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農地転用の手続き|農地を宅地にする前に読む

不動産の基礎知識 読了 約23分

農地は登記の地目ではなく現況で判断されます。農地法3条・4条・5条の違い、市街化区域の届出特例、相続した農地の手続き、転用できない農地の見分け方を解説します。

目次

    この記事は、農地を宅地などに変えたい人、農地付きの土地の購入を検討している人、農地を相続した人に向けて、農地法の仕組みと手続きの実際を整理するものです。宅建試験の対策として条文を整理したい場合は「農地法の3条・4条・5条」を先に読んでください。

    最初に、最も誤解されやすい点を書きます。ある土地が農地かどうかは、登記簿の地目では決まりません。農地法2条1項は、農地を「耕作の目的に供される土地」と定義しており、判断は現況によります。登記の地目が宅地になっていても、実際に耕作されていれば農地法上の農地です。逆に、登記が田や畑のままでも、現況が農地でなければ農地法の規制はかかりません。この現況主義を知らずに土地を買うと、宅地のつもりで買った土地に農地法の許可が必要だった、という事態が起きます。

    農地かどうかは現況で決まる

    登記簿の地目は判断基準ではない

    不動産の登記簿には地目という欄があり、田、畑、宅地、雑種地などと記載されています。しかし農地法は、この地目を基準にしていません。基準は、その土地が現に耕作の目的に供されているかどうかです。

    現況主義が採られている理由は、農地の保護という目的から考えれば分かります。登記の地目を基準にすると、地目を変更するだけで規制を免れられてしまいます。実際に作物を作っている土地を守るという目的のためには、現況で判断するほかありません。

    登記簿の見方そのものは「登記簿の読み方」で扱っています。地目の記載は参考情報として役に立ちますが、それだけで農地かどうかを判断しないでください。

    耕作の目的に供される土地とは

    耕作とは、土地に労力と資本を投じて作物を栽培することを指します。田や畑はもちろん、果樹園も対象です。

    判断が難しいのは、今は作物を作っていない土地です。この点については、現に耕作されていなくても、耕作しようと思えばいつでも耕作できる状態にある土地、いわゆる休耕地は農地として扱われます。数年間作付けを休んでいるだけの土地に、農地法の規制がかからないことにすると、規制の趣旨が失われるためです。

    一方、長年放置されて樹木が生い茂り、農地としての利用が客観的に難しくなっている土地については、農地に当たらないと判断される場合があります。ただし、この判断は個別の状況によるため、自分で決めずに、その土地のある市町村の農業委員会に確認してください。

    採草放牧地も規制の対象

    農地法は、農地と並んで採草放牧地も規制の対象にしています。採草放牧地とは、農地以外の土地で、主として耕作または養畜の事業のための採草や家畜の放牧の目的に供されるものをいいます(農地法2条1項)。

    一般の土地取引で問題になるのは圧倒的に農地のほうですが、条文を読むときには両方が出てくるので、二つの用語が並んでいることを頭に入れておいてください。

    3条・4条・5条は「誰が何をするか」で分かれる

    農地法の規制は三つの条文に分かれています。難しく見えますが、権利が動くかどうかと、農地でなくなるかどうかの二つの軸で整理すれば単純です。

    3条は農地のまま権利を動かす場合

    農地を農地のまま売買したり貸したりする場合が3条です。所有権を移転する場合のほか、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権などを設定・移転する場合も含まれます。この場合、当事者が農業委員会の許可を受けなければなりません(農地法3条1項)。

    許可権者が農業委員会である点が、4条・5条と異なります。農地が農地のまま誰かの手に渡るだけであれば、農地の総量は減りません。判断すべきなのは、その相手がきちんと耕作するかどうかという、地域の農業に関する事柄です。だから、地域の実情を把握している農業委員会が判断する仕組みになっています。

    なお、3条の許可の要件については、かつて一定面積以上を耕作することが求められていましたが、この下限面積の要件は令和5年4月に廃止されました。ただし、取得する農地のすべてを効率的に利用すること、必要な農作業に常時従事すること、周辺の農地利用に支障を生じないことといった要件は残っています。農地は誰でも自由に買えるようになったわけではない、という点は変わりません。

    4条は自分の農地を転用する場合

    自分が所有する農地を、自分で農地以外のものにする場合が4条です。畑に自宅を建てる、田を駐車場にする、農地を資材置き場にするといった行為が該当します。権利は動かず、農地が農地でなくなるだけです。

    この場合、都道府県知事等の許可が必要です(農地法4条1項)。ここでいう都道府県知事等とは、都道府県知事または指定市町村の長を指します。指定市町村とは、農地転用許可の権限を移譲された市町村のことです。

    3条と権者が違う理由も明快です。転用は農地の総量を減らす行為なので、その地域の農業の枠を超えた判断が必要になります。だから、より広い範囲を見る立場である都道府県知事等が判断します。

    5条は転用目的で権利を動かす場合

    農地を買って、あるいは借りて、農地以外のものにする場合が5条です。権利移動と転用の両方が起きるため、3条と4条の合わせ技のように見えますが、5条の許可を一つ受ければ足ります。3条と4条の両方を取る必要はありません。

    権者は4条と同じく都道府県知事等です(農地法5条1項)。転用が起きる以上、判断の性質は4条と同じだからです。

    申請者については違いがあります。4条は所有者本人が申請するのに対し、5条は権利を渡す側と受ける側の当事者が共同で申請します。売主だけ、あるいは買主だけでは進みません。農地付きの土地を買うときに、売主の協力が不可欠になるのはこのためです。

    三つを見分ける手順

    どの条文にあたるかは、二つの質問で決まります。まず、その土地は農地のままか、農地でなくなるか。農地のままなら3条です。次に、農地でなくなる場合、権利が動くか動かないか。動かないなら4条、動くなら5条です。

    この順で考えれば、事例を読んで迷うことはありません。取引の全体の流れは「不動産売買の流れ」も参考になります。

    市街化区域内の特例

    届け出れば許可は不要になる

    市街化区域内にある農地については、大きな例外があります。あらかじめ農業委員会に届け出て転用する場合、4条・5条の許可は不要です(農地法4条1項ただし書、5条1項ただし書)。

    市街化区域は、都市計画法上、すでに市街地を形成している区域、およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域です。市街化を進めることが前提の区域である以上、その中の農地について転用を一件ずつ審査する意味が乏しい、という考え方に基づく特例です。市街化区域と市街化調整区域の違いは「市街化区域と市街化調整区域」で扱っています。

    注意点は「あらかじめ」という部分です。転用に着手してから届け出るのでは要件を満たしません。届出先が都道府県知事等ではなく農業委員会である点も、取り違えやすいところです。

    3条に特例がない理由

    市街化区域の特例は、4条と5条にはありますが、3条にはありません。3条は農地を農地のまま動かす場合なので、市街化区域内であっても農地としての利用が続きます。市街化を進めるという区域の趣旨と、規制を外す理由が結びつかないためです。

    この非対称は試験でも実務でも問われます。市街化区域内だから何でも届出で済む、という理解は誤りです。

    市街化区域かどうかを調べる

    自分の土地が市街化区域内かどうかは、市町村の都市計画担当の窓口や、自治体が公開している都市計画図で確認できます。市街化区域と市街化調整区域の区分がない、いわゆる非線引きの都市計画区域や、都市計画区域外の農地には、この特例は適用されません。都市計画の全体像は「都市計画法の全体像」で扱っています。

    許可を受けなかったらどうなるか

    権利移動の効力が生じない

    3条の許可を受けないでした行為は、その効力を生じません(農地法3条6項)。売買契約を結び、代金を払っても、許可がなければ所有権は移転しません。5条についても、無許可の権利移動は効力を生じません。

    これは、後から許可を取れば済むという話ではなく、許可がない間は権利が動いていないということです。だから農地の売買では、契約を許可の取得を条件とする形にしておくのが通常です。許可が下りなければ契約が効力を持たないようにしておかないと、当事者の立場が不安定になります。

    転用そのものへの措置

    4条・5条に違反して転用した場合には、都道府県知事等から工事の停止や原状回復その他違反を是正するために必要な措置を命じられることがあります(農地法51条)。元の農地に戻せという命令が出れば、造成した土地を戻す費用は自己負担です。

    罰則も定められています。無許可転用については3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金とされ、法人に対しては1億円以下の罰金という重い定めがあります。刑法の改正により、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されているため、古い資料では懲役と書かれていることがあります。

    実際上いちばん困ること

    法律上の効果よりも、実務で先に問題になるのは次の二つです。

    第一に、地目変更の登記ができません。不動産登記法37条は、地目に変更があったときは1か月以内に変更の登記を申請しなければならないと定めていますが、無許可の転用では農地から宅地への地目変更が認められません。登記簿上は農地のままになります。

    第二に、建物を建てる手続きが進みません。適法な転用がされていない土地では、建築確認の手続きに支障が生じます。結果として、家を建てるつもりで土地を買ったのに何も建てられない、という事態になります。

    つまり、農地転用の許可は、家を建てるという目的の入口にある手続きです。ここを飛ばして先に進むことはできません。

    相続で農地を取得した場合

    3条の許可は不要だが届出が必要

    農地を相続で取得する場合、3条の許可は不要です。相続は当事者の合意によって権利を動かすものではなく、法律上当然に承継が起きるため、許可という仕組みになじまないからです。

    ただし、何の手続きもいらないわけではありません。相続などにより農地の権利を取得した者は、遅滞なくその旨を農業委員会に届け出なければならないとされています(農地法3条の3)。この届出を怠った場合には過料の定めがあります。

    許可が不要であることと、届出が不要であることは別です。ここを混同して手続きをしないまま放置している例が少なくありません。相続で取得したら、まず農業委員会に届け出てください。

    相続登記の義務化との関係

    農地法の届出とは別に、不動産の相続登記についても手続きが必要です。相続登記は令和6年4月から義務化され、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければならないとされています。

    農業委員会への届出と法務局への登記申請は、それぞれ別の手続きです。片方を済ませてももう片方は残ります。相続にあたっての不動産の扱いは「相続と不動産の基礎」、登記の仕組みは「不動産登記の基礎」で扱っています。

    納税猶予を受けている農地に注意

    相続税には、一定の要件のもとで農地等について納税を猶予する特例があります。この特例の適用を受けている農地を転用すると、猶予されていた税額を利子とともに納付しなければならなくなる場合があります。

    転用の可否だけを考えて手続きを進めると、想定していなかった税負担が生じることがあります。相続で取得した農地を転用または売却しようとする場合は、先に税理士へ相談してください。この点は農業委員会では判断できません。

    転用できる農地かどうか

    立地で決まる

    農地転用の許可が下りるかどうかは、申請者の事情よりも、その農地がどこにあるかで大きく決まります。良好な営農条件を備えた農地ほど厳しく守られ、市街地に近い農地ほど転用が認められやすい、という考え方です。

    区分は五つあります。上から順に、農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地、第2種農地、第3種農地です。上に行くほど転用が難しくなります。

    農用地区域内農地

    農業振興地域の整備に関する法律に基づき、市町村が定める農業振興地域整備計画の中で農用地区域に指定されている農地です。通称で青地と呼ばれます。

    農用地区域内の農地は、原則として転用が認められません。転用したい場合は、まず農業振興地域整備計画を変更して農用地区域から外す手続き、いわゆる農振除外が必要になります。この手続きは要件が厳しく、認められるとは限りません。計画変更の時期も自治体ごとに定められているため、思い立ってすぐ進むものではありません。

    農地付きの土地を検討するとき、最初に確認すべきなのがこの青地かどうかです。青地であれば、そのままでは家は建てられません。

    甲種農地と第1種農地

    甲種農地は、市街化調整区域内にある特に良好な営農条件を備えた農地です。土地改良事業などの対象となってから一定期間内の農地などが該当します。第1種農地は、おおむね10ヘクタール以上の一団の農地や、土地改良事業の施行区域内にある農地など、良好な営農条件を備えた農地です。

    いずれも原則として不許可です。ただし第1種農地については、公共性の高い事業のためなど、例外的に許可される場合が定められています。

    第2種農地と第3種農地

    第2種農地は、市街地の区域内または市街化の傾向が著しい区域に近接する区域内にある農地などで、第3種農地に当たらないものです。周辺の他の土地では目的を達成できない場合に許可されます。つまり、代替地がないことを示す必要があります。

    第3種農地は、市街地の区域内にある農地や、駅などから近い範囲にある農地です。すでに市街化が進んだ区域にあるため、原則として許可されます。

    調べる順序

    自分の農地がどこに当たるかは、次の順で調べると効率的です。第一に、市街化区域内かどうか。市街化区域内なら届出で済みます。第二に、農用地区域内かどうか。青地なら転用は原則できません。第三に、それ以外の場合の農地区分。

    第一と第三は市町村の都市計画担当と農業委員会、第二は農政担当が窓口になります。いずれも問い合わせれば教えてもらえる情報です。土地を買う前の調査全般については「物件調査の進め方」を参照してください。

    農地を宅地にするまでの流れ

    まず事前相談から

    手続きは、いきなり申請書を出すところから始まりません。市町村の農業委員会への事前相談から始めます。ここで、その農地の区分、転用の見込み、必要な書類、審議の日程を確認します。

    見込みが立たない状態で書類を揃えても無駄になります。相談の段階で、そもそも転用が難しいと分かることもあります。その場合は、後述する別の選択肢を検討することになります。

    申請から許可まで

    申請は農業委員会に提出し、農業委員会が現地調査や審議を経て意見を付したうえで、都道府県知事等に送られます。許可権者の判断を経て、許可または不許可が決まります。

    農業委員会の審議は、多くの市町村で月に一度の周期で行われ、締切が定められています。締切を過ぎると次の回に回るため、日程は事前に確認してください。

    申請から許可までにかかる期間は、農地の区分、申請の内容、自治体の運用によって大きく異なります。一般的な期間としてこの記事で数字を示すことはしません。実際の見込みは、その土地を所管する農業委員会に確認するのが確実です。

    工事、完了報告、地目変更登記

    許可を受けたら、許可された目的と計画のとおりに工事を行います。許可された目的以外に使うことはできません。目的を変更したい場合は、あらためて手続きが必要になります。

    工事が完了したら、農業委員会等への報告を行います。そのうえで、法務局で地目を農地から宅地等へ変更する登記を申請します。前述のとおり、地目に変更があったときは1か月以内に申請することとされています(不動産登記法37条)。

    費用について

    手続きにかかる費用は、書類の取得費用、測量や設計が必要な場合の費用、専門家に依頼する場合の報酬など、案件によって幅があります。この記事では具体的な金額を示しません。自治体や案件によって大きく変わるものを、相場として示すことは適切ではないためです。

    見積もりが必要な場合は、農業委員会に手続きの範囲を確認したうえで、行政書士や土地家屋調査士に個別に相談してください。

    転用後の税負担

    農地は、宅地に比べて固定資産税の評価が低く抑えられています。転用して地目が変われば、課税の扱いも変わります。住宅を建てた場合には住宅用地に関する特例がありますが、農地であったときと同じ水準にとどまるわけではありません。

    転用の判断は、手続きの費用だけでなく、その後の保有コストも含めて考える必要があります。固定資産税の特例については「固定資産税」で扱っています。

    転用の許可だけでは足りない場合

    市街化調整区域では都市計画法の手続きが別にある

    見落とされやすいのが、農地法の許可と都市計画法の手続きが別物だという点です。市街化調整区域にある農地について5条の許可を得たとしても、それだけで家を建てられるわけではありません。

    市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域として定められています。この区域内で建築物を建てるためには、都市計画法上の開発許可、あるいは開発行為を伴わない場合には建築等の許可が必要になります。農地法の許可は農地を減らしてよいかという判断であり、都市計画法の許可は市街化を抑制すべき区域に建物を建ててよいかという判断です。目的が違うため、片方が通っても、もう片方が通るとは限りません。

    実際には、農地法と都市計画法の手続きは並行して進められ、両方の見込みが立って初めて話が進みます。市街化調整区域の農地を検討する場合は、農業委員会だけでなく、都市計画の担当窓口にも相談してください。開発許可の要否は「開発許可の要否」で扱っています。

    なお、市街化区域内の農地であれば、農地法は届出で済み、都市計画法上も市街化を進める区域なので、この二重の壁は生じません。市街化区域内かどうかで手続きの重さが大きく変わるのは、この点も理由です。

    農地の一部だけを転用する場合

    一筆の農地の一部だけを宅地にしたい、という相談は珍しくありません。この場合、転用する部分を特定する必要があり、測量や分筆の手続きが伴います。

    分筆は土地家屋調査士が扱う手続きで、隣地との境界の確認が必要になることがあります。境界が確定していない土地では、ここに時間がかかります。農地転用の申請だけを考えていると、この工程が抜け落ちます。

    一時的に転用する場合

    工事の資材置き場のように、期間を限って農地以外の用途に使い、その後は農地に戻すという使い方もあります。この場合も転用にあたるため、一時転用として許可の対象になります。期間が定められ、期間の終了後は農地に戻すことが前提です。

    一時転用だから手続きが不要、という理解は誤りです。期間を限る分だけ判断の枠組みが違うだけで、無許可で使えるわけではありません。

    営農を続けながら発電設備を置く場合

    農地に支柱を立てて上部で太陽光発電を行い、下部で耕作を続ける形態があります。この場合、支柱の基礎部分について一時転用の許可を受ける扱いになります。

    許可には期間が定められ、営農が適切に継続されていることを前提に更新する仕組みになっています。下部の農地で収穫が確保できていないと判断されれば、継続が認められないことがあります。設備を置けば農業をやめてよい、という制度ではありません。検討する場合は、必ず事前に農業委員会と都道府県の担当窓口に相談してください。

    農地付きの物件を検討するとき

    契約は許可を条件にする

    農地を買って宅地にする場合、5条の許可が下りなければ権利移動の効力が生じません。したがって、契約は許可を得られることを条件とする形にするのが通常です。

    許可が下りなかった場合に契約がどうなるか、支払った金銭がどう扱われるかは、契約書の定めによります。ここを確認せずに手付金を支払うと、許可が下りなかったときに争いになります。

    重要事項説明で説明される

    宅地建物取引業者が仲介する取引であれば、農地法の制限は重要事項として説明されます。宅建業法35条1項2号は、都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で政令で定めるものを説明事項としており、農地法の制限もこれに含まれます。

    説明を受ける側としては、その土地が農地に当たるのか、どの区分なのか、許可と届出のどちらが必要なのか、いつまでに手続きが終わる見込みなのかを、その場で確認してください。重要事項説明の全体像は「重要事項説明の実務」で扱っています。

    なお、個人間で直接売買する場合には、この説明の機会がありません。売主も買主も農地法の規制を知らないまま契約してしまう例があるため、専門家に確認する手間を惜しまないでください。

    現地で確認すること

    農地は、宅地として使うことを前提に整備されていません。したがって、法律上の手続きとは別に、土地の状態を確認する必要があります。

    上下水道、ガス、電気が敷地まで来ているか。来ていない場合、引き込みに何が必要か。接道はどうなっているか。農道にしか接していない場合、建築の要件を満たさないことがあります。地盤はどうか。水田であった土地は軟弱な場合があり、地盤改良の費用が発生することがあります。

    これらは転用の許可とは別の問題です。許可が下りることと、家を建てられることは同じではありません。

    生産緑地の可能性

    市街化区域内の農地であっても、生産緑地地区に指定されている場合があります。生産緑地地区内では、建築物の新築や宅地の造成などに市町村長の許可が必要です。

    市街化区域内だから届出だけで済む、と考えていると、この規制を見落とします。生産緑地を含む都市計画上の規制は「その他の法令上の制限」でも扱っています。

    転用しない選択肢

    農地バンクを使う

    転用が難しい農地を持て余している場合、農地中間管理機構、通称農地バンクを使う方法があります。農地の貸し手と借り手をつなぐ都道府県ごとの公的な機関で、農地を貸し出すことで管理の負担を減らしつつ、賃料を得られる場合があります。

    農地を貸すこと自体は農地法3条の対象ですが、農地バンクを介する場合の手続きは機構が案内します。まずは市町村の農政担当か農業委員会に相談してください。

    農地のまま売る

    農地のまま売ることもできます。この場合は3条の許可を受けることになり、買い手はその農地を効率的に利用し、農作業に常時従事することなどが求められます。誰にでも売れるわけではありませんが、地域に耕作の担い手がいれば成立します。

    前述のとおり下限面積の要件は廃止されたため、以前より条件は緩和されています。ただし他の要件は残っているので、農業委員会に見込みを確認してください。

    放置することの負担

    転用も貸し出しも売却もせずに放置すると、負担だけが残ります。管理を怠れば雑草が繁茂し、周辺の農地に影響が及びます。農業委員会には、利用されていない農地の所有者に対して利用意向を調査し、必要な措置を求める仕組みがあります。

    固定資産税は農地としての評価であっても課税されます。管理費用と税負担が続くため、使わない農地をそのままにしておくことは、多くの場合いちばん不利な選択になります。

    試験での出題ポイント

    農地法は宅建試験でほぼ毎年出題される分野です。実務で押さえるべき点と、試験で問われる点はかなり重なります。

    許可権者の入れ替え

    最も多い作り方が、3条の許可権者を都道府県知事等とする、4条・5条の許可権者を農業委員会とする、という入れ替えです。3条は農業委員会、4条・5条は都道府県知事等という対応を、逆にして誤り肢を作ります。

    理由から覚えておけば間違えません。農地が減らない3条は地域の判断、農地が減る4条・5条はより広い立場の判断です。

    市街化区域の特例の範囲

    市街化区域内の特例が3条にも及ぶかのような肢が作られます。特例があるのは4条と5条だけです。また、届出先を都道府県知事等とする誤り肢も定番で、正しくは農業委員会です。「あらかじめ」という時期の要件を落とす形もあります。

    無許可の効果の違い

    3条の許可を受けない権利移動は効力を生じない、という点と、4条・5条違反には原状回復命令や罰則がある、という点を混ぜた肢が作られます。効力が生じないという私法上の効果と、是正命令や罰則という公法上の効果は別のものです。

    相続の扱い

    相続による取得に3条の許可が必要だとする肢、あるいは届出も不要だとする肢が作られます。許可は不要、届出は必要(3条の3)という組み合わせを覚えてください。

    採草放牧地の扱いの違い

    条文をよく読むと、三つの条文で対象が微妙に違います。3条は農地と採草放牧地の両方が対象です。4条は「農地を農地以外のものにする」場合の規定なので、採草放牧地の転用は対象外です。5条は、農地を農地以外のものにするための権利移動と、採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く)にするための権利移動が対象です。

    つまり、採草放牧地を農地にするために権利を動かす場合は5条ではなく3条の問題になります。細かい部分ですが、条文の書き分けをそのまま使った肢が作られます。実務ではまず問題になりませんが、試験対策としては押さえておく箇所です。

    現況主義

    登記の地目が宅地であれば農地法の適用がない、という肢も作られます。判断は現況であり、登記の地目ではありません。休耕地も農地に含まれます。関連する横断論点は「法令上の制限の横断整理」で扱っています。

    覚え方・整理の仕方

    表ではなく二つの質問で覚える

    3条・4条・5条を一覧で覚えようとすると、権者と特例と効果が混ざります。二つの質問に置き換えてください。農地のままか、農地でなくなるか。権利が動くか、動かないか。この二問で条文が決まります。

    条文が決まれば、権者は自動的に決まります。3条なら農業委員会、4条・5条なら都道府県知事等です。

    「減るかどうか」で権者を導く

    権者を忘れたときは、その手続きで農地が減るかどうかを考えます。減らないなら地域の判断で足りるので農業委員会、減るなら広域の判断が必要なので都道府県知事等。この筋で復元できます。

    特例は「市街化区域+転用」の組み合わせで覚える

    市街化区域の届出特例は、市街化区域であることと、転用が起きること(4条・5条)の両方が揃ったときにだけ働きます。片方だけでは働きません。3条には適用されず、市街化調整区域には適用されない、という二方向の限定をセットで覚えてください。

    相続は「許可なし・届出あり」で一組にする

    相続の扱いは、許可と届出を対にして覚えます。許可は不要、届出は必要。片方だけを覚えていると、どちらの肢にも引っかかります。相続登記の義務とも別だ、という三点をまとめて持っておくと確実です。

    農地区分は上から順に並べる

    農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地、第2種農地、第3種農地。この順に並べ、上ほど厳しく、下ほど緩いという方向を覚えます。原則不許可が上の三つ、代替地がなければ許可が第2種、原則許可が第3種です。順序で覚えておけば、個別の定義を忘れても方向は判断できます。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 登記簿の地目が宅地になっている土地は、現に耕作されていても農地法の規制を受けない(○か×か)


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    ×:農地法2条1項は農地を「耕作の目的に供される土地」と定義しており、判断は登記簿の地目ではなく現況によります。地目が宅地でも、現に耕作されていれば農地法上の農地です。逆に地目が田や畑でも、現況が農地でなければ規制の対象になりません。

    Q2. 自分の所有する農地を駐車場にする場合、農業委員会の許可を受けなければならない(○か×か)


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    ×:自己の農地の転用は4条の場面で、許可権者は都道府県知事等(都道府県知事または指定市町村の長)です。農業委員会が許可権者となるのは、農地を農地のまま権利移動する3条の場合です。農地が減る手続きは、より広い立場である都道府県知事等が判断するという整理になっています。

    Q3. 市街化区域内の農地を宅地に転用する場合、あらかじめ農業委員会に届け出れば許可は不要である(○か×か)


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    ○:農地法4条1項ただし書および5条1項ただし書により、市街化区域内の農地については、あらかじめ農業委員会に届け出て転用する場合、許可は不要です。ポイントは、この特例が4条・5条にしかなく3条には及ばないこと、届出先が都道府県知事等ではなく農業委員会であること、そして転用前に届け出る必要があることの三点です。

    Q4. 相続により農地を取得した場合、農地法3条の許可は不要であり、農業委員会への届出も不要である(○か×か)


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    ×:許可は不要ですが、届出は必要です。農地法3条の3により、相続等により農地の権利を取得した者は、遅滞なくその旨を農業委員会に届け出なければならず、怠った場合には過料の定めがあります。これとは別に、相続登記も令和6年4月から義務化されています。

    Q5. 農地法3条の許可を受けないでした農地の売買は、後から許可を受けるまでの間、所有権移転の効力を生じない(○か×か)


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    ○:農地法3条6項により、許可を受けないでした行為は効力を生じません。代金を支払っていても所有権は移転しません。5条の場合も同様に権利移動の効力が生じないため、農地の売買契約は許可の取得を条件とする形にしておくのが通常です。

    よくある質問

    Q. 農地を相続したが、耕作するつもりがありません。どうすればよいですか。
    A. まず農業委員会への届出(農地法3条の3)を済ませ、相続登記も行ってください。そのうえで、農地のまま貸す、農地のまま売る、転用する、という選択肢を検討します。転用の可否は立地で決まるため、農業委員会に区分を確認するところから始めます。相続税の納税猶予を受けている場合は、動かす前に税理士に相談してください。

    Q. 農地転用の手続きは自分でできますか。
    A. 市街化区域内の届出は書類が比較的少なく、自分で行っている人もいます。市街化調整区域の許可申請は、添付する図面や計画書の種類が多く、審査の基準も個別性が高いため、行政書士に依頼する例が多くなります。どちらにしても、まず農業委員会で必要書類を確認してください。

    Q. 手続きにどれくらいの期間と費用がかかりますか。
    A. 農地の区分、申請の内容、自治体の運用によって大きく異なるため、この記事では数字を示しません。農業委員会の審議は月に一度の周期で行われることが多く、締切も定められています。実際の見込みは、その土地を所管する農業委員会と、依頼する専門家に確認してください。

    Q. 農地を買って家を建てたいのですが、住宅ローンは使えますか。
    A. 金融機関の判断によります。転用の許可が下りていない段階では、土地が農地のままであるため、担保としての評価や融資の実行時期が通常の宅地と異なる扱いになることがあります。契約を進める前に、金融機関に手続きの順序を確認してください。

    Q. 「青地」と言われましたが、どういう意味ですか。
    A. 農業振興地域整備計画で農用地区域に指定された農地の通称です。原則として転用できず、転用するには農用地区域から除外する手続きが必要になります。要件が厳しく、計画変更の時期も限られるため、短期間で家を建てたい場合には現実的でないことが多い区域です。

    まとめ

    農地転用について、押さえるべき点を三つに整理します。

    第一に、農地かどうかは現況で決まります(農地法2条1項)。登記簿の地目は判断基準ではありません。地目が宅地でも耕作されていれば農地であり、農地法の手続きが必要です。

    第二に、条文は二つの質問で選べます。農地のまま権利を動かすなら3条で農業委員会、自分の農地を転用するなら4条、転用目的で権利を動かすなら5条で、4条・5条は都道府県知事等です。市街化区域内であれば、あらかじめ農業委員会に届け出ることで4条・5条の許可は不要になります。

    第三に、転用できるかどうかは立地でほぼ決まります。農用地区域内農地は原則として転用できず、除外の手続きが必要です。土地を検討する順序は、市街化区域かどうか、青地かどうか、農地区分は何か、の三段階です。期間や費用は自治体と案件で異なるため、必ず所管の農業委員会に確認してください。

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