建築基準法の全体像|単体規定と集団規定
建築基準法を単体規定と集団規定の区別を軸に通します。適用範囲、既存不適格、敷地が2以上の地域にまたがる場合の3つの処理、建築確認と建築協定までを条文つきで整理。
目次
この記事は、建築基準法という法律の構造を一度通すためのものです。数字の一覧は建築基準法の数字、建蔽率と容積率の計算は建蔽率・容積率の計算、道路と接道はセットバックがそれぞれ担当するので、個別の論点はそちらへ送ります。法令上の制限全体での位置づけは法令上の制限の頻出論点を参照してください。
結論を先に述べます。建築基準法の学習は、条文を頭から追うと迷子になります。この法律は性格の違う2つの規定群でできていて、単体規定は建築物そのものの安全と衛生を全国どこでも規律し、集団規定は都市計画区域および準都市計画区域の内で建築物どうしの関係を規律します。どちらの話をしているかを最初に判定すれば、適用範囲も、規制の目的も、答えの向きも決まります。以下、この区別を軸に法律全体を通します。
建築基準法は何を定める法律か
1条の「最低の基準」
建築基準法1条は「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする」と定めています。
規律の対象が4つ挙げられています。敷地、構造、設備、用途。この4つが、後で見る単体規定と集団規定に振り分けられます。
そして「最低の基準」という言い方が重要です。建築基準法が定めているのは、これを下回ってはならないという下限であって、望ましい水準ではありません。基準を上回る性能の建物を建てることは当然に認められますし、地方公共団体が条例で制限を付加できる場面もあります。
この性格は、条例による制限の扱いに現れます。43条3項は、地方公共団体が条例で接道義務の制限を付加できるとしています。付加、すなわち強化はできますが、条例で法律の基準を下回らせることは原則としてできません。下限を定めた法律だからです。
建築確認は適合を事前に確かめる仕組み
最低の基準を定めただけでは、守られているかどうかが分かりません。そこで6条以下が建築確認という手続を置き、工事に着手する前に計画が建築基準関係規定に適合しているかを審査させています。
つまり建築基準法は、基準を定める部分と、その遵守を担保する手続の部分でできています。手続の詳細は建築確認の手続きで扱いますが、この記事でも後で構造を確認します。
単体規定と集団規定という区分
区分の意味
建築基準法の規定は、性格によって2つに分かれます。
単体規定は、その建築物を使う人の安全と衛生を確保するための規定です。構造が地震に耐えるか、火災のときに逃げられるか、居室に光と空気が入るか。いずれも、周囲に他の建物があるかどうかと関係なく必要になります。
集団規定は、建築物どうしの関係と、市街地の環境を保つための規定です。道路に接しているか、その用途がその地域にふさわしいか、敷地に対して大きすぎないか、隣家の日照を奪っていないか。いずれも、建物が集まっている場所でなければ問題になりません。
適用範囲が違う理由
この性格の違いが、適用範囲の違いに直結します。
単体規定は全国どこでも適用されます。山中に一軒だけ建てる家でも、構造が弱ければ住む人が危険だからです。
集団規定は、建築基準法41条の2により、都市計画区域および準都市計画区域の内に限って適用されます。建物が集まっていない場所で、隣家との距離や道路との関係を規律する必要が薄いからです。都市計画区域の考え方は都市計画法で扱っています。
この対比は出題の軸になります。「都市計画区域外の建築物には建蔽率の制限がかからない」という趣旨の記述は原則として正しく、「都市計画区域外の建築物には構造耐力の規定が適用されない」という記述は誤りです。単体規定と集団規定を入れ替える形が繰り返し使われます。
例外もある
もっとも、集団規定が都市計画区域等の外でまったく働かないわけではありません。都道府県知事が指定する区域では、条例で制限を定められる仕組みがあります。また、用途地域の指定がない区域についても、建蔽率や容積率の数値を特定行政庁が定める枠組みが用意されています。
原則は「集団規定は都市計画区域および準都市計画区域の内」で足りますが、まったく無規制の空白地帯があるわけではない、という程度に押さえておきます。
単体規定は何を求めているか
構造の安全
20条は、建築物が自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧、水圧、地震その他の震動および衝撃に対して安全な構造のものでなければならないと定めています。規模に応じて構造計算による確認が求められます。
宅建試験でここが計算問題になることはありません。問われるのは、そういう規定が存在すること、そして全国どこでも適用されることです。
防火と避難
火災に関する規定は単体規定と集団規定の両方にあります。単体規定の側にあるのは、建築物そのものの防火と、そこにいる人の避難に関するものです。
長屋または共同住宅の各戸の界壁について遮音と防火の性能を求める規定(30条)、特殊建築物等の避難および消火に関する技術的基準(35条)などがこれにあたります。廊下の幅、階段の寸法、非常用の照明装置といった細部は施行令に置かれています。
これに対し、防火地域と準防火地域の規制は集団規定です。市街地の延焼を防ぐという、建物どうしの関係を規律する規定だからです。同じ「火災」でも、どちらの側の話かで適用範囲が変わります。
居室の採光と換気
28条1項は、住宅、学校、病院などの居室について、採光のための窓その他の開口部を設け、その面積を居室の床面積に対して政令で定める割合以上としなければならないと定めています。住宅の居室については施行令が7分の1以上としています。
28条2項は換気について、居室に換気のための窓その他の開口部を設け、その面積を居室の床面積の20分の1以上としなければならないと定めています。
採光が7分の1、換気が20分の1。分母が違うので、入れ替える形の出題が作られます。数字の整理は建築基準法の数字に集めています。
高さに応じた設備
建築物の高さによって、追加の設備が要求される規定があります。
33条は、高さが20メートルを超える建築物には有効に避雷設備を設けなければならないとしています。ただし、周囲の状況によって安全上支障がない場合はこの限りではありません。
34条2項は、高さ31メートルを超える建築物には非常用の昇降機を設けなければならないとしています。
20メートルで避雷設備、31メートルで非常用昇降機。どちらも単体規定なので、都市計画区域の外でも適用されます。実際の出題でも、避雷設備を高さの数値とともに問う形が使われています。
居室と地階の扱い
単体規定には、居室という概念が繰り返し出てきます。2条は居室を、居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室と定義しています。
継続的に使用するかどうかが分かれ目です。玄関、廊下、便所、浴室、納戸は居室にあたりません。だから採光や換気の規定がかかりません。この定義を知らないと、住宅のすべての部屋に7分の1の窓が要ると読み違えます。
天井の高さについては、施行令が居室の天井の高さを2.1メートル以上としています。地階に設ける居室については、29条が、住宅の居室、学校の教室、病院の病室などで地階に設けるものについて、壁および床の防湿の措置その他の事項に関する技術的基準に適合するものとしなければならないと定めています。
地下は湿気と換気の条件が悪いので、追加の基準がかかるという構造です。いずれも建物の中にいる人を守るための規定なので、単体規定として全国に適用されます。
条例による災害危険区域
39条は、地方公共団体が条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定できるとし、その区域内における住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものを条例で定めるとしています。
法律が直接制限を書くのではなく、条例に委ねる形です。地域ごとに危険の性質が違うので、地方公共団体が判断するという設計になっています。
集団規定の地図
5つの束で捉える
集団規定は数が多いので、目的ごとに束ねます。
第一が道路に関する規定です。42条が建築基準法上の道路を定義し、43条が接道義務を定めます。原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接することが求められ、幅員4メートル未満の2項道路ではセットバックが必要になります。詳細はセットバックと接道義務で扱っています。
第二が用途に関する規定です。48条が用途地域ごとに建築できる建築物を制限し、別表第二がその中身を定めています。用途地域の種類は用途地域、制限の覚え方は用途地域の覚え方で扱っています。
第三が形態に関する規定です。53条の建蔽率と52条の容積率が、敷地に対する建築物の大きさを制限します。考え方は建蔽率と容積率の基礎、計算は建蔽率・容積率の計算で扱っています。
第四が高さに関する規定です。55条の絶対高さ制限、56条の道路斜線・隣地斜線・北側斜線、56条の2の日影規制。詳細は高さ制限で扱っています。
第五が防火に関する規定です。61条以下が防火地域および準防火地域内の建築物について規律します。詳細は防火地域と準防火地域で扱っています。
道路・用途・大きさ・高さ・火という順で並ぶ
この5つの束は、ばらばらに並んでいるわけではありません。
まず敷地が道路に接していなければ、そもそも建物を建てられません。次にその地域で建ててよい用途かが決まり、建ててよいなら敷地に対してどれだけの大きさにできるかが決まり、その上でどこまでの高さにできるかが決まり、最後に火に対してどういう造りにするかが決まる。
判断の順序がそのまま条文の役割の順序になっています。この並びを持っておくと、問題文の情報をどの束に振り分ければよいかが迷わなくなります。
建蔽率の緩和は改正が入っている
集団規定のなかで、近年の改正がもっとも見落とされやすいのが建蔽率の緩和です。
53条3項1号は、建蔽率の限度が10分の8とされている地域を除く防火地域内にある耐火建築物等、および準防火地域内にある耐火建築物等または準耐火建築物等について、限度に10分の1を加算するとしています。2018年の改正で準防火地域の建築物が緩和の対象に加わりました。「防火地域内の耐火建築物だけが緩和される」という理解は現行法と合いません。
53条3項2号は、街区の角にある敷地またはこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するものの内にある建築物について、10分の1を加算するとしています。両方に該当すれば合計10分の2の加算です。
そして53条6項は、建蔽率の限度が10分の8とされている地域内で、かつ防火地域内にある耐火建築物等について、建蔽率の制限を適用しないと定めています。ここは加算ではなく適用除外です。10分の9になるのでも、10分の10になるのでもなく、制限そのものがかからないという構造です。結論としての数値は近くなりますが、条文の作りが違うので選択肢の言い回しで問われます。
都市計画法とどうつながっているか
決めるのは都市計画法、規制するのは建築基準法
集団規定を理解するうえで欠かせないのが、都市計画法との分業です。この2つの法律は、同じ対象を別の角度から扱っています。
用途地域を定めるのは都市計画法です。都市計画法8条1項が地域地区の一種として用途地域を挙げ、13種類のどれをどこに指定するかを都市計画で決めます。しかし「その用途地域で何を建ててよいか」を定めているのは建築基準法48条と別表第二です。
建蔽率と容積率も同じ構造です。数値そのものは用途地域に関する都市計画で定められますが、その数値を超えてはならないという規制は建築基準法53条と52条が置いています。防火地域と準防火地域も、指定するのは都市計画、区域内の建築物の構造を規律するのは建築基準法61条以下です。
つまり、区域を線引きして数値を決めるのが都市計画法、その線引きを前提に個々の建築物を規律するのが建築基準法、という役割分担になっています。
この分業が問題文の読み方を決める
分業を知っていると、問題文の情報がどちらの法律の話かを見分けられます。
「用途地域を定める」「建蔽率の数値を都市計画で定める」「防火地域を指定する」という記述が出てきたら都市計画法の話です。「この建築物を建てられるか」「この敷地でどこまでの大きさにできるか」「どういう構造にしなければならないか」という記述が出てきたら建築基準法の話です。
法令上の制限で都市計画法と建築基準法が合わせて4問を占めるのは、この2つが表裏の関係にあるからです。片方だけを学ぶと、もう片方の前提が抜けます。
特定行政庁は誰を指すのか
建築基準法には特定行政庁という語が繰り返し出てきます。角地の指定、接道義務の例外の許可、建築協定の認可、違反建築物への是正命令。いずれも特定行政庁が行います。
建築基準法2条は特定行政庁を、建築主事を置く市町村の区域についてはその市町村の長、その他の市町村の区域については都道府県知事と定義しています。
つまり、都道府県知事のこともあれば市町村長のこともある、可変の呼び名です。「特定行政庁=都道府県知事」と固定して覚えると、市町村長が正解の場面で誤ります。誰にあたるかは市町村が建築主事を置いているかで決まる、と押さえます。
敷地が2以上の地域にまたがるとき
3つの処理が使い分けられている
集団規定でもっとも紛らわしいのが、敷地が2以上の地域にまたがる場合の処理です。制限の種類によって扱いが3通りに分かれます。
用途制限については、91条が、建築物の敷地が用途の制限を受ける地域の2以上にわたる場合には、その建築物または敷地の全部について、敷地の過半の属する地域の規定を適用するとしています。過半、すなわち面積の大きいほうに寄せる処理です。
建蔽率と容積率については、按分します。53条2項が建蔽率について、52条7項が容積率について、それぞれの地域に属する敷地の部分の割合に応じて計算するという趣旨の定めを置いています。面積で加重平均を取る処理です。
防火地域と準防火地域については、65条が、建築物が防火地域および準防火地域にわたる場合には、その全部について防火地域内の建築物に関する規定を適用するとしています。厳しいほうに寄せる処理です。ただし建築物が防火壁で区画されている場合の例外があります。
なぜ3通りに分かれるのか
処理が違うのは、制限の性質が違うからです。
用途制限は「建ててよいか、いけないか」という二者択一です。敷地の一部が住居系で一部が商業系だからといって、建物の半分をホテルにするような処理はできません。したがってどちらか一方に決めるしかなく、過半で決めます。
建蔽率と容積率は数値の制限です。数値であれば按分できます。一方に寄せると、もう一方の地域の規制の意図が失われるので、面積の比で配分するのが合理的です。
防火の規制は安全に関わります。安全に関する制限で緩いほうに寄せると、危険な部分が生まれます。したがって厳しいほうに寄せます。
3通りを丸暗記するより、制限の性質から導けるようにしておくほうが崩れません。
用途地域が定められていない部分がある場合
敷地の一部が用途地域の指定のない区域にかかる場合も、91条の考え方で処理します。過半が属する側の規定が敷地全体に適用されます。
なお、防火地域または準防火地域と、これらの地域として指定されていない区域にわたる場合についても、65条が同様の考え方で規律しています。指定されている側の規定が全部に及びます。
既存不適格建築物と違反建築物
3条2項が置いている適用除外
法律や条例は改正されます。改正のたびに既存の建物をすべて基準に合わせろとすると、社会が回りません。
そこで3条2項が、法令の規定の施行または適用の際に現に存する建築物などがこれらの規定に適合しない場合には、その建築物に対して当該規定は適用しないと定めています。これによって適用を免れている建築物を、既存不適格建築物といいます。
建築時には適法だったが、その後の改正で現行基準に合わなくなった建物です。違法な建物ではありません。ここが最初の分かれ目になります。
違反建築物との区別
違反建築物は、建築の時点で法令に適合していなかったものです。9条により、特定行政庁は違反建築物の建築主等に対し、工事の施工の停止を命じ、または相当の猶予期限を付けて建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、使用禁止、使用制限その他違反是正のために必要な措置を命ずることができます。
既存不適格建築物にはこの是正命令が及びません。適合していないという結果は同じでも、適法に建てられたものと違法に建てられたものを同じに扱うことはできないからです。
出題では、この2つを混ぜて「既存不適格建築物は違反建築物として除却を命じられる」とする形が作られます。誤りです。
増改築をすると現行規定がかかる
もっとも、既存不適格の状態が永久に続くわけではありません。3条3項が、増築、改築、移転、大規模の修繕または大規模の模様替をする場合などについて、適用除外が及ばなくなることを定めています。
手を入れるなら、その機会に現行の基準に合わせなさい、という考え方です。したがって「既存不適格建築物は増築する場合にも従前の規定が適用される」という記述は誤りになります。建物をそのまま使い続ける限りは適用除外、手を入れるなら現行規定、という切り分けです。
建築確認という手続
対象になる規模
6条1項は、確認が必要な建築物を号ごとに定めています。1号が別表第一に掲げる特殊建築物でその用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるもの、2号が階数2以上または延べ面積200平方メートル超の建築物、3号がこれら以外で都市計画区域や準都市計画区域などの内にある建築物です。
ここは改正が入った箇所です。かつては木造について3階以上、延べ面積500平方メートル超、高さ13メートル超、軒の高さ9メートル超という基準があり、木造以外とは別の号で扱われていました。現在は木造と非木造の区別がなくなり、階数2以上または延べ面積200平方メートル超という共通の基準に整理されています。古い教材や過去問の解説には旧区分が残っているので、数字を覚え直す際は注意が必要です。
6条2項は、防火地域および準防火地域外において増築、改築、移転をする場合で、その部分の床面積の合計が10平方メートル以内であるときは確認を要しないとしています。裏返せば、防火地域または準防火地域の内であれば面積の大小を問わず確認が要ります。
完了検査と使用の制限
確認を受けたら終わりではありません。7条1項は、工事が完了した日から4日以内に到達するように、建築主事に完了検査の申請をしなければならないとしています。
そして7条の6が、一定の建築物について、検査済証の交付を受けた後でなければ使用してはならないと定めています。確認、工事、完了検査、検査済証、使用開始という流れが手続の骨格です。詳細と例外は建築確認の手続きで扱っています。
用途変更のときの扱い
87条1項は、建築物の用途を変更して6条1項1号の特殊建築物のいずれかとする場合について、確認の規定を準用するとしています。ただし、政令で指定する類似の用途相互間における変更については除かれます。
新築でなくても、用途を変えることで規制の前提が変わる場合には確認が必要になる、という考え方です。
建築協定
住民が自分たちで決める仕組み
69条以下の建築協定は、市町村の条例で定められた区域内において、土地の所有者等が全員の合意により、建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠または建築設備に関する基準を定めるものです。
法律が定める最低の基準に上乗せして、その区域だけの約束事を作る仕組みです。1条が「最低の基準」と書いていることの裏返しで、上乗せは自由にできます。
締結は全員、廃止は過半数
協定を締結するには土地の所有者等の全員の合意が必要で、特定行政庁の認可を受けます。これに対し、廃止については76条1項が、土地の所有者等の過半数の合意をもってその旨を定め、特定行政庁の認可を受けなければならないとしています。
締結が全員、廃止が過半数。この非対称が繰り返し問われます。作るときは全員が納得している必要があるが、やめるときまで全員一致を要求すると、状況が変わっても抜けられなくなるからです。
認可後に土地を取得した者にも及ぶ
建築協定の効力は、認可の公告のあった日以後にその区域内の土地の所有者等となった者に対しても及びます。契約の当事者でない者を拘束する点が、通常の契約と決定的に違います。
この効力があるからこそ、土地を買う人にとって重大な情報になります。だから重要事項説明の対象にもなっています。
一人協定
土地の所有者が1人しかいない区域でも、建築協定を定めることができます。76条の3が定めるもので、認可の日から3年以内に2人以上の土地の所有者等が存することとなった時から、通常の建築協定と同じ効力を持ちます。
分譲前の開発事業者が、あらかじめ街のルールを決めておく場面を想定した制度です。
試験での出題ポイント
宅建試験AIブートラボの過去問データで確認すると、2023年度から2025年度までのいずれも、問17と問18が建築基準法からの出題です。問17が単体規定や手続に関するもの、問18が集団規定に関するものという傾向が見られます。
単体規定と集団規定を入れ替える
もっとも基本的な作り方です。集団規定を全国適用としたり、単体規定を都市計画区域内限定としたりします。
「都市計画区域外では、建築物の敷地は道路に2メートル以上接する必要はない」は原則として正しく、「都市計画区域外では、高さ20メートルを超える建築物に避雷設備を設ける必要はない」は誤りです。前者は集団規定、後者は単体規定だからです。
判定の仕方は、その規定が守ろうとしているものを考えることです。その建物を使う人を守るなら単体規定、周囲との関係を整えるなら集団規定です。
3つの「またがる場合」を入れ替える
用途制限を加重平均で処理させたり、建蔽率を過半主義で処理させたり、防火地域を按分させたりする形が作られます。
用途は過半、建蔽率と容積率は按分、防火は厳しいほう。この3つの対応を崩されないようにします。
既存不適格を違反建築物として扱う
既存不適格建築物について、除却命令の対象になるとする記述は誤りです。逆に、増築する場合にも現行規定が適用されないとする記述も誤りです。
適法に建てられた建物であること、しかし手を入れるときには現行規定がかかること。この2点をセットで持ちます。
建蔽率の緩和で準防火地域を落とす
53条3項1号は防火地域内の耐火建築物等だけでなく、準防火地域内の耐火建築物等または準耐火建築物等も緩和の対象としています。実際の出題でも、準防火地域内の準耐火建築物であって特定行政庁が指定する角地にある場合の加算を問う形が使われています。
「準防火地域では緩和されない」という前提で読むと誤ります。また、10分の8の地域における防火地域内の耐火建築物等は、加算ではなく適用除外である点も入れ替えられます。
建築確認は「何をするか」で場合分けさせる
建築確認の出題は、規模だけでなく行為の種類で場合分けさせます。新築なのか、増築・改築・移転なのか、大規模の修繕・模様替なのか、用途の変更なのか。
増築については、防火地域および準防火地域外で10平方メートル以内であれば確認が不要です(6条2項)。逆に防火地域または準防火地域の内であれば、面積の大小を問わず確認が要ります。「防火地域内でも10平方メートル以内なら確認不要」とする選択肢は誤りです。
用途の変更については、6条1項1号の特殊建築物のいずれかとする場合に確認の規定が準用されます(87条1項)。ただし政令で指定する類似の用途相互間の変更は除かれるので、「用途を変更する場合は常に確認が必要」とする記述も誤りになります。
このように、規模の数字が合っていても行為の種類でひっくり返る作りになっています。規模と行為の2軸で読む必要があります。
建築協定の締結と廃止を入れ替える
締結は全員の合意、廃止は過半数の合意です。これを逆にする選択肢が定番です。認可権者が特定行政庁である点、認可の公告後に土地の所有者等となった者にも効力が及ぶ点もあわせて問われます。
覚え方・整理の仕方
「誰を守る規定か」で単体か集団かを判定する
規定を見たら、それが守ろうとしている相手を考えます。
その建物を使う人を守るなら単体規定。構造耐力、防火、避難、採光、換気、避雷設備、非常用昇降機。すべて中にいる人のためです。
周囲との関係を整えるなら集団規定。接道、用途、建蔽率、容積率、高さ、日影、防火地域。すべて外との関係です。
この一手で適用範囲が決まるので、都市計画区域の内か外かという条件が問題文に出てきたときに反応できます。
集団規定は判断の順序で並べる
道路、用途、大きさ、高さ、火。この5つを判断の順序で並べておきます。
道路に接していなければ建てられない。接していても、その地域で認められない用途なら建てられない。用途が通っても、敷地に対して大きすぎれば建てられない。大きさが通っても、高さの制限にかかれば建てられない。すべて通っても、防火地域なら構造が指定される。
上から順に絞り込む形なので、問題文の情報をこの順に当てはめると処理が速くなります。
「またがる場合」は制限の性質から導く
3つの処理を丸暗記せず、性質から導きます。
用途は建ててよいか悪いかの二者択一なので、按分できない。だから過半で決める。建蔽率と容積率は数値なので按分できる。だから加重平均を取る。防火は安全に関わるので、緩いほうに寄せられない。だから厳しいほうを適用する。
この3行を持っていれば、どれがどれだったかを取り違えません。数字そのものの整理は法令上の制限の暗記術に集めています。
既存不適格は「そのまま使うか、手を入れるか」
既存不適格の論点は、二択で持ちます。
そのまま使い続けるなら、現行規定は適用されない(3条2項)。増築、改築、移転、大規模の修繕、大規模の模様替をするなら、現行規定が適用される(3条3項)。
そして、そもそも建築時から違法だったものは既存不適格ではなく違反建築物で、9条の是正命令の対象になる。この3段で整理します。
建築協定は「上乗せの仕組み」と捉える
建築基準法1条が最低の基準を定める法律だと理解していれば、建築協定が上乗せの仕組みであることが自然に出てきます。
法律が下限を引き、住民の合意がその上に上乗せする。上乗せを作るには全員の合意が要り、外すには過半数で足りる。上乗せは任意のものなので、外すハードルは低くてよい、と考えると数字が思い出せます。
理解度チェッククイズ
Q1. 建築物の敷地は道路に2メートル以上接しなければならないという接道義務は、都市計画区域外の建築物にも適用される。
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誤り。接道義務(建築基準法43条1項)は集団規定であり、41条の2により都市計画区域および準都市計画区域の内に限って適用されます。建物どうしの関係や避難経路を確保するための規定なので、建物が集まっていない区域では適用の必要が薄いためです。これに対し、構造耐力(20条)や避雷設備(33条)などの単体規定は全国どこでも適用されます。Q2. 建築物の敷地が第一種住居地域と近隣商業地域にわたる場合、用途制限については、それぞれの地域に属する敷地の面積の割合に応じて計算する。
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誤り。用途制限については、建築基準法91条により、敷地の過半の属する地域の規定を建築物または敷地の全部について適用します。面積で按分するのは建蔽率(53条2項)と容積率(52条7項)です。用途制限は建ててよいか悪いかの二者択一なので按分できず、過半で決めます。なお防火地域と準防火地域にわたる場合は、65条により厳しいほうである防火地域の規定が適用されます。Q3. 建築時には適法であったが、その後の法改正により現行の規定に適合しなくなった建築物について、特定行政庁は除却を命ずることができる。
答えを見る
誤り。建築基準法3条2項により、法令の規定の施行または適用の際に現に存する建築物でこれらの規定に適合しないものには、当該規定が適用されません。これが既存不適格建築物で、適法に建てられたものである以上、9条の是正命令の対象にはなりません。ただし3条3項により、増築、改築、移転、大規模の修繕、大規模の模様替をする場合などには適用除外が及ばなくなり、現行の規定に適合させる必要があります。Q4. 建蔽率の限度に10分の1を加算する緩和を受けられるのは、防火地域内にある耐火建築物等に限られる。
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誤り。建築基準法53条3項1号は、建蔽率の限度が10分の8とされている地域を除く防火地域内にある耐火建築物等に加え、準防火地域内にある耐火建築物等または準耐火建築物等についても、限度に10分の1を加算するとしています。2018年の改正で準防火地域の建築物が対象に加わりました。なお、特定行政庁が指定する角地についても10分の1を加算し(同項2号)、両方に該当すれば合計10分の2の加算になります。Q5. 建築協定を廃止しようとする場合には、土地の所有者等の全員の合意が必要である。
答えを見る
誤り。建築協定の締結には土地の所有者等の全員の合意が必要ですが、廃止については76条1項により過半数の合意で足り、特定行政庁の認可を受けることになります。締結が全員、廃止が過半数という非対称です。協定は法律の最低の基準に上乗せする任意の仕組みなので、外すハードルを低くしてあると理解すると覚えやすくなります。まとめ
建築基準法の骨格を整理します。
1条が定めるのは建築物の敷地、構造、設備、用途に関する最低の基準です。下限を定めた法律なので、条例による制限の付加や建築協定による上乗せが認められます。
規定は単体規定と集団規定に分かれます。単体規定は建築物そのものの安全と衛生を確保するもので、構造耐力(20条)、界壁(30条)、避難(35条)、採光と換気(28条)、避雷設備(33条、高さ20メートル超)、非常用昇降機(34条2項、高さ31メートル超)などがあり、全国どこでも適用されます。集団規定は市街地の環境を保つもので、道路と接道(42条、43条)、用途制限(48条)、建蔽率(53条)、容積率(52条)、高さ制限(55条、56条、56条の2)、防火地域と準防火地域(61条以下)があり、41条の2により都市計画区域および準都市計画区域の内に限って適用されます。
敷地が2以上の地域にまたがる場合の処理は3通りです。用途制限は過半の属する地域の規定を全部に適用(91条)、建蔽率と容積率は面積で按分(53条2項、52条7項)、防火地域と準防火地域は厳しいほうを全部に適用(65条)。制限の性質から導けます。
既存不適格建築物は適法に建てられたものであり、そのまま使う限り現行規定は適用されません(3条2項)が、増築などをするときには適用されます(3条3項)。違反建築物とは区別され、9条の是正命令の対象にはなりません。
建築確認については、6条1項の規模区分が改正され、木造と非木造の区別がなくなって階数2以上または延べ面積200平方メートル超という共通の基準になっています。建蔽率の緩和についても、準防火地域内の耐火建築物等または準耐火建築物等が対象に加わっています。改正が入った箇所は、古い教材のままだと答えが変わるので確認が必要です。数字の一覧は建築基準法の数字、手続の横断整理は法令上の制限の横断整理を参照してください。
宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングでは、法令上の制限の問17と問18にあたる建築基準法の肢を単元別に演習できます。単体規定か集団規定かを判定するところから確認しながら進めてください。
都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。