義務を履行できないからです。したがって調査範囲は35条の説明事項から逆算する以外に決めようがなく、条文の列挙がそのまま調査項目のリストになります。明文で調べることを求めているのは、価額の意見について根拠の明示を要求する34条の2第2項です。

    第二に、条文の書きぶりが調査義務の有無を分けます。「その区域内にあるときは、その旨」と書かれた事項は、調べなければ該当の有無が分からないので調査が要ります。「記録されているときは、その内容」「受けたものであるときは、その内容」と書かれた事項は、存在の確認だけで足り、作りに行く義務はありません。石綿、耐震診断、建物状況調査の三つがこれにあたり、いずれも建物についての事項です。実施義務と説明義務を入れ替える出題が繰り返されます。

    第三に、調査範囲は契約類型で大きく変わります。四類型で共通するのは登記記録、供給施設と排水施設、そして災害関連の四つです。私道負担は建物の貸借だけ落ち、法令上の制限は建物の貸借では施行令3条3項の三つに縮みます。石綿と耐震診断は建物の取引にだけ入り、設備の整備の状況は建物の貸借にだけ入ります。落ちるものと入るものを暗記せず、その立場の人が判断に使う情報かどうかで導いてください。

    そして、35条の列挙は調査範囲の下限であって上限ではありません。47条1号ニは、所在、規模、形質、環境、交通等の利便その他、判断に重要な影響を及ぼす事項について故意に告げないことを禁じており、その範囲は35条の列挙より広くなっています。現地に立てば見えるものを黙っていてよい、という結論にはなりません。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、35条の説明事項を論点別に肢別で演習できます。契約類型ごとに何が落ちるかは、肢を並べて解くほうが早く固まります。

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    税と価格の評定は毎年ほぼ同じ形で出ます。出題パターンを肢別で押さえれば取りこぼしません。

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