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土地区画整理法|仮換地と換地処分の仕組み

法令上の制限 読了 約65分

土地区画整理法を事業の目的から順に解説。換地と減歩の考え方、仮換地の指定で使用収益と処分が分かれる理由、76条の建築制限の許可権者、換地処分の効果が公告の翌日に生じることまで条文根拠つきで整理します。

目次

    この記事は、土地区画整理法を宅建試験の出題範囲に沿って通しで扱うものです。施行者の種類と組合の設立要件は土地区画整理法の施行者と組合に、都市計画事業としての位置づけは都市計画法の全体像にあります。本記事は、その施行者が実際に何をするか、つまり換地計画・仮換地・換地処分という三つの行為の中身に軸足を置いています。

    この法律が分かりにくいのは、土地そのものが動くからです。開発許可や建築確認は、その土地の上で何をしてよいかを決める制度ですが、土地区画整理事業は、区画を引き直した結果として権利者の土地が別の場所に移ります。ある権利者の土地が甲地から乙地に入れ替わる。この入れ替えをどう進めるか、入れ替わる途中の期間をどう扱うかを定めたのが土地区画整理法です。

    そして最も問われるのが、その途中の期間です。仮換地が指定されると、使用収益できる土地と、売買や抵当権設定の対象になる土地が別々になります。使う土地と処分する土地がずれる、という状態が一定期間続く。ここを理解すれば、この分野の出題の多くは処理できます。

    なお、令和8年法律第23号(都市再生特別措置法等の一部を改正する法律)による土地区画整理法の改正は2026年5月27日施行で、令和8年度試験の基準日である2026年4月1日より後です。この改正で本則219条に変更はなく、本記事の条文はいずれも令和8年度の出題範囲そのものです。年度をまたぐ改正の整理は令和8年度に影響する法改正まとめを参照してください。

    土地区画整理事業とは何をする事業か

    目的は公共施設の整備改善と宅地の利用増進

    土地区画整理法2条1項は、土地区画整理事業を次のように定義しています。都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善および宅地の利用の増進を図るため、この法律で定めるところに従って行われる土地の区画形質の変更および公共施設の新設または変更に関する事業。

    目的が二つ並んでいる点が重要です。公共施設の整備改善と、宅地の利用増進。道路や公園を整えることと、個々の宅地を使いやすくすること、その両方を同時に達成しようとする事業です。片方だけでは足りません。道路だけ広げて宅地の形が悪いままなら宅地の利用増進が達成されず、宅地の形だけ整えて道路が狭いままなら公共施設の整備改善が達成されない。二つの目的が結び付いているからこそ、後で述べる減歩という負担を権利者に求めることが正当化されます。

    具体的には、道路が狭く敷地の形が不整形な市街地を想定してください。一筆ごとに見れば所有者がいて権利関係が確定しているので、誰かが勝手に道路を広げることはできません。かといって全員が個別に建て替えても、道路は狭いままです。そこで、区域全体をいったん白紙に戻すように区画を引き直し、道路と公園の用地を生み出したうえで、各権利者に整った形の土地を割り当て直す。これが区画整理の発想です。

    2条5項は、この法律でいう公共施設を、道路、公園、広場、河川その他政令で定める公共の用に供する施設と定義しています。列挙の先頭が道路である点に、この事業が何を作ろうとしているかが表れています。

    買収方式ではなく換地方式

    公共施設を整備する方法には、大きく二つあります。一つは、必要な土地を買収して整備する方法。道路事業や都市計画事業の多くはこの方式です。もう一つが、区画整理の採る換地方式です。

    換地方式では、土地を買収しません。区域内の宅地の権利をそのまま維持したまま、位置と形を組み替えます。従前の宅地に代えて割り当てられる新しい土地を換地といい、従前の宅地に存した所有権や抵当権などの権利は、原則としてそのまま換地の上に移ります。

    買収方式なら、道路にかかる土地の所有者だけが土地を失い、かからない所有者は何も失いません。換地方式では、区域内の権利者が少しずつ土地を出し合って公共用地を生み出します。負担が区域内で分散する点が、この方式の特徴です。

    この違いは、権利者が受け取る対価の形にも表れます。買収なら代金という金銭を受け取って権利を手放しますが、換地なら土地を受け取って権利を維持します。金銭が動くのは、土地の受け渡しでは埋めきれない差額を調整する場面、つまり後述する清算金の場面に限られます。金銭が主で土地が従なのが買収方式、土地が主で金銭が従なのが換地方式です。

    減歩|面積は減るが価値が上がるという建て付け

    各権利者が少しずつ土地を出すため、換地の面積は従前の宅地より小さくなるのが通常です。この面積の減少を減歩といいます。

    減歩には二つの種類があります。道路や公園といった公共施設の用地を生み出すための公共減歩と、事業費に充てるための土地を生み出すための保留地減歩です。前者は区域内の環境を良くするために使われ、後者は売却されて事業費に充てられます。

    ここで一つ注意しておくと、減歩という語は土地区画整理法の条文には出てきません。219条ある本則のどこを探しても登場しない、講学上・実務上の用語です。条文の側でこれに対応しているのは、換地を照応するように定めよという89条1項と、不均衡が生ずるときは金銭で清算せよという94条であり、面積が減ること自体を正面から許容する条文があるわけではありません。「減歩率は法で何パーセントまでと定められている」といった記述は条文上の根拠を持ちません。

    面積が減るのに権利者が受け入れるのは、整備によって一平方メートルあたりの価値が上がることを前提にしているからです。狭い道路にしか接していない不整形な200平方メートルより、広い道路に接した整形の150平方メートルのほうが価値が高い、という判断が成り立つ場合に、この事業は成立します。逆に言えば、価値の上昇が見込めない場所では成立しません。この前提が崩れた場合、つまり事業後の宅地価額の総額が事業前を下回った場合の手当てが、後で扱う減価補償金(109条)です。

    この法律の「宅地」は宅建業法の宅地と違う

    用語でもう一つ注意があります。土地区画整理法2条6項は、この法律における宅地を、公共施設の用に供されている国または地方公共団体の所有する土地以外の土地と定義しています。

    つまり、公共施設用の公有地を除いた土地はすべて宅地です。農地であっても、雑種地であっても、この法律では宅地にあたります。除外されるのは、公共施設の用に供されていて、かつ国または地方公共団体の所有である土地だけです。私人が所有する土地であれば、たとえ現況が私道であっても、この定義からは外れません。

    宅地建物取引業法上の宅地とも、宅地造成及び特定盛土等規制法上の宅地とも定義が違うので、法令をまたいで学習するときは混同しないでください。宅建業法の宅地は建物の敷地に供せられる土地と用途地域内の土地を軸に定義され、盛土規制法の宅地は農地・採草放牧地・森林および公共施設用地を除いた土地とされています。同じ語が三つの法律で三様に定義されているわけです。法令ごとの用語の違いは法令上の制限の横断整理で扱っています。盛土規制法側の定義は盛土規制法の規制区域にあります。

    2条7項は借地権を借地借家法にいう借地権と定義しています。したがって、この法律で借地権者として扱われるのは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権を有する者です。建物所有を目的としない駐車場用の賃借権は、ここでいう借地権にあたりません。借地権の範囲そのものは借地権とはを参照してください。

    都市計画法の中での位置づけと、重なる制限

    市街地開発事業の一つ

    土地区画整理事業は、都市計画法上は市街地開発事業の一つとして位置づけられています。都市計画法12条1項は、都市計画区域について都市計画に定めることができる市街地開発事業を7号にわたって列挙しており、その1号が土地区画整理法による土地区画整理事業です。以下、新住宅市街地開発事業、工業団地造成事業、市街地再開発事業、新都市基盤整備事業、住宅街区整備事業、防災街区整備事業と並びます。

    市街地開発事業は、区域内の土地について面的な整備を行う事業であり、個別の建築行為を規制する地域地区とは性格が違います。地域地区は「この区域ではこういう建物を建てられる」という枠を定めるものですが、市街地開発事業は「この区域の形そのものを作り変える」ものです。都市計画で定められる内容の全体像は都市計画の種類と決定権者を参照してください。

    都市計画法12条2項は、市街地開発事業について都市計画に種類・名称・施行区域を定めるものとしています。さらに同条3項が、土地区画整理事業についてはこれに加えて公共施設の配置および宅地の整備に関する事項を定めるものとしています。7種類ある市街地開発事業のうち、宅地の整備まで都市計画に書き込むことを求められているのは土地区画整理事業だけです。事業の目的が公共施設と宅地の二本立てであることが、都市計画の記載事項にも現れています。

    施行区域という語と、都市計画区域という語

    土地区画整理法2条8項は、施行区域を「都市計画法12条2項の規定により土地区画整理事業について都市計画に定められた施行区域」と定義しています。都市計画で定められた区域が施行区域です。

    これに対し、施行地区は2条4項で「土地区画整理事業を施行する土地の区域」と定義されています。実際に事業を行う区域が施行地区です。似た二語ですが、施行区域は都市計画の側の概念、施行地区は事業の側の概念です。

    この区別が効くのが、誰がどこで施行できるかという問題です。都道府県・市町村が施行する場合(3条4項)と国土交通大臣が施行する場合(3条5項)は、いずれも「施行区域の土地について」と条文が限定しています。公的施行は、都市計画に施行区域として定められた区域でしかできません。一方、個人施行(3条1項)、組合施行(3条2項)、区画整理会社施行(3条3項)には、この限定がありません。都市計画区域内でありさえすれば、都市計画に施行区域として定められていない土地でも施行できます。

    「土地区画整理事業はすべて都市計画事業として行われる」という理解は、この点で誤りです。民間施行には、都市計画に載らないものが現に存在します。

    施行できるのは都市計画区域内に限られる

    法2条1項が「都市計画区域内の土地について」と定めているとおり、土地区画整理事業を施行できるのは都市計画区域の内側に限られます。準都市計画区域や都市計画区域外では施行できません。民間施行に施行区域の限定がないといっても、都市計画区域の枠までは外せません。

    開発許可のように区域外にも及ぶ制度と混同しないでください。開発許可は都市計画区域および準都市計画区域の外でも、一定規模以上であれば必要になります(開発許可が必要な面積要件)。区域の範囲が制度ごとに違う点は、法令上の制限で繰り返し問われる論点です。非線引き区域と準都市計画区域も併せて確認しておくと、区域の外側の扱いが整理できます。

    都市計画法の制限と76条の制限が重なる場面

    都市計画事業として施行される場合は、都市計画法上の制限も重ねてかかります。ここは条文を分けて把握してください。

    都市計画法53条1項は、都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならないとしています。土地区画整理事業が都市計画に定められた時点で、その施行区域には53条の建築許可がかかります。

    次に、都市計画事業の認可等の告示があると、都市計画法65条1項により、事業地内で土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設、政令で定める移動の容易でない物件の設置・堆積をするには都道府県知事等の許可が必要になります。ここで都市計画法53条3項が働き、65条1項の告示があった後は53条の適用が外れます。段階が進むと前の段階の制限が引っ込む、という設計です。この段階構造は都市計画制限で詳しく扱っています。

    そして土地区画整理法76条1項の制限は、これらとは別の条文として、事業計画の決定や認可の公告があった日後にかかります。同じ土地に、都市計画法側の制限と土地区画整理法側の制限が並ぶことがあるわけです。問題文が「都市計画法の規定により」「土地区画整理法の規定により」のどちらを言っているかで、答えるべき許可権者も、対象となる行為の範囲も変わります。都市計画法65条2項と土地区画整理法76条2項は、いずれも許可に先立って施行者の意見を聴くことを求めており、条文の作りまで似ています。だからこそ、どちらの話かを見極める必要があります。

    誰が施行するかで何が分岐するか

    施行者は民間三つと公的四つ

    施行者は法3条以下に定められています。民間側が三つ、公的側が四つの計7類型です。

    民間は、個人施行者(3条1項)、土地区画整理組合(3条2項)、区画整理会社(3条3項)。公的は、都道府県または市町村(3条4項)、国土交通大臣(3条5項)、独立行政法人都市再生機構(3条の2)、地方住宅供給公社(3条の3)です。組合の設立要件、区画整理会社の株主要件、機関の構成といった各類型の中身は土地区画整理法の施行者と組合にまとめてあるので、ここでは繰り返しません。

    一点だけ条文で確認しておくと、3条1項の個人施行者は「宅地について所有権若しくは借地権を有する者」だけではありません。同項は「又は宅地について所有権若しくは借地権を有する者の同意を得た者」も施行できるとしています。ただし、後者は都市再生機構、地方住宅供給公社その他政令で定める者に限られます。権利者本人でなくても、同意を得た一定の主体なら個人施行者になれる、という構造です。

    施行者の種類で何が変わるか

    施行者の種類を覚える意味は、暗記そのものにあるのではなく、手続の分岐がここで決まるからです。分岐は大きく四つあります。

    第一に、根拠となる基本規則の名称が違います。個人施行者は規準または規約、組合は定款、区画整理会社は規準、公的施行は施行規程。条文が「規準、規約、定款又は施行規程」と並べて書くのは、施行者の種類ごとに呼び名が違うからです。この四つが並んでいる条文を見たら、施行者を問わず適用される規定だと読めます。換地処分の時期の例外を定める103条2項ただし書がその典型です。

    第二に、換地計画を定めるときの手続が違います。88条1項は個人施行者について8条を、区画整理会社について51条の6を準用し、88条2項は個人施行者以外の施行者に2週間の縦覧を課します。結果として三通りに分かれます。同意だけで済むのが個人施行者、縦覧だけで済むのが組合と公的施行、同意と縦覧の両方を要求されるのが区画整理会社です。「同意か縦覧か」の二者択一で覚えると区画整理会社を落とします。

    第三に、仮換地の指定にあたって必要な事前手続が、98条3項と4項で四つに分かれます。

    第四に、建築行為等の制限における許可権者と、制限の始期となる公告が違います。ここが最も出題されます。

    第五として、公的施行にだけ存在する制度がいくつかあります。過小宅地の措置(91条)、立体換地(93条1項・2項)、減価補償金(109条)、清算金の国税滞納処分の例による徴収(110条5項)は、いずれも3条4項・5項、3条の2、3条の3の施行者に限って条文が用意されています。逆に保留地の要件は民間施行(96条1項)と公的施行(96条2項)で内容が違います。「この制度は誰にでも使えるのか、公的施行だけか」という視点を持って条文を読むと、肢の切り分けが速くなります。

    換地計画に何を書き、どう確定させるか

    換地計画は換地処分の設計図

    法86条1項は、施行者は施行地区内の宅地について換地処分を行うため換地計画を定めなければならないとし、施行者が個人施行者、組合、区画整理会社、市町村または機構等であるときは、その換地計画について都道府県知事の認可を受けなければならないとしています。

    列挙から都道府県と国土交通大臣が外れていること、86条2項が個人施行者・組合・区画整理会社の申請に市町村長の経由を課していることは、施行者ごとの分岐そのものなので土地区画整理法の施行者と組合に譲ります。本記事が追うのは、認可を受ける換地計画に何が書かれ、それがどう確定していくかです。

    施行地区が工区に分かれている場合には、換地計画を工区ごとに定めることができます(86条3項)。区域が広い事業で、まとまった単位ごとに換地計画を確定させていくための規定です。ただし工区は換地計画を切る単位であって、権利者の受け皿を工区の中に閉じ込めるものではありません。95条2項が、工区ごとに換地計画を定める場合において必要があるときは、一の工区で換地を定めないこととされる宅地をほかの工区にあるものとみなして、そのほかの工区に係る換地計画で換地を定めることができるとしています。工区をまたいで換地を飛ばすことが条文上できるわけです。

    認可は羈束処分に近い

    86条4項は、都道府県知事は認可の申請があった場合においては、次の各号のいずれかに該当する事実があると認めるとき以外は、その認可をしなければならない、と定めています。列挙されているのは、申請手続が法令に違反していること、換地計画の決定手続または内容が法令に違反していること、換地計画の内容が事業計画の内容と抵触していること、の三つです。

    つまり、この三つに当たらない限り知事は認可しなければなりません。裁量で「望ましくないから認可しない」とすることはできない構造です。開発許可における33条の基準と似た作りで、要件を満たせば許可・認可を与えるという羈束的な仕組みになっています。開発許可側の構造は開発許可制度を参照してください。

    例外として、86条5項が、換地計画に係る区域に市街地再開発事業の施行地区が含まれている場合には、その施行に支障を及ぼさないと認めるときでなければ認可してはならないとしています。二つの面的整備事業が重なる場面の調整規定です。

    換地計画に必ず定める四つの事項

    法87条1項は、換地計画において定めなければならない事項を四つ挙げています。換地設計、各筆換地明細、各筆各権利別清算金明細、保留地その他の特別の定めをする土地の明細です。

    三つ目が「清算金の額」ではなく「各筆各権利別清算金明細」である点に、この制度の性格が出ています。清算は宅地一筆ごとではなく、その宅地に存する権利ごとに計算されます。所有者と借地権者がいる宅地なら、所有権について、借地権について、それぞれ清算の要否と額が出てくるわけです。

    さらに87条2項が、清算金の決定に先立って1号・2号・4号だけを定める換地計画を定めることができるとし、3項が、その場合でも換地処分を行うまでに清算金明細を定めなければならないとしています。土地の割り当てだけ先に固め、金額の詰めを後回しにすることは許されるが、換地処分の時点までには揃っていなければならない、という段取りです。

    縦覧2週間と意見書

    個人施行者以外の施行者が換地計画を定めようとする場合は、政令で定めるところにより、その換地計画を2週間公衆の縦覧に供しなければなりません(88条2項)。利害関係者は、縦覧期間内に施行者へ意見書を提出できます(88条3項)。

    施行者は、意見書の提出があったときはその内容を審査し、意見を採択すべきであると認めるときは換地計画に必要な修正を加え、採択すべきでないと認めるときはその旨を意見書提出者に通知しなければなりません(88条4項)。そして修正を加えた場合は、修正部分について再度縦覧からやり直すのが原則で、政令で定める軽微または形式的な修正だけが例外です(88条5項)。

    公的施行の場合は、縦覧に供すべき換地計画を作成しようとするときと、意見書の内容を審査するときの二場面で、土地区画整理審議会の意見を聴かなければなりません(88条6項)。さらに、意見書が農地または採草放牧地に係るもので、かつ提出者がその区域内の宅地について所有権も借地権も有しない者であるときは、農業委員会の意見を聴く必要があります(88条7項)。農地が関わる場面で農業委員会が登場するのは農地法と同じ発想です(農地法の3条・4条・5条)。

    この意見書の処理について、もう一つ押さえておくべき条文があります。127条12号は、88条4項の規定による通知、つまり「あなたの意見は採択しません」という通知については審査請求をすることができない、と定めています。意見書が容れられなかったことを不服申立てで争うことはできず、争うとすれば後の換地処分そのものを対象にすることになります。

    個人施行者は、この縦覧の手続を踏みません。代わりに88条1項が8条を準用し、認可を申請しようとする者以外に換地計画に係る区域内の宅地について権利を有する者があるときは、その者の同意を得なければならないとしています。ここでいう権利は所有権や借地権に限られず、換地計画に係る区域内の宅地について権利を有する者すべてが対象です。ただし、その権利をもって申請者に対抗することができない者は除かれ、所有権・借地権以外の権利者について同意が得られないときや所在を確知できないときは、その理由を記載した書面を添えて申請することが認められています(8条2項)。

    見落としやすいのが、88条1項が同じ一文で区画整理会社について51条の6も準用していることです。51条の6は、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者および借地権を有するすべての者の、それぞれ3分の2以上の同意を要求し、あわせて同意した者が所有する宅地の地積と同意した者の借地権の目的となっている宅地の地積との合計が、その区域内の総地積の合計の3分の2以上でなければならないとしています。88条1項の読み替えにより、この「施行地区となるべき区域」は「換地計画に係る区域」と読み替えられます。

    したがって区画整理会社は、88条1項の3分の2以上の同意と、88条2項の2週間の縦覧を両方踏みます。個人施行者は同意だけ、組合と公的施行は縦覧だけ、区画整理会社は同意と縦覧の両方。「同意か縦覧か」という二分法で覚えていると、区画整理会社を主語にした肢で誤ります。

    換地計画の変更

    換地計画を変更するときも、個人施行者、組合、区画整理会社、市町村または機構等は都道府県知事の認可を受けなければなりません(97条1項)。個人施行者・組合・区画整理会社の申請が市町村長を経由する点も、86条2項と同じく97条1項の後段に書かれています。

    準用の割り振りも作るときと同じです。97条2項が個人施行者について8条を、97条3項が区画整理会社について51条の6を、そして個人施行者以外の施行者について88条2項から7項までの縦覧・意見書の手続を準用します。ただし、政令で定める軽微なまたは形式的な変更については、縦覧以下の手続が要りません。また、88条2項の読み替えにより、縦覧に供されるのは換地計画の全体ではなく「換地計画の変更に係る部分」です。

    認可の基準を定める86条4項・5項も、97条2項・3項がそれぞれ準用しています。変更の認可も、三つの不認可事由に当たらない限り与えなければならない羈束的な処分だということです。

    作るときの手続がそのまま変えるときにも要求される、という構造です。都市計画の変更に決定と同じ手続が要求されるのと同じ考え方で、いったん確定した内容を動かすには確定させたときと同じ重みの手続を踏ませる、という発想が働いています。

    未登記の権利は申告しないと存在しないものとみなされる

    換地計画を正しく作るには、施行者が権利関係を把握している必要があります。登記されている権利は登記記録から分かりますが、未登記の権利は分かりません。そこで85条1項が、施行地区内の宅地についての所有権以外の権利で登記のないものを有する者に、施行者への申告義務を課しています。個人施行者の事業は対象外です。

    そして85条5項が強い効果を定めています。申告しなければならない権利で申告がないものについては、その申告がない限り、これを存しないものとみなして換地計画の決定や仮換地の指定などの処分または決定をすることができる、というものです。

    未登記の借地権を持っていても、申告しなければ換地計画の上では存在しないものとして扱われ、換地の上に借地権の目的となるべき宅地を定めてもらえない可能性がある。登記の対抗力とは別の次元で、申告の有無が権利者の地位を左右します。登記があれば申告は不要である点も含めて、登記制度との役割分担を意識してください(不動産登記法、登記簿の読み方)。

    照応の原則と、換地を定めない場合

    照応の原則は複数要素の総合判断

    どの土地を誰に割り当てるのか。ここを施行者の裁量に完全に任せると、恣意的な配分が起こりえます。そこで法89条1項が枠をはめています。

    換地計画において換地を定める場合においては、換地および従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない。これが照応の原則です。

    照応とは、対応している、釣り合っているという意味です。従前の宅地が角地なら換地もそれに見合った条件であるべきで、駅に近い宅地の権利者に遠い換地を割り当てるのは照応を欠きます。条文が挙げているのは位置、地積、土質、水利、利用状況、環境の六つで、末尾に「等」が付いています。列挙は例示であって、これ以外の事情を考慮してはならないという趣旨ではありません。

    面積だけを見て照応を判断する肢が出題されることがありますが、条文が複数の要素を列挙している以上、面積が同じであれば照応しているとは言えませんし、面積が違うから照応していないとも言えません。減歩がある以上、地積は通常減ります。地積の一致を要求する条文は存在しません。

    所有権と地役権以外の権利は換地の上に位置を与えられる

    89条2項は、換地を定める場合において、従前の宅地について所有権および地役権以外の権利または処分の制限があるときは、その換地についてこれらの権利または処分の制限の目的となるべき宅地またはその部分を、1項に準じて定めなければならないとしています。

    所有権が除かれているのは、換地そのものが所有権の受け皿だからです。地役権が除かれているのは、後で見るとおり地役権が原則として従前の宅地の上に残るからです(104条4項)。それ以外の権利、たとえば借地権、地上権、永小作権、賃借権、あるいは差押えなどの処分の制限については、換地のどの部分がその目的になるのかを換地計画で定めておく必要があります。

    この規定があるおかげで、借地権者は事業が終わったあとも換地の上で借地権を維持できます。土地の入れ替えによって借地権が消えてしまうのでは、権利者の保護になりません。区画整理法が「宅地の所有者または借地権者」という形で借地権者を所有者と並べて扱っているのは、この事業が土地の上の権利関係全体を組み替えるものだからです。借地権の対抗要件の話とは別次元の保護がここに置かれています(借地権の対抗要件)。

    なお、借地に関する92条は別の条文です。92条は過小借地とならないように借地権の目的となるべき宅地を定めるための規定、つまり地積の適正化の規定であって、公的施行の事業でしか使えません。89条2項と混同しないでください。

    換地を定めない場合

    すべての従前の宅地に換地が定められるとは限りません。90条は、宅地の所有者の申出または同意があった場合には、その宅地の全部または一部について換地を定めないことができるとしています。この場合、その権利者は換地を取得しない代わりに、清算金の交付を受けます。

    ただし条文は続けて、換地を定めない宅地またはその部分について地上権、永小作権、賃借権その他の宅地を使用し、または収益することができる権利を有する者があるときは、換地を定めないことについてこれらの者の同意を得なければならないとしています。所有者が単独で決めることはできません。所有者が換地を放棄すれば、その土地を借りている者は使用収益の基盤を失うからです。

    91条は、公的施行の事業に限って、災害を防止し衛生の向上を図るため宅地の地積の規模を適正にする特別な必要があると認められる場合に、地積が小である宅地について過小宅地とならないように換地を定めることができるとしています。過小宅地の基準となる地積は、政令で定める基準に従い、施行者が土地区画整理審議会の同意を得て定めます(91条2項)。反対に、地積が大で余裕がある宅地について地積を特に減じて換地を定めることも、審議会の同意があればできます(91条5項)。

    小さすぎる宅地をそのままの割合で減らせば、建物が建てられない土地が量産されます。それを避けるために、大きい宅地から余分に減らして小さい宅地の目減りを抑える。この操作を許す条文が91条です。ただし審議会の同意という歯止めが付いており、施行者の一存ではできません。

    93条は立体換地の規定です。93条1項は、公的施行者が、91条1項により過小宅地とならないように換地を定めることができる宅地または92条1項により過小借地とならないように定めることができる借地権について、土地区画整理審議会の同意を得て、換地や借地権の目的となるべき宅地を定めないで、施行者が処分する権限を有する建築物の一部とその建築物の存する土地の共有持分を与えるように定めることができるとしています。93条2項は、市街地における土地の合理的利用を図り災害を防止するため特に必要がある場合について、都市計画法8条1項5号の防火地域内で、かつ同項3号の高度地区(建築物の高さの最低限度が定められているものに限る)内の宅地に同じ措置を認めます。こちらも公的施行者に限られ、審議会の同意が要ります。防火地域の構造規制は防火地域と準防火地域にあります。

    もっとも、93条4項は施行者を限定していません。換地計画に係る区域内の宅地の所有者の申出または同意があった場合には、どの施行者でも換地を定めないで建築物の一部と土地の共有持分を与えるように定めることができます。この場合、換地を定めない部分について使用収益権を有する者があるときは、その者の同意が必要です。90条と同じ構造で、所有者が単独で決められない点も共通します。1項・2項が公的施行者に限られるのは、過小宅地対策という強制的な介入だからであり、所有者本人が望んで立体換地を受ける4項の場面まで限る理由がないわけです。

    93条3項は、1項・2項の場合に建築物の一部と共有持分を与えられないで金銭により清算すべき旨の申出があったときは、これらの規定による定めができないとしています。強制的に建物の区分所有者にされることはない、という受け皿です。これらの建築物は主要構造部が建築基準法2条7号の耐火構造でなければなりません(93条6項)。共有持分を与えられた場合の権利関係は共有の考え方が土台になります。

    95条は、鉄道・学校・病院・社会福祉施設・公益事業施設・国や地方公共団体の庁舎などの用に供している宅地について、位置や地積に特別の考慮を払って換地を定めることができるとしています。文化財保護法により重要文化財等に指定された建造物が所在する宅地については、移転の必要が生じないように換地を定めなければなりません(95条4項)。公的施行がこれらの特別の定めをするには、土地区画整理審議会の同意が要ります(95条7項)。

    保留地・清算金・減価補償金という金の流れ

    保留地は要件が施行者で分かれる

    保留地とは、換地として定めないで確保しておく土地です。ここは条文が民間施行と公的施行で完全に書き分けられているので、分けて押さえてください。

    96条1項は、3条1項から3項まで、つまり個人施行者・組合・区画整理会社が施行する事業について、土地区画整理事業の施行の費用に充てるため、または規準、規約もしくは定款で定める目的のため、一定の土地を換地として定めないで保留地として定めることができるとしています。目的が二本立てで、費用充当以外の目的でも基本規則に書いてあれば保留地を設定できます。

    96条2項は、公的施行の事業について、事業施行後の宅地の価額の総額が施行前の宅地の価額の総額を超える場合に限り、その差額に相当する金額を超えない価額の一定の土地を保留地として定めることができるとしています。目的は事業費への充当だけです。しかも増加した価値の範囲内という上限が付き、さらに96条3項で土地区画整理審議会の同意が必要とされています。

    民間は目的が広く上限の定めがなく、公的は目的が狭く上限と審議会同意が付く。公的施行のほうが厳しいのは、公権力が土地を取り上げる度合いを、事業によって生み出した価値の範囲に抑えるためです。

    保留地を公的施行者が取得した後の処分についても条文があります。108条1項は、保留地を定めた目的のために、その目的に適合し、かつ施行規程で定める方法に従って処分しなければならないとし、あわせて国・都道府県・市町村の財産の処分に関する法令の規定を適用しないとしています。通常の公有財産処分のルールを外して、施行規程の定めで処分できるようにする特則です。

    保留地は事業費に充てるために売却されるので、市場に出れば売買の対象になります。一定面積以上の土地売買であれば国土利用計画法の事後届出の対象になりますし、注視区域・監視区域であれば事前届出の対象です(国土利用計画法の3層、事前届出の仕組み)。保留地の販売広告についても、不動産の表示に関する公正競争規約の規律がかかります(不動産広告の表示基準)。

    清算金は換地計画で定め、公告の翌日に確定する

    照応するように定めても、従前の宅地と換地の価額が完全に一致することはありません。区画の形状や道路の位置は連続的に調整できないからです。

    そこで法94条は、換地または換地について権利の目的となるべき宅地を定め、または定めない場合において、不均衡が生ずると認められるときは、従前の宅地と換地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等を総合的に考慮して金銭により清算するものとし、換地計画においてその額を定めなければならないとしています。これが清算金です。換地の価額が従前の宅地より高ければ差額を徴収され、低ければ交付されます。

    条文の括弧書きに注目してください。94条の「権利」は処分の制限を含み、所有権および地役権を含まない、とされています。清算の単位が所有権だけでなく、借地権などの権利ごとに立てられることが、ここからも読めます。89条2項と同じ構造です。

    清算金は換地計画の段階で金額を定めますが、確定するのは換地処分の公告があった日の翌日です(104条8項)。定める時点と確定する時点がずれます。この間に事情が変わっても、換地計画で定めた額が翌日に確定するというのが条文の建て付けです。

    仮清算という中間処理

    事業には年単位の時間がかかります。清算金の確定を待っていては、資金の出入りが遅くなりすぎることがあります。そこで102条1項は、仮換地を指定した場合または使用収益を停止させた場合において、必要があると認めるときは、94条に定めるところに準じて仮に算出した仮清算金を、清算金の徴収または交付の方法に準ずる方法により徴収し、または交付することができるとしています。

    そして110条1項後段が、確定した清算金の額と仮清算金の額との間に差額があるときは、その差額に相当する金額を徴収し、または交付しなければならないと定めています。仮に払っておいて、確定額との差だけを後で精算する。所得税の予定納税に似た発想です。

    清算金の徴収と交付、そして滞納

    110条1項は、換地処分の公告があった場合においては、確定した清算金を徴収し、または交付しなければならないとしています。「できる」ではなく「しなければならない」です。

    110条2項は、政令で定めるところにより利子を付して分割徴収・分割交付することができるとしています。一括で払わせるだけでなく、分割の道を条文が用意しています。

    滞納があった場合の手当ても細かく定められています。組合、区画整理会社、公的施行者は、督促状によって納付すべき期限を指定して督促しなければならず(110条3項)、督促手数料と、年10.75パーセントの割合を乗じて計算した額の範囲内の延滞金を徴収することができます(110条4項)。督促を受けた者が期限までに納付しないときは、公的施行者は国税滞納処分の例により徴収でき、その先取特権の順位は国税および地方税に次ぐものとされます(110条5項)。督促手数料および延滞金は清算金に先立つものとされ(110条6項)、徴収権は42条の準用により5年で時効消滅します(110条8項)。

    なお、110条3項の主語に個人施行者は入っていません。3条2項から5項まで、3条の2、3条の3の施行者、つまり組合以降が対象です。個人施行者は督促や滞納処分の仕組みを持ちません。

    111条は、交付すべき清算金または減価補償金がある者から徴収すべき清算金があるときは、相殺することができると定めています。112条は、清算金または減価補償金を交付する場合において、当該宅地または権利について先取特権、質権または抵当権があるときは供託しなければならないとしています。ただし、これらの債権者から供託しなくてもよい旨の申出があった場合は別です。担保権者の把握している価値が金銭に姿を変えるので、その金銭の上に権利を及ぼせるようにする趣旨で、抵当権の物上代位に近い発想です(抵当権の基本)。

    減価補償金は公的施行だけの制度

    109条1項は、公的施行者について、事業の施行により事業後の宅地の価額の総額が事業前の宅地の価額の総額より減少した場合には、その差額に相当する金額を、公告があった日における従前の宅地の所有者および使用収益権者に対して、政令で定める基準に従い、減価補償金として交付しなければならないとしています。

    保留地の96条2項と裏表の関係です。価額の総額が増えたなら、その増加分の範囲で保留地を取れる。減ったなら、その減少分を減価補償金として配らなければならない。増えたときの取り分と減ったときの補償が、同じ「総額の差」という物差しで対になっています。

    減価補償金を交付しようとする場合は、各権利者別の交付額について土地区画整理審議会の意見を聴かなければなりません(109条2項)。保留地の96条3項が「同意」であるのに対し、こちらは「意見」です。同じ審議会でも、条文によって同意を要する場面と意見を聴けば足りる場面が分かれています。

    仮換地の指定|二つの要件と四つの手続

    なぜ仮換地が必要か

    換地処分は工事完了後に行うのが原則です。しかし工事を進めるには、従前の宅地の上にある建物をどかし、その場所を工事に使える状態にしなければなりません。換地処分を待っていては工事が始められない。そこで、換地処分の前の段階で暫定的に使用収益する土地を指定する制度が置かれています。これが仮換地です。

    法98条1項は、施行者が仮換地を指定できる場合を二つ挙げています。土地の区画形質の変更もしくは公共施設の新設もしくは変更に係る工事のため必要がある場合と、換地計画に基づき換地処分を行うため必要がある場合です。工事のためだけでなく、換地処分の準備としても指定できる点を押さえてください。

    条文が「換地処分を行う前において」と書いていることも見落とさないでください。換地処分の後に仮換地を指定することはありえません。時間軸の上で、仮換地は必ず換地処分より前です。

    98条1項後段は、従前の宅地について地上権、永小作権、賃借権その他の使用収益権を有する者があるときは、その仮換地について仮にそれらの権利の目的となるべき宅地またはその部分を指定しなければならないとしています。所有者に仮換地を指定するだけでなく、その中で借地人が使う範囲まで仮に決める。89条2項と同じ二段構えが、仮の段階でも用意されています。

    98条2項は、仮換地を指定する場合には換地計画において定められた事項またはこの法律に定める換地計画の決定の基準を考慮してしなければならないとしています。換地計画がまだ定まっていない段階でも、照応の原則などの基準を意識して指定せよ、という縛りです。仮換地の位置が最終的な換地とかけ離れていては、暫定措置の意味がありません。

    事前手続は四つに分かれる

    仮換地の指定にあたって必要な事前手続は、98条3項と4項で施行者の種類ごとに四つに書き分けられています。個人施行者は従前の宅地の側と仮換地となるべき宅地の側の双方の関係権利者の同意、組合は総会もしくはその部会または総代会の同意、公的施行者は土地区画整理審議会の意見、区画整理会社は所有権者と借地権者それぞれ3分の2以上かつ地積3分の2以上の同意です。四つの中身と、公的施行だけが同意ではなく意見で足りる理由は土地区画整理法の施行者と組合に譲ります。

    本記事の側で押さえておくべきは、これらがいずれも「あらかじめ」踏むべき手続だという点です。98条3項の柱書は「指定しようとする場合においては、あらかじめ、その指定について」と書いています。基準になるのは指定の効力発生の日ではなく、指定という行為そのものです。効力発生の日までに同意が揃えばよい、という読み方はできませんし、指定した後に同意を取り付けて追認する処理も条文が予定していません。

    もう一点、条文が同意や意見の対象としているのは「その指定について」であって、換地計画の中身ではありません。仮換地の指定は換地計画が確定していなくてもできる処分なので(98条2項は換地計画で定められた事項「または」この法律に定める換地計画の決定の基準を考慮せよという書き方をしています)、換地計画についての88条の手続と、仮換地の指定についての98条の手続は、別々に踏む必要があります。片方を済ませたことでもう片方が不要になることはありません。

    通知の相手方と記載事項

    指定は、仮換地となるべき土地の所有者と従前の宅地の所有者に対し、仮換地の位置および地積ならびに仮換地の指定の効力発生の日を通知して行います(98条5項)。

    通知の相手が二方向である点を確認してください。土地を出す側(従前の宅地の所有者)と、土地を受け取る側の場所を提供する側(仮換地となるべき土地の所有者)です。区画整理では、ある人の従前の宅地が別の人の仮換地になることが普通に起こるので、両方に知らせる必要があります。

    さらに98条6項が、仮換地となるべき土地について使用収益権を有する者があるときはこれらの者に、従前の宅地について使用収益権を有する者があるときはこれらの者に、それぞれ必要な事項を通知しなければならないとしています。所有者だけでなく、借地人や賃借人にも通知が届きます。

    記載事項は、位置・地積・効力発生の日の三つです。価額や清算金の額は通知事項ではありません。仮換地の段階では、まだ金額を確定させる場面ではないからです。

    行政手続法の適用除外

    98条7項は、仮換地の指定について行政手続法第3章の規定を適用しないと定めています。第3章は不利益処分の章で、聴聞や弁明の機会の付与などを定めています。使用収益の場所を強制的に移す処分でありながら、これらの手続が外されている。代わりに、施行者ごとの同意や審議会の意見という土地区画整理法固有の事前手続が置かれている、という構造です。

    同じ適用除外は、使用収益の停止(100条3項)と換地処分(103条6項)にも置かれています。この三つはセットで覚えておくとよい規定群です。

    仮換地指定の効果|使用収益は移り、処分は移らない

    99条1項を正確に読む

    ここがこの分野の中心です。法99条1項の効果を条文の語順どおりに読んでください。

    仮換地が指定された場合においては、従前の宅地について権原に基づき使用し、または収益することができる者は、仮換地の指定の効力発生の日から103条4項の公告がある日まで、仮換地または仮換地について仮に使用し、もしくは収益することができる権利の目的となるべき宅地もしくはその部分について、従前の宅地について有する権利の内容である使用または収益と同じ使用または収益をすることができるものとし、従前の宅地については、使用し、または収益することができないものとする。

    条文が扱っているのは使用と収益だけです。所有権が移るとは書かれていません。したがって、仮換地の指定によって動くのは使用収益権能だけであり、所有権そのものは従前の宅地に残ります。

    条文の中ほどにある「仮に使用し、もしくは収益することができる権利の目的となるべき宅地」という長い修飾も読み飛ばさないでください。仮換地の上に仮の位置を与えられるのは、使用または収益をすることができる権利だけです。98条1項後段が指定の対象を地上権、永小作権、賃借権その他の使用収益権に限っているのと対応しています。抵当権や差押えのように、使用収益を伴わずに土地の交換価値や処分にかかわる権利は、仮の段階では動きません。89条2項が換地計画の段階で「所有権および地役権以外の権利または処分の制限」まで広く受け皿を用意しているのと比べると、仮換地の側は対象が狭い。この対比が、後で見る換地処分の効果との落差になります。

    「従前の宅地について有する権利の内容である使用または収益と同じ」という限定にも意味があります。従前の宅地を賃借権に基づいて使っていた者は、仮換地でも賃借権の内容の範囲で使えるにとどまります。仮換地の指定によって権利の中身が強くなるわけではありません。

    期間の始期と終期も条文に書かれています。始期は仮換地の指定の効力発生の日、終期は換地処分の公告がある日です。この期間が、使用する土地と処分する土地がずれている期間です。

    なぜ処分権が移らないのか

    これは条文の書き方の問題ではなく、制度の構造から説明できます。

    仮換地はあくまで仮のもので、最終的な換地と一致するとは限りません。工事の進行に応じて変更されることもあります。まだ確定していない土地に所有権を移してしまうと、変更のたびに所有権の移転登記をやり直すことになり、取引の安全が損なわれます。

    また、登記記録は従前の宅地について作られたままです。換地処分の公告後に施行者が登記を申請するまで、仮換地について権利者名義の登記は存在しません。存在しない登記を前提に売買や抵当権設定を組み立てることはできません。抵当権は登記がなければ第三者に対抗できず、根抵当権のように将来の債権を担保する仕組みでも、目的物の特定は登記された不動産を単位に行われます(根抵当権、物権変動と対抗要件)。

    だから、確定するまでは処分の対象を従前の宅地に固定しておき、確定した時点でまとめて換地に移す。この設計になっています。

    その結果、次のような状態になります。従前の宅地が甲地、仮換地が乙地だとすると、権利者は乙地を使って建物を建てたり住んだりできます。甲地は使えません。しかし、この土地を売却するときに売買契約の目的物になるのは甲地であり、抵当権を設定して登記するのも甲地についてです。買主は甲地の所有権を取得し、そのうえで仮換地である乙地を使用収益できることになります。

    仮換地となるべき土地の側で起きること

    99条3項は、逆方向の効果を定めています。仮換地について権原に基づき使用し、または収益することができる者は、98条5項に規定する日(次に見る99条2項前段により使用収益を開始することができる日を別に定めた場合には、その日)から換地処分の公告がある日まで、当該仮換地を使用し、または収益することができない。

    つまり、乙地をもともと使っていた者は、乙地が誰かの仮換地に指定されると使えなくなります。土地の入れ替えは、出す側と受け取る側の両方で使用収益の変動を生みます。片側だけを見ていると、この肢を落とします。

    括弧書きの意味も押さえておいてください。次に見る99条2項により使用収益開始日を別に定めたときは、乙地をもともと使っていた者が使えなくなる日も、その開始日まで後ろにずれます。乙地を受け取る側が使えるようになる日と、乙地を明け渡す側が使えなくなる日が一致するように条文が組まれているわけです。ここをずらすと、乙地について誰も使えない期間か、二人が同時に使える期間が生じてしまいます。ずらされるのは、後で見るとおり従前の宅地の側です。

    使用収益開始日を別に定める場合

    仮換地を指定しても、そこに障害物があってすぐには使えないことがあります。前の権利者の建物がまだ残っている、造成工事が終わっていない、といった場合です。

    法99条2項は、その仮換地に使用または収益の障害となる物件が存するときその他特別の事情があるときは、施行者が仮換地について使用または収益を開始することができる日を、指定の効力発生の日とは別に定めることができるとしています。この場合、98条5項および6項の通知に併せてその旨を通知しなければなりません。

    この場合、指定の効力発生の日から使用収益開始日までの間は、従前の宅地も仮換地も使用収益できない期間が生じます。従前の宅地は99条1項後段で使えなくなっており、仮換地はまだ開始日が来ていないからです。どちらも使えない空白期間が制度上生じうる、という点が問われます。

    その損失については、施行者が通常生ずべき損失を補償しなければなりません(101条1項)。仮換地となるべき土地をもともと使っていた者が99条3項によって使えなくなった場合も同様です(101条2項)。使用収益の停止による損失も同様です(101条3項)。補償金の支払いにあたって、その宅地または権利について先取特権・質権・抵当権があるときは供託しなければならないという規律も準用されています(101条5項による78条5項・6項の準用)。

    使用収益の停止は仮換地とは別の処分

    仮換地の指定と並んで、使用収益を止めるだけの処分が用意されています。100条1項です。

    施行者は、換地処分を行う前において、工事のため必要がある場合または換地計画に基づき換地処分を行うため必要がある場合に、換地計画において換地を定めないこととされる宅地の所有者、または換地について権利の目的となるべき宅地もしくはその部分を定めないこととされる権利を有する者に対して、期日を定めて、その期日からその宅地またはその部分について使用収益することを停止させることができます。

    対象者の限定が肝心です。誰でも止められるのではなく、換地計画の上でその宅地に換地が定められないことになっている者、あるいはその権利について換地の中の位置が定められないことになっている者に限られます。90条の申出により換地を定めないこととした宅地や、91条4項により換地を定めないこととした著しく小さい宅地が、この処分の典型的な対象です。最終的に受け皿がない土地なのだから、換地処分を待たずに使用収益を止めて工事に回す、という理屈です。

    手続として、その期日の相当期間前に、その旨をこれらの者に通知しなければなりません(100条1項後段)。「相当期間前」という書き方で、日数が法定されていない点が仮換地の通知と違います。効果は100条2項で、その期日から換地処分の公告がある日まで、その宅地について権原に基づき使用収益できる者は使用収益できなくなります。仮換地の場合と違って、代わりに使える土地は与えられません。だから101条3項が損失補償を用意しています。

    100条3項が行政手続法第3章を適用除外にしている点も、仮換地の指定(98条7項)、換地処分(103条6項)と揃っています。宅地建物取引業法施行令3条1項8号が名指しで拾っているのが100条2項であることも、あわせて押さえておいてください。買おうとしている土地が使用収益を停止されているかどうかは、買主にとって決定的な情報です。

    使用収益できる者のなくなった土地の管理と工事

    仮換地の指定や使用収益の停止によって、その土地を使用収益できる者がいなくなることがあります。この土地を放置すると管理の主体が不在になります。

    100条の2は、そのような従前の宅地またはその部分については、使用収益できる者のなくなった時から換地処分の公告がある日までは、施行者がこれを管理するものとすると定めています。所有権は従前の所有者にあるのに、管理は施行者が行うという状態です。

    80条は、その土地について、施行者またはその命じた者もしくは委任した者が、宅地の所有者および占有者の同意を得ることなく土地区画整理事業の工事を行うことができるとしています。使用収益できる者がいなくなった土地は工事に使えるようにする、という趣旨で、この二条が仮換地制度を工事の実行につなげています。

    建築物の移転・除却と補償

    工事のために建物をどかす必要があるとき、施行者は77条1項によりこれらの建築物等を移転し、または除却することができます。ただし手続が細かく定められています。

    77条2項は、相当の期限を定め、その期限後においては移転または除却する旨を建築物等の所有者および占有者に通知し、あわせてその期限までに自ら移転または除却する意思の有無を所有者に照会しなければならないとしています。そして77条3項が、住居の用に供している建築物については、この相当の期限は3月を下ってはならないとしています。住居であることを理由に、最低3か月の猶予が法定されているわけです。

    77条8項後段は、個人施行者、組合または区画整理会社が建築物等を移転または除却しようとするときは、あらかじめ、建築物等の所在する土地の属する区域を管轄する市町村長の認可を受けなければならないとしています。民間施行者が私人の建物に手を付けるので、行政庁のチェックを挟む設計です。

    78条1項は、これらの移転・除却により損失を与えた場合に、施行者が通常生ずべき損失を補償しなければならないとしています。ただし78条2項が例外を置いており、76条4項・5項、都市計画法81条1項・2項、建築基準法9条の規定により移転または除却を命ぜられている建築物等については、所有者に対する損失補償を要せず、しかも移転・除却に要した費用をその所有者から徴収することができるとしています。違反建築物として除却を命じられている建物は、補償の対象にならないどころか費用を請求される。違反状態にある者を保護しない、という一貫した考え方です。

    建築行為等の制限(76条)

    何が制限されるか

    事業の途中で自由に建物を建てられると、工事が進みません。そこで法76条1項が、施行地区内での一定の行為に許可を要求しています。

    対象となるのは三つです。土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更、建築物その他の工作物の新築・改築・増築、そして政令で定める移動の容易でない物件の設置または堆積です。

    条文は「事業の施行の障害となるおそれがある」という限定を付けています。したがって、事業の妨げにならない行為まで一律に禁じているわけではありません。許可の判断も、障害となるおそれがないかどうかで行われます。

    対象行為の並びは都市計画法65条1項とほぼ同じです。都市計画事業の事業地内の制限も、土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設、政令で定める移動の容易でない物件の設置・堆積の三つを対象としています。共通の型として覚えてしまうと、他の法令の建築制限にも応用が利きます(法令上の制限の横断整理)。

    許可権者は施行者ではない

    最も出題されるのがここです。許可を与えるのは、施行者ではありません。

    国土交通大臣が施行する土地区画整理事業では国土交通大臣。その他の者が施行する事業では都道府県知事です。ただし、市の区域内において個人施行者、組合もしくは区画整理会社が施行し、または市が3条4項の規定により施行する土地区画整理事業については、当該市の長が許可権者となります。条文はこれをまとめて「都道府県知事等」と呼んでいます。

    組合が施行する事業であっても、組合の許可ではありません。組合は事業を施行する主体であって、行政処分としての許可を与える立場にないからです。「組合施行の場合は組合の許可を受ける」という肢は誤りです。この構造は、開発許可における許可権者と開発事業者の関係と同じ考え方です。

    市長が許可権者になる場合の切り分けにも注意してください。市の区域内であることが前提で、そのうえで施行者が個人施行者・組合・区画整理会社・市のいずれかであることが必要です。市の区域内でも都道府県が施行する事業なら都道府県知事のままですし、町村の区域内なら施行者が誰であっても都道府県知事です。二つの条件が重なったときだけ市長に移る、という読み方をしてください。

    施行者は意見を述べる立場に置かれる

    76条2項は、都道府県知事等は許可の申請があった場合において、その許可をしようとするときは、施行者の意見を聴かなければならないと定めています。

    施行者は許可を出さないが、意見は言う。事業の障害になるかどうかを最もよく知っているのは施行者だからです。許可権限と情報の所在が分離しているので、条文が両者をつなぐ手続を置いています。都市計画法65条2項も、事業地内の許可について施行者の意見を聴くことを求めており、同じ発想です。

    76条3項は、許可をする場合において事業の施行のため必要があると認めるときは、許可に期限その他必要な条件を付することができるとし、この条件は許可を受けた者に不当な義務を課するものであってはならないとしています。条件を付ける権限と、その限界の両方が条文にあります。

    制限がかかる期間

    制限は、事業が公に始まった時点から始まり、換地処分の公告があった日で終わります。76条1項柱書が「次に掲げる公告があつた日後、第百三条第四項の公告がある日までは」と書いているとおりです。

    始期となる公告は施行者ごとに1号から5号に書き分けられています。個人施行者は施行についての認可の公告または施行地区の変更を含む事業計画の変更の認可の公告。組合は21条3項の公告または事業計画の変更の認可の公告。区画整理会社は施行についての認可の公告または事業計画の変更の認可の公告。市町村・都道府県・国土交通大臣が施行する場合は事業計画の決定の公告または事業計画の変更の公告。機構等が施行する場合は施行規程および事業計画の認可の公告または事業計画の変更の認可の公告です。

    終期は共通で、換地処分の公告がある日までです。したがって、換地処分の公告があれば、この制限は解除されます。事業が終わったのだから工事の障害を考える必要がなくなる、という理屈です。

    始期が仮換地の指定ではない点に注意してください。仮換地が指定されていなくても、事業計画の公告があれば76条の制限はかかります。仮換地の指定と76条の制限は、別々の条文に基づく別々の効果です。

    違反したらどうなるか

    許可を受けずに行為をした者、または許可に付した条件に違反した者に対しては、国土交通大臣または都道府県知事等が、相当の期限を定めて、事業の施行に対する障害を排除するため必要な限度において、その土地の原状回復を命じ、または建築物その他の工作物もしくは物件の移転もしくは除却を命ずることができます(76条4項)。命令の相手には、違反者本人だけでなく、違反者から当該土地・建築物等についての権利を承継した者も含まれます。

    ここでも命令を出すのは許可権者であって、施行者ではありません。許可も命令も行政庁の側にあり、施行者は意見を述べるだけ、という役割分担が一貫しています。

    過失がなくて命令すべき者を確知することができないときは、国土交通大臣または都道府県知事等が自ら措置を行い、またはその命じた者もしくは委任した者に行わせることができます(76条5項)。この場合は、あらかじめ期限と措置内容を公告しなければなりません。

    罰則の位置も確認しておいてください。140条は、76条4項の規定による命令に違反して土地の原状回復をせず、または建築物その他の工作物もしくは物件を移転もしくは除却しなかった者を、6月以下の拘禁刑または20万円以下の罰金に処するとしています。つまり、罰則の対象は無許可行為そのものではなく、命令違反です。無許可で建築した段階では刑罰は科されず、原状回復命令や除却命令に従わなかったときに初めて刑罰の対象になる、という二段構えです。

    なお、81条1項により施行者が設けた標識を、施行者の承諾を得ないで移転・除却・汚損・毀損した者は、20万円以下の罰金に処されます(81条2項、142条)。標識に関する規律だけは違反行為そのものに罰則が付いています。

    35条書面との接続

    宅地建物取引業法35条1項2号は、都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で政令で定めるものに関する事項を重要事項として説明すべきものとしています。その政令が宅地建物取引業法施行令3条1項で、8号に土地区画整理法の条文が具体的に挙がっています。

    挙がっているのは、76条1項、99条1項および3項、100条2項、117条の2第1項および2項です。建築行為等の制限、仮換地指定による使用収益の移動、使用収益の停止、住宅先行建設区における住宅の建設義務。取引の相手方にとって、その土地が今使えるのか、建物を建てるのに許可が要るのかは、購入の可否を左右する情報です。だから政令が名指しで拾っています。重要事項説明の全体像は35条書面の記載事項一覧、覚え方は35条書面の覚え方にあります。

    換地処分の手続

    時期は工事完了後が原則、ただし書がある

    換地処分は、事業の締めくくりとして、従前の宅地と換地の関係を最終的に確定させる行為です。

    法103条2項本文は、換地処分は換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事が完了した後において遅滞なくしなければならない、と定めています。原則は工事完了後です。

    ただし、同項ただし書が例外を置いています。規準、規約、定款または施行規程に別段の定めがある場合においては、換地計画に係る区域の全部について工事が完了する以前においても換地処分をすることができます。

    このただし書は頻出です。「換地処分は必ず工事完了後でなければならない」という肢は誤りになります。区域が広く工事が長期にわたる事業では、先に整備が済んだ部分の権利関係を早く確定させたい要請があるため、あらかじめ基本規則に定めておけば工事完了前でも換地処分ができる設計になっています。

    ここで基本規則の四つの名前がまた出てきます。規準、規約、定款、施行規程。施行者ごとに名前が違うだけで、どの施行者もこのただし書を使える点を確認してください。「組合施行の場合に限り工事完了前の換地処分ができる」といった限定は条文にありません。

    通知が処分そのもの

    換地処分は、関係権利者に換地計画において定められた関係事項を通知して行います(103条1項)。この通知が処分そのものです。公告が処分なのではありません。

    換地処分は個々の権利者に対する行政処分であり、その効力は通知によって生じます。ただし、後で見るとおり、104条が定める権利変動の効果は通知ではなく公告の翌日から生じます。処分の成立時期と効果の発生時期がずれている、という理解が必要です。

    103条6項は、換地処分について行政手続法第3章の規定を適用しないと定めています。仮換地の指定(98条7項)、使用収益の停止(100条3項)と揃っています。

    届出と公告は主語が違う

    個人施行者、組合、区画整理会社、市町村または機構等は、換地処分をした場合においては、遅滞なくその旨を都道府県知事に届け出なければなりません(103条3項)。ここでも都道府県と国土交通大臣は主語から外れています。自分が施行者である場合に自分へ届け出る必要はないからです。

    そして103条4項が公告を定めます。国土交通大臣は、換地処分をした場合においては、その旨を公告しなければならない。都道府県知事は、都道府県が換地処分をした場合または前項の届出があった場合においては、換地処分があった旨を公告しなければならない。

    したがって、処分をする者と公告をする者が違います。組合が換地処分をしても、公告をするのは都道府県知事です。ここも主語を入れ替えた肢が作られます。「組合は換地処分をしたときは遅滞なくその旨を公告しなければならない」は誤りで、正しくは都道府県知事に届け出る、です。

    103条5項は、換地処分の結果、市町村の区域内の町または字の区域や名称の変更・廃止が必要となる場合には、公告に係る換地処分の効果とこれらの変更・廃止の効力が同時に発生するように公告をしなければならないとしています。区画が変わると住所表示も変わるので、ずれが生じないようにする規定です。

    事業計画の決定は抗告訴訟の対象になる

    換地処分に至るまでの各段階のうち、事業計画の決定を争えるかどうかについては、判例の変更があります。

    最高裁大法廷は昭和41年2月23日の判決で、土地区画整理事業の事業計画は青写真にすぎず、その決定は抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらないとしていました。しかし最高裁大法廷平成20年9月10日判決は、この判例を変更し、市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすものであり、実効的な権利救済を図るという観点から見ても、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたるとしました。

    事業計画が決定・公告されると、その施行地区内では76条の建築行為等の制限がかかり、その後は換地処分に向けて手続が進んでいきます。この段階で法的地位が動くのだから、換地処分まで待たずに争わせるべきだ、というのがこの判決の考え方です。宅建試験で判旨まで問われることは多くありませんが、事業計画の決定・公告が権利者にとって既に重い効果を持つ、という理解は76条の制限の始期を覚えるうえで役に立ちます。

    換地処分の効果|翌日と、その日が終了した時

    公告があった日の翌日に生じる効果

    法104条が定める主要な効果は、いずれも換地処分の公告があった日の翌日に生じます。処分の日でも、公告の日そのものでもありません。

    換地計画において定められた換地は、公告があった日の翌日から従前の宅地とみなされます(104条1項前段)。従前の宅地に存した所有権は、この効果によって換地の上に移ります。売買ではなく置き換えなので、権利がそのまま移るという建て付けです。

    従前の宅地について存した所有権および地役権以外の権利または処分の制限については、換地計画において換地について定められたこれらの権利の目的となるべき宅地またはその部分が、公告があった日の翌日から、従前の宅地について存したこれらの権利の目的である宅地とみなされます(104条2項前段)。借地権も抵当権も差押えも、この規定によって換地の上へ位置を変えます。

    換地計画において定められた清算金は、公告があった日の翌日において確定します(104条8項)。

    保留地は、公告があった日の翌日において施行者が取得します(104条11項)。組合が施行者であれば組合が取得し、市町村が施行者であれば市町村が取得します。「保留地は市町村が取得する」と決まっているわけではありません。

    このほか、土地の共有持分を与えられるように定められた者はその共有持分を(104条6項)、建築物の一部と敷地の共有持分を与えられるように定められた者はそれらを(104条7項)、参加組合員に与えるべきものとされた宅地はその参加組合員が(104条10項)、いずれも公告があった日の翌日に取得します。

    事業の施行により設置された公共施設は、公告があった日の翌日において、原則としてその所在する市町村の管理に属します(106条1項)。管理すべき者について他の法律または規準、規約、定款もしくは施行規程に別段の定めがある場合は、その定めによります。

    管理と帰属は別の条文

    ここで混同しやすいのが、公共施設の「管理」と、その用地の「帰属」です。条文が分かれています。

    106条1項が定めるのは管理です。原則として市町村の管理に属します。

    これに対し105条3項が定めるのは土地の帰属です。事業の施行により生じた公共施設の用に供する土地は、105条1項に該当する場合を除き、公告があった日の翌日において、その公共施設を管理すべき者に帰属します。管理すべき者が第一号法定受託事務として管理する地方公共団体であるときは国に帰属します。

    管理は市町村が原則、土地の所有権は管理すべき者に帰属。両者が一致することも多いのですが、条文の建て付けとしては別です。管理の話をしているのか帰属の話をしているのかを、問題文で見極めてください。

    なお106条2項・3項は、公告の前でも公共施設に関する工事が完了したときは管理を引き継げること、公告の翌日に工事が完了していないときは完了時に引き継げることを定め、106条4項が、公共施設を管理すべき者は、工事が事業計画において定められた設計の概要に適合しない場合のほか、引継ぎを拒むことができないとしています。

    「公告があった日が終了した時」に消滅するもの

    一方で、翌日ではなく、公告があった日が終了した時に効果が生じるものがあります。

    換地計画において換地を定めなかった従前の宅地について存する権利は、公告があった日が終了した時に消滅します(104条1項後段)。同様に、換地について目的となるべき宅地の部分を定められなかった所有権・地役権以外の権利も、公告があった日が終了した時に消滅します(104条2項後段)。

    換地を宅地以外の土地に定めた場合において、その土地について存する従前の権利も、公告があった日が終了した時に消滅します(105条2項)。

    地役権については条文が二段になっています。104条4項は、施行地区内の宅地について存する地役権は、1項の規定にかかわらず、公告があった日の翌日以後においてもなお従前の宅地の上に存すると定めています。原則として消滅しないどころか、換地に移りもせず、従前の宅地の上にそのまま残ります。地役権が土地の位置関係そのものに着目した権利であり、通行や引水といった目的が土地の場所と結び付いているからです(地上権・地役権・永小作権)。

    そして104条5項が、事業の施行により行使する利益がなくなった地役権は、公告があった日が終了した時において消滅すると定めています。区画整理で新しい道路ができ、通行地役権を使う必要がなくなったような場合が典型です。原則は存続、利益がなくなったものだけが例外的に消滅、という順序で覚えてください。

    104条3項は、行政上または裁判上の処分で従前の宅地に専属するものには1項・2項の規定が影響を及ぼさないとしています。土地の物理的な位置に紐付いた処分まで換地に移すわけではない、という限定です。

    整理すると、新しく生じる効果は翌日、消滅する効果は当日が終了した時です。この対比を意識しておくと、細かい肢に対応できます。

    登記

    換地処分の公告があると、土地の権利関係が大きく変わるので、登記記録もこれに合わせる必要があります。

    法107条1項は、施行者は公告があった場合においては直ちにその旨を換地計画に係る区域を管轄する登記所に通知しなければならないとしています。107条2項は、施行地区内の土地および建物について事業の施行により変動があったときは、政令で定めるところにより、遅滞なく、その変動に係る登記を申請し、または嘱託しなければならないとしています。

    登記所が職権で行うのではなく、施行者が申請または嘱託する点に注意してください。「直ちに通知」と「遅滞なく登記の申請または嘱託」で、期限の表現が使い分けられていることも条文どおりです。

    そして107条3項が、公告があった日後においては、施行地区内の土地および建物に関しては2項の登記がされるまでは他の登記をすることができないとしています。ただし、登記の申請人が確定日付のある書類によりその公告前に登記原因が生じたことを証明した場合は、この限りではありません。

    権利関係が動いている最中に別の登記が入ると、記録の整合が取れなくなるための制限です。原則として登記を止めるが、公告前に原因が生じていたことを確実な方法で証明できるなら通す、という設計になっています。確定日付という手段が選ばれているのは、事後的に日付を作れない書類だからです。

    107条4項は、施行地区内の土地およびその土地に存する建物の登記について、政令で不動産登記法の特例を定めることができるとしています。区画整理に伴う大量の登記を、通常の申請手続とは別の仕組みで処理するための授権規定です。

    換地処分の後に請求できること、できなくなること

    契約条件を動かす権利が生まれる

    区画整理で土地が入れ替わると、その土地を目的とする契約の前提が変わります。従前より使いやすくなることも、使いにくくなることもあります。そこで113条以下が、契約条件を動かす権利を当事者に与えています。

    113条1項は、事業の施行により地上権、永小作権、賃借権その他の使用収益権の目的である土地または地役権についての承役地の利用が増し、または妨げられるに至ったため、従前の地代、小作料、賃貸借料その他の使用料または地役権の対価が不相当となった場合には、当事者は契約の条件にかかわらず将来に向かってこれらの増減を請求できるとしています。借地借家法の借賃増減請求と似た構造ですが、根拠条文も要件も別です。

    113条2項は、増額の請求があった場合において、権利を有する者はその権利を放棄し、または契約を解除して義務を免れることができるとしています。値上げを求められたら、抜けることもできる、という受け皿です。

    114条1項は、事業の施行により使用収益権または地役権を設定した目的を達することができなくなった場合には、これらの権利を有する者は権利を放棄し、または契約を解除できるとし、114条3項が、それによって生じた損失の補償を施行者に対して請求できるとしています。施行者が補償したときは、宅地の所有者等に対して、その者が受ける利益の限度で求償できます。

    115条は、事業の施行により従前と同一の利益を受けることができなくなった地役権者が、その利益を保存する範囲内において地役権の設定を請求できるとしています。104条4項で地役権が従前の宅地の上に残る建て付けを取ったことの帰結で、土地の形が変わって地役権が役に立たなくなった場合の受け皿です。

    116条は、建築物が移転された結果、その建築物の利用が増しまたは妨げられたために従前の賃貸借料が不相当となった場合の増減請求と、賃借の目的を達することができなくなった場合の解除、その解除による損失の補償を定めています。土地ではなく建物についての規定です。賃貸借の一般的な枠組みは民法の賃貸借を参照してください。

    2月という期限

    これらの請求には期限が付いています。117条は、換地処分の公告があった日から起算して2月を経過した日後は、113条1項の地代等の増減の請求、114条1項の権利の放棄もしくは契約の解除、115条の地役権の設定の請求、116条1項の賃貸借料の増減の請求または116条3項の契約の解除の請求は、することができないと定めています。

    2月という数字は、土地区画整理法の中では珍しく短く区切られた期間です。権利関係の確定を急ぐ制度なので、契約条件を動かす主張はまとめて早期に出させる、という設計になっています。数字の覚え方の組み立ては法令上の制限の暗記法と宅建の語呂合わせを参照してください。

    不服申立て

    処分に不服がある場合の道筋も条文にあります。127条の2第1項は、組合、区画整理会社、市町村、都道府県または機構等がこの法律に基づいてした処分に不服がある者は、組合・区画整理会社・市町村・市のみが設立した地方公社がした処分については都道府県知事に対して、都道府県または機構等がした処分については国土交通大臣に対して審査請求をすることができるとしています。127条の2第2項は、都道府県知事の裁決に不服がある者が国土交通大臣に再審査請求できるとしています。

    その一方で127条が、審査請求をすることができない処分を12号にわたって列挙しています。組合の設立認可、事業計画の決定、換地計画についての意見書の不採択の通知などです。事業の骨格を決める段階の処分は、一つずつ不服申立てで争わせない、という整理です。

    試験での出題ポイント

    仮換地の処分権を移す肢

    最頻出です。「仮換地が指定されたので、仮換地について売買契約を締結した」「仮換地に抵当権の設定登記をした」といった肢は誤りです。法99条1項が動かしているのは使用と収益だけであり、処分の対象と登記の対象は従前の宅地のままです。

    逆方向の引っかけもあります。「仮換地が指定されても、従前の宅地を引き続き使用することができる」という肢も誤りです。同項後段が、従前の宅地については使用し、または収益することができないと明記しています。

    さらに三方向目として、仮換地となるべき土地の側を問う肢があります。「仮換地に指定された土地をもともと使用していた者は、指定後も引き続き使用することができる」は誤りで、99条3項が使用収益できないと定めています。使用収益が動く方向は一方通行ではなく、両側で変動が起きます。

    建築行為等の許可権者を施行者にする肢

    「組合施行の場合、施行地区内で建築物を新築しようとする者は、組合の許可を受けなければならない」という肢は誤りです。許可権者は国土交通大臣または都道府県知事等であり、市の区域内で個人施行者・組合・区画整理会社が施行する場合等は当該市の長です。施行者が許可を出すことはありません。

    また、この制限を届出制とする肢も誤りです。法76条1項は許可を受けなければならないと定めています。許可と届出の書き分けは法令上の制限全体で頻出する軸で、許可と届出の分かれ目に横断的な整理があります。

    76条2項を逆にした肢にも注意してください。「施行者は、許可をしようとするときは都道府県知事の意見を聴かなければならない」は主語と客体が逆で、正しくは都道府県知事等が施行者の意見を聴きます。

    制限の始期を仮換地の指定にする肢

    「土地区画整理法76条の制限は、仮換地の指定があった日後にかかる」という肢は誤りです。76条1項柱書が挙げる始期は、施行認可の公告、21条3項の公告、事業計画の決定の公告など、事業の開始を公示する公告です。仮換地の指定はそれよりも後の段階で行われるので、指定がなくても制限はかかっています。

    終期を換地処分の日にする肢も誤りです。条文は「第百三条第四項の公告がある日まで」であり、換地処分の通知の日ではなく、公告の日が終期です。

    換地処分の時期に関する肢

    「換地処分は、施行地区の全部について工事が完了した後でなければすることができない」という肢は誤りです。法103条2項ただし書により、規準、規約、定款または施行規程に別段の定めがあれば、工事完了前でも換地処分ができます。

    逆に「換地処分は工事が完了する前に行うのが原則である」という肢も誤りです。原則と例外を入れ替えた形で、原則は工事完了後に遅滞なく、です。

    効果の発生時期をずらす肢

    「換地処分の効果は、換地処分があった日から生じる」「公告があった日から生じる」といった肢は誤りです。法104条の主要な効果は公告があった日の翌日から生じます。処分の日でも、公告の日でもありません。

    消滅側を翌日にする肢も誤りです。換地を定めなかった従前の宅地について存する権利の消滅、行使する利益がなくなった地役権の消滅は、いずれも公告があった日が終了した時です。

    地役権を一律に消滅させる肢にも注意してください。104条4項により、施行地区内の宅地について存する地役権は原則として公告の翌日以後もなお従前の宅地の上に存します。消滅するのは、事業の施行により行使する利益がなくなったものだけです。

    保留地の取得者や要件を入れ替える肢

    「保留地は換地処分の公告があった日の翌日に市町村が取得する」という肢は誤りです。取得するのは施行者です。取得の時期が翌日である点は正しいので、時期ではなく主語が入れ替えられていることに気づく必要があります。

    保留地の設定要件を施行者で入れ替える肢も作れます。「組合施行の事業では、事業施行後の宅地の価額の総額が施行前の総額を超える場合に限り保留地を定めることができる」は誤りです。この要件は96条2項の公的施行の要件で、組合を含む民間施行の96条1項にはこの限定がありません。

    登記の主体を入れ替える肢

    「換地処分の公告があった場合、登記所が職権で必要な登記を行う」という肢は誤りです。法107条により、施行者が申請または嘱託します。また、この登記がされるまで他の登記が原則としてできない点も出題されます。

    「換地処分の公告後は、施行地区内の土地について一切他の登記をすることができない」も言い過ぎで誤りです。107条3項ただし書が、確定日付のある書類により公告前に登記原因が生じたことを証明した場合の例外を置いています。

    照応の原則を面積だけで判断する肢

    「換地は従前の宅地と同一の地積で定めなければならない」という肢は誤りです。法89条1項が挙げているのは位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等であり、これらが照応するように定めるという規律です。地積の一致を要求してはいません。むしろ減歩がある以上、地積は通常減ります。

    「換地を定めないことは一切できない」も誤りです。90条が所有者の申出または同意による場合を認めており、その場合には使用収益権者の同意も必要です。

    手続の同意と意見をすり替える肢

    仮換地の指定について、公的施行者の事前手続を「土地区画整理審議会の同意」と書く肢は誤りです。98条3項は「意見を聴かなければならない」です。一方、91条2項の過小宅地の基準地積、95条7項の特別の宅地の措置、96条3項の公的施行の保留地は「同意」です。同じ審議会が、条文によって同意側にも意見側にも置かれています。

    換地計画の縦覧期間を1か月とする肢も誤りです。88条2項は2週間です。同意で処理する個人施行者と、縦覧で処理するそれ以外という切り分けも押さえてください。

    こうした主語や語尾の一文字を入れ替える作問の型は、この分野に限らず共通しています。型そのものの整理は宅建の引っかけ表現パターンにあります。

    覚え方・整理の仕方

    時間軸を一本引いて出来事を並べる

    この分野は、論点をばらばらに覚えると混線します。左から右に時間軸を一本引き、その上に出来事を並べてください。

    事業計画の決定と認可、その公告。ここから建築行為等の制限が始まります。次に仮換地の指定。ここで使用収益が仮換地に移り、従前の宅地が使えなくなります。次に工事、必要に応じて建築物の移転・除却と補償、仮清算金の徴収・交付。次に換地計画の作成と、縦覧または同意、認可。次に換地処分の通知。次に都道府県知事等による公告。ここで建築行為等の制限が終わり、翌日から換地が従前の宅地とみなされ、清算金が確定し、保留地を施行者が取得し、公共施設が市町村の管理に属します。最後に施行者による登記所への通知と登記の申請または嘱託、清算金の徴収・交付、そして公告から2月以内に限って認められる各種の請求。

    この一本の線に出来事を乗せてしまえば、「仮換地の指定は換地処分の前か後か」といった問いに迷いません。時間軸の作り方そのものは都市計画法でも使えるので、都市計画法の数字の整理と並べて眺めると定着します。

    「翌日」と「その日が終了した時」を分けて覚える

    数字と時点を並べるだけだと混同するので、意味で分けます。

    権利が生まれる方向の効果は、公告があった日の翌日。換地が従前の宅地とみなされる、所有権以外の権利が換地の上の位置を得る、清算金が確定する、保留地を施行者が取得する、共有持分や建築物の一部を取得する、公共施設が市町村の管理に属する、公共施設用地が管理すべき者に帰属する。

    権利が消える方向の効果は、公告があった日が終了した時。換地を定めなかった従前の宅地の権利の消滅、換地について位置を定められなかった権利の消滅、換地を宅地以外の土地に定めた場合の従前の権利の消滅、行使する利益がなくなった地役権の消滅。

    生まれるのは翌日、消えるのは当日の終わり。こう覚えると、二つを取り違えません。理屈としても、消滅を当日の終わりに置き、発生を翌日に置くことで、権利が二重に存在する瞬間も、権利が誰にも属さない瞬間も生じないように接続されています。

    三つの土地の呼び名を区別する

    問題文が読みにくいのは、似た言葉が三つ出てくるからです。従前の宅地、仮換地、換地。この三つを最初に整理しておいてください。

    従前の宅地は、事業が始まる前からその人が持っていた土地です。登記記録があり、所有権が乗っている土地はこれです。仮換地は、事業の途中で暫定的に使わせてもらう土地で、使用収益の対象にはなりますが登記や処分の対象にはなりません。換地は、事業が終わったあとに従前の宅地とみなされる土地で、最終的な権利の受け皿です。

    これに、土地ではないが混ざりやすい語として保留地が加わります。保留地は換地として定めない土地で、公告の翌日に施行者が取得します。誰かの受け皿ではなく、事業費の財源です。

    問題文に出てくる土地がこの四つのどれかを判別できれば、聞かれているのが使用収益の話か処分の話か、それとも費用の話かも自ずと決まります。読み違いの多くは、仮換地と換地を同じものとして読んでしまうことから起きます。

    主語で覚える

    この分野は、行為の主語を入れ替えた肢が多く作られます。誰が何をするかを、行為とセットで覚えてください。

    換地計画を定めるのは施行者。換地計画を認可するのは都道府県知事。仮換地を指定するのは施行者。建築行為等を許可するのは国土交通大臣または都道府県知事等であって施行者ではない。許可に際して意見を聴かれるのが施行者。原状回復や除却を命ずるのは許可権者。換地処分をするのは施行者。換地処分を都道府県知事に届け出るのは施行者。換地処分の公告をするのは国土交通大臣または都道府県知事。登記所へ通知し、登記を申請または嘱託するのは施行者。保留地を取得するのは施行者。清算金を徴収し交付するのは施行者。

    施行者がすることと、行政庁がすることが交互に現れます。許可と認可と公告だけが行政庁側だと押さえると整理しやすくなります。

    同意・意見・縦覧の三語で手続を仕分ける

    手続の肢を落とすのは、同意・意見・縦覧という三つの語の当てはめを間違えるからです。三語がどこに置かれているかを、場面ごとに拾い直してください。

    同意が要る場面。個人施行者が事業計画や換地計画の認可を申請するとき(8条、88条1項)。所有者の申出等により換地を定めないとき、その宅地の使用収益権者から(90条後段)。過小宅地の基準地積を定めるとき、特別の宅地の措置をとるとき、公的施行が保留地を定めるとき、いずれも土地区画整理審議会から(91条2項、95条7項、96条3項)。仮換地の指定について、個人施行者は関係権利者から、組合は総会等から、区画整理会社は3分の2以上の権利者から(98条3項・4項)。

    意見で足りる場面。公的施行が換地計画の縦覧前と意見書審査時に審議会から(88条6項)。公的施行が仮換地を指定するときに審議会から(98条3項)。減価補償金の各権利者別の交付額について審議会から(109条2項)。都道府県知事等が76条1項の許可をしようとするときに施行者から(76条2項)。

    縦覧が要る場面。個人施行者以外が換地計画を定めようとするとき、2週間(88条2項)。

    この三語で仕分けると、審議会が出てくる肢でも「同意なのか意見なのか」を条文単位で判断できます。

    仮換地と換地処分を対で覚える

    仮換地の指定は、使用収益だけを動かし、処分は動かしません。換地処分は、すべてを換地に確定させます。

    したがって、仮換地の段階で問われたら「使用収益は仮換地、処分と登記は従前の宅地」、換地処分の段階で問われたら「すべて換地」と答えれば、大半の肢は処理できます。法令上の制限全体の暗記の組み立て方は法令上の制限の暗記法にまとめてあります。土地区画整理法が8問の中でどの位置を占めるかは法令上の制限は何問出るかを、どの論点から手を付けるかは法令上の制限の頻出論点を参照してください。合格点との距離の測り方は合格点の推移と令和8年度の見通しにあります。

    理解度チェッククイズ

    第1問。仮換地が指定された場合、従前の宅地の所有者は、仮換地について所有権を取得するため、仮換地を目的として売買契約を締結することができる。

    答えは誤り。土地区画整理法99条1項が仮換地の指定によって移すのは、使用および収益の権能だけです。所有権は従前の宅地に残ったままなので、売買契約の目的物となるのも、抵当権を設定して登記する対象となるのも従前の宅地です。仮換地はまだ確定した土地ではなく、権利者名義の登記も存在しないため、処分の対象にはできません。なお、同項後段により従前の宅地は使用収益できなくなるので、売主が従前の宅地を使えるわけでもありません。買主は従前の宅地の所有権を取得し、そのうえで仮換地を使用収益することになります。

    第2問。土地区画整理組合が施行する土地区画整理事業の施行地区内において、事業の施行の障害となるおそれがある建築物の新築をしようとする者は、当該組合の許可を受けなければならない。

    答えは誤り。法76条1項の許可権者は、国土交通大臣が施行する土地区画整理事業では国土交通大臣、その他の者が施行する事業では都道府県知事です。ただし、市の区域内において個人施行者、組合または区画整理会社が施行し、または市が3条4項の規定により施行する事業については当該市の長が許可権者となります。いずれにしても施行者である組合が許可を与えるわけではありません。組合の立場は76条2項により意見を聴かれる側です。なお、この制限は届出制ではなく許可制です。

    第3問。換地処分は、換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事が完了した後でなければ、することができない。

    答えは誤り。法103条2項本文は工事完了後に遅滞なく行うことを原則としていますが、同項ただし書により、規準、規約、定款または施行規程に別段の定めがある場合には、工事が完了する以前でも換地処分をすることができます。区域が広く工事が長期にわたる事業で、先に整備の済んだ部分の権利関係を早く確定させる必要に応えるための例外です。四つの基本規則がすべて並べられているので、施行者の種類によってこの例外が使えたり使えなかったりすることもありません。

    第4問。換地処分の公告があった場合、換地計画において定められた保留地は、その公告があった日の翌日において施行者が取得する。

    答えは正しい。法104条11項により、保留地は公告があった日の翌日に施行者が取得します。施行者が組合であれば組合が、市町村であれば市町村が取得します。保留地は事業費に充てるなどの目的で換地として定めない土地で、民間施行では事業費のほか規準・規約・定款で定める目的のために定めることができ(96条1項)、公的施行では事業後の宅地価額の総額が事業前を超える場合にその差額の範囲内で、かつ土地区画整理審議会の同意を得て定めることができます(96条2項・3項)。取得者を市町村に固定する肢は誤りです。

    第5問。換地処分の公告があった場合、施行地区内の土地について必要となる登記は、登記所が職権で行う。

    答えは誤り。法107条1項により施行者が直ちに登記所へ通知し、同条2項により、事業の施行による変動に係る登記を遅滞なく申請し、または嘱託します。登記所の職権ではありません。また、同条3項により、この登記がされるまでは施行地区内の土地および建物について他の登記をすることができませんが、登記の申請人が確定日付のある書類により公告前に登記原因が生じたことを証明した場合は例外とされています。「一切できない」と言い切る肢も誤りになります。

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