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宅建の模試活用法|本番条件の作り方と結果の読み方

試験対策・勉強法 読了 約23分

宅建の模試が年度別過去問と違う3点を整理し、返ってくる偏差値と順位をどこまで信じてよいか、復習で誤答をどう分類するかを解説します。模試を受けない場合に本番条件を自作する手順まで扱います。

目次

    この記事は、宅建の模試を本番の予行として成立させる条件と、返ってきた結果をどう読むかを扱います。過去問そのものの回し方は宅建の過去問活用術、弱点の特定と潰し方は宅建の弱点克服法、残り1か月の配分は宅建の直前期の過ごし方にまとめてあります。ここでは特定の予備校や商品を推奨しません。

    先に結論を三つ述べます。第一に、模試の価値は得点ではなく、初見であること、その年の基準日と統計に合っていること、本番条件で解けることの三つにあります。このうち前の二つは自分では作れず、三つ目は自分でも作れます。第二に、返ってくる偏差値や順位は、本試験での相対位置とは一致しません。模試の母集団は本試験の母集団と違うからです。第三に、「模試で何点なら合格圏」という言い方は原理的に成立しません。本試験の合格基準点は年度ごとに動き、令和7年度は前年の37点から33点へ4点下がりました。動く基準を固定して語ることはできません。

    以下では、模試にしかできないことを確認したうえで、条件の作り方、結果の読み方、そして模試を受けない場合に何を自作できるかを順に見ていきます。

    模試が年度別過去問と違う三つの点

    初見であること

    過去問は周回するものです。周を重ねると、問題文を見た時点で答えが浮かぶようになります。これ自体は悪いことではなく、判定すべきなのは答えの記号を覚えたのか正誤の根拠を覚えたのかという点だと宅建の過去問活用術で整理しています。

    ただし、根拠まで言える状態になっていても、過去問では測れないものが残ります。知らない論点に出会ったときにどう振る舞うかです。本試験には毎年、テキストで見た記憶のない肢が混ざります。そこで固まって時間を溶かすのか、消去法で他の肢から詰めるのか、印をつけて飛ばすのか。この判断は、初見の問題群を制限時間の中で処理する状況でしか観測できません。

    模試の第一の価値はここにあります。得点を測るためではなく、初見に対する自分の振る舞いを観測するために受けるものだと考えると、結果の読み方も変わってきます。

    その年の基準日と統計に合っていること

    不動産適正取引推進機構は試験の内容について、出題の根拠となる法令は試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものであると案内しています。基準日の考え方は宅建の勉強はいつから?試験日から逆算するで扱っています。

    過去問は、当然ながら過去の基準日で作られています。法改正があった論点では、当時の正解が現在は誤りになっている肢が混ざります。解説が修正されていない教材では、解くほど誤った知識が入ります。

    統計はさらに扱いが違います。宅地建物取引業法施行規則8条は試験すべき事項を七つ挙げており、その5号が「宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること」です。統計はこの範囲から出題され、数値は毎年更新されます。したがって過去問の統計問題は、解いてもほとんど意味がありません。対策の考え方は統計問題の対策、当年の数値は宅建試験の統計数値まとめにまとめています。

    模試は当年の基準日と統計に合わせて作られます。これは過去問にはない価値で、しかも自分では作れない部分です。

    相対評価の材料が返ってくること

    三つ目が、順位や偏差値、科目ごとの平均との差といった、他の受験者との比較材料です。過去問を自宅で解いても得られません。

    ただし、この三つ目には大きな限界があります。次の章で扱います。

    返ってくる相対評価をどこまで信じるか

    母集団が本試験と違う

    模試を受けるのは、その時点で学習が一定まで進み、受験の手続きと時間を確保できる層です。本試験の受験者には、申し込んだものの学習が続かなかった層や、受験それ自体が目的の層が一定数含まれます。

    つまり模試の母集団は、本試験の母集団より上に偏っています。同じ実力なら、模試での順位は本試験での順位より低く出る方向に働きます。

    ここで正確に言えるのはここまでです。偏りの向きは構造から推測できますが、大きさは分かりません。どれだけ偏っているかを示す公表データがないからです。したがって「模試の順位に何位分を上乗せする」といった調整はできません。向きだけを知って、絶対的な位置の判断には使わない、という扱いが妥当です。

    合格基準点が動くので「何点なら合格圏」が成立しない

    宅建試験の合格基準点は、あらかじめ決まった固定ラインではありません。その年の受験者全体の得点分布をもとに、合格者がおおむね一定の割合に収まるよう事後的に設定される相対基準です。仕組みと過去の推移は宅建試験の合格ライン予想にまとめています。

    結果として、点数は大きく動きます。令和7年度は前年の37点から33点へ4点下がりました。一方で合格率は近年18%台で安定しており、合格者の割合はほぼ一定のまま、合格に必要な点数だけが難易度に応じて上下しているのが実態です。

    この構造を踏まえると、「模試で35点なら合格圏」という言い方は、動く基準を固定して語っていることになります。仮にその年の基準点が33点なら35点で足りますが、38点の年なら足りません。模試の得点をそのまま合否の判断に使うことはできません。

    目標として意味を持つのは、どの年でも通る水準を置くことです。過去の推移から見て38点以上がその水準にあたります。科目別の配分は宅建の科目別攻略法宅建の合格戦略で扱っています。

    模試と本試験の難易度は比較されていない

    「模試は本試験より難しめに作られているから、模試の得点に数点を上乗せしたものが本番の想定得点だ」という説明を見かけることがあります。これは成立しません。

    上乗せの点数を出すには、模試と本試験の難易度が共通の尺度で測られている必要があります。本試験の難易度は事後的に合格基準点として現れますが、模試の難易度を同じ尺度で測った公表データはありません。難易度差が測られていない以上、差を数値で埋めることはできません。

    したがって、模試の得点を本試験の得点に換算する作業には根拠がありません。得点は、同じ模試を複数回受けたときの自分の変化を見るためだけに使ってください。

    では相対評価は何に使うのか

    使いみちは二つあります。

    一つは、科目ごとの平均との差です。全体順位を絶対的な位置として読むのは前述のとおり無理がありますが、同じ母集団の中で自分がどの科目で相対的に沈んでいるかは読み取れます。全科目が平均並みで宅建業法だけ平均を下回っているなら、配点が最大の科目で落としているということなので、優先順位が決まります。

    もう一つは、差分です。同じ主催の模試を二回受けたなら、母集団の性質は近いはずです。一回目と二回目の相対位置の変化は、その間に打った対策が効いたかどうかの手がかりになります。絶対的な位置は使えなくても、変化は使えます。

    本番条件をなぜ守るのか

    模試を解くときの条件は、宅建の過去問活用術に列挙してあります。制限時間2時間を厳守する、資料を見ない、途中で中断しない、可能なら本番と同じ時間帯に解く、マークシートを使う。ここでは条件そのものではなく、それぞれの条件を崩すと何が測れなくなるのかを確認します。測れなくなるものが分かれば、どの条件を優先するかを自分で判断できます。

    制限時間が判断を変える

    本試験は50問を2時間で解きます。1問あたり平均2分24秒で、見直しの時間を取るならさらに短くなります。登録講習を修了して問46から問50までの免除を受ける場合は45問を1時間50分で解くため、1問あたりの時間はほぼ同じです。免除制度の内容は5問免除(登録講習)制度にあります。

    時間の制約がないと、分かるまで考えるという解き方ができてしまいます。本試験で必要なのは、分からないものを切り上げる判断のほうです。この判断は、残り時間が見えている状態でしか働きません。時間を計らずに解いた模試では、切り上げの判断が一度も発生しないため、そこに問題があっても観測されません。

    資料を見ないことの意味

    テキストを開きながら解くと、思い出す作業が発生しません。調べれば分かることと、思い出せることは別です。模試で測りたいのは後者のほうなので、資料を参照した時点で測定の対象が変わります。

    途中で中断しないことの意味

    50問を通して解くと、後半で判断の精度が落ちます。この落ち込みは知識の問題ではなく、集中の持続の問題です。途中で休憩を入れると、この落ち込みが消えてしまい、本番で初めて経験することになります。

    後半の失点は、実は対策の余地がある領域です。解答順序を変える、難問を後回しにする、見直しの配分を変えるといった打ち手があります。ただし、観測されなければ打ち手を選べません。

    時間帯を合わせる意味

    宅建試験は例年、午後1時から午後3時に実施されます。この時間帯には、昼食後で眠気が出やすいという条件が付いてきます。朝の集中している時間に解いて出た得点は、その時間帯の得点であって、本番の時間帯の得点ではありません。

    当日の流れそのものは宅建試験当日ガイドにまとめています。

    マークシートを使う意味

    画面をタップする操作や、問題冊子の選択肢に丸をつける操作と、問題冊子を見ながら別紙の解答欄の該当行を塗る操作は、別の作業です。行をずらして塗る事故は実際に起こり得ます。

    特に注意が要るのは、飛ばした問題がある場合です。解答順序を試す、あるいは難問を後回しにするという運用を取るなら、解答欄を空けたまま先へ進み、あとで戻って埋めるという動作が発生します。この動作こそがずれの原因になるので、順序を工夫するつもりなら、マークシートの練習は省けません。

    5問免除を受けるなら模試も免除の形で解く

    登録講習を修了して問46から問50までの免除を受ける予定なら、模試も45問を1時間50分で解いてください。

    50問すべてを解いたほうが情報は増えるように見えますが、時間感覚がずれます。本番で解くのは45問であり、配分を組み立てる対象も45問です。50問で練習した配分をそのまま持ち込むと、余る側にも足りない側にもずれます。

    また、免除される5問は施行規則8条1号と5号の範囲、すなわち土地と建物の形質や構造に関することと、宅地建物の需給に関する法令および実務に関することです。統計もここに含まれます。免除を受けるなら、この範囲の復習に時間を使う理由がありません。免除の要件と手続は5問免除(登録講習)制度にまとめています。

    条件を崩したときに残るもの

    以上を裏返すと、条件を崩した模試で測れるのは知識の量だけになります。それは肢別演習でも測れるものです。模試を受ける費用と時間を払う意味は、知識以外の部分を測ることにあります。条件を崩すなら、模試ではなく問題演習として扱うほうが正直です。

    会場で受けるか、自宅で受けるか

    多くの模試は、会場での受験と自宅での受験を選べます。どちらを選ぶかは、前章で見た「条件のうち何を再現したいか」から決まります。

    会場でしか再現できないもの

    自宅では作れない要素がいくつかあります。

    他人がいる環境で解くこと。周囲でページをめくる音や、椅子が動く音が入る中で集中を保つ経験は、自宅では作れません。逆に、私語のない静けさが2時間続く状態も、自宅では作りにくいものです。

    開始と終了が自分の意思で決まらないこと。合図で始まり、合図で終わる。途中で立ち上がることも、飲み物を取りに行くこともできない。この拘束された状態での2時間は、自分でタイマーを押した2時間とは別物です。

    そして、机の広さと時計の位置です。問題冊子と解答用紙を並べて置ける幅があるか、時計がどこにあって何秒で確認できるか。こうした細部は、当日に初めて直面すると想像以上に気を散らします。当日の持ち物や会場での過ごし方は宅建試験当日ガイドにまとめています。

    自宅受験で残るもの、失うもの

    自宅受験でも、時間厳守、資料を見ない、途中で中断しない、時間帯を合わせるという条件は、自分で管理すれば守れます。したがって前章で挙げた「測れなくなるもの」の大半は、自宅でも回避できます。

    失うのは上記の環境要因だけです。ただし、自宅では条件を崩す誘惑が常にあるという点は無視できません。誰も見ていない状態で2時間の中断禁止を守るのは、思うより難しい作業です。

    判断の基準

    再現したい条件のうち、自分にとってまだ未知のものがどれかで決めてください。宅建の受験が初めてで、資格試験の会場そのものに慣れていないなら、会場受験の価値は高くなります。すでに何度か受験経験があり、会場の雰囲気が既知なら、自宅受験でも測りたいものは測れます。

    複数回受けるなら、少なくとも1回を会場に充てて、残りを自宅にするという配分が噛み合います。

    解答順序を試す場として使う

    本試験は一度きりなので、当日に順序を考えるわけにはいきません。順序を試せるのは模試か、それに準じた通し演習だけです。

    選択肢はおおむね三つです。問1から順に解く形、宅建業法から入って得点源を確保してから権利関係へ向かう形、得意科目から入る形。どれが優れているという答えはなく、自分の得点分布と処理速度で決まります。

    判断の材料は得点だけではありません。最後に解いた科目に何分残っていたかを必ず記録してください。得点が同じでも、最後の科目を10分で駆け抜けたのか30分かけたのかで、次に打つ手が変わります。前者なら順序を変える価値があり、後者なら順序ではなく個々の処理速度の問題です。

    権利関係を後ろに置く設計がよく採られるのは、事例問題に時間を要し、難問が混ざる割合も高いためです。ただし、どこに時間を食う問題が置かれるかは年によって変わります。順序は「この科目を先に」という単位で決め、問題単位の判断は当日の状況に委ねるのが現実的です。

    そして、一度決めた順序は本番で変えないでください。順序を変えるということは、練習していない手順を本番で試すということです。

    復習は原因を四つに分けるところから

    得点から入らない

    採点して得点を出しても、そこから決まることはほとんどありません。得点は何点だったかを教えるだけで、次に何を変えるべきかを教えないからです。

    復習で最初にやるのは、間違えた問題の原因を分けることです。同じ不正解でも、原因が違えば打ち手が違います。原因を分けずに「間違えたから復習する」と処理すると、特定のタイプの失点が最後まで直りません。分類の枠組みと打ち手は宅建の弱点克服法で詳しく扱っているので、ここでは模試という場での現れ方に絞ります。

    知識不足

    学習していない、あるいは完全に忘れている型です。模試には過去問に出ていない論点が入ることがあり、この型が出やすくなります。

    模試に特有の注意点として、模試で出た論点が本試験に出るとは限りません。模試の作問は予想を含みますが、予想が当たる保証はありません。知識不足に分類した論点をすべて潰そうとすると、出題実績のない領域に時間を使うことになります。過去問で繰り返し問われている論点を優先し、模試だけで見た論点は後回しにしてください。優先順位のつけ方は宅建の弱点克服法にあります。

    混同

    似た制度を取り違える型です。35条書面と37条書面のどちらの記載事項か、営業保証金と弁済業務保証金のどちらの金額か、といったものです。模試はこの型を狙って作られやすく、過去問より多く現れることがあります。

    打ち手は、単独で覚え直すのではなく、混同している二つを並べて、どの軸で違うのかを説明できる状態にすることです。この型を知識不足として処理して両方を丸暗記すると、かえって混ざります。

    問題文の読み違い

    知識はあったのに、問われ方を取り違えた型です。正しいものを選ぶ問題で誤りを選んだ、個数を数え違えた、「自ら売主となる場合」という前提を読み飛ばした、といったものです。

    この型は、模試のような本番条件でしか十分には観測されません。落ち着いて1問ずつ解いている状況では、読み違いはほとんど起きないからです。2時間の緊張と時間の圧力の下で初めて出てくる失点であり、肢別演習をいくら積んでも見つかりません。

    打ち手は知識の補強ではなく、読み方の手続きを固定することです。問われている方向、主語、前提条件の三点に必ず印をつける。この習慣を作る以外にありません。

    時間不足

    考える時間が足りず、後半を埋められなかった、あるいは焦って雑に処理した型です。これも模試でしか観測されません。

    打ち手は二段階です。まず、時間がかかった原因が知識の欠落なのか処理手順の非効率なのかを切り分けます。前者なら知識不足として扱います。後者、たとえば権利関係の事例で関係図を描かずに読み返しを繰り返しているような場合は、手順そのものを変えます。関係図と計算は手を動かす作業として切り出しておくと処理が速くなります。計算問題の型は宅建の計算問題で扱っています。

    読み違いと時間不足こそが模試を受ける理由

    四つのうち、知識不足と混同は肢別演習や年度別演習でも見つかります。読み違いと時間不足は、本番条件を再現した通し演習でしか出てきません。模試を受ける最大の理由はここにあり、この二つを拾えなかった模試は、費用に見合う情報を返していないことになります。

    分類は当日中に行う

    原因の分類は、解いた当日のうちに済ませてください。時間が経つと、なぜ間違えたのかの記憶が消え、後から見返しても知識不足に分類するしかなくなります。かける時間は1問あたり数秒で構いません。誤答の横に「知」「混」「読」「時」の一字を書くだけです。

    正解した問題こそ確認する

    得点だけを見ていると、弱点の半分が見えません。見えないのは、わかっていないのに正解してしまった問題です。

    四肢択一である以上、選択肢を二つに絞って当てた問題や、消去法でたまたま残った選択肢を選んだ問題は必ず生じます。それらは記録上「正解」として処理され、復習の対象から外れ、そのまま本番まで残ります。仕組みと運用は宅建の弱点克服法にまとめています。

    模試ではこの問題が過去問より大きくなります。初見だからです。周回した過去問なら、根拠を思い出して答えているのか記号を覚えているのかは自分で判別がつきます。初見の問題では、絞り込みの精度が低くなる分、勘で当たる割合が上がります。

    したがって、模試を解いている最中に、自信のあった問題とそうでない問題に印をつけておいてください。採点後、印のない問題で正解しているものは、正解として数えつつ復習の対象に入れます。

    得点よりも、根拠を言えないまま正解した問題の数のほうが、残り期間の設計には役に立ちます。この数が多いなら、得点が目標に届いていても実力は届いていません。

    模試の解説と成績表をどう読むか

    模試の解答は公式の正解ではない

    押さえておくべき違いがあります。本試験については、指定試験機関である不動産適正取引推進機構が試験実施後に問題と正解番号を公表します。正解は公式に確定したものです。

    模試の解答は、そうではありません。作問した側が示した見解であり、公式に確定した正解ではありません。実際、模試の解答が後から訂正されることもあります。したがって、解説を読んで納得できないときは、模試の解説のほうが誤っている可能性も残ります。

    納得できないときは条文に戻る

    判断の方法は一つで、根拠に当たることです。解説に根拠条文が示されているなら、e-Gov法令検索で原文を読んで、解説の記述と条文の文言が一致しているかを確かめます。条文の語尾が「しなければならない」なのか「することができる」なのか、括弧書きに除外が置かれていないか。公的に確認できる情報源の使い方は宅建オンライン学習の完全ガイドにまとめています。

    根拠条文が示されていない解説は、この検証ができません。解説の質を見るときは、結論の書きぶりより条番号の有無を見てください。

    成績表を待つ間に復習を止めない

    会場模試では、成績表が返ってくるまでに時間がかかります。ここで注意したいのは、返却を待ってから復習を始めると、記憶が消えているという点です。

    原因の分類は当日中に行う必要があります。なぜ間違えたのかの記憶は、数日で失われます。したがって作業は二段階に分けてください。当日に自己採点と四つの分類、そして自信のなかった問題の洗い出しまでを済ませる。返却後に、相対的な情報だけを受け取って優先順位を微調整する。

    返却で新しく得られるのは、科目ごとの平均との差と、同じ模試を複数回受けた場合の変化だけです。この二つは急ぎません。逆に、当日にしか取れない情報のほうが失われやすいので、そちらを先に確保します。

    「難問だから対策不要」で切り捨てない

    模試の復習では、間違えた問題を「大半の受験者が間違える難問だから対策不要」と切り分ける整理が使われることがあります。この切り分けは慎重に扱ってください。

    問題は判定の根拠です。自分が解けなかったという事実は、その問題が難問である根拠になりません。全体の正答率が返ってくる模試なら、それを根拠に使えます。返ってこないなら、難問かどうかを判定する材料が手元にないことになります。

    判定できないときは、知識不足として扱っておくほうが安全です。そのうえで、潰す優先順位は別に決めます。出題実績のある論点を先に、模試だけで見た論点を後に、という順です。優先順位の決め方は宅建の弱点克服法で扱っています。切り捨てるかどうかの判断そのものは宅建の合格戦略にまとめてあります。

    模試を受けない場合に何を自作できるか

    模試を受けないという選択は成立します。ただし、前述の三つの価値のうち自作できるものとできないものがはっきり分かれるので、そこを踏まえて決めてください。

    自作できるのは本番条件だけです。初見であることと、当年の基準日・統計に合っていることは自作できません。

    通し演習を自作する手順

    第一に、まだ解いていない年度を1年分残しておきます。周回の対象から意図的に外し、直前期まで手をつけません。これが初見性の代わりになります。完全な代わりにはなりませんが、周回済みの年度を解くよりは近い状態を作れます。

    第二に、試験と同じ時間帯に解きます。午後1時に始めて午後3時に終える。休日にこの2時間を確保できる日を、あらかじめカレンダーに置いておきます。

    第三に、解答用紙を別紙にします。問題冊子に直接答えを書き込むと、解答欄との照合という作業が消えます。番号を縦に並べただけの紙で構わないので、問題と解答欄が分かれている状態を作ってください。

    第四に、採点したら四つの分類を当日中に行います。得点は記録しますが、判断には使いません。使うのは分類の内訳と、根拠を言えないまま正解した問題の数です。

    自作で埋まらない部分をどう扱うか

    統計は、過去問の問題文をそのまま使えません。当年の数値を宅建試験の統計数値まとめで確認し、統計の1問は演習の対象から外して別途対策してください。

    法改正は、使う年度が古いほど影響が大きくなります。改正で正誤が変わった肢が混ざるため、採点結果をそのまま実力とみなせません。解説が当年基準に修正されている教材を使うか、改正論点を事前に把握しておく必要があります。

    相対評価は得られません。代わりに、動かない目標で判断してください。どの年でも通る水準として38点以上を置き、そこに届いているかで見ます。相対的な位置が分からないぶん、目標を高めに固定するほうが安全です。

    何回、いつ受けるか

    回数について、根拠のある一般解は示せません。何回受ければよいという公表された基準はないからです。決めるなら、回数から入らず、何を測りたいかから逆算してください。

    本番条件に慣れることが目的なら、最低1回を、直前期に入る手前に置きます。早すぎると知識が足りずに測定にならず、遅すぎると打ち手を実行する期間が残りません。

    対策の効果を確認することが目的なら2回です。1回目で分類を出し、対策の期間を挟み、2回目で同じ型の失点が減ったかを見ます。この場合、2回の間隔は対策が実行できる長さが必要で、1週間では足りません。

    解答順序を試すことが目的なら、試す案の数だけ回数が要ります。ただし順序の検証は自作の通し演習でも代替できるので、費用をかけるかどうかは別に判断できます。

    制約として押さえておくべきなのは、復習の時間です。通し演習は解くのに2時間かかり、復習にはそれと同等以上かかります。1回あたり半日近くを使う計算になるので、回数を増やすほど他の学習時間が圧迫されます。解いただけで復習しなかった模試は、費用と半日を払って得点だけを受け取ったことになります。

    時期の配分は宅建の直前期の過ごし方、学習全体の中での位置づけは宅建の勉強スケジュール表を参照してください。試験後の自己採点については宅建試験の自己採点のやり方にまとめています。

    試験での出題ポイント

    模試で落としやすく、本試験でも同じ形で落としやすい領域があります。

    統計は模試と本試験で数値が一致しない

    模試の統計問題は、その模試が作られた時点の公表値にもとづきます。本試験の出題は当年の公表値です。作成時期によっては、模試で覚えた数値が本試験の時点では古くなっていることがあります。統計だけは模試の内容をそのまま覚えるのではなく、当年の確定値に当たり直してください。

    改正論点は模試によって扱いが分かれることがある

    基準日の直前に施行された改正は、模試の作成時期によって反映の有無が変わり得ます。改正が絡む問題で解説に納得できないときは、解説の根拠条文を確認し、施行日が当年の4月1日以前かどうかで判断してください。

    個数問題は時間を食う

    「正しいものはいくつあるか」という形式は、4肢すべてを判定しなければ答えが確定しません。1肢でも判断を誤れば必ず外れるうえ、判定に要する時間も通常の4肢択一より長くなります。模試ではこの形式に何分かかったかを記録しておくと、当日の時間配分の設計に使えます。

    権利関係の事例問題で沈む型

    関係図を描かずに問題文を何度も読み返すと、時間だけが消えます。図を描く作業は理解のためではなく処理のための手順だと位置づけて、模試の場でも必ず描いてください。描いた図は復習のときに、どこで関係を取り違えたかを確認する材料になります。科目ごとの攻め方は宅建試験の科目別攻略法にまとめています。

    覚え方・整理の仕方

    模試の価値は「初見・当年・条件」の三つ

    初見であること、当年の基準日と統計に合っていること、本番条件で解けること。この三語で価値を押さえておくと、条件を崩した模試に意味がない理由も、自作で何が埋まらないかも同時に分かります。自作できるのは三つ目だけです。

    相対評価は「差分は使える、絶対位置は使えない」

    母集団が本試験と違うので順位そのものは信じられないが、同じ模試を二回受けたときの変化と、科目間の相対的な沈み方は読める。この線引きを一組で持っておきます。

    「模試で何点」ではなく「どの年でも通る点」

    合格基準点は動きます。令和7年度は前年37点から33点へ下がりました。動く基準に対して固定の目標を置くなら、上限側に合わせる。38点以上という置き方はこの考えから来ています。

    復習は「知・混・読・時」

    知識不足、混同、読み違い、時間不足。誤答の横に一字を書くだけで足ります。分類を粗くすると打ち手を誤るので、混同を知識不足に、読み違いをケアレスミスにまとめないでください。

    「読」と「時」は模試でしか出ない

    四つのうち後ろの二つは、本番条件を再現しなければ観測されません。この一言が、模試を受ける理由そのものです。逆に言えば、条件を崩した模試ではこの二つが取れません。

    見るのは得点より「根拠を言えなかった正解の数」

    初見の問題では勘で当たる割合が上がります。得点が目標に届いていても、根拠を言えないまま正解した問題が多ければ、実力は届いていません。この数のほうが、残り期間の設計には役立ちます。

    理解度チェッククイズ

    次の記述の正誤を判定してください。

    問1. 模試で35点を取れば、本試験でも合格圏に入っていると判断してよい。

    答えは誤りです。宅建試験の合格基準点は固定されておらず、その年の受験者全体の得点分布をもとに、合格者がおおむね一定の割合に収まるよう事後的に設定される相対基準です。令和7年度は前年の37点から33点へ4点下がりました。合格率は近年18%台で安定しており、合格者の割合はほぼ一定のまま、必要な点数だけが難易度に応じて上下しています。基準そのものが動く以上、特定の点数を合格圏の目安として固定することはできません。目標として意味を持つのは、どの年でも通る水準を置くことです。

    問2. 模試で返ってくる順位や偏差値は、本試験での相対的な位置をそのまま表している。

    答えは誤りです。模試を受けるのは、その時点で学習が一定まで進み、受験の手続きと時間を確保できる層に偏ります。本試験の受験者には、申し込んだものの学習が続かなかった層も含まれます。したがって模試の母集団は本試験の母集団より上に偏っており、同じ実力でも模試の順位のほうが低く出る方向に働きます。ただし偏りの大きさを示す公表データはないため、何位分を上乗せするといった補正もできません。使えるのは、科目ごとの平均との差と、同じ模試を複数回受けたときの変化です。

    問3. 模試は本試験より難しく作られているので、模試の得点に数点を加えたものを本番の想定得点としてよい。

    答えは誤りです。上乗せする点数を算出するには、模試と本試験の難易度が共通の尺度で測られている必要があります。本試験の難易度は事後的に合格基準点として現れますが、模試の難易度を同じ尺度で測った公表データはありません。難易度の差が測られていない以上、その差を数値で埋めることはできません。模試の得点は、本試験の得点への換算には使えず、同じ模試を複数回受けたときの自分の変化を見るために使うものです。

    問4. 誤答の原因を「知識不足」「混同」「問題文の読み違い」「時間不足」に分けると、このうち後ろの二つは本番条件を再現した通し演習でなければ十分に観測されない。

    答えは正しい記述です。知識不足と混同は、肢別演習や年度別演習でも見つかります。これに対して問題文の読み違いは、2時間の時間的な圧力の下で初めて現れることが多く、落ち着いて1問ずつ解いている状況ではほとんど起きません。時間不足も同様に、制限時間を計った通し演習でしか観測されません。模試を受ける最大の理由はこの二つを拾うことにあり、逆に制限時間を守らず途中で中断した模試では、この二つが取れないことになります。

    問5. 模試で正解した問題のうち、自信を持って選べなかったものは、正解であっても復習の対象に入れる必要がある。

    答えは正しい記述です。四肢択一である以上、選択肢を二つに絞って当てた問題や、消去法でたまたま残った選択肢を選んだ問題は必ず生じます。これらは記録上「正解」として処理されるため、得点だけを見ていると復習の対象から外れ、そのまま本番まで残ります。模試は初見であるぶん絞り込みの精度が下がり、勘で当たる割合は周回した過去問より高くなります。解いている最中に自信の有無を印で残しておき、印のない正解は復習の対象に入れてください。得点よりも、根拠を言えないまま正解した問題の数のほうが、残り期間の設計には役立ちます。

    まとめ

    • 模試が年度別過去問と違うのは、初見であること、当年の4月1日基準の法令と最新の統計に合っていること、相対評価の材料が返ってくることの三つです。このうち自分で作れるのは本番条件だけで、初見性と当年対応は自作できません。
    • 返ってくる相対評価には限界があります。模試の母集団は本試験より上に偏っており、偏りの大きさは公表されていません。加えて合格基準点は相対評価で毎年動き、令和7年度は前年37点から33点へ下がりました。「模試で何点なら合格圏」という判断は成立せず、どの年でも通る水準を目標として固定するほうが確実です。
    • 復習は得点からではなく、誤答の原因を知識不足・混同・読み違い・時間不足の四つに分けるところから始めます。後ろの二つは本番条件でしか観測されないため、条件を崩した模試ではこの二つが取れません。あわせて、根拠を言えないまま正解した問題を拾い出してください。

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