住宅ローン控除|宅建士が知る範囲を条文で
床面積は登記事項証明書の面積で判定し、区分建物は内法です。租税特別措置法41条と施行令26条の基準日版から、要件・控除率・借入限度額を出典と確認日つきで整理します。
目次
この記事は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)を、租税特別措置法41条と同法施行令26条の条文から整理します。取得・保有・譲渡を通じた税の全体像は不動産にかかる税金の全体像に、売却側の特例は譲渡所得税の特例に、国税と地方税の横断整理は宅建試験の税金を横断整理にあります。
最初に二つ、正直に述べておきます
これは宅建試験の主戦場ではありません
住宅ローン控除そのものが宅建試験で問われることは多くありません。税・その他の分野で出題される国税は、譲渡所得の特例、印紙税、登録免許税、贈与税が中心です。住宅ローン控除は、それらの周辺で名前が出る程度の位置づけです。
試験対策としての優先順位は高くありません。限られた時間を配分するなら、譲渡所得税の特例や登録免許税と印紙税を先に固めるべきです。得点戦略の全体像は税・その他の得点戦略で扱っています。
では、なぜこの記事があるのか
実務で必ず聞かれるからです。
宅地建物取引業者として売買に関われば、買主から「この物件でローン控除は使えますか」と聞かれる場面に必ず出会います。控除が使えるかどうかは購入の判断そのものを動かします。
しかも、判定に使う知識が宅建の知識と重なっています。床面積は登記事項証明書の面積で判定し、区分建物の登記面積は内法で算出される。中古住宅の要件は昭和57年1月1日という建築時期で分かれる。どちらも登記記録を読めば分かることで、宅建士の守備範囲です。
さらに、宅地建物取引業法35条1項は重要事項として「代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせんの内容及び当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置」の説明を求めています。ローンのあっせんについて説明する立場に立つ以上、隣接する知識として持っておく必要があります。重要事項説明の全体像は重要事項説明で扱っています。
ただし、税務相談は税理士の業務です
線引きは明確にしておきます。
税理士法2条1項3号は「税務相談」を税理士の業務と定めています。その内容は「税務官公署に対する申告等……又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずること」です。そして52条が「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない」と定めています。
したがって、宅建士が個別の顧客について控除額を計算して助言することはできません。「あなたの場合は年間いくら戻ります」という話は税理士の領域です。
できるのは、制度の枠組みを説明し、この物件が要件に当たりうるかどうかの事実(床面積、建築時期、住宅の性能証明の有無)を正確に伝え、具体的な計算は税理士または税務署に確認するよう案内することです。この記事もその範囲を想定しています。
この記事の数字の出典と確認日
住宅ローン控除は毎年のように改正が入ります。金額、控除率、期間、所得要件、床面積要件のいずれもが動きます。古い数字を書けば読者が実際に損をします。そこで、この記事は出典を明示します。
依拠した一次資料
租税特別措置法 — e-Gov法令APIの法令版 332AC0000000026_20260401_508AC0000000012。令和8年法律第12号(所得税法等の一部を改正する法律)による改正版で、公布2026年3月31日、施行2026年4月1日。
租税特別措置法施行令 — 同じく 332CO0000000043_20260401_508CO0000000098。公布2026年3月31日、施行2026年4月1日。
不動産登記規則 — 417M60000010018_20260401_508M60000010021。115条の床面積の算定方法。
宅地建物取引業法 — 327AC1000000176_20260401_507AC0000000068。35条1項。
税理士法 — 326AC1000000237_20251001_505AC0000000053。2条・52条。
いずれも2026年8月30日に取得して条文を確認しました。以下の数字はすべてこの条文から取っています。
基準日について
宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されます。令和8年度(2026年10月18日)であれば2026年4月1日時点の条文です。上記の措置法・施行令はいずれもその基準日版にあたります。
注意すべき点があります。国税庁のタックスアンサー(No.1211-1)は、2026年8月30日時点で「令和7年4月1日現在法令等」と表示されており、基準日より1年前の内容です。実務で使うときは、必ず表示されている「現在法令等」の日付を確認してください。この記事では、床面積の判定方法という条文に書かれていない実務上の取扱いについてのみ同ページを参照し、金額・率・期間はすべて措置法の基準日版から取っています。
読者への断り
この記事の数字は2026年4月1日時点の条文です。実際に適用を受けるときは、その時点の条文と国税庁の案内を必ず確認してください。とくに借入限度額は居住した年ごとに細かく分かれており、居住年が一年違えば金額が変わります。
制度の骨格と41条1項の基本要件
効果は所得税額からの控除
41条1項は、要件を満たす個人について「その年分の所得税の額から、住宅借入金等特別税額控除額を控除する」と定めています。
所得税額から直接引きます。課税所得を減らすのではありません。
所得控除との違い
税の軽減には二つの型があります。
所得控除は、課税所得を計算する段階で差し引きます。所得が減るので、その分に税率を掛けた額だけ税が減ります。減税額は税率次第で変わります。
税額控除は、税率を掛けて税額を出した後に、その税額から直接差し引きます。控除額がそのまま減税額になります。
住宅ローン控除は後者です。控除額が20万円なら、所得税が20万円減ります。この区別は税の分野の横断論点でもあり、宅建試験の税金を横断整理でも扱っています。
控除額の計算式
41条2項が計算方法を定めています。「その年十二月三十一日における住宅借入金等の金額の合計額(当該合計額が借入限度額を超える場合には、当該借入限度額)に控除率を乗じて計算した金額(当該金額に百円未満の端数があるときは、これを切り捨てる)」。
年末残高に控除率を掛けます。ただし年末残高が借入限度額を超える場合は、限度額のほうを使います。そして100円未満は切り捨てです。
したがって必要な数字は三つです。年末残高、借入限度額、控除率。以下で順に見ます。
居住の要件
条文は、家屋を「平成二十九年一月一日から令和十二年十二月三十一日までの間にその者の居住の用に供した場合(これらの家屋をその新築の日若しくはその取得の日又はその増改築等の日から六月以内にその者の居住の用に供した場合に限る。)」としています。
取得等の日から6か月以内に居住を開始することが必要です。そして控除を受けられるのは「同日以後その年の十二月三十一日まで引き続きその居住の用に供している各年」に限られます。年末時点で住んでいなければ、その年は控除を受けられません。
合計所得金額の要件
同じく1項が、控除できるのは「その者のその年分の所得税に係るその年の所得税法第二条第一項第三十号の合計所得金額……が二千万円以下である年」としています。
2,000万円は「合計所得金額」であって給与収入ではありません。給与所得者であれば、給与収入から給与所得控除を引いた後の金額が基礎になります。
もう一つ重要なのは、年ごとに判定されるという点です。適用初年度に要件を満たしていても、途中の年に合計所得金額が2,000万円を超えれば、その年だけ控除を受けられません。翌年に2,000万円以下に戻れば、その年はまた控除を受けられます。「一度超えたら以後ずっと使えない」ではありません。
借入金の要件
1項各号が対象となる借入金・債務を列挙しています。共通しているのは、契約において償還期間または賦払期間が10年以上の割賦償還・割賦払の方法によることです。
借入先も限定されています。1号は「金融機関、独立行政法人住宅金融支援機構、地方公共団体その他当該資金の貸付けを行う政令で定める者」からの借入金、2号は建設業者や宅地建物取引業者等に対する請負代金・対価に係る債務、3号は都市再生機構等からの債務の承継、4号は勤務先からの借入金です。
親族や知人からの個人的な借入れは、この列挙に入りません。住宅金融支援機構の位置づけは住宅ローンの仕組みで扱っています。
なお41条20項は「住宅借入金等には、当該住宅借入金等が無利息又は著しく低い金利による利息であるものとなる場合として政令で定める場合における当該住宅借入金等を含まない」としています。勤務先からの著しく低利な借入れは対象外になりうる、ということです。
取得の相手方と原因の制限
1項の括弧書きが「居住用家屋で建築後使用されたことのないものの取得(配偶者その他その者と特別の関係がある者からの取得で政令で定めるもの及び贈与によるものを除く。)」としています。
生計を一にする親族からの取得と、贈与による取得は対象外です。施行令26条2項が「その取得の時において個人と生計を一にしており、その取得後も引き続き当該個人と生計を一にする者」からの取得を除外しています。
床面積の要件と、宅建の知識が効く場所
ここがこの記事で最も実務に直結する部分です。
施行令26条1項の50平方メートル
条文は措置法ではなく施行令にあります。施行令26条1項は、41条1項の「住宅の用に供する家屋で政令で定めるもの」を次のように定めています。
「個人がその居住の用に供する次に掲げる家屋(その家屋の床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら当該居住の用に供されるものに限る。)とし、その者がその居住の用に供する家屋を二以上有する場合には、これらの家屋のうち、その者が主としてその居住の用に供すると認められる一の家屋に限る」。
そのうえで1号が「一棟の家屋で床面積が五十平方メートル以上であるもの」、2号が区分所有の場合について「その者の区分所有する部分の床面積が五十平方メートル以上であるもの」としています。
要件は三つです。床面積50平方メートル以上。床面積の2分の1以上が専ら居住用。居住用家屋を2以上持つ場合は主たる1つだけ。
床面積は登記事項証明書の面積で判定する
条文は「床面積」としか書いておらず、判定方法を定めていません。
この点について国税庁は、タックスアンサーで「登記事項証明書に表示されている床面積により判断します」とし、マンションについては「区分所有する部分(専有部分)の床面積によって判断します」としています(2026年8月30日確認。同ページの表示は「令和7年4月1日現在法令等」)。
なぜここが宅建の知識と直結するのか
不動産登記規則115条が、建物の床面積の算定方法を定めているからです。
「建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物にあつては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、一平方メートルの百分の一未満の端数は、切り捨てるものとする。」
一戸建ては中心線、区分建物は内側線。内側線で測るのがいわゆる内法(うちのり)です。
ここから実務上の急所が出てきます。マンションの販売広告や売買契約書で使われる専有面積は、壁の中心線で測った壁芯(へきしん)面積であることが一般的です。壁芯面積は内法面積より大きくなります。
したがって、広告に「専有面積50.5平方メートル」と書かれていても、登記事項証明書の床面積が50平方メートルを下回ることがあります。そしてこの場合、住宅ローン控除の50平方メートル要件を満たしません。
50平方メートル前後の区分建物では、必ず登記事項証明書で確認してください。買主に「使えます」と言ってしまった後で使えないと分かる事態は、この一点の確認漏れから生じます。登記記録の読み方は登記簿の読み方、区分所有建物の構造は区分所有法で扱っています。
40平方メートル以上50平方メートル未満の特例
床面積が50平方メートルに届かない場合の受け皿があります。ただし条件が二つ付きます。
41条16項は「小規模居住用家屋……で令和五年十二月三十一日以前に建築基準法第六条第一項の規定による確認を受けているもの」の新築等について、これを居住用家屋とみなして1項を適用できるとしています。そしてただし書で「その者のその年分の所得税に係るその年の合計所得金額が千万円を超える年については、この限りでない」としています。
施行令が「小規模居住用家屋」を、床面積の2分の1以上が居住用であることを前提に、「一棟の家屋で床面積が四十平方メートル以上五十平方メートル未満であるもの」または区分所有部分が同じ面積帯にあるものと定めています。
つまり二つの条件です。令和5年12月31日以前に建築確認を受けていること。合計所得金額が1,000万円以下であること。
所得の上限が2,000万円ではなく1,000万円である点と、建築確認の時期に期限がある点の両方を落とさないでください。認定住宅等についても、41条18項に同じ構造の規定が置かれています(こちらもただし書で1,000万円)。
控除率・控除期間・借入限度額
ここが最も細かく、最も改正の影響を受ける部分です。以下はすべて2026年4月1日時点の措置法41条の条文によります。
控除率は0.7パーセント
41条4項が控除率を定めています。「一 居住年が平成二十九年から令和三年までの各年である場合 一パーセント。二 居住年が令和四年から令和十二年までの各年である場合 〇・七パーセント。」
認定住宅等について適用される8項も同じで、「居住年が平成二十九年から令和三年までの各年である場合には一パーセントとし、居住年が令和四年から令和十二年までの各年である場合には〇・七パーセント」としています。
令和4年以降に居住を開始した場合は0.7パーセントです。かつての1パーセントは令和3年までの居住年に適用されるものです。
控除期間は10年か13年か
41条1項は「当該居住の用に供した日の属する年……以後十年間(居住年が令和四年又は令和五年であり、かつ、その居住に係る住宅の取得等が居住用家屋の新築等又は買取再販住宅の取得に該当するものである場合には、十三年間)」としています。
認定住宅等について定める6項は違う書き方をしています。「当該居住の用に供した日の属する年……以後十年間(同日の属する年が令和四年から令和七年までの各年であり、かつ、その居住に係る住宅の取得等が認定住宅等の新築等若しくは買取再販認定住宅等の取得に該当するものである場合又は同日の属する年が令和八年から令和十二年までの各年である場合には、十三年間)」。
読み分けてください。令和8年から令和12年までに居住を開始し、認定住宅等の規定(6項)の適用を受ける場合は、取得の区分を問わず13年間です。令和7年までは「新築等または買取再販」に限られていましたが、令和8年以降はその限定が外れています。既存認定住宅等の取得でも13年になります。
認定住宅等の四つの区分
41条6項が「認定住宅等」として四種類を挙げています。
1号 認定長期優良住宅(長期優良住宅の普及の促進に関する法律11条1項)。2号 低炭素建築物(都市の低炭素化の促進に関する法律2条3項)およびみなし特定建築物。この1号と2号を、7項が「認定住宅」と総称しています。
3号 特定エネルギー消費性能向上住宅。1号2号以外で「エネルギーの使用の合理化に著しく資する住宅の用に供する家屋として政令で定めるもの」。いわゆるZEH水準省エネ住宅です。
4号 エネルギー消費性能向上住宅。1号から3号以外で「エネルギーの使用の合理化に資する住宅の用に供する家屋として政令で定めるもの」。いわゆる省エネ基準適合住宅です。
「著しく」の有無で3号と4号が分かれます。施行令26条も、3号については「著しく資する住宅の用に供する家屋として国土交通大臣が財務大臣と協議して定める基準」、4号については「資する住宅の用に供する家屋として……定める基準」と、同じ書き分けをしています。
令和8年に居住を開始する場合の限度額
41条7項から、居住年が令和8年の場合を取り出します。
認定住宅(認定長期優良住宅・低炭素建築物)で、新築等または買取再販認定住宅等の取得に当たる場合は、4,500万円(7項2号ロ「令和六年から令和十二年までの各年」)。
特定エネルギー消費性能向上住宅(ZEH水準)で、新築等または買取再販認定住宅等の取得に当たる場合は、3,500万円(7項4号ロ(1))。
認定住宅または特定エネルギー消費性能向上住宅で、既存認定住宅等の取得に当たる場合も、3,500万円(7項4号ロ(2))。
エネルギー消費性能向上住宅(省エネ基準適合)の場合は、2,000万円(7項6号「居住年が令和八年から令和十二年までの各年である場合」)。
7項6号は住宅の取得区分による限定を置いていません。新築でも中古でも2,000万円です。
令和7年までとは金額が違う
比較しておくと改正の方向が見えます。7項4号イは「令和六年又は令和七年」の特定エネルギー消費性能向上住宅について3,500万円、5号ハ(1)は「令和六年又は令和七年」のエネルギー消費性能向上住宅について3,000万円としています。
省エネ基準適合住宅は、令和7年までの3,000万円から令和8年以降は2,000万円に下がっています。居住年が一年違えば1,000万円動く、という典型例です。
子育て世帯等の特例(41条9項)
一定の個人については限度額が上乗せされます。
対象となるのは、9項が「特例対象個人」と呼ぶ次の者です。「年齢四十歳未満であつて配偶者を有する者、年齢四十歳以上であつて年齢四十歳未満の配偶者を有する者又は年齢十九歳未満の……扶養親族を有する者」。
令和8年から令和12年までに居住を開始し、認定住宅等の新築取得等をした場合の限度額は次のとおりです。
認定住宅で新築等または買取再販認定住宅等の取得なら、5,000万円(9項1号)。
特定エネルギー消費性能向上住宅で新築等または買取再販認定住宅等の取得、あるいは認定住宅か特定エネルギー消費性能向上住宅で既存認定住宅等の取得なら、4,500万円(9項2号ロ)。
エネルギー消費性能向上住宅なら、3,000万円(9項4号)。
条文は「同項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とすることができる」としており、選択できる形になっています。なお9項の括弧書きは、令和8年1月1日以後の居住については「認定住宅等の新築取得等をした認定住宅等(第十八項の規定により認定住宅等とみなされる同項に規定する特例認定住宅等を除く)」としており、40平方メートル台の小規模住宅は特例の対象から外れています。
認定住宅等に当たらない場合
認定住宅等のどれにも当たらない住宅は、41条3項の一般の限度額によります。3項3号は令和4年・令和5年に新築等・買取再販に当たらない場合などについて2,000万円としています。
ただし、次章の適用除外がかかります。
省エネ基準に適合しない新築は対象外(41条24項)
「個人が、国内において、住宅の用に供する家屋でエネルギーの使用の合理化に資する家屋に該当するもの以外のものとして政令で定めるもの(以下この項において「特定居住用家屋」という。)の新築又は特定居住用家屋で建築後使用されたことのないものの取得をして、当該特定居住用家屋を令和六年一月一日以後に第一項の定めるところによりその者の居住の用に供した場合には、当該個人の同項に規定する十年間の各年分の所得税については、同項の規定は、適用しない。」
令和6年1月1日以後に居住を開始する新築住宅・未使用住宅については、省エネ基準に適合しないものは住宅ローン控除の対象外です。
「借入限度額がゼロになる」という説明を見かけますが、条文の書き方は「適用しない」です。結果は同じでも、条文の構造としては適用除外です。なお、この規定が対象としているのは新築と未使用の取得であり、中古住宅の取得はここに含まれません。
41条25項の予告
さらに先の期限が設けられています。「対象外エネルギー消費性能向上住宅(エネルギー消費性能向上住宅のうち、令和九年十二月三十一日以前に建築確認を受けたもの又は令和十年六月三十日以前に建築されたもの……以外のものをいう。)」の新築等を「令和十年一月一日以後」に居住の用に供した場合は1項を適用せず、対象エネルギー消費性能向上住宅について同日以後に居住した場合は6項を適用しない、としています。
省エネ基準適合住宅(4号)については、令和10年以降さらに扱いが厳しくなるという予告が条文に書き込まれています。令和8年度の受験には直接関係しませんが、実務では意識しておく価値があります。
中古住宅と増改築
既存住宅の要件は「昭和57年」か「耐震基準適合」か
41条1項は「既存住宅」を「建築後使用されたことのある家屋で耐震基準……に適合するものとして政令で定めるもの」としています。
その政令が施行令26条3項です。まず耐震基準を「建築基準法施行令第三章及び第五章の四の規定又は国土交通大臣が財務大臣と協議して定める地震に対する安全性に係る基準」と定義したうえで、既存住宅を、床面積の2分の1以上が居住用で施行令26条1項各号のいずれか(すなわち50平方メートル以上)に該当し、かつ次のいずれかに該当することにつき証明がされたものとしています。
1号 昭和五十七年一月一日以後に建築されたものであること。
2号 法第四十一条第一項に規定する耐震基準に適合するものであること。
「いずれか」です。昭和57年1月1日以後に建築されていれば、それだけで要件を満たします。個別に耐震基準への適合を証明する必要はありません。
昭和57年1月1日という日付は、いわゆる新耐震基準が適用され始めた時期に対応しています。建築時期は登記事項証明書で確認できます。ここでも宅建士の知識が直接効きます。
昭和56年以前の建物でも道はある
昭和56年12月31日以前に建築された建物は3項1号に当たりませんが、2号により耐震基準に適合することの証明があれば要件を満たします。
さらに41条35項が受け皿を置いています。「要耐震改修住宅」(耐震基準に適合するもの以外のものとして政令で定めるもの)を取得した場合でも、取得の日までに耐震改修を行うことにつき一定の申請等をし、かつ居住の用に供する日(取得の日から6か月以内の日に限る)までに耐震改修により耐震基準に適合することとなったことの証明がされたときは、既存住宅とみなして適用できます。
順序が重要です。「取得の日までに申請等」「居住の日までに適合」という時間的な条件がついています。取得後に思い立って改修しても、この規定には乗りません。
買取再販住宅
41条1項は「買取再販住宅の取得」として、既存住宅のうち特定増改築等をした家屋を、その特定増改築等をした宅地建物取引業者から取得する場合を別に定めています。
施行令は、この特定増改築等について、工事に要した費用の総額が家屋の譲渡対価の額の100分の20に相当する金額(当該金額が300万円を超える場合には300万円)以上であることなどを要件としています。あわせて、一定の工事に要した費用の額の合計額が100万円を超えることも求められています。
買取再販は新築等と同じ扱いを受ける場面がある(借入限度額の区分や控除期間で「認定住宅等の新築等又は買取再販認定住宅等の取得」と並べて書かれています)ので、中古一般とは分けて理解してください。
増改築等
施行令は、増改築等について「増改築等工事に要した費用の額が百万円を超えること」を要件とし、あわせて「増改築等工事をした家屋の当該増改築等工事に係る部分のうちにその者の居住の用以外の用に供する部分がある場合には、当該居住の用に供する部分に係る当該増改築等工事に要した費用の額が当該増改築等工事に要した費用の額の二分の一以上であること」を求めています。
100万円超と、居住用部分が2分の1以上。この二つです。
譲渡の特例との併用制限は「6年」
旧来「前後2年で計5年」と説明されることがありますが、条文はそうなっていません。
41条21項 居住年と前2年
「第一項の規定は、個人が、……その居住の用に供した日の属する年分の所得税について第三十一条の三第一項、第三十五条第一項……第三十六条の二、第三十六条の五若しくは第三十七条の五の規定の適用を受ける場合又はその居住の用に供した日の属する年の前年分若しくは前々年分の所得税についてこれらの規定の適用を受けている場合には、……適用しない。」
対象となる特例は五つです。31条の3第1項(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例=軽減税率)、35条1項(居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除)、36条の2(特定の居住用財産の買換えの特例)、36条の5、37条の5。
居住年、その前年、その前々年。ここまでで3年です。
41条22項 翌年以後3年
「……居住の用に供した個人が、当該居住の用に供した日の属する年の翌年以後三年以内の各年中に……これらの家屋及びその敷地以外の資産……の譲渡をした場合において、その者が当該譲渡につき第三十一条の三第一項、第三十五条第一項、第三十六条の二、第三十六条の五又は第三十七条の五の規定の適用を受けるときは、……適用しない。」
翌年以後3年。21項と合わせると、前々年・前年・居住年・翌年・翌々年・翌々々年の計6年が制限の範囲になります。
実務上の意味
典型的な住み替えでこれが効きます。旧居を売って3,000万円特別控除を使い、新居を買って住宅ローン控除も使う、という両取りはできません。どちらか有利なほうを選ぶことになります。
判断は金額次第です。売却益が大きければ3,000万円控除のほうが有利になりますし、売却益が小さくローン残高が大きければ住宅ローン控除のほうが有利になります。そしてこの比較こそが税理士の領域です。宅建士としては「両方は使えません、比較が必要なので税理士に相談してください」と伝えるのが適切です。3,000万円特別控除の要件は譲渡所得税の特例で扱っています。
22項が「これらの家屋及びその敷地以外の資産」の譲渡を対象としている点も読んでおいてください。買った家自体を売る話ではなく、後から別の居住用財産を売って特例を使った場合の規律です。
適用の手続と、宅建士の守備範囲
初年度は確定申告が必要
41条36項は「第一項の規定は、確定申告書に、同項の規定による控除を受ける金額についてのその控除に関する記載があり、かつ、財務省令で定めるところにより、当該金額の計算に関する明細書、登記事項証明書その他の書類の添付がある場合に限り、適用する」と定めています。
確定申告書への記載と、明細書・登記事項証明書等の添付が適用の要件です。給与所得者であっても、初年度は確定申告をしなければ適用を受けられません。
ここでも登記事項証明書が出てきます。床面積の判定に使われる書類が、そのまま添付書類として求められています。
なお37項は、確定申告書の提出や記載・添付がなかった場合でも「やむを得ない事情があると認めるとき」は税務署長が適用できる旨を定めています。
2年目以降
給与所得者については、2年目以降は年末調整で控除を受けられる仕組みが用意されています。初年度だけが確定申告、という理解で足ります。
住民税からの控除
所得税から控除しきれなかった額について、個人住民税からも一定の範囲で控除される仕組みがあります。根拠は措置法ではなく地方税法の附則にあります。
ただし、その控除限度額については、この記事では具体的な数値を示しません。地方税法の基準日版(325AC0000000226_20260401_508AC0000000002)を確認したところ、附則5条の4は平成26年から令和3年までの居住年を対象とする規定で、令和4年以降の居住年に適用される限度額を条文上で特定できませんでした。確認できない数字は書かないという方針によります。
適用を検討する段階では、国税庁の案内と、お住まいの市区町村が公表している個人住民税の住宅ローン控除に関する資料を確認してください。地方税の全体像は宅建試験の税金を横断整理、固定資産税など保有段階の税は固定資産税を安くするで扱っています。
話してよいこと
税理士法との線引きを、もう一度具体的に整理します。
制度の枠組み。税額控除であること、年末残高に控除率を掛けること、限度額があること。
物件についての客観的事実。登記事項証明書上の床面積が何平方メートルか。建築時期が昭和57年1月1日以後か。長期優良住宅や低炭素建築物の認定を受けているか、省エネ性能に関する証明書があるか。これらはすべて書面で確認できる事実であり、宅建士が扱うべき情報です。
要件に該当しない可能性の指摘。「登記面積が49.8平方メートルなので、50平方メートル要件を満たしません」という指摘は、事実の伝達です。
話してはいけないこと
個別の税額の計算と助言。税理士法2条1項3号の「税務相談」は「租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずること」であり、52条により税理士でない者はこれを業として行えません。
「あなたの年収なら年間いくら還付されます」「3,000万円控除とローン控除はこちらが得です」といった助言は、この線を越えます。
実務での運用
事実を正確に伝え、判断は専門家に送る。これが安全であり、かつ顧客にとっても正しい対応です。
とくに床面積が50平方メートル前後の物件、昭和56年以前の建物、性能証明の有無が不明な物件では、「控除が使えない可能性があります」と早い段階で伝えることが重要です。契約後に判明すれば、トラブルに直結します。重要事項説明の実務は重要事項説明、ローンのあっせんと35条の関係は住宅ローンの基礎知識で扱っています。
試験での出題ポイント
繰り返しますが、住宅ローン控除が正面から出題されることは多くありません。出るとすれば税額控除であることと、基本要件の数字です。
所得控除と税額控除を入れ替える
「住宅ローン控除は所得控除であり、課税所得金額から控除額を差し引く」は誤りです。41条1項は「その年分の所得税の額から……控除する」としており、税額控除です。
合計所得金額を給与収入と入れ替える
要件は「合計所得金額が2,000万円以下」であって、給与収入2,000万円以下ではありません。また年ごとの判定なので、ある年に超えてもその年だけ適用がないだけです。
床面積の判定方法をずらす
登記事項証明書の床面積で判定し、区分建物は不動産登記規則115条により内側線(内法)で算出されます。「販売広告の専有面積で判定する」「区分建物も壁芯で測る」は誤りです。
40平方メートル台の特例の条件を落とす
合計所得金額1,000万円以下という所得の上限と、令和5年12月31日以前の建築確認という時期の条件、この二つが要件です。片方だけを示す肢は不十分です。
中古住宅の要件を「かつ」にする
施行令26条3項は「昭和五十七年一月一日以後に建築されたものであること」または「耐震基準に適合するものであること」のいずれかを求めています。両方は要りません。
併用制限の期間を「前後2年」とする
条文は前2年(21項)と後3年(22項)です。居住年を含めて計6年になります。「居住年とその前後2年の計5年」は誤りです。
控除率を1パーセントとする
令和4年以降の居住年は0.7パーセントです(41条4項2号・8項)。1パーセントは令和3年までの居住年に適用されます。
借入限度額を年末残高と取り違える
41条2項は、年末残高と借入限度額のいずれか少ないほうに控除率を掛けるという構造です。「年末残高が4,000万円で限度額が3,500万円なら4,000万円を基礎にする」は誤りで、基礎になるのは3,500万円です。逆に年末残高が限度額を下回るときは残高のほうを使います。限度額は上限であって、そこまで必ず控除されるという意味ではありません。
居住開始後に住まなくなった年を数える
控除を受けられるのは「同日以後その年の十二月三十一日まで引き続きその居住の用に供している各年」です(41条1項)。年末時点で居住していない年は控除を受けられません。転勤等の場面を題材に、居住していない年も通算できるかのように書く肢が作れます。
借入先の限定を落とす
41条1項各号は借入先を列挙しており、親族や知人からの個人的な借入れは含まれません。さらに20項が「無利息又は著しく低い金利による利息であるものとなる場合として政令で定める場合」の借入金を対象から除いています。勤務先からの借入れであっても、著しく低利なら対象外になりうる、という規定です。
覚え方・整理の仕方
必要な数字は三つだけ、と割り切る
控除額の計算に必要なのは、年末残高・借入限度額・控除率の三つです(41条2項)。このうち控除率は0.7パーセントで固定、年末残高は事実の問題。動くのは借入限度額だけです。
「限度額だけが複雑」と理解しておけば、調べるべき場所が特定できます。
限度額は「性能 × 居住年」の二次元
借入限度額は、住宅の性能(認定住宅/ZEH水準/省エネ基準適合/それ以外)と居住年の組み合わせで決まります。さらに子育て世帯等の特例(41条9項)が上乗せの層として乗ります。
一覧で暗記しようとすると必ず古くなります。「性能と居住年で引く表がある」という構造だけ覚えて、数字はそのつど条文を見るのが正しい向き合い方です。
宅建士が現場で見る三点
実務では、次の三つを登記事項証明書と契約書類で確認します。
床面積は50平方メートル以上か(区分建物なら登記面積=内法)。建築時期は昭和57年1月1日以後か。性能の認定・証明はあるか。
この三点はすべて書面で確認できる事実であり、宅建士の領域です。逆にいえば、ここから先は税理士の領域だ、という境界にもなっています。
期間の数字は「6・10・13・6」
取得等から6か月以内に居住(41条1項)。控除期間は10年、認定住宅等で令和8年以降なら13年(41条1項・6項)。償還期間は10年以上(41条1項各号)。譲渡特例との併用制限は計6年(21項・22項)。
数字が少ないので、この四つだけ並べて持っておけば足ります。
面積の数字は「50・40・2分の1」
原則は50平方メートル以上(施行令26条1項)。特例が40平方メートル以上50平方メートル未満(41条16項・18項、施行令)。そしていずれも床面積の2分の1以上が専ら居住用であることが共通の要件です。
2分の1は増改築にも出てきます。増改築等では、居住用以外の部分がある場合に、居住用部分に係る工事費用が全体の2分の1以上であることが求められます(施行令)。「2分の1」は面積でも費用でも出てくる、と束ねておくと落としません。
所得の数字は「2,000と1,000」で対にする
原則が合計所得金額2,000万円以下(41条1項)、40平方メートル台の特例が1,000万円以下(41条16項ただし書・18項ただし書)。
面積を緩めた代わりに所得を絞る、という交換になっています。理屈で対にしておけば、片方だけを覚えて取り違えることがありません。
「いずれか」と「かつ」を意識して読む
この分野は、条文が要件を「いずれか」でつなぐ場面と「かつ」でつなぐ場面が混在します。
中古住宅の要件(昭和57年1月1日以後の建築/耐震基準適合)はいずれか(施行令26条3項)。40平方メートル台の特例の二条件(建築確認の時期/所得1,000万円以下)はかつ。要耐震改修住宅(41条35項)の「取得の日までに申請等」「居住の日までに適合の証明」もかつです。
接続詞を読み違えると結論が逆になるので、条文にあたるときは必ず確認してください。税分野の学習配分は税・その他の得点戦略を参考にしてください。
理解度チェッククイズ
問1 住宅ローン控除は所得控除であり、課税所得金額から控除額を差し引くことによって税負担が軽減される。
答え:×。租税特別措置法41条1項は「その年分の所得税の額から、住宅借入金等特別税額控除額を控除する」と定めており、税額控除です。所得控除は課税所得を計算する段階で差し引くもので、実際の減税額は適用される税率によって変わります。これに対し税額控除は、税率を掛けて算出した税額から直接差し引くため、控除額がそのまま減税額になります。控除額の計算方法は同条2項が定めており、「その年十二月三十一日における住宅借入金等の金額の合計額(当該合計額が借入限度額を超える場合には、当該借入限度額)に控除率を乗じて計算した金額」で、100円未満の端数は切り捨てです。なお不動産に関する税の特例には、課税標準を減らすタイプと税額を減らすタイプがあり、住宅ローン控除は後者にあたります。
問2 分譲マンションの販売広告に専有面積50.4平方メートルと記載されている場合、住宅ローン控除の床面積要件を満たすと判断してよい。
答え:×。判断してはいけません。租税特別措置法施行令26条1項2号は、区分所有の場合について「その者の区分所有する部分の床面積が五十平方メートル以上であるもの」としていますが、条文は判定方法を定めていません。国税庁は「登記事項証明書に表示されている床面積により判断」するとしています(2026年8月30日確認)。そして不動産登記規則115条は「建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物にあつては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により……定め」ると規定しています。区分建物の登記床面積は内法で算出される一方、販売広告の専有面積は壁芯であることが一般的で、壁芯面積のほうが大きくなります。したがって広告が50.4平方メートルでも、登記面積が50平方メートルを下回ることがあります。50平方メートル前後の区分建物では、必ず登記事項証明書で確認してください。
問3 昭和55年に建築された中古住宅を取得した場合、耐震基準に適合することの証明があっても、住宅ローン控除の適用を受けることはできない。
答え:×。租税特別措置法施行令26条3項は、既存住宅の要件として1号「昭和五十七年一月一日以後に建築されたものであること」と2号「法第四十一条第一項に規定する耐震基準に適合するものであること」を挙げ、いずれかに該当することの証明を求めています。「かつ」ではありません。したがって昭和55年建築であっても、2号により耐震基準に適合することの証明があれば要件を満たします。さらに、証明が取れない場合でも41条35項に受け皿があり、「要耐震改修住宅」を取得した場合に、取得の日までに耐震改修を行うことにつき一定の申請等をし、かつ居住の用に供する日(取得の日から6か月以内の日に限る)までに耐震改修により耐震基準に適合することとなったことの証明がされたときは、既存住宅とみなして適用できます。申請と改修の時期に条件がついている点に注意してください。
問4 居住用財産を譲渡して3,000万円特別控除の適用を受けた場合、住宅ローン控除を受けられないのは、居住年とその前後各2年の合計5年間である。
答え:×。条文は「前2年・後3年」で、居住年を含めて計6年です。41条21項は、居住の用に供した日の属する年分、またはその前年分若しくは前々年分の所得税について31条の3第1項(軽減税率)、35条1項(3,000万円特別控除)、36条の2、36条の5、37条の5の適用を受ける場合に、住宅ローン控除を適用しないと定めています。ここまでで3年です。加えて22項が、居住の用に供した日の属する年の翌年以後三年以内の各年中に、その家屋および敷地以外の資産を譲渡してこれらの特例の適用を受けるときも適用しないとしています。前々年・前年・居住年・翌年・翌々年・翌々々年の6年間が制限の範囲です。実務では、旧居の売却で3,000万円控除を使うか、新居で住宅ローン控除を使うかの選択になりますが、その比較は課税標準等の計算に関する事項であり、税理士の業務です。
問5 宅地建物取引業者が買主から住宅ローン控除について質問された場合、控除額の試算を示して有利不利を助言することは、宅地建物取引業の業務として問題ない。
答え:×。税理士法2条1項3号は「税務相談」を税理士の業務とし、その内容を「税務官公署に対する申告等……又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずること」と定めています。そして52条は「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない」と定めています。個別の顧客について控除額を試算し有利不利を助言する行為は、課税標準等の計算に関する相談にあたります。他方で、制度の枠組みの説明や、登記事項証明書上の床面積・建築時期・性能証明の有無といった客観的事実の伝達は、宅地建物取引業者が当然に行うべき情報提供です。宅地建物取引業法35条1項は重要事項として「代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせんの内容及び当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置」の説明を求めており、ローンに関する情報提供自体は業務の一部です。事実は伝え、計算と判断は税理士に送るという線引きになります。
まとめ
これは試験より実務の論点である。住宅ローン控除そのものが宅建試験で問われることは多くありません。しかし買主から必ず聞かれ、しかも判定に使う床面積と建築時期は登記事項証明書で確認する宅建士の領域です。一方で個別の税額計算は税理士法2条1項3号・52条により税理士の業務であり、事実の伝達と計算の助言は分けてください。
効果は税額控除。41条1項は「その年分の所得税の額から」控除するとしており、所得控除ではありません。控除額は年末残高(借入限度額が上限)×控除率で、100円未満切捨て(同条2項)。
基本要件は四つ。取得等の日から6か月以内に居住し年末も居住していること、合計所得金額2,000万円以下(年ごとの判定)、償還期間10年以上の一定の借入金であること、床面積50平方メートル以上で2分の1以上が居住用であること(施行令26条1項)。40平方メートル以上50平方メートル未満の特例は、合計所得金額1,000万円以下かつ令和5年12月31日以前の建築確認が条件です。
床面積は登記事項証明書で判定し、区分建物は内法。不動産登記規則115条が区分建物について「壁その他の区画の内側線」と定めているため、壁芯で表示された広告面積とずれます。50平方メートル前後の区分建物では確認が必須です。
控除率は0.7パーセント(令和4年から令和12年までの居住年。41条4項2号・8項)。控除期間は10年が原則で、令和8年から令和12年までに居住を開始し認定住宅等の規定を受ける場合は13年です(41条6項)。
借入限度額は住宅の性能と居住年で決まる。令和8年居住であれば、認定住宅(新築等・買取再販)4,500万円、特定エネルギー消費性能向上住宅3,500万円、既存の認定住宅等3,500万円、エネルギー消費性能向上住宅2,000万円(41条7項)。子育て世帯等の特例(41条9項)でそれぞれ上乗せがあります。令和6年1月1日以後に居住する新築で省エネ基準に適合しないものは、そもそも適用されません(41条24項)。
中古住宅は「昭和57年1月1日以後の建築」か「耐震基準適合」のいずれか(施行令26条3項)。両方は要りません。要件を満たさない建物でも、41条35項の要耐震改修住宅の規定に乗る道があります。
譲渡の特例との併用制限は計6年。41条21項が居住年と前2年、22項が翌年以後3年をカバーします。「前後2年で5年」は誤りです。
よくある質問
Q. この記事の数字はいつ時点のものですか。
A. 2026年4月1日時点で施行されている条文です。租税特別措置法は e-Gov 法令API の 332AC0000000026_20260401_508AC0000000012(令和8年法律第12号による改正版、2026年4月1日施行)、同法施行令は 332CO0000000043_20260401_508CO0000000098 を、2026年8月30日に取得して確認しました。住宅ローン控除は毎年のように改正が入るため、実際に適用を受けるときは、その時点の条文と国税庁の案内を必ず確認してください。なお国税庁のタックスアンサー No.1211-1 は、確認時点で「令和7年4月1日現在法令等」と表示されており、基準日より1年前の内容でした。参照するときは表示されている日付を見てください。
Q. 年末残高が借入限度額を下回る場合はどうなりますか。
A. 年末残高のほうを使います。41条2項は「その年十二月三十一日における住宅借入金等の金額の合計額(当該合計額が借入限度額を超える場合には、当該借入限度額)に控除率を乗じて計算した金額」としています。限度額はあくまで上限であり、残高がそれを下回れば残高が計算の基礎になります。返済が進めば年末残高は減っていくので、控除額も年々小さくなっていくのが通常です。
Q. 途中の年に合計所得金額が2,000万円を超えたら、それ以降ずっと使えなくなりますか。
A. その年だけです。41条1項は「その者のその年分の所得税に係るその年の合計所得金額……が二千万円以下である年については」と定めており、年ごとの判定です。ある年に2,000万円を超えればその年は控除を受けられませんが、翌年に2,000万円以下に戻れば、その年はまた控除を受けられます。控除期間そのものが打ち切られるわけではありません。
Q. 繰上返済をして返済期間が10年未満になったらどうなりますか。
A. 41条1項各号は、対象となる借入金を「契約において償還期間が十年以上の割賦償還の方法により返済することとされているもの」などと定めています。繰上返済によって当初の契約から起算した返済期間が10年未満となる場合には、この要件を満たさなくなります。もっとも、繰上返済の方法や残存期間の計算によって結論が変わりうるため、実際の判断は税務署または税理士に確認してください。この記事では条文の要件を示すにとどめます。
Q. 親から資金援助を受けて購入した場合はどうなりますか。
A. 二つを分けてください。贈与により取得した家屋そのものは対象外です。41条1項の括弧書きが「贈与によるもの」を除いています。また、生計を一にする親族からの取得も除かれます(施行令26条2項)。他方、贈与された資金で購入し、不足分を金融機関から借り入れた場合、その借入金は要件を満たしうるというのが制度の建て付けです。ただし住宅取得等資金の贈与に関する非課税措置との関係を含め、実際の取扱いは個別性が高い領域です。贈与税の枠組みは贈与税と相続税で扱っていますが、具体的な適用は税理士に確認してください。
Q. 買主に「ローン控除が使えます」と言ってしまってよいですか。
A. 断定は避けるべきです。控除の可否は、物件の要件(床面積・建築時期・性能)だけでなく、買主の合計所得金額、借入れの契約内容、過去に譲渡の特例を使っていないかといった買主側の事情にも左右されます。宅建士が確認できるのは物件側の事実だけです。したがって「登記面積は52平方メートルなので床面積の要件は満たします。ただし所得や過去の特例の適用状況によって変わるため、適用の可否は税務署か税理士にご確認ください」という伝え方が正確です。とくに床面積が50平方メートル前後の区分建物、昭和56年以前の建物、性能証明の有無が不明な物件では、早い段階で可能性を伝えてください。
Q. 宅建試験の対策としては、どこまでやればよいですか。
A. 税額控除であることと、6か月・10年・2,000万円・50平方メートルという基本の数字までで足ります。借入限度額の細かい区分は、改正で毎年動くうえに出題される可能性が低く、覚える費用対効果が合いません。税分野で先に固めるべきは、譲渡所得の特例、印紙税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税です。優先順位は税・その他の得点戦略にまとめています。
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