宅建試験AIブートラボ 宅建試験AIブートラボ

借地借家法の数字まとめ|期間・通知を根拠から整理

権利関係 読了 約27分

借地借家法の数字を、なぜその数字なのかという制度目的から整理します。存続期間30年・20年・10年、通知の1年前から6か月前、定期借地権の3類型、200平方メートルまで条文根拠つきで解説します。

目次

    本記事は、借地借家法に出てくる数字を、なぜその数字が置かれているのかという理由とセットで整理するものです。制度そのものの全体像は借地借家法の要点整理に、定期借地権の3類型は普通借地権と定期借地権に、定期建物賃貸借は普通借家契約と定期建物賃貸借の違いにまとめてあります。この記事は数字そのものを扱います。

    借地借家法の数字が覚えにくいのは、似た数字が違う場面で使い回されているからです。6か月は三つの異なる場面に出てきますし、1年は借家の最短期間としても、通知期間の始点としても、定期借家の終了通知の要否を分ける基準としても登場します。数字だけを並べて覚えると、この使い回しのところで必ず崩れます。

    崩れないようにするには、その数字が誰を何から守るために置かれているのかを一緒に持っておくことです。借地借家法の数字は、そのほとんどが借主保護という一本の目的から説明できます。以下、場面ごとに、数字と理由を対にして見ていきます。

    数字を当てはめる前に押さえること

    借地借家法は借主を守るために期間を下から支える

    借地借家法の存続期間はすべて「最低これだけは確保する」という下限の規制です。上限を定めているものはほとんどありません。これは、契約自由に任せると立場の強い地主や大家が短い期間を押しつけ、借主が土地や建物を安心して使えなくなるからです。

    この構造を知っていると、短い期間を定めたときの結論が自動的に出ます。法定の期間より短い定めは、無効になって法定の期間まで引き上げられます。逆に、法定の期間より長い定めは、借主にとって有利なのでそのまま有効です。「30年より短い定めは30年になるが、50年と定めれば50年になる」という結論は、暗記するものではなく、下限規制だから当然にそうなるという話です。

    借主に不利な特約は無効になる

    もう一つの前提が、片面的強行規定という仕組みです。借地借家法9条は、借地権の存続期間等に関する規定に反する特約で借地権者に不利なものを無効とし、同法16条は建物買取請求権等に関する規定について同様に定めています。借家についても同法30条と37条が同じ構造をとっています。

    「借主に不利なものは無効」であって「規定と異なるものは無効」ではない点が要点です。借主に有利な特約は有効です。この非対称も、借主保護という目的から出ています。数字を覚えるときは、その数字を動かす特約が借主に有利か不利かを考えると、有効無効の判断まで一緒に処理できます。

    なお、造作買取請求権を定める33条は37条の列挙に含まれていません。したがって造作買取請求権を排除する特約は有効です。ここは後の節で改めて扱います。

    そもそも借地借家法が適用されない場面がある

    数字を当てはめる前に確認すべきなのが、借地借家法が適用される場面かどうかです。同法2条1号は、借地権を「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義しています。建物を建てる目的でなければ借地権ではありません。

    したがって、青空駐車場や資材置場、看板の設置のために土地を借りる契約には借地借家法の適用がなく、民法の賃貸借の規律によります。この場合、存続期間の下限はなく、上限は民法604条により50年です。30年に引き上げられることもありません。「土地の賃貸借だから存続期間は30年」と即断すると誤ります。目的が建物所有かどうかを先に確認してください。

    一時使用のために設定されたことが明らかな場合も適用が外れます。借地については同法25条が、存続期間や更新、建物買取請求、定期借地権に関する規定を適用しないとしています。借家についても同法40条が、一時使用のために建物を賃貸したことが明らかな場合には借家に関する章の規定を適用しないと定めています。工事期間中の現場事務所のように、はじめから短期の使用が明らかな場合を想定した規定です。ここでも、数字を当てはめる前に土俵の確認が要ります。

    借地権の存続期間は30年、20年、10年

    当初は30年、最初の更新後は20年、その後は10年

    借地借家法3条は、借地権の存続期間を30年とし、契約でこれより長い期間を定めたときはその期間とすると定めています。同法4条は、契約を更新する場合の期間を更新の日から10年とし、借地権の設定後の最初の更新にあっては20年とすると定めています。いずれも、当事者がこれより長い期間を定めたときはその期間によります。

    したがって数字は30年、20年、10年の順に並びます。25年と定めれば30年に、最初の更新で15年と定めれば20年になります。40年と定めれば40年です。

    段階的に短くなっていくのは、時間の経過とともに保護の必要が薄れるという考え方によります。最初の30年で借主は建物を建て、その投下資本を回収します。更新が重なるほど当初の投資は回収されているので、次に確保すべき期間は短くて足ります。数字が減っていくこと自体に意味があると理解しておくと、順序を逆に覚えることがありません。

    上限はなく、建物の構造による区別もない

    存続期間に上限はありません。借地借家法3条ただし書きは「契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする」とするだけで、上限を設けていないからです。当初の期間を100年と定めることもできると解されています。民法604条が賃貸借の存続期間を50年までとしているのとは扱いが違い、長い期間を認めることがそのまま借主の保護になるためです。

    もう一つ、現行法では建物の構造による区別がない点も押さえておきましょう。借地借家法の前身である旧借地法では、鉄筋コンクリート造などの堅固な建物と、木造などの非堅固な建物とで存続期間が分けられていました。借地借家法はこれを一本化し、構造を問わず30年としています。したがって「堅固建物の所有を目的とする借地権の存続期間は60年である」といった選択肢は、現行法のもとでは誤りです。

    ただし、借地借家法の施行前に設定された借地権については、更新などの場面で旧法の規律がなお及ぶ部分があります。実務では古い借地が現に残っているため意味を持ちますが、試験で問われるのは現行法の30年です。

    更新には二つの経路がある

    更新の期間の数字を使うには、そもそも更新が起きなければなりません。借地借家法5条1項は、存続期間が満了する場合において借地権者が更新を請求したときは、建物がある場合に限り、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなすと定めています。同条2項は、期間満了後に借地権者が土地の使用を継続するときも同様としています。

    いずれも、地主が遅滞なく異議を述べればこのみなしは働きません。ただし同法6条により、その異議には正当の事由が必要です。借家と違って「何か月前までに通知」という数字がなく、「遅滞なく」という時間の定めになっている点が特徴です。借家の更新拒絶に1年前から6か月前までという期間があるのと混同しやすいので、借地の更新拒絶は数字ではなく「遅滞なく」だと覚えてください。

    もう一つの条件が「建物がある場合に限り」です。建物が存在しなければ更新の余地はありません。借地権が建物の所有を目的とする権利である以上、守るべき建物がなければ保護する理由もない、という発想です。借地権の対抗要件も建物の登記に結びついており、この点は借地権の対抗要件にまとめています。

    建物の滅失と再築にまつわる数字

    更新前の再築は20年、承諾のみなしは2か月

    存続期間の途中で建物が滅失した場合、借地権者は建物を建て直したいと考えます。ところが残存期間より長く存続する建物を建てても、期間が来れば土地を返さなければなりません。そこで借地借家法7条1項は、借地権者が残存期間を超えて存続する建物を築造した場合において、それについて借地権設定者の承諾があるときは、借地権は承諾があった日または建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続すると定めています。残存期間がこれより長いとき、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間によります。

    ここでの20年は、新しく建てた建物を使うのに必要な期間の目安です。「いずれか早い日から」という起算点も出題されます。遅い日ではありません。

    承諾については、同条2項がみなし規定を置いています。借地権者が地主に対して残築の旨を通知し、地主がその通知を受けた後2か月以内に異議を述べなかったときは、承諾があったものとみなされます。ただしこのみなしは契約の更新後には適用されません。更新後は、地主の側に土地を返してもらう期待が生じているためです。2か月という数字と、「更新前に限る」という限定を必ずセットで押さえてください。

    更新後の再築は3か月で消滅する

    更新後に建物が滅失した場合の規律は、更新前とは逆向きになります。借地借家法8条1項は、更新後に建物の滅失があったときは、借地権者のほうから地上権の放棄または土地の賃貸借の解約の申入れができるとしています。同条2項は、更新後に借地権者が地主の承諾を得ないで残存期間を超えて存続する建物を築造したときは、地主から地上権の消滅の請求または解約の申入れができるとしています。

    そして同条3項により、いずれの場合も借地権はその申入れ等があった日から3か月を経過することによって消滅します。ここでの数字は3か月です。前項の2か月と近接しているため入れ替えられやすく、「承諾のみなしは2か月、更新後の消滅は3か月」と並べて覚えておく必要があります。

    なお、更新後に承諾を得ずに再築した場合でも、やむを得ない事情があるときは、借地権者は裁判所に承諾に代わる許可を申し立てることができます(同法18条)。

    建物が滅失しても対抗力を2年維持できる

    借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有していれば第三者に対抗できます(借地借家法10条1項)。ところが建物が焼失すれば建物の登記も意味を失い、対抗力が消えてしまいます。買主が現れて土地を取得すれば、借地権者は追い出されかねません。

    そこで同条2項は、建物の滅失があっても、その建物を特定するために必要な事項、滅失があった日、および建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、対抗力がなお存続すると定めています。ただし、滅失の日から2年を経過した後は、その前に建物を新築し、かつ登記した場合に限られます。

    2年という数字は、建て直すための猶予期間です。掲示さえしていれば永久に対抗できるわけではなく、2年以内に新築と登記を済ませなければならない。ここを「掲示から2年」と読み違える誤りが出ます。起算点は滅失の日です。

    定期借地権の3類型は期間と方式の両方で分かれる

    一般定期借地権は50年以上、書面が必要

    借地借家法22条は、存続期間を50年以上として借地権を設定する場合に、契約の更新がないこと、建物の築造による存続期間の延長がないこと、建物買取請求をしないことを定める特約を認めています。この特約は、公正証書による等書面によってしなければなりません。書面の内容を記録した電磁的記録によってされたときも、書面によってされたものとみなされます。

    50年という数字は、更新も買取請求もない代わりに、借主が投下した資本を回収するのに十分な期間を確保するという趣旨です。三つの効果をまとめて外す強力な特約なので、それに見合う長さが要求されていると理解できます。

    方式について注意したいのは、「公正証書による等書面」という言い回しです。公正証書は例示であって、必須ではありません。書面であればよく、公正証書でなくても構いません。次に見る事業用定期借地権との最大の違いがここにあります。

    事業用定期借地権は10年以上50年未満、公正証書が必須

    借地借家法23条は、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする借地権について、二つの区分を設けています。同条1項は存続期間を30年以上50年未満とする場合、同条2項は10年以上30年未満とする場合です。全体として10年以上50年未満の範囲に収まります。

    二つの区分の違いは、期間の長さだけではありません。1項は、更新がないこと等を「定めることができる」という書き方をしています。特約を置いて初めて効果が生じます。これに対し2項は、3条から8条まで、13条および18条の規定を「適用しない」と定めています。特約がなくても当然に更新も買取請求もありません。定めることができるのか、当然に適用がないのか。この違いが出題されます。

    方式については、同条3項が、これらの契約は公正証書によってしなければならないと定めています。一般定期借地権と違い、公正証書でなければ成立しません。単なる書面では足りず、電磁的記録も認められません。期間が短く借主保護を大きく外す類型なので、公証人が関与する厳格な方式が要求されています。

    居住用の建物を目的とすることはできません。「専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く)」と条文が明示しています。社宅や賃貸マンションのように人が住む建物のための借地権は、この類型では設定できません。

    建物譲渡特約付借地権は30年以上、方式の定めがない

    借地借家法24条1項は、借地権を設定する場合において、その設定後30年以上を経過した日に建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができるとしています。建物を地主に売ることで借地権を消滅させる仕組みです。

    30年という数字は、普通借地権の当初の存続期間と同じです。少なくとも普通借地権と同じだけの期間は確保されるようにしたうえで、その後に建物の譲渡によって関係を終わらせる、という設計です。

    三類型のなかで、この類型だけが方式の定めを置いていません。書面も公正証書も要求されず、理屈のうえでは口頭でも成立します。実務では書面を作りますが、試験では「建物譲渡特約付借地権は公正証書によらなければならない」といった形で問われます。一般定期借地権が書面、事業用が公正証書、建物譲渡特約付が方式の定めなし。この三段を期間の数字とセットで覚えてください。

    借家の期間は1年未満だと期間の定めがなくなる

    1年未満の定めの効果

    借地借家法29条1項は、期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなすと定めています。ここが借地と決定的に違うところです。借地では30年未満の定めが30年に引き上げられるのに対し、借家では1年未満の定めは1年に引き上げられるのではなく、期間の定めそのものがなくなります。

    なぜ引き上げではないのか。期間の定めのない建物賃貸借は、大家からの解約申入れに正当事由が必要で、しかも解約から6か月経たなければ終了しません。つまり期間の定めがない状態のほうが借主にとって手厚いのです。短い期間を押しつけようとした結果、かえって借主が守られる状態になる、という仕組みになっています。

    同条2項は、賃貸借の存続期間の上限を50年とする民法604条を建物の賃貸借には適用しないとしています。したがって借家に期間の上限はありません。100年の建物賃貸借も有効です。民法上の賃貸借の規律との違いは民法の賃貸借にまとめています。

    定期建物賃貸借には29条1項の適用がない

    重要な例外があります。定期建物賃貸借については、借地借家法38条1項が29条1項の適用を排除しているため、1年未満の期間を定めても有効です。6か月の定期借家契約は6か月で終わります。

    普通借家で10か月と定めれば期間の定めがないものとみなされ、定期借家で10か月と定めればそのまま10か月。同じ数字でも類型によって結論が正反対になります。ここは頻出の対比です。

    取壊し予定の建物には別の類型がある

    期間の数字とは別に、終期の定め方で押さえておきたい類型があります。借地借家法39条は、法令または契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができるとしています。取壊し予定の建物の賃貸借です。

    ここでは何年何か月という数字ではなく、取壊しという事実の発生が終期になります。定期建物賃貸借と違って期間の長さで区切るのではない点が特徴です。この定めは、建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければなりません。再開発が決まっている建物を暫定的に貸す場面などで使われます。

    数字が出てこない類型があることを知っておくと、問題文に期間が示されていない場合に慌てずに済みます。定期借家、取壊し予定、一時使用は、いずれも普通借家とは別の枠組みです。

    更新拒絶と解約申入れの数字

    期間の定めがあるとき、1年前から6か月前まで

    借地借家法26条1項は、期間の定めがある建物の賃貸借について、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなすと定めています。ただし、その期間は定めがないものとされます。

    数字は二つあります。通知ができる期間の始点が1年前、終点が6か月前です。この窓の外で通知しても、更新拒絶の効果は生じません。ただし1年前より早い通知については、窓に入った時点で改めて通知すれば足ります。

    見落とされやすいのが、ただし書きの効果です。法定更新された場合、契約は同じ条件で続きますが、期間だけは定めがないものになります。もとが2年契約でも、法定更新されれば期間の定めのない賃貸借です。以後は次に見る解約申入れのルールに乗ることになります。

    そして同法28条により、この更新拒絶の通知には正当の事由が必要です。期間内に通知しさえすれば終わるわけではありません。数字を満たすことは必要条件であって十分条件ではない、という点を押さえてください。

    期間の定めがないとき、大家からは6か月

    借地借家法27条1項は、建物の賃貸人が解約の申入れをした場合、建物の賃貸借は解約の申入れの日から6か月を経過することによって終了すると定めています。この6か月も、正当事由が備わっていることが前提です。

    ここで必ず確認したいのが、条文の主語が「建物の賃貸人」だという点です。借主からの解約申入れについて借地借家法は何も定めていません。したがって民法に戻り、同法617条1項2号により、建物の賃貸借は解約の申入れの日から3か月を経過することによって終了します。

    大家からは6か月、借主からは3か月。この非対称も借主保護から説明できます。住む場所を失う側には長い猶予が要り、出ていく側には要らないからです。実務では契約で1か月前の予告と定めることが多く、これは借主に有利な特約なので有効です。

    使用を継続したときの「遅滞なく」

    借地借家法26条2項は、更新拒絶の通知をした場合であっても、期間満了後に借主が使用を継続し、大家が遅滞なく異議を述べなかったときは、更新したものとみなすと定めています。同法27条2項は、解約申入れによって終了した場合にも同様の規律を置いています。

    ここは数字ではなく「遅滞なく」です。借地の更新拒絶の異議と同じ言葉が使われています。数字で問われる箇所と、数字ではなく遅滞なくで処理される箇所を区別しておいてください。

    定期建物賃貸借の数字

    期間1年以上なら終了通知が要る

    借地借家法38条6項は、定期建物賃貸借の期間が1年以上である場合には、賃貸人は期間の満了の1年前から6か月前までの間に賃借人に対し、期間の満了により賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を賃借人に対抗することができないと定めています。ただし、通知期間の経過後に通知をした場合であっても、その通知の日から6か月を経過した後は終了を対抗できます。

    ここで1年が二つの意味で出てきます。通知が必要になるかどうかを分ける基準としての1年(期間が1年以上か未満か)と、通知の窓の始点としての1年前です。同じ1年でも役割が違います。期間が1年未満の定期借家では、そもそも終了通知が不要です。

    普通借家の更新拒絶と数字が同じ「1年前から6か月前まで」である点も、混同の原因になります。ただし効果はまったく違います。普通借家で通知を怠れば法定更新されて契約が続きますが、定期借家で通知を怠っても契約が更新されるわけではありません。終了を借主に対抗できなくなるだけで、遅れて通知すればその日から6か月経過後に対抗できるようになります。契約が続くのか、対抗できないだけなのか。この違いが問われます。

    居住用200平方メートル未満なら中途解約できる

    借地借家法38条7項は、居住の用に供する建物の賃貸借のうち床面積が200平方メートル未満のものについて、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により賃借人が建物を生活の本拠として使用することが困難となったときは、賃借人から解約の申入れができるとしています。この場合、賃貸借は解約の申入れの日から1か月を経過することによって終了します。

    数字は200平方メートルと1か月です。要件が三重になっている点に注意してください。居住用であること、床面積が200平方メートル未満であること、そしてやむを得ない事情があること。事業用の建物にはこの規定がなく、200平方メートル以上の住宅にもありません。広い住宅を借りられる人は、代替手段を確保できる立場にあるという想定です。

    なお、この中途解約権を排除する特約は、賃借人に不利なものとして無効になります(同条8項)。逆に、200平方メートル以上の建物について中途解約を認める特約は、賃借人に有利なので有効です。

    契約の方式と事前説明

    定期建物賃貸借が成立するには、書面によって契約し、かつ、あらかじめ賃借人に対して更新がなく期間の満了により終了する旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません(借地借家法38条1項・3項)。いずれも電磁的記録や電磁的方法によることが認められています(同条2項・4項)。

    説明を怠った場合、契約の更新がないこととする定めが無効になります(同条5項)。契約全体が無効になるのではなく、更新がない旨の定めだけが無効となり、普通借家として存続する点が要点です。この説明義務は宅建業法35条の重要事項説明とは別の義務で、両者の関係は賃貸の重要事項説明で扱っています。制度の全体像は普通借家契約と定期建物賃貸借の違いを参照してください。

    買取請求権と借地非訟の数字

    建物買取請求権は排除できず、造作買取請求権は排除できる

    借地借家法13条1項は、借地権の存続期間が満了した場合において契約の更新がないときに、借地権者が地主に対し建物その他を時価で買い取るべきことを請求できると定めています。同法14条は、借地上の建物を取得した第三者について同様の請求権を認めています。価格はいずれも時価で、建てたときの価格ではありません。

    同法33条1項は、賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作について、賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終了するときに、賃借人が時価での買取りを請求できると定めています。これも時価です。

    ここで決定的な違いがあります。建物買取請求権は同法16条により片面的強行規定とされ、これを排除する特約は借地権者に不利なものとして無効です。これに対して造作買取請求権を定める33条は、強行規定を列挙する同法37条に含まれていません。したがって造作買取請求権を排除する特約は有効です。実務の賃貸借契約書には、この排除特約が入っていることが珍しくありません。

    建物は借地権の目的そのものであり、その価値を回収できなければ借地の意味がなくなります。造作は建物の付属物にすぎず、排除を認めても借主の基盤は失われません。守る対象の重さが違うから、強行規定にするかどうかも変わる。この理屈で覚えると混同しません。詳しくは造作買取請求権と有益費償還請求権にまとめています。

    借地非訟で出てくる2か月

    借地借家法は、当事者の話がまとまらない場合に裁判所が介入する仕組みを用意しています。借地条件の変更(17条1項)、増改築の許可(17条2項)、更新後の建物再築の許可(18条)、そして賃借権の譲渡または転貸の許可(19条1項)です。

    このうち数字が出てくるのが19条です。借地権者が借地上の建物を第三者に譲渡しようとし、地主が賃借権の譲渡を承諾しない場合、借地権者は裁判所に承諾に代わる許可を申し立てられます。これに対して地主は、自ら建物と賃借権を譲り受ける旨の申立てをすることができます。いわゆる介入権です。同条3項は、この申立てを1項の申立てがあった後2か月以内にしなければならないと定めています。

    起算点に注意してください。許可の裁判があった後ではなく、借地権者の申立てがあった後です。同様に、競売等により借地上の建物を取得した第三者が申し立てる場合(20条1項)についても、その申立ては建物の代金を支払った後2か月以内に限られます(同条3項)。借地非訟で出てくる数字は2か月だと覚えておけば足ります。

    混同しやすい数字の組み合わせ

    6か月が出てくる三つの場面

    6か月は三か所に登場し、それぞれ意味が違います。第一に、普通借家の更新拒絶の通知期間の終点としての6か月前(26条1項)。第二に、大家からの解約申入れによる終了までの6か月(27条1項)。第三に、定期借家の終了通知が遅れた場合に、通知の日から終了を対抗できるようになるまでの6か月(38条6項ただし書き)。

    一つ目は「いつまでに通知するか」、二つ目と三つ目は「通知や申入れから何か月で効果が生じるか」です。時間の向きが逆であることに注意してください。前者は期限、後者は猶予です。

    1年が持つ三つの意味

    1年も三か所に出ます。普通借家の最短期間としての1年(29条1項)、更新拒絶の通知期間の始点としての1年前(26条1項)、そして定期借家で終了通知が必要になるかどうかを分ける1年(38条6項)です。

    さらに、民法617条1項1号により、期間の定めのない土地の賃貸借は解約申入れから1年で終了します。建物の3か月と対になる数字です。同じ1年でも、最短期間なのか、通知の始点なのか、適用の有無を分ける基準なのか、解約後の猶予なのかを区別してください。

    2か月と3か月の使い分け

    2か月は、再築についての承諾のみなし(7条2項)と、借地非訟における介入権等の申立期間(19条3項、20条3項)に出てきます。3か月は、更新後の再築等による借地権の消滅(8条3項)と、民法617条1項2号による借主からの建物賃貸借の解約申入れに出てきます。

    いずれも短い期間で、隣り合っているため入れ替えられやすい組み合わせです。「借地の手続は2か月、消滅と借主からの解約は3か月」と束ねておくと処理できます。

    20年が二つある

    20年も二か所です。借地権の最初の更新後の存続期間(4条)と、更新前の再築による存続期間の延長(7条1項)です。どちらも借地の話なので紛らわしいのですが、前者は更新の場面、後者は再築の場面と、出てくる局面が違います。再築の20年には「承諾があった日または築造された日のいずれか早い日から」という起算点が付いている点でも区別できます。

    30年が三つある

    30年は三か所に出ます。普通借地権の当初の存続期間(3条)、建物譲渡特約付借地権で建物を譲渡できるようになるまでの期間(24条1項)、そして事業用定期借地権で二つの区分を分ける境目(23条1項と2項)です。

    前の二つは「これだけの期間は確保する」という下限ですが、三つ目は下限ではなく区分の境目である点が違います。30年以上50年未満なら特約で更新等を排除でき、10年以上30年未満なら当然に排除される。同じ30年でも役割が違います。

    50年が三つある

    50年も三か所です。一般定期借地権の存続期間の下限としての50年以上(22条)、事業用定期借地権の上限としての50年未満(23条)、そして民法604条が定める賃貸借の存続期間の上限としての50年です。

    一つ目は下限、二つ目は上限、三つ目は借地借家法が適用されない場合の上限。方向がそれぞれ違います。一般定期借地権が50年以上、事業用が50年未満なので、ちょうど50年で両者が接している構造になっていることも押さえておくと、境目を取り違えません。

    試験での出題ポイント

    引き上げか、期間の定めなしか

    借地で30年未満の定めをすると30年に引き上げられ、借家で1年未満の定めをすると期間の定めがないものとみなされます。この二つを入れ替えて「借家で10か月と定めると1年になる」とする選択肢が出ます。借地は引き上げ、借家は期間の定めなし、と結論の形が違う点を押さえてください。

    定期借地権の方式

    一般定期借地権が書面、事業用定期借地権が公正証書、建物譲渡特約付借地権が方式の定めなし。この三段は毎年のように問われます。「一般定期借地権は公正証書によらなければならない」「建物譲渡特約付借地権は書面が必要である」はいずれも誤りです。

    事業用定期借地権の二区分

    10年以上30年未満と30年以上50年未満で、更新等がないことが当然に適用されるのか、特約で定めるのかが違います。また事業用である以上、居住用建物を目的とすることはできません。「事業用定期借地権により賃貸マンションを建てる」という設定は誤りです。

    通知を怠った効果の違い

    普通借家で更新拒絶の通知を怠れば法定更新され、しかも期間の定めがないものになります。定期借家で終了通知を怠っても契約が更新されるわけではなく、終了を対抗できないだけです。効果の違いを入れ替えた選択肢が定番です。

    買取請求権の強行規定性

    建物買取請求権を排除する特約は無効、造作買取請求権を排除する特約は有効。これを逆にした選択肢がよく出ます。価格がいずれも時価である点は共通です。

    数字を満たしても正当事由がなければ終わらない

    普通借地の更新拒絶(6条)、普通借家の更新拒絶と解約申入れ(28条)には、いずれも正当の事由が必要です。期間内に通知しさえすれば契約が終わるかのように書いた選択肢は誤りになります。数字は必要条件であって十分条件ではありません。

    逆に、定期借地権と定期建物賃貸借では正当事由が不要です。更新がないことが最初から決まっているからで、そのぶん設定時の方式が厳格になっています。正当事由が要るかどうかは、普通か定期かで切り分けてください。

    適用の有無を確認させる出題

    建物の所有を目的としない土地の賃貸借に借地借家法の存続期間の規定を当てはめさせる形や、一時使用が明らかな場合に普通借家の規定を適用させる形も出ます。数字を正しく覚えていても、適用場面を取り違えれば失点します。問題文に目的や事情が書かれていたら、まず土俵を確認してください。

    覚え方・整理の仕方

    数字は「下限か、期限か、猶予か」で分類する

    借地借家法の数字は三種類に分かれます。存続期間のように最低限を保障する下限、通知期間のようにいつまでにしなければならない期限、そして解約申入れから終了までのように効果が生じるまでの猶予です。

    30年、20年、10年、50年は下限。1年前から6か月前までは期限。6か月、3か月、1か月、2か月は猶予または手続の期間です。数字を見たときにどの種類かを判別できれば、意味を取り違えることが減ります。

    借地は年、借家は月

    大まかな傾向として、借地の数字は年単位で大きく、借家の数字は月単位で小さくなります。借地は建物を建てて長く使うことが前提なので長期の保障が要り、借家は建物を借りるだけなので短い単位で足りるからです。

    例外は借地の2か月と3か月ですが、これらは存続期間ではなく手続の期間です。存続期間は借地が年、借家は最短1年だけ、と整理しておくと引き出しやすくなります。

    短くしようとすると借主が守られる、と覚える

    法定より短い期間を定めたときの結論は、どれも借主に有利な方向へ振れます。借地は法定期間まで引き上げられ、借家は期間の定めがない状態になって解約に正当事由と6か月が必要になります。地主や大家が短くしようとしても、その意図どおりにはならない。この方向性を持っておけば、結論を迷ったときの当たりをつけられます。

    語呂に頼る数字と頼らない数字を分ける

    30年、20年、10年のように理由から導ける数字は、語呂を作るまでもありません。一方、200平方メートルや2か月のように理由から出てこない数字は、機械的に覚えるほうが早くなります。どの数字を語呂で処理し、どれを理解で処理するかの線引きは宅建の語呂合わせにまとめてあります。

    借地権を実際の場面でつかむ

    数字だけを追っていると、何を保護しているのかが見えなくなります。借地権が実際にどういう場面で使われる権利なのかは借地権とはが、抵当権の実行によって法律上当然に成立する地上権については法定地上権が参考になります。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 借地権の存続期間を20年と定めた場合、その定めは無効となり、存続期間は30年となる。(○か×か)

    答えを見る ○:借地借家法3条は借地権の存続期間を30年とし、契約でこれより長い期間を定めたときはその期間とすると定めています。30年未満の定めは効力を持たず、30年に引き上げられます。逆に50年と定めればそのまま50年です。存続期間の規定は借主を守るための下限規制なので、長くする方向の合意は有効、短くする方向の合意は無効になります。

    Q2. 建物の賃貸借において期間を6か月と定めた場合、その定めは無効となり、存続期間は1年となる。(○か×か)

    答えを見る ×:借地借家法29条1項により、期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされます。1年に引き上げられるのではありません。期間の定めがない状態になると、賃貸人からの解約申入れには正当事由が必要となり、しかも申入れから6か月を経過しなければ終了しないため、賃借人にとってはむしろ手厚い状態になります。なお定期建物賃貸借にはこの規定の適用がなく、6か月の定めも有効です。

    Q3. 事業用定期借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。(○か×か)

    答えを見る ○:借地借家法23条3項の定めるとおりです。単なる書面では足りず、公正証書が必要です。一般定期借地権が「公正証書による等書面」で足り(22条)、建物譲渡特約付借地権には方式の定めがない(24条)のと対比してください。存続期間も、一般定期借地権が50年以上、事業用定期借地権が10年以上50年未満、建物譲渡特約付借地権が30年以上と分かれます。

    Q4. 期間を2年とする定期建物賃貸借において、賃貸人が期間満了の3か月前に終了の通知をした場合、賃貸借は期間の満了により終了し、その終了を賃借人に対抗することができる。(○か×か)

    答えを見る ×:期間が1年以上の定期建物賃貸借では、賃貸人は期間の満了の1年前から6か月前までの間に終了の通知をしなければ、終了を賃借人に対抗できません(借地借家法38条6項)。3か月前の通知は通知期間を過ぎているため、期間満了時点では対抗できません。ただし同項ただし書きにより、その通知の日から6か月を経過した後は対抗できるようになります。契約が更新されるわけではなく、対抗できない状態が続くだけである点が、普通借家の法定更新との違いです。

    Q5. 建物の賃貸借において、賃借人の造作買取請求権を排除する旨の特約は、賃借人に不利であるため無効である。(○か×か)

    答えを見る ×:造作買取請求権を定める借地借家法33条は、強行規定を列挙する同法37条に含まれていないため、これを排除する特約は有効です。これに対し、借地における建物買取請求権(13条)は同法16条により片面的強行規定とされ、排除する特約は無効になります。建物は借地の目的そのものであるのに対し、造作は建物の付属物にすぎないという保護の重さの違いから、扱いが分かれています。

    まとめ

    借地の存続期間は当初30年、最初の更新後20年、2回目以降10年と減っていきます。投下資本の回収が進むほど保障すべき期間が短くなるという発想です。短い定めは法定の期間に引き上げられ、長い定めはそのまま有効になります。借家は1年未満の定めが期間の定めのないものとみなされ、引き上げではない点で借地と結論の形が違います。

    定期借地権は、一般が50年以上で書面、事業用が10年以上50年未満で公正証書、建物譲渡特約付が30年以上で方式の定めなし。期間と方式の両方が類型ごとに分かれているので、二つを対にして覚えてください。事業用はさらに、10年以上30年未満と30年以上50年未満で、更新等がないことが当然に適用されるか特約によるかが分かれます。

    通知の数字は、普通借家の更新拒絶と定期借家の終了通知がいずれも1年前から6か月前まで。同じ数字でも、怠ったときに法定更新されるのか、終了を対抗できないだけなのかという効果が違います。大家からの解約申入れは6か月、借主からは民法617条1項2号により3か月。似た数字が並ぶところは、数字ではなく効果の違いで区別してください。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、借地借家法の出題を肢ごとに演習でき、期間や通知の数字を取り違えやすい論点を繰り返し確認できます。

    読んだ内容を、権利関係の肢で確かめる

    民法・借地借家法・区分所有法など、条文だけでは判断しづらい論点は、過去問の肢で覚えるのが最短です。

    関連記事

    Android版アプリの先行テスターを募集しています

    正式公開に先立ち、先行してご利用いただける方を募集しています。学習記録や有料プランはWeb版と同じアカウントで、そのまま引き継げます。3ステップで、通常その場で使い始められます。

    1
    テスターグループに参加する

    お使いのGoogleアカウントで参加ボタンを押すだけです。承認を待つ必要はありません。

    参加ページを開く
    2
    テスト版を受け取る

    手順1と同じGoogleアカウントでログインしたAndroid端末で受け取りページを開き、「テスターになる」を押してGoogle Playからインストールします。

    受け取りページを開く
    3
    いつものアカウントでログインする

    Web版と同じメールアドレス・パスワードでログインすれば、学習記録がそのまま表示されます。

    「まだご利用いただけません」と表示された場合は、反映待ちの可能性があります。時間をおいて再度お試しいただくか、info@takken-bootlab.com までお知らせください。