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区分所有法の特別決議|改正後の決議要件を整理

権利関係 読了 約52分

令和8年4月1日施行の改正後の区分所有法で、集会の決議要件を条文単位に整理。新設された定足数、総数から出席者に変わった分母、3分の2の新設、5分の4を要する4つの新決議まで条文根拠つきで解説します。

目次

    本記事の役割 — この記事は、区分所有法の集会決議に必要な多数決の要件を、令和8年4月1日施行の改正後の条文にもとづいて条文単位で整理するものです。専有部分と共用部分、敷地利用権、管理者、規約の効力範囲といった土台は区分所有法の基本ルールで扱っています。用語の定義があいまいなまま読み進めそうなときは、先にそちらを確認してください。

    最初にはっきりさせておきます。区分所有法の決議要件は、令和8年4月1日をもって根本的に変わりました。 市販教材やネット上の解説の多くは、まだ改正前の内容で書かれています。「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」という、この分野で最も有名なフレーズは、共用部分の重大変更についても規約の変更についても、もう条文にはそのままの形では存在しません。

    変わったのは根拠法そのものです。「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第47号、令和7年5月30日公布)により、区分所有法は令和8年4月1日から改正後の内容で施行されています。宅建試験の出題根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在で施行されているものです(一般財団法人不動産適正取引推進機構「宅建試験の概要」)。したがって令和8年度の試験では、改正後の条文が唯一の正解になります。

    本記事は改正後の条文を本則として書き、改正前を前提にした知識をどう書き換えればよいかを独立した節で対比します。以下では、改正の全体像、決議の二階建て構造、段階ごとの定数、招集手続、規約による変更の可否の順に見ていきます。

    令和8年4月1日施行の改正で、決議のしくみが変わった

    何が変わったのか

    決議要件に関する変更を先に列挙します。細部はそれぞれの節で条文とともに扱うので、ここでは地図として読んでください。

    第1に、定足数という概念が新設されました。 改正前の区分所有法には、集会が成立するために何人の出席が必要かという規定がありませんでした。改正後は、共用部分の重大変更、規約の設定・変更・廃止、管理組合法人の設立と解散、義務違反者に対する使用禁止・競売・引渡しの請求、大規模滅失の復旧といった重い決議について、「区分所有者の過半数の者であって議決権の過半数を有するものが出席し」という要件が条文に書き込まれました。

    第2に、多数決の分母が総数から出席者に変わりました。 改正前は「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」、つまり全区分所有者の頭数と議決権総数を分母にしていました。改正後は「出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上」です。普通決議(39条1項)も「出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権の各過半数」となりました。

    第3に、規約で定数を動かせる範囲が書き換わりました。 改正前の17条1項ただし書は「この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる」と定めており、頭数の要件だけを緩められる非対称な構造でした。改正後はこのただし書がなくなり、代わりに、決議要件である4分の3そのものを規約で引き下げられる形になっています。ただし下限は2分の1超に画されています。

    第4に、新しい段と新しい決議類型ができました。 3分の2以上という段が生まれ、5分の4以上のグループには建替え以外に4つの決議が加わりました。

    第5に、条番号が動きました。 罰則の20万円以下の過料は71条から91条へ移り、10万円以下の過料を定める92条が新設されました。71条は団地内建物敷地売却決議という別の条文になっています。

    なぜ変わったのか

    改正法の正式名称そのものが目的を語っています。「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための」という冠がついた改正です。円滑化を阻んでいたものが何だったかを考えると、決議要件の変更の意味がつかめます。

    総数を分母にする方式では、集会に来ない区分所有者は、賛成でも反対でもなく、事実上の反対票として作用します。全区分所有者の4分の3の賛成が必要なとき、4分の1を超える人が欠席しただけで決議は成立しません。所有者が高齢化し、賃貸に出されて実際には住んでいない住戸が増え、相続を経て連絡先すらわからない住戸が生じると、賛成でも反対でもない票が分母に居座り続けます。老朽化した建物ほどこの状態に陥りやすく、修繕も建替えもできないまま時間が過ぎる。改正はここに手を入れたものです。

    分母を出席者に変えれば、来なかった人は分母から抜けます。代わりに、来た人が少なすぎる状態で重い決議が通ってしまわないよう、定足数で下から支える。定足数と出席者基準はセットで理解する必要があります。

    同じ問題意識は別の条文にも表れています。38条の2として新設された所在等不明区分所有者の除外の規定です。

    裁判所は、区分所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、当該区分所有者(次項において「所在等不明区分所有者」という。)以外の区分所有者(以下この項及び第三項において「一般区分所有者」という。)又は管理者の請求により、一般区分所有者による集会の決議をすることができる旨の裁判をすることができる。(区分所有法38条の2第1項)

    この裁判があると、所在等不明区分所有者は集会における議決権を有しないことになります(同条2項)。改正後の条文のあちこちに出てくる「議決権を有しないものを除く」という括弧書きは、この裁判によって議決権を失った人を分母から外すためのものです。括弧書きの正体を知らないまま読むと意味不明な挿入句にしか見えませんが、38条の2とセットにすると一本の筋が通ります。

    令和8年度の試験はどちらで出題されるか

    改正後です。宅建試験の出題根拠となる法令は当該年度の4月1日現在で施行されているものと定められており、区分所有法の改正部分は令和8年4月1日に施行されています。管理業務主任者試験も同様に当該年度4月1日現在施行の法令が根拠です。宅建と管理業務主任者を併願する人向けの整理は管理業務主任者と宅建のダブル取得にまとめました。

    問題は、令和7年度以前の過去問です。過去問の肢は当時の条文にもとづいて作られており、その多くが改正後の条文では誤りになります。過去問を回すこと自体は有効ですが、答え合わせのときに必ず受験する年度の基準日時点の条文に当たるという手順を挟まないと、誤った知識を強化することになります。ここで「現行条文」ではなく「基準日時点の条文」と書いているのには理由があります。宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されるため、令和8年度であれば2026年4月1日時点の条文が正解の基準です。4月1日より後に施行された改正は、その年度の出題範囲に入りません。区分所有法についてはこの改正が4月1日施行なので現行条文と基準日条文が一致しますが、法令によっては両者がずれます。条文を引くときは施行日を確認する癖をつけてください。民法改正のときも同じ現象が起きました。改正法との付き合い方は民法改正の要点でも扱っています。

    決議は「定足数」と「多数決要件」の二階建てになった

    定足数とは何か

    改正後の重い決議は、二つの関門を通ります。第一の関門が定足数、第二の関門が多数決要件です。共用部分の重大変更を例に、17条1項の条文を分解します。

    共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。第五項において同じ。)は、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。以下この項及び第三項において同じ。)の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三(これを下回る割合(二分の一を超える割合に限る。)を規約で定めた場合にあつては、その割合)以上の多数による決議で決する。(区分所有法17条1項)

    前半の「区分所有者の過半数の者であつて議決権の過半数を有するものが出席し」が定足数です。ここでも頭数と議決権の両方が要求されます。区分所有者の過半数が出席していても、その人たちの議決権が過半数に届かなければ集会は決議できる状態になりません。逆も同じです。

    後半の「出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三以上の多数による決議」が多数決要件です。分母は総数ではなく、定足数を満たして出席した人の頭数と議決権です。

    この二階建ては、17条1項だけの話ではありません。31条1項(規約の設定・変更・廃止)、47条1項(管理組合法人の成立)、55条2項(解散)、58条2項(使用禁止の請求)、61条5項(大規模滅失の復旧)が、いずれも同じ「定足数+出席者基準の多数決」という形をとっています。59条2項と60条2項は58条2項を準用するので、競売請求と引渡し請求も同じ構造です。

    分母が変わると何が変わるのか

    数字の上で何が起きるかを押さえておきます。100戸のマンションで、議決権が一戸一票に近い状態だと仮定します。

    改正前に共用部分の重大変更を決議するには、100人のうち75人以上の賛成が必要でした。出席が70人しかなければ、その全員が賛成しても決議は不成立です。

    改正後は、まず定足数として51人以上(かつ議決権の過半数)の出席が必要です。仮に70人が出席したなら、そのうち53人以上(70の4分の3は52.5)の賛成で決議が成立します。欠席した30人は分母から消えます。

    つまり改正は、決議のハードルを実質的に下げました。「4分の3」という数字が変わっていないので一見同じに見えますが、何の4分の3かが変わっているため、必要な賛成者の実数はまったく違います。試験でも、この「何の4分の3か」を読み替えて誤らせる作り方が想定されます。

    書面と代理人による行使は出席に算入される

    出席者基準になったことで、39条2項の意味が決定的に重くなりました。

    議決権は、書面又は代理人によつても行使することができる。この場合において、書面又は代理人によつて議決権を行使した区分所有者の数は出席した区分所有者の数に、当該議決権の数は出席した区分所有者の議決権の数に、それぞれ算入する。(区分所有法39条2項)

    書面や委任状で議決権を行使した人は、会場に来ていなくても「出席した区分所有者」に算入されます。定足数の計算にも、多数決の分母にも入ります。したがって「出席」とは会場にいることではありません。総会に出られないから何もしない、という選択だけが分母から抜ける行為です。

    さらに39条3項により、区分所有者は規約または集会の決議によって、書面による行使に代えて電磁的方法によって議決権を行使することができます。

    この算入規定を知らないと、事例問題で人数を数え違えます。「会場出席は40人、書面による議決権行使が15人、委任状による代理出席が10人」という設定が出たら、出席した区分所有者は65人です。40人ではありません。

    「議決権を有しないものを除く」をどう扱うか

    改正後の条文には、17条1項、31条1項、34条3項、35条1項、36条、39条1項、45条1項、47条1項、55条2項、58条2項、61条5項、62条1項、64条の5から64条の8まで、70条1項、71条1項と、ほぼ全域にわたって「議決権を有しないものを除く」という括弧書きが入りました。

    これは前述のとおり、38条の2の裁判によって議決権を失った所在等不明区分所有者を指します。通常の集会では、この裁判が出ていない限り除外される人はいません。試験対策としては、括弧書きの存在を知っていることと、それが38条の2に由来することを説明できれば十分です。条文を読むたびに身構える必要はありません。

    なお38条の2第3項により、一般区分所有者の請求でこの裁判があったときは、その一般区分所有者は遅滞なく管理者に通知しなければならず、管理者がないときは建物内の見やすい場所に掲示しなければなりません。

    普通決議は出席した区分所有者及びその議決権の各過半数

    原則は過半数

    集会の議事は、区分所有法または規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く)及びその議決権の各過半数で決します(39条1項)。

    条文の構造は改正前と同じです。過半数が原則で、4分の3以上や3分の2以上、5分の4以上は「別段の定め」として個別条文に置かれています。つまり、条文に特別の定数が書かれていない事項はすべて普通決議です。試験でも、まず「これは特別の定数が置かれている事項か」を確認し、該当しなければ過半数と判断するのが最短経路になります。

    注意すべきは、普通決議には定足数の規定が置かれていないことです。17条1項や31条1項のような「区分所有者の過半数の者であつて議決権の過半数を有するものが出席し」という文言は、39条1項にはありません。重い決議にだけ定足数を課し、日常的な決議は出席者だけで決められるようにする、という設計です。ここは条文を並べて確認しておいてください。

    「別段の定め」には規約も含まれるため、規約で普通決議の要件を加重することは可能です。管理費の値上げを3分の2以上とする規約は有効です。

    管理者の選任・解任

    区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によって、管理者を選任し、または解任することができます(25条1項)。定数は普通決議です。管理者が交代しても、区分所有者が持つ専有部分や共用部分の持分は何も変わりません。権利そのものへの影響がないので、過半数で足ります。

    加えて、管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者が単独でその解任を裁判所に請求できます(25条2項)。決議が成立しなくても、個人で司法的な救済を求める道が残されています。実務でこの管理者の職務を補助するのが管理会社で、両者の役割分担はマンション管理会社の仕事内容で扱っています。

    共用部分の管理と軽微変更

    共用部分の管理に関する事項は、17条の場合を除いて、集会の決議で決します(18条1項本文)。特別の定数が書かれていないので普通決議です。エレベーターの保守契約、清掃業務の委託、共用部分の日常的な修繕といった事項がここに入ります。18条2項により、これらは規約で別段の定めをすることもできます。また18条6項は、共用部分につき損害保険契約をすることを共用部分の管理に関する事項とみなしています。

    共用部分の変更のうち、その形状または効用の著しい変更を伴わないもの、いわゆる軽微変更は、17条1項の括弧書きで対象から除かれるため、18条1項に戻って普通決議で決することになります。軽微変更は普通決議、重大変更は原則4分の3以上、という対応を先に頭に入れてください。

    なお18条3項により、17条2項が18条1項本文の場合に準用されます。管理に関する事項であっても、それが専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾が必要だということです。

    保存行為は決議なしで単独でできる

    共用部分の保存行為は、各共有者がすることができます(18条1項ただし書)。破損したガラスの応急的な交換、共用廊下の水漏れの止水など、現状を維持するための行為に決議を待たせると、かえって全員の不利益になるからです。

    したがって共用部分に関する行為は、保存行為なら単独、管理行為と軽微変更なら普通決議、重大変更なら原則4分の3以上、という三段階になります。「共用部分の変更には必ず集会の決議が必要である」という選択肢は、保存行為を見落とさせる典型的な誤りです。民法の共有との違いは共有の基本ルールと対比しておくと定着します。

    小規模滅失の復旧

    建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失したとき、いわゆる小規模滅失では、各区分所有者が滅失した共用部分および自己の専有部分を復旧することができます(61条1項本文)。単独でできるということです。ただし共用部分については、復旧の工事に着手するまでに復旧決議、建替え決議、建物更新決議、建物敷地売却決議、建物取壊し敷地売却決議、取壊し決議、一括建替え決議、団地内建物敷地売却決議などがあったときは、単独での復旧はできません(同項ただし書)。

    単独で共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した金額を14条に定める割合、すなわち専有部分の床面積の割合に応じて償還すべきことを請求できます(61条2項)。

    小規模滅失についても集会の決議で復旧を決めることができ(61条3項)、特別の定数が置かれていないので普通決議です。そして61条4項により、1項から3項までは規約で別段の定めをすることができます。

    義務違反者に対する行為の停止請求

    区分所有者が建物の保存に有害な行為その他建物の管理または使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合、またはそのおそれがある場合には、他の区分所有者の全員または管理組合法人は、その行為の停止、結果の除去、予防措置を請求できます(57条1項、6条1項)。この請求を訴訟によって行うには集会の決議が必要ですが(57条2項)、特別の定数が置かれていないので普通決議です。

    後述する使用禁止請求や競売請求が4分の3以上であるのに対し、行為の停止請求だけが普通決議である点は繰り返し問われます。停止を求めるだけなら相手は住み続けられ、権利を失いません。だから軽い定数で済むのです。なお57条4項により、これらの規定は占有者が共同の利益に反する行為をした場合にも準用されます。

    4分の3以上を要する決議

    ここからが、いわゆる特別決議です。条文ごとに、なぜ重い定数が要求されるのかを確認していきます。前述のとおり、この段の決議はすべて「区分所有者の過半数の者であって議決権の過半数を有するものが出席」という定足数を伴い、多数決の分母は出席者です。

    共用部分の重大変更(17条1項)

    共用部分の変更のうち、その形状または効用の著しい変更を伴うものは、定足数を満たした集会において、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上の多数による決議で決します。

    共用部分は全区分所有者の共有物です。その形状や効用を大きく変えることは、各人の持分の対象そのものを変えてしまうことを意味し、しかも多額の費用負担を伴います。反対者にも負担が及ぶ以上、単純多数では足りないという判断です。

    規約による変更の書き方が改正で大きく変わりました。 改正前は「この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる」というただし書があり、緩められるのは頭数だけでした。改正後は、定足数について「これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上」、決議要件について「これを下回る割合(二分の一を超える割合に限る。)を規約で定めた場合にあつては、その割合」と定められています。

    読み替えると次のようになります。定足数は規約で加重できますが、緩和はできません。決議要件の4分の3は規約で引き下げることができ、下限は2分の1超です。しかも引き下げは頭数と議決権の両方に及びます。改正前のような「区分所有者の定数だけ」という非対称は解消されました。

    17条2項は改正前と同じで、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならないと定めています。決議が成立しても、特別の影響を受ける者の承諾がなければ実行できないということです。多数決の限界を示す規定として、31条1項後段と対にして押さえてください。

    変更に伴って必要になる専有部分の保存行為等(17条3項)

    改正で新設された仕組みです。17条1項の決議により共用部分の変更をする場合において、規約に特別の定めがあるときは、その変更に伴い必要となる専有部分の保存行為、または専有部分の性質を変えない範囲内でその利用もしくは改良を目的とする行為を、集会の決議で決することができます(17条3項)。要件は1項と同じで、定足数を満たしたうえで出席者の各4分の3以上です。

    たとえば共用部分である配管を更新するときに、専有部分内の配管まで一体で工事しなければ意味がない、という場面が想定されます。従来は各住戸の同意を個別に取る必要がありましたが、規約に定めがあれば集会決議で進められるようになりました。

    ただし17条4項が歯止めをかけています。この決議で専有部分の保存行為等の態様または費用の分担に関する事項を定めるときは、決議の対象となる専有部分の区分所有者の利用状況、その専有部分の保存行為等について区分所有者が支払った対価その他の事情を考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるようにしなければなりません。

    同じ仕組みは18条にも置かれました。18条1項本文の決議により共用部分の管理をする場合において、規約に特別の定めがあるときは、その管理に伴い必要となる専有部分の保存行為等を集会の決議で決することができます(18条4項)。こちらは普通決議で、17条4項の衡平の要求が準用されます(18条5項)。

    4分の3が3分の2に下がる場合(17条5項)

    これも改正で新設された規定です。次の二つの類型については、17条1項および3項の「四分の三」を「三分の二」と読み替えます(17条5項)。

    第1に、共用部分の設置または保存に瑕疵があることによって他人の権利もしくは法律上保護される利益が侵害され、または侵害されるおそれがある場合における、その瑕疵の除去に関して必要となる共用部分の変更。外壁が剥落して通行人に危険が及ぶ、といった場面です。

    第2に、高齢者、障害者等の移動もしくは施設の利用に係る身体の負担を軽減することにより、その移動上もしくは施設の利用上の利便性および安全性を向上させるために必要となる共用部分の変更。バリアフリー化の工事です。条文は高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律2条1号の定義を引いています。

    危険を除去する工事と、バリアフリー化の工事。この二つだけ定数が軽い、という覚え方でかまいません。放置すれば他人に危害が及ぶ工事と、社会的要請の強い工事について、多数決のハードルを下げたものです。

    規約の設定・変更・廃止(31条1項)

    規約の設定、変更または廃止は、定足数を満たした集会において、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上の多数による決議によってします(31条1項前段)。ペット飼育の可否、専有部分の用途制限、駐車場の使用ルールなど、区分所有者全員の行動を縛るルールを作り替える行為だからです。しかも規約は特定承継人にも効力が及ぶため(46条1項)、将来そこを買う人まで拘束します。影響範囲が広い分、定数も重くなります。

    17条1項との決定的な違いは、規約による緩和ができないことです。 31条1項の条文には、定足数について「これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上」という加重の余地はありますが、決議要件の4分の3には「これを下回る割合を規約で定めた場合」という括弧書きがありません。共用部分の重大変更は規約で2分の1超まで下げられるのに、規約の変更自体は下げられない。この非対称が、改正後の新しい出題ポイントになります。

    理由は考えれば当然です。もし規約の変更要件を規約で緩められるなら、いったん過半数に緩める規約を作ってしまえば、以後はすべての規約変更が過半数で通ってしまい、法定要件が骨抜きになるからです。

    31条1項後段も重要です。規約の設定・変更・廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければなりません。4分の3以上の賛成があっても、特別の影響を受ける当該区分所有者が承諾しなければ効力が生じないということです。

    さらに31条2項は、一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについて、区分所有者全員の規約でこれを定めるときは、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者(議決権を有しないものを除く)の4分の1を超える者、またはその議決権の4分の1を超える議決権を有する者が反対したときは、することができないと定めています。4分の3の賛成ではなく、4分の1超の反対がないこと、という裏側からの書き方である点に注意してください。

    なお規約の内容面では、30条3項が、専有部分・共用部分・敷地・附属施設の形状、面積、位置関係、使用目的、利用状況、区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならないと規定しています。規約が実際にどう買主に開示されるかは宅地建物取引業法の重要事項説明の問題になるので、区分所有建物の重要事項説明とあわせて確認しておくと、権利関係と宅建業法がつながります。

    管理組合法人の設立と解散(47条1項・55条2項)

    3条に規定する団体は、定足数を満たした集会において、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上の多数による決議で法人となる旨ならびにその名称および事務所を定め、かつ、主たる事務所の所在地において登記をすることによって法人となります(47条1項)。決議だけでは足りず、登記が効力要件である点に注意してください。登記の役割や効力については不動産登記の基本も参照になります。

    解散も同じく、定足数を満たしたうえで出席者の各4分の3以上の決議によります(55条1項3号、55条2項)。ほかに、建物の全部の滅失、建物に専有部分がなくなったことによっても解散します(55条1項1号・2号)。

    法人化すると、団体自身が権利義務の主体となり、財産の帰属や訴訟の当事者適格が変わります。区分所有者と団体の関係が根本から変わるため、重い定数が要求されます。

    義務違反者に対する使用禁止請求(58条)

    共同の利益に反する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、行為の停止請求ではその障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員または管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもって相当の期間の専有部分の使用の禁止を請求できます(58条1項)。この決議は、定足数を満たした集会において、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上です(58条2項)。

    所有権は残るものの、一定期間その専有部分を使えなくなります。使用収益権能を奪う以上、停止請求より重い定数が必要だという段階付けです。加えて、決議をするには、あらかじめ当該区分所有者に対し弁明する機会を与えなければなりません(58条3項)。定数を満たしても弁明の機会を欠けば決議は無効となります。

    義務違反者に対する競売請求(59条)

    障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難であるときは、集会の決議に基づき、訴えをもって当該区分所有者の区分所有権および敷地利用権の競売を請求できます(59条1項)。決議の要件は58条2項および3項の準用で、定数も弁明の機会も使用禁止請求と同じです(59条2項)。

    これは所有権そのものを失わせる措置です。使用禁止よりさらに重い効果ですが、定数は同じで、代わりに「他の方法によっては」という実体要件が厳しく設定されています。定数ではなく要件の厳しさで段階を付けているわけです。

    なお59条3項により、判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から6月を経過したときはできません。また59条4項により、その競売において、競売を申し立てられた区分所有者またはその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができません。追い出したはずの人が買い戻して戻ってくることを封じる規定です。

    占有者に対する引渡し請求(60条)

    占有者が共同の利益に反する行為をし、他の方法によっては共同生活の維持を図ることが困難であるときは、集会の決議に基づき、訴えをもって、その占有者が占有する専有部分の使用または収益を目的とする契約の解除およびその専有部分の引渡しを請求できます(60条1項)。決議の要件はここでも58条2項・3項の準用です(60条2項)。

    義務違反者に対する四つの措置は、停止請求だけが普通決議で、使用禁止・競売・引渡しの三つが4分の3以上、というのが結論です。弁明の機会が必要なのも後三者だけです。なお60条3項により、判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければなりません。

    団地の規約の設定(68条1項)

    団地の規約を定めるには、対象によって要件が分かれます。一団地内の土地または附属施設については、その全部につき共有者の4分の3以上の者であってその持分の4分の3以上を有するものの同意が必要です。団地内の専有部分のある建物については、その全部につき、34条の規定による集会における出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上の多数による決議が必要で、しかもこの決議は、区分所有者の過半数の者であって議決権の過半数を有するものが出席してされたものに限られます(68条1項)。建物側にも定足数が入った形です。

    3分の2以上を要する決議

    改正で新しくできた段です。従来の教材にはこの段が存在しないので、意識して覚え直す必要があります。

    大規模滅失の復旧(61条5項)

    建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合、すなわち大規模滅失のときの復旧決議は、改正前の各4分の3以上から、定足数を満たしたうえで出席した区分所有者及びその議決権の各3分の2以上に変わりました(61条5項)。

    条文は「第一項本文に規定する場合を除いて、建物の一部が滅失したとき」という書き方をしています。1項本文が価格の2分の1以下の滅失なので、それを除いた残り、つまり2分の1を超える滅失が5項の対象です。この2分の1という基準は、建物の「価格」の2分の1であって、床面積や戸数の2分の1ではありません。この読み替えを狙う出題があるので、条文の文言のまま覚えてください。

    定数が下がった理由は、改正法の目的から説明がつきます。大規模に壊れた建物を直すか、直さずに次の手を打つかを決められないまま放置されるのが、老朽化マンション問題の典型的な行き詰まりだからです。復旧という前向きな決議のハードルを下げ、決められない状態を減らす。同じ発想が、後述する建替え決議の4分の3への緩和にも表れています。

    61条6項により、この決議をした集会の議事録には、決議についての各区分所有者の賛否をも記載または記録しなければなりません。誰が賛成したかを記録しておかないと、次に述べる買取請求の相手方が特定できないからです。

    大規模滅失の復旧に反対した者の買取請求

    61条5項の決議があった場合において、その決議の日から2週間を経過したときは、決議に賛成した区分所有者(決議賛成者)以外の区分所有者は、決議賛成者の全部または一部に対し、建物およびその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求できます(61条7項前段)。この請求ができるのは決議の日から2週間を経過したときであって、決議日から2週間以内という制限ではありません。期間の起算と方向を反対に書いた選択肢が作りやすい箇所です。

    さらに61条7項後段により、買取請求を受けた決議賛成者は、その請求の日から2月以内に、他の決議賛成者の全部または一部に対し、決議賛成者以外の区分所有者を除いて算定した14条の割合に応じて、その権利を時価で買い取るべきことを請求できます。買取りの負担を賛成者どうしで分け合うための規定です。

    決議の日から2週間以内に、決議賛成者がその全員の合意により買取指定者を指定し、その旨を書面で通知したときは、通知を受けた区分所有者は買取指定者に対してのみ買取請求をすることができます(61条8項)。買取指定者が代金債務を弁済しないときは、決議賛成者が連帯して弁済の責めに任じますが、買取指定者に資力があり執行が容易であることを証明したときはこの限りではありません(61条10項)。

    集会を招集した者は、決議賛成者以外の区分所有者に対し、4月以上の期間を定めて、買取請求をするか否かを確答すべき旨を書面で催告することができます(61条11項)。催告を受けた区分所有者は、定められた期間を経過したときは買取請求をすることができなくなります(61条13項)。

    また、建物の一部が滅失した日から6月以内に、復旧決議も建替え決議も建物更新決議も売却系の決議もされないときは、各区分所有者は、他の区分所有者に対して建物およびその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求できます(61条14項)。どうするのかが決まらないまま塩漬けにされることを防ぐ規定です。

    これらの場合、裁判所は、請求を受けた者の請求により、償還金または代金の支払につき相当の期限を許与することができます(61条15項)。

    団地内の建物の建替え承認決議が3分の2になる場合

    後述する69条1項の建替え承認決議は、出席した団地建物所有者の議決権の4分の3以上が原則ですが、建替えの対象となる特定建物が62条2項各号のいずれかに該当する場合には、この「四分の三」が「三分の二」に読み替えられます(69条8項)。

    5分の4以上を要する決議

    区分所有法で最も重い段です。改正でこのグループが大きく増えました。

    建替え決議(62条1項)

    集会においては、区分所有者(議決権を有しないものを除く)及び議決権の各5分の4以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地もしくはその一部の土地または当該建物の敷地の全部もしくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議、すなわち建替え決議をすることができます(62条1項)。

    ここで条文をよく見てください。62条1項には定足数がなく、分母も出席者ではありません。 「区分所有者及び議決権の各五分の四以上」と書かれており、総数を分母にする書き方が維持されています。17条1項や31条1項が出席者基準に変わったのに、62条1項は総数基準のまま残りました。後述する建物更新決議、建物敷地売却決議、建物取壊し敷地売却決議、取壊し決議も同じで、5分の4グループだけが総数基準です。この非対称は、改正後の最重要ポイントのひとつです。

    なぜ残ったのかは、決議の効果を見れば説明がつきます。建替えが実行されれば、区分所有権の対象である建物は取り壊され、区分所有権も消滅します。反対した区分所有者は、後述する売渡し請求によって区分所有権と敷地利用権を失います。住み慣れた住居から退去せざるを得ず、財産の形も現金または再建建物の権利へと強制的に置き換えられます。所有権を失わせる処分に等しい以上、出席しなかった人を分母から外して成立させるわけにはいきません。欠席は、この決議に限っては反対と同じ重みを持ち続けます。

    修繕や規約変更は、参加しなかった人にも一定の負担が及ぶとはいえ、所有権そのものは残ります。だから出席者基準にできる。所有権を失わせる決議は総数基準を維持する。この線引きで理解しておけば、条文を丸暗記しなくても区別できます。

    建替え決議が4分の3に緩和される5つの場合(62条2項)

    改正で新設された規定です。建物が次の各号のいずれかに該当する場合には、62条1項の「五分の四」を「四分の三」と読み替えます(62条2項)。

    第1号が、地震に対する安全性に係る建築基準法またはこれに基づく命令もしくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。第2号が、火災に対する安全性について同様に基準に適合していないとき。第3号が、外壁、外装材その他これらに類する建物の部分が剥離し、落下することにより周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして法務大臣が定める基準に該当するとき。第4号が、給水、排水その他の配管設備(その改修に関する工事を行うことが著しく困難なものとして法務省令で定めるものに限る)の損傷、腐食その他の劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるものとして法務大臣が定める基準に該当するとき。第5号が、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律14条5項に規定する建築物移動等円滑化基準に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。

    耐震、防火、外壁の落下、配管の劣化、バリアフリー。5つとも、放置すれば危険が増すか、居住者の生活が成り立たなくなる事情です。そういう建物については、5分の4という壁を4分の3まで下げて建替えを進めやすくする、という趣旨です。なお62条3項により、法務大臣はこれらの基準を定め、または変更するときは、あらかじめ国土交通大臣と協議するものとされています。

    この62条2項各号は、以下に述べる新しい決議類型でも準用され、団地の決議にも読替えで適用されます。改正後の区分所有法を貫く共通の緩和事由なので、5つを一組で覚えてください。

    建替え決議で定めなければならない事項

    建替え決議では、次の事項を定めなければなりません(62条4項)。新たに建築する建物の設計の概要、建物の取壊しおよび再建建物の建築に要する費用の概算額、その費用の分担に関する事項、再建建物の区分所有権の帰属に関する事項の四つです。

    62条5項は、費用の分担と区分所有権の帰属に関する定めは、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならないとしています。定数を満たせば何を決めてもよいわけではなく、内容の衡平性が要求されている点は、31条1項後段や30条3項、17条4項と同じ発想です。

    建物更新決議(64条の5)

    改正で新設された決議です。集会においては、区分所有者(議決権を有しないものを除く)及び議決権の各5分の4以上の多数で、建物の更新をする旨の決議をすることができます(64条の5第1項)。

    条文が定義する「建物の更新」とは、建物の構造上主要な部分の効用の維持または回復(通常有すべき効用の確保を含む)のために共用部分の形状の変更をし、かつ、これに伴い全ての専有部分の形状、面積または位置関係の変更をすることです。取り壊さずに、躯体を活かしたまま中身を作り替える工事を想定しています。専有部分の形や広さまで変わる以上、建替えに準じる効果があるため、5分の4以上が課されています。

    建物更新決議では、更新後の建物の設計の概要、更新に要する費用の概算額、その費用の分担に関する事項、更新後の建物の区分所有権の帰属に関する事項を定めなければなりません(64条の5第2項)。62条2項の5つの緩和事由や、63条以下の売渡し請求の規定が準用されます(64条の5第3項)。

    建物敷地売却決議(64条の6)

    敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるときは、集会において、区分所有者、議決権、および当該敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の多数で、建物およびその敷地を売却する旨の決議をすることができます(64条の6第1項)。

    要件が三つある点に注意してください。頭数と議決権に加えて、敷地利用権の持分の価格まで数えます。建物ごと敷地を売る決議なので、敷地についての権利の大きさを無視できないからです。なお、議決権を有しない区分所有者が有する持分は分母から除かれます。

    決議では、売却の相手方となるべき者の氏名または名称、売却による代金の見込額、売却によって各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項を定めます(64条の6第2項)。

    建物取壊し敷地売却決議(64条の7)

    同じく敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるときに、区分所有者、議決権、および敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の多数で、建物を取り壊し、かつ建物の敷地を売却する旨の決議をすることができます(64条の7第1項)。建物を壊してから更地で売る、という選択肢です。

    決議で定めるべき事項は、建物の取壊しに要する費用の概算額、その費用の分担に関する事項、敷地の売却の相手方となるべき者の氏名または名称、敷地の売却による代金の見込額、売却によって各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項の五つです(64条の7第2項)。

    取壊し決議(64条の8)

    集会においては、区分所有者(議決権を有しないものを除く)及び議決権の各5分の4以上の多数で、建物を取り壊す旨の決議をすることができます(64条の8第1項)。売らずに壊すだけ、という決議です。定めるべき事項は、取壊しに要する費用の概算額と、その費用の分担に関する事項の二つだけです(同条2項)。

    5分の4グループの整理

    改正後、5分の4以上を要する決議は、建替え(62条1項)、建物更新(64条の5第1項)、建物敷地売却(64条の6第1項)、建物取壊し敷地売却(64条の7第1項)、取壊し(64条の8第1項)の五つになりました。団地についてはさらに一括建替え決議(70条1項)と団地内建物敷地売却決議(71条1項)が加わります。

    五つに共通するのは、いまの建物と区分所有関係を終わらせる、または全面的に作り替える決議だという点です。従来は建替えという一本道しかなかったところに、更新する、建物ごと売る、壊して土地を売る、壊すだけ、という選択肢が並びました。老朽化した建物の出口を複数用意した、と理解しておくと位置づけを見失いません。

    そして五つとも、62条2項各号に該当すれば4分の3に下がり、いずれも総数基準で、定足数はありません。売却系の二つだけ敷地利用権の持分の価格という第三の要件が加わる。この三点で区別できます。

    反対者に対する売渡し請求(63条)

    建替え決議があったときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議に賛成しなかった区分所有者に対し、建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければなりません(63条1項)。電磁的方法によることもできます(同条2項)。

    催告を受けた区分所有者は、催告を受けた日から2月以内に回答する必要があり(63条3項)、期間内に回答しなかったときは参加しない旨を回答したものとみなされます(同条4項)。

    回答期間が経過したときは、建替え決議に賛成した各区分所有者、建替えに参加する旨を回答した各区分所有者、またはこれらの者の全員の合意により指定された買受指定者は、その期間の満了の日から2月以内に、参加しない旨を回答した区分所有者に対し、区分所有権および敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求できます(63条5項)。これが売渡し請求です。

    ここでの二つの「2月」は役割が違います。前者は反対者が回答するための期間、後者は賛成者側が売渡し請求をするための期間です。招集通知の2月前と合わせると建替え決議には2月が三度登場するので、それぞれ何のための期間なのかを区別して覚える必要があります。

    売渡し請求を受けた区分所有者は、建物の明渡しにより生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ建替え決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所に対し、代金の支払または提供の日から1年を超えない範囲内で明渡しの期限の許与を請求できます(63条6項)。

    さらに63条7項は、建替え決議の日から2年以内に建物の取壊しの工事に着手しない場合には、売り渡した者が、その期間の満了の日から6月以内に、買主が支払った代金に相当する金銭を提供して権利を売り渡すべきことを請求できると定めています。着手しなかったことに正当な理由があるときは除かれます。決議だけして放置することを防ぐ規定です。

    なお64条により、建替え決議に賛成した各区分所有者、参加する旨を回答した各区分所有者、権利を買い受けた各買受指定者は、建替え決議の内容により建替えを行う旨の合意をしたものとみなされます。

    団地における建替えと売却

    団地内の特定の建物を建て替える場合には、団地管理組合の集会において建替え承認決議が必要です(69条1項)。要件は、議決権の過半数を有する団地建物所有者が出席し、出席した団地建物所有者の議決権の4分の3以上の多数による承認です。ここは「区分所有者及び議決権の各」ではなく議決権のみで判断する点が特徴的で、この点は改正後も変わっていません。定足数と出席者基準が入った形になっています。前提として、特定建物が専有部分のある建物である場合はその建替え決議または区分所有者全員の同意が、そうでない建物の場合はその所有者の同意が必要です。

    69条1項の集会における議決権は、規約に別段の定めがある場合であっても、特定建物の所在する土地の持分の価格の割合によるものとされます(69条2項)。規約で動かせない点に注意してください。招集通知は会日より少なくとも2月前に、会議の目的たる事項および議案の要領のほか、新たに建築する建物の設計の概要をも示して発しなければならず、この期間は規約で伸長できます(69条4項)。

    建替え承認決議に係る建替えが他の建物の建替えに特別の影響を及ぼすべきときは、その他の建物が専有部分のある建物である場合には、その建物の区分所有者全員の議決権の4分の3以上の議決権を有する区分所有者が承認決議に賛成しているときに限り、建替えができます(69条5項)。

    団地内の建物の全部を一括して建て替える一括建替え決議は、団地管理組合の集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く)及び議決権の各5分の4以上の多数で決します(70条1項本文)。ただし、団地内建物のうちいずれか一以上の建物につき、その区分所有者の3分の1を超える者または議決権の合計の3分の1を超える議決権を有する者が反対した場合は、決議できません(同項ただし書)。棟ごとの少数派が全体の多数決で一方的に押し切られないよう、二重の要件になっています。団地内建物の全部が62条2項各号に該当する場合には、5分の4が4分の3に読み替えられます(70条2項)。

    改正で新設されたのが団地内建物敷地売却決議です(71条1項)。要件は一括建替え決議と同じく、区分所有者及び議決権の各5分の4以上で、いずれか一以上の建物につき3分の1を超える反対があればできません。62条2項各号に全部が該当すれば4分の3に下がります(71条2項)。

    集会の招集手続と決議事項の制限

    決議要件を問う問題は、招集手続の要件とセットで出題されます。「決議は5分の4以上で成立したが、招集通知が1週間前だった」というように、定数は正しく書いておいて手続で誤らせる作り方が定番だからです。

    招集権者と年1回の招集義務

    集会は管理者が招集します(34条1項)。管理者は、少なくとも毎年1回集会を招集しなければなりません(34条2項)。この「毎年1回以上」は義務であって、招集しないことが規約で許されるものではありません。管理者の選任・解任そのものは集会の決議によりますが、規約で直接定めておくこともできます(25条1項)。

    区分所有者からの招集請求

    区分所有者(議決権を有しないものを除く)の5分の1以上の者であって議決権の5分の1以上を有するものは、会議の目的たる事項を示して、管理者に集会の招集を請求できます(34条3項本文)。この定数は規約で減ずることができます(同項ただし書)。増やすことはできません。区分所有者が集会を開く道を規約で狭めるのは、少数者の発言機会を奪うことになるため許されないのです。

    請求があったにもかかわらず、2週間以内に、請求の日から4週間以内の日を会日とする招集通知が発せられなかったときは、請求をした区分所有者が自ら集会を招集できます(34条4項)。また、管理者がないときは、同じく5分の1以上の区分所有者が直接集会を招集でき、この定数も規約で減ずることができます(34条5項)。

    招集通知は1週間前、議案の要領は常に必要

    集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項及び議案の要領を示して、各区分所有者(議決権を有しないものを除く。)に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸長することができる。(区分所有法35条1項)

    この条文は改正で二か所変わりました。

    第1に、示すべき内容が「会議の目的たる事項及び議案の要領」になりました。改正前は「会議の目的たる事項」だけを示せばよく、議案の要領まで示す必要があったのは、共用部分の重大変更や規約の設定・変更・廃止、大規模滅失の復旧、建替えといった重い決議のときに限られていました。改正後は、決議の軽重を問わず、常に議案の要領が必要です。

    第2に、ただし書が「規約で伸長することができる」になりました。改正前は「規約で伸縮することができる」で、伸ばすことも縮めることもできました。改正後は伸ばすことしかできません。 短縮を認めていた規約の定めは、この点で効力を失います。招集請求の定数が「減ずる」方向にしか動かせないのと合わせて、方向の一方通行として覚えてください。

    通知の宛先は、区分所有者が管理者に通知を受けるべき場所を通知していればその場所、通知していなければ専有部分が所在する場所です(35条3項)。この場合、通知は通常それが到達すべき時に到達したものとみなされます。建物内に住所を有する区分所有者や、通知場所を届け出ない区分所有者に対しては、規約に特別の定めがあるときは建物内の見やすい場所への掲示によることができ、掲示をした時に到達したものとみなされます(35条4項)。

    招集手続の省略と決議事項の制限

    集会は、区分所有者(議決権を有しないものを除く)全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができます(36条)。「全員」であって4分の3ではありません。手続を省くことは、通知を受けられなかった者の出席機会を失わせるので、一人でも反対すれば省略できないという構造です。

    集会においては、35条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ決議をすることができます(37条1項)。当日に急に議題を追加して決議することはできません。ただし、法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることは可能です(37条2項)。

    改正で37条3項が新設されました。1項および2項の規定は、36条により全員の同意を得て招集手続を省略して開いた集会には適用しません。そもそも通知をしていない集会に「通知した事項に限る」という縛りをかけても意味がないからです。全員が同意して集まった以上、その場で何を決議してもよいということになります。

    建替え決議だけの加重された手続

    建替え決議を会議の目的とする集会を招集するときは、35条1項の通知を、集会の会日より少なくとも2月前に発しなければなりません(62条6項本文)。この期間は規約で伸長することができますが、短縮はできません(同項ただし書)。

    通知に際しては、会議の目的たる事項および議案の要領のほか、次の四つを通知しなければなりません(62条7項)。建物の建替えを必要とする理由、建替えをしないとした場合における建物の効用の維持または回復をするのに要する費用の額とその内訳、建物の修繕に関する計画が定められているときはその内容、建物につき修繕積立金として積み立てられている金額です。

    加えて、集会を招集した者は、当該集会の会日より少なくとも1月前までに、招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければなりません(62条8項)。説明会の開催については35条および36条が準用されるので(62条9項)、説明会そのものの招集通知は会日より少なくとも1週間前に発することになります。

    2月前の通知、1月前までの説明会、説明会は1週間前通知。この三つの数字は建替え決議に固有のもので、通常の集会の1週間前とは別物として覚える必要があります。そして建替え決議をした集会の議事録には、決議についての各区分所有者の賛否をも記載または記録しなければなりません(62条10項、61条6項の準用)。

    議決権と議決権行使者

    各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、14条に定める割合、すなわち専有部分の床面積の割合によります(38条)。頭数で一人一票ではありません。ただし「規約に別段の定めがない限り」とあるとおり、規約で一戸一議決権とすることもできます。試験では「議決権は常に専有部分の床面積の割合による」という言い切りが誤りになります。

    専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数をもって、議決権を行使すべき者一人を定めなければなりません(40条)。共有者それぞれが議決権を持つわけではなく、しかも行使者の決定自体が持分価格の過半数で決まる点に注意してください。

    集会を開かない決議

    この法律または規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者(議決権を有しないものを除く)全員の承諾があるときは、書面または電磁的方法による決議をすることができます(45条1項)。また、集会において決議すべきものとされた事項について区分所有者全員の書面または電磁的方法による合意があったときは、書面または電磁的方法による決議があったものとみなされます(45条2項)。いずれも「全員」が要件です。この決議は集会の決議と同一の効力を有します(同条3項)。

    占有者の意見陳述権

    区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べることができます(44条1項)。ただし議決権はありません。意見は言えるが決められない、という区別です。この場合、集会を招集する者は、招集の通知を発した後遅滞なく、集会の日時、場所、会議の目的たる事項および議案の要領を建物内の見やすい場所に掲示しなければなりません(44条2項)。

    一方で、規約および集会の決議は区分所有者の特定承継人に対しても効力を生じ、占有者も建物等の使用方法については区分所有者と同一の義務を負います(46条)。議決に参加できないのに使用方法の義務は負う、という関係になっており、その代償として意見陳述権が用意されていると理解しておくと整理しやすくなります。賃貸住戸を含むマンションの管理をめぐる実務上の論点は賃貸不動産経営管理士と宅建の違いでも触れています。

    規約で定数を動かせるかどうか

    改正で最も書き換えが必要な部分です。改正前の整理はほぼ使えません。

    規約で緩和できるもの

    決議要件そのものを規約で引き下げられるのは、共用部分の重大変更(17条1項)と、それに伴う専有部分の保存行為等の決議(17条3項)だけです。引き下げの下限は2分の1超で、頭数と議決権の両方に及びます。改正前のように「区分所有者の定数だけ」という限定はありません。

    集会の招集請求に必要な5分の1という定数も規約で減ずることができます(34条3項ただし書、34条5項ただし書)が、これは決議の成立要件ではなく招集のための要件なので、混同しないようにしてください。

    規約で加重できるもの

    定足数は、17条1項、31条1項、47条1項、55条2項、58条2項、61条5項、68条1項のいずれについても、「これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上」という形で加重できます。緩和はできません。

    普通決議の各過半数は、39条1項が「この法律又は規約に別段の定めがない限り」としているので、規約で加重できます。

    招集通知の1週間前という期間は、規約で伸長することはできますが短縮はできません(35条1項ただし書)。建替え決議の招集通知の2月前という期間も同様に、伸長のみ可能です(62条6項ただし書)。

    18条2項により、共用部分の管理に関する事項については規約で別段の定めをすることができ、61条4項により、小規模滅失の復旧に関する1項から3項までについても規約で別段の定めをすることができます。

    規約でどちらにも動かせないもの

    規約の設定・変更・廃止の4分の3以上(31条1項)、管理組合法人の設立・解散の4分の3以上(47条1項、55条2項)、義務違反者に対する使用禁止請求・競売請求・引渡し請求の4分の3以上(58条2項、59条2項、60条2項)、大規模滅失の復旧の3分の2以上(61条5項)、そして5分の4以上を要する五つの決議(62条1項、64条の5から64条の8まで)は、いずれも決議要件そのものを規約で動かせません。定足数がある条文については定足数の加重だけができます。

    また69条2項により、団地内の建物の建替え承認決議における議決権は、規約に別段の定めがある場合であっても特定建物の所在する土地の持分の価格の割合によるものとされ、規約で変えられません。

    改正前を前提にした知識をどう書き換えるか

    手元の教材や過去問が改正前のものである場合に、どこを直せばよいかを対比の形でまとめます。

    「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」を見たとき

    共用部分の重大変更(17条1項)と規約の設定・変更・廃止(31条1項)については、この記述は改正後の条文と一致しません。正しくは「区分所有者の過半数の者であって議決権の過半数を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上」です。管理組合法人の設立・解散、義務違反者に対する三つの請求も同じ形です。

    「規約で区分所有者の定数を過半数まで減ずることができる」を見たとき

    これは改正前の17条1項ただし書の内容で、条文上はなくなりました。改正後は、定足数を規約で加重することと、決議要件の4分の3を規約で2分の1超まで引き下げることができます。引き下げは頭数と議決権の両方に及びます。「減らせるのは区分所有者の定数だけ」という有名な出題ポイントは、そのままでは使えません。

    「大規模滅失の復旧は各4分の3以上」を見たとき

    改正後は3分の2以上です(61条5項)。しかも定足数と出席者基準がつきます。4分の3のグループから3分の2のグループへ移動した、と覚え直してください。

    「招集通知の1週間前は規約で伸縮できる」を見たとき

    改正後は伸長のみです(35条1項ただし書)。短縮はできません。

    「議案の要領を示すのは重い決議のときだけ」を見たとき

    改正後は、決議の軽重を問わず常に議案の要領を示す必要があります(35条1項)。旧35条5項に相当する規定はなくなりました。

    「区分所有法71条の罰則」を見たとき

    20万円以下の過料を定める規定は91条に移りました。10万円以下の過料を定める92条も新設されています。改正後の71条は団地内建物敷地売却決議の条文です。番号で覚えていると、条文を引いたときに別の内容が出てきます。

    「建替え決議は5分の4以上、緩和なし」を見たとき

    原則は変わりませんが、62条2項に5つの緩和事由が新設され、該当すれば4分の3になります。「建替えは常に5分の4」という言い切りは、改正後は誤りです。

    試験での出題ポイント

    改正から日が浅く、令和8年度は改正後の条文で出題される最初の年度です。出題されるかどうかを断定することはできませんが、条文の構造から言えることが二つあります。

    ひとつは、旧要件をそのまま書いた肢は、条文ひとつで正誤が確定するということです。「共用部分の重大変更は区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決する」という肢は、改正後の17条1項と突き合わせれば誤りだと判定できます。判例の射程や事実認定を要しないため、作問の素材としては扱いやすい位置にあります。

    もうひとつは、改正で新しく増えた概念、すなわち定足数、3分の2の段、62条2項の緩和事由、64条の5から64条の8までの新決議は、これまで出題実績がないぶん、既存の教材で対策されにくいということです。差がつくとすればここです。以下、崩され方のパターンを整理します。

    定足数と多数決要件のすり替え

    「出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上」を「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」と書く、あるいは定足数の「過半数」を「4分の3」と書く、といったパターンが想定されます。二階建ての構造を把握していれば、どちらの階の数字が入れ替えられているかで判別できます。

    総数基準と出席者基準の混同

    17条1項や31条1項は出席者基準、62条1項をはじめとする5分の4グループは総数基準です。この使い分けを逆にした肢は、条文の書きぶりを覚えていないと判断できません。「所有権を失わせる決議だけが総数基準」という理屈で覚えておいてください。

    定数の入れ替え

    正しい事項に誤った定数を組み合わせるパターンは従来どおり出題されます。規約の変更を過半数と書く、建替え決議を4分の3以上と書く、大規模滅失の復旧を4分の3以上と書く。最後のものは改正前なら正しかった記述なので、改正後の判断ができるかを試すのに向いています。

    「区分所有者」と「議決権」のすり替え

    「区分所有者及び議決権の各◯分の◯以上」を「区分所有者又は議決権の◯分の◯以上」と書き換えて、どちらか一方で足りるかのように見せる問い方は、改正後も有効な引っかけです。定足数の側も「過半数の者であつて議決権の過半数を有するもの」と、両方が要求されています。

    また、建物敷地売却決議と建物取壊し敷地売却決議は、頭数・議決権・敷地利用権の持分の価格という三つの要件を要求します。ここだけ三つである点を落とした肢が作れます。

    手続要件による引っかけ

    定数を正しく書いたうえで、招集通知の期間を1週間前と2月前で入れ替える、建替えの説明会を1週間前までと書く、招集手続の省略に必要な同意を4分の3以上と書く、招集通知の期間を規約で短縮できると書く、といった崩し方です。決議の成立には定数と手続の両方が必要なので、片方が誤っていれば選択肢全体が誤りになります。

    弁明の機会と承諾

    義務違反者に対する使用禁止・競売・引渡しの各請求では、あらかじめ弁明の機会を与える必要があります(58条3項、59条2項、60条2項)。停止請求にはこの要件がありません。また、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときの承諾(17条2項)、規約の設定・変更・廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときの承諾(31条1項後段)は、決議が成立していても別途必要です。「4分の3以上の決議があれば承諾は不要」とする選択肢は誤りです。

    単独でできる行為の見落とし

    保存行為は各区分所有者が単独でできること(18条1項ただし書)、小規模滅失の復旧は単独でできること(61条1項本文)、管理者の解任請求は単独で裁判所に求められること(25条2項)は、いずれも「集会の決議が必要」と書かれると誤りになります。権利関係で失点しやすい論点の整理は権利関係の苦手つぶしでも扱っています。

    書面行使の算入

    「出席」の意味を問う出題が新たに成立します。書面または代理人によって議決権を行使した区分所有者の数は出席した区分所有者の数に、その議決権の数は出席した区分所有者の議決権の数に算入されます(39条2項)。会場に来た人だけを数えさせる肢や、委任状を出席に算入しないとする肢は誤りです。

    議事録の署名

    集会の議事については、議長が書面または電磁的記録により議事録を作成しなければならず(42条1項)、議事録が書面で作成されているときは、議長および集会に出席した区分所有者の2人がこれに署名しなければなりません(42条3項)。押印は要件ではありません。

    覚え方・整理の仕方

    まず二階建てを描く

    改正後の決議は、定足数と多数決要件の二階建てです。紙に二段の箱を描き、上の段に「誰が何人出席していれば集会は決議できる状態になるか」、下の段に「出席した人のうち何割の賛成が必要か」と書き込みます。この二段の枠に、条文ごとの数字を落とし込んでいく。この形で覚えると、条文を読んだときにどちらの段の話をしているのかを取り違えなくなります。

    段は四つになった

    改正前は過半数・4分の3・5分の4の三段構えでしたが、改正後は3分の2が加わって四段になりました。

    普通決議が出席者の各過半数。3分の2以上が、大規模滅失の復旧(61条5項)と、瑕疵の除去またはバリアフリー化のための共用部分の変更(17条5項)。4分の3以上が、共用部分の重大変更、規約の設定・変更・廃止、管理組合法人の設立・解散、義務違反者に対する三つの請求。5分の4以上が、建替え・建物更新・建物敷地売却・建物取壊し敷地売却・取壊しの五つ。

    3分の2の段に入るものは、危険を取り除く工事、バリアフリー化、そして壊れた建物を直す決議です。どれも「放置するほうが悪い」種類の決議で、だから多数決の壁が低い。この理屈で覚えれば、どの段に入るかを推測できます。

    総数基準か出席者基準かは「所有権を失うか」で決める

    出席者基準に変わったのは、決議が成立しても各区分所有者が所有権を持ち続ける決議です。総数基準が残ったのは、区分所有権そのものを失わせる決議、つまり5分の4グループです。所有権を失わせる決議で欠席者を分母から外せば、来なかっただけで財産を奪われる人が出てしまう。だから残った。この一本の理屈で、条文を見なくても判断できます。

    62条2項の5つを一組で覚える

    耐震、防火、外壁の落下、配管の劣化、バリアフリー。この5つに該当すれば、5分の4が4分の3に、建替え承認決議の4分の3が3分の2に下がります。5分の4グループと団地の決議に横断的に効く共通事由なので、条文ごとに覚え直さず、一組の事由として頭に入れてください。

    規約で動かせる方向を矢印で覚える

    定足数は上向きの矢印だけ、つまり加重のみ。17条1項の決議要件は下向きの矢印があり、下限は2分の1超。31条以下の4分の3と5分の4グループは矢印なし。招集通知の期間は上向きの矢印だけ、つまり伸長のみ。招集請求の5分の1は下向きの矢印だけ、つまり減ずるのみ。方向で覚えると、「伸縮できる」「過半数まで減ずることができる」といった改正前の記述に引きずられずに済みます。語呂合わせの作り方そのものは宅建の語呂合わせ基礎も参考になります。

    数字を「何の」数字かで束ねる

    区分所有法には2分の1、5分の1、4分の1、3分の1、3分の2、4分の3、5分の4、1週間、2週間、1月、2月、4月、6月、1年、2年と数字が大量に出てきます。一列に並べて覚えようとすると混線します。決議の定数、定足数、招集の定数(5分の1)、滅失の区分(価格の2分の1)、期間というように、何を測る数字なのかで箱を分けて格納してください。

    判断の手順を固定する

    問題を読むときは、次の順で処理すると安定します。第一に、決議事項が何かを特定する。第二に、条文に特別の定数が置かれているかを確認し、置かれていなければ普通決議と判断する。第三に、置かれている場合、それが総数基準か出席者基準かを判別する。第四に、出席者基準なら定足数の記述が正しいかを確認する。第五に、招集通知の期間、弁明の機会、特別の影響を受ける者の承諾といった付随要件を確認する。この五段階を毎回同じ順で回すと、定数だけ合っていて手続で外す失点が減ります。過去問での回し方は過去問の回転法に整理しています。

    マンション管理士・管理業務主任者の学習と重ねる

    区分所有法はマンション管理士試験と管理業務主任者試験の中心科目でもあり、宅建で学んだ内容がそのまま接続します。とくに管理業務主任者試験では、宅建より踏み込んだ手続の分岐まで問われます。学習の重ね方はマンション管理士と宅建の関係宅建と管理業務主任者の難易度比較で扱っています。改正の影響を受ける範囲は両試験で共通なので、併願するなら一度で書き換えてしまうのが効率的です。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 共用部分の重大変更は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決する。(○か×か)

    答えを見る **× 誤り。** これは令和8年4月1日施行の改正前の記述です。改正後の17条1項は、区分所有者の過半数の者であって議決権の過半数を有するものが出席し、**出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上**の多数による決議で決するとしています。定足数が新設され、多数決の分母が総数から出席者に変わりました。数字の4分の3は残っていますが、何の4分の3かが違います。なお、ここでいう「出席」には、書面または代理人によって議決権を行使した区分所有者も算入されます(39条2項後段)。会場にいるかどうかではなく、議決権を行使したかどうかが分かれ目です。

    Q2. 共用部分の重大変更の決議について、規約で区分所有者の定数を過半数まで減ずることができるが、議決権の定数は減らせない。(○か×か)

    答えを見る **× 誤り。** これも改正前の17条1項ただし書の内容で、改正後の条文にはこのただし書がありません。改正後は、決議要件である4分の3そのものを規約で引き下げることができ、下限は2分の1を超える割合とされています。引き下げは区分所有者と議決権の両方に及ぶため、「区分所有者の定数だけ」という非対称は解消されました。なお定足数の過半数については、規約でこれを上回る割合を定めて加重することはできますが、緩和はできません。

    Q3. 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の復旧決議は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数で決する。(○か×か)

    答えを見る **× 誤り。** 改正後の61条5項は、区分所有者の過半数の者であって議決権の過半数を有するものが出席し、**出席した区分所有者及びその議決権の各3分の2以上**の多数で決するとしています。改正前は各4分の3以上だったので、段そのものが変わりました。あわせて、この決議をした集会の議事録には各区分所有者の賛否を記載または記録しなければなりません(61条6項)。決議の日から2週間を経過したときに、賛成しなかった区分所有者が決議賛成者に対して買取請求をすることができます(61条7項)。

    Q4. 建替え決議は区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で決するのが原則であり、この定数が引き下げられることはない。(○か×か)

    答えを見る **× 誤り。** 前段は正しく、62条1項は総数を分母とする各5分の4以上を維持しています。しかし改正で62条2項が新設され、建物が耐震性の基準に適合していないとき、火災に対する安全性の基準に適合していないとき、外壁等が剥離・落下して周辺に危害を生ずるおそれがあるとき、改修が著しく困難な配管設備の劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるとき、バリアフリーの基準に適合していないときは、「五分の四」を「四分の三」と読み替えます。これら5つの事由は建物更新決議や売却系の決議、団地の決議にも共通して働きます。

    Q5. 集会の招集通知は、会日より少なくとも1週間前に会議の目的たる事項を示して発すれば足り、この期間は規約で伸縮することができる。(○か×か)

    答えを見る **× 誤り。** 二か所が改正後の条文と一致しません。改正後の35条1項は「会議の目的たる事項**及び議案の要領**を示して」と定めており、決議の軽重を問わず常に議案の要領が必要です。またただし書は「この期間は、規約で**伸長**することができる」となっており、短縮はできません。改正前は議案の要領が必要なのは重い決議のときだけで、期間も「伸縮」できました。

    まとめ

    • 区分所有法は令和7年法律第47号により令和8年4月1日から改正後の内容で施行されている。宅建試験の出題根拠は当該年度4月1日現在施行の法令なので、令和8年度は改正後が唯一の正解になる。
    • 重い決議は「定足数(区分所有者の過半数の者であって議決権の過半数を有するものの出席)+出席した区分所有者及びその議決権の各◯分の◯以上」という二階建てになった。定足数という概念自体が改正で新設されたものである。
    • 段は四つ。普通決議が出席者の各過半数(39条1項)。3分の2以上が大規模滅失の復旧(61条5項)と瑕疵除去・バリアフリー化のための共用部分の変更(17条5項)。4分の3以上が共用部分の重大変更、規約の設定・変更・廃止、管理組合法人の設立・解散、義務違反者に対する使用禁止・競売・引渡しの請求。5分の4以上が建替え、建物更新、建物敷地売却、建物取壊し敷地売却、取壊しの五つ。
    • 5分の4グループだけは総数を分母とする書き方が維持され、定足数もない。区分所有権そのものを失わせる決議だから、欠席者を分母から外せないという理屈で覚える。ただし62条2項の5つの事由に該当すれば4分の3に下がる。
    • 規約で動かせる方向は一方通行。定足数は加重のみ、招集通知の1週間前は伸長のみ、招集請求の5分の1は減ずるのみ。決議要件そのものを引き下げられるのは17条1項・3項だけで、下限は2分の1超。改正前の「区分所有者の定数を過半数まで減ずることができる」という記述はもう使えない。
    • 条番号も動いた。20万円以下の過料は71条から91条へ移り、10万円以下の過料を定める92条が新設された。改正後の71条は団地内建物敷地売却決議である。

    区分所有法は権利関係の中でも条文の対応関係が明確で、努力が点数に直結する分野です。頻出論点の全体像は権利関係の頻出テーマ、権利関係全体の組み立て方は権利関係の全体像で確認できます。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、区分所有法の決議要件を含む権利関係の肢別トレーニングと年度別過去問演習に取り組めます。

    読んだ内容を、権利関係の肢で確かめる

    民法・借地借家法・区分所有法など、条文だけでは判断しづらい論点は、過去問の肢で覚えるのが最短です。

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