相続の基礎知識|法定相続分・遺言・遺留分を整理
宅建試験で頻出の相続を解説。法定相続人の範囲と順位、法定相続分の計算、3種類の遺言、遺留分の割合と遺留分侵害額請求を表で整理。
相続の開始
相続とは、人が死亡した場合に、その人の財産上の権利義務を一定の親族が包括的に承継することをいいます。
民法882条
相続は、死亡によって開始する。
相続は、被相続人の死亡によってのみ開始します。失踪宣告を受けた場合も、死亡したものとみなされるため相続が開始します。
相続が開始する場所は、被相続人の住所です(民法883条)。
宅建試験では、相続は毎年のように出題される重要テーマです。法定相続人の範囲と順位、法定相続分、遺言、遺留分の各論点を正確に理解しましょう。
相続人の範囲と順位
配偶者は常に相続人
被相続人の配偶者は、他に相続人がいるかどうかにかかわらず、常に相続人となります(民法890条)。
ここでいう「配偶者」とは、法律上の配偶者(婚姻届を提出している配偶者)に限られます。内縁の配偶者は相続人にはなりません。
血族相続人の順位
配偶者以外の相続人(血族相続人)には、以下の順位があります。上位の順位の者がいる場合、下位の順位の者は相続人になりません。
| 順位 | 相続人 | 備考 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 子(直系卑属) | 実子・養子を問わない。胎児も含む |
| 第2順位 | 直系尊属(父母・祖父母) | 子がいない場合に相続人となる。親等の近い者が優先 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 子も直系尊属もいない場合に相続人となる |
第1順位:子
被相続人の子は、第1順位の相続人です。
- 実子と養子は区別されない
- 嫡出子と非嫡出子(婚外子)の法定相続分は同じ(平成25年最高裁決定を受けた民法改正)
- 胎児は、相続については既に生まれたものとみなされる(民法886条)。ただし、死産の場合はこの限りでない
代襲相続
相続人となるべき者が、相続開始以前に死亡、相続欠格、または廃除によって相続権を失った場合、その者の子が代わりに相続することを代襲相続といいます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代襲原因 | 死亡、相続欠格、廃除(相続放棄は含まない) |
| 子の代襲 | 子 → 孫 → ひ孫...と無限に再代襲可能 |
| 兄弟姉妹の代襲 | 兄弟姉妹 → 甥姪まで(再代襲は不可) |
超重要ポイント: 相続放棄は代襲原因にならない。相続放棄した者の子は代襲相続できません。
第2順位:直系尊属
子(代襲相続人を含む)がいない場合、直系尊属が相続人となります。
- 父母と祖父母がいる場合は、親等の近い者(父母)が優先
- 父母がともにいない場合に初めて祖父母が相続人となる
第3順位:兄弟姉妹
子も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人となります。
- 兄弟姉妹が相続開始前に死亡等している場合は、甥・姪が代襲相続する
- ただし、再代襲は認められない(甥・姪の子は代襲相続できない)
法定相続分
基本パターン
法定相続分は、相続人の組み合わせにより以下のように定められています。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者の相続分 | 他の相続人の相続分 |
|---|---|---|
| 配偶者 + 子 | 1/2 | 1/2(子が複数なら均等に分ける) |
| 配偶者 + 直系尊属 | 2/3 | 1/3(直系尊属が複数なら均等に分ける) |
| 配偶者 + 兄弟姉妹 | 3/4 | 1/4(兄弟姉妹が複数なら均等に分ける) |
| 配偶者のみ | 全部 | --- |
| 子のみ | --- | 全部(複数なら均等に分ける) |
覚え方のコツ
配偶者の相続分を覚えましょう。「子は2分の1、尊属は3分の2、兄弟は4分の3」
「1/2 → 2/3 → 3/4」と順位が下がるほど配偶者の取り分が増える
これは、被相続人との関係が遠い相続人ほど、配偶者の貢献度が相対的に高く評価されるという考え方に基づいています。
具体的な計算例
例1:配偶者Aと子B、Cがいる場合
| 相続人 | 相続分 | 計算 |
|---|---|---|
| 配偶者A | 1/2 | --- |
| 子B | 1/4 | 1/2 × 1/2 = 1/4 |
| 子C | 1/4 | 1/2 × 1/2 = 1/4 |
例2:配偶者Aと父B、母Cがいる場合
| 相続人 | 相続分 | 計算 |
|---|---|---|
| 配偶者A | 2/3 | --- |
| 父B | 1/6 | 1/3 × 1/2 = 1/6 |
| 母C | 1/6 | 1/3 × 1/2 = 1/6 |
例3:配偶者Aと兄B、姉Cがいる場合
| 相続人 | 相続分 | 計算 |
|---|---|---|
| 配偶者A | 3/4 | --- |
| 兄B | 1/8 | 1/4 × 1/2 = 1/8 |
| 姉C | 1/8 | 1/4 × 1/2 = 1/8 |
例4:配偶者Aと子B(既に死亡)の子D、Eがいる場合(代襲相続)
| 相続人 | 相続分 | 計算 |
|---|---|---|
| 配偶者A | 1/2 | --- |
| 孫D(代襲) | 1/4 | 1/2 × 1/2 = 1/4 |
| 孫E(代襲) | 1/4 | 1/2 × 1/2 = 1/4 |
半血兄弟姉妹
半血兄弟姉妹(父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹)の相続分は、全血兄弟姉妹の2分の1です。
例5:兄A(全血)と姉B(半血)が相続人の場合
| 相続人 | 相続分 | 計算 |
|---|---|---|
| 兄A(全血) | 2/3 | 2 / (2+1) = 2/3 |
| 姉B(半血) | 1/3 | 1 / (2+1) = 1/3 |
相続の承認と放棄
相続が開始した後、相続人は以下の3つの選択肢があります。
3つの選択肢
| 選択肢 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 単純承認 | 無限に被相続人の権利義務を承継 | 財産も負債もすべて承継 |
| 限定承認 | 相続財産の範囲内で債務を弁済する条件付きで承継 | プラスの財産の範囲内でのみ負債を弁済 |
| 相続放棄 | 相続を全面的に拒否 | 初めから相続人でなかったものとみなされる |
熟慮期間
民法915条1項
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
相続の承認・放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内(熟慮期間)に行わなければなりません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 起算点 | 自己のために相続の開始があったことを知った時 |
| 期間 | 3ヶ月 |
| 延長 | 家庭裁判所への申立てにより延長可能 |
| 期間内に何もしなかった場合 | 単純承認したものとみなされる |
単純承認
単純承認は、被相続人の権利義務を無限に承継するものです。
以下の場合は、法定単純承認として、単純承認したものとみなされます。
- 相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき
- 熟慮期間内に限定承認または放棄をしなかったとき
- 限定承認・放棄の後に、相続財産の全部または一部を隠匿・消費したとき等
限定承認
限定承認は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務を弁済するという条件付きの承認です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手続 | 家庭裁判所への申述 |
| 共同相続の場合 | 相続人全員が共同して行う必要がある |
| 期間 | 熟慮期間内(3ヶ月) |
重要ポイント: 限定承認は相続人全員が共同して行う必要があります。一人でも反対する者がいると限定承認はできません。
相続放棄
相続放棄は、被相続人の権利義務を一切承継しないとするものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手続 | 家庭裁判所への申述 |
| 効果 | 初めから相続人でなかったものとみなされる |
| 期間 | 熟慮期間内(3ヶ月) |
| 撤回 | 原則として撤回不可 |
| 代襲相続 | 発生しない(放棄者の子は代襲相続できない) |
超重要ポイント:
- 相続放棄は個別に行える(限定承認と異なり、全員で行う必要はない)
- 相続放棄は代襲原因にならない
- 相続放棄をした者は初めから相続人でなかったものとみなされるため、次順位の者が相続人となる
遺言
遺言とは
遺言(いごん)とは、被相続人が生前にその意思を表示し、死後に法律効果を生じさせる行為です。
遺言は要式行為であり、民法に定められた方式に従わなければ無効となります。
遺言能力
遺言をするには遺言能力が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年齢 | 15歳に達した者は遺言ができる |
| 行為能力 | 制限行為能力者も遺言できる(法定代理人の同意不要) |
| 意思能力 | 遺言時に意思能力が必要 |
| 成年被後見人 | 事理を弁識する能力を一時回復した時に、医師2人以上の立会いのもとで遺言可能 |
遺言の3つの方式
普通方式の遺言には、以下の3種類があります。
1. 自筆証書遺言
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作成方法 | 遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印する |
| 証人 | 不要 |
| 検認 | 必要(家庭裁判所での検認手続き) |
| 保管 | 自己保管(法務局での保管制度もあり) |
| 費用 | 低額 |
| メリット | 簡単に作成できる、費用がかからない |
| デメリット | 形式不備で無効になるリスク、紛失・偽造のおそれ |
重要な改正点:
- 財産目録については、自書でなくてもよい(パソコンで作成可能、通帳のコピーでも可)。ただし、各ページに署名・押印が必要
- 法務局での保管制度(自筆証書遺言書保管制度)を利用した場合、検認が不要
2. 公正証書遺言
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作成方法 | 公証人が遺言者の口述を筆記して作成 |
| 証人 | 2人以上の証人が必要 |
| 検認 | 不要 |
| 保管 | 公証役場で原本保管 |
| 費用 | 比較的高額 |
| メリット | 形式不備の心配がない、紛失・偽造のおそれがない |
| デメリット | 費用がかかる、手続きが煩雑 |
3. 秘密証書遺言
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作成方法 | 遺言者が遺言書に署名・押印し、封印して公証人に提出 |
| 証人 | 2人以上の証人が必要 |
| 検認 | 必要 |
| 保管 | 自己保管 |
| メリット | 遺言の内容を秘密にできる、自書でなくてもよい |
| デメリット | 手続きが煩雑、実務ではほとんど利用されない |
遺言3種 比較表
| 比較項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
|---|---|---|---|
| 作成者 | 遺言者本人 | 公証人 | 遺言者本人(自書不要) |
| 自書の要件 | 全文・日付・氏名を自書 | 不要(口述) | 不要 |
| 証人 | 不要 | 2人以上 | 2人以上 |
| 検認 | 必要(法務局保管なら不要) | 不要 | 必要 |
| 署名・押印 | 必要 | 必要 | 必要(封印も必要) |
| 日付 | 自書で記載 | 公証人が記載 | 公証人が日付を記載 |
証人になれない者
遺言の証人になれない者(証人の欠格事由)は以下のとおりです。
- 未成年者
- 推定相続人および受遺者ならびにこれらの配偶者および直系血族
- 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人
遺言の撤回
遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、遺言の全部または一部を撤回することができます(民法1022条)。
撤回とみなされる場合:
- 前の遺言と後の遺言が抵触する場合 → 抵触部分は後の遺言で撤回されたものとみなす
- 遺言と遺言後の生前処分が抵触する場合 → 抵触部分は撤回されたものとみなす
- 遺言者が故意に遺言書を破棄した場合 → 破棄した部分は撤回されたものとみなす
遺留分
遺留分とは
遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人に保障された、相続財産の最低限の取り分のことをいいます。被相続人が遺言で全財産を第三者に遺贈したとしても、遺留分権利者は一定の財産を取り戻すことができます。
遺留分権利者の範囲
遺留分を有する者は以下のとおりです。
| 遺留分権利者 | 遺留分の有無 |
|---|---|
| 配偶者 | あり |
| 子(代襲相続人を含む) | あり |
| 直系尊属 | あり |
| 兄弟姉妹 | なし |
超重要ポイント:兄弟姉妹には遺留分がない!
これは宅建試験で最もよく出るポイントの一つです。兄弟姉妹は相続人にはなりますが、遺留分はありません。
遺留分の割合
遺留分の割合は、総体的遺留分と個別的遺留分に分けて理解します。
総体的遺留分(相続財産全体に対する遺留分の割合)
| 相続人の構成 | 総体的遺留分 |
|---|---|
| 直系尊属のみが相続人の場合 | 相続財産の1/3 |
| それ以外の場合(配偶者がいる場合、子がいる場合など) | 相続財産の1/2 |
個別的遺留分(各相続人の遺留分の割合)
個別的遺留分 = 総体的遺留分 × 法定相続分
具体的な計算例:
例1:配偶者Aと子B、Cの場合
| 相続人 | 法定相続分 | 総体的遺留分 | 個別的遺留分 |
|---|---|---|---|
| 配偶者A | 1/2 | 1/2 | 1/2 × 1/2 = 1/4 |
| 子B | 1/4 | 1/2 | 1/2 × 1/4 = 1/8 |
| 子C | 1/4 | 1/2 | 1/2 × 1/4 = 1/8 |
例2:配偶者Aと父Bの場合
| 相続人 | 法定相続分 | 総体的遺留分 | 個別的遺留分 |
|---|---|---|---|
| 配偶者A | 2/3 | 1/2 | 1/2 × 2/3 = 1/3 |
| 父B | 1/3 | 1/2 | 1/2 × 1/3 = 1/6 |
例3:父Bのみが相続人の場合
| 相続人 | 法定相続分 | 総体的遺留分 | 個別的遺留分 |
|---|---|---|---|
| 父B | 全部 | 1/3 | 1/3 × 1 = 1/3 |
例4:配偶者Aと兄Bの場合
| 相続人 | 法定相続分 | 総体的遺留分 | 個別的遺留分 |
|---|---|---|---|
| 配偶者A | 3/4 | 1/2 | 1/2 × 3/4 = 3/8 |
| 兄B | 1/4 | --- | 遺留分なし |
遺留分侵害額請求権
遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は遺留分侵害額請求権を行使して、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。
民法1046条1項
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
重要な改正点: 2019年7月1日施行の改正民法により、旧法の「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」に変更されました。旧法では現物返還が原則でしたが、改正後は金銭請求のみとなりました。
消滅時効と除斥期間
| 期間 | 内容 |
|---|---|
| 消滅時効 | 相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年 |
| 除斥期間 | 相続開始の時から10年 |
遺留分の放棄
遺留分の放棄は、相続開始前でも相続開始後でも可能です。ただし、以下の違いがあります。
| 時期 | 方法 |
|---|---|
| 相続開始前 | 家庭裁判所の許可が必要 |
| 相続開始後 | 自由にできる(許可不要) |
重要ポイント: 遺留分の放棄は相続の放棄ではない。遺留分を放棄しても、相続人としての地位は失いません。
また、共同相続人の一人が遺留分を放棄しても、他の共同相続人の遺留分には影響しません。
配偶者居住権(2020年改正)
配偶者居住権とは
配偶者居住権は、2020年4月1日施行の改正民法で新設された制度です。被相続人の配偶者が、被相続人の所有する建物に相続開始時に居住していた場合に、その建物を無償で使用・収益できる権利です。
配偶者居住権の種類
配偶者居住権には2つの種類があります。
1. 配偶者居住権(民法1028条〜1036条)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 成立要件 | 被相続人の配偶者が、相続開始時に被相続人所有の建物に居住していたこと |
| 取得方法 | 遺産分割、遺贈、家庭裁判所の審判 |
| 存続期間 | 原則として配偶者の終身(別段の定めも可能) |
| 登記 | 第三者に対抗するには登記が必要 |
| 譲渡 | 不可 |
| 消滅事由 | 配偶者の死亡、期間満了、建物の全部滅失等 |
2. 配偶者短期居住権(民法1037条〜1041条)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 成立要件 | 被相続人の配偶者が、相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居住していたこと |
| 取得方法 | 法律上当然に取得(意思表示不要) |
| 存続期間 | 遺産分割により居住建物の帰属が確定する日または相続開始から6ヶ月のいずれか遅い日まで |
| 登記 | 不要(対抗要件としての登記の規定なし) |
| 譲渡 | 不可 |
配偶者居住権の試験対策ポイント
配偶者居住権は比較的新しい制度であるため、出題可能性が高い分野です。以下の点を押さえましょう。
- 配偶者居住権は譲渡できない
- 第三者対抗には登記が必要
- 配偶者短期居住権は法律上当然に取得する
- 存続期間の違い(終身 vs 6ヶ月)
相続に関するその他の重要論点
相続欠格
以下の行為をした者は、当然に相続人の資格を失います(民法891条)。家庭裁判所への申立ては不要です。
- 被相続人や先順位・同順位の相続人を殺害・殺害未遂した者
- 被相続人が殺害されたことを知りながら告発・告訴しなかった者(一定の例外あり)
- 詐欺・強迫により遺言を妨害した者
- 詐欺・強迫により遺言をさせた者
- 遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者
推定相続人の廃除
被相続人は、推定相続人に虐待や重大な侮辱等があった場合、家庭裁判所に請求して相続人の資格を奪うことができます(民法892条)。
| 項目 | 相続欠格 | 廃除 |
|---|---|---|
| 効果の発生 | 当然に(裁判所の手続き不要) | 家庭裁判所の審判が必要 |
| 対象者 | 欠格事由に該当する者 | 遺留分を有する推定相続人 |
| 代襲相続 | 発生する | 発生する |
| 被相続人の意思 | 不要 | 被相続人の請求が必要 |
特別受益と寄与分
特別受益とは、共同相続人の中に、被相続人から生前贈与や遺贈を受けた者がいる場合に、それを相続分の前渡しとみなして調整する制度です。
寄与分とは、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者がいる場合に、その貢献を相続分に反映する制度です。
特別寄与料(2019年改正)
相続人以外の親族(例:長男の妻)が被相続人の療養看護等に特別の寄与をした場合、相続人に対して特別寄与料の支払いを請求できる制度が新設されました(民法1050条)。
試験での出題パターン
出題パターン1:法定相続分の計算
具体的な家族構成を示して法定相続分を計算させる問題が最も頻出です。代襲相続が絡むケースや、相続放棄者がいるケースが特に狙われます。
出題パターン2:遺留分の計算
遺留分の割合を計算させる問題も頻出です。「兄弟姉妹には遺留分がない」という知識は毎年のように問われます。
出題パターン3:遺言の方式
3種類の遺言の比較(証人の要否、検認の要否など)が出題されます。特に自筆証書遺言の改正点が狙われます。
出題パターン4:相続の承認と放棄
熟慮期間(3ヶ月)、限定承認は全員共同、相続放棄は代襲原因にならない等の知識が問われます。
出題パターン5:配偶者居住権
新しい制度であるため、基本的な知識(成立要件、存続期間、譲渡の可否)が出題される可能性が高いです。
よく出るひっかけ
- 「相続放棄をした者の子は代襲相続できる」 → 誤り(相続放棄は代襲原因にならない)
- 「限定承認は、各相続人が個別に行うことができる」 → 誤り(全員共同で行う必要がある)
- 「兄弟姉妹にも遺留分がある」 → 誤り(遺留分はない)
- 「自筆証書遺言の財産目録は自書しなければならない」 → 誤り(パソコン等で作成可能。ただし署名・押印が必要)
- 「遺留分侵害額請求では、現物返還を請求できる」 → 誤り(金銭の支払いのみ)
- 「遺留分の放棄をすると、相続人の資格を失う」 → 誤り(遺留分の放棄と相続の放棄は別)
- 「内縁の配偶者も相続人となる」 → 誤り(法律上の配偶者のみ)
- 「配偶者居住権は、第三者に譲渡できる」 → 誤り(譲渡不可)
- 「熟慮期間は、被相続人の死亡時から3ヶ月」 → 不正確(自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月)
覚え方のコツ
法定相続分
「子は2分の1、尊属は3分の2、兄弟は4分の3」(配偶者の取り分)
分子が1ずつ増える → 1/2、2/3、3/4
遺留分
「直系尊属のみは3分の1、それ以外は2分の1」(総体的遺留分)
「兄弟姉妹に遺留分なし」 → 最重要!
熟慮期間
「知ってから3ヶ月」
遺言の証人
「自筆は不要、公正証書と秘密は2人以上」
代襲相続
「放棄は代襲原因にならない」
「兄弟姉妹の代襲は甥姪まで」
まとめ
相続は、宅建試験の権利関係分野において毎年出題される重要テーマです。以下のポイントを確実に押さえましょう。
1. 相続人の範囲と順位
- 配偶者は常に相続人
- 第1順位:子、第2順位:直系尊属、第3順位:兄弟姉妹
- 代襲相続:死亡・欠格・廃除が原因(放棄は含まない)
- 兄弟姉妹の代襲は甥姪まで
2. 法定相続分
- 配偶者+子:1/2、1/2
- 配偶者+直系尊属:2/3、1/3
- 配偶者+兄弟姉妹:3/4、1/4
3. 相続の承認と放棄
- 熟慮期間:知った時から3ヶ月
- 限定承認:相続人全員が共同で行う
- 相続放棄:個別に行える、代襲原因にならない
4. 遺言
- 自筆証書遺言:証人不要、検認必要(法務局保管なら不要)
- 公正証書遺言:証人2人以上、検認不要
- 秘密証書遺言:証人2人以上、検認必要
5. 遺留分
- 兄弟姉妹には遺留分なし
- 直系尊属のみ:1/3、それ以外:1/2
- 遺留分侵害額請求:金銭の支払いを請求
- 消滅時効1年、除斥期間10年
6. 配偶者居住権
- 譲渡不可、対抗には登記必要
- 短期居住権は当然に取得
相続の知識は、意思表示の瑕疵(特に無権代理と相続の論点)や借地借家法(借地権・借家権の相続)とも密接に関連しています。これらの分野をあわせて学習することで、権利関係の理解がより深まるでしょう。
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