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手付金等の保全措置|要否の判定と計算手順

宅建業法 読了 約30分

宅建業法41条・41条の2の手付金等の保全措置を条文から解説。保全が不要になる三つの場合、割合と政令額の「かつ」、合算と全額保全のルール、保全方法の違いを事例計算つきで整理します。

目次

    この記事は、8種制限のうち手付金等の保全措置(宅地建物取引業法41条・41条の2)を扱います。8種制限の全体像は「8種制限とは」、8項目の数字と効果の横断整理は「8種制限の横断整理」を先に見てください。ここでは要否の判定手順と計算に絞って深く掘ります。

    先に結論を四つ述べます。

    第一に、この制度は「未完成物件・完成物件」という言葉で書かれていません。41条が「工事の完了前」の売買を対象とし、41条の2が「それ以外の売買」を拾う残余規定として置かれています。この書き分けを条文の形で持っておくと、境界の事例で迷いません。

    第二に、よく引用される1,000万円という数字は、条文には書かれていません。41条1項ただし書も41条の2第1項ただし書も「政令で定める額」としており、その額を1,000万円と定めているのは宅地建物取引業法施行令3条の5です。

    第三に、保全が不要になる場合は三つあり、金額基準はそのうちの一つにすぎません。買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の登記をしたとき、そして額が基準以下であるとき。前二者を落とすと、要否の判定が一つ足りなくなります。

    第四に、39条の手付額の制限とは別の規律です。39条は手付の額そのものに上限を課す規定、41条・41条の2は受領の前に措置を講じることを求める規定です。両者は同じ取引に併存して適用されます。混同を狙った選択肢が定番なので、条文番号ごとに切り分けて覚えてください。

    なお、宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されます。この記事で引用する宅地建物取引業法および同法施行令の条文は、すべて2026年4月1日時点で施行されているものです。

    適用の前提を外すとすべてが崩れる

    保全措置の話に入る前に、そもそもこの規定が働く場面を確定させます。ここを外したまま計算しても意味がありません。

    「自ら売主」であること

    41条1項は「宅地の造成又は建築に関する工事の完了前において行う当該工事に係る宅地又は建物の売買で自ら売主となるものに関しては」と書き出します。41条の2第1項も「自ら売主となる宅地又は建物の売買(前条第一項に規定する売買を除く。)に関しては」です。

    宅建業者が売主として当事者になっている売買でなければ、この規定は働きません。取引態様がどれに当たるかの整理は「取引態様の明示」で扱っています。

    媒介・代理では適用されない

    宅建業者が他人の物件の売買を媒介したり、売主を代理したりする場合、その業者は「自ら売主」ではありません。したがって41条・41条の2の適用はありません。

    これは実質的にも筋が通っています。保全措置は、買主が引渡し前に支払った金銭を売主の倒産等から守る制度です。金銭を受け取って倒産しうるのは売主であって、媒介業者ではありません。媒介業者が手付金を預かる場面を想定した規定ではないということです。

    「宅建業者Aが売主Bを代理して、宅建業者でないCに建物を売却する場合、Aは手付金等の保全措置を講じなければならない」という趣旨の肢は誤りになります。

    相手方が宅建業者でないこと

    もう一つの前提が、買主が宅建業者でないことです。根拠は78条2項です。

    「第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない。」

    41条と41条の2は「37条の2から43条まで」の範囲に入るため、業者間取引には適用されません。業者間であれば、代金の全額を引渡し前に受領しても保全措置は不要です。この適用除外は「8種制限が適用されないケース」で扱っています。

    前提の確認を先に置く理由

    試験では、割合の計算に気を取られて前提を見落とす失点が起きます。設問を読んだら、まず「売主は宅建業者か」「その業者は自ら売主か」「買主は宅建業者でないか」を確認してください。三つのうち一つでも欠ければ、いくら高額でも保全措置は不要です。計算はそのあとです。

    41条と41条の2 ― 条文はどう書き分けているか

    41条1項の対象は「工事の完了前」の売買

    41条1項の対象は「宅地の造成又は建築に関する工事の完了前において行う当該工事に係る宅地又は建物の売買」です。造成工事や建築工事が完了する前に契約する売買、いわゆる青田売りがこれに当たります。

    判定の基準時は契約締結の時点です。契約時に工事が完了していなければ41条、完了していれば41条の2。契約後に工事が完了しても、41条の適用が41条の2に切り替わるわけではありません。

    41条の2は残りすべてを拾う残余規定

    41条の2第1項は「自ら売主となる宅地又は建物の売買(前条第一項に規定する売買を除く。)に関しては」と書かれています。

    「完成物件の売買」とは書いていません。41条の対象から外れる売買のすべて、という書き方です。結果として完成物件がここに入りますが、条文の構造は「原則と例外」ではなく「41条が切り取った残り」という関係になっています。

    この違いが効くのは、境界の事例です。すでに存在する中古建物の売買も、更地の売買も、41条1項の「工事の完了前」に当たらない以上、41条の2の対象になります。「完成物件」という語で覚えていると、更地や中古住宅が思い浮かばず判断が止まります。41条に当たらなければ全部41条の2、と押さえるほうが確実です。

    なぜ書き分けたのか

    二つを分ける実質的な理由は、買主が負うリスクの大きさです。

    工事完了前の物件は、まだ現物が存在しません。業者が倒産すれば、買主は物件も金銭も得られない可能性があります。工事完了後であれば現物が存在しており、少なくとも目的物は特定できています。買主のリスクが大きい工事完了前のほうが、早い段階で保全を要求する。この趣旨がわかっていれば、後述する割合の大小を取り違えません。

    「手付金等」とは何か

    定義は41条1項の括弧書きにある

    41条1項は、条文中で「手付金等」を次のように定義しています。

    「代金の全部又は一部として授受される金銭及び手付金その他の名義をもつて授受される金銭で代金に充当されるものであつて、契約の締結の日以後当該宅地又は建物の引渡し前に支払われるものをいう。以下同じ。」

    「以下同じ」とあるため、この定義は41条の2にもそのまま及びます。要素を分解すると三つです。

    要素1:名義を問わない

    定義は「手付金その他の名義をもつて授受される金銭」と書いています。呼び名は関係ありません。手付金でも、中間金でも、内金でも、申込証拠金でも、代金の一部として授受されるか、あるいは代金に充当されるものであれば手付金等に当たります。

    逆に、名前が「手付金」であっても、次の二つの要素を満たさなければ手付金等ではありません。試験は名称で判断させようとしてくるので、必ず定義に戻ってください。

    要素2:代金に充当されるものであること

    「代金の全部又は一部として授受される金銭」か、「代金に充当されるもの」であることが必要です。

    したがって、代金に充当されない金銭は手付金等に含まれません。媒介報酬、固定資産税等の精算金、契約書に貼る印紙の実費などは、代金の一部でも代金への充当でもないため対象外です。申込証拠金についても、契約に至らなければ返還され、代金に充当されない扱いのものであれば手付金等ではありません。充当されるかどうかが分かれ目です。

    要素3:契約締結の日以後、引渡し前に支払われること

    支払時期にも枠があります。「契約の締結の日以後当該宅地又は建物の引渡し前に支払われるもの」です。

    つまり引渡し後に支払われる残代金は手付金等ではありません。保全措置の趣旨が「引渡しを受ける前に払った金銭を守る」ことにある以上、引渡しが済んでいればこの制度の出番はありません。「代金全額を引渡し後に支払う約定であれば、保全措置は不要」という結論はここから出ます。

    合算する ― 既に受領した額を加える

    41条1項ただし書は「当該宅地建物取引業者が受領しようとする手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)」と書いています。41条の2第1項ただし書にも同じ括弧書きがあります。

    判定は常に累計で行います。手付金を受領した時点では基準以下だったとしても、その後に中間金を受領しようとして累計が基準を超えるなら、その中間金を受領する前に保全措置が必要になります。「今回受け取る金額だけを基準と比べる」という誤りが、この論点で最も多い失点です。

    保全措置が不要になる三つの場合

    41条1項ただし書は、次のように三つを並べています。

    「ただし、当該宅地若しくは建物について買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の登記をしたとき、又は当該宅地建物取引業者が受領しようとする手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が代金の額の百分の五以下であり、かつ、宅地建物取引業者の取引の実情及びその取引の相手方の利益の保護を考慮して政令で定める額以下であるときは、この限りでない。」

    41条の2第1項ただし書も、割合が十分の一になる点を除いて同じ構造です。

    買主への所有権移転の登記がされたとき

    第一の場合です。買主名義への所有権移転登記が完了していれば、買主は物件の所有権を第三者に対抗できます。売主が倒産しても、物件を失うリスクは大きく下がります。金銭を守る代わりに、物件そのものを確保させたという関係です。

    買主が所有権の登記をしたとき

    第二の場合です。第一の場合と紛らわしいのですが、条文は別々に並べています。売主から買主への移転登記という形をとらず、買主が自ら所有権の登記を備えた場合を拾う書き方です。

    この二つ目を落として「登記と金額基準の二つ」と覚えていると、条文の構造を問う肢に対応できません。ただし書は三つ並んでいます。

    額が基準以下であるとき ― 「かつ」を読み落とさない

    第三の場合が、実際の計算で使うものです。ここで最も重要なのが接続詞です。

    条文は「代金の額の百分の五以下であり、かつ、……政令で定める額以下であるとき」と書いています。「または」ではありません。割合の基準と金額の基準の両方を満たしたときにだけ、保全措置が不要になります。

    裏を返せば、どちらか一方でも超えれば保全措置が必要です。「割合はクリアしているが金額が超えている」「金額はクリアしているが割合が超えている」のいずれも、保全措置を講じなければ受領できません。

    1,000万円は条文ではなく政令の額である

    条文が書いているのは「宅地建物取引業者の取引の実情及びその取引の相手方の利益の保護を考慮して政令で定める額」までです。具体的な金額は宅地建物取引業法施行令3条の5が定めます。

    「法第四十一条第一項ただし書及び第四十一条の二第一項ただし書の政令で定める額は、千万円とする。」

    1,000万円という数字の根拠は施行令3条の5です。41条・41条の2は割合(百分の五、十分の一)までしか書いていません。条文の構造を問う出題に備えて、この分担を押さえておいてください。

    「以下」であって「未満」ではない

    もう一つ、条文の語尾を確認します。ただし書は「百分の五以下であり、かつ、……政令で定める額以下であるとき」です。

    ちょうど5パーセントのとき、ちょうど1,000万円のときは、保全措置が不要です。境界値を含みます。逆にいえば、保全措置が必要になるのは基準を「超える」ときです。この境界を「未満」にすり替えた肢が出ます。

    要否の判定手順と計算

    判定は四つのステップで行う

    具体的な数字が出てきたら、次の順で処理します。

    第一に、適用の前提を確認します。宅建業者が自ら売主で、買主が宅建業者でないか。ここが崩れれば以下は不要です。

    第二に、41条か41条の2かを決めます。契約締結時に工事が完了していなければ41条(百分の五)、それ以外は41条の2(十分の一)です。

    第三に、手付金等の累計額を出します。定義に当たる金銭を、既に受領した分も含めて足します。

    第四に、割合基準と政令額の両方と比べます。両方とも「以下」なら不要、どちらか一方でも超えれば必要です。

    以下、事例で確認します。

    事例1:工事完了前・代金4,000万円・手付金200万円

    割合基準は4,000万円の百分の五で200万円です。受領しようとする額は200万円で、200万円以下に当たります。政令額1,000万円以下も満たします。両方を満たすので、保全措置は不要です。

    ちょうど200万円である点が要点です。「以下」なので境界値は不要側に入ります。

    事例2:工事完了前・代金4,000万円・手付金250万円

    割合基準は同じく200万円です。250万円は200万円を超えます。政令額1,000万円は下回りますが、条文は「かつ」なので両方を満たさなければなりません。したがって保全措置が必要です。

    そして重要なのは保全する範囲です。超過した50万円ではなく、受領しようとする250万円の全額について保全措置を講じます。38条2項のように「超える部分」を切り出す発想は、41条・41条の2にはありません。

    事例3:工事完了後・代金3,000万円・手付金300万円

    41条の2の割合基準は十分の一なので、3,000万円の十分の一で300万円です。受領しようとする額は300万円で、300万円以下に当たります。政令額も満たします。したがって保全措置は不要です。

    同じ代金・同じ手付金額でも、工事完了前なら割合基準は150万円となり、300万円は基準を超えるため保全措置が必要になります。41条か41条の2かで結論が反転する典型例です。

    事例4:手付金のあとに中間金を受領する場合

    工事完了前、代金4,000万円の物件で、まず手付金150万円を受領したとします。割合基準200万円以下、政令額以下なので、この時点では保全措置は不要です。

    その後、中間金100万円を受領しようとします。ここで今回受け取る100万円だけを基準と比べてはいけません。既に受領した150万円を加えた累計250万円が判定の対象です。250万円は割合基準200万円を超えるため、中間金を受領する前に保全措置が必要になります。

    保全の対象も累計額です。既に受領済みの150万円を含めた250万円全額について措置を講じます。「既に受け取った分は保全しなくてよい」という理解は誤りです。

    事例5:割合はクリアしても政令額で引っかかる

    工事完了前、代金5億円の物件で1,500万円を受領しようとする場合を考えます。

    割合基準は5億円の百分の五で2,500万円です。1,500万円は2,500万円以下なので、割合の要件は満たします。しかし政令額は1,000万円であり、1,500万円はこれを超えます。「かつ」を満たさないため、保全措置が必要です。

    高額物件では割合基準が大きくなるため、先に政令額のほうで引っかかります。代金が2億円を超えると、工事完了前でも割合基準が1,000万円を上回るため、実質的に政令額のほうが効いてきます。

    事例6:政令額ちょうどの場合

    工事完了後、代金3億円の物件で手付金1,000万円を受領する場合です。

    割合基準は3億円の十分の一で3,000万円なので、1,000万円は余裕で下回ります。政令額は1,000万円で、受領額はちょうど1,000万円です。条文は「以下」なので、これも満たします。両方を満たすため、保全措置は不要です。

    1円でも増えて1,000万1円になれば、政令額を超えるため保全措置が必要になります。境界の扱いを問う出題に備えてください。

    超えたときに保全するのは全額である

    事例2と事例4で触れた点を、独立して確認します。

    38条2項は「代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする」と、超過部分を切り出す書き方をしています。これに対し41条1項・41条の2第1項は、措置を講じた後でなければ「手付金等を受領してはならない」と書いており、部分を切り出す規定を置いていません。

    したがって、基準を超えるときに保全すべきは、受領しようとする額の全部(既に受領した額を含む)です。「超過部分だけ保全すればよい」という発想は、38条の構造を41条に持ち込んだ誤りです。この取り違えは選択肢として作りやすいので、条文の書き方の違いまで含めて覚えてください。計算問題全般の練習は「宅建の計算問題まとめ」で扱っています。

    保全の方法 ― 条文が要求しているもの

    41条1項1号:銀行等による保証委託契約

    工事完了前の物件で使える第一の方法です。条文は次のとおりです。

    「銀行その他政令で定める金融機関又は国土交通大臣が指定する者(以下この条において「銀行等」という。)との間において、宅地建物取引業者が受領した手付金等の返還債務を負うこととなつた場合において当該銀行等がその債務を連帯して保証することを委託する契約(以下「保証委託契約」という。)を締結し、かつ、当該保証委託契約に基づいて当該銀行等が手付金等の返還債務を連帯して保証することを約する書面を買主に交付すること。」

    41条1項2号:保険事業者との保証保険契約

    第二の方法です。

    「保険事業者(保険業法第三条第一項又は第百八十五条第一項の免許を受けて保険業を行う者をいう。)との間において、宅地建物取引業者が受領した手付金等の返還債務の不履行により買主に生じた損害のうち少なくとも当該返還債務の不履行に係る手付金等の額に相当する部分を当該保険事業者がうめることを約する保証保険契約を締結し、かつ、保険証券又はこれに代わるべき書面を買主に交付すること。」

    契約を結ぶだけでは足りない ― 書面の交付まで

    二つの号に共通する要点があります。どちらも「契約を締結し、かつ、書面を買主に交付すること」までが一つの措置です。

    保証委託契約を結んだだけ、保証保険契約を結んだだけでは、41条1項の「措置を講じた」ことになりません。買主に保証書または保険証券等を交付して初めて完了します。「銀行と保証委託契約を締結したので手付金を受領できる」という趣旨の肢は、書面交付が抜けているため誤りです。

    保全措置が買主のためのものである以上、買主の手元に証拠が渡ることまでが要件になっていると理解すれば、覚えやすくなります。

    保証委託契約の要件(41条2項)

    41条2項は、保証委託契約の内容に条件を課します。銀行等が買主との間に成立させる保証契約が、次の要件に適合するものでなければなりません。

    第1号として、保証債務が「少なくとも宅地建物取引業者が受領した手付金等の返還債務の全部を保証するもの」であること。第2号として、保証すべき返還債務が「少なくとも宅地建物取引業者が受領した手付金等に係る宅地又は建物の引渡しまでに生じたもの」であること。

    一部だけを保証する契約や、引渡し前に保証期間が切れる契約では要件を満たしません。

    保証保険契約の要件(41条3項)

    41条3項も同様に条件を課します。

    第1号として、保険金額が「宅地建物取引業者が受領しようとする手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)に相当する金額」であること。第2号として、保険期間が「少なくとも保証保険契約が成立した時から……引渡しまでの期間」であること。

    ここでも累計額が基準になっている点に注意してください。判定でも保全でも保険金額でも、一貫して既受領分を含めた累計で考えます。

    41条の2第1項:完成物件で加わる第三のルート

    41条の2第1項の柱書は、独特の書き方をしています。

    「……同項第一号若しくは第二号に掲げる措置を講じた後又は次の各号に掲げる措置をいずれも講じた後でなければ、買主から手付金等を受領してはならない。」

    「同項」とは41条1項のことです。つまり工事完了後の物件では、41条1項1号の保証委託か2号の保証保険を使ってもよいし、41条の2第1項が新たに掲げる措置を使ってもよい、という選択になります。

    指定保管機関のルートは二つセットで講じる

    新たに掲げられる措置が二つあります。第1号が、国土交通大臣が指定する者(指定保管機関)との間で、業者に代理して指定保管機関に手付金等を受領させ、指定保管機関がその額に相当する額の金銭を保管することを約する契約(手付金等寄託契約)です。第2号が、買主との間で、買主が業者に対して有することとなる手付金等の返還債権の担保として、寄託金の返還債権について質権を設定する契約です。

    柱書が「次の各号に掲げる措置をいずれも講じた後」と書いている点が決定的です。1号と2号は選択関係ではなく、両方をセットで講じなければなりません。寄託契約だけ、質権設定契約だけでは足りません。

    「完成物件では三つの方法から一つを選べる」という説明は、この構造を落としています。正確には、41条1項1号、41条1項2号、または「41条の2第1項1号と2号の組合せ」の三択です。なお、指定保管機関としての事業は宅地建物取引業保証協会も行いうるもので、保証協会の業務全般は「保証協会の仕組み」で扱っています。

    工事完了前に保管が使えない理由

    41条1項には指定保管機関のルートがありません。工事完了前の物件では使えないということです。

    理由は仕組みの前提にあります。指定保管機関による保管は、業者に代わって金銭を預かり、引渡しと決済を対応させることで買主を守る方式です。引渡しの対象となる現物が存在していることが前提になっています。工事完了前の物件はまだ存在せず、そもそも完成しない可能性があります。金銭を預かるだけでは、物件が完成しないリスクに対応できません。

    だから工事完了前は、返還債務そのものを第三者に保証させる方式(保証委託・保証保険)に限られます。「未完成では保管が使えない」を丸暗記するのではなく、保管が引渡しを前提とする仕組みだから、と押さえてください。

    保全措置を講じない場合の効果

    買主は支払を拒むことができる

    41条4項は次のとおりです。

    「宅地建物取引業者が、第一項に規定する宅地又は建物の売買を行う場合(同項ただし書に該当する場合を除く。)において、同項第一号又は第二号に掲げる措置を講じないときは、買主は、手付金等を支払わないことができる。」

    41条の2第5項も同趣旨で、41条1項1号・2号の措置を講じないとき、41条の2第1項各号の措置を講じないとき、または同条4項の規定による金銭の交付をしないときに、買主が支払を拒めると定めます。

    支払を拒んでも買主の債務不履行になりません。「保全措置がないので支払わなかったところ、業者から履行遅滞を理由に契約を解除された」という設定は誤りです。

    ただし書に該当する場合は拒めない

    41条4項の括弧書きに注意してください。「同項ただし書に該当する場合を除く」とあります。

    そもそも保全措置が不要な場合(登記がされたとき、額が基準以下のとき)には、買主に支払拒絶権は生じません。保全措置が必要な場面で講じられていないときにだけ、拒めるという構造です。

    契約が無効になるわけではない

    41条・41条の2には、契約や特約を無効とする規定が置かれていません。38条2項が「超える部分について、無効とする」と定め、39条3項が「買主に不利なものは、無効とする」と定めるのとは対照的です。

    したがって、保全措置を講じずに手付金等を受領しても、売買契約そのものは無効になりません。「保全措置を講じずに手付金等を受領した場合、当該売買契約は無効となる」という肢は、行政上の規制と私法上の効力を混同させるものです。

    監督処分の対象になる

    契約が無効にならないからといって、違反が放置されるわけではありません。41条・41条の2は宅建業者に対する行為規制であり、違反すれば指示処分、業務停止処分、情状が特に重い場合の免許取消処分の対象になります。処分の相互関係は「監督処分の違い」、罰則の整理は「宅建業法の罰則一覧」で扱っています。

    39条の手付額の制限とは別の規律である

    保全措置と最も混同されるのが39条です。二つは同じ「手付」という語を使いますが、規律の内容がまったく違います。

    39条1項 ― 代金の10分の2

    「宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二を超える額の手付を受領することができない。」

    額そのものに上限を課す規定です。保全措置を講じたとしても、この上限を超える手付を受領することはできません。

    条文の効果は「受領することができない」という行為の禁止です。38条2項のような無効規定は39条1項に置かれていません。38条は超過部分を無効とする明文があり、39条1項にはないという書き分けは、条文の構造を問う出題で使われます。

    39条2項 ― 解約手付とみなされる

    「宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであつても、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。」

    三つの要点があります。名目が違約手付や証約手付であっても解約手付として扱われること。売主からの解除は「現実に提供」が必要で、口頭で告げるだけでは足りないこと。そして解除できなくなるのは「相手方が履行に着手した後」であり、自分が着手していても相手方が着手していなければ解除できることです。

    39条3項は「前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする」と定めます。手付の額と手付解除の詳細は「手付金の制限」で扱っています。

    四つの軸で切り分ける

    二つを混ぜないために、軸ごとに整理します。

    根拠条文。手付額の制限は39条、保全措置は41条・41条の2です。

    対象。39条が対象とするのは手付だけです。中間金や内金は39条の計算に入りません。これに対し41条・41条の2が対象とするのは手付金等であり、代金に充当される中間金や内金も含めて累計します。

    基準。39条は代金の十分の二という単一の基準です。41条・41条の2は、工事完了前か後かで割合が分かれ、さらに政令額との「かつ」で判定します。

    効果。39条1項は上限を超える手付の受領を禁じます。41条・41条の2は、措置を講じるまで受領を禁じるのであって、額そのものは制限しません。保全措置を講じさえすれば、代金の十分の二までなら高額の手付でも受領できるということです。

    併存する例 ― 代金5,000万円の完成物件で手付800万円

    二つが同時に働く様子を数字で確認します。工事完了後の物件、代金5,000万円、手付金800万円を受領しようとする場合です。

    39条1項の上限は5,000万円の十分の二で1,000万円です。800万円は上限内なので、額の制限には違反しません。

    41条の2の割合基準は5,000万円の十分の一で500万円です。800万円は500万円を超えます。政令額1,000万円は下回りますが「かつ」なので、保全措置は必要です。保全すべきは800万円全額です。

    結論として、この取引では手付の額としては適法だが、受領前に保全措置を講じなければならない、ということになります。片方だけを見て「適法」「違法」と結論を出さないのが、この二つを扱うときの基本姿勢です。

    試験での出題ポイント

    割合を入れ替える肢

    「工事完了前の物件では、代金の十分の一を超える手付金等を受領する場合に保全措置が必要」は誤りです。工事完了前は百分の五です。逆に「工事完了後の物件では百分の五」も誤りです。

    趣旨から復元してください。現物がない工事完了前のほうがリスクが高いので、基準が低い(早く保全が必要になる)。この理屈を持っていれば、数字が逆になりません。8種制限の数字全体は「宅建業法の数字まとめ」で横断的に確認できます。

    「かつ」を「または」にすり替える肢

    「代金の百分の五以下または1,000万円以下であれば保全措置は不要」は誤りです。条文は「かつ」であり、両方を満たす必要があります。

    具体的には、事例5のような高額物件が狙われます。「代金5億円の工事完了前の物件で1,500万円を受領する場合、代金の百分の五以下だから保全措置は不要」は誤りです。

    「以下」を「未満」にすり替える肢

    「代金の百分の五未満であれば不要」は不正確です。条文は「以下」なので、ちょうど百分の五であれば不要です。境界値の扱いを変えた肢に注意してください。

    合算を落とす肢

    「手付金200万円を受領した後、中間金300万円を受領する場合、中間金300万円について保全措置の要否を判断する」は誤りです。既に受領した200万円を加えた500万円で判定します。

    超過部分だけ保全すればよいとする肢

    「基準額を超える部分についてのみ保全措置を講じればよい」は誤りです。受領しようとする額の全部(既受領分を含む)について講じます。38条2項の「超える部分について、無効とする」という書き方を41条に持ち込ませる出題です。

    保全方法を取り違えさせる肢

    「工事完了前の物件でも指定保管機関による保管を利用できる」は誤りです。逆に「工事完了後の物件では指定保管機関による保管しか利用できない」も誤りで、41条1項1号・2号の方法も使えます。

    また、「指定保管機関との手付金等寄託契約を締結すれば足りる」も誤りです。41条の2第1項柱書は「いずれも」と書いており、質権設定契約とセットで講じる必要があります。

    書面交付を落とす肢

    「銀行等と保証委託契約を締結した後であれば、手付金等を受領できる」は誤りです。1号は保証を約する書面を買主に交付することまでを措置の内容としています。

    効果を取り違えさせる肢

    「保全措置を講じずに手付金等を受領した場合、売買契約は無効となる」は誤りです。無効規定は置かれておらず、買主に支払拒絶権が与えられ、業者は監督処分の対象になります。

    適用の前提をずらす肢

    「宅建業者Aが売主Bの代理として、宅建業者でないCに工事完了前の建物を売却する場合、Aは保全措置を講じなければならない」は誤りです。Aは自ら売主ではありません。

    「宅建業者Aが自ら売主となり、宅建業者Bに売却する場合、保全措置が必要」も誤りです。78条2項により業者間取引には適用されません。

    39条と混ぜる肢

    「保全措置を講じれば、代金の十分の二を超える手付を受領できる」は誤りです。39条1項の上限は保全措置とは無関係に働きます。

    「代金の十分の二以内の手付であれば、保全措置は不要」も誤りです。二つは別の基準です。宅建業法全体の出題傾向は「宅建業法の頻出論点」で扱っています。

    覚え方・整理の仕方

    判定は「前提・条文・累計・かつ」の四語で回す

    計算に入る前に、毎回この四語を順に確認します。

    前提(自ら売主か、買主は業者でないか)、条文(41条か41条の2か)、累計(既受領分を加えたか)、かつ(割合と政令額の両方を見たか)。

    数字を先に処理すると前提の確認が飛びます。四語の順番を固定することが、この論点で最も効く対策です。

    割合は「現物があるか」から復元する

    百分の五と十分の一のどちらが工事完了前かは、趣旨から出せます。現物がなければ買主のリスクが大きいので、早く保全させる。早く保全させるということは、基準が低いということです。したがって工事完了前が百分の五。

    数字そのものを暗記すると逆になりますが、リスクの大小から導けば間違えません。

    保全方法は「保証・保険・保管」の三語で持つ

    三つの方法を、保証(保証委託契約)・保険(保証保険契約)・保管(手付金等寄託契約+質権設定契約)と頭文字で束ねます。そのうえで、保管だけが工事完了後限定、と一つだけ覚えます。

    さらに、保管ルートだけが二つセットである点も、「保管は寄託と質権の二段構え」と結びつけておきます。保管は他の二つと違う扱いが二つある(完成物件限定、二つセット)と覚えると、両方を同時に思い出せます。

    41条は「全部」、38条は「超えた部分」

    効果の違いを一語で持ちます。38条2項は「超える部分」、41条・41条の2は「全部」。39条1項はどちらでもなく「受領できない」という行為の禁止で、無効規定を持ちません。

    三つの条文が三つとも違う書き方をしている、と押さえると取り違えが減ります。8項目それぞれの効果の違いは「8種制限の横断整理」で扱っています。

    「1,000万円は政令」と紐づけておく

    条文が書いているのは割合まで、金額は施行令3条の5。この分担を一度確認しておくと、「41条は1,000万円と定めている」という趣旨の肢に反応できます。

    同じ発想は他の条文にも使えます。割合や日数は法律本体、具体的な金額や面積は政令や省令に置かれていることが多い、という感覚を持っておくと、条文の所在を問う出題に強くなります。

    取引の時間軸に置いて覚える

    8種制限は買主から見た契約の進行に沿って並べると混線しません。契約締結の可否が33条の2、申込み直後がクーリング・オフ、契約条項の内容が38条・39条・40条、契約締結後から引渡し前の金銭の受領が41条・41条の2、引渡し後まで続く履行が42条・43条です。

    保全措置がこの並びのどこに位置するかを持っておけば、「引渡し後に支払われる金銭は対象外」という結論も自然に出てきます。契約締結の可否は「自己の所有に属しない物件の売買制限」、申込み直後は「クーリング・オフ」、契約不適合責任の特約は「契約不適合責任の特約制限」、長期の履行は「割賦販売の解除等の制限」と「所有権留保等の禁止」で扱っています。売買全体の流れは「売買契約の流れ」を参照してください。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 宅地建物取引業者Aが自ら売主となり、宅地建物取引業者でないBとの間で、工事完了前の建物について代金5,000万円で売買契約を締結した。Aが手付金250万円を受領しようとする場合、代金の額の百分の五は250万円であるから、保全措置を講じる必要はない。


    答えを見る
    ○。工事完了前の売買なので41条が適用され、割合基準は代金の百分の五です。5,000万円の百分の五は250万円であり、受領しようとする額はちょうど250万円です。ただし書は「百分の五以下であり」と書いているため、境界値である250万円は基準を満たします。政令で定める額(宅地建物取引業法施行令3条の5により1,000万円)以下という要件も満たすので、「かつ」の両方を充足し、保全措置は不要です。1円でも増えれば割合基準を超え、その場合は250万1円の全額について保全措置が必要になります。

    Q2. 宅地建物取引業者Aが自ら売主となり、宅地建物取引業者でないBとの間で、工事完了後の建物について代金4億円で売買契約を締結した。Aが手付金2,000万円を受領しようとする場合、代金の額の十分の一である4,000万円を下回るため、保全措置を講じる必要はない。


    答えを見る
    ×。割合の計算は正しく、工事完了後なので41条の2が適用され、4億円の十分の一は4,000万円です。2,000万円はこれを下回ります。しかし41条の2第1項ただし書は「代金の額の十分の一以下であり、かつ、……政令で定める額以下であるとき」と定めており、両方を満たす必要があります。政令で定める額は施行令3条の5により1,000万円であり、2,000万円はこれを超えます。したがって「かつ」を充足せず、保全措置が必要です。保全の対象は超過分ではなく2,000万円の全額です。高額物件では割合基準が大きくなるため、先に政令額のほうで引っかかる点を押さえてください。

    Q3. 宅地建物取引業者Aが自ら売主となり、宅地建物取引業者でないBとの間で、工事完了前の宅地について代金3,000万円で売買契約を締結し、手付金100万円を受領した。その後Aが中間金200万円を受領しようとする場合、中間金の額は代金の額の百分の五である150万円以下であるから、保全措置を講じる必要はない。


    答えを見る
    ×。41条1項ただし書は「当該宅地建物取引業者が受領しようとする手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)」と定めており、判定は累計で行います。既に受領した手付金100万円と中間金200万円を合わせた300万円が判定の対象です。3,000万円の百分の五は150万円なので、300万円はこれを超え、中間金を受領する前に保全措置が必要になります。また、中間金は「手付金その他の名義をもつて授受される金銭で代金に充当されるもの」に当たり、名称にかかわらず手付金等に含まれます。保全の対象も、既受領の100万円を含む300万円全額です。

    Q4. 宅地建物取引業者Aが自ら売主となる工事完了後の建物の売買において、Aが指定保管機関との間で手付金等寄託契約を締結すれば、手付金等の保全措置を講じたことになる。


    答えを見る
    ×。41条の2第1項の柱書は「前条第一項第一号若しくは第二号に掲げる措置を講じた後又は次の各号に掲げる措置をいずれも講じた後でなければ」と定めています。指定保管機関のルートを選ぶ場合、第1号の手付金等寄託契約と、第2号の質権設定契約(買主が業者に対して有することとなる手付金等の返還債権の担保として、寄託金の返還債権に質権を設定する契約)の両方を講じなければなりません。寄託契約だけでは足りません。なお、工事完了後の物件では41条1項1号の保証委託契約または2号の保証保険契約を選ぶこともでき、選択肢は三つではなく「二つの単独ルート+一つの組合せルート」という構造です。

    Q5. 宅地建物取引業者Aが自ら売主となり、宅地建物取引業者でないBとの間で締結した売買契約において、Aが保全措置を講じないまま手付金等を受領した場合、当該売買契約は無効となる。


    答えを見る
    ×。41条・41条の2には、契約や特約を無効とする規定が置かれていません。38条2項が「代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする」、39条3項が「買主に不利なものは、無効とする」と明文を置いているのとは対照的です。41条・41条の2は「措置を講じた後でなければ……受領してはならない」という行為規制であり、違反しても売買契約自体の効力には影響しません。買主に与えられるのは支払拒絶権で、41条4項は「買主は、手付金等を支払わないことができる」と定めます(同項ただし書に該当する場合、すなわちそもそも保全措置が不要な場合を除きます)。41条の2第5項も同趣旨です。業者側は監督処分の対象になります。

    まとめ

    • 適用の前提は三つです。宅建業者が自ら売主であること、買主が宅建業者でないこと(78条2項)、そして売買であること。媒介や代理では適用されず、業者間取引にも適用されません。計算より先に前提を確認してください。
    • 条文は「未完成・完成」ではなく、41条が「工事の完了前」の売買を対象とし、41条の2が「前条第一項に規定する売買を除く」残余を拾う構造です。判定の基準時は契約締結時です。41条に当たらなければすべて41条の2、と押さえます。
    • 手付金等の定義は41条1項の括弧書きにあり、①名義を問わず、②代金の全部・一部として授受されるか代金に充当されるもので、③契約締結の日以後、引渡し前に支払われるもの、の三要素です。引渡し後の残代金は含まれず、代金に充当されない金銭も含まれません。
    • 保全措置が不要になるのは三つの場合です。買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の登記をしたとき、そして額が基準以下のとき。三つ目は「代金の額の百分の五(41条の2では十分の一)以下であり、かつ、政令で定める額以下」で、両方を満たす必要があります。「以下」なので境界値は不要側です。
    • 1,000万円は条文の数字ではありません。41条1項ただし書・41条の2第1項ただし書は「政令で定める額」までしか書いておらず、宅地建物取引業法施行令3条の5が「千万円とする」と定めています。
    • 判定も保全も累計で行います。ただし書の括弧書きが「既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額」と定めているためです。そして基準を超えたときに保全するのは受領しようとする額の全部であり、超過部分ではありません。38条2項の「超える部分について、無効とする」という書き方を持ち込まないでください。
    • 保全の方法は保証・保険・保管の三系統です。41条1項1号の保証委託契約と2号の保証保険契約は、いずれも契約締結に加えて書面(保証書・保険証券等)を買主に交付することまでが一つの措置です。41条の2第1項の指定保管機関ルートは、寄託契約と質権設定契約を「いずれも」講じる必要があり、かつ工事完了後の物件でしか使えません。引渡しを前提とする仕組みだからです。
    • 違反の効果は、買主の支払拒絶権(41条4項・41条の2第5項)と監督処分です。売買契約は無効になりません。また、そもそも保全措置が不要な場合には支払拒絶権も生じません(41条4項の「同項ただし書に該当する場合を除く」)。
    • 39条とは別の規律です。39条1項は手付の額を代金の十分の二までに制限する規定で、対象は手付だけ、効果は「受領することができない」という行為の禁止です(38条2項のような無効規定はありません)。41条・41条の2は手付金等の受領前に措置を求める規定で、額そのものは制限しません。同じ取引に併存して適用されます。

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