宅建の合格点の推移と令和8年度の見通し
令和8年度の宅建試験について、2026年8月末時点で確定している一次情報と未確定の事項を切り分け、過去10年の合格基準点33〜38点の読み方を機構の公表値だけで整理します。
目次
この記事は、宅地建物取引士資格試験の合格基準点について、令和8年度(2026年度)を語るときに何が言えて何が言えないのかを線引きするためのものです。数値の出所は一般財団法人不動産適正取引推進機構(以下、機構)の公表資料と、法令の条文に限ります。制度の根拠として引くのは主として宅地建物取引業法および同法施行規則で、出題範囲の話をする節でのみ、範囲に入る改正法令の題名と施行日を挙げます。試験制度そのものの輪郭は宅建試験とはに、令和8年度の日程・手数料・会場といった確定情報は令和8年度の宅建試験日程にまとめてあるので、この記事はそこから一歩踏み込んで「合格点という数値がいつ、どうやって世の中に現れるか」だけを扱います。
先に、この記事が使う「見通し」という語の意味を定義します。ここでいう見通しは予測ではありません。令和8年度について確定している一次情報を棚卸しし、まだ存在しない情報の輪郭を描くこと、その二つだけを指します。したがってこの記事には「令和8年度は◯点前後になる見込み」という類の文は一切出てきません。予備校各社が試験直後に出す合格ライン予想も、材料から明示的に外します。理由は単純で、この記事の方針が機構の公表値と条文だけで組み立てることだからです。予想点そのものの読み方が必要な人は宅建の合格ラインの推移が扱っているので、そちらへ進んでください。
以下では、令和8年度の確定・未確定の仕分けから始め、機構が使う公表用語、合格点が確定するまでの工程、過去10年の幅、同じ点数だった年度どうしの対照、令和8年度の受験条件、出題範囲の基準日、自分で確認する手順、使ってはいけない数字の型、という順で進みます。
令和8年度について、いま確定していること・していないこと
この節を書いている時点は2026年8月31日です。時点を明示するのは、合格点という話題では「いつの時点の話か」が中身そのものを決めるからです。同じ問いに対する答えが、8月と10月と11月で違います。
確定している四つ
第一に、試験日は令和8年10月18日(日)です。試験時間は13時00分から15時00分までの2時間、登録講習修了者は13時10分から15時00分までの1時間50分。これは令和8年6月5日の官報公告で確定しています。
第二に、合格発表は令和8年11月25日(水)9時30分です。試験日から数えて38日後にあたります。
第三に、申込者数の速報値は307,254人です。機構が令和8年8月25日に公表した「令和8年度宅地建物取引士資格試験 受付状況【速報値】」によるもので、内訳は一般受験者249,092人、登録講習修了者58,162人。受付区分別ではインターネット受付293,193人、郵送受付14,061人です。前年度の申込者306,099人と比べて1,155人増、率にして0.4%増にあたります。
第四に、出題の対象となる法令は令和8年4月1日現在施行のものです。これは毎年の試験案内で明示される条件で、令和8年度についても同じ形で公表されています。
確定しているのはこの四つです。日付が二つ、人数が一つ、法令の基準日が一つ。これ以上でも以下でもありません。
存在していない四つ
一方で、次の四つはこの時点で世界のどこにも存在しません。
受験者数。合格者数。合格率。合格判定基準(合格点)。
「まだ公表されていない」ではなく「まだ存在していない」と書いたのは、この四つが試験が実施されて採点が終わるまで、原理的に確定しようがない量だからです。受験者数は10月18日に会場へ来た人の数なので、10月18日より前には決まりません。合格者数と合格率と合格点は、受験者全員の答案を採点して得点分布が出たあとに決まります。したがって8月31日時点で「今年の合格点は◯点」と数値を出す文章は、公表の遅れを埋めているのではなく、存在しない数値を作っています。
この区別は、申込者数と受験者数の関係を見るとはっきりします。令和7年度は申込者306,099人に対して受験者245,462人でした。差し引き60,637人が申し込んだうえで受験していません。申込者数が分かっていても受験者数は分からないという関係が、令和8年度についてもそのまま成立します。307,254人という速報値から言えるのは申込の規模だけです。
この記事が採らない書き方
以上から、この記事では次の三つをしません。
ひとつめ、予備校その他の合格ライン予想を材料に使いません。試験直後に各社が出す予想点は、自己採点を任意で送った人の集計に基づくもので、機構の公表物ではありません。予想という行為の限界そのものについては宅建の合格ラインの推移に節があるので、必要ならそちらを読んでください。この記事はそこへ立ち入らず、公表工程の記述に徹します。
ふたつめ、「例年どおりなら」「相対評価なので大きくは動かない」といった言い方で数値を示しません。合格点が受験者の得点分布に応じて決まる仕組みであることは事実ですが、そこから令和8年度の具体的な点数は出てきません。仕組みの説明は宅建の合格ラインの推移と宅建の合格率の推移に委ねます。
みっつめ、平均や中央値といった加工値を令和8年度の推定に使いません。10年分の代表値を出すこと自体は可能で、実際に宅建の合格率の推移が算出していますが、それは過去の記述であって将来の推定ではありません。この記事では代表値を推定の材料として扱わない、という用途の限定をかけます。
試験日から逆算して残りの期間をどう使うかは宅建の試験日から逆算する年間スケジュールが扱っています。この記事は数値の性質だけを扱う場所です。
機構は「合格点」を何という名前で、どの資料に載せているか
合格点をめぐる議論が噛み合わない原因のひとつは、用語です。同じ数値が、公表物によって別の名前と別の単位で書かれています。
同じ数値に三つの呼び名がある
まず、合格発表当日に機構のサイトへ掲示される合格発表のページでは、この数値は「合否判定基準」という名前で、合格者の受験番号や正解番号と並べて示されます。
次に、機構が合格発表と同日に出す「宅地建物取引士資格試験結果の概要」では、同じ数値が「合格判定基準」という名前になります。しかも単位が点ではありません。令和7年度であれば「50問中33問以上正解した者(登録講習修了者は45問中28問以上正解した者)」という問数の表記です。
そして、機構が別に公表している「試験実施概況(令和7年度以前10年間)」では、同じ数値が「合格基準点」という名前で、「33点」という点数の表記で載っています。
呼び名が三つ、単位が二つ。「合否」なのか「合格」なのか、「問以上」なのか「点」なのかは、どの公表物を見ているかで決まります。ここを揃えずに引くと、たとえば令和6年度を「37点」、令和7年度を「33問以上」と、単位の違う数値を同じ行に並べる書き方が生まれます。これは誤りというより出所が違うものを並べた結果で、三つの表記はいずれも機構の公表物に実在します。逆に言えば、ある記述がどの用語を使っているかを見れば、書き手がどの資料を見て書いたかがおおよそ推定できます。この記事では、公表物を特定して述べるときはその公表物の用語を使い、一般論として述べるときは「合格基準点」に寄せます。
実施概況は10年ローリングであることの帰結
「試験実施概況」は、直近10年分だけを載せた資料です。毎年更新され、10年より前の年度は落ちていきます。令和7年度時点の版が扱っているのは平成28年度から令和7年度までで、それより前の年度は同じ形では取得できません。
この性質から、二つのことが導けます。ひとつは、10年より前の合格点を引用している記述は、この資料からは出てこないということ。もうひとつは、令和8年度の合格発表後に実施概況が更新されると、平成28年度が落ちて令和8年度が入るということです。過去10年という言葉が指す範囲は、毎年ずれます。
なお、令和2年度と令和3年度は10月試験と12月試験の2回に分かれて実施されたため、10年度分の資料に12件のデータが載っています。年度の数と件数が一致しない点は、数を数えるときに効いてきます。
属性別の内訳は機関誌に載る
年代別・職業別といった受験者の属性データは、合格発表と同日の「結果の概要」には出てきません。機構の機関誌「RETIO」の冬号に掲載されるのが通例です。つまり同じ年度の数値でも、公表時期が資料によってずれます。属性データそのものの中身は宅建試験の受験者データが扱っています。
合格点の公表は法令上の義務ではない
ここは押さえておく価値があります。宅建業法施行規則11条1項は、都道府県知事に対して「その行つた試験に合格した者の受験番号を公告し、当該合格者に合格証書を交付しなければならない」と定めています。公告が義務づけられているのは受験番号であって、合格基準点ではありません。
さらに、指定試験機関が委任都道府県知事に提出する報告書の記載事項も、施行規則13条の11第1項が列挙しています。試験年月日、試験地、受験申込者数、受験者数、合格者数、合格公告日の六つです。ここにも合格基準点は入っていません。同条2項で添付が求められるのは合格者一覧表です。
また、施行規則13条の10が定める指定試験機関の帳簿の記載事項は、委任都道府県知事、試験年月日、試験地、受験者の受験番号・氏名・生年月日・合否の別、合格公告日であり、やはり基準点も得点分布も現れません。
つまり、機構が合格判定基準や正解番号を公表しているのは、法令が命じているからではなく、機構がそういう運用をしているからです。この事実は次の二つに効きます。第一に、公表される項目の範囲は法令から演繹できないので、「本来なら公表されるはずの得点分布が隠されている」という言い方は成り立ちません。第二に、公表の時期と粒度は運用に依存するので、過去の運用を根拠に将来の公表内容を断定することもできません。得点分布や科目別の平均点が公表されていないのは、そもそも公表対象に入っていないという、それだけの話です。
合格点が確定するまでの工程を、時点で追う
10月18日から11月25日までの38日間について、各時点で一次情報として何が存在するかを並べます。予想点の読み方には立ち入らず、工程だけを記述します。
10月18日、試験当日の15時に存在するもの
試験が終わった直後、受験者の手元にあるのは問題冊子と、自分がマークした内容の記憶または控えだけです。答案そのものは回収されます。
機構はこの日、正解も合格基準も公表しません。施行規則9条は試験を筆記試験によると定め、同10条1項は毎年少なくとも一回行うと定めていますが、いずれも採点結果の即日公表を求める規定ではありません。試験当日の一次情報は、問題冊子という形で受験者全員に配られたもの、それだけです。
10月19日から11月24日までに存在するもの
この37日間、機構からの新たな公表はありません。したがってこの期間に流通する「今年は難しかった」「合格ラインは◯点」という情報は、いずれも機構の公表物ではない何かです。
一方、受験者の側では作業ができます。問題冊子を持ち帰っていれば自己採点が可能で、その手順は宅建試験の自己採点のやり方にまとめてあります。ただし、この段階の自己採点は各社が公表する解答例に照らした暫定値であって、機構の正解番号との照合ではありません。同じ「自己採点」という語でも、11月25日の前と後で意味が変わります。
11月25日9時30分に同時に出るもの
合格発表日に、機構は次の三つを同時に公表します。
合格者の受験番号。これは施行規則11条1項が公告を義務づけている項目そのものです。指定試験機関が公告を行う場合の方法は、同条2項が施行規則10条3項を準用しています。準用先の10条3項は、公告に際して「委任都道府県知事を明示し、法第十六条の九第一項の試験事務規程に定める方法により行わなければならない」と定めています。つまり公告の方法は機構が自由に決めているのではなく、国土交通大臣の認可を受けた試験事務規程(宅建業法16条の9第1項)に沿って行われます。
同じ11条1項が、公告とは別に合格証書の交付も義務づけています。受験番号を並べて掲示することと、合格した本人へ証書を渡すことは別の行為で、条文も「公告し、当該合格者に合格証書を交付しなければならない」と並列で書いています。発表日に自分の番号を確認しても、その時点で証書が手元にあるわけではありません。
合否判定基準。「50問中◯問以上正解した者」という形で示されます。登録講習修了者については45問中の問数が別に示されます。
正解番号。50問すべての正解が公表されます。ここで初めて、自己採点の照合先が機構の公表物になります。
この三つが同じ日の同じ時刻に出るという事実は、工程の理解にとって決定的です。合格点は、合格者が確定するのと同時に外に出ます。先に基準が発表されて後から合格者が決まるのではありません。順序が逆だと考えていると、「基準はもう決まっているのに公表を遅らせている」という誤解が生まれます。
この工程表の使い方
工程を押さえておくと、目にした数値がどの区分に属するかを自分で判定できます。判定は三つの質問で済みます。その数値は10月18日より前のものか、10月19日から11月24日までのものか、11月25日以降のものか。最初の区分に入る合格点の数値は存在しません。二番目の区分に入るものは機構の公表物ではありません。三番目の区分に入るものだけが、機構の公表した合格判定基準です。
11月25日以降の話も一応置いておきます。合格していた場合に続く登録・取引士証交付の手続は宅建合格後にやることに、不合格だった場合の立て直しは宅建試験の再受験戦略にまとめてあります。この記事は11月25日までで役目が終わります。
過去の幅は33点から38点。そこから先へは進めない
令和8年度について言えることがない以上、参照できるのは過去の実績値だけです。ただし、その参照からどこまで進めるかには限りがあります。
12件の基準点が収まっている範囲
機構の「試験実施概況(令和7年度以前10年間)」に載っている12件の合格基準点は、最低が33点、最高が38点です。いずれも50問中の一般受験者の点数で、最低は令和7年度、最高は令和2年度10月試験。上端と下端の差は5点で、その間に33・34・35・36・37・38という6通りの値が並びます。差が5点であることと、取りうる値が6通りであることは別の数え方なので、どちらの数字を使っているかは意識してください。50問中の5点は、満点に対して10%にあたります。
直近の2件だけを取り出すと、令和6年度が37点、令和7年度が33点です。年度別の完全な一覧、すなわち12件それぞれの申込者数・受験者数・合格者数・合格率・基準点を通しで確認したい場合は宅建の合格ラインの推移にあります。この記事では一覧を再掲しません。必要な数値だけを引きます。
隣どうしの差は符号が入れ替わり続けている
12件を実施順に並べて隣どうしの差を取ると、変化はプラス3点からマイナス4点まで散らばります。最大の上げ幅は令和元年度の35点から令和2年度10月試験の38点へのプラス3点、最大の下げ幅は令和6年度の37点から令和7年度の33点へのマイナス4点で、後者はこの10年で最大の変動です。差がゼロ、つまり前回と同じ点数だった箇所も3か所あります。
方向はどうか。ゼロを除いた8つの変化のうち、直前と符号が入れ替わったのは5回です。ただし「上がった次は必ず下がる」という単純な交替にはなっていません。令和2年度10月の38点から12月の36点、さらに令和3年度10月の34点へと、マイナス2点が2回続いた箇所があります。年度別の12件の並びそのものは宅建の合格ラインの推移にあるので、差の取り方を自分で確かめたい場合はそちらの一覧を使ってください。
まとめると、符号は頻繁に入れ替わるが交替の規則には従っておらず、一方向のトレンドも読み取れない、という形です。もし一方向に動いていれば、外挿という手が一応は考えられました。規則性のない反転が観測されるだけである以上、直前の値から次の値を推す根拠が公表データの側にありません。
代表値を推定に使わない理由
12件の基準点から最頻値や中央値や平均を計算することはできます。実際に宅建の合格率の推移が算出しています。ただし、それらは12件を要約した記述統計であって、13件目を当てるための推定量ではありません。
区別の要点はこうです。記述統計は「これまでの12件はこういう分布だった」と述べます。推定は「次の1件はこの値になる」と述べます。前者から後者へ渡るには、次の1件が過去の12件と同じ仕組みから生まれるという仮定が要ります。試験の運用がそうであるかどうかを、機構の公表資料は述べていません。仮定が正しいかもしれませんが、それを確かめる材料がこちらにない以上、確かめずに使うことになります。この記事はそれをしません。
この節の結論を狭く確定させる
以上から、この節で言えることは一文に縮まります。
過去10年12件の合格基準点は33点から38点の範囲に収まっていた。令和8年度がこの範囲に収まるかどうか、収まるとしてその中のどこかは、機構の公表資料からは言えない。
「範囲に収まる可能性が高い」という書き方も採りません。可能性の高さを述べるには、それを支える根拠が要ります。公表資料にその根拠はありません。幅は言えるが、幅の中のどこかは言えない。ここで止まります。
同じ合格点だった年度どうしを並べると何が見えるか
既存の解説は「合格率が同じでも点数が違う」という向きの対照をよく扱います。平成29年度と平成30年度がどちらも合格率15.6%でありながら基準点が35点と37点だった、という例が代表です。ここではその反対側、すなわち「点数が同じでも通った割合が違う」を見ます。
34点だった2件
34点は令和3年度に2件あります。10月試験が合格率17.9%、12月試験が合格率15.6%です。同じ年度、同じ出題方針のもとで実施された2回の試験で、基準点が34点で一致したにもかかわらず、通った割合は2.3ポイント離れました。
これは受験者集団が別だからです。10月試験の受験者は209,749人、12月試験は24,965人で、規模も構成も違います。同じ34点という線を引いても、線の上側に何割が乗るかは集団によって変わる。この1年度の内部に、点数と割合が別物であることの証拠が揃っています。
35点だった3件
35点は平成28年度、平成29年度、令和元年度の3件です。合格率はそれぞれ15.4%、15.6%、17.0%。最も低い平成28年度と最も高い令和元年度で1.6ポイントの差があります。
3件が並ぶことで、差が偶然の揺らぎではないことも見えます。15.4、15.6と続いた後に17.0へ動いており、同じ35点が示す通過割合は、時期によって別の値をとっています。
36点だった3件
36点は令和2年度12月試験、令和4年度、令和5年度の3件です。合格率はそれぞれ13.1%、17.0%、17.2%。この組み合わせが最も極端です。13.1%は10年で最も低い合格率で、17.2%との差は4.1ポイントあります。同じ36点でも、通った割合が3割以上違うと言い換えられます。
37点だった2件
37点は平成30年度と令和6年度の2件です。合格率はそれぞれ15.6%と18.6%。差は3.0ポイント。合格者数で見ると平成30年度が33,360人、令和6年度が44,992人で、1万人以上違います。
33点と38点は1件ずつ
33点は令和7年度の1件だけで、合格率18.7%。38点は令和2年度10月試験の1件だけで、合格率17.6%。比較対象が存在しないため、この2件からは同点対照ができません。10年で最低の点数の年に合格率が最高だったという組み合わせだけを記憶しておけば十分です。
点数の順位と合格率の順位は対応しない
同点どうしではなく、12件全体を点数順に並べたときの合格率の並びも見ておきます。
点数が最も低い33点の1件は、合格率18.7%で12件中の最高でした。ここまでなら「点が低い年は多く通る」という向きの対応がありそうに見えます。ところが、合格率が最も低い13.1%の1件は、点数でいえば中間の36点です。最も高い38点の1件は合格率17.6%で、12件のなかでは高いほうから数えたほうが早い位置にあります。
つまり、点数の順位から合格率の順位は復元できませんし、その逆もできません。33点と18.7%が両端で対応した1件だけを見ると法則があるように錯覚しますが、12件を通すと対応は崩れます。この記事で確認できるのは、点数と合格率が別々に動く二つの系列だということまでです。
ここから導かれる言い方の制約
同点対照から出てくる結論は、次のとおりです。
「令和8年度が◯点なら自分は合格圏」という言い方は、点数だけでは成立しません。同じ点数が同じ割合を意味しないからです。36点は、令和5年度なら受験者の上位17.2%に入る線でしたが、令和2年度12月試験では上位13.1%に入る線でした。線の値が同じでも、その線が集団のどこに引かれるかは毎回違います。
もうひとつ。基準点の近傍には人が密集します。50問の試験で1点差の帯に何千人も並ぶ構造については宅建に落ちる原因が扱っているので、あと1点の重みを具体的に知りたい場合はそちらへ進んでください。この記事は、点数と割合の対応が年度ごとに組み替わるという事実の指摘までにとどめます。
令和8年度の受験条件は前年と同じか
合格点を推し量る代わりに使える方法がひとつあります。条件の同一性を点検することです。結果を当てられなくても、条件が同じかどうかは公表値で確認できます。
試験の形式は前年と同じ
出題数は50問、試験時間は2時間。登録講習修了者は45問、1時間50分。受験資格に年齢・学歴・国籍・実務経験の制限はありません。試験は筆記試験によって行われ(施行規則9条)、出題事項は施行規則8条が7号にわたって列挙するもの、すなわち土地建物の形質等、権利および権利変動に関する法令、法令上の制限、税に関する法令、需給に関する法令および実務、価格の評定、宅建業法および関係法令です。この枠組みは令和8年度についても変わっていません。
申込の規模は前年並み
令和8年度の申込者数は307,254人(速報値、令和8年8月25日公表)。令和7年度の306,099人と比べて1,155人増、0.4%増です。
0.4%という増加幅の意味を確認します。令和6年度から令和7年度への増加は301,336人から306,099人で4,763人、1.6%でした。令和5年度から令和6年度は289,096人から301,336人で12,240人、4.2%です。直近3回の伸びのなかで、令和8年度の0.4%が最も小さいことになります。ただし、これも規模の話であって分布の話ではありません。
構成も前年並み
内訳を見ます。令和8年度の申込者307,254人のうち、登録講習修了者は58,162人、一般受験者は249,092人。修了者の構成比は18.9%です。
令和7年度は申込者306,099人のうち登録講習修了者が56,922人で、構成比18.6%でした。0.3ポイントの差です。5問免除を使う層の割合が、前年からほぼ動いていません。登録講習修了者と一般受験者では満点そのものが違い、基準点も別に公表されますが、その差の構造は5問免除制度が扱っています。
受付区分別では、インターネット受付が293,193人、郵送受付が14,061人。インターネットの比率は95.4%です。申込方法の選択や必要書類、写真規格といった手続の詳細は宅建試験の申し込み方法にまとめてあります。
ここまでで言えること、言えないこと
言えること。令和8年度の受験条件は、試験形式・受験資格・申込規模・免除者構成比のいずれにおいても、令和7年度とほぼ同じです。
言えないこと。そこから合格点は導けません。理由は、申込者数が測っているのが人数であって実力ではないからです。合格点は受験者の得点分布に応じて決まり、得点分布は答案を採点してはじめて存在します。307,254人という数と、その307,254人がどれだけ解けるかは、別の情報です。
もう少し正確に言うと、条件の同一性が保証するのは「比較の土俵が前年と同じ」ということだけです。同じ土俵で同じ結果が出るとは限りません。実例が直近にあります。令和6年度の申込者は301,336人、令和7年度は306,099人で、増加率は1.6%。試験形式も受験資格も同じでした。それでも基準点は37点と33点で、この10年で最大の4点差がついています。申込規模が近い2年のあいだで、結果が最も離れたということです。
母集団の属性別の内訳、受験率、免除者の数値の読み方は宅建試験の受験者データが扱っています。この記事では、令和8年度の速報値を「前年との同一性を点検する」という用途に限って使い、属性データの再掲はしません。
出題範囲は令和8年4月1日現在施行の法令
条件の点検をもうひとつ進めます。出題範囲です。
基準日は2026年4月1日
令和8年度の試験は、令和8年4月1日現在施行されている法令に基づいて出題されます。試験日である10月18日時点の条文ではありません。この差は毎年生じますが、令和8年度は基準日直後に施行された改正がいくつかあるため、差の意味が例年より大きくなっています。
基準日以前に施行された実体改正
範囲に入る改正のうち、条文の中身が実際に変わったものを挙げます。
区分所有法。令和7年法律第47号が令和8年4月1日に施行され、決議要件の分母が区分所有者および議決権の総数から出席者へ変わりました。定足数の規定が新設され、決議要件の段は三段から四段になっています。制度全体の見取り図は区分所有法の基本に、決議要件の段ごとの整理は区分所有法の決議要件にまとめてあります。
宅建業法施行規則16条の2。令和7年内閣府・国土交通省令第2号が同じく令和8年4月1日に施行され、第9号が新設されました。第三者管理方式に関する開示事項で、これにより区分所有建物についての35条書面の説明事項が9項目から10項目に増えています。旧9号だった維持修繕の実施状況の記録は10号に繰り下がりました。
地方税法施行令。令和8年政令第83号が令和8年4月1日に施行され、新築住宅に係る固定資産税減額措置の床面積要件が「50平方メートル以上280平方メートル以下」から「40平方メートル以上240平方メートル以下」に変わりました。減額対象となる床面積の上限が120平方メートルである点は従前どおりです。この論点は固定資産税の軽減措置が扱っています。不動産取得税の側の軽減は不動産取得税の軽減にまとめてあります。
令和8年度に効く改正の全体像、どの科目にどう波及するかは令和8年度の法改正まとめに集約してあります。
基準日より後の施行は範囲外
逆に、令和8年4月1日より後に施行された改正は出題範囲に入りません。都市計画法・建築基準法・土地区画整理法を改正した令和8年法律第23号は2026年5月27日施行、民法および不動産登記法を改正した令和8年法律第45号・第46号は2026年6月24日施行で、いずれも範囲外です。「最新の条文に合わせる」ことが、そのまま令和8年度の正しさにはなりません。
改正の多寡から合格点は導けない
ここが本題です。「改正論点が多い年は難しくなるから合格点が下がる」という言い方をよく見ます。この記事はその言い方を採りません。
理由は三つあります。
第一に、改正論点が実際に何問出題されたかは、問題冊子が公開される試験日まで分かりません。範囲内に改正があることと、そこから出題されることは別です。
第二に、仮に出題されたとして、それが受験者全体の得点分布をどちらへどれだけ動かすかを測る材料がありません。機構は科目別の平均点も得点分布も公表していません。前節で見たとおり、施行規則13条の10・13条の11が定める記載事項にも、そうした項目は入っていません。したがって「改正論点で全体が◯点落ちた」という検証は、そもそも実行できません。
第三に、過去の実績が反証になります。令和6年度と令和7年度で基準点は37点から33点へ4点下がりましたが、この下落を改正の多寡で説明する材料は公表資料にありません。同様に、令和2年度10月の38点という10年で最高の基準点についても、改正が少なかったからだと示す資料はありません。
したがってこの記事では、範囲内に実体改正があるという事実だけを述べ、それが合格点に及ぼす影響については何も述べません。改正論点は学習の優先順位を決めるうえでは重要ですが、合格点の予測には使えない、という二段構えで扱います。
令和8年度を見通すために、自分で確認できること
予測の代わりに手順を渡します。この節の内容は、令和9年度以降にもそのまま使えます。
機構の公表カレンダーを押さえる
年度内に機構から出るものを、時期の順に並べます。
6月上旬。官報公告で試験日・申込期間・受験手数料・試験地が確定します。令和8年度は6月5日でした。
8月下旬。申込受付状況の速報値が出ます。令和8年度は8月25日公表で、申込者307,254人。この時点で数値が出るのは申込者数だけです。
10月中旬。試験日。問題冊子が受験者に配られます。機構からの数値の公表はありません。
11月下旬。合格発表日。「試験結果の概要」が同日に公表され、受験者数・合格者数・合格率・合格判定基準・合格者の平均年齢などが載ります。合格者の受験番号と正解番号も同時です。
その後。「試験実施概況」が10年ローリングで更新され、当該年度が加わり10年前の年度が落ちます。年代別・職業別の内訳は機関誌RETIOの冬号に載ります。
このカレンダーを持っていると、目にした数値が「まだ出ていないはずのもの」かどうかを即座に判定できます。8月や9月の時点で「今年の合格率」「今年の合格点」を数値で書いている記述は、公表カレンダー上に対応する情報源が存在しないので、その一点で排除できます。
速報値と確定値を区別する
307,254人という数値には「速報値」という但し書きが付いています。確定値と一致するとは限りません。同じ量に対して二つの数値が時期をずらして出るとき、後から出たほうが正であるという原則を持っておくと、古い数値を引き続けずに済みます。
この作法は合格点の話に限りません。問48で問われる不動産市場の統計にも同じ構造があり、公表主体・調査時点・速報と確定の区別がそのまま論点になります。統計問題の数値そのものは令和8年度の統計問題にまとめてありますが、試験の実施結果の数値と、問48で問われる市場統計は別物なので、そこは混ぜないでください。
数値を見たら三つを復元する
具体的な習慣として、数値に出会ったら次の三つを言えるか自問します。
発表元は誰か。機構か、国土交通省か、それ以外か。機構と国土交通省以外が出した数値は、この記事の基準では一次情報として扱いません。
どの年度か。令和7年度と令和8年度は隣接しているうえ、資料によっては「2025年度」「2026年度」と西暦で書かれます。年度の取り違えは、この分野で最も多い事故です。
分母は何か。合格率という語が受験者を分母にしているのか申込者を分母にしているのかで、値が数ポイント動きます。分母の取り替えがもたらす差については宅建の合格率の推移が具体的に計算しています。
この三つが復元できない数値は、正しいかどうか以前に、検証できません。検証できない数値は判断に使わない、というのがこの記事の一貫した立場です。
自分の位置は公表データからは分からない
最後に、この節の限界を書いておきます。公表データをどれだけ丁寧に読んでも、自分が合格圏にいるかどうかは分かりません。機構が公表するのは集団についての数値であって、個人についての数値ではないからです。
自分の位置を測る手段は、本番と同じ条件で問題を解いて得点を出すこと以外にありません。時間を計り、50問通しで解き、採点する。その使い方は模試の活用法にまとめてあります。学習の進捗を時間ではなく到達度で管理するという考え方は宅建の勉強時間の考え方が扱っています。合格点の話題に時間を使いすぎると、この一番効く作業から時間が削られます。
見通しに使ってはいけない数字の型
合格点の話題に混入しやすい数値を、型で分類します。それぞれについて、なぜ機構の公表資料では裏が取れないのかを示します。
型1 平成27年度以前の合格点
理由。「試験実施概況」は直近10年分のローリング資料で、令和7年度時点の版が扱うのは平成28年度以降です。それより前の年度は、同じ資料からは取得できません。
この型が答えているように見えて答えていない問い。「20年、30年のスパンで見ると合格点はどう動いてきたか」。長期の推移を示せば傾向がはっきりするように見えますが、検証できない数値を足しても検証の精度は上がりません。データの本数が増えることと、根拠が強まることは別です。
型2 得点分布
理由。機構は得点分布を公表していません。前述のとおり、施行規則13条の10・13条の11が定める帳簿および報告書の記載事項にも含まれません。
答えていない問い。「あと1点で落ちた人は何人いたか」「35点の人は上位何%か」。これらは受験者にとって最も切実な問いですが、答えるためのデータが公表されていません。どこかで見かけた分布らしきものは、公表物ではない何かです。
型3 科目別の平均点
理由。同じく公表されていません。公表されるのは全体の合格判定基準と正解番号であって、科目ごとの得点状況ではありません。
答えていない問い。「今年は権利関係が難しかったのか」。体感としては語れますが、公表値では確認できません。科目ごとの得点をどう設計するかは科目別の攻略法と宅建の合格戦略が扱う領域で、そちらは自分の答案という手元のデータで判断できます。
型4 都道府県別の合格基準点
理由。基準が全国一本であること自体は宅建の合格ラインの推移が扱っているので、ここでは条文の側から見ておきます。宅建業法16条1項は試験を行う主体を都道府県知事と定め、同16条の2第1項は知事がその試験事務を国土交通大臣の指定する者に行わせることができるとし、同条3項は行わせるときは知事が試験事務を行わないと定めます。条文が都道府県ごとに分けているのは「誰が事務を行うか」だけで、合否の判定基準を都道府県別に設定する権限を与える規定はどこにもありません。施行規則11条1項が知事に義務づけているのも受験番号の公告であって、基準の設定ではありません。
答えていない問い。「自分の受験地は合格しやすいか」。この問いは条文上の根拠を欠いており、公表資料の側にも対応する数値が存在しません。会場や受験地の選び方は別の観点、すなわち移動時間と当日の負担の問題で、そちらは試験会場と受験地の選び方が扱います。
型5 出所を示さない予想点
理由。出所が示されていない以上、発表元・年度・分母のいずれも復元できません。前節の三つの質問がすべて答えられない数値です。
答えていない問い。「今年の合格点は何点になるか」。この問いに11月25日より前に答えられる情報源は存在しません。答えているように見える数値は、問いを言い換えているだけです。
型6 試験直後の体感難易度
理由。体感は個人の学習状況に依存します。ある人が難しいと感じた問題が全体の得点分布をどう動かしたかは、得点分布が公表されない以上、確かめようがありません。
答えていない問い。「今年は易化したか難化したか」。試験の難易が主観で語られるときに何が起きているかは宅建は簡単かが扱っています。
型7 他資格の合格率との比較
理由。合格率は母集団・受験資格・評価方式に依存する数値で、それらが違う試験どうしで比べても意味を持ちません。この点は宅建の難易度と合格率が正面から扱っています。
答えていない問い。「宅建は他の資格と比べて何点取れば受かるのか」。他資格の数値は、宅建の合格点について何も述べていません。
型の共通構造
七つの型に共通するのは、問いに答えているように見えて、実際には別の問いに答えているという構造です。長期の推移は「傾向」に答えているように見えて年度ごとの決まり方には答えていない。他資格との比較は「難易度」に答えているように見えて合格点には答えていない。この構造に気づけば、型を覚えていなくても同じ判断ができます。
試験での出題ポイント
合格基準点そのものは出題対象ではありません。しかしその周辺には、条文で押さえられる出題論点がいくつもあります。
試験の実施主体と指定試験機関
宅建業法16条1項は「都道府県知事は、国土交通省令の定めるところにより、宅地建物取引士資格試験を行わなければならない」と定めます。試験を行う主体は都道府県知事です。
同16条の2第1項は「都道府県知事は、国土交通大臣の指定する者に、試験の実施に関する事務を行わせることができる」と定め、同条3項は「都道府県知事は、第一項の規定により国土交通大臣の指定する者に試験事務を行わせるときは、試験事務を行わないものとする」としています。指定試験機関に行わせる場合、知事は試験事務を行わない。両方が並行して行うのではないという点が引っかけになります。
同16条2項は「試験は、宅地建物取引業に関して、必要な知識について行う」と定めます。試験の方法は施行規則9条により筆記試験、実施回数は同10条1項により毎年少なくとも一回、期日・場所等はあらかじめ公告しなければならないとされています(同10条2項)。
一部免除の要件
宅建業法16条3項は、登録講習機関が行う登録講習の課程を修了した者について、国土交通省令の定めるところにより試験の一部を免除すると定めます。
その省令が施行規則10条の14です。条文は「登録講習修了者については、登録講習修了試験に合格した日から三年以内に行われる試験について、第八条に掲げる試験すべき事項のうち同条第一号及び第五号に掲げるものを免除する」と定めています。ここに三つの数字と条件が入っています。
起算点は「登録講習修了試験に合格した日」です。講習を受け始めた日でも、講習の課程を修了した日でもありません。期間は3年以内です。免除対象は施行規則8条1号と5号、すなわち「土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること」と「宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること」です。
選択肢では、起算点を「講習を修了した日」に、期間を「5年以内」に、免除対象を「8条1号及び7号」に入れ替えるといった作り方が考えられます。免除を使わない受験者にとっての問46から問50の取り方は5問免除科目の攻略が扱っています。
合格の公告と合格証書
施行規則11条1項は「都道府県知事は、その行つた試験に合格した者の受験番号を公告し、当該合格者に合格証書を交付しなければならない」と定めます。公告されるのは受験番号であって氏名ではありません。そして合格証書は交付されるものです。
不正受験に対する処分
宅建業法17条1項は、不正の手段によって試験を受け、または受けようとした者に対し、都道府県知事が合格の決定を取り消し、またはその試験を受けることを禁止できると定めます。同条2項は、指定試験機関が1項の知事の職権を行うことができるという規定です。そして同条3項が「前二項の規定による処分を受けた者に対し、情状により、三年以内の期間を定めて試験を受けることができないものとすることができる」と定めます。
3年以内の受験禁止は3項です。2項ではありません。2項は指定試験機関の職権に関する規定なので、ここを取り違えた選択肢が作れます。
合格・登録・取引士証は別の段階
宅建業法18条1項は、試験に合格した者で一定の実務経験を有するものが、当該試験を行った都道府県知事の登録を受けることができると定めます。義務ではありません。そして同22条の2第1項は、18条1項の登録を受けている者が宅地建物取引士証の交付を申請することができると定めます。
合格、登録、取引士証の交付は三つの別々の段階です。合格しただけでは宅地建物取引士ではありません。取引士証の有効期間は5年(22条の2第3項)、交付申請前6か月以内の法定講習の受講が原則として必要ですが、試験に合格した日から1年以内に交付を受けようとする者は受講が不要です(同条2項ただし書)。この1年という期間は、施行規則10条の14の3年とは別の数字なので、混同しないでください。登録の要件と手続の全体は宅建士の登録手続にまとめてあります。
数値と主語の入れ替えに注意する
この分野の選択肢は、数値の入れ替え(3年と5年、1年と6か月、5年と3年)と主語の入れ替え(都道府県知事と国土交通大臣、指定試験機関と登録講習機関)で作られます。条文を読むときに、主語・期間・起算点・対象の四つを分けて記憶しておくと、入れ替えに気づけます。この種の作り方の一覧は引っかけ表現のパターンにまとめてあります。
統計との混同に注意する
もうひとつ。試験の実施結果の数値(受験者数・合格者数・合格率・合格基準点)は、問48で問われる不動産市場の統計とは無関係です。問48で問われるのは新設住宅着工戸数、地価公示、法人企業統計、土地白書といった不動産市場の指標であって、宅建試験そのものの実施結果ではありません。この二つを同じ「統計」という語でまとめると、覚える対象を取り違えます。
覚え方・整理の仕方
この記事の内容を、判断に使える形に圧縮します。数値の扱い方が四つと、条文側の整理がひとつです。
一つめ 「33から38、ただし中は言えない」
33から38という上下5点の幅と、幅の中のどこかは事前に言えないという制約を、一組にして覚えます。片方だけだと使い方を間違えます。幅だけを覚えていると「だいたい35点くらいだろう」と真ん中を取ってしまい、制約だけを覚えていると過去の実績まで捨ててしまいます。
言い方を決めておくと安定します。「過去10年12件は33から38に収まっていた。令和8年度がどこになるかは、11月25日まで分からない」。この二文をそのまま使えば、過不足がありません。
二つめ 数値を見たら三点を復元する
発表元・年度・分母。この三つを、必ずこの順で自問します。順番を固定するのは手間を減らすためです。発表元から始めれば、機構でも国土交通省でもない出所だと分かった時点で残り二つを確認する必要がなくなります。年度を二番目に置くのは、出所が正しくても年度がずれていれば分母を確認する意味がないからです。分母は最後で、ここまで通った数値についてだけ、受験者を分母にしているのか申込者を分母にしているのかを見ます。
この習慣は、合格点だけでなく問48の統計にも、他資格との比較にも、そのまま使えます。汎用の型を一つ持っておくほうが、個別の反例を覚えるより持ちがいいというのが要点です。
三つめ 二つの日付と、その間に起きること
10月18日と11月25日。この二つの日付と、間が38日であることを覚えます。そして、この38日間に機構からの公表がないこと、11月25日に三つ(受験番号・合否判定基準・正解番号)が同時に出ることを紐づけます。
日付を覚えることが目的ではありません。38日という空白があるという構造を覚えると、その空白を埋めるように流れてくる数値の性質が自動的に判定できます。
四つめ 条件までは語れる、結果は語れない
令和8年度について語れるのは条件の同一性までです。試験形式が同じ、受験資格が同じ、申込規模が前年比0.4%増、免除者構成比が18.6%から18.9%へ。ここまでは公表値で確認できます。
その先、結果は語れません。条件が似ていた令和6年度と令和7年度で基準点が4点離れた、という実例があります。この線引きを持っていると、他人の記述を読むときに「どこで公表値から離陸したか」が見えます。
用語は資料名とセットで持つ
三つの呼び名は、単独で覚えると混乱の元になります。資料名とセットにすると一意に決まります。合格発表のページが「合否判定基準」、結果の概要が「合格判定基準」で単位は問数、試験実施概況が「合格基準点」で単位は点。この対応を持っておくと、他人の記述を見たときに「この人は結果の概要を見ている」「この人は実施概況を見ている」まで分かります。単位が問数と点で混ざった記述に出会っても、混乱ではなく出所の混在として処理できます。
条文の四点セット
出題論点の側は、主語・期間・起算点・対象の四点で整理します。たとえば施行規則10条の14なら、主語は登録講習修了者、期間は3年以内、起算点は登録講習修了試験に合格した日、対象は施行規則8条1号および5号。宅建業法22条の2第2項ただし書なら、主語は取引士証の交付を受けようとする者、期間は1年以内、起算点は試験に合格した日、対象は法定講習の受講義務の免除。同じ四つの枠に入れると、数字の入れ替えに気づきやすくなります。
理解度チェッククイズ
○×で5問です。各問に、公表値または条文の根拠を付けています。
Q1. 令和8年度の合格基準点は、8月25日に公表された申込者数の速報値307,254人から推定できる。
答え:×
申込者数は人数を測った値であって、受験者の得点分布を測った値ではありません。合格基準点は受験者全員の答案を採点したうえで決まるため、得点分布が存在しない時点では原理的に確定しません。実際、申込者数と受験者数の間にも約2割の乖離があります。令和7年度は申込者306,099人に対して受験者245,462人で、60,637人が受験していません。申込規模から受験者数すら確定しないのですから、そこから基準点を導くことはできません。なお、令和6年度の申込者301,336人と令和7年度の306,099人は規模がよく似ていますが、基準点は37点と33点で4点離れました。申込規模が近いことは、基準点が近いことを意味しません。
Q2. 機構は合格発表日に、合格者の受験番号・合否判定基準・正解番号を同時に公表している。
答え:○
合格発表日に、この三つが同時に公表されます。令和8年度であれば11月25日(水)9時30分です。なお、法令上公告が義務づけられているのは受験番号だけである点は押さえておく価値があります。宅地建物取引業法施行規則11条1項は「都道府県知事は、その行つた試験に合格した者の受験番号を公告し、当該合格者に合格証書を交付しなければならない」と定めており、合格基準点の公表義務は規定していません。指定試験機関が委任都道府県知事に提出する報告書の記載事項を定める同13条の11第1項も、試験年月日・試験地・受験申込者数・受験者数・合格者数・合格公告日の六つを挙げるにとどまります。合否判定基準と正解番号の公表は、法令上の義務ではなく機構の運用です。
Q3. 過去10年で合格基準点が同じだった年度は、合格率もほぼ同じだった。
答え:×
同じ点数でも合格率は一致しません。34点だった令和3年度は、10月試験が17.9%、12月試験が15.6%です。35点だった3件は、平成28年度15.4%、平成29年度15.6%、令和元年度17.0%。36点だった3件は、令和2年度12月試験13.1%、令和4年度17.0%、令和5年度17.2%で、最大4.1ポイント開いています。37点だった2件は、平成30年度15.6%、令和6年度18.6%。同じ線を引いても、線の上側に何割が乗るかは受験者集団によって変わるためです。したがって「◯点なら合格圏」という言い方は、点数だけでは成立しません。
Q4. 令和8年度の試験は、試験日である10月18日の時点で施行されている法令に基づいて出題される。
答え:×
令和8年4月1日現在施行の法令が出題の対象です。試験日時点ではありません。この差は令和8年度で実際に効いています。都市計画法・建築基準法・土地区画整理法を改正した令和8年法律第23号は2026年5月27日施行、民法および不動産登記法を改正した令和8年法律第45号・第46号は2026年6月24日施行で、いずれも基準日より後のため出題範囲に入りません。逆に、令和8年4月1日に施行された区分所有法の改正(令和7年法律第47号)、宅建業法施行規則16条の2への第9号新設、地方税法施行令の改正による新築住宅の固定資産税減額の床面積要件「40平方メートル以上240平方メートル以下」は、いずれも範囲に入ります。
Q5. 登録講習修了者の試験一部免除は、登録講習の課程を修了した日から3年以内に行われる試験について適用される。
答え:×
起算点が違います。宅地建物取引業法施行規則10条の14は「登録講習修了者については、登録講習修了試験に合格した日から三年以内に行われる試験について、第八条に掲げる試験すべき事項のうち同条第一号及び第五号に掲げるものを免除する」と定めています。課程の修了日ではなく、修了試験に合格した日が起算点です。免除の対象は施行規則8条1号(土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること)と5号(宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること)で、条文上の根拠は宅地建物取引業法16条3項にあります。
合格基準点の周辺で問われる試験制度の条文(宅建業法16条から22条の2まで)は、アプリの該当範囲の一問一答と年度別演習で確認できます。
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