中古住宅の瑕疵と契約不適合|新築との保護の差
中古住宅の契約不適合責任を新築との差から整理。品確法の10年責任が中古に及ばない理由、宅建業法40条の2年、個人が売主のときの免責特約まで条文根拠つきで解説します。
目次
この記事は、中古住宅を買うという場面に絞って、買主がどこまで保護されるかを整理します。契約不適合責任そのものの要件と効果は契約不適合責任、宅建業法40条による特約の制限は契約不適合責任の特約制限、新築住宅についての品確法と住宅瑕疵担保履行法は住宅瑕疵担保履行法にあります。ここでは、それらの制度が中古住宅という場面でどう働くか、あるいは働かないかを扱います。
結論を先に述べます。中古住宅の買主にとって最も大きな事実は、品確法の10年責任が及ばないことです。品確法95条1項は「新築住宅の売買契約においては」と限定しており、中古住宅の売買には適用がありません。新築であれば構造耐力上主要な部分等について引渡しから10年の責任が法律上当然に生じますが、中古ではその土台がありません。
そして次に大きいのが、売主が誰かで規律がまるごと変わることです。宅建業者が自ら売主なら宅建業法40条により通知期間は引渡しの日から2年以上が保証されますが、売主が個人であれば40条は働かず、「契約不適合責任を負わない」という特約も原則として有効になります。中古住宅の売主は個人であることが多いので、この差は中古において特に現実的です。
新築なら10年、中古を業者から買えば2年、中古を個人から買えば特約次第。この落差を理解することが、中古住宅の法的な立ち位置を掴むということです。
「瑕疵」はどこから消えて、どこに残ったか
民法の売買の規定からは消えた
2020年4月1日に施行された改正民法により、売買の担保責任は「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと組み替えられました。現行の民法562条以下に「瑕疵」という語は使われていません。
条文が基準としているのは「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」ことです。目的物が客観的に劣っているかどうかではなく、その契約で何が予定されていたかが基準になりました。この転換が中古住宅で持つ意味は後の節で扱います。
品確法には残った。しかも定義し直された
ところが「瑕疵」という語が法令から消えたわけではありません。住宅の品質確保の促進等に関する法律、いわゆる品確法は、現在も「瑕疵」を用いています。
そして重要なのは、品確法が自ら定義規定を置いていることです。
住宅の品質確保の促進等に関する法律2条5項
「この法律において『瑕疵』とは、種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態をいう。」
「瑕疵」を「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態」と定義しています。これは民法562条の文言そのものです。
つまり品確法の「瑕疵」は、旧民法の「隠れた瑕疵」がそのまま残ったものではありません。民法の改正に合わせて、中身を契約不適合に揃えたうえで、語だけを維持したものです。用語は違うが、判断の基準は民法と同じところに置かれている。この定義があることで、二つの法律の間に食い違いが生じないようになっています。
なぜ語を残したのか。品確法と住宅瑕疵担保履行法は「瑕疵」という語を条文の随所で使っており、法律名にも含まれています。すべてを言い換えると条文全体に手を入れることになるので、定義規定を置いて中身を合わせる方法が採られたと理解しておけば足ります。
住宅瑕疵担保履行法も法律名に持っている
特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律、通称「住宅瑕疵担保履行法」も、法律名に「瑕疵」を含みます。この法律は品確法が定めた10年責任を果たせるだけの資力を売主に確保させるもので、供託または保険による資力確保措置を義務づけています。制度の全体は住宅瑕疵担保履行法、供託額の算定は住宅瑕疵担保履行法の供託額で扱っています。
言葉から法律が分かる
以上をまとめると、用語の使い分けは実益があります。
「契約不適合」と書かれていれば、民法または宅建業法の話です。民法562条以下の枠組み、あるいは宅建業法40条による特約の制限です。
「瑕疵」と書かれていれば、品確法または住宅瑕疵担保履行法の話です。新築住宅についての10年責任か、その資力確保の仕組みです。
中古住宅を探していると、「瑕疵保険」「瑕疵担保」といった言葉に出会います。そのとき、どちらの制度の話をしているのかを見分ける手がかりになります。そして後で見るとおり、品確法の枠組みは中古住宅には及びません。
中古住宅では品確法の10年責任が働かない
95条1項は「新築住宅の売買契約」に限られている
住宅の品質確保の促進等に関する法律95条1項(新築住宅の売主の瑕疵担保責任)
「新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時)から十年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について、民法第四百十五条、第五百四十一条、第五百四十二条、第五百六十二条及び第五百六十三条に規定する担保の責任を負う。」
条文の書き出しが「新築住宅の売買契約においては」です。中古住宅の売買契約は、この条文の対象外です。
そして95条2項が「前項の規定に反する特約で買主に不利なものは、無効とする」としています。新築であれば10年を短縮する特約は無効になります。強行規定です。
中古ではこの強行規定そのものが登場しません。短縮も何も、もともと10年の責任が生じていないからです。
新築住宅の定義には二つの要件がある
では「新築住宅」とは何か。品確法2条2項が定義しています。
住宅の品質確保の促進等に関する法律2条2項
「この法律において『新築住宅』とは、新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して一年を経過したものを除く。)をいう。」
要件は二つです。
第一に、まだ人の居住の用に供したことがないこと。誰かが一度でも住んだ住宅は、その時点で新築住宅ではなくなります。
第二に、建設工事の完了の日から起算して1年を経過していないこと。括弧書きで、1年を過ぎたものが除かれています。
この二つは「かつ」の関係です。どちらか一方でも欠ければ新築住宅ではありません。
未入居でも1年を過ぎれば新築住宅ではない
第二の要件が実務上の落とし穴になります。誰も住んでいなくても、工事完了から1年を過ぎれば新築住宅ではありません。
売れ残った建売住宅がこれに当たります。人が住んだことは一度もない。見た目も新品です。しかし工事完了から1年を過ぎていれば、品確法上は新築住宅ではないので、95条の10年責任は生じません。
逆もあります。工事完了から半年しか経っていなくても、誰かが一度でも居住していれば新築住宅ではありません。
「新品かどうか」と「品確法上の新築住宅かどうか」は別の概念です。中古住宅を検討する人が最初に確認すべきなのは、その物件が品確法の新築住宅に当たるかどうか、という一点です。当たらなければ、10年責任は最初から存在しません。
対象となる部位も限定されている
なお、新築住宅であっても、95条1項が対象とするのは「住宅の構造耐力上主要な部分等」に限られます。94条1項の括弧書きがこれを「構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの」と定義し、さらに「構造耐力又は雨水の浸入に影響のないもの」を除いています。
内装の仕上げ、給排水設備、建具、電気設備といった部分は、10年責任の対象外です。「新築住宅は10年間すべて保証される」という理解は正確ではありません。
この限定は、中古との比較を考えるときにも意味を持ちます。新築であっても法律上当然に守られるのは構造と雨水の二つだけなので、設備の不具合については新築でも中古でも契約の内容次第、ということになります。
10年あっても通知期間はかかる
もう一点、条文を読み込んでおく必要があります。
住宅の品質確保の促進等に関する法律95条3項
「第一項の場合における民法第五百六十六条の規定の適用については、同条中『種類又は品質に関して契約の内容に適合しない』とあるのは『住宅の品質確保の促進等に関する法律第九十五条第一項に規定する瑕疵がある』と、『不適合』とあるのは『瑕疵』とする。」
民法566条の適用が排除されているのではなく、読み替えたうえで適用されています。
566条は、種類・品質の不適合について、買主が不適合を知った時から1年以内に通知しなければ責任を追及できないとする規定です。これが「瑕疵」に読み替えて適用されるということは、品確法の10年責任についても、瑕疵を知った時から1年以内の通知が必要だということです。
10年間はいつでも請求できる、という意味ではありません。10年という期間の中で瑕疵を発見したら、そこから1年以内に通知しなければならない。二重の期間制限がかかっています。
20年まで伸ばすことはできる
住宅の品質確保の促進等に関する法律97条(瑕疵担保責任の期間の伸長等)
「住宅新築請負契約又は新築住宅の売買契約においては、請負人が第九十四条第一項に規定する瑕疵その他の住宅の瑕疵について同項に規定する担保の責任を負うべき期間又は売主が第九十五条第一項に規定する瑕疵その他の住宅の瑕疵について同項に規定する担保の責任を負うべき期間は、注文者又は買主に引き渡した時から二十年以内とすることができる。」
短縮はできないが、20年以内であれば伸長できます。95条2項が買主に不利な特約を無効とし、97条が有利な方向への変更を許している。片方向にだけ動かせるという構造です。
これも新築住宅についての規定なので、中古住宅では出番がありません。
新築と中古で保護の厚みがどれだけ違うか
前節までを踏まえて、三つの場面を並べます。同じ「住宅を買う」でも、法律上の保護はまったく違います。
新築住宅を宅建業者から買った場合
品確法95条1項により、構造耐力上主要な部分等について引渡しから10年の担保責任が法律上当然に生じます。これを短縮する特約は95条2項により無効です。
さらに住宅瑕疵担保履行法により、売主である宅建業者は供託または保険による資力確保措置を講じる義務を負います。売主が倒産しても補修費用を回収できる仕組みが用意されているということです。
加えて、宅建業者が自ら売主なので、構造・雨水以外の部分についても宅建業法40条が働きます。
法律による保護が三層に積まれた状態です。
中古住宅を宅建業者から買った場合
品確法は適用されません。新築住宅ではないからです。したがって10年責任もなく、住宅瑕疵担保履行法による資力確保措置の義務もありません。
残るのは、民法の契約不適合責任と、宅建業法40条による特約の制限です。
宅地建物取引業法40条1項(担保責任についての特約の制限)
「宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。」
原則は民法566条どおり、つまり不適合を知った時から1年以内の通知です。そのうえで、通知期間を引渡しの日から2年以上とする特約だけが例外的に許されます。これに反する特約は40条2項により無効になります。
ここで注意が要ります。40条は「引渡しから2年以上の責任期間を設けなければならない」と定めているのではありません。特約を置かなければ民法566条がそのまま適用されます。40条が保証しているのは、特約を置くならこの水準を下回るなということです。この構造の詳細と、二つの起算点の有利不利については契約不適合責任の特約制限で扱っています。
新築の10年に対して、中古では2年。これが業者から買った場合の落差です。
中古住宅を個人から買った場合
宅建業法40条は適用されません。40条は「宅地建物取引業者は、自ら売主となる……売買契約において」という規定なので、売主が個人であれば働きません。
適用されるのは民法だけです。そして民法の契約不適合責任の規定は任意規定なので、当事者が合意すれば内容を変えられます。通知期間を引渡しから3か月に短縮する特約も、責任の範囲を構造部分に限る特約も、「契約不適合責任を一切負わない」という全部免責の特約も、民法上は可能です。
中古住宅の売主は個人であることが多いので、この場面が実際には最も頻繁に生じます。
もっとも、民法自身が一つ限界を置いています。
民法572条(担保責任を負わない旨の特約)
「売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。」
免責特約があっても、売主が知っていて告げなかった事実については責任を免れられません。ただし条文は「知りながら告げなかった」と書いており、売主に調査義務を課しているわけではありません。売主が本当に知らなかった不適合については、免責特約の効力が及びます。
落差が生じる理由
なぜこれほど差があるのか。理由は保護の必要性の違いにあります。
新築住宅は、売主である事業者が自ら建てたか、建てさせたものです。品質を作り込む立場にあり、どういう施工をしたかを知りうる立場にもあります。だから重い責任を負わせても不合理ではありません。
中古住宅の売主は、多くの場合その家に住んでいただけの人です。建物の内部でどういう劣化が進んでいるかを知る立場にありません。ここに10年の無過失責任を課せば、誰も中古住宅を売れなくなります。
そして中古住宅は、築年数に応じた劣化があることを前提に、その分安く取引されています。新築と同じ品質を保証させるのは、価格設定と釣り合いません。
保護が薄いのは制度の不備ではなく、取引の性質に合わせた結果です。したがって買主の側では、薄い保護を前提に自分で情報を取りにいく必要がある、ということになります。
中古では「売主が誰か」を最初に確認する
40条が働くのは自ら売主のときだけ
前節で見たとおり、宅建業法40条は宅建業者が自ら売主となる場合の規定です。8種制限の一つで、8種制限の全体像で扱っている枠組みの中にあります。
媒介として業者が関与しているだけでは、40条は働きません。中古住宅の取引では、個人の売主と個人の買主の間に業者が媒介として入る形が一般的です。この場合、契約の当事者は個人同士なので、8種制限は一切適用されません。
業者が間に入っているから安心だ、という直感は、この点については当たりません。媒介業者には重要事項説明の義務がありますが、それは情報提供の義務であって、売主の担保責任を厚くするものではありません。
買主が業者なら40条も外れる
宅地建物取引業法78条2項
「第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない。」
40条はこの範囲に含まれるので、買主が宅建業者であれば適用されません。業者間の中古取引では、全部免責の特約も有効です。適用除外の範囲は8種制限が適用されない場合で扱っています。
売主が事業者で買主が消費者のとき
売主が宅建業者ではないが法人である、あるいは事業として不動産を売却している個人である、という場合があります。この場合、宅建業法40条は働きませんが、消費者契約法による制限がかかりえます。
消費者契約法2条1項が「消費者」を「個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)」と定義し、同条2項が「事業者」を「法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人」と定義しています。法人であれば当然に事業者であり、個人でも事業として売るなら事業者です。
消費者契約法8条1項(抜粋)
「次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項 二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項」
全部免除は常に無効、一部免除は故意・重過失の場合に無効という二段構えです。
ただしここで、8条2項の例外を見落とさないでください。1号・2号に該当する条項のうち、引き渡された目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合の損害賠償責任を免除するものについては、次の場合には1項が適用されません。第一に、その契約において事業者が履行の追完をする責任または不適合の程度に応じた代金の減額をする責任を負うこととされている場合。第二に、他の事業者が損害賠償責任の全部もしくは一部または追完責任を負うこととされている場合です。
追完や代金減額という別の救済が残っているなら、損害賠償責任の免除条項が有効になりうるということです。買主が丸裸になるわけではないので、免除を認めてよいという判断です。
そしてもう一つ限定があります。8条が無効とするのは「損害賠償責任」を免除する条項だけです。追完請求権や代金減額請求権、解除権そのものを排除する条項は8条の対象ではありません。それらは10条の一般条項、すなわち民法1条2項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するかどうかで判断されることになります。
宅建業法40条ほど強力な保護ではないという点を押さえてください。40条は通知期間について明確な下限を引きますが、消費者契約法8条は損害賠償責任の免除という限られた場面を扱い、しかも2項の例外があります。
確認の順序
以上から、中古住宅の契約書や重要事項説明書を読むときの順序が決まります。
第一に、その物件は品確法の新築住宅に当たるか。当たらなければ10年責任はありません。中古と呼ばれている物件は通常当たりませんが、未入居で工事完了から1年以内の物件であれば当たる可能性があります。
第二に、売主は宅建業者か。業者が自ら売主なら40条が働きます。個人なら働きません。
第三に、契約不適合責任についてどういう特約が置かれているか。売主が個人なら、その特約が原則として有効です。
この三段階を通してから、初めて自分がどこまで守られているかが分かります。重要事項説明書を受け取ったときの一般的な読み方は重要事項説明書の読み方で扱っています。
「契約の内容」が保護の輪郭を決める
基準は契約であって客観的な品質ではない
民法562条1項は「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」と定めています。旧民法の「瑕疵」が客観的な欠陥を意味したのに対し、現行法の基準は契約です。
この転換は、中古住宅において最も大きな意味を持ちます。
新築であれば、期待される品質はおおむね明確です。しかし中古住宅は一軒ごとに状態が違い、築年数も価格も違います。何をもって「適合していない」とするかは、その契約で何が前提とされていたかによって決まります。
築年数相応の劣化は不適合にならない
築30年の木造住宅を、築30年相応の価格で買った場合を考えてください。設備が古い、外壁に汚れがある、建具の建て付けが多少悪い。これらは築30年の建物として当然に想定される状態なので、契約の内容に適合していないとは言えません。
一方、同じ築30年でも、通常想定される範囲を超える構造上の欠陥があれば話が違います。基礎に重大な亀裂がある、シロアリで土台が損壊している、といった状態は、価格や説明の内容によっては不適合と評価されうるものです。
同じ状態でも、契約でどう位置づけられていたかで結論が変わる。これが契約責任として構成したことの帰結です。
現状有姿という言葉の意味
中古住宅の契約書で「現状有姿」という語を見かけます。あるがままの状態で引き渡す、という意味で使われます。
この語があるだけで契約不適合責任が消えるわけではありません。現状有姿は引渡しの態様についての合意であって、それ自体が責任を免除する条項とは限らないからです。責任を免除するのであれば、免責の特約が別に必要になります。
とはいえ、現状有姿という前提が置かれていること自体は、契約の内容を判断するうえでの材料になります。そのままの状態で引き渡すと合意していたのなら、その時点で存在した状態は契約の内容に織り込まれていた、と評価されやすくなるからです。
書面が契約の内容を作る例
「契約の内容」が書面によって形作られることを、条文が正面から認めている例があります。品確法6条です。
住宅の品質確保の促進等に関する法律6条3項
「新築住宅の建設工事の完了後に当該新築住宅の売買契約を締結した売主は、建設された住宅に係る住宅性能評価書(以下『建設住宅性能評価書』という。)若しくはその写しを売買契約書に添付し、又は買主に対し建設住宅性能評価書若しくはその写しを交付した場合においては、当該建設住宅性能評価書又はその写しに表示された性能を有する新築住宅を引き渡すことを契約したものとみなす。」
評価書を添付または交付しただけで、そこに表示された性能を有する住宅を引き渡す契約をしたものとみなされます。契約書の本文に性能を書き込まなくても、添付された書面の内容が契約の内容になるということです。
もっとも6条4項が、売主が売買契約書において反対の意思を表示しているときは適用しないとしています。みなしを外したければ、その旨を明示する必要があります。
この条文は新築住宅についてのものなので、中古住宅には適用されません。しかし発想としては、中古住宅でも同じことが起きます。説明され、書面に載った内容は、契約の内容を構成する材料になります。品確法6条は、その関係を新築について明文化したものだと理解しておくと、中古で「書面が効く」という感覚が掴みやすくなります。
だから重要事項説明書と契約書が効く
基準が契約である以上、契約書と重要事項説明書に何が書かれていたかが、保護の輪郭をそのまま決めます。
雨漏りの履歴が説明されていたなら、その雨漏りは契約の内容に織り込まれています。説明されていなかったなら、契約の内容に適合しないと主張する余地があります。
したがって、中古住宅では書面を読むこと自体が保護の一部です。説明された事項は、後から不適合だと言いにくくなる。逆に、説明されなかった事項について後で問題が出れば、それは不適合を主張する根拠になります。物件についてどこまで調査され、何が説明されるのかは物件調査で扱っています。
建物状況調査は責任を作る制度ではない
三つの条文が別々の役割を持っている
中古住宅の取引で建物状況調査、いわゆるインスペクションが話題になります。関係する条文は三つあり、それぞれ役割が違います。
媒介契約の段階で、宅地建物取引業法34条の2第1項4号が、既存の建物であるときは建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を媒介契約書面に記載させています。
重要事項説明の段階で、35条1項6号の2イが、建物状況調査を実施しているかどうか、実施している場合はその結果の概要を説明させています。
契約後の37条書面で、37条1項2号の2が、既存の建物であるときは建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項を記載させています。
実施義務はどこにもない
三つを並べると、業者に調査の実施を義務づけている条文が一つもないことが分かります。
34条の2第1項4号は「あっせんに関する事項」です。あっせんであって実施ではありません。調査する者を紹介するかどうかを書面に書かせているだけです。
35条1項6号の2イは「実施しているかどうか」の説明です。実施していなければ、実施していない旨を説明することになります。
37条1項2号の2は「当事者の双方が確認した事項」です。調査結果そのものではなく、売主と買主が何を確認し合ったかの記録です。
制度は、調査を強制するのではなく、調査の有無と結果を取引の場に載せる仕組みとして作られています。35条書面と37条書面の役割の違いは35条書面と37条書面の違い、35条側の説明事項の詳細は35条書面の記載事項一覧で扱っています。
調査をしても責任の範囲が変わるわけではない
もう一点、押さえておくべきことがあります。建物状況調査を実施したからといって、売主の担保責任が重くなったり軽くなったりするわけではありません。
調査は情報を明らかにする行為であって、責任を作る行為ではないからです。
ただし間接的な効果はあります。調査で判明した事項が説明され、契約の内容に織り込まれれば、その部分は不適合ではなくなります。前節で見たとおり、基準は契約だからです。売主の側からすれば、調査結果を明示して契約に取り込むことで、後から不適合を主張されるリスクを減らせます。
買主の側から見ると、調査は「守ってもらう」ための制度ではなく、「自分で判断する」ための材料だということになります。中古住宅の保護が薄いという前提と、この位置づけは整合しています。
試験での出題ポイント
品確法の適用範囲
「宅建業者が自ら売主となる中古住宅の売買契約においては、構造耐力上主要な部分について引渡しから10年間の担保責任を負う」は誤りです。品確法95条1項は新築住宅の売買契約に限られます。
新築住宅の定義も問われます。「まだ人の居住の用に供したことがない」ことと「建設工事の完了の日から起算して1年を経過していない」ことの二つが必要で、片方でも欠ければ新築住宅ではありません(品確法2条2項)。未入居でも工事完了から1年経過していれば新築住宅ではないという結論が定番です。
対象部位の限定も出ます。10年責任の対象は構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分だけで、設備は含まれません。
品確法と民法566条の関係
「品確法の10年責任については、10年以内であればいつでも権利を行使できる」は誤りです。95条3項が民法566条を読み替えて適用しているので、瑕疵を知った時から1年以内の通知が必要です。
期間の伸長と短縮
95条2項により買主に不利な特約は無効、97条により20年以内への伸長は可能。短縮はできないが伸長はできる、という片方向の構造です。
40条の適用場面
売主が個人であれば40条は適用されません。媒介業者が関与していても結論は変わりません。買主が宅建業者であれば78条2項により適用が外れます。
40条の読み方
「2年以上の責任期間を設けなければならない」ではありません。民法566条より買主に不利な特約を禁じたうえで、引渡しの日から2年以上の通知期間とする特約だけを例外的に許容する構造です。
民法572条
免責特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れません。ただし条文は「知りながら告げなかった」であり、調査義務を課すものではありません。
建物状況調査
「宅建業者は既存建物の売買の媒介にあたり、建物状況調査を実施しなければならない」は誤りです。34条の2第1項4号はあっせんに関する事項の記載、35条1項6号の2イは実施しているかどうかの説明であって、実施義務ではありません。
用語
現行の民法の売買の規定に「瑕疵」という語はありません。他方、品確法は2条5項で「瑕疵」を「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態」と定義したうえで使い続けています。
覚え方・整理の仕方
「10年・2年・特約次第」の三段で覚える
中古住宅の保護は、三つの場面を並べると一目で整理できます。
新築を業者から買えば10年(品確法95条1項)。中古を業者から買えば、特約があれば引渡しから2年(宅建業法40条)。中古を個人から買えば特約次第(民法の任意規定+572条の限界)。
数字が10・2・なしと減っていく。この並びで覚えると、どの場面にいるかを取り違えません。そして減っていく理由も一本です。売主が建物の品質にどれだけ関与したかが減っていくからです。
新築かどうかは「人」と「1年」で判定する
品確法の新築住宅は、人が住んだことがないことと工事完了から1年以内であることの二つです。
人と1年。この二語で判定できます。どちらか一方が欠ければ新築住宅ではありません。
「瑕疵」と書いてあれば品確法系
用語から法律を逆引きできます。「契約不適合」は民法と宅建業法、「瑕疵」は品確法と住宅瑕疵担保履行法。
そして品確法2条5項が「瑕疵=契約不適合」と定義しているので、中身は同じで、名前だけが法律ごとに違うと理解しておけば混乱しません。
中古で最初に見る三つ
新築住宅に当たるか。売主は業者か。特約はどうなっているか。
この順で確認すれば、自分に適用される規律が確定します。順序が大事です。第一の問いで新築住宅に当たれば10年責任があるので、第二・第三の検討は補足になります。当たらなければ第二の問いに進む、という流れです。
基準は契約であることを忘れない
中古住宅では、同じ状態でも契約の内容次第で結論が変わります。築年数相応の劣化は不適合にならず、説明されていた事項は契約に織り込まれます。
だから書面を読むことが保護の一部になる。制度が薄い分、情報を自分で取りにいく必要がある、という構造で理解してください。
理解度チェッククイズ
Q1. 宅地建物取引業者が自ら売主となって中古住宅を売却する場合、住宅の品質確保の促進等に関する法律により、構造耐力上主要な部分の瑕疵について引渡しの時から10年間の担保責任を負う。(○か×か)
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×:品確法95条1項は「新築住宅の売買契約においては」と限定しており、中古住宅の売買契約には適用されません。売主が宅地建物取引業者であっても結論は変わりません。中古住宅で働くのは民法の契約不適合責任と、宅建業法40条による特約の制限です。40条は民法566条より買主に不利な特約を禁じたうえで、通知期間を引渡しの日から2年以上とする特約だけを例外的に認めるもので、10年の責任を課すものではありません。新築なら10年、中古を業者から買えば特約により2年、という落差があります。Q2. 新たに建設された住宅で、まだ誰も居住したことがないものは、建設工事の完了の日から1年6か月が経過していても、品確法上の新築住宅に当たる。(○か×か)
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×:品確法2条2項は新築住宅を「新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して一年を経過したものを除く。)」と定義しています。未入居であることと、工事完了から1年を経過していないことの両方が必要で、括弧書きにより1年経過したものは除かれます。1年6か月が経過している以上、誰も住んだことがなくても新築住宅ではありません。したがって品確法95条1項の10年責任も、住宅瑕疵担保履行法による資力確保措置の義務も生じません。逆に、工事完了から半年しか経っていなくても一度でも人が居住していれば新築住宅ではなくなります。Q3. 品確法95条1項により売主が10年間の瑕疵担保責任を負う場合、買主は引渡しから10年以内であれば、瑕疵を知った時期にかかわらずいつでも権利を行使することができる。(○か×か)
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×:品確法95条3項は、同条1項の場合における民法566条の適用について、条文中の文言を「瑕疵」に読み替えると定めています。566条の適用を排除しているのではなく、読み替えたうえで適用しているということです。したがって10年という期間の中で瑕疵を発見した場合、そこから1年以内に売主へ通知しなければ責任を追及できなくなります。10年の期間制限と、知った時から1年の通知期間という、二重の制限がかかる構造です。なお95条2項により買主に不利な特約は無効ですが、97条により引渡しの時から20年以内への伸長は可能で、短縮はできないが伸長はできるという片方向の仕組みになっています。Q4. 宅地建物取引業者Aの媒介により、宅地建物取引業者でない個人Bが所有する中古住宅を、宅地建物取引業者でない個人Cが購入する場合、「売主は契約不適合責任を一切負わない」旨の特約は宅地建物取引業法40条により無効となる。(○か×か)
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×:40条1項は「宅地建物取引業者は、**自ら売主となる**宅地又は建物の売買契約において」と定めています。この事例で売主はBという個人であり、Aは媒介として関与しているにすぎません。したがって40条は適用されず、免責特約は民法上の任意規定性により原則として有効です。8種制限は、取引に業者が関与しているかどうかではなく、業者が自ら売主かどうかで決まります。ただし民法572条により、売主Bが知りながら告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れることができません。条文が「知りながら告げなかった」としている以上、Bが本当に知らなかった不適合には免責特約の効力が及びます。Q5. 宅地建物取引業者は、既存の建物の売買の媒介を行うにあたり、建物状況調査を実施したうえで、その結果の概要を重要事項として説明しなければならない。(○か×か)
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×:宅建業法35条1項6号の2イが求めているのは「建物状況調査を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要」の説明であり、調査の実施そのものを義務づけてはいません。実施していなければ、実施していない旨を説明することになります。媒介契約の段階で34条の2第1項4号が記載を求めているのも「建物状況調査を実施する者の**あっせん**に関する事項」であって、実施ではありません。契約後の37条1項2号の2が求めるのも「当事者の双方が確認した事項」であり、調査結果そのものではありません。三つの条文はいずれも、調査の有無と結果を取引の場に載せる仕組みであって、調査を強制するものではないという点で共通しています。まとめ
中古住宅を買う場面での保護の構造を整理します。
品確法は中古住宅に適用されません。95条1項が「新築住宅の売買契約においては」と限定しているためです。新築住宅の定義は、未入居であることと工事完了から1年以内であることの二つで(2条2項)、どちらか一方でも欠ければ当たりません。
したがって中古では10年責任という土台がありません。残るのは民法の契約不適合責任と、売主が宅建業者である場合の宅建業法40条だけです。
売主が誰かで規律が変わります。業者が自ら売主なら40条により通知期間は引渡しの日から2年以上が保証されます。個人が売主なら40条は働かず、免責特約も原則として有効です。ただし民法572条により、知りながら告げなかった事実については免責されません。媒介業者が関与していても、売主が個人であることに変わりはありません。
基準は契約の内容です。築年数相応の劣化は不適合になりません。説明され、契約に織り込まれた事項も同様です。だから中古住宅では、契約書と重要事項説明書に何が書かれたかが保護の輪郭をそのまま決めます。
建物状況調査に実施義務はありません。媒介契約書面の記載事項はあっせんに関するもの、35条は実施の有無と結果の概要、37条は双方が確認した事項。いずれも調査を強制する規定ではなく、情報を取引の場に載せる仕組みです。
用語は法律で使い分けられています。民法の売買の規定に「瑕疵」はありませんが、品確法は2条5項で「瑕疵」を「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態」と定義したうえで使い続けています。中身は同じで、名前が法律ごとに違うということです。
契約不適合責任そのものの要件と効果は契約不適合責任、売買契約全体の流れは不動産売買の流れで確認できます。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、品確法の適用範囲と宅建業法40条の関係を軸にした肢別トレーニングを収録しています。条文を読んだあとに肢を回して、新築と中古のどちらの話をしているかを一読で見分けられるまで固めてください。
税と価格の評定は毎年ほぼ同じ形で出ます。出題パターンを肢別で押さえれば取りこぼしません。