宅建は2週間で合格できる?宅建業法を仕上げる直前14日
ゼロから2週間で合格できるという公表データはありません。一巡済みの人が残り2週間で配点最大の宅建業法20問を仕上げる14日の割り当てと、権利関係など他科目を毎日15〜30分の維持に落とす方法を条文根拠つきで示します。
目次
宅建に2週間で合格できるかどうかは、開始時点の状態で決まります。 テキストを一度通読して過去問にも触れた状態から始めるのと、何も読んでいない状態から始めるのとでは、同じ14日でも到達点が違います。ゼロから2週間で合格できることを示す公表データはなく、「2週間で必ず合格できる」とは言えません。
そのうえで、残り2週間で最も点を伸ばしやすいのは宅建業法です。50問中20問(全体の4割)を占め、目標は16〜18点に置きます。14日の割り当ては次のとおりです。

- 1〜3日目:免許制度、宅建士の登録と宅建士証、営業保証金と保証協会
- 4〜5日目:媒介契約、広告規制・その他の業務規制
- 6〜8日目:35条書面、37条書面と横断整理
- 9〜10日目:8種制限
- 11〜12日目:報酬の制限、監督処分と罰則、住宅瑕疵担保履行法
- 13〜14日目:時間を計った通し演習、数字・期限・主語の最終確認
科目の全体像は宅建業法の全体像、直前期の科目横断の動かし方は直前期の学習戦略にまとめています。
一方で、宅建業法に限れば短期集中が他科目より効きやすいのは事実です。出題の大半が条文の要件と数値で判例の射程を追う必要が少ないこと、論点が10前後に整理できて範囲が閉じていること、問われ方の型が安定していること。この3点を前提に14日を割り振ります。
宅建は2週間で合格できるのか
この記事にたどり着く人の多くは、「宅建業法を2週間で」ではなく「宅建に2週間で」という問いを持っています。日割りに入る前に、その問いへ答えます。

ゼロから2週間で合格できるという公表データはない
まず事実関係から確認します。宅建試験の指定試験機関である一般財団法人不動産適正取引推進機構が公表しているのは、申込者数、受験者数、合格者数、合格率、合格判定基準、そして合格者の属性です。合格者が何か月準備したのか、どの教材を何周したのかという学習量の調査は公表されていません。 したがって「2週間で合格できる」とも「2週間では絶対に合格できない」とも、公表データから断定することはできません。この記事はどちらの断定もしません。
公表されている数字のほうを見ます。令和7年度は受験者245,462人、合格者45,821人、合格率18.7%、合格判定基準は50問中33問以上でした(不動産適正取引推進機構「令和7年度宅地建物取引士資格試験結果の概要」令和7年11月26日公表)。登録講習修了者は45問中28問以上で、こちらの合格率は24.2%です。そして過去10年(平成28年度から令和7年度、2回実施の年を含め12件)の合格判定基準は33点から38点の幅で動いています。合格点がなぜ動くのか、目標をどこに置くべきかは宅建の合格ライン予想にまとめてあります。
ここから言えるのは、50問中おおむね7割前後を、範囲の決まっていない4科目にまたがって取る必要があるということです。権利関係14問は民法に借地借家法・区分所有法・不動産登記法が加わり、法令上の制限8問は都市計画法から盛土規制法まで6法令以上にまたがります。この全体を14日で初めて通すことがどの程度現実的かは、読む人の前提知識によって変わります。宅地建物取引業に従事していて条文に日常的に触れている人と、法律の文章を初めて読む人とでは、同じ14日の意味がまったく違います。ここを一律に「できる」「できない」と書いている情報は、根拠を確認してから受け取ってください。
2週間が効くのは、すでに一巡している人の場合
一方で、残り2週間という条件のもとで点が動く場所ははっきりしています。
直前期に得点が動くのは、覚えているかどうかで正誤が確定する領域です。宅建業法の数値と主語、法令上の制限の面積要件、統計の公表値。逆に、理解と当てはめの訓練を要する権利関係の応用論点は、2週間では得点に変換されません。この非対称は宅建の直前期の過ごし方でも同じ結論になっています。
そして、覚えれば取れる領域のうち最も配点が大きいのが宅建業法20問です。50問中20問、全体の4割がこの1科目に集まっており、しかも正解の根拠が宅地建物取引業法という単一の法令の条文に閉じています。判例の射程を検討する必要がなく、複数の法律を横断する必要もありません。残り2週間を1つの科目に投じるなら、投下先は宅建業法以外にありません。
したがって本記事が扱うのは、「ゼロから14日で50問を仕上げる方法」ではなく、すでにテキストを一度通読して過去問にも触れた人が、最後の14日で宅建業法20問を仕上げるための割り当てです。他の3科目をどう維持するかは、後半の「残り2週間で他科目をどう扱うか」で扱います。
まだ一巡していない場合に現実的な選択肢
一度も通読していない状態で残り2週間に入ってしまった場合、14日で全範囲を仕上げる設計は成立しません。それでも受験する前提であれば、絞り先は次のようになります。
第一に宅建業法20問。理由は前述のとおりです。第二に、法令上の制限8問のうち数字で正誤が確定する頻出部分。開発許可の面積要件、国土利用計画法の事後届出の面積、農地法3条・4条・5条の許可権者と市街化区域の特例です。この2つで28問あり、ここに集中するほうが、全科目を薄く広く触るより取れる問題数は多くなります。どこから手をつけるかは法令上の制限の頻出論点を目次代わりに使えます。
そのうえで、今年の結果がどうであれ、来年度に向けた設計は早く始めるほど選択肢が広がります。不合格後の立て直し方は宅建の再受験戦略、次年度の開始時期の決め方は宅建の勉強はいつから始めるかにまとめてあります。「2週間で受かる方法」を探し続けるより、次の14日を何に使うかを決めるほうが、結果的に早く終わります。
残り期間が2週間より長い場合
残り期間が2週間より長いなら、この記事の14日プランをそのまま当てはめる必要はありません。期間ごとに設計が変わるからです。
残り1ヶ月なら、科目横断で何をやり何をやらないかを決める宅建の直前期の過ごし方。残り3ヶ月なら、宅建業法を最初の1ヶ月に置いて演習期を確保する宅建に3ヶ月で合格する学習プラン。6ヶ月・3ヶ月・1ヶ月それぞれで期の区切りをどう変えるかは宅建の勉強スケジュール表に整理してあります。本記事の14日は、それらの計画の最終区間として読んでください。
2週間で到達できる範囲と、14日の骨格
目標点は配点構成から決める
宅建試験は50問四肢択一で、例年、権利関係14問、法令上の制限8問、税・その他3問、宅建業法20問、免除科目5問という構成です。宅建業法は単独で全体の4割を占めます。
合格判定基準は年によって動きます。不動産適正取引推進機構の公表によれば、令和7年度は50問中33問以上、令和6年度は37問以上でした。33〜38点のレンジで考えると、宅建業法で18点を確保できれば残り30問で15〜20問取れば届きますが、宅建業法が12点なら残り30問で21〜26問というかなり厳しい要求になります。
宅建業法に2週間を投じる根拠はこの算術にあります。 目標は16〜18点に置いてください。20点満点を目標にすると、正答率の低い枝葉に時間を吸われます。目標点の置き方は宅建の科目別攻略法と宅建の合格戦略で扱っています。
何を捨てることになるか
2週間という制約を選ぶ以上、捨てるものが出ます。正直に列挙します。
捨ててよいのは、報酬計算のうち複数の特例が重なる複合パターン、住宅瑕疵担保履行法の細かい手続、監督処分の聴聞・公告の細部、業務に関する禁止事項のうち施行規則レベルの列挙です。出題頻度が低いか、出ても1問の一部の肢にとどまります。
捨てられないのは、35条書面と37条書面、8種制限、報酬の基本計算、免許と登録の欠格事由、営業保証金と保証協会の対比です。この5つで20問のかなりの部分が構成されます。ここを曖昧にしたまま他を埋めても点は伸びません。
1日の型を固定する
14日間、毎日同じ型で進めます。型を固定するのは、直前期に「今日は何をするか」を考える時間そのものが無駄だからです。

第一段階は、その日の論点の要点確認です。該当章を通読するのではなく、要件・数値・期限・主語を拾う読み方をします。第二段階は、同じ論点の過去問を肢別で解きます。四肢択一のまま解くと1問あたりの情報密度が下がるため、肢ごとに正誤を判断する方が同じ時間で触れられる論点数が増えます。第三段階は、間違えた肢を3つに分類します。知らなかったのか、似た制度と混同したのか、問題文を読み違えたのか。分類しないまま「復習」で処理すると、読み違いのタイプが最後まで直りません。運用は間違いノートの作り方にまとめています。
学習時間について「1日◯時間必要」という断定はしません。必要量は開始時点の理解度で変わり、公的な調査値もないためです。代わりに分量で管理してください。1日1論点、肢別で100肢前後を回せるかどうかが進度の判断基準になります。
14日の割り当て
割り当ては次のとおりです。前半10日で全論点を一巡し、残り4日を横断と演習に充てます。
- 1日目 免許制度
- 2日目 宅建士の登録と宅建士証
- 3日目 営業保証金と保証協会
- 4日目 媒介契約
- 5日目 広告規制とその他の業務規制
- 6日目 35条書面の全体構造
- 7日目 35条書面の記載事項
- 8日目 37条書面と35条書面の横断整理
- 9日目 8種制限の前半(クーリング・オフ、手付、損害賠償額の予定)
- 10日目 8種制限の後半(保全措置、他人物売買、特約の制限、割賦販売)
- 11日目 報酬の制限
- 12日目 監督処分と罰則、住宅瑕疵担保履行法
- 13日目 通し演習
- 14日目 数字・期限・主語の最終確認
以下、各日に何を押さえるかを条文とともに具体化します。細部は各論点の個別記事に送ります。
1日目から3日目|免許・宅建士・営業保証金
宅建業を始めるまでの手続を、業者・個人・金銭の3方向から押さえる3日間です。条文で答えが確定するため、直前期に最も効率よく点になる領域です。
1日目|免許制度
まず免許が必要な行為を確定します。宅地建物取引業とは、宅地建物の売買・交換、または売買・交換・貸借の代理・媒介を業として行うことです(宅建業法2条2号)。自ら貸借を行う場合は宅建業に当たらず、免許は不要です。 自ら貸主となる転貸(サブリース)も同様です。ここは毎年のように問われます。
免許の種類は、2以上の都道府県に事務所を設ける場合が国土交通大臣免許、1つの都道府県内に限る場合が都道府県知事免許です(3条1項)。判断基準は事務所の所在地であって、取引する物件の所在地でも、業務を行う区域でもありません。知事免許でも他県の物件を扱えます。
免許の有効期間は5年です(3条2項)。更新の申請は、有効期間満了の日の90日前から30日前までの間に行います(施行規則3条)。事務所の設置状況が変わって免許の種類が変わる場合は免許換えとなり(7条)、免許換えによって受けた免許の有効期間は、従前の免許の残存期間ではなく、新たに5年です。
欠格事由(5条1項)は、5年を待つ類型とそうでない類型に分けて覚えます。5年を待つのは、拘禁刑以上の刑に処せられて執行を終わった場合、宅建業法違反や暴力的な犯罪などで罰金に処せられた場合、そして不正手段による免許取得・情状が特に重い業務停止事由該当・業務停止処分違反という3つの理由で免許を取り消された場合です。5年を待たないのは、破産手続開始の決定を受けた者(復権すれば直ちに免許可)や、執行猶予期間が満了した場合(刑の言渡しが効力を失うため直ちに免許可)です。なお令和7年6月1日施行の刑法改正で懲役と禁錮が拘禁刑に一本化され、宅建業法の欠格事由・罰則も「拘禁刑」を用いる表記に整理されています。古い教材の「禁錮以上の刑」は現行法では「拘禁刑以上の刑」です。
事務所には、業務に従事する者5人につき1人以上の割合で成年者である専任の宅建士を置きます(31条の3第1項、施行規則15条の5の3)。不足した場合は2週間以内に必要な措置を取ります(同条3項)。免許制度の詳細は宅建業の免許制度、事務所の要件は事務所の設置要件、専任宅建士の論点は専任の宅建士を参照してください。
2日目|宅建士の登録と宅建士証
免許が「業者」の話であるのに対し、登録は「個人」の話です。この主語の違いが、そのまま出題の引っかけになります。
登録を受けるには、試験合格に加えて、宅建業の実務経験2年以上、またはそれに代わる登録実務講習の修了が必要です(18条1項、施行規則13条の15・13条の16)。登録は合格した試験を実施した都道府県知事に対して行い、有効期間はありません。
登録の欠格事由(18条1項)は免許の欠格事由とほぼ重なりますが、違いが2つあります。第一に、成年者と同一の行為能力を有しない未成年者は、登録そのものを受けられません(18条1項1号)。免許の場合は法定代理人が欠格事由に該当しなければ免許を受けられるのと対照的です。第二に、事務禁止処分を受けて禁止期間が満了していない者は登録できません。
手続の期限も対比で押さえます。氏名・住所・本籍・勤務先の宅建業者などに変更があったときは、遅滞なく変更の登録を申請します(20条)。死亡・欠格事由該当は30日以内に届け出ますが、死亡のときだけは「相続人が死亡の事実を知った日から30日以内」です(21条)。登録の移転は、別の都道府県の事務所に勤務することとなったときに申請できるもので義務ではありません(19条の2)。住所を移しただけでは移転できない点が頻出です。
宅建士証の有効期間は5年です(22条の2第3項)。交付には申請前6か月以内の法定講習の受講が必要ですが、試験合格から1年以内に申請する場合は不要です(同条2項)。重要事項の説明時は請求がなくても宅建士証を提示し(35条4項)、取引の関係者から請求があったときも提示します(22条の4)。手続の全体像は宅建士登録の手続き、変更届の整理は住所・氏名変更の届出にあります。
3日目|営業保証金と保証協会
この論点は、2つの制度を同じ軸で並べると一気に整理できます。軸は「金額」「納付の期限」「還付されたときの穴埋め」「取戻し」の4つです。
営業保証金は、主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき1か所あたり500万円を、主たる事務所の最寄りの供託所に供託します(25条2項、施行令2条の4)。供託しただけでは営業できません。供託した旨を免許権者に届け出た後でなければ事業を開始できないのがポイントです(25条5項)。免許から3か月以内に届出がないときは免許権者が催告し、催告到達から1か月以内に届出がなければ免許を取り消すことができます(25条6項・7項)。有価証券での供託も可能で、評価額は国債が額面の100%、地方債・政府保証債が90%、それ以外が80%です(施行規則15条の2)。還付で不足が生じたときは、免許権者から通知を受けた日から2週間以内に不足額を供託します(28条1項)。
保証協会に加入する場合は、弁済業務保証金分担金として主たる事務所60万円、その他の事務所1か所あたり30万円を、加入しようとする日までに金銭で納付します(64条の9第1項)。有価証券は使えず、ここが営業保証金との明確な違いです。還付があったときは、通知を受けた日から2週間以内に還付充当金を納付します(64条の10)。納付しないと社員の地位を失い、失った日から1週間以内に営業保証金を供託しなければなりません(64条の15)。
還付額の上限も対比します。保証協会の社員と取引した者は、その者が社員でなかったとしたら供託すべき営業保証金の額に相当する額の範囲内で弁済を受けられます(64条の8第1項)。分担金の額が基準ではありません。詳細は営業保証金の仕組み、保証協会と弁済業務、供託所等の説明義務は供託所等の説明で扱っています。
4日目から5日目|媒介契約と広告規制
依頼を受けてから広告を出すまでの規律です。数値と期限が集中するため、直前期の得点源になります。
4日目|媒介契約
媒介契約は一般・専任・専属専任の3種類で、規制の強さがこの順に上がります。軸を決めて並べます。
有効期間について、専任媒介契約と専属専任媒介契約は3か月を超えることができず、これより長い期間を定めても3か月に短縮されます(34条の2第3項)。自動更新の特約は無効で、更新は依頼者からの申出が必要です。一般媒介契約には法定の期間制限がありません。
業務処理状況の報告は、専任が2週間に1回以上、専属専任が1週間に1回以上です(34条の2第9項)。この「2週間・1週間」は口頭でも構いません。書面である必要はない点が引っかけになります。
指定流通機構への登録は、専任が契約締結日から7日以内、専属専任が5日以内で、いずれも業者の休業日を算入しません(34条の2第5項、施行規則15条の10)。登録後、指定流通機構が発行する登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡します。
媒介契約書面は、締結したときに遅滞なく作成して依頼者に交付します(34条の2第1項)。ここで記名押印するのは宅建業者であって宅建士ではありません。 35条・37条書面が宅建士の記名であるのと対照的で、頻出の引っかけです。売買すべき価額について意見を述べるときは根拠を明らかにする必要がありますが(34条の2第2項)、根拠の明示は口頭でも可能です。なお、34条の2が及ぶのは売買・交換の媒介であり、貸借の媒介には適用がありません。詳細は媒介契約の3類型と媒介契約書の記載事項にあります。
5日目|広告規制とその他の業務規制
広告に関する規制は3つです。
第一に、誇大広告等の禁止(32条)。著しく事実に相違する表示や、実際のものより著しく優良・有利であると誤認させる表示が禁止されます。注文がなく実害が生じていなくても、広告した時点で違反が成立します。 おとり広告や存在しない物件の広告もここに含まれます。
第二に、広告開始時期の制限(33条)。未完成物件については、建築確認や開発許可などの処分があった後でなければ広告できません。売買・交換・貸借のすべてに適用されます。
第三に、取引態様の明示(34条)。自己が売主か、代理か、媒介かを明示する義務で、広告をするときと注文を受けたときの2回必要です。広告で明示していても、注文を受けたときに改めて明示しなければなりません。
混同しやすいのが契約締結時期の制限(36条)です。未完成物件について確認・許可の前に契約を締結してはならないという規制ですが、貸借の代理・媒介には適用されません。 33条は貸借にも適用されるのに36条は適用外、という組み合わせが繰り返し問われます。
あわせて、重要な事実の故意の不告知・不実告知、断定的判断の提供、手付の貸付けによる契約締結の誘引(47条)、威迫行為や契約しない旨の意思を表示した相手への勧誘継続(47条の2、施行規則16条の11)が禁止されている点も確認します。広告規制は広告に関する規制、取引態様は取引態様の明示義務、不当表示との関係は不当景品類及び不当表示防止法を参照してください。
6日目から8日目|35条書面と37条書面
宅建業法の中心です。ここに3日を充てます。例年、35条書面と37条書面だけで3〜5問が出題されます。

6日目|35条書面の構造
宅建業者は、宅地建物の取得者または借主となろうとする者に対し、契約が成立するまでの間に、宅建士をして、重要事項を記載した書面を交付して説明させなければなりません(35条1項)。構造を4つの要素に分解します。
主体は宅建業者ですが、説明を行うのは宅建士です。専任である必要はなく、宅建士であれば足ります。相手方は取得者・借主となろうとする者であり、売主や貸主には説明義務がありません。 時期は契約成立前です。方法は書面の交付と説明で、説明の際に宅建士証を提示します(35条4項)。書面には宅建士の記名が必要です(35条5項)。
重要な例外があります。相手方が宅建業者である場合、書面の交付は必要ですが説明は不要です(35条6項)。「業者間取引では35条書面自体が不要」とする誤りが頻出します。なお、相手方の承諾を得れば電磁的方法による提供も可能で(35条8項・9項)、テレビ会議等によるIT重説も一定の条件のもとで認められています。詳細は重要事項説明の基本とIT重説の実務と出題にあります。
7日目|35条書面の記載事項
記載事項は数が多く、丸暗記に向きません。「取引の判断に必要な情報を、契約前に渡す」という目的から4群に分類するのが現実的です。
第一群は物件そのものに関する事項です。登記された権利の種類・内容、法令に基づく制限の概要、私道負担、飲用水・電気・ガスの供給と排水施設の整備状況、未完成物件なら完了時の形状・構造、造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域内かどうか、水害ハザードマップ上の所在地、建物状況調査の結果の概要などです。
第二群は取引条件に関する事項で、代金以外に授受される金銭の額と目的、契約の解除、損害賠償額の予定または違約金、手付金等の保全措置の概要、支払金・預り金の保全措置の有無など。第三群は区分所有建物の追加事項(敷地に関する権利、共用部分の規約、専有部分の用途制限、修繕積立金と滞納額、管理の委託先など)、第四群は貸借の追加事項(設備の整備状況、契約期間、定期借地・定期建物賃貸借である旨、敷金の精算、管理の委託先など)です。
区別のコツは、「所有者にならない借主には、所有に関する事項を説明しても意味がない」と考えることです。区分所有の修繕積立金や管理費の額は貸借では不要、専有部分の用途制限は貸借でも必要、といった振り分けはこの視点で復元できます。記載事項の整理と覚え方は35条書面の完全整理、区分所有と貸借の追加事項は区分所有建物の重要事項と賃貸借の重要事項説明で扱っています。
8日目|37条書面と横断整理
37条書面は、契約が成立したときに遅滞なく、契約の両当事者に交付します(37条1項・2項)。宅建士の記名が必要ですが(37条3項)、説明義務はありません。 交付するのは宅建業者であり、宅建士が交付しなければならないわけでもありません。
記載事項は、必ず書く「必要的記載事項」と、定めがあるときだけ書く「任意的記載事項」に分かれます。必要的記載事項は、当事者の氏名・住所、物件を特定するために必要な表示、代金・交換差金・借賃の額と支払時期・方法、引渡時期、移転登記の申請時期(売買・交換のみ)、既存建物なら構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項。任意的記載事項は、代金以外の金銭の授受、契約の解除、損害賠償額の予定、危険負担、契約不適合責任やその履行に関する保証保険等、租税公課の負担などです。
35条書面との横断は、次の5軸で整理してください。第一に時期。35条は契約成立前、37条は契約成立後遅滞なく。第二に相手方。35条は取得者・借主のみ、37条は両当事者。第三に説明。35条は必要、37条は不要。第四に記名。どちらも宅建士の記名が必要。第五に、未定の扱い。35条書面は定めがなければ「定めがない」旨まで記載するのに対し、37条書面の任意的記載事項は定めがなければ記載しません。
最も出題されるのは「代金の額・引渡時期・移転登記の申請時期」です。これらは35条書面の記載事項ではなく、37条書面の必要的記載事項です。契約前に金額を説明する義務はないが、契約書には必ず書く、と目的から理解すると混乱しません。詳細は37条書面の記載事項、対比は35条書面と37条書面の横断整理にあります。
9日目から10日目|8種制限
8種制限は例年2〜3問が出題され、かつ数値が集中する領域です。2日を充てます。

適用範囲を最初に固定する
8種制限は、宅建業者が自ら売主となり、かつ買主が宅建業者でない場合にのみ適用されます(78条2項)。業者間取引には適用されません。また、業者が媒介や代理をしているだけの取引にも適用されません。問題を読むとき、最初に売主と買主の属性を確認する習慣をつけてください。これだけで正誤が決まる肢が毎年あります。適用除外の整理は8種制限が適用されない場合にあります。
9日目|クーリング・オフ、手付、損害賠償額の予定
クーリング・オフ(37条の2)は、事務所等以外の場所で買受けの申込みまたは契約をした場合に、申込みの撤回等ができる制度です。押さえる要素は4つです。
第一に場所。事務所、専任宅建士の設置義務がある案内所等で土地に定着するもの、そして買主が自ら申し出た場合の自宅または勤務先は「事務所等」に当たり、クーリング・オフできません(施行規則16条の5)。同じ自宅でも、業者が申し出て訪問した場合は事務所等に当たらずクーリング・オフできます。テント張りの案内所のように土地に定着しない場所も事務所等ではありません。
第二に期間。書面で告げられた日から起算して8日を経過するとできなくなります。告げられていなければ何日経ってもできます。 第三に方法。書面で行い、発した時に効力が生じます(発信主義)。第四に失効事由。買主が物件の引渡しを受け、かつ代金の全額を支払ったときは期間内でもできません。引渡しだけ、または支払いだけでは失効しません。詳細はクーリング・オフの要件にあります。
手付の額の制限(39条1項)は、代金の額の10分の2を超える手付を受領できないというものです。そして受領した手付は、性質を問わず解約手付とみなされます(39条2項)。相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄して、業者は手付の倍額を現実に提供して、契約を解除できます。これに反する買主に不利な特約は無効です(39条3項)。
損害賠償額の予定等の制限(38条)は、損害賠償額の予定と違約金を合算して代金の10分の2を超えてはならないというものです。超える定めをした場合、契約全体が無効になるのではなく、超える部分についてのみ無効となります。手付の制限が「受領できない」であるのに対し、こちらは「超える部分が無効」である点が違います。手付に関する制限と損害賠償額の予定で詳しく扱っています。
10日目|保全措置、他人物売買、特約の制限
手付金等の保全措置(41条・41条の2)は、数値が2組あります。工事完了前の物件は、手付金等の額が代金の5%以下かつ1,000万円以下であれば措置不要、工事完了後の物件は10%以下かつ1,000万円以下であれば措置不要です。いずれか一方でも超えれば措置が必要になります。措置の方法も違い、未完成物件では銀行等の保証委託契約または保険事業者との保証保険契約に限られ、指定保管機関による保管は使えません。 完成物件では指定保管機関による保管も使えます。なお、買主が所有権の登記をしたときは保全措置は不要です。
他人物売買の制限(33条の2)は、自己の所有に属しない宅地建物について売買契約を締結してはならないという規制です。例外は2つあり、第一に、業者が取得する契約(予約を含む)を締結しているとき。ただし停止条件付きの取得契約では例外に当たりません。 第二に、未完成物件で手付金等の保全措置が講じられているときです。
契約不適合責任の特約の制限(40条)は、民法の規定より買主に不利な特約を無効とするものです。ただし例外があり、通知期間を「引渡しの日から2年以上」とする特約は有効です。「2年」という数字が問われるときは、引渡しの日が起算点である点まで確認してください。
割賦販売契約の解除等の制限(42条)は、賦払金の支払いがない場合に、30日以上の相当の期間を定めて書面で催告しなければ、契約の解除や残金の一括請求ができないというものです。所有権留保等の制限(43条)は、代金の額の10分の3を超える支払いを受けるまでは所有権を留保できるが、それを超えたら登記等を移転しなければならない、というものです。8種制限の全体は8種制限の全体像と8種制限の横断整理、保全措置は手付金等の保全措置、特約制限は契約不適合責任の特約制限を参照してください。
11日目から12日目|報酬、監督処分、罰則
11日目|報酬の制限
報酬は例年1〜2問が出題され、計算問題として出れば確実に取れる領域です。上限は国土交通大臣の定める告示によります(46条1項)。
売買・交換の媒介では、代金額を3つに区切って計算します。200万円以下の部分が5%、200万円を超え400万円以下の部分が4%、400万円を超える部分が3%です(いずれも消費税抜き)。代金が400万円を超える場合は速算法が使え、代金×3%+6万円が上限です。代理の場合は媒介の2倍が上限になります。ただし、一方から代理として受領し他方から媒介として受領する場合でも、双方から受け取る合計額は媒介の2倍が限度です。
貸借の媒介では、依頼者双方から受け取る合計額が借賃の1か月分(消費税抜き)以内です。居住用建物の場合は、媒介の依頼を受けるにあたって依頼者の承諾を得ている場合を除き、各当事者から借賃の0.5か月分ずつが上限になります。承諾のタイミングが「依頼を受けるにあたって」である点が問われます。居住用建物以外では、権利金の額を売買代金とみなして計算する方法も選べます。
消費税は、土地の譲渡が非課税、建物の譲渡が課税です。代金に消費税が含まれている場合は建物分の税額を除いた本体価格で計算し、課税事業者であれば算出額に1.1を乗じた額を受領できます。
改正点を1つ。令和6年7月1日施行の報酬告示改正により、低廉な空家等の対象が800万円以下の宅地建物に拡大され、報酬の上限は30万円(消費税抜き)となりました。 改正前は400万円以下の物件について売主側からのみ受領できる特例でしたが、改正後は買主側からも受領できます。貸借にも長期の空家等に関する特例が新設されています。直前期に確認しておく価値のある改正です。
報酬とは別に、依頼者の依頼によって行う広告の料金や、特別の依頼による遠隔地への出張費用は受領できます。依頼を受けていない広告費や通常の案内費用は受領できません。事務所ごとに報酬額を公衆の見やすい場所に掲示する義務もあります(46条4項)。計算手順と出題パターンは報酬額計算のパターン別攻略、制度全体は報酬額の制限にあります。
12日目|監督処分と罰則
監督処分は、誰が誰に何をできるかを主語で整理します。
宅建業者に対する処分は3段階です。指示処分(65条1項)、業務停止処分(65条2項、1年以内)、免許取消処分(66条)。指示処分と業務停止処分は、免許権者だけでなく業務を行った区域を管轄する都道府県知事も行えます(65条3項・4項)。これに対し免許取消処分は免許権者しか行えません。この非対称が繰り返し問われます。免許取消には必要的取消と任意的取消があり、欠格事由に該当した場合、免許換えを怠った場合、1年以上事業を休止した場合などは必要的取消です。
宅建士に対する処分は、指示処分(68条1項)、事務禁止処分(68条2項、1年以内)、登録消除処分(68条の2)です。ここでも指示と事務禁止は登録知事のほか業務地の知事も行えますが、登録消除は登録知事しか行えません。業者と宅建士で同じ構造だと押さえると記憶量が半分になります。
罰則は重いものから2つだけ確実にします。無免許で宅建業を営んだ場合、不正手段により免許を受けた場合、名義貸しをした場合は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科(79条)。誇大広告等の禁止違反は、6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科です(81条)。法人には、無免許営業などについて1億円以下の罰金という両罰規定があります(84条)。監督処分の詳細は監督処分の整理、罰則は罰則の一覧と整理にあります。
住宅瑕疵担保履行法は軽く触れる程度で構いません。新築住宅の売主となる宅建業者は、買主が宅建業者である場合を除き、保証金の供託または保険加入による資力確保措置が必要で、基準日ごとに状況を免許権者に届け出ます。届出をしないと、基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後、新たに新築住宅を売買する契約ができません。
13日目から14日目|通し演習と最終確認
13日目|時間を計って通しで解く
13日目は、宅建業法20問を年度単位で、時間を計って解きます。目安は1問あたり1分30秒以内です。本試験では権利関係に時間を取られるため、宅建業法を短時間で処理できるかどうかが全体の時間配分を決めます。
解いた後にやるのは、正答数の確認ではありません。間違えた肢と、正解したが自信がなかった肢の両方を拾い、論点ごとに分類することです。同じ論点で複数落としているならその論点は固まっていないので、該当日に戻ります。落とし方がばらけているなら、知識ではなく読み方の問題である可能性があります。
後述する個数問題・組合せ問題で何点落としているかも、この日に確認してください。演習の回し方は過去問の回転数、自己採点の使い方は自己採点と分析、模試の活用は模試の活用法を参照してください。
14日目|数字・期限・主語の最終確認
最終日は新しいことをしません。確認するのは3種類だけです。
第一に数字。営業保証金1,000万円・500万円、分担金60万円・30万円、8種制限の10分の2と10分の3、保全措置の5%・10%・1,000万円、報酬の5%・4%・3%と速算法の6万円、低廉な空家等の800万円・30万円。
第二に期限。後述する2週間系・30日系・3か月系のグループと、5年(免許と宅建士証の有効期間、欠格の年数)。
第三に主語。媒介契約書に記名押印するのは業者、35条・37条書面に記名するのは宅建士。免許取消は免許権者のみ、登録消除は登録知事のみ。
数字の整理は宅建業法の数字まとめ、直前の総点検は最終日のチェックリストにまとめています。
残り2週間で他科目をどう扱うか
14日を宅建業法に使うと決めた以上、残りの30問(権利関係14問、法令上の制限8問、税・その他3問、免除科目5問)は「仕上げる」対象ではなくなります。ここでやるのは維持です。毎日15分から30分、触り続けて鈍らせないことだけを目的にします。

維持と仕上げを分ける
維持と仕上げは、やることが違います。仕上げは、まだ知らない論点を潰して到達度を上げる作業です。維持は、すでに一度取れた問題を取れる状態のまま保つ作業です。
直前2週間で他科目に仕上げの作業を持ち込むと、宅建業法の14日が崩れます。逆に、まったく触らないと落ちます。とくに法令上の制限の面積要件のような純粋な数値は、2週間触らないだけで取り違えが出ます。維持の枠は短くてよいが、毎日入れる。 これが原則です。
具体的なルールは3つです。第一に、間違えた肢の再確認だけをする。第二に、新規論点は開かない。第三に、1論点あたりの時間を区切る。新しいテキストの章を開いた時点で、それは維持ではなく仕上げになっています。この線引きが曖昧なままだと、「他科目も少し見ておこう」が半日に膨らみ、その日の宅建業法が飛びます。
権利関係14問|間違えた肢だけを回す
権利関係は、残り2週間でもっとも手を広げてはいけない科目です。配点は14問と小さくありませんが、正解の根拠が条文の外、判例の射程や事実の評価にまで及ぶため、2週間の学習が得点に変換される保証がありません。
やるのは、これまでに間違えた肢の再確認だけです。範囲を広げず、意思表示、代理、時効、物権変動、抵当権、債務不履行と契約不適合責任、賃貸借、相続、借地借家法、区分所有法という頻出テーマの中で、自分が落とした肢に戻ります。どこが頻出かは権利関係の頻出論点で確認できます。
新しい判例に手を出さないでください。直前2週間に初めて見た判例が本番で出る確率は低く、一方で「まだ知らないことがある」という認識だけが残り、宅建業法に向かうべき集中を奪います。なお、権利関係の中でも借地借家法と区分所有法は数値で正誤が確定する部分が多く、性質としては宅建業法に近い領域です。維持の枠で数値だけを回す対象としては、この2つが最も費用対効果が高くなります。
法令上の制限8問|数字の白紙復元を毎日5分
法令上の制限は、維持の効果が最も高い科目です。正解の根拠が面積・年数・割合といった数値と区域の組み合わせにほぼ還元されるため、覚えているかどうかがそのまま点になります。
毎日5分、白紙に書き出す形で回してください。紙に「開発許可の面積要件」とだけ書いて、市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域・準都市計画区域、都市計画区域および準都市計画区域外の順に数値を思い出して書く。書いてから答え合わせをする。合っていれば翌日は飛ばし、外れていれば印をつけて翌日も回す。眺める復習では、覚えているものと覚えていないものが分離されず、すでに覚えている項目に時間を使い続けることになります。
対象は、開発許可の面積要件、国土利用計画法の事後届出の面積、農地法3条・4条・5条の許可権者と市街化区域の特例、建蔽率の緩和条件、接道義務の2メートル。この範囲で十分です。数値は必ず区域名とセットで唱えてください。数字だけを取り出した瞬間に、どれがどの区域か区別する手がかりが失われます。頻出の切り分けは法令上の制限の頻出論点、覚え方は法令上の制限の暗記法にあります。
税・その他3問|特例の要件だけを1日1テーマ
問23から問25の3問は、出題テーマが年によって入れ替わるため、直前2週間で山を張る対象になりません。触るなら、頻出の特例について「金額」ではなく「適用要件」を確認する形にします。この科目の失点は、控除額を覚えていなかったという形よりも、適用要件のどれかを取りこぼしたという形で出るからです。
1日1テーマ、5分で切り上げてください。3問しかない科目に、20問ある科目と同じ熱量をかける理由がありません。何を優先し何を落とすかは税・その他の得点戦略にまとめてあります。
統計と法改正は、それぞれ1回だけ
免除科目5問(問46から問50)のうち、統計の1問は直前期にしか確定しません。逆に言えば、直前に一度入れれば試験当日まで保持できます。覚える範囲は、各統計の増減の方向、何年連続でその方向が続いているか、おおまかな桁の3つで足ります。変動率を小数点以下まで覚える必要はありません。
これを14日のどこか1日、30分で済ませて終わりにします。対策の枠組みは統計問題の対策、その年の確定値は出典と公表年月日つきで宅建試験の統計数値まとめにあります。2回目はやりません。 統計は方向を覚えているかどうかで決まる1問で、回数を重ねても伸びる種類の論点ではありません。なお、登録講習を修了していない受験者にとって、問46から問50は基準点の設定上、満点前提で扱われている5問です。ここを落とすと、免除を受けている受験者に対してそのままハンディを負います。残りの4問の詰め方は問46〜50の攻略にあります。
法改正も同じ扱いです。令和8年度の試験は2026年4月1日現在施行の法令から出題されるため、確認すべき範囲は基準日から機械的に決まります。4月2日以降に施行された改正は、試験日の時点で現に施行されていても出題範囲に入りません。この基準日で何が変わったかを一覧で確認する作業を、14日のどこか1日、30分で行います(令和8年度に影響する法改正まとめ)。ここも1回で終わりです。時間をかけるべきなのは、改正によって従来の記述が誤りになった箇所だけで、改正前の内容のまま覚えていると自信を持って誤答することになります。
1日の中でどこに置くか
維持の枠は、宅建業法の学習より前に置いてください。後ろに置くと、宅建業法が長引いた日に真っ先に消えます。
現実的な形は、学習の冒頭に法令上の制限の白紙復元を5分、権利関係の誤答確認を10分置き、残りをその日の宅建業法に充てるという並びです。税・その他は週に3日程度、統計と法改正はそれぞれ1回だけ固定の日に入れます。順番を固定すると、忙しい日に短縮しても何が抜けたかが分かります。
そして最後の1日から2日は、当日の運び方そのものの確認に時間を割いてください。解く順序、飛ばす基準、マークの照合のタイミングは、知識とは別に事前に決めておく必要があります。宅建業法から解き始めると決めた場合、最初に塗るのは解答欄の26番で、ここで最上段から塗り始める事故が起きます。入室刻限から時間配分、マークのずれの防ぎ方までは宅建試験当日ガイドにまとめてあります。
試験での出題ポイント
宅建業法の問われ方には型があります。型を知っていると、知識が同じでも正答率が変わります。
数値の入れ替え
最も多い型です。10分の2を10分の3に、8日を7日に、2週間を1か月に、5%を10%に変えて誤りにします。対策は、数値を単独で覚えず隣接する数値とセットで覚えることです。「手付は2割、所有権留保は3割」「未完成5%、完成10%」のように、対になる数字を一緒に想起できるようにしておきます。
主体のすり替えと、適用場面の限定外し
「宅建業者が説明しなければならない」「宅建士が交付しなければならない」のように義務を負う主体を入れ替える型です。媒介契約書(業者が記名押印)と35条・37条書面(宅建士が記名)の対比、処分権者の入れ替え(免許取消を業務地の知事ができるか)が典型です。
これと並んで多いのが、8種制限を業者間取引に適用させる、36条の契約締結時期の制限を貸借にも及ぼす、35条書面の説明義務を売主にも負わせるといった、規制が働く場面の限定を外す型です。「この規定は誰と誰の間で働くのか」を条文ごとに確認する習慣が対策になります。
期限の起算点をずらす、義務と任意を入れ替える
「引渡しの日から2年」を「契約の日から2年」に、「書面で告げられた日から8日」を「契約の日から8日」に、「相続人が知った日から30日」を「死亡の日から30日」に変える型です。期限は必ず起算点とセットで覚えます。あわせて、登録の移転は任意なのに義務として書く、業務処理状況の報告や価額の根拠明示は口頭でよいのに書面必須として書く、という型もあります。「〜しなければならない」と「〜することができる」の違いを条文の語尾で確認しておいてください。
直前2週間で確認する改正論点
令和8年度の試験は2026年4月1日現在施行の法令から出題されます。宅建業法の側で、この基準日に間に合った実体改正が1つあります。
宅地建物取引業法施行規則16条の2に第9号が新設され、区分所有建物の重要事項説明事項が9項目から10項目に増えました(令和7年内閣府・国土交通省令第2号、2026年4月1日施行)。新設された第9号は第三者管理方式の開示に関する事項で、従来の第9号だった「維持修繕の実施状況の記録」は第10号に繰り下がっています。なお柱書の貸借の場合の扱いは「第三号及び第八号」のままで変わっていません。
直前期の確認として効くのは、項目が1つ増えたという事実そのものより、古い教材の記述が号数でずれている点です。「維持修繕の実施状況の記録は施行規則16条の2第9号」と号数で覚えている場合、令和8年度の条文では第10号です。号数を問う形で出題される可能性は高くありませんが、項目数を「9項目」と覚えたままだと、増えた1項目を含む肢に対応できません。区分所有建物の追加事項の全体は区分所有建物の重要事項、基準日で何が変わったかの一覧は令和8年度に影響する法改正まとめで確認してください。
個数問題への対処
正しいものの個数を答える形式では、部分的な知識では点になりません。曖昧な肢が1つでもあれば、消去法が使えないからです。対策は、肢ごとに自信度を記録しながら演習することです。自信のない肢が繰り返し同じ論点に集まるなら、そこが弱点です。
宅建業法は、この個数問題と組合せ問題の比率が高い科目です。条文の要件が細かく列挙されているため、4肢すべての正誤を確定させる形式が作りやすいという事情があります。したがって、宅建業法の演習では「たぶん正しい」を残さないことが、そのまま個数問題の対策になります。形式そのものの解き方と、組合せ問題で選択肢の並びから絞る手順は個数問題の解き方にまとめてあります。出題傾向は宅建業法の頻出論点、満点を狙う場合の詰め方は宅建業法で満点を狙う、法改正の反映は宅建業法の改正点で扱っています。
覚え方・整理の仕方
短期間で詰め込むほど、覚え方の設計が効きます。4つの原則で進めてください。
数字は「誰を守る規定か」から復元する
宅建業法の数値は、ほぼすべてが消費者保護のために置かれています。手付と損害賠償額の予定が代金の2割までなのは買主が失う額を限定するため、クーリング・オフに8日あるのは不意打ち的な場所での契約から冷静に離脱する時間を与えるため、保全措置が要るのは業者が倒産したときに買主の支払った金銭が戻らなくなるためです。目的を1文で言えれば、数値を忘れても方向は間違えません。
期間は3つのグループに分けて覚える
宅建業法の期間は、2週間系・30日系・3か月系にほぼ集約されます。2週間系は「業者側が穴を埋める時間」(不足額の供託、還付充当金、専任宅建士の補充、専任媒介の報告)。30日系は「届け出る時間」(変更の届出、廃業等の届出、宅建士の死亡等の届出)。3か月系は「契約や手続の区切り」(専任媒介の有効期間、供託の届出がない場合の催告の起点)。グループ単位で覚えると誤りが減ります。
対比は軸を先に決める
35条書面と37条書面なら時期・相手方・説明の要否・記名・未定の扱いの5軸、営業保証金と保証協会なら金額・納付期限・穴埋め・取戻しの4軸、免許と登録なら対象・有効期間・欠格事由・未成年者の扱いの4軸。軸が決まっていれば、抜けている知識がどこかも自分で分かります。
語呂は最後の手段、復習は思い出す形で
語呂合わせは、目的から復元できない純粋な数値にだけ使ってください。営業保証金の1,000万円・500万円や分担金の60万円・30万円は理屈で導けないため語呂が有効ですが、8種制限の2割・3割や保全措置の5%・10%は制度目的から復元できるため、語呂に頼ると応用が利かなくなります(語呂合わせの基本)。
そして直前期にテキストを読み返すのは、時間あたりの効果が低い方法です。読むと理解した気になりますが、記憶は思い出す行為によって強まります。1日の終わりに、その日の論点の要件と数値を何も見ずに口に出すか書き出す。この数分が翌週まで残る量を変えます(テスト効果を使った復習)。
理解度チェッククイズ
Q1. 宅地建物取引業者は、自ら所有するマンションを賃貸する場合であっても、宅地建物取引業の免許を受けなければならない。(○か×か)
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×:自ら貸借を行う行為は、宅地建物取引業に当たりません(宅建業法2条2号)。売買・交換は「自ら」行う場合も免許が必要ですが、貸借は「代理・媒介」の場合のみ免許が必要です。自ら貸主となる転貸も同様に免許不要です。Q2. 専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、契約の相手方を探索するため、締結の日から7日以内(業者の休業日を除く)に指定流通機構へ登録しなければならない。(○か×か)
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○:専任媒介契約は7日以内、専属専任媒介契約は5日以内で、いずれも宅建業者の休業日を算入しません(宅建業法34条の2第5項、施行規則15条の10)。報告義務が専任は2週間に1回以上、専属専任は1週間に1回以上である点とセットで押さえます。Q3. 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地の売買契約において、買主が宅地建物取引業者である場合にも、手付の額は代金の10分の2に制限される。(○か×か)
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×:手付の額の制限を含む8種制限は、宅建業者が自ら売主となり、かつ買主が宅建業者でない場合にのみ適用されます(宅建業法78条2項)。業者間取引には適用されません。Q4. 重要事項説明書(35条書面)には、代金の額、その支払時期および方法を記載しなければならない。(○か×か)
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×:代金の額・支払時期・方法は37条書面の必要的記載事項であり、35条書面の記載事項ではありません。35条書面に記載するのは「代金以外に授受される金銭の額と目的」です。引渡時期と移転登記の申請時期も37条書面側です。Q5. 都道府県知事は、その管轄する区域内で業務を行った国土交通大臣免許の宅地建物取引業者に対し、業務停止処分を行うことができる。(○か×か)
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○:指示処分と業務停止処分は、免許権者だけでなく、業務を行った区域を管轄する都道府県知事も行うことができます(宅建業法65条3項・4項)。一方、免許取消処分は免許権者しか行えません。宅建士についても同様の構造で、事務禁止処分は業務地の知事も行えますが、登録消除は登録をした知事のみです。Q6. 宅建試験は、試験日の時点で施行されている最新の法令に基づいて出題される。(○か×か)
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×:例年、その年の4月1日現在で施行されている法令に基づいて出題されます。令和8年度であれば2026年4月1日が基準日で、4月2日以降に施行された改正は、試験日の時点で現に施行されていても出題範囲に入りません。直前2週間で改正を確認するときは、「最新かどうか」ではなく「基準日までに施行されているかどうか」で判断してください。まとめ
2週間で宅建業法を回す設計について、要点を4つに整理します。
第一に、「宅建に2週間で合格できるか」という問いに、公表データで答えることはできません。 試験機関が公表しているのは合格率や合格判定基準であって、合格者の学習期間ではないからです。確かなのは、令和7年度の合格判定基準が50問中33問以上、合格率が18.7%だったこと、過去10年の基準点が33〜38点の幅で動いてきたことまでです。そのうえで、残り2週間で点が動くのは覚えているかどうかで正誤が確定する領域であり、その中で最も配点が大きいのが宅建業法20問だ、というのが本記事の立てる根拠です。
第二に、到達点は開始時点の状態で決まります。 テキストを一度通読していれば14日で全論点を一巡させ、通し演習まで届きます。初学者の場合は一巡できても定着まで届かない可能性が高く、目標点を下げて他科目とのバランスを取る判断が要ります。「2週間で必ず合格レベル」という保証はできません。
第三に、目標は16〜18点に置き、20点は狙いません。 毎年1〜2問は判断の分かれる問題が出ます。そこに時間を使うより、35条書面・37条書面・8種制限・報酬・免許と登録の欠格事由という5つの中核を確実にする方が点は伸びます。
第四に、14日間は同じ型を繰り返します。 要点の確認、肢別演習、誤答の3分類。前半10日で全論点を一巡し、11〜12日目で報酬と監督処分を押さえ、13日目に通しで解き、最終日は数字・期限・主語だけを確認します。並行して、他の3科目は毎日15〜30分の維持に落とします。間違えた肢の再確認だけを行い、新規論点は開かず、統計と法改正はそれぞれ1回で終わらせる。他科目との配分は科目別攻略法、3か月以上の時間が取れる場合の設計は3か月で仕上げる短期合格プランを参照してください。
宅建試験AIブートラボでは肢別トレーニングと年度別の過去問演習を用意しています。本記事の各日の演習パートを論点別・年度別に切り替えながら回す用途のほか、他科目の維持の枠で「間違えた肢だけの復習」を回す用途にも使えます。