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権利関係の民法改正まとめ|試験で出る改正ポイント

権利関係 読了 約46分

宅建の権利関係に関わる民法改正を、改正前後の条文を並べて整理。2020年債権法・2023年物権法・2019年相続法の3系統に加え、令和8年度の基準日で何が範囲内かを条文単位で示します。

目次

    この記事は、宅建(宅地建物取引士)試験の権利関係に関わる民法改正を一覧できるようにしたものです。個別の論点は「権利関係の全体像」以下の各記事で扱っているので、ここではどの改正がいつ施行され、条文としてどう変わり、令和8年度の出題範囲に入るのかを通しで確認します。

    結論を先に述べます。宅建の権利関係に関わる民法改正は、3つの系統に整理できます。2020年4月1日施行の債権法改正、2023年4月1日施行の物権法・相隣関係改正、そして2019年に段階施行された相続法改正です。このうち出題への影響が最も大きいのは債権法改正で、瑕疵担保責任・危険負担・解除・時効という権利関係の骨格が組み替えられました。

    そしてもうひとつ、この記事が引き受けなければならない責任があります。宅建試験は当該年度の4月1日現在施行されている法令から出題されます。令和8年度(2026年10月18日)の正解は、2026年4月1日時点の条文で決まります。改正まとめという記事の性質上、「最新の条文」で書いてしまうと、その最新が基準日より後の改正を含んでいた場合、記事全体が誤答の原因になります。したがってまず基準日から始めます。

    改正まとめを読む前に — 令和8年度の基準日

    出題されるのは2026年4月1日時点の条文

    宅建試験の出題法令は、当該年度の4月1日現在施行されているものです。したがって令和8年度に問われるのは2026年4月1日時点の条文であり、今日の条文ではありません。この2つは実際にずれています。

    法改正の記事を読むとき、あるいは自分で e-Gov 法令検索を引くときに、最も危険なのがこの点です。e-Gov が既定で表示するのは現行版であり、それは基準日版とは限りません。「改正されました」という情報に触れたら、まず施行日を見る。それが基準日より後なら、その年度の答案には反映してはいけません。

    令和8年度の出題範囲に入らない改正

    2026年4月1日より後に施行された改正のうち、宅建に関係するものを挙げます。いずれも令和8年度は範囲外です。

    民法は令和8年法律第45号により2026年6月24日に改正法が施行されています。不動産登記法も令和8年法律第46号により同じ2026年6月24日です。都市計画法・建築基準法・土地区画整理法は令和8年法律第23号(都市再生特別措置法等の一部を改正する法律)により2026年5月27日。借地借家法は令和4年法律第48号により2026年5月21日です。

    いずれも基準日の後なので、令和8年度の答案には反映しません。ただし、施行日が基準日より後であることと、条文の中身が変わっていることは別問題です。この点は次項で確認します。

    民法の2026年改正は、この記事の内容に影響しない

    重要な確認なので明記します。民法の令和8年法律第45号(2026年6月24日施行)は、本則1,173条すべてに差分がありません。基準日版と施行後版を条単位で機械比較した結果、新設・削除・本文変更のいずれもゼロでした。この記事が扱う危険負担(536条、削除済みの534条・535条)、危険の移転(567条)、解除(541条・542条・543条・545条)も含めて、一字も変わっていません。

    同様に、都市計画法・建築基準法・土地区画整理法も本則に差分がなく、不動産登記法は175条中133条2項(筆界特定の申請通知の公示方法)が変わっただけです。借地借家法も64条中61条のみで、その61条も民事訴訟法の準用に関する手続規定であり、存続期間・更新・対抗要件・定期借家・借賃増減請求といった実体規定は一切動いていません。

    つまり、施行日だけを見て慌てる必要はありません。この記事に書いてある民法の条文は、基準日版でも現行版でも同じです。逆に言えば、施行日が後だからという理由だけで「情報が古い」と判断するのも誤りです。判断は条文の中身で行います。

    令和8年度の出題範囲に入る改正

    反対に、2026年4月1日に施行されて令和8年度の範囲に入った改正が2つあります。これが令和8年度で最も注意すべき改正です。

    第一が建物の区分所有等に関する法律の改正(令和7年法律第47号、2026年4月1日施行)です。集会の決議要件の分母が総数から出席者に変わり、段の構成そのものが組み替えられました。詳細は後述します。

    第二が宅地建物取引業法施行規則16条の2の改正(令和7年内閣府・国土交通省令第2号、同日施行)です。第9号(第三者管理方式の開示)が新設され、区分所有建物の重要事項説明事項が9項目から10項目に増えました。旧9号(維持修繕の実施状況の記録)は10号に繰り下がっています。こちらは宅建業法の話なので「宅建業法の改正」および「区分所有建物の重要事項説明」で扱います。

    なお、宅地建物取引業法の本体も令和7年法律第68号により2026年4月1日に施行されていますが、本則第1条から第86条まで、および別表に差分はなく、附則が付加されただけです。実体改正は施行規則の側にありました。

    この記事の範囲と、他の記事に送る範囲

    以上を踏まえて、この記事の守備範囲を宣言しておきます。

    扱うのは民法の改正です。2020年債権法、2023年物権法・相隣関係、2019年相続法の3系統を条文単位で並べます。加えて、民法ではないが権利関係の答案に直結するものとして、不動産登記法の相続登記義務化と、区分所有法の決議要件改正を末尾で扱います。この2つは「民法改正」という表題からは外れますが、同じ時期の一連の改正であり、ここに置かないとどこにも置き場所がないためです。ただし両方とも民法ではないことを明示し、詳細は専用記事に送ります。

    扱わないのは宅建業法の改正です。押印義務の廃止、電磁的方法による書面交付、建物状況調査、そして前述の施行規則16条の2第9号は、すべて「宅建業法の改正」の担当です。この記事と重複させません。

    契約不適合責任 — 瑕疵担保責任からの再構成

    2020年4月1日施行の債権法改正のなかで、宅建への影響が最も大きい部分です。

    改正前の570条は「隠れた瑕疵」を要件としていた

    改正前の民法570条は、次の一文でした。「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。」

    「隠れた」という文言があったことが決定的です。買主が知らず、かつ知らないことに過失がない場合でなければ、責任を追及できませんでした。そして準用先の旧566条が与えていた救済は、契約の目的を達することができないときの解除と、損害賠償だけでした。修補を求める権利も、代金を減らす権利も、条文にはありませんでした。

    現行の562条以下には、「隠れた」という文言がありません。代わりに「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」という表現になっています。売主が引き渡すべきものは契約で定めた内容のものであり、それと違えば債務不履行である、という整理です。瑕疵担保責任という特別な責任類型ではなく、債務不履行責任の一場面として扱う構成に変わりました。この構成の全体は「契約不適合責任」で詳しく扱っています。

    562条 — 追完請求権

    562条1項は、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないとき、買主は売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し、または不足分の引渡しによる履行の追完を請求できると定めます。

    ただし書があります。「売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。」追完の方法を選ぶのは第一次的には買主ですが、売主が別の方法に変えられる余地が残されています。買主が代替物の引渡しを求めても、修補で足りて買主に不相当な負担にならないなら、売主は修補で応じられるということです。

    2項は、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは追完請求ができないと定めます。

    563条 — 代金減額請求権は催告が原則

    563条1項は、買主が相当の期間を定めて履行の追完を催告し、その期間内に追完がないときに、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できると定めます。まず追完を求め、それが果たされないときに減額に進むという順序です。

    2項が無催告で減額請求できる4つの場合を挙げます。追完が不能であるとき、売主が追完を拒絶する意思を明確に表示したとき、定期行為において売主が追完をしないでその時期を経過したとき、そして買主が催告をしても追完を受ける見込みがないことが明らかであるときです。3項は、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは減額請求ができないと定めます。

    代金減額請求は無条件に使えるわけではないという点が、試験の狙い目です。「買主は直ちに代金の減額を請求できる」という肢は、2項の場合に当たらない限り誤りです。

    564条 — 損害賠償と解除は別ルート

    564条は「前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない」と定めます。

    この一文が重要です。損害賠償は415条、解除は541条・542条という、債務不履行の一般規定にそのまま接続されているということです。契約不適合のための特別な損害賠償規定や特別な解除規定があるのではありません。したがって、損害賠償には415条1項ただし書の免責(契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由)が働き、解除には後述する541条・542条の要件がそのまま当てはまります。

    追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、解除。この4つが買主の救済手段であり、根拠条文がそれぞれ562条・563条・564条経由の415条・564条経由の541条542条であることまでセットにして覚えます。

    566条 — 1年以内に「通知」

    566条は期間制限です。売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除をすることができません。ただし書があり、売主が引渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは適用されません。

    3点あります。第一に、要求されているのは「通知」であって権利行使ではありません。1年以内に訴えを起こす必要も、具体的な金額を示す必要もありません。第二に、対象が種類または品質に限られます。数量の不適合と権利の不適合には566条の適用がなく、166条の一般の消滅時効によります。第三に、起算点は引渡しではなく不適合を知った時です。

    宅建業法40条が、宅建業者が自ら売主となる場合について、通知期間を引渡しの日から2年以上とする特約を除き民法の規定より買主に不利な特約を無効とするという規律を置いています。566条を土台に宅建業法が上書きする構造なので、両方をセットで理解する必要があります。特約の可否は「契約不適合責任の特約」で扱っています。改正前の瑕疵担保責任との対比は「瑕疵担保責任と契約不適合責任」を参照してください。

    567条 — 危険の移転は引渡し時

    567条1項は、売主が買主に目的物を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、または損傷したときは、買主は追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除をすることができず、代金の支払を拒むこともできないと定めます。

    2項は、売主が契約に適合する目的物の引渡債務の履行を提供したにもかかわらず買主が受領を拒み、または受領できない場合について、その履行提供後の滅失・損傷に同じ扱いをします。受領遅滞があれば、現実の引渡しがなくても危険が移るということです。

    危険の分岐点が引渡しであることは、次に述べる危険負担の改正と一体で理解する必要があります。

    危険負担 — 債権者主義の廃止と履行拒絶権

    改正前後で構成が最も大きく変わった部分であり、旧知識のまま解くと確実に誤答します。

    削除された534条と535条

    改正前の民法534条1項は次のとおりでした。「特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。」2項は不特定物について、401条2項により物が確定した時から1項を適用するとしていました。535条は停止条件付双務契約についての規定でした。

    これがいわゆる債権者主義です。建物の売買契約を結んだ後、引渡し前に落雷で建物が焼失した場合、買主(引渡債務の債権者)が損失を負担し、代金を全額支払わなければならないという帰結になります。契約したのに何も手にできず、それでも代金を払う。この結論の不当性が長く批判されてきました。

    534条と535条は、2020年4月1日施行の改正で削除されました。現行の民法に534条・535条は存在しません。したがって債権者主義は条文上消えています。

    536条1項は「履行を拒むことができる」

    改正前の536条1項は「前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない」でした。債務者が反対給付を受ける権利を失うという、権利の得喪として書かれていました。

    現行の536条1項は「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる」です。冒頭の「前二条に規定する場合を除き」が消え(534条・535条が削除されたため)、効果が履行拒絶権の構成に変わりました。

    この違いは実質を伴います。旧法では代金債権が当然に消滅しました。現行法では代金債務は消滅せず、買主が支払を拒めるにとどまります。契約関係を終わらせたいなら、買主は別途解除をする必要があります。そして後述するとおり、現行の542条1項1号により、履行不能であれば債務者に帰責事由がなくても無催告で解除できます。

    「危険負担で契約が終わる」のではなく、「危険負担は支払を止めるだけで、終わらせるのは解除」という役割分担になったのが、改正の要点です。危険負担の詳細は「危険負担」で扱っています。

    536条2項

    536条2項は、債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができないと定めます。この場合において、債務者は自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければなりません。

    買主の落ち度で建物が焼失したなら、買主は代金の支払を拒めません。旧536条2項も同趣旨でしたが、書き方が「債務者は反対給付を受ける権利を失わない」から「債権者は履行を拒むことができない」へと、1項に合わせて統一されています。

    3つの条文を引渡しで並べる

    売買契約における危険の所在は、567条・536条・542条の3本で決まります。

    引渡し前に、双方に帰責事由なく建物が滅失した。このとき買主は536条1項により代金の支払を拒むことができ、542条1項1号により契約を解除できます。引渡し後に同じことが起きた。このとき567条1項により買主は代金の支払を拒めず、解除もできません。引渡しが分岐点です。この整理は「危険負担」と「同時履行の抗弁権」を合わせて読むと立体的になります。

    解除 — 帰責事由が要件から外れた

    改正前の541条・543条

    改正前の541条は「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる」でした。現行の541条本文と同じ文言です。

    問題は改正前の543条でした。「履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」履行不能による解除には、債務者の帰責事由が必要だったということです。

    現行の541条 — 軽微性のただし書が付いた

    現行541条は、本文は改正前と同じですが、ただし書が付きました。「その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。」

    催告して期間を過ぎても、不履行が軽微であれば解除できません。判例が認めてきた考え方が条文になったものです。「催告して期間が経過すれば必ず解除できる」という肢は、このただし書により誤りになります。

    現行の542条 — 無催告解除の5類型

    542条1項は、催告をすることなく直ちに契約の全部を解除できる場合を5つ列挙します。債務の全部の履行が不能であるとき、債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき、一部の履行不能または一部の履行拒絶の場合に残存部分のみでは契約の目的を達することができないとき、定期行為において債務者が履行をしないでその時期を経過したとき、そしてこれら以外で債務者が履行をせず催告をしても契約の目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるときです。

    2項は一部解除について、債務の一部の履行が不能であるときなどを挙げます。

    そして、この541条にも542条にも、債務者の帰責事由という要件がありません。旧543条ただし書に相当する規定が置かれていないということです。改正により、解除は「債務者に責任を問う制度」から「契約の拘束力から債権者を解放する制度」へと位置づけが変わったと説明されます。

    543条 — 債権者に帰責事由があるとき

    現行543条は「債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない」です。条番号は同じですが、中身は入れ替わっています。

    整理すると、債務者の帰責事由は解除の要件ではない。債権者の帰責事由は解除の障害になる。この非対称を押さえます。債務不履行の全体は「債務不履行」で扱っています。

    時効 — 中断・停止から完成猶予・更新へ

    166条 — 二重の起算点

    改正前の167条1項は「債権は、十年間行使しないときは、消滅する」という単純な規定でした。これに加えて、職業別の短期消滅時効(旧170条から174条)が存在し、飲食料は1年、弁護士の報酬は2年、といった細かい区分がありました。

    現行166条1項は2つの号を置きます。1号が「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」、2号が「権利を行使することができる時から十年間行使しないとき」。どちらか早いほうの到来で時効が完成します。主観的起算点から5年、客観的起算点から10年という二重構造です。職業別の短期消滅時効は廃止されました。

    2項は、債権または所有権以外の財産権について、権利を行使することができる時から20年としています。

    完成猶予と更新は役割が違う

    用語が「中断・停止」から「更新・完成猶予」に変わりました。単なる言い換えではなく、どの事由がどちらの効果を持つかが条文で整理し直されています。

    147条1項は、裁判上の請求、支払督促、和解・調停、破産手続参加等の事由がある場合に、その事由が終了するまでの間は時効が完成しないと定めます。これが完成猶予です。権利が確定することなくその事由が終了した場合には、終了の時から6か月を経過するまで完成しません。そして2項が、確定判決等によって権利が確定したときは、その事由が終了した時から新たに進行を始めると定めます。これが更新です。

    同じ事由が、まず完成猶予を生じさせ、結果次第で更新に至る。この二段構えが改正の要点です。旧法の「中断」は、時効の進行が振り出しに戻ることを指しましたが、訴えを起こして取り下げた場合の扱いなどが条文からは読みにくくなっていました。

    152条1項は「時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める」と定めます。承認は完成猶予を経ずに直ちに更新を生じさせる、数少ない事由です。2項は、承認をするには相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことまたは権限があることを要しないと定めます。

    用語が変わったことの試験上の意味

    出題者にとって、用語の改正は最も作りやすい素材です。「時効の中断事由」「時効の停止」という語が肢に出てきたら、それは現行法の用語ではありません。ただし、用語だけを見て機械的に切るのは危険で、内容が正しければ表現が古いだけということもありえます。判断は効果で行ってください。時効の全体は「時効」で扱っています。

    保証 — 個人根保証の極度額と情報提供義務

    465条の2 — 貸金等から個人一般へ

    改正前の465条の2は「貸金等根保証契約の保証人の責任等」という見出しで、対象が貸金等債務を含む根保証契約に限られていました。極度額を定めなければ効力を生じないという規律(同条2項)自体は改正前から存在しましたが、適用範囲が狭かったということです。

    現行465条の2は見出しが「個人根保証契約の保証人の責任等」に変わりました。1項は、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であって保証人が法人でないものを「個人根保証契約」と定義し、極度額を限度として履行する責任を負うとします。そして2項が「個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない」と定めます。

    貸金等という限定が外れたことが改正の中身です。

    賃貸借の連帯保証への波及

    この改正が宅建で問われるのは、建物賃貸借の連帯保証に及ぶからです。賃借人の賃料債務は、契約期間中に発生し続ける不特定の債務であり、その保証は根保証にあたります。保証人が個人であれば個人根保証契約となり、極度額の定めがなければ無効です。

    実務上、これは賃貸借契約書の書式を変えました。連帯保証人欄に極度額を記載する運用は、この465条の2第2項に由来します。宅建では、賃貸借と保証を組み合わせた設問として出題されます。「連帯債務と保証」および「連帯保証」で詳しく扱っています。

    458条の3 — 期限の利益喪失の通知

    458条の3第1項は、主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は保証人に対し、その利益の喪失を知った時から2か月以内にその旨を通知しなければならないと定めます。

    2項が制裁を定めます。期間内に通知をしなかったときは、債権者は保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く)に係る保証債務の履行を請求することができません。

    3項が範囲を限定します。「前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。」保護の対象は個人保証人です。「2か月以内」「保証人が法人なら適用なし」という2点が論点になります。

    賃貸借 — 実務の慣行が条文になった

    2020年改正で明文化された賃貸借の規定を並べます。いずれも従前から実務や判例で認められていた内容ですが、条文になったことで出題可能性が上がりました。

    622条の2 — 敷金の定義と返還時期

    622条の2第1項は、まず敷金を定義します。「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」です。名目を問わないという点が要点で、保証金と呼ばれていても実質がこれに当たれば敷金です。

    そのうえで、返還義務が生じる場合を2つ挙げます。1号が「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」、2号が「賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき」です。1号の「かつ」に注意してください。契約が終了しただけでは足りず、明渡しまで完了して初めて返還義務が生じます。明渡しと敷金返還が同時履行の関係に立たないという判例法理が、条文の形になったものです。

    返還額は、受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の債務の額を控除した残額です。2項は、賃貸人が敷金を債務の弁済に充てることができる一方、賃借人の側からは充当を請求できないと定めます。敷金・礼金の実務は「敷金と礼金」で扱っています。

    621条 — 通常損耗と経年変化は原状回復の対象外

    621条は、賃借人は賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において賃貸借が終了したときはその損傷を原状に復する義務を負う、と定めます。

    条文の核心は括弧書きにあります。「(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)」通常損耗と経年変化は、そもそも「損傷」に含まれないという書き方です。

    さらにただし書があります。「その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」通常損耗・経年変化以外の損傷であっても、賃借人に帰責事由がなければ原状回復義務を負いません。二重の絞りがかかっている構造です。原状回復をめぐる実務は「賃貸借契約の注意点」で扱っています。

    611条1項 — 一部滅失による賃料の当然減額

    611条1項は、賃借物の一部が滅失その他の事由により使用収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額されると定めます。

    「減額を請求することができる」ではなく「減額される」です。賃借人の請求を待たず、当然に減額されます。改正前の611条1項は「減額を請求することができる」という請求権構成だったので、ここが変わりました。

    2項は、残存部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときに、賃借人が契約を解除できると定めます。こちらは1項と違い、賃借人に帰責事由があるかどうかを問いません。

    605条の2 — 賃貸人たる地位の移転

    605条の2第1項は、605条または借地借家法10条・31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、賃貸人たる地位はその譲受人に移転すると定めます。賃借人の承諾は不要です。

    2項が留保の合意を定めます。譲渡人および譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨およびその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しません。2つの合意がセットで必要である点が要点です。この場合において譲渡人と譲受人の間の賃貸借が終了したときは、留保されていた賃貸人たる地位は譲受人に移転します。

    3項は対抗要件です。賃貸人たる地位の移転は、所有権の移転の登記をしなければ賃借人に対抗できません。新所有者は登記を備えなければ賃料を請求できないということです。

    4項は、賃貸人たる地位が移転したときに、608条による費用償還債務と622条の2第1項による敷金返還債務を譲受人が承継すると定めます。敷金は新賃貸人に引き継がれます。

    意思表示・法定利率・請負 — 残りの改正点

    95条 — 錯誤は無効から取消しへ

    改正前の95条は「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない」という一項だけの条文でした。

    現行95条1項は、錯誤に基づく意思表示であってその錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであるときに、取り消すことができると定めます。1号が意思表示に対応する意思を欠く錯誤(表示の錯誤)、2号が表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤(動機の錯誤)です。

    2項は、2号の錯誤による取消しについて、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限りできると定めます。動機の錯誤には表示が必要だという判例法理の明文化です。

    3項は重過失の扱いです。錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には取消しができないのが原則ですが、2つの例外があります。相手方が表意者に錯誤があることを知り、または重大な過失によって知らなかったとき(1号)、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき(2号、共通錯誤)です。

    そして4項が第三者保護です。「第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。」改正前の95条には第三者保護規定がありませんでした。96条3項(詐欺)と同じく善意無過失が要求される点まで押さえます。意思表示の全体は「意思表示」で扱っています。

    404条 — 年5分から年3パーセントの変動制へ

    改正前の404条は「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする」でした。固定です。

    現行404条1項は、その利息が生じた最初の時点における法定利率によると定め、2項が「法定利率は、年三パーセントとする」とします。3項は、法定利率が法務省令の定めるところにより3年を一期とし、一期ごとに変動すると定め、4項が変動の計算方法を、5項が「基準割合」の定義を置いています。

    4項の計算は、直近変動期の基準割合と当期の基準割合との差に相当する割合(1パーセント未満の端数は切捨て)を直近変動期の法定利率に加算または減算するというものです。1パーセント刻みでしか動かない設計です。

    宅建で問われるのは、年3パーセントであること、3年ごとに見直される変動制であること、そして起算点が「利息が生じた最初の時点」であることまでです。

    637条 — 請負も1年以内に通知

    売買の566条と同じ構造が請負にもあります。637条1項は、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は追完請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除をすることができないと定めます。2項は、引渡しの時(引渡しを要しない場合は仕事が終了した時)において請負人が不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは適用しないとします。

    改正前は、建物その他の土地の工作物について、木造は5年、石造等は10年という引渡しからの期間制限(旧638条)が置かれていました。この客観的な期間制限は削除され、売買と同じ「知った時から1年以内に通知」に統一されました。また、改正前は建物その他の土地の工作物について解除が制限されていましたが(旧635条ただし書)、この制限も削除されています。請負と委任の区別は「委任と請負」で扱っています。

    2023年4月1日施行 物権法・相隣関係の改正

    所有者不明土地問題への対応として行われた改正です。債権法改正ほど注目されませんが、共有の理解を根本から変える内容を含んでいます。

    251条 — 「変更は全員一致」は不正確になった

    改正前の251条は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない」という一文でした。

    現行251条1項は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない」です。括弧書きが挿入されました。

    形状または効用の著しい変更を伴わない変更、いわゆる軽微変更は、251条の「変更」から除かれます。そして252条1項が管理に関する事項を持分の価格の過半数で決すると定め、その対象から除かれるのは「前条第一項に規定する変更」だけなので、軽微変更は管理行為として過半数で決せられることになります。

    「共有物の変更は共有者全員の同意が必要」という覚え方は、現行法では不正確です。著しい変更は全員一致、軽微変更は過半数が正しい整理です。共有の全体は「共有」で扱っています。

    2項は、共有者が他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときに、裁判所が、共有者の請求により、当該所在等不明共有者以外の他の共有者の同意を得て変更を加えることができる旨の裁判をすることができると定めます。所在不明者を分母から外す仕組みです。

    252条 — 管理と、決められない状態への手当て

    現行252条1項は、共有物の管理に関する事項(252条の2第1項の管理者の選任・解任を含み、251条1項の変更を除く)を各共有者の持分の価格に従いその過半数で決すると定めます。後段に「共有物を使用する共有者があるときも、同様とする」が加わりました。共有者の一人が現に使っていても、過半数で管理を決められるということです。

    2項が新設された裁判です。裁判所は、次の2つの場合に、当該他の共有者以外の共有者の請求により、その持分の価格に従い過半数で管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができます。1号が共有者が他の共有者を知ることができずまたはその所在を知ることができないとき、2号が共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないときです。所在不明だけでなく、連絡はつくが返事をしない場合まで手当てされているのが2号です。

    3項は、決定が共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならないとします。

    4項は、共有者が管理として設定できる賃借権等の期間に上限を置きます。樹木の栽植または伐採を目的とする山林の賃借権等は10年、それ以外の土地の賃借権等は5年、建物の賃借権等は3年、動産の賃借権等は6か月です。これを超える期間の賃借権等の設定は管理の範囲を超えます。数字が4つ並ぶので、出題されやすい部分です。

    5項は、各共有者が保存行為をすることができると定めます。改正前は252条ただし書にありましたが、独立の項になりました。

    252条の2 — 共有物の管理者

    新設された制度です。252条の2第1項は、共有物の管理者が共有物の管理に関する行為をすることができると定め、ただし書で、共有者全員の同意を得なければ共有物に変更(形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く)を加えることができないとします。管理者であっても著しい変更は単独でできません。

    3項は、共有者が管理に関する事項を決した場合には管理者はこれに従って職務を行わなければならないとし、4項は、これに違反して行った行為は共有者に対して効力を生じないが、共有者はこれをもって善意の第三者に対抗することができないと定めます。取引の相手方を保護する規定です。

    258条 — 賠償分割が条文になった

    改正前の258条2項は「共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる」でした。条文上の選択肢は現物分割と競売分割の2つだけでした。

    現行258条2項は分割方法を2つ列挙します。1号が現物分割、2号が「共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」です。2号がいわゆる賠償分割(全面的価格賠償)で、判例が認めていたものが明文化されました。そして3項が、これらの方法によることができないとき、または分割によって価格を著しく減少させるおそれがあるときに競売を命ずることができるとします。

    競売は最後の手段という順序が条文上明確になりました。1項は、協議が調わないときに加えて「又は協議をすることができないとき」が追加されています。4項は、裁判所が分割の裁判において金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができると定めます。

    262条の2 — 所在等不明共有者の持分の取得

    新設された制度です。不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に所在等不明共有者の持分を取得させる旨の裁判をすることができます。請求した共有者が2人以上あるときは、各共有者の持分の割合で按分して取得させます。

    制約が2つあります。2項は、当該不動産について258条1項の分割請求または遺産分割の請求があり、かつ所在等不明共有者以外の共有者が異議の届出をしたときは、この裁判ができないとします。3項は、所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産分割をすべき場合に限る)において、相続開始の時から10年を経過していないときは裁判ができないとします。

    4項は、持分を取得された所在等不明共有者が、取得した共有者に対し、持分の時価相当額の支払を請求できると定めます。権利を失わせる代わりに対価請求権を与える構造です。

    209条 — 隣地使用は「請求」から「使用できる」へ

    改正前の209条1項は見出しが「隣地の使用請求」で、「土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる」でした。相手に請求する権利であり、拒まれれば裁判が必要でした。

    現行209条1項は見出しが「隣地の使用」に変わり、「土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる」となりました。請求権ではなく、直接の使用権です。目的は3つ列挙されています。1号が境界またはその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去または修繕、2号が境界標の調査または境界に関する測量、3号が233条3項の規定による枝の切取りです。改正前より目的が広がっています。

    ただし書は維持されています。「住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。」ここは請求権のままではなく、承諾が必要という形で残りました。

    2項は、使用の日時・場所・方法について、隣地の所有者および隣地使用者のために損害が最も少ないものを選ばなければならないとします。3項は事前通知を義務づけ、あらかじめ通知することが困難なときは使用開始後遅滞なく通知すれば足りるとします。4項は、隣地の所有者または隣地使用者が損害を受けたときの償金請求を認めます。

    213条の2 — 継続的給付を受けるための設備設置権

    新設された規定です。土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、または他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス、水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、必要な範囲内で他の土地に設備を設置し、または他人の設備を使用することができます。

    2項は損害が最も少ない場所・方法を選ぶことを、3項は事前通知を義務づけます。4項は、設備の設置・使用のために他の土地を使用できるとし、209条1項ただし書および2項から4項までを準用します。

    償金の扱いが2つに分かれます。5項は、他の土地に設備を設置する者はその土地の損害に対して償金を支払わなければならないとし、ただし書で「1年ごとにその償金を支払うことができる」とします。6項は、他人が所有する設備を使用する者は、その使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならないとします。そして7項が、他人の設備を使用する者はその利益を受ける割合に応じて設置・改築・修繕・維持に要する費用を負担しなければならないと定めます。

    袋地の囲繞地通行権(210条以下)と並ぶ、ライフラインについての規定です。

    233条3項 — 越境した枝を自分で切れる場合

    改正前の233条1項は「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」、2項は「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」でした。枝は所有者に切らせるだけ、根は自分で切れるという有名な非対称です。

    現行では、この非対称に例外が入りました。1項は改正前と同様に切除させることができると定め(主語が「土地の所有者は」と明示されました)、2項が新設で、竹木が数人の共有に属するときは各共有者がその枝を切り取ることができるとします。

    そして3項が、次のいずれかに当たるときに土地の所有者が自らその枝を切り取ることができると定めます。1号が竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず相当の期間内に切除しないとき、2号が竹木の所有者を知ることができずまたはその所在を知ることができないとき、3号が急迫の事情があるときです。4項は根について改正前と同じです。

    「枝は切れない、根は切れる」という覚え方は、3項の3類型を添えないと現行法では不正確になりました。

    2019年施行 相続法の改正

    段階的に施行された相続法改正のうち、宅建に関わるものを扱います。

    968条2項 — 財産目録は自書不要

    968条1項は「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」という原則を維持しています。

    2項が緩和規定です。自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部または一部の目録を添付する場合には、その目録については自書することを要しません。パソコンで作成した一覧表でも、登記事項証明書や通帳の写しを添付する形でも構いません。

    ただし条件があります。「この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。」ページごとの署名押印が必要で、両面に自書によらない記載があるなら両面です。

    3項は加除訂正の方式で、遺言者がその場所を指示し、変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ変更の場所に印を押さなければ効力を生じないと定めます。ここは改正されていません。遺言の方式全体は「遺言の方式」で扱っています。

    1028条 — 配偶者居住権

    新設された権利です。1028条1項は、被相続人の配偶者が、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、1号(遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき)または2号(配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき)に該当するときに、その建物の全部について無償で使用および収益をする権利を取得すると定めます。

    ただし書があります。「被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。」被相続人が第三者と共有していた建物には成立しません。2項は、居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者が共有持分を有するときは配偶者居住権は消滅しないと定めます。

    建物の全部についてという点、無償である点、そして取得原因が遺産分割または遺贈に限られる点が要点です。配偶者居住権の詳細は「配偶者居住権」で扱っています。

    1037条 — 配偶者短期居住権

    1028条とは別の権利です。1037条1項は、配偶者が被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合に、居住建物取得者に対し、無償で使用する権利を有すると定めます。収益は含まれません。また、建物の一部のみを無償で使用していた場合にはその部分についての権利です。

    期間が2つに分かれます。1号は、居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をすべき場合で、遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日または相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日まで。2号は、それ以外の場合で、3項の消滅申入れの日から6か月を経過する日までです。

    ただし書により、配偶者が相続開始の時に配偶者居住権を取得したとき、または891条の相続欠格に該当しもしくは廃除によって相続権を失ったときは成立しません。

    居住権と短期居住権の違いは、期間、収益の可否、対抗要件の有無、取得原因のいずれもです。混同しやすいので対比で覚えます。

    1046条 — 遺留分侵害額請求は金銭債権

    1046条1項は、遺留分権利者およびその承継人が、受遺者または受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができると定めます。

    改正前は遺留分減殺請求権と呼ばれ、行使すると遺贈や贈与が遺留分を侵害する限度で失効し、目的物について共有関係が生じる構成でした。事業用不動産が相続人の共有になって処分できなくなるといった不都合が指摘されていました。

    現行法では金銭債権です。行使しても共有関係は生じず、遺留分権利者が取得するのは金銭の支払請求権にとどまります。名称も「遺留分侵害額の請求」に変わりました。2項は侵害額の算定方法を定め、遺留分から遺留分権利者が受けた遺贈・特別受益の価額と、相続分に応じて取得すべき遺産の価額を控除し、遺留分権利者が承継する債務の額を加算するとしています。相続の全体は「相続」、遺産分割は「遺産分割」で扱っています。

    1050条 — 特別の寄与

    1050条1項は、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族が、相続の開始後、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求できると定めます。相続人、相続の放棄をした者、相続欠格に該当しまたは廃除によって相続権を失った者は除かれます。

    2項は、協議が調わないときに家庭裁判所に協議に代わる処分を請求できるとしたうえで、ただし書で期間制限を置きます。特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6か月を経過したとき、または相続開始の時から1年を経過したときは請求できません。

    4項は、特別寄与料の額が、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができないとし、5項は、相続人が数人あるときは各相続人が相続分を乗じた額を負担すると定めます。

    相続人ではない親族が対象であること、無償の労務提供が要件であること、そして期間が短いことが要点です。

    民法ではない改正 — 不動産登記法と区分所有法

    ここからは民法ではありません。ただし権利関係の答案に直結し、しかも同じ時期の一連の改正なので、区別を明示したうえで扱います。

    不動産登記法76条の2 — 相続登記の申請義務化

    これは民法ではなく不動産登記法の改正です。2024年4月1日施行、根拠は不動産登記法76条の2です。

    1項は、所有権の登記名義人について相続の開始があったときに、当該相続により所有権を取得した者が、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならないと定めます。相続人に対する遺贈により所有権を取得した者も同様です。

    起算点が二重である点に注意してください。相続の開始を知っただけでは足りず、自分が所有権を取得したことを知った日からです。

    2項は、法定相続分に応じた登記がされた後に遺産の分割があったときに、その分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者が、当該遺産の分割の日から3年以内に登記を申請しなければならないとします。3項は、代位者その他の者の申請または嘱託により登記がされた場合には適用しないとします。

    不動産登記法76条の5 — 住所等変更登記の義務化

    76条の5は一文です。「所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。」

    相続登記は3年、住所等変更登記は2年です。数字が違うので、入れ替えた肢が作られます。詳細は「住所変更登記の義務化」、登記制度全体は「不動産登記」で扱っています。

    区分所有法 — 令和8年度で最も重要な改正

    これも民法ではなく、建物の区分所有等に関する法律の改正です。令和7年法律第47号により2026年4月1日に施行されており、令和8年度の出題範囲に入ります。この記事で扱う改正のなかで、最も新しく、最も出題可能性が高いものです。

    変わったのは集会の決議要件です。要点を4つ挙げます。

    第一に、分母が総数から出席者に変わりました。17条1項の共用部分の変更は、改正後は、区分所有者の過半数の者であって議決権の過半数を有するものが出席し、出席した区分所有者およびその議決権の各4分の3以上の多数による決議で決する、という形になっています。31条1項の規約の設定・変更・廃止も同じく出席者基準です。39条1項の普通決議も「出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権の各過半数」となりました。

    第二に、定足数が新設されました。分母を出席者にする以上、出席が少なすぎる集会で重要事項が決まらないよう、区分所有者の過半数かつ議決権の過半数の出席が要求されます。

    第三に、3分の2の段が新設されました。17条5項が、共用部分の設置または保存の瑕疵によって他人の権利等が侵害されまたは侵害されるおそれがある場合における瑕疵の除去に関して必要となる共用部分の変更、および高齢者、障害者等の移動上・利用上の利便性および安全性を向上させるために必要となる共用部分の変更について、1項・3項中の「四分の三」を「三分の二」と読み替えると定めています。また61条5項が、大規模滅失の場合の復旧決議を出席者の各3分の2以上に引き下げました。改正前は4分の3でした。

    第四に、規約による緩和の形が変わりました。改正前の17条1項ただし書は「区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる」と定めていました。この規定は削除されています。現行17条1項は、定足数について「これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上」とし、決議要件について「これを下回る割合(二分の一を超える割合に限る)を規約で定めた場合にあつては、その割合」とします。過半数まで減らすのではなく、2分の1を超える範囲で規約が定めるという形です。なお31条1項には、この規約による引下げがありません。

    そしてもうひとつ、62条1項の建替え決議は出席者基準になっていません。「集会においては、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各5分の4以上の多数で」と、総数を分母とする書き方のままです。同条2項が、耐震性・耐火性・外壁の剝離・配管の劣化・バリアフリー基準の5類型に該当する場合について「五分の四」を「四分の三」と読み替えると定めています。

    したがって令和8年度に問われる段は、過半数(39条1項)・3分の2(17条5項、61条5項)・4分の3(17条1項、31条1項)・5分の4(62条1項)の四段構えになります。決議要件の条文単位の整理は「区分所有法の決議要件」に、区分所有法全体は「区分所有法」にあります。令和8年度を受験するなら、この2本は必ず読んでください。

    試験での出題ポイント

    改正論点は、出題者にとって作りやすい素材です。旧法の記述をそのまま肢にすれば、それだけで誤りの選択肢になるからです。パターンを挙げます。

    旧法の用語をそのまま出す

    「瑕疵担保責任」「隠れた瑕疵」「時効の中断」「時効の停止」「遺留分減殺請求権」「貸金等根保証契約」。これらは現行法の用語ではありません。ただし用語だけで機械的に切るのは危険で、文脈上わざと旧称を使って内容を問う設問もありえます。効果で判断してください。

    効果を旧法のまま出す

    錯誤の効果を「無効」とする肢、法定利率を「年5パーセント」とする肢、遺留分侵害額請求の効果を「共有関係が生じる」とする肢、危険負担の効果を「代金債権が消滅する」とする肢。言葉ではなく効果を旧法のままにするほうが、引っかけとしては強力です。

    削除された条文の内容を出す

    534条の債権者主義は削除されているので、「引渡し前に双方の責めに帰することができない事由で建物が滅失した場合、買主は代金全額を支払わなければならない」は誤りです。旧638条の木造5年・石造等10年も削除されているので、これを現行の期間として出す肢も誤りです。

    「請求できる」と「当然に生じる」を入れ替える

    611条1項の賃料減額は「減額される」であり、賃借人の請求を要しません。逆に、563条1項の代金減額は催告を要する請求権です。当然に生じるものと請求を要するものを入れ替えるのは定番の作り方です。

    「かつ」を「または」に変える

    622条の2第1項1号は「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」です。これを「賃貸借が終了したとき」だけにすると誤りになります。605条の2第2項の留保の合意も、地位を留保する旨および譲受人が譲渡人に賃貸する旨の2つが必要です。

    「全員一致」を持ち込む

    251条1項の括弧書きにより、軽微変更は全員一致を要しません。「共有物に変更を加えるには常に共有者全員の同意が必要である」は現行法では誤りです。同様に252条の2第1項ただし書も、管理者が全員同意を要するのは著しい変更についてです。

    数字を入れ替える

    相続登記3年と住所等変更登記2年。566条・637条の1年通知。458条の3の2か月。1050条の6か月と1年。252条4項の10年・5年・3年・6か月。262条の2第3項の10年。どれも入れ替えやすい数字なので、条文と紐づけて覚えます。

    施行日で誤りを作る

    これは受験者側の事故です。基準日より後の改正を反映した解説で学習すると、正しい選択肢を誤りと判断します。令和8年度については、民法・不動産登記法・都市計画法・建築基準法・借地借家法の改正がいずれも基準日より後です。ただし前述のとおり、これらは本則がほぼ動いていないため実害はありません。実害があるのは逆方向、すなわち区分所有法の改正を旧法のまま覚えている場合です。

    覚え方・整理の仕方

    改正を「3系統+2件」で束ねる

    年号がばらばらに見えるので、束ねてしまいます。2020年が債権法、2023年が物権法・相隣関係、2019年が相続法。この3つが民法です。そこに2024年の相続登記義務化(不動産登記法)2026年の区分所有法が加わる。5つの塊として覚えると、どの改正がどの分野かを取り違えません。

    債権法改正は「引渡し」を軸に並べる

    契約不適合責任・危険負担・危険の移転は、引渡しという一点を軸に並べると混ざりません。引渡し前は536条1項の履行拒絶権と542条の解除、引渡し後は567条1項で買主が危険を負う。そして引き渡されたものが契約に適合しなければ562条以下。時系列で1本の線に乗せるのが最短です。

    「帰責事由がどちらに要るか」で解除と損害賠償を分ける

    解除には債務者の帰責事由が要らない(541条・542条)が、債権者の帰責事由があると解除できない(543条)。損害賠償には債務者の免責事由が働く(415条1項ただし書)。解除は要らない、賠償は要ると一言で覚え、543条を例外として添えます。

    「通知で足りる」を1年でまとめる

    566条(売買)と637条(請負)は、どちらも知った時から1年以内に通知です。権利行使ではなく通知であること、起算点が引渡しではなく知った時であること、対象が種類・品質に限られること(566条)。売買と請負をセットで1枚にすると、片方だけ覚えて取り違える事故が減ります。

    共有は「著しいか、著しくないか」で二分する

    251条1項の括弧書きが入り口です。形状または効用の著しい変更を伴うなら全員一致、伴わないなら過半数。保存行為は単独。この3段を先に置いてから、252条2項の裁判、252条の2の管理者、262条の2の持分取得といった新制度を足していきます。

    相隣関係は「請求から権利へ」で束ねる

    209条は請求権から使用権へ、233条は切除させるだけから自ら切り取れる場合ありへ、213条の2は新設。いずれも土地所有者ができることが増えた方向の改正です。改正の方向を1つ覚えておけば、個別の条文を思い出しやすくなります。

    相続は「金銭で解決する」方向で束ねる

    遺留分は物権的効果から金銭債権へ(1046条)、特別の寄与も金銭請求(1050条)、262条の2の持分取得も時価相当額の支払い。共有や物の分属を避けて金銭で処理するという方向が、この時期の改正に共通しています。語呂での暗記より、方向をつかむほうが応用が利きます。細かい語呂は「民法の語呂合わせ」にまとめてあります。

    区分所有法は「分母」を最初に確認する

    改正後は、その決議が総数基準か出席者基準かを最初に確認する癖をつけます。17条・31条・39条・61条5項は出席者基準、62条1項の建替えは総数基準。分母を取り違えると、割合が合っていても結論が変わります。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 建物の売買契約の締結後、引渡し前に、当事者双方の責めに帰することができない事由により建物が滅失した場合、買主は代金の全額を支払わなければならない。

    答えを見る ×:改正前の民法534条1項は、特定物に関する物権の設定・移転を双務契約の目的とした場合において、債務者の責めに帰することができない事由により滅失・損傷したときはその滅失・損傷が債権者の負担に帰するとしていました。いわゆる債権者主義です。**しかし534条・535条は2020年4月1日施行の改正で削除されました。**現行の536条1項は「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる」と定めており、買主は代金の支払を拒めます。ただし注意すべき点があり、**代金債務が当然に消滅するわけではありません。**履行を拒めるにとどまるので、契約関係を終わらせるには542条1項1号による解除が必要です。なお、引渡し後であれば567条1項により買主は代金の支払を拒めません。

    Q2. 共有物に変更を加えるには、その変更の内容を問わず、共有者全員の同意を得なければならない。

    答えを見る ×:現行251条1項は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(**その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く**。次項において同じ。)を加えることができない」と定めています。2023年4月1日施行の改正で括弧書きが挿入され、**形状または効用の著しい変更を伴わない変更(軽微変更)は251条の「変更」から除かれました。**252条1項が管理に関する事項を持分の価格の過半数で決するとしており、そこから除かれるのは251条1項の変更だけなので、軽微変更は管理行為として過半数で決することができます。したがって「内容を問わず全員の同意」は誤りです。なお、共有者が他の共有者を知ることができずまたは所在を知ることができないときは、251条2項により、裁判所が所在等不明共有者以外の同意で変更できる旨の裁判をすることができます。

    Q3. 売買の目的物に種類または品質に関する契約不適合があった場合、買主は、その不適合を知った時から1年以内に売主に対して損害賠償を請求しなければ、権利を失う。

    答えを見る ×:566条が求めているのは**権利行使ではなく「通知」**です。条文は「買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない」と定めています。1年以内に不適合の事実を通知しておけば足り、その後の権利行使は166条の消滅時効の枠内で行えます。あわせて3点。**対象は種類または品質に限られ**、数量の不適合と権利の不適合に566条の適用はありません。**起算点は引渡しではなく知った時**です。そして**ただし書**により、売主が引渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、この期間制限は適用されません。

    Q4. 個人が賃借人の債務を連帯保証する契約において極度額の定めがない場合でも、賃貸借の保証は貸金等債務の保証ではないから、契約は有効である。

    答えを見る ×:改正前の465条の2は「貸金等根保証契約」を対象としており、貸金等債務を含む根保証に限って極度額の定めを要求していました。**2020年4月1日施行の改正で、この限定が外れました。**現行465条の2第1項は、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であって**保証人が法人でないもの**を「個人根保証契約」と定義し、2項が「個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない」と定めています。賃借人の賃料債務は契約期間中に発生し続ける不特定の債務であり、その保証は根保証にあたります。保証人が個人であれば個人根保証契約となり、極度額の定めがなければ無効です。逆に、**保証人が法人であれば個人根保証契約に当たらず、極度額の定めは不要**です。

    Q5. 令和8年度(2026年10月18日)の宅建試験では、2026年6月24日に施行された民法の改正内容が出題範囲となる。

    答えを見る ×:宅建試験は**当該年度の4月1日現在施行されている法令**から出題されます。令和8年度の基準日は2026年4月1日であり、同年6月24日に施行された民法の改正(令和8年法律第45号)は基準日より後なので、出題範囲に入りません。同じ理由で、不動産登記法(2026年6月24日)、都市計画法・建築基準法・土地区画整理法(2026年5月27日)、借地借家法(2026年5月21日)の各改正も範囲外です。**ただし、これらの改正は本則がほとんど動いていません。**民法については本則1,173条すべてに差分がなく、都市計画法・建築基準法・土地区画整理法も本則に差分がありません。したがって実質的な影響はありません。**注意すべきは逆方向です。**建物の区分所有等に関する法律の改正(令和7年法律第47号)と宅地建物取引業法施行規則16条の2の改正は、いずれも**2026年4月1日施行で範囲内**です。区分所有法は決議要件の分母が総数から出席者に変わり、3分の2の段が新設されるという実体改正なので、旧法のまま覚えていると誤答します。

    まとめ

    1. 民法改正は3系統に束ねる。2020年4月1日の債権法改正、2023年4月1日の物権法・相隣関係改正、2019年に段階施行された相続法改正。ここに、民法ではないが答案に直結するものとして2024年の相続登記義務化(不動産登記法76条の2)と2026年の区分所有法改正が加わる。

    2. 債権法改正の中心は、瑕疵担保責任から契約不適合責任への再構成である。「隠れた」という要件が消え、救済手段が追完請求(562条)・代金減額請求(563条)・損害賠償と解除(564条経由の415条・541条・542条)の4つに拡充され、期間制限は「知った時から1年以内に通知」(566条)になった。

    3. 危険負担は構成そのものが変わった。534条・535条が削除されて債権者主義が消え、536条1項は「債権者は反対給付の履行を拒むことができる」という履行拒絶権の構成になった。契約を終わらせるのは解除の役割であり、542条1項1号により債務者の帰責事由なしに解除できる。危険の分岐点は引渡し(567条1項)。

    4. 解除から債務者の帰責事由が外れた。541条・542条に帰責事由の要件はなく、543条が債権者の帰責事由を解除の障害とする。あわせて541条ただし書に軽微性の抗弁が入った。

    5. 2023年改正は共有の理解を変えた。251条1項の括弧書きにより、著しい変更は全員一致、軽微変更は過半数(252条1項)となる。「変更は全員一致」という覚え方は現行法では不正確である。

    6. 令和8年度で実害があるのは区分所有法である。2026年4月1日施行で範囲内。決議の分母が総数から出席者に変わり、17条5項と61条5項に3分の2の段ができ、17条1項ただし書の規約による定数引下げが削除された。一方、62条1項の建替え決議は総数基準のまま。過半数・3分の2・4分の3・5分の4の四段構えとして覚え直す必要がある。

    7. 改正情報に触れたら、まず施行日を見る。令和8年度に反映してよいのは2026年4月1日以前に施行された改正だけである。それより後の民法・不動産登記法・都市計画法・建築基準法・借地借家法の改正は範囲外だが、いずれも本則がほとんど動いていないため実害はない。

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