土地区画整理法|仮換地と換地処分の仕組み
土地区画整理法を事業の目的から順に解説。換地と減歩の考え方、仮換地の指定で使用収益と処分が分かれる理由、76条の建築制限の許可権者、換地処分の効果が公告の翌日に生じることまで条文根拠つきで整理します。
目次
この記事は、土地区画整理法を宅建試験の出題範囲に沿って通しで扱うものです。施行者の種類と組合の設立要件は土地区画整理法の施行者と組合に、都市計画事業としての位置づけは都市計画法の全体像にあります。
この法律が分かりにくいのは、土地そのものが動くからです。開発許可や建築確認は、その土地の上で何をしてよいかを決める制度ですが、土地区画整理事業は、区画を引き直した結果として権利者の土地が別の場所に移ります。「Aさんの土地」が甲地から乙地に入れ替わる。この入れ替えをどう進めるか、入れ替わる途中の期間をどう扱うかを定めたのが土地区画整理法です。
そして最も問われるのが、その途中の期間です。仮換地が指定されると、使用収益できる土地と、売買や抵当権設定の対象になる土地が別々になります。使う土地と処分する土地がずれる、という状態が一定期間続く。ここを理解すれば、この分野の出題の多くは処理できます。
土地区画整理事業とは何をする事業か
目的は公共施設の整備改善と宅地の利用増進
土地区画整理法2条1項は、土地区画整理事業を次のように定義しています。都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善および宅地の利用の増進を図るため、この法律の定めるところに従って行われる土地の区画形質の変更および公共施設の新設または変更に関する事業。
目的が二つ並んでいる点が重要です。公共施設の整備改善と、宅地の利用増進。道路や公園を整えることと、個々の宅地を使いやすくすること、その両方を同時に達成しようとする事業です。
具体的には、道路が狭く敷地の形が不整形な市街地を想定してください。一筆ごとに見れば所有者がいて権利関係が確定しているので、誰かが勝手に道路を広げることはできません。かといって全員が個別に建て替えても、道路は狭いままです。そこで、区域全体をいったん白紙に戻すように区画を引き直し、道路と公園の用地を生み出したうえで、各権利者に整った形の土地を割り当て直す。これが区画整理の発想です。
対象は都市計画区域内の土地に限られます。都市計画区域の外では施行できません。区域の性格については都市計画法の全体像を参照してください。
買収方式ではなく換地方式
公共施設を整備する方法には、大きく二つあります。一つは、必要な土地を買収して整備する方法。道路事業や都市計画事業の多くはこの方式です。もう一つが、区画整理の採る換地方式です。
換地方式では、土地を買収しません。区域内の宅地の権利をそのまま維持したまま、位置と形を組み替えます。従前の宅地に代えて割り当てられる新しい土地を換地といい、従前の宅地に存した所有権や抵当権などの権利は、原則としてそのまま換地の上に移ります。
買収方式なら、道路にかかる土地の所有者だけが土地を失い、かからない所有者は何も失いません。換地方式では、区域内の権利者が少しずつ土地を出し合って公共用地を生み出します。負担が区域内で分散する点が、この方式の特徴です。
減歩|面積は減るが価値が上がるという建て付け
各権利者が少しずつ土地を出すため、換地の面積は従前の宅地より小さくなるのが通常です。この面積の減少を減歩といいます。
減歩には二つの種類があります。道路や公園といった公共施設の用地を生み出すための公共減歩と、事業費に充てるための土地を生み出すための保留地減歩です。前者は区域内の環境を良くするために使われ、後者は売却されて事業費に充てられます。
面積が減るのに権利者が受け入れるのは、整備によって一平方メートルあたりの価値が上がることを前提にしているからです。狭い道路にしか接していない不整形な200平方メートルより、広い道路に接した整形の150平方メートルのほうが価値が高い、という判断が成り立つ場合に、この事業は成立します。逆に言えば、価値の上昇が見込めない場所では成立しません。
この法律の「宅地」は宅建業法の宅地と違う
用語で一つ注意があります。土地区画整理法2条6項は、この法律における宅地を、公共施設の用に供されている国または地方公共団体の所有する土地以外の土地と定義しています。
つまり、公共施設用の公有地を除いた土地はすべて宅地です。農地であっても、雑種地であっても、この法律では宅地にあたります。宅地建物取引業法上の宅地とも、宅地造成及び特定盛土等規制法上の宅地とも定義が違うので、法令をまたいで学習するときは混同しないでください。法令ごとの用語の違いは法令上の制限の横断整理で扱っています。
都市計画法の中での位置づけ
市街地開発事業の一つ
土地区画整理事業は、都市計画法上は市街地開発事業の一つとして位置づけられています。都市計画法12条1項は、都市計画区域について都市計画に定めることができる市街地開発事業を列挙しており、その1号が土地区画整理法による土地区画整理事業です。市街地再開発事業や新住宅市街地開発事業と同じ枠に並んでいます。
市街地開発事業は、区域内の土地について面的な整備を行う事業であり、個別の建築行為を規制する地域地区とは性格が違います。地域地区は「この区域ではこういう建物を建てられる」という枠を定めるものですが、市街地開発事業は「この区域の形そのものを作り変える」ものです。都市計画で定められる内容の全体像は都市計画の種類を参照してください。
都市計画事業として行う場合と、そうでない場合
注意が必要なのは、土地区画整理事業がすべて都市計画事業として行われるわけではない点です。
都市計画に土地区画整理事業を定めれば、それは都市計画事業として施行されます。一方で、都市計画に定めずに、土地区画整理法だけを根拠として施行することもできます。組合施行や個人施行では後者の形が取られることがあります。
都市計画事業として施行される場合は、都市計画法上の制限も重ねてかかります。都市計画事業の認可等の告示があった後は、事業地内で土地の形質の変更や建築物の建築等を行うには都道府県知事等の許可が必要になります。土地区画整理法76条の制限とは根拠条文が別なので、どちらの制限の話をしているのかを問題文で見極めてください。都市計画法側の制限は都市計画制限にまとめてあります。
施行できるのは都市計画区域内に限られる
法2条1項が「都市計画区域内の土地について」と定めているとおり、土地区画整理事業を施行できるのは都市計画区域の内側に限られます。準都市計画区域や都市計画区域外では施行できません。
開発許可のように区域外にも及ぶ制度と混同しないでください。開発許可は都市計画区域および準都市計画区域の外でも、一定規模以上であれば必要になります(開発許可が必要な面積要件)。区域の範囲が制度ごとに違う点は、法令上の制限で繰り返し問われる論点です。
誰が施行するか
民間が施行する三つの類型
施行者は法3条以下に定められています。まず民間側が三つです。
個人施行者は、施行地区内の宅地について所有権または借地権を有する者が、1人で、または数人共同して施行するものです(法3条1項)。小規模な事業で用いられます。施行地区内の宅地について権利を有する者全員の同意が前提になります。
土地区画整理組合は、宅地について所有権または借地権を有する者が7人以上共同して設立するものです(法3条2項、14条1項)。設立には都道府県知事の認可が必要で、施行地区内の宅地の所有者と借地権者について、それぞれ3分の2以上の同意が要ります。認可されると、施行地区内の宅地の所有者と借地権者は全員が組合員になります。加入するかどうかを選べません。
区画整理会社は、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権または借地権を有する者を株主とする株式会社が施行するものです(法3条3項)。組合の設立要件や機関の詳細は土地区画整理法の施行者と組合にまとめてあります。
公的な施行者
公的な側は四つです。都道府県または市町村(法3条4項)、国土交通大臣(法3条5項)、独立行政法人都市再生機構(法3条の2)、地方住宅供給公社(法3条の3)です。
国土交通大臣が施行するのは、国の利害に重大な関係がある事業などに限られます。都道府県または市町村が施行する場合は、施行規程と事業計画を定めて事業を進めます。
誰が施行するかで何が変わるか
施行者の種類を覚える意味は、暗記そのものにあるのではなく、手続の分岐がここで決まるからです。
第一に、根拠となる基本規則の名称が違います。個人施行者は規準または規約、組合は定款、区画整理会社は規準、公的施行は施行規程。条文が「規準、規約、定款又は施行規程」と並べて書くのは、施行者の種類ごとに呼び名が違うからです。この四つが並んでいる条文を見たら、施行者を問わず適用される規定だと読めます。
第二に、仮換地の指定にあたって必要な手続が違います。後述しますが、個人施行者は同意、組合は総会等の同意、公的施行は土地区画整理審議会の意見という形で分かれます。
第三に、建築行為等の制限における許可権者が違います。ここが最も出題されます。
換地と換地計画
換地とは従前の宅地に代えて交付される土地
換地とは、従前の宅地に代えて交付される土地です。事業が完了すると、従前の宅地の権利者は、それに代わる換地の権利者になります。
ここで押さえるべきは、換地が従前の宅地の「代わり」であって、新しく取得する別の土地ではないという点です。後述する換地処分の効果として、換地は従前の宅地とみなされます。従前の宅地に抵当権が設定されていれば、その抵当権は換地の上に存続します。売買ではなく置き換えなので、権利がそのまま移るという建て付けです。抵当権の一般的な扱いは抵当権の基本を参照してください。
照応の原則
では、どの土地を誰に割り当てるのか。ここを施行者の裁量に任せると、恣意的な配分が起こりえます。そこで法89条1項が枠をはめています。
換地計画において換地を定める場合においては、換地および従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない。これが照応の原則です。
照応とは、対応している、釣り合っているという意味です。従前の宅地が角地なら換地もそれに見合った条件であるべきで、駅に近い宅地の権利者に遠い換地を割り当てるのは照応を欠きます。面積だけでなく、位置、土質、水利、利用状況、環境といった複数の要素を総合して判断する点が条文に書かれています。
面積だけを見て照応を判断する肢が出題されることがありますが、条文が複数の要素を列挙している以上、面積が同じであれば照応しているとは言えません。
清算金による調整
照応するように定めても、従前の宅地と換地の価額が完全に一致することはありません。区画の形状や道路の位置は連続的に調整できないからです。
そこで法94条は、不均衡が生ずると認められるときは金銭で清算するものとし、換地計画においてその金額を定めなければならないとしています。これが清算金です。換地の価額が従前の宅地より高ければ差額を徴収され、低ければ交付されます。
清算金は換地計画の段階で金額を定めますが、確定するのは後述する換地処分の公告があった日の翌日です。定める時点と確定する時点がずれる点に注意してください。
換地を定めない場合と保留地
すべての従前の宅地に換地が定められるとは限りません。
宅地の所有者の申出または同意があった場合には、その宅地の全部または一部について換地を定めないことができます(法90条)。この場合、その権利者は換地を取得しない代わりに、清算金の交付を受けます。
もう一つが保留地です。保留地とは、換地として定めないで、事業費に充てるためなどの目的で確保しておく土地をいいます(法96条)。事業には道路の築造費や補償費がかかるので、その財源を区域内の土地から生み出す仕組みです。保留地は後述するとおり、換地処分の公告があった日の翌日に施行者が取得します。
借地権が設定されている宅地の扱い
一つの宅地に所有者と借地権者がいる場合、換地はどう定められるのか。この点も条文が用意しています。
法92条は、借地権の目的となっている宅地について換地を定める場合においては、その換地について、当該借地権の目的となるべき宅地またはその部分を定めなければならないとしています。つまり、所有者に換地を割り当てるだけでなく、その換地の中に借地権が及ぶ範囲まで定める、という二段構えです。
この規定があるおかげで、借地権者は事業が終わったあとも換地の上で借地権を維持できます。土地の入れ替えによって借地権が消えてしまうのでは、権利者の保護になりません。区画整理法が「宅地の所有者または借地権者」という形で借地権者を所有者と並べて扱っているのは、この事業が土地の上の権利関係全体を組み替えるものだからです。組合の設立同意についても、所有者と借地権者のそれぞれについて3分の2以上が要求されます。借地権そのものの内容は借地権の基本を参照してください。
換地計画は換地処分の設計図
以上の内容を書き込むのが換地計画です。法86条1項は、施行者は施行地区内の宅地について換地処分を行うため換地計画を定めなければならないとし、施行者が個人施行者、組合、区画整理会社、市町村または機構等であるときは、その換地計画について都道府県知事の認可を受けなければならないとしています。
換地計画には、換地設計、各筆換地明細、清算金の額、保留地その他特別の定めをする土地などが定められます。つまり、誰にどの土地を割り当て、いくら清算するかが、ここで決まります。換地処分そのものは、この計画を実行に移す行為です。
個人施行者以外が換地計画を定めようとする場合は、原則として2週間、換地計画を公衆の縦覧に供しなければならず、利害関係者は縦覧期間内に意見書を提出できます(法88条)。計画が確定する前に権利者の言い分を聞く機会を設けているわけです。
仮換地の指定|使用収益と処分が分かれる
なぜ仮換地が必要か
事業には年単位の時間がかかります。工事を進めるには、従前の宅地の上にある建物をどかし、その場所を工事に使える状態にしなければなりません。しかし換地処分は工事完了後に行うのが原則なので、それまで待っていては工事が始められません。
そこで、換地処分の前の段階で、暫定的に使用収益する土地を指定する制度が置かれています。これが仮換地です。
法98条1項は、施行者が仮換地を指定できる場合を二つ挙げています。土地の区画形質の変更もしくは公共施設の新設もしくは変更に係る工事のため必要がある場合と、換地計画に基づき換地処分を行うため必要がある場合です。工事のためだけでなく、換地処分の準備としても指定できる点を押さえてください。
指定の手続
仮換地の指定にあたって必要な手続は、施行者の種類で分かれます(法98条2項・3項)。
個人施行者は、従前の宅地の所有者と、仮換地となるべき土地の所有者等の同意を得なければなりません。組合は、総会もしくはその部会または総代会の同意を得なければなりません。都道府県、市町村、国土交通大臣、機構等が施行する場合は、土地区画整理審議会の意見を聴かなければなりません。
同意、総会等の同意、審議会の意見。この三段の違いが問われます。公的施行の場合は「意見を聴く」であって同意ではない、という点が引っかけになります。
指定は、仮換地となるべき土地の所有者と従前の宅地の所有者に対し、仮換地の位置および地積ならびに仮換地の指定の効力発生の日を通知して行います。
効果|使用収益は移り、処分は移らない
ここがこの分野の中心です。法99条1項の効果を正確に読んでください。
仮換地が指定されると、従前の宅地について権原に基づき使用し、または収益することができる者は、仮換地の指定の効力発生の日から換地処分の公告がある日まで、仮換地について、従前の宅地について有する権利の内容である使用または収益と同じ使用または収益をすることができます。そして、従前の宅地については、使用し、または収益することができなくなります。
条文が扱っているのは使用と収益だけです。所有権が移るとは書かれていません。したがって、仮換地の指定によって動くのは使用収益権能だけであり、所有権そのものは従前の宅地に残ります。
その結果、次のような状態になります。従前の宅地が甲地、仮換地が乙地だとすると、権利者は乙地を使って建物を建てたり住んだりできます。甲地は使えません。しかし、この土地を売却するときに売買契約の目的物になるのは甲地であり、抵当権を設定して登記するのも甲地についてです。登記記録は依然として甲地のままだからです。
なぜ処分権が移らないのか
これは条文の書き方の問題ではなく、制度の構造から説明できます。
仮換地はあくまで仮のもので、最終的な換地と一致するとは限りません。工事の進行に応じて変更されることもあります。まだ確定していない土地に所有権を移してしまうと、変更のたびに所有権の移転登記をやり直すことになり、取引の安全が損なわれます。
また、登記記録は従前の宅地について作られたままです。換地処分の公告後に施行者が登記を申請するまで、乙地について権利者名義の登記は存在しません。存在しない登記を前提に売買や抵当権設定を組み立てることはできません。
だから、確定するまでは処分の対象を従前の宅地に固定しておき、確定した時点でまとめて換地に移す。この設計になっています。登記の仕組みについては不動産登記の基本と登記簿の読み方を参照してください。
使用収益開始日を別に定める場合
仮換地を指定しても、そこに障害物があってすぐには使えないことがあります。前の権利者の建物がまだ残っている、造成工事が終わっていない、といった場合です。
法99条2項は、施行者が仮換地の指定の効力発生の日とは別に、仮換地について使用または収益を開始することができる日を定めることができるとしています。この場合、指定の効力発生の日から使用収益開始日までの間は、従前の宅地も仮換地も使用収益できない期間が生じます。
使えない期間が生じることによる損失については、施行者が補償します(法101条)。また、使用収益できる者のなくなった土地は、換地処分の公告がある日まで施行者が管理します(法100条の2)。
建築行為等の制限
何が制限されるか
事業の途中で自由に建物を建てられると、工事が進みません。そこで法76条1項が、施行地区内での一定の行為に許可を要求しています。
対象となるのは三つです。土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更、建築物その他の工作物の新築・改築・増築、そして政令で定める移動の容易でない物件の設置または堆積です。
条文は「事業の施行の障害となるおそれがある」という限定を付けています。したがって、事業の妨げにならない行為まで一律に禁じているわけではありません。許可の判断も、障害となるおそれがないかどうかで行われます。
許可権者は施行者ではない
最も出題されるのがここです。許可を与えるのは、施行者ではありません。
国土交通大臣が施行する事業では国土交通大臣。それ以外の事業では都道府県知事です。ただし、市の区域内において個人施行者、組合または区画整理会社が施行し、または市が施行する事業については、当該市の長が許可権者となります。
組合が施行する事業であっても、組合の許可ではありません。組合は事業を施行する主体であって、行政処分としての許可を与える立場にないからです。「組合施行の場合は組合の許可を受ける」という肢は誤りです。この構造は、開発許可における開発許可権者と開発事業者の関係と同じ考え方です。開発許可の仕組みは開発許可制度にあります。
制限がかかる期間
制限は、事業が公に始まった時点から始まり、換地処分の公告があった日で終わります。始期は施行者によって違い、個人施行や組合施行では施行認可・設立認可の公告があった日後、公的施行では事業計画決定の公告があった日後です。終期は共通で、換地処分の公告がある日までです。
つまり、換地処分の公告があれば、この制限は解除されます。事業が終わったのだから工事の障害を考える必要がなくなる、という理屈です。
違反したらどうなるか
許可を受けずに行為をした者に対しては、都道府県知事等が、その原状回復を命じ、または建築物その他の工作物もしくは物件の移転もしくは除却を命ずることができます(法76条4項)。ここでも命令を出すのは許可権者であって、施行者ではありません。
換地処分とその効果
いつ行うか
換地処分は、事業の締めくくりとして、従前の宅地と換地の関係を最終的に確定させる行為です。
法103条2項本文は、換地処分は換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事が完了した後において遅滞なくしなければならない、と定めています。原則は工事完了後です。
ただし、同項ただし書が例外を置いています。規準、規約、定款または施行規程に別段の定めがある場合においては、換地計画に係る区域の全部について工事が完了する以前においても換地処分をすることができます。
このただし書は頻出です。「換地処分は必ず工事完了後でなければならない」という肢は誤りになります。区域が広く工事が長期にわたる事業では、先に整備が済んだ部分の権利関係を早く確定させたい要請があるため、あらかじめ基本規則に定めておけば工事完了前でも換地処分ができる設計になっています。
通知と公告
換地処分は、関係権利者に換地計画において定められた関係事項を通知して行います(法103条1項)。この通知が処分そのものです。
施行者が換地処分をしたときは、遅滞なくその旨を都道府県知事に届け出なければならず、国土交通大臣または都道府県知事は、換地処分をした場合または届出があった場合において、遅滞なくその旨を公告しなければなりません(法103条3項・4項)。
したがって、処分をする者と公告をする者が違います。組合が換地処分をしても、公告をするのは都道府県知事です。ここも主語を入れ替えた肢が作られます。
公告があった日の翌日に生じる効果
そして、効果の発生時期です。法104条が定める主要な効果は、いずれも換地処分の公告があった日の翌日に生じます。
換地計画において定められた換地は、公告があった日の翌日から従前の宅地とみなされます。従前の宅地に存した所有権や抵当権などの権利は、この効果によって換地の上に移ります。
換地計画において定められた清算金は、公告があった日の翌日において確定します。
保留地は、公告があった日の翌日において施行者が取得します。組合が施行者であれば組合が取得し、市町村が施行者であれば市町村が取得します。「保留地は市町村が取得する」と決まっているわけではありません。
事業の施行により設置された公共施設は、公告があった日の翌日において、原則としてその所在する市町村の管理に属します(法106条1項)。管理すべき者について他の法律に特別の定めがある場合などは、その者の管理となります。
「公告があった日が終了した時」に消滅するもの
一方で、翌日ではなく、公告があった日が終了した時に効果が生じるものがあります。
換地計画において換地を定めなかった従前の宅地について存する権利は、公告があった日が終了した時に消滅します(法104条1項後段)。また、施行地区内の宅地について存する地役権のうち、事業の施行によって行使する利益がなくなったものも、公告があった日が終了した時に消滅します。
なお、地役権は原則として消滅しません。土地の利用関係に着目した権利なので、公告があった日の翌日以後も従前の宅地の上に存続するのが原則で、行使する利益がなくなったものだけが例外的に消滅します。
整理すると、新しく生じる効果は翌日、消滅する効果は当日が終了した時です。この対比を意識しておくと、細かい肢に対応できます。
登記
換地処分の公告があると、土地の権利関係が大きく変わるので、登記記録もこれに合わせる必要があります。
法107条は、施行者が公告後に登記所へ通知し、換地処分による変動に係る登記を申請し、または嘱託しなければならないとしています。登記所が職権で行うのではなく、施行者が申請または嘱託する点に注意してください。
そして、この登記がされるまでは、施行地区内の土地および建物に関して他の登記をすることができません。ただし、登記の申請人が確定日付のある書類によって公告前に登記原因が生じたことを証明した場合は、この限りではありません。
権利関係が動いている最中に別の登記が入ると、記録の整合が取れなくなるための制限です。原則として登記を止めるが、公告前に原因が生じていたことを確実な方法で証明できるなら通す、という設計になっています。
覚え方・整理の仕方
時間軸を一本引いて出来事を並べる
この分野は、論点をばらばらに覚えると混線します。左から右に時間軸を一本引き、その上に出来事を並べてください。
事業計画の決定と認可、その公告。ここから建築行為等の制限が始まります。次に仮換地の指定。ここで使用収益が仮換地に移り、従前の宅地が使えなくなります。次に工事。次に換地計画の作成と認可。次に換地処分の通知。次に都道府県知事による公告。ここで建築行為等の制限が終わり、翌日から換地が従前の宅地とみなされ、清算金が確定し、保留地を施行者が取得します。最後に施行者による登記の申請または嘱託。
この一本の線に出来事を乗せてしまえば、「仮換地の指定は換地処分の前か後か」といった問いに迷いません。
「翌日」と「その日が終了した時」を分けて覚える
数字と時点を並べるだけだと混同するので、意味で分けます。
権利が生まれる方向の効果は、公告があった日の翌日。換地が従前の宅地とみなされる、清算金が確定する、保留地を施行者が取得する、公共施設が市町村の管理に属する。
権利が消える方向の効果は、公告があった日が終了した時。換地を定めなかった従前の宅地の権利の消滅、行使する利益がなくなった地役権の消滅。
生まれるのは翌日、消えるのは当日の終わり。こう覚えると、二つを取り違えません。なお、区画整理法の数字と時点は理屈で導けるものが少ないので、語呂に頼る前にこの意味づけを試してください。語呂の当てどころの考え方は宅建の語呂合わせにあります。
三つの土地の呼び名を区別する
問題文が読みにくいのは、似た言葉が三つ出てくるからです。従前の宅地、仮換地、換地。この三つを最初に整理しておいてください。
従前の宅地は、事業が始まる前からその人が持っていた土地です。登記記録があり、所有権が乗っている土地はこれです。仮換地は、事業の途中で暫定的に使わせてもらう土地で、使用収益の対象にはなりますが登記の対象にはなりません。換地は、事業が終わったあとに従前の宅地とみなされる土地で、最終的な権利の受け皿です。
問題文に出てくる土地がこの三つのどれかを判別できれば、聞かれているのが使用収益の話か処分の話かも自ずと決まります。読み違いの多くは、仮換地と換地を同じものとして読んでしまうことから起きます。
主語で覚える
この分野は、行為の主語を入れ替えた肢が多く作られます。誰が何をするかを、行為とセットで覚えてください。
換地計画を定めるのは施行者。換地計画を認可するのは都道府県知事。仮換地を指定するのは施行者。建築行為等を許可するのは国土交通大臣または都道府県知事等であって施行者ではない。換地処分をするのは施行者。換地処分の公告をするのは国土交通大臣または都道府県知事。登記を申請または嘱託するのは施行者。保留地を取得するのは施行者。
施行者がすることと、行政庁がすることが交互に現れます。許可と公告だけが行政庁側だと押さえると整理しやすくなります。
仮換地と換地処分を対で覚える
仮換地の指定は、使用収益だけを動かし、処分は動かしません。換地処分は、すべてを換地に確定させます。
したがって、仮換地の段階で問われたら「使用収益は仮換地、処分と登記は従前の宅地」、換地処分の段階で問われたら「すべて換地」と答えれば、大半の肢は処理できます。法令上の制限全体の暗記の組み立て方は法令上の制限の暗記法にまとめてあります。
試験での出題ポイント
仮換地の処分権を移す肢
最頻出です。「仮換地が指定されたので、仮換地について売買契約を締結した」「仮換地に抵当権の設定登記をした」といった肢は誤りです。法99条1項が動かしているのは使用と収益だけであり、処分の対象と登記の対象は従前の宅地のままです。
逆方向の引っかけもあります。「仮換地が指定されても、従前の宅地を引き続き使用することができる」という肢も誤りです。同項後段が、従前の宅地については使用し、または収益することができないと明記しています。
建築行為等の許可権者を施行者にする肢
「組合施行の場合、施行地区内で建築物を新築しようとする者は、組合の許可を受けなければならない」という肢は誤りです。許可権者は国土交通大臣または都道府県知事等であり、市の区域内で個人施行者・組合・区画整理会社が施行する場合等は当該市の長です。施行者が許可を出すことはありません。
また、この制限を届出制とする肢も誤りです。法76条1項は許可を受けなければならないと定めています。
換地処分の時期に関する肢
「換地処分は、施行地区の全部について工事が完了した後でなければすることができない」という肢は誤りです。法103条2項ただし書により、規準、規約、定款または施行規程に別段の定めがあれば、工事完了前でも換地処分ができます。
効果の発生時期をずらす肢
「換地処分の効果は、換地処分があった日から生じる」「公告があった日から生じる」といった肢は誤りです。法104条の主要な効果は公告があった日の翌日から生じます。処分の日でも、公告の日でもありません。
保留地の取得者を入れ替える肢
「保留地は換地処分の公告があった日の翌日に市町村が取得する」という肢は誤りです。取得するのは施行者です。取得の時期が翌日である点は正しいので、時期ではなく主語が入れ替えられていることに気づく必要があります。
登記の主体を入れ替える肢
「換地処分の公告があった場合、登記所が職権で必要な登記を行う」という肢は誤りです。法107条により、施行者が申請または嘱託します。また、この登記がされるまで他の登記が原則としてできない点も出題されます。
照応の原則を面積だけで判断する肢
「換地は従前の宅地と同一の地積で定めなければならない」という肢は誤りです。法89条1項が挙げているのは位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等であり、これらが照応するように定めるという規律です。地積の一致を要求してはいません。むしろ減歩がある以上、地積は通常減ります。
理解度チェッククイズ
第1問。仮換地が指定された場合、従前の宅地の所有者は、仮換地について所有権を取得するため、仮換地を目的として売買契約を締結することができる。
答えは誤り。土地区画整理法99条1項が仮換地の指定によって移すのは、使用および収益の権能だけです。所有権は従前の宅地に残ったままなので、売買契約の目的物となるのも、抵当権を設定して登記する対象となるのも従前の宅地です。仮換地はまだ確定した土地ではなく、権利者名義の登記も存在しないため、処分の対象にはできません。
第2問。土地区画整理組合が施行する土地区画整理事業の施行地区内において、事業の施行の障害となるおそれがある建築物の新築をしようとする者は、当該組合の許可を受けなければならない。
答えは誤り。法76条1項の許可権者は、国土交通大臣が施行する事業では国土交通大臣、それ以外では都道府県知事です。ただし、市の区域内において個人施行者、組合または区画整理会社が施行し、または市が施行する事業については当該市の長が許可権者となります。いずれにしても施行者である組合が許可を与えるわけではありません。なお、この制限は届出制ではなく許可制です。
第3問。換地処分は、換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事が完了した後でなければ、することができない。
答えは誤り。法103条2項本文は工事完了後に遅滞なく行うことを原則としていますが、同項ただし書により、規準、規約、定款または施行規程に別段の定めがある場合には、工事が完了する以前でも換地処分をすることができます。区域が広く工事が長期にわたる事業で、先に整備の済んだ部分の権利関係を早く確定させる必要に応えるための例外です。
第4問。換地処分の公告があった場合、換地計画において定められた保留地は、その公告があった日の翌日において施行者が取得する。
答えは正しい。法104条により、保留地は公告があった日の翌日に施行者が取得します。施行者が組合であれば組合が、市町村であれば市町村が取得します。保留地は事業費に充てるなどの目的で換地として定めない土地であり(法96条)、施行者がこれを処分して費用に充てることが想定されています。取得者を市町村に固定する肢は誤りです。
第5問。換地処分の公告があった場合、施行地区内の土地について必要となる登記は、登記所が職権で行う。
答えは誤り。法107条により、施行者が登記所に通知したうえで、換地処分による変動に係る登記を申請し、または嘱託します。登記所の職権ではありません。また、この登記がされるまでは施行地区内の土地および建物について他の登記をすることができませんが、登記の申請人が確定日付のある書類により公告前に登記原因が生じたことを証明した場合は例外とされています。
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都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。