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仲介手数料の上限|宅建業法46条と報酬告示

不動産の基礎知識 読了 約33分

仲介手数料の上限がどの条文で決まっているかを、宅建業法46条と報酬告示の文言から確認します。3%+6万円の正体、無料が適法な理由、空家等の特例まで整理します。

目次

    この記事は、実務で「仲介手数料」と呼ばれているものが法令上どう定められているのかを、条文の文言に戻って確認するものです。宅建試験の答案として報酬額の制限を体系的に押さえたい場合は報酬額の制限、計算手順をパターン別に固めたい場合は報酬額計算のパターン別攻略が本体になります。この手数料が発生する売却という一連の手続のどこに位置するのかは不動産の売却方法で、媒介契約の締結から引渡しまでを条文と対応づけて追えます。

    「仲介手数料は物件価格の3パーセント+6万円」。不動産取引の場で最もよく聞く数字ですが、この式は法令のどこにも書かれていません。書かれているのは、区分ごとの割合と、それを超えて報酬を受けてはならないという禁止規定だけです。誰が払うのかも、いつ払うのかも、法令は決めていません。

    実務の常識と条文のあいだには、こうしたずれがいくつもあります。ずれを一つずつ条文に戻して確認していくと、宅建試験で問われる論点がそのまま姿を現します。「上限であって定額ではない」「両手と片手で総額が変わる場面と変わらない場面がある」「居住用建物の借主から1か月分を取るには依頼を受けるに当たっての承諾が要る」といった論点は、いずれも実務の言い回しと条文の文言の食い違いから生まれています。以下では、その食い違いを順に潰していきます。

    なお宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されます。本記事は令和8年度に合わせ、宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)およびその施行規則、報酬告示、国土交通省の解釈・運用の考え方について、いずれも2026年4月1日時点で施行されているものを前提にしています。

    「仲介手数料」は法令用語ではない

    法令が使うのは「報酬」

    宅地建物取引業法に「仲介手数料」という言葉は出てきません。使われているのは「報酬」です。宅建業法46条1項は次のように定めています。

    宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
    ――宅地建物取引業法46条1項

    「手数料」という言い方には、事務作業の対価という語感があります。しかし法令が想定しているのは、物件の調査、価額の査定、相手方の探索、条件の調整、契約の締結までを含む媒介業務全体に対する報酬です。名前が変われば中身の見え方も変わるので、条文の言葉に合わせておくと理解がぶれません。

    「仲介」ではなく「媒介」と「代理」

    同じく「仲介」も法令用語ではありません。宅建業法が区別しているのは「媒介」と「代理」です。

    媒介は、当事者のあいだに立って契約の成立に尽力するもので、業者自身は契約の当事者にも代理人にもなりません。代理は、依頼者を代理して契約を締結するところまで行うものです。両者は報酬の枠がまったく違い、売買では代理が媒介の2倍まで、貸借では代理でも媒介と同じ枠、という非対称があります。

    日常語の「仲介」は媒介を指していることがほとんどですが、条文を読むときは必ずどちらかに割り振る必要があります。取引態様の区別そのものは取引態様の明示義務で扱っています。

    46条は四つの項からできている

    46条は1項だけではありません。四つの項が組み合わさって規制を作っています。

    1項が、報酬の額は国土交通大臣の定めるところによる、という委任規定。2項が、宅建業者は前項の額をこえて報酬を受けてはならない、という禁止規定。3項が、国土交通大臣は報酬の額を定めたときはこれを告示しなければならない、という手続規定。そして4項が、宅建業者はその事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない、という掲示義務です。

    依頼者が上限を確認できるよう、事務所への掲示まで法律が要求している点は見落とされがちです。この掲示義務は書面でなくてもよく、国土交通省の解釈・運用の考え方は、デジタルサイネージ等のICT機器を活用した掲示も、営業時間内その他公衆が必要なときに報酬の額を確認できること、そこで報酬の額を確認できる旨の表示が常時わかりやすい形でなされていることという要件を満たせば、掲示義務を果たすものと考えて差し支えないとしています。

    金額を定めているのは法律ではなく告示

    46条1項が「国土交通大臣の定めるところによる」としているので、具体的な金額は法律の外にあります。それが報酬告示です。

    正式には「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」といい、昭和45年10月23日建設省告示第1552号として定められました。最終改正は令和6年6月21日国土交通省告示第949号で、令和6年7月1日から施行されています。国土交通省が全文をPDFで公表しており、本記事の数値はすべてこの現行告示によります。

    法律が金額を書かず大臣の告示に委ねているのは、消費税率の変更や市場環境の変化に応じて機動的に改めるためです。実際、告示の附則をたどると、消費税率の変更に対応した改正が平成元年、平成9年、平成16年、平成26年、令和元年と繰り返され、そのあいだに空家等の特例が加わっています。「仲介手数料の上限は法律で決まっている」という言い方は、厳密には正確ではありません。法律が決めているのは「大臣が定める額を超えてはならない」ということだけです。

    告示の構造そのものは報酬額の制限で第一から第十一まで通して扱っています。

    「3パーセント+6万円」は告示に書かれていない

    告示が定めるのは区分計算

    売買の媒介について告示第二が定めているのは、代金の額を金額の区分に分け、それぞれに割合を乗じて得た金額を合計した金額以内、という計算方法です。区分と割合は、200万円以下の金額が100分の5.5、200万円を超え400万円以下の金額が100分の4.4、400万円を超える金額が100分の3.3です。

    つまり、3,000万円の物件なら、200万円までの部分に5.5パーセント、200万円から400万円までの200万円に4.4パーセント、400万円を超える2,600万円に3.3パーセント。これを合計するのが告示どおりの計算です。

    速算式は積み上げをまとめただけ

    区分ごとに積み上げるのは面倒なので、実務では一本の式にまとめます。それが「代金×3パーセント+6万円」です。

    なぜ6万円なのか。200万円以下の部分は本来5パーセントなのに一律3パーセントで計算してしまうので、差の2パーセント分、すなわち4万円が不足します。200万円超400万円以下の部分は本来4パーセントなのに3パーセントで計算するので、差の1パーセント分、すなわち2万円が不足します。合わせて6万円を足し戻す、という調整です。

    この式は計算上の便法であって、告示の条文ではありません。告示に書かれているのは区分計算のほうです。試験で「宅建業法の規定により、報酬の上限は代金の3パーセントに6万円を加えた額とされている」といった選択肢が出たら、その建て付け自体が誤りだと気づけるようにしておきます。

    代金が400万円以下なら速算式は使えない

    速算式が成り立つのは、代金が400万円を超えていて三つの区分がすべて埋まっている場合だけです。代金が300万円なら、200万円までの部分と200万円超の100万円の二つしか区分がありません。ここで「300万円×3パーセント+6万円」を計算すると15万円になりますが、区分計算では200万円×5パーセント+100万円×4パーセントで14万円です。答えが合いません。

    400万円以下は必ず区分計算に戻る、というのが正しい運用です。計算手順そのものは報酬額計算のパターン別攻略宅建の計算問題まとめで扱っています。

    告示の率は消費税込み、基礎は税抜き

    もう一つ、実務の言い方と告示の書き方がずれている点があります。

    一般に使われる5パーセント、4パーセント、3パーセントは税抜きの率です。ところが告示が書いているのは5.5、4.4、3.3で、これは消費税等相当額を含んだ率です。告示第二は受けることのできる報酬の額を「当該媒介に係る消費税等相当額を含む」と明記しています。

    一方、計算の基礎になる代金の額のほうは「当該売買に係る消費税等相当額を含まないものとする」とされています。基礎は税抜き、率は税込み。この向きが逆になると計算がずれます。

    したがって「上限額に別途消費税がかかる」という言い方は、告示の建て付けとしては正しくありません。告示の率で計算した金額が、すでに消費税込みの上限です。実務で「3パーセント+6万円+消費税」と表示されるのは、税抜きの率で計算したうえで消費税を上乗せしているからで、結果としては3.3パーセントで計算した額と一致します。

    上限であって、下限ではない

    46条2項の文言

    ここが実務の誤解が最も大きいところです。46条2項はこう書いています。

    宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。
    ――宅地建物取引業法46条2項

    禁じられているのは「こえて受けること」だけです。下限を定めた規定はどこにもありません。告示にも「これを下回ってはならない」という文言は一切ありません。

    したがって、仲介手数料を半額にすることも、無料にすることも、宅建業法上は適法です。値引きに応じるかどうかは業者の判断であって、法令が禁じているわけではありません。

    約款も「協議の上、定める」としている

    国土交通大臣が定める標準媒介契約約款も、この点をはっきり書いています。同約款8条2項は、報酬の額について「国土交通省告示に定める限度額の範囲内で、甲乙協議の上、定めます」としています。甲が依頼者、乙が宅建業者です。

    限度額の範囲内で協議して決めるものだ、と約款自体が明示しているわけです。上限額が自動的に約定報酬額になるのではありません。

    なお、この約款は使用が義務づけられているものではありません。宅建業法施行規則15条の9第4号は、媒介契約書の記載事項として「当該媒介契約が国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの別」を挙げています。使うかどうかは自由だが、使ったかどうかは書面に書かなければならないという建て付けです。媒介契約書の記載事項全般は媒介契約書の記載事項にまとめています。

    上限額を請求するのは慣行であって義務ではない

    実務では上限額をそのまま請求するのが一般的ですが、それは商慣行です。法令上の根拠があるわけではありません。「法律で決まっているので値引きできません」という説明は、条文に照らせば正確ではないことになります。

    「仲介手数料無料」「半額」を掲げる業者が違法かどうかも、報酬の額そのものからは判断できません。上限を超えていない以上、46条2項には触れないからです。問題になるとすれば、報酬額以外の点、たとえば広告の表示が実際と違わないか(広告に関する規制)、重要事項の説明が適切に行われているか(重要事項説明)、報酬とは別の名目で金銭を受け取っていないかといった論点です。報酬額の多寡と業務の適法性は、別の軸で判断する必要があります。

    誰が払うのかを法令は決めていない

    告示は「依頼者から受けることができる」としか書いていない

    告示第二は「依頼者から受けることのできる報酬の額」を定めています。誰が負担すべきかを命じているわけではなく、業者が誰からいくらまで受け取れるかの上限を定めているだけです。

    したがって、売主と買主のどちらがいくら負担するかは、それぞれが業者と結んだ契約で決まります。法令が配分を指定しているわけではありません。

    売買の媒介は依頼者ごとに枠が立つ

    告示第二は、報酬の額を「依頼者の一方につき」と定めています。国土交通省の解釈・運用の考え方も、この規定は依頼者のそれぞれ一方から受けることのできる限度額を定めたものであり、依頼者の双方から受ける場合と一方のみから受ける場合のいずれでも、それぞれ一方から受ける額が限度額以下でなければならない、としています。

    売主から媒介の依頼を受け、買主からも媒介の依頼を受けている場合、枠は二つ立ちます。いわゆる両手仲介で、業者は合計すると第二の額の2倍を受け取れます。売主側と買主側で別の業者がついている片手仲介なら、それぞれの業者が自分の依頼者から第二の額まで受け取れます。取引全体で動く金額は、どちらの形でも第二の額の2倍が上限で、それが1社に集まるか2社に分かれるかの違いです。

    解釈・運用の考え方は、複数の業者が一個の売買等の媒介をしたときは、その複数の業者が依頼者の一方から受領する報酬額の総額が第二の計算方法により算出した金額以内でなければならない、としています。1人の依頼者に複数の業者がついても、その依頼者が払う総額は増えません。

    代理が絡むと取引全体が縛られる

    代理の場合は構造が変わります。告示第三は、代理の報酬を第二の計算方法により算出した金額の2倍以内としたうえで、ただし書で、業者が売買の相手方からも報酬を受ける場合には、その報酬の額と代理の依頼者から受ける報酬の額の合計額が第二の額の2倍を超えてはならないと定めています。

    つまり2倍という枠は取引全体で一つです。代理の依頼者から2倍を受け取ったうえで、相手方からさらに受け取ることはできません。「代理なら2倍」だけを覚えて合計の制限を落とすと、選択肢を誤ります。

    解釈・運用の考え方は、複数の業者が一個の売買等の代理または代理および媒介をしたときも、受領する報酬額の総額が第二の額の2倍以内でなければならないとしています。さらに、売買等の当事者の双方が別々の業者に代理または媒介を依頼した場合には、双方の代理人の受ける報酬の合計が大臣の定める額を限度とするものでなければならない、とも述べています。理由として挙げられているのは、大臣が定めているのは「取引物件一件についての報酬の額」だから、という点です。

    業者を通さなければ払わなくてよいが、抜け道にはならない

    業者が関与しなければ報酬は発生しません。売主から直接買う場合、業者が自ら売主となっている物件を買う場合には、媒介も代理もないので報酬の問題が生じません。マイホーム購入の全体像は不動産売買の流れで扱っています。

    ただし、いったん媒介を依頼したうえで業者を外す、という形は別です。標準媒介契約約款11条は、専任媒介契約の有効期間内または有効期間の満了後2年以内に、依頼者が業者の紹介によって知った相手方と業者を排除して契約を締結したときは、業者は契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求することができる、と定めています。

    紹介を受けてから業者を飛ばす、というやり方は、約款に基づく媒介契約であればこの条項に引っかかります。しかも期間は契約の満了後2年間に及びます。

    賃貸の「家賃1か月分」の正体

    第四は双方合計の枠である

    貸借の媒介について、告示第四は「依頼者の双方から受けることのできる報酬の額の合計額は、借賃の一月分の1.1倍に相当する金額以内」と定めています。

    売買が「依頼者の一方につき」であるのに対し、貸借は最初から双方の合計で枠が定められています。この構造の違いが決定的です。売買では両手にすれば業者の取り分が2倍になりますが、貸借では貸主と借主の両方から受けても合計1.1倍のままです。

    内訳に規制はない、ただし居住用建物を除く

    解釈・運用の考え方は、告示第四の前段について、合計額の限度額のみを定めたものであり、貸借の媒介に関しては売買・交換の媒介と異なり、依頼者のそれぞれ一方から受ける報酬の額や割合について特段の規制はない、と明言しています。合計が限度額内であれば、双方からどのような割合で受けてもよく、一方のみから受けることもできます。

    ただし例外があります。告示第四の後段は、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の0.55倍に相当する金額以内とする、としています。

    住宅を借りるときに「仲介手数料は家賃1か月分」と言われることが多いのは、この承諾を得たうえで借主から1か月分を受け取っているからです。承諾がなければ0.55倍、つまり半月分が上限です。

    「専ら」居住の用に供する建物

    後段の制限がかかる範囲には限定があります。解釈・運用の考え方は、「居住の用に供する建物」とは専ら居住の用に供する建物を指し、居住の用に供する建物で事務所、店舗その他居住以外の用途を兼ねるものは含まれない、としています。

    住居兼事務所として使う物件の賃貸借の媒介であれば、後段の0.55倍の制限はかかりません。双方合計1.1倍の枠の中で、どちらからいくら受けるかは自由です。「居住用だから半月分」と機械的に当てはめると誤ります。

    承諾は「依頼を受けるに当たって」

    承諾の時期は条文の文言そのものが画しています。「当該媒介の依頼を受けるに当たって」承諾を得ている場合、と書かれているので、媒介の依頼を受ける段階で得ていなければなりません。

    解釈・運用の考え方も、この依頼者の承諾は業者が媒介の依頼を受けるに当たって得ておくことが必要であり、依頼後に承諾を得ても後段に規定する承諾とはいえず、後段の規制を受ける、と念を押しています。契約が成立してから「1か月分でよろしいですね」と確認しても、0.55倍を超えて受け取る根拠にはなりません。

    承諾の内容についても説明があります。解釈・運用の考え方は、これを「借賃の1月分の0.55倍に相当する金額以上の報酬を受けることについての承諾」を得ている場合を指す、としています。単に媒介を依頼するという承諾ではなく、報酬額についての承諾です。賃貸仲介の実務は不動産賃貸の仲介業務で扱っています。

    貸借の代理も1.1倍

    告示第五は、貸借の代理について、依頼者から受けることのできる報酬の額を借賃の一月分の1.1倍に相当する金額以内としています。ただし書により、相手方からも報酬を受ける場合は合計額も1.1倍を超えてはなりません。

    売買は媒介が一方につき、代理が2倍。貸借は媒介が双方合計、代理も同じ1.1倍。代理にしても枠が広がらないのが貸借の特徴です。

    管理費・共益費は借賃ではない

    告示が基礎としているのは「借賃」です。管理費や共益費は建物の共用部分の維持管理に充てられる費用であって、目的物の使用収益の対価そのものではありません。したがって、報酬の計算基礎となる借賃には含まれないことになります。

    なお借賃からも消費税等相当額を含まないものとされ、媒介が使用貸借に係るものである場合には「通常の借賃」によるとされています。解釈・運用の考え方は、この通常の借賃を、当該宅地建物が賃貸借される場合に通常定められる適正かつ客観的な賃料を指すものとし、その算定に当たっては必要に応じて不動産鑑定業者の鑑定評価を求めることとする、としています。

    定期建物賃貸借の再契約にも告示が適用される

    見落とされやすい論点です。解釈・運用の考え方は、定期建物賃貸借の再契約に関して業者が受けることのできる報酬についても、新規の契約と同様に報酬告示の規定が適用される、としています。

    定期建物賃貸借は期間の満了で確定的に終了し、続けるには再契約が必要です(定期借家契約)。その再契約も新規契約と同じ扱いになるので、報酬の枠は改めて立ちます。更新であれば報酬の問題は生じませんが、再契約は別だ、という区別です。

    権利金がある場合の特例

    告示第六は、宅地または建物(居住の用に供する建物を除く)の賃貸借で権利金の授受があるものの代理または媒介について、第四または第五にかかわらず、権利金の額を売買に係る代金の額とみなして第二または第三の規定によることができる、と定めています。

    権利金とは、告示の定義によれば、名義のいかんを問わず権利設定の対価として支払われる金銭であって返還されないものをいいます。解釈・運用の考え方は、いわゆる権利金、礼金等、賃貸借契約終了時に賃貸人から賃借人に返還されない金銭はこれに該当するが、いわゆる敷金等、返還される金銭は該当しない、としています。敷金と礼金の性質の違いは敷金・礼金・仲介手数料で扱っています。

    事業用建物の賃貸借で高額の権利金が動く場合、借賃1か月分では業務量に見合わないことがあります。そこで売買の枠に乗り換えられるようにしたのがこの特例です。「よることができる」なので、高いほうを選べます。

    適用されないのが居住用建物です。解釈・運用の考え方も、この規定は居住の用に供する建物の賃貸借の代理または媒介に関して依頼者から受ける報酬の額については適用されない、と明示しています。住宅の礼金がいくら高くても、報酬の枠は借賃1か月分のままです。

    空家等の二つの特例

    令和6年7月1日施行の現行告示で最も内容が動いたのがここです。改正前の教材には古い数字が残っているので、注意が必要です。

    低廉な空家等の売買・交換の媒介

    告示第七は、低廉な空家等の売買または交換の媒介について、業者は第二の規定にかかわらず、当該媒介に要する費用を勘案して第二の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受けることができるとし、この場合において依頼者から受ける報酬の額は30万円の1.1倍に相当する金額を超えてはならない、としています。

    低廉な空家等とは、売買に係る代金の額または交換に係る宅地建物の価額が800万円以下のものをいいます。

    改正前は400万円以下・18万円という水準でしたが、令和6年の改正で800万円以下・30万円に引き上げられました。400万円と18万円という数字が書かれている解説は、現行告示の内容ではありません。

    条文の書きぶりで確認すべき点が二つあります。第一に、「依頼者から」であって売主に限定されていません。第二に、上限は30万円の1.1倍、すなわち33万円です。

    「低廉な空家等」は空家でなくてよい

    名称から誤解されやすいのですが、この特例に空家であることの要件はありません。解釈・運用の考え方は、「低廉な空家等」とは代金の額または価額が800万円以下の金額の宅地または建物をいい、当該宅地又は建物の使用の状態を問わない、としています。

    居住中の中古住宅でも、代金が800万円以下であれば低廉な空家等に当たります。判定基準は金額だけです。

    「費用を勘案して」が意味すること

    第七は「当該媒介に要する費用を勘案して」と条件を付しています。800万円以下でありさえすれば自動的に33万円を受けられる規定ではありません。

    解釈・運用の考え方は、「当該媒介に要する費用」とは人件費等を含むものであり、「費用を勘案して」とは、報酬額の算出に当たって取引の態様や難易度等に応じて当該媒介業務に要すると見込まれる費用の水準や多寡を考慮することを求めるものであって、当該費用に相当する金額を上回る報酬を受けることを禁ずる趣旨のものではない、としています。

    実費の積み上げを求めているのではなく、費用の水準を考慮したうえで額を決めよ、という趣旨です。

    あらかじめ説明し合意する必要がある

    さらに重要な手続要件があります。解釈・運用の考え方は、この規定に基づき第二の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受ける場合には、媒介契約の締結に際しあらかじめ、この規定に定める上限の範囲内で報酬額について依頼者に対して説明し、合意する必要があることに特に留意すること、としています。

    事後に増額を通告することはできません。媒介契約を結ぶ時点で説明と合意が要ります。代理についての告示第八でも、代理契約の締結に際してあらかじめ説明し合意する必要があるとされています。媒介契約の締結手続そのものは媒介契約の種類と規制で扱っています。

    なお告示第八は、低廉な空家等の売買・交換の代理について、依頼者から受けることのできる報酬の額を第七により算出した金額の2倍以内としています。相手方からも受ける場合の合計額も同じく2倍が上限です。代理は媒介と同額ではなく、2倍の枠が立ちます。

    長期の空家等の貸借

    告示第九・第十は令和6年の改正で新設された、貸借についての特例です。

    第九は、長期の空家等の貸借の媒介について、依頼者の双方から受ける報酬の合計額を、第四にかかわらず、借賃の一月分の2.2倍に相当する金額を超えない範囲内とすることができるとしています。ただし条件があり、借主である依頼者から受ける報酬の額が借賃の一月分の1.1倍(居住の用に供する長期の空家等にあっては、媒介の依頼を受けるに当たって借主の承諾を得ている場合を除き0.55倍)に相当する金額以内である場合に限られます。

    借主側の負担は通常の枠のまま据え置き、増える分は貸主側が負担するという設計です。解釈・運用の考え方も、この規定に基づき通常の上限を超えて受けることのできる報酬は、長期の空家等の貸主である依頼者から受けるものに限られる、と述べています。

    第十が代理についての特例で、こちらも借賃の一月分の2.2倍が上限です。

    「長期の空家等」の判定

    長期の空家等とは、告示の定義によれば、現に長期間にわたって居住の用、事業の用その他の用途に供されておらず、または将来にわたりこれらの用途に供される見込みがない宅地または建物をいいます。

    解釈・運用の考え方はさらに具体的です。判定の時点は、業者が貸主である依頼者から媒介の依頼を受ける時点。前者の例として、少なくとも1年を超えるような期間にわたり居住者が不在となっている戸建の空き家や分譲マンションの空き室。後者の例として、相続等により利用されなくなった直後の戸建の空き家や分譲マンションの空き室であって今後も所有者等による利用が見込まれないもの。

    そして、入居者の募集を行っている賃貸集合住宅の空き室については、事業の用に供されているものと解されることから、長期の空家等には該当しないとされています。空室であれば何でもよいわけではありません。この特例についても、媒介契約の締結に際してあらかじめ説明し合意することが求められています。

    報酬以外に受け取れるもの

    告示第十一が認めているのは広告料金だけ

    告示第十一①は、業者は売買、交換または貸借の代理または媒介に関し、第二から第十までの規定によるほか報酬を受けることができない、としたうえで、ただし書で「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額については、この限りでない」としています。

    告示が認めている例外はこれ一つです。解釈・運用の考え方も、第二から第十までの規定による報酬および依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額以外に、いわゆる案内料、申込料や依頼者の依頼によらずに行う広告の料金に相当する額の報酬を受領することはできない、としています。

    業者が自らの判断で行う通常の広告の費用は報酬に含まれます。別途請求はできません。

    特別の依頼による実費は、事前の承諾があれば別

    もう一つ、告示本文ではなく解釈・運用の考え方が認めている類型があります。

    解釈・運用の考え方は、第十一の規定には、業者が依頼者の特別の依頼により行う遠隔地における現地調査や空家の特別な調査等に要する実費の費用に相当する額の金銭を依頼者から提供された場合にこれを受領すること等、依頼者の特別の依頼により支出を要する特別の費用に相当する額の金銭で、その負担について事前に依頼者の承諾があるものを別途受領することまでも禁止する趣旨は含まれていない、としています。

    要件は「特別の依頼」であることと「事前の承諾」があることです。標準媒介契約約款10条も、依頼者が特別に依頼した広告の料金または遠隔地への出張旅費は依頼者の負担とし、依頼者は業者の請求に基づいてその実費を支払わなければならない、と定めています。

    媒介業務以外の関連業務は別の話

    「コンサルティング料は一律に違法」と説明されることがありますが、正確ではありません。

    解釈・運用の考え方は、業者が空き家・空き室等の所有者等のニーズに対応して行う業務やいわゆる不動産コンサルティング業務など、媒介以外の関連業務を行う場合には、媒介業務に係る報酬とは別に当該関連業務に係る報酬を受けることができる、としています。ただし条件があり、媒介業務との区分を明確化するため、あらかじめ契約内容を十分に説明して依頼者の理解を得たうえで、媒介契約とは別に、業務内容・報酬額等を明らかにした書面等により契約を締結し、成果物がある場合には書面で交付等することが求められます。

    そのうえで、こうして媒介契約とは別に締結した契約に基づいて報酬を受けることは46条2項の報酬の制限に違反しない、と明示されています。

    違法になるのは、媒介業務の対価を別名目で上乗せする場合です。実質は媒介業務なのに「コンサルティング料」「事務手数料」と呼び替えて上限を超えるのは、名目を変えただけの超過受領です。区分が明確で、別の契約に基づく別の業務であれば、話が変わります。

    価額査定の費用は請求できない

    関連して、解釈・運用の考え方は、媒介価額について意見を述べる際の根拠の明示(宅建業法34条の2第2項)は法律上の義務であるので、そのために行った価額の査定等に要した費用は依頼者に請求できない、としています。法律上の義務として行うことの費用は、報酬の中に含まれているという整理です。

    消費税をめぐる二つの論点

    告示は課税事業者を前提にしている

    告示第二は、適用対象を「宅地建物取引業者(課税事業者である場合に限る)」と限定しています。第三から第五まで、第七から第十まで、第十一①も同じです。告示の本則は課税事業者を前提に組まれています。

    免税事業者については第十一②が別に定めます。受けることのできる報酬の額は、第二から第十までの規定に準じて算出した額に110分の100を乗じて得た額、当該代理または媒介における仕入れに係る消費税等相当額、および①ただし書の額を合計した金額以内とする、というものです。

    110分の100を乗じるのは、告示の率が消費税等相当額を含んだ数値だからです。いったん税抜きの水準に戻したうえで、自らが仕入れの段階で負担した消費税相当額を加算します。

    ここで解釈・運用の考え方が具体的な限度を示しています。仕入れに係る消費税等相当額は、税抜金額の0.04倍を限度とする。そして、当該転嫁される金額は報酬額の一部となるものであって、この金額を消費税および地方消費税として別途受け取るものではない、とも述べています。

    土地には消費税がかからない

    計算の基礎になる代金の額は税抜きですが、そもそも土地の譲渡には消費税が課されません。課税されるのは建物の部分です。

    したがって、土地付き建物の売買で「代金5,500万円(うち建物にかかる消費税200万円)」と提示されたら、まず消費税200万円を除いて5,300万円に直してから区分計算に入ります。税込みの金額をそのまま基礎にすると上限を過大に計算してしまいます。この処理の手順は報酬額計算のパターン別攻略で詳しく扱っています。

    いつ払うのか、契約が壊れたらどうなるのか

    法令は受領の時期を定めていない

    意外に思われますが、46条にも告示にも、報酬をいつ受け取れるかについての定めはありません。定めているのは額だけです。

    では実務の「契約時に半分、決済時に半分」はどこから来ているのか。これは商慣行であって、法令の規定ではありません。根拠があるとすれば、当事者間の媒介契約の定めです。

    標準媒介契約約款が定めていること

    標準媒介契約約款は、報酬の請求と受領について具体的な規定を置いています。

    8条1項は、業者の媒介によって目的物件の売買または交換の契約が成立したときは、業者は依頼者に対して報酬を請求することができる、としています。ただし、売買または交換の契約が停止条件付契約として成立したときは、その条件が成就した場合にのみ請求できます。契約が成立しなければ報酬は発生しないという成功報酬の原則は、法令ではなくこの条項から出ています。

    9条1項は受領の時期です。業者は、宅建業法37条に定める書面を作成し、これを成立した契約の当事者に交付した後でなければ、約定報酬を受領することができない、としています。37条書面の交付が先、報酬の受領が後、という順序です(37条書面の記載事項)。

    9条2項は、いわゆるローン特約が働いた場合です。代金についての融資の不成立を解除条件として契約が締結された後に融資の不成立が確定した場合、または融資が不成立のときは依頼者が契約を解除できるものとして締結された後に融資の不成立が確定しこれを理由として解除した場合は、業者は受領した約定報酬の全額を遅滞なく返還しなければなりません。ただし利息は付さないとされています。

    契約が成立しなくても払う場面がある

    成功報酬が原則とはいえ、約款は三つの例外を置いています。

    一つ目が11条の直接取引です。前述のとおり、専任媒介契約の有効期間内または満了後2年以内に、依頼者が業者の紹介によって知った相手方と業者を排除して契約を締結したときは、業者は契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求できます。

    二つ目が12条の違約金です。依頼者は専任媒介契約の有効期間内に他の業者に媒介または代理を依頼することができず、これに違反して契約を成立させたときは、業者は約定報酬額に相当する金額(消費税額および地方消費税額に相当する額を除く)の違約金の支払を請求できます。

    三つ目が14条の費用償還です。専任媒介契約の有効期間内において、依頼者が自ら発見した相手方と契約を締結したとき、または業者の責めに帰すことができない事由によって専任媒介契約が解除されたときは、業者は媒介契約の履行のために要した費用の償還を請求できます。ただし2項により、その額は約定報酬額を超えることはできません。

    いずれも専任媒介契約についての規定である点に注意してください。一般媒介契約では扱いが違います。媒介契約の三類型は媒介契約の種類と規制、指定流通機構への登録義務はレインズとはで扱っています。

    貸借の媒介には媒介契約書の交付義務がない

    もう一点、条文の適用範囲の話です。宅建業法34条の2は「宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約」を締結したときの書面交付義務を定めており、34条の3がこれを代理契約に準用しています。貸借の媒介・代理は対象外です。

    したがって、賃貸の仲介では媒介契約書の作成・交付が法律上義務づけられていません。標準媒介契約約款も売買・交換を前提にした内容です。賃貸で報酬の取り決めが曖昧になりやすいのは、この構造的な事情があります。

    上限を超えたらどうなるか

    受領と要求は別の違反

    46条2項が禁じているのは「受けること」です。これとは別に、47条2号が「不当に高額の報酬を要求する行為」を禁じています。要求した時点で違反が成立し、実際に受け取ったかどうかを問いません。

    法定刑は要求のほうが重く設定されています。46条2項に違反して超過受領した場合は、82条2号により100万円以下の罰金です。これに対し、47条2号に違反して不当に高額の報酬を要求した場合は、80条により1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処し、またはこれを併科するとされています。

    受け取ったほうが軽く、要求しただけのほうが重い。この逆転が試験で問われます。理由としては、要求という行為そのものが依頼者に圧力を与え、取引の公正を害する度合いが大きいと評価されているためと理解できます。罰則の一覧は宅建業法の罰則にまとめています。

    監督処分も別に用意されている

    刑事罰とは別に、行政上の監督処分があります。宅建業法65条2項2号は、46条2項および47条の規定に違反したときを業務停止処分の事由として挙げています。1年以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止を命ずることができるとされています。監督処分の仕組みは監督処分の種類で扱っています。

    掲示義務違反にも罰則がある

    46条4項の報酬額の掲示義務にも罰則があります。83条2号は、37条、46条4項、48条1項または50条1項の規定に違反した者を50万円以下の罰金に処するとしています。事務所に報酬額を掲示していなければ、それだけで罰則の対象です。

    試験での出題ポイント

    上限か定額かの取り違え

    「宅建業者は告示に定める額の報酬を受けなければならない」「告示に定める額を下回る報酬を受けることはできない」といった選択肢は誤りです。46条2項が禁じているのは超えて受けることだけで、下限の定めはありません。

    依頼者ごとか双方合計か

    売買・交換の媒介は「依頼者の一方につき」、貸借の媒介は「依頼者の双方から受ける合計額」。この軸を入れ替えた選択肢が作られます。売買で「双方から受ける合計額が第二の額以内」とするのも、貸借で「一方から借賃の1.1倍まで受けられる」とするのも誤りです。

    代理の枠

    売買の代理は媒介の2倍ですが、相手方からも受ける場合は合計で2倍が上限です。「代理の依頼者から2倍を受け、さらに相手方から媒介の報酬を受けられる」は誤りです。貸借では代理でも1.1倍のままで、2倍にはなりません。

    居住用建物の承諾

    「契約成立後に借主の承諾を得たので借賃の1か月分を受領した」は誤りです。承諾は媒介の依頼を受けるに当たって得ていなければなりません。また「居住用建物」は専ら居住の用に供するものを指し、事務所や店舗を兼ねるものは含まれない点も問われます。

    空家等の特例の数字と要件

    低廉な空家等は800万円以下・30万円の1.1倍、代理はその2倍。長期の空家等は借賃の2.2倍。改正前の400万円・18万円という数字に置き換えた選択肢や、媒介と代理を同額とする選択肢が作られます。「800万円以下でありさえすれば常に33万円まで受けられる」も、「費用を勘案して」という要件を落としている点で誤りです。

    低廉な空家等について「空家であること」を要件とする選択肢も誤りです。使用の状態は問いません。

    報酬以外に受け取れるもの

    告示が認めているのは依頼者の依頼によって行う広告の料金だけです。案内料や申込料は受け取れません。業者の判断で行った通常の広告の費用を別途請求することもできません。一方、依頼者の特別の依頼による遠隔地の現地調査等の実費で事前の承諾があるものは、解釈・運用の考え方により別途受領が認められています。この二段構えを混同させる出題があります。

    権利金の特例の対象

    権利金の特例は居住用建物には適用されません。また権利金には返還されない礼金が含まれ、返還される敷金は含まれません。

    覚え方・整理の仕方

    実務の言葉を条文の言葉に置き換える

    この分野の誤りは、ほとんどが実務用語のまま考えることから生まれます。頭の中で機械的に置き換える癖をつけると精度が上がります。

    「仲介手数料」は「報酬」。「仲介」は「媒介」か「代理」のどちらか。「3パーセント+6万円」は「告示第二の区分計算」。「上限額」は「これを超えて受けてはならない額」であって定額ではない。「家賃1か月分」は「借賃の一月分の1.1倍で、双方合計の枠」。

    軸は二つだけ

    告示の枠の立ち方は、突き詰めると二つの軸で決まります。

    第一の軸が、依頼者ごとに立つのか、取引全体で一つなのか。売買・交換の媒介は依頼者ごと。貸借の媒介は取引全体。代理はいずれも取引全体で縛られます。

    第二の軸が、基礎になる金額は何か。売買・交換は代金の額または価額、貸借は借賃の一月分、権利金の特例では権利金の額。

    この二つを問題文から先に読み取れば、あとは数字を当てはめるだけになります。

    数字は対で覚える

    売買・交換の媒介が5.5・4.4・3.3で、代理はその2倍の11・8.8・6.6。貸借の媒介の双方合計が1.1倍で、居住用建物の一方からが0.55倍。低廉な空家等が800万円以下で30万円の1.1倍、代理はその2倍。長期の空家等が2.2倍。

    単独で覚えるより、原則と特例、媒介と代理を対にして覚えるほうが定着します。

    三つの「あらかじめ」を区別する

    告示と解釈・運用の考え方には、時期を画する要件が三つ出てきます。

    居住用建物の賃貸借で借賃の0.55倍を超えて一方から受けるための承諾は、媒介の依頼を受けるに当たって。低廉な空家等・長期の空家等の特例で通常の上限を超えて受けるための説明と合意は、媒介契約の締結に際してあらかじめ。特別の依頼による実費を別途受領するための承諾は、事前に。

    いずれも「後から」では足りません。時期の要件が付いていることをまとめて覚えておくと、事後の同意で足りるとする選択肢に反応できます。

    「払わなくてよい場面」を三つで押さえる

    消費者目線の疑問に答える形で整理すると、報酬が発生しないのは、業者が関与しない直接取引、業者が自ら売主となる取引、そして媒介契約が成立していても取引が成立しなかった場合です。

    ただし三つ目には、標準媒介契約約款による例外が三つあります。紹介を受けた相手方と業者を排除して契約した場合の寄与割合に応じた報酬、専任媒介契約に違反して他の業者で成約した場合の違約金、自ら発見した相手方と契約した場合等の費用償還です。「成立しなければ払わない」は原則であって、絶対ではありません。

    学習上の位置づけ

    報酬額の制限は宅建業法の分野でほぼ毎年1問出題される頻出テーマです。計算問題として出ることが多いので、条文の理解と計算の手順を分けて仕上げるのが効率的です。本記事で条文の建て付けを押さえたら、報酬額の制限で告示の全体構造を、報酬額計算のパターン別攻略で解答手順を固めてください。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 宅建業者は、報酬告示に定める額を下回る報酬を受けることはできない。

    答えを見る **× 誤り。** 宅建業法46条2項が禁じているのは「前項の額をこえて報酬を受けてはならない」ことだけで、下限を定めた規定はありません。標準媒介契約約款8条2項も、報酬の額は告示に定める限度額の範囲内で依頼者と業者が協議のうえ定めるとしています。値引きも無料も、宅建業法上は適法です。

    Q2. 宅建業者が居住用建物の賃貸借の媒介を行い、契約成立後に借主から承諾を得たうえで、借主から借賃の1か月分の1.1倍に相当する額の報酬を受領した。これは適法である。

    答えを見る **× 誤り。** 報酬告示第四後段は、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額を、「当該媒介の依頼を受けるに当たって」当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の0.55倍以内としています。国土交通省の解釈・運用の考え方も、依頼後に承諾を得ても後段に規定する承諾とはいえないと明示しています。承諾の時期が要件です。

    Q3. 代金700万円の中古住宅(現に売主が居住中)の売買の媒介について、報酬告示第七の低廉な空家等の特例を適用する余地はない。

    答えを見る **× 誤り。** 低廉な空家等とは、売買に係る代金の額が800万円以下の宅地または建物をいい、国土交通省の解釈・運用の考え方は「当該宅地又は建物の使用の状態を問わない」としています。居住中でも代金が800万円以下なら該当します。ただし適用には、媒介に要する費用を勘案することと、媒介契約の締結に際しあらかじめ報酬額について説明し合意することが必要で、上限は30万円の1.1倍です。

    Q4. 宅建業者が売買の媒介を行うにあたり、依頼者の依頼によらずに自らの判断で行った広告の料金を、報酬とは別に依頼者に請求することができる。

    答えを見る **× 誤り。** 報酬告示第十一①ただし書が認めているのは「依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額」だけです。解釈・運用の考え方も、依頼者の依頼によらずに行う広告の料金に相当する額の報酬を受領することはできないとしています。業者の判断で行う通常の広告の費用は報酬に含まれます。

    Q5. 宅建業者が不当に高額の報酬を要求したが、依頼者が支払わなかったため実際には受領しなかった場合、宅建業法上の違反にはならない。

    答えを見る **× 誤り。** 宅建業法47条2号は「不当に高額の報酬を要求する行為」自体を禁じており、受領の有無を問いません。しかも法定刑は超過受領より重く、80条により1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処し、または併科するとされています。これに対し46条2項違反の超過受領は82条2号により100万円以下の罰金です。要求のほうが重い、という関係を押さえてください。

    まとめ

    「仲介手数料」という言葉は法令に存在しません。宅建業法46条1項が「報酬」の額を国土交通大臣の定めるところによるとし、2項がその額を超えて受けることを禁じ、3項が告示を要求し、4項が事務所への掲示を義務づけています。金額を定めているのは昭和45年建設省告示第1552号(最終改正 令和6年6月21日国土交通省告示第949号、令和6年7月1日施行)です。

    よく使われる「3パーセント+6万円」は告示の条文ではなく、区分計算をまとめた便法です。告示が定めているのは200万円以下が5.5パーセント、200万円超400万円以下が4.4パーセント、400万円超が3.3パーセントという区分で、この率は消費税込み、基礎となる代金は税抜きです。

    46条2項は上限だけを定めており、下限はありません。半額も無料も宅建業法上は適法で、標準媒介契約約款も限度額の範囲内で協議して定めるとしています。誰が負担するかも法令は決めていません。売買の媒介は依頼者ごとに枠が立ち、貸借の媒介は双方合計で借賃の1.1倍、居住用建物では依頼を受けるに当たっての承諾がなければ一方から0.55倍までです。

    空家等の特例は令和6年に大きく変わりました。低廉な空家等は800万円以下で30万円の1.1倍、代理はその2倍。長期の空家等の貸借は借賃の2.2倍で、増える分は貸主負担です。いずれも費用を勘案することと、契約締結に際してあらかじめ説明し合意することが要件です。

    報酬以外に受け取れるのは、告示上は依頼者の依頼によって行う広告の料金だけ。特別の依頼による実費は事前の承諾を条件に別途受領が認められ、媒介以外の関連業務は媒介契約とは別に書面で契約すれば別の報酬を受けられます。上限を超えて受ければ100万円以下の罰金、不当に高額の報酬を要求すればより重い罰則が科されます。

    報酬額の計算は、アプリの宅建業法の分野別演習で繰り返し確認できます。

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