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登録実務講習|実務経験2年の代替という設計

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登録実務講習は実務経験2年の代替として設計された制度です。18条1項の「または」の構造、施行規則が定める50時間の内訳と修了試験、修了に期限がない理由、賃貸住宅管理業法の業務管理者との構造の共通点まで条文根拠つきで解説します。

目次

    この記事は、宅地建物取引士の登録を受けるために必要となる登録実務講習を扱います。合格後の手続き全体は宅建合格後にやること、登録から宅建士証までの制度は宅建士の登録と宅建士証、名前の似た三つの講習の切り分けは宅建士の法定講習にあります。ここでは登録実務講習という一つの制度を深く見ます。

    先に結論を述べます。登録実務講習は「実務経験2年の代替」として設計された制度です。この一点から、講習に関するほとんどのことが導けます。

    宅建業法18条1項は、登録を受けられる者として二つを並べています。宅地または建物の取引に関し一定期間以上の実務の経験を有する者と、国土交通大臣がその実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めた者。登録実務講習の修了者は、後者に当たります。

    つまりこの講習は、実務経験のない合格者に対して「2年働いたのと同等の能力がある」という評価を与えるための装置です。だから内容が実務の模擬になり、演習が組み込まれ、修了試験があります。単なる知識の補充講座なら、演習も試験も要りません。代替であることが、中身を決めています。

    そして、代替であることは期限の扱いも決めます。後述するとおり、登録実務講習の修了に有効期限はありません。名前の似た他の二つの講習にはいずれも期間制限があるのに、この講習にだけないのは偶然ではなく、目的の違いから説明できます。

    なお本記事は2026年4月1日時点で施行されている条文に基づきます。宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されるためです。宅地建物取引業法は令和7年法律第68号が2026年4月1日に施行されていますが本則に変更はなく、施行規則も2026年4月1日施行の版が基準になります。後半で扱う賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律は2025年6月1日施行、その施行規則は2024年5月27日施行の版がそれぞれ現行です。

    18条1項の「または」を正確に読む

    すべての出発点は登録の要件です。

    登録の要件は二択になっている

    18条1項はこう定めています。「試験に合格した者で、宅地若しくは建物の取引に関し国土交通省令で定める期間以上の実務の経験を有するもの又は国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたものは、国土交通省令の定めるところにより、当該試験を行つた都道府県知事の登録を受けることができる。」

    「又は」で結ばれています。どちらか一方を満たせば足り、両方を満たす必要はありません。

    この構造を正確に押さえると、世に多い誤解が二方向とも解消します。「2年の実務経験があれば登録実務講習は不要」は正しい。そして「登録実務講習を修了すれば実務経験は不要」も正しい。選択的な要件であって、片方がもう片方の前提になっているわけではありません。

    「2年」は法律本体ではなく省令にある

    条文が「国土交通省令で定める期間」としている点に注意してください。よく言われる「2年」は18条1項に書かれているのではなく、施行規則13条の15が「法第十八条第一項の国土交通省令で定める期間は、二年とする」と定めているものです。

    実質は変わりませんが、条番号を指定して問われる場面では区別が要ります。法律は要件の枠組みを、省令は具体的な数値を定めているという役割分担です。

    「同等以上の能力を有すると認めた者」には三つある

    もう一方の経路の中身も省令にあります。施行規則13条の16は、18条1項の「同等以上の能力を有すると認めた者」を三つ挙げています。

    第1号が「宅地又は建物の取引に関する実務についての講習であつて……国土交通大臣の登録を受けたもの(以下『登録実務講習』という。)を修了した者」です。条文上の名称がここで定義されています。

    第2号が「国、地方公共団体又は国若しくは地方公共団体の出資により設立された法人において宅地又は建物の取得又は処分の業務に従事した期間が通算して二年以上である者」です。

    第3号が「国土交通大臣が前二号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認めた者」です。

    講習によらない経路もある

    見落とされやすいのが第2号です。公的部門で用地の取得や処分の業務に2年以上従事していれば、登録実務講習を受けなくても登録できます。

    宅建業者での実務経験ではないので18条1項前段には当たりませんが、業務の内容が実質的に同等だという評価によって後段に位置づけられています。自治体の用地課などで働いていた人は、この経路を確認する価値があります。

    経路を先に確定させる

    以上を整理すると、登録に至る経路は次のようになります。宅建業者等での取引の実務経験が2年以上あるなら18条1項前段。公的部門での取得・処分の業務が通算2年以上あるなら規則13条の16第2号。いずれもないなら登録実務講習を修了して同条第1号。

    自分がどの経路かを先に確定させてから動くのが、手続きを無駄なく進める順序です。未経験から宅建士を目指す場合の全体設計は未経験で不動産業界に転職で扱っています。

    「2年の実務経験」はどう数えるか

    前段の経路を選べるかどうかは、実務経験の中身で決まります。

    「取引に関し」という限定

    18条1項が求めているのは「宅地若しくは建物の取引に関し」二年以上の実務の経験です。不動産に関わる仕事一般ではありません。

    具体的には、売買や賃貸借の媒介・代理、あるいは自ら当事者となる取引に関する業務が想定されます。物件の調査、契約に向けた交渉、重要事項説明や契約書面の作成に関わる補助的な業務などがこれに当たります。

    在籍していただけでは足りない

    したがって、不動産会社に在籍していたという事実だけでは足りません。同じ会社にいても、経理や総務、あるいは取引に関与しない管理部門の業務に従事していた期間は、取引に関する実務の経験として扱われないことがあります。

    実務経験による登録を申請する場合、勤務先の宅建業者が発行する証明を求められます。単なる在籍証明ではなく、取引に関する業務に従事していたことを示す必要がある、という点を織り込んでおいてください。

    免許を持たない会社での勤務にも注意

    もう一段の注意があります。宅建業の免許を持たない会社での勤務は、取引に関する実務経験として算入されるとは限りません。

    宅建業法2条2号は、宅地建物の売買・交換を自ら行うこと、売買・交換・貸借の代理または媒介をすることを宅建業としており、自ら貸借を行うことは含まれていません。自社物件の賃貸だけを行う会社や、賃貸管理のみを受託する会社は宅建業の免許を持たない場合があります。そうした会社での勤務は、18条1項前段の実務経験として評価されない可能性があります。

    「不動産業界で2年働いた」ことと「宅地建物の取引に関し2年の実務経験がある」ことは、同じではありません。判断がつかない場合は、講習を受ける前に登録先となる都道府県に確認するのが確実です。

    代替であることが、講習の中身を決めている

    ここからが本題です。2年分の実務経験に代わるものを短期間で用意するという設計要請が、カリキュラムに直接表れています。

    総時間はおおむね50時間

    施行規則13条の21は、登録実務講習実施機関が守るべき基準を13号にわたって定めています。そのうち第4号が中身を規定しており、「講義及び演習の総時間数はおおむね五十時間とし、次の表の上欄に掲げる科目の区分に応じ、それぞれ同表の中欄に掲げる内容について、同表の下欄に掲げる時間以上登録実務講習を行うこと」としています。

    科目ごとの最低時間が省令に書かれているという点が重要です。実施機関が自由に時間を削ることはできません。

    科目1 宅地建物取引士制度に関する科目(講義1時間)

    第一の科目は「宅地建物取引士制度に関する科目」で、内容は宅地建物取引士制度の概要と、宅地建物取引士の役割および義務です。講義1時間とされています。

    短いのは、試験でひととおり学んでいる領域だからでしょう。ここは知識の確認にあたります。

    科目2 宅地又は建物の取引実務に関する科目(講義37時間)

    第二の科目が量の中心です。「宅地又は建物の取引実務に関する科目」として講義37時間が求められ、内容はイからリまで九つ挙げられています。

    受付、物件調査および価格査定の実務に関する事項(イ)。媒介契約に関する事項(ロ)。宅地または建物の取引に係る広告に関する事項(ハ)。取引条件の交渉に関する事項(ニ)。法35条1項および2項の書面の作成に関する事項(ホ)。契約の締結に関する事項(ヘ)。契約の履行に関する事項(ト)。資金計画および税務に関する事項(チ)。紛争の防止に関する事項(リ)。

    並べてみると、取引の入口から履行までを時系列で通す構成になっていることが分かります。問い合わせを受けて物件を調べ、媒介契約を結び、広告を出し、条件を交渉し、重要事項説明書を作り、契約を締結し、履行まで見届ける。実務の一巡を追体験させる作りです。

    35条書面の作成が独立して挙げられているのは、これが宅建士の独占業務に直結するからです(宅建士の独占業務)。

    科目3 取引実務の演習に関する科目(演習12時間)

    第三の科目は「取引実務の演習に関する科目」で、括弧書きに「業務の標準的手順の修得のための演習」と明記されています。演習12時間です。

    内容は三つ。取引の目的となる宅地または建物の調査手法に関する事項(イ)。法35条1項および2項に規定する説明の実施に関する事項(ロ)。宅地または建物の取引に係る標準的な契約書の作成に関する事項(ハ)。

    講義とは別に、演習が独立した科目として時間まで指定されている点に注目してください。調査し、説明し、書面を作る。この三つは、聞いて分かることと自分でできることの差が大きい領域です。実務経験の代替を名乗る以上、手を動かさせる必要がある、という判断が条文に表れています。

    括弧書きの「業務の標準的手順の修得」という言葉も示唆的です。個別の知識ではなく、手順として身体に入れることが目的とされています。

    1時間+37時間+12時間

    三科目を足すと50時間になります。第4号の「おおむね五十時間」という総枠と一致します。総枠が先にあって配分が決まっているのではなく、科目ごとの下限が積み上がって50時間になっているという構造です。

    通信の方法による例外

    第4号にはただし書があります。「ただし、国土交通大臣の定めるところにより登録実務講習の一部を通信の方法により行う場合は、この限りでない。」

    実務でよく見る「通信学習+スクーリング」という形は、このただし書に基づくものです。講義部分の相当を通信で行い、演習を中心とした部分を会場で実施する、という組み立てになります。通信が原則なのではなく、本則は50時間の講義・演習で、通信はその一部を代替する例外として置かれているという関係です。

    修了試験に合格して初めて修了になる

    受講と修了は別です。

    講義・演習・修了試験の三点セット

    施行規則13条の21第3号は「講義、国土交通大臣の定める方法による演習及び登録実務講習修了試験により登録実務講習を行うこと」と定めています。

    登録実務講習は、講義と演習と修了試験の三つで構成されると条文が明示しています。修了試験は付随物ではなく、講習の構成要素です。

    修了試験は終了後に行われる

    第8号がさらに具体的に定めています。「登録実務講習修了試験は、講義及び演習の終了後に国土交通大臣の定めるところにより行い、受講者が登録実務講習の内容全体について十分に理解しているかどうか的確に把握できるものであること。」

    試験の目的が「内容全体の理解を的確に把握すること」と書かれています。形式的な確認では足りないという趣旨です。

    修了認定基準は公表される

    第11号は「国土交通大臣の定めるところにより作成した基準(以下『修了認定基準』という。)によって登録実務講習の修了の認定がなされること」とし、第12号は「終了した登録実務講習の教材及び修了認定基準を公表すること」と定めています。

    つまり、どういう基準で修了と認定されるかは公表されている情報です。合格率や難易度について出所の不明な数字を探すより、受講を検討している機関が公表している修了認定基準を確認するほうが確実です。

    修了証の交付

    第13号は「登録実務講習を修了した者(以下『修了者』という。)に対し、別記様式第三号の十による修了証を交付すること」と定めています。様式が省令で定められているため、機関が変わっても修了証の形式は共通です。

    この修了証を添えて、試験を行った都道府県知事に登録を申請することになります。

    受講しただけでは足りない

    以上をまとめると、講義と演習に出席しただけでは修了になりません。修了試験を受け、修了認定基準に照らして修了と認定されて、はじめて修了者になります。

    「講習を受ければ自動的に登録できる」という理解は不正確です。もっとも、修了認定基準が公表されており、講義と演習を通じて内容を扱ったうえで実施される試験ですから、真面目に受講した人が想定外に落ちる制度設計にはなっていません。

    実施機関はどのように規律されているか

    講習の質を担保する仕組みも省令にあります。ここを知っておくと、機関選びの見方が変わります。

    国土交通大臣の登録を受けた機関が実施する

    施行規則13条の16第1号は、登録実務講習を「国土交通大臣の登録を受けたもの」と定義しています。誰でも実施できる講習ではありません。

    登録は申請により行われ(13条の17第1項)、申請には定款や登記事項証明書、役員の氏名および略歴、講師が要件に該当することを証する書類などの添付が求められます(同条2項)。

    欠格条項

    13条の18は欠格条項を定めています。宅建業法または同法に基づく命令に違反して罰金以上の刑に処せられ、執行を終わるなどしてから2年を経過しない者(1号)、登録を取り消されて2年を経過しない者(2号)、法人でこれらに該当する役員があるもの(3号)は、登録を受けられません。

    講師の要件

    13条の19第1項2号が講師の要件を定めています。三つのいずれかに該当する必要があります。

    イが「宅地建物取引士として宅地建物取引業に七年以上従事した経験を有する宅地建物取引士であつて、宅地及び建物の取引の実務に関し適切に指導することができる能力を有する者」。ロが「弁護士、不動産鑑定士又は税理士であつて宅地及び建物の取引に係る実務に関する知識を有する者」。ハが「国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の能力を有すると認める者」。

    イの「7年以上」という数字は、この講習の性格を示しています。2年の実務経験の代替を教える側に、その3倍以上の経験を求めているわけです。

    実施機関の登録は3年ごとに更新される

    13条の20第1項は「第十三条の十六第一号の登録は、三年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う」と定めています。同項ただし書に相当する2項ただし書により、更新を受けようとする者は有効期間満了の日の90日前から30日前までの間に申請書を提出しなければなりません。

    ここで出てくる「3年」は実施機関の登録の更新期間であって、受講者の修了の有効期間ではありません。この点は後述する期限の話と混同されやすいので、区別してください。

    受講できるのは実務経験が2年に満たない者

    13条の21第1号は、実施機関の義務として「試験に合格した者で、第十三条の十五に定める期間以上の実務の経験を有しない者に対し、登録実務講習を行うこと」と定めています。

    制度の建て付けとして、登録実務講習は実務経験が2年に満たない合格者に向けたものです。すでに2年以上の経験がある人は、そもそも受ける必要がありません。

    なお第2号は「登録実務講習を毎年一回以上行うこと」、第9号は「登録実務講習を実施する日時、場所その他……をあらかじめ公示すること」、第5号は「受講者があらかじめ受講を申し込んだ者本人であることを確認すること」を求めています。実施の継続性、情報の事前公開、本人確認がそれぞれ義務として置かれています。

    費用と日程は機関によって異なる

    省令が定めているのは、科目・時間・試験・修了認定・修了証といった中身の基準です。受講料は法令に定めがありません。実施機関ごとに設定され、改定もされます。

    この記事では具体的な金額を示しません。示せる一次的な根拠がないためです。会場の場所、開催日程、通信部分の教材の形式、費用は機関によって差があるので、申込みの前に複数を比較してください。ただし、科目と時間の下限、修了試験の実施、修了認定基準の公表は、どの機関でも省令によって共通に義務づけられています。内容の骨格が機関によって大きく変わることはありません。

    修了に期限がないのはなぜか

    ここが、名前の似た三つの講習を分ける決め手になります。

    三つの講習の期間制限を並べる

    登録講習(16条3項)は、施行規則10条の14により、登録講習修了試験に合格した日から3年以内に行われる試験について、問46から問50までの免除が及びます。期間を過ぎれば効果が失われます。制度の詳細は5問免除(登録講習)にあります。

    法定講習(22条の2第2項)は、宅建士証の交付の申請前6か月以内に行われたものでなければなりません。受講が早すぎても要件を満たしません。

    登録実務講習(18条1項、施行規則13条の16第1号)には、期間制限を定める規定がありません。修了してから何年後に登録を申請しても、要件を満たします。

    目的の違いから説明できる

    なぜ登録実務講習にだけ期限がないのか。それぞれの講習が何を担保しているかが違うからです。

    法定講習が担保しているのは、知識が最新であることです。宅建士証は5年ごとに更新され、その都度、法改正や最近の実務を学び直します。15条の3が宅建士に知識および能力の維持向上の努力義務を課しており、法定講習はこれを制度として担保する装置です。知識の鮮度が目的なので、「申請前6か月以内」という期間制限が必然的に伴います。

    登録講習が担保しているのは、試験の一部を免除してよいだけの知識があることです。免除の前提となる知識も古びるので、修了試験の合格から3年という期限が置かれています。

    これに対し登録実務講習が担保しているのは、実務経験2年に相当する能力を一度身につけたという事実です。実務経験そのものに期限がないことを考えれば筋が通ります。10年前に2年間の実務経験を積んだ人が、その経験を理由に登録できなくなるわけではありません。代替物にだけ期限を設ける理由がないのです。

    期限がないことの帰結

    したがって、合格した年に登録実務講習だけ修了しておき、登録の申請は何年か先に行う、という進め方も制度上は成立します。

    もっとも、急ぐ理由が生じる場面はあります。合格から1年以内に宅建士証の交付を受ければ法定講習が免除されるため、その1年に間に合わせたい場合です。登録実務講習は通信部分に一定の期間を要し、演習の日程も限られるため、この経路を狙うなら合格発表の直後に動くことになります。

    ただし、この「1年以内の免除」を追う価値があるかは別の判断です。宅建士証の有効期間は5年で更新には必ず法定講習が要るため、免除できるのは最初の1回だけです。判断の基準は「1年以内かどうか」ではなく「交付から5年以内に実務が始まる見込みがあるか」になります。この点は宅建合格後にやること宅建士の法定講習で詳しく扱っています。

    賃貸住宅管理業法の業務管理者と比べる

    同じ発想の制度が、隣接する法律にもあります。並べると、登録実務講習の位置づけがより鮮明になります。

    業務管理者の選任義務

    賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律12条1項は、賃貸住宅管理業者に対し、「その営業所又は事務所ごとに、一人以上の第四項の規定に適合する者(以下『業務管理者』という。)を選任して」、管理受託契約の内容の明確性や維持保全の実施方法の妥当性などについての管理および監督に関する事務を行わせなければならないと定めています。

    同条3項は「業務管理者は、他の営業所又は事務所の業務管理者となることができない」として兼任を禁じ、2項は、選任した者の全てが欠けるに至ったときは新たに選任するまでの間、その営業所または事務所において管理受託契約を締結してはならないとしています。

    事務所ごとに有資格者を置かせ、欠けたら業務を制限するという構造は、宅建業法31条の3の専任の宅建士の設置義務とよく似ています(専任の宅建士の設置義務)。

    要件は「2年以上の実務経験または同等以上」を前提にしている

    同条4項が要件を省令に委任し、施行規則14条がこれを受けています。条文はこうです。

    「法第十二条第四項の国土交通省令で定める要件は、管理業務に関し二年以上の実務の経験を有する者又は国土交通大臣がその実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めた者で、次の各号のいずれかに該当するものであることとする。」

    宅建業法18条1項と同じ形が現れています。「2年以上の実務の経験を有する者、または、それと同等以上の能力を有すると大臣が認めた者」。法律は違っても、専門的な業務を担わせる人を選ぶときの発想が共通していることが分かります。

    そのうえで1号か2号のいずれかを求める

    ただし、賃貸住宅管理業法のほうは要件がもう一段あります。規則14条は柱書で右の前提を置いたうえで、「次の各号のいずれかに該当するもの」であることを求めています。

    第1号が、法12条4項の知識および能力を有すると認められることを証明する事業として国土交通大臣の登録を受けたもの(登録証明事業)による証明を受けている者です。賃貸不動産経営管理士がこれに当たります。

    第2号が、宅地建物取引士で、国土交通大臣が指定する管理業務に関する実務についての講習を修了した者です。

    二段構えである点が違う

    ここが宅建業法との相違点です。宅建士の登録は、実務経験2年か同等以上の能力かのどちらかを満たせば足ります。一段です。

    これに対し業務管理者は、実務経験2年または同等以上という柱書の前提を満たし、かつ、1号か2号のいずれかに該当しなければなりません。二段です。

    したがって、宅建士であるというだけで直ちに業務管理者になれるわけではありません。2号の経路を選ぶ場合でも、柱書の前提と、大臣指定の講習の修了が別に必要になります。管理会社への転職を検討する際に見落とされやすい点です(不動産管理会社の仕事内容賃貸不動産経営管理士と宅建の比較)。

    二つの制度に共通する発想

    並べて見えてくるのは、実務経験という要件を、講習によって代替可能なものとして設計するという共通の発想です。

    実務経験を絶対の要件にすると、業界の外から人が入れなくなります。かといって知識だけで担わせるには業務の性質上あぶない。そこで、実務を模擬する講習を用意し、それを修了した者を経験者と同等に扱う。宅建士の登録実務講習も、業務管理者の指定講習も、この考え方の産物です。

    登録実務講習を「合格後に受ける面倒な手続き」としてではなく、「業界外からの参入を可能にしている制度」として捉えると、位置づけが正確になります。令和7年度試験の合格者の職業別構成比は不動産業33.2%、建設業8.7%、金融業8.1%、他業種27.9%、学生10.9%、その他11.3%で、不動産業以外が3分の2を占めます(一般財団法人不動産適正取引推進機構「令和7年度宅地建物取引士資格試験結果の概要」)。この多数派が登録に進むための経路が、登録実務講習です。

    試験での出題ポイント

    登録実務講習そのものが正面から問われることは多くありませんが、登録の要件は繰り返し出題されます。

    「または」を「かつ」にする肢

    最も基本的な型です。「試験に合格した者は、2年以上の実務の経験を有し、かつ登録実務講習を修了しなければ登録を受けることができない」という肢は誤りです。18条1項は「又は」で結んでおり、どちらか一方で足ります。

    逆に「実務経験が2年に満たない者は登録を受けることができない」という肢も誤りです。登録実務講習という経路があります。

    期間制限を持ち込む肢

    「登録実務講習を修了した日から3年以内に登録の申請をしなければならない」「修了後6か月以内に申請しなければならない」といった肢が考えられます。登録実務講習の修了に期間制限はありません。

    3年は登録講習(施行規則10条の14)の免除期間、6か月は法定講習(22条の2第2項)の期間です。他の講習の数字を持ち込ませる形なので、三つの講習の期間を対で覚えておけば弾けます。なお実施機関の登録が3年ごとの更新(施行規則13条の20)である点とも混同しないでください。

    講習の種類を入れ替える肢

    「登録実務講習を修了すると、宅建試験の問46から問50までが免除される」は誤りで、これは登録講習(16条3項)の効果です。「登録実務講習を修了すると宅建士証の交付を受けられる」も誤りで、修了は登録の要件であって、宅建士証の交付にはさらに22条の2の手続きが要ります。

    三つの講習の切り分けは宅建士の法定講習で四つの軸に整理しています。

    実施主体を入れ替える肢

    登録実務講習を実施するのは国土交通大臣の登録を受けた機関です(施行規則13条の16第1号)。「都道府県知事が指定する機関」とする肢は誤りで、知事が指定するのは法定講習です(22条の2第2項)。

    登録の申請先

    登録の申請先は試験を行った都道府県知事です(18条1項)。修了証は全国共通の様式ですが(施行規則13条の21第13号)、どこで講習を受けたかによって申請先が変わるわけではありません。受験地の知事に申請します。

    数字の整理

    宅建業法まわりは数字が集中しています。実務経験2年(施行規則13条の15)、公的部門の経路も通算2年(同13条の16第2号)、講師の経験7年以上(同13条の19第1項2号イ)、講義および演習の総時間おおむね50時間(同13条の21第4号)、実施機関の登録の更新3年ごと(同13条の20)。あわせて宅建士証の有効期間5年、法定講習は申請前6か月以内、免除は合格から1年以内、登録講習の免除は3年以内。横断的な整理は宅建業法の数字まとめにあります。

    覚え方・整理の仕方

    「代替」の一語から導く

    登録実務講習について何かを問われたら、「これは実務経験2年の代替だ」という一語に戻ってください。

    代替だから内容が実務の模擬になる。代替だから演習と修了試験がある。代替だから期限がない。性質・内容・期限のすべてがこの一語から出てきます。

    18条1項は「又は」を丸で囲む

    条文を読むときは接続詞に印をつけてください。18条1項は「実務の経験を有するもの 又は ……同等以上の能力を有すると認めたもの」です。

    「又は」なら一方で足りる、「かつ」なら両方要る。この読み方の習慣が、要件を問う肢の大半を処理します。

    数字は「2・7・50・3」で持つ

    受講者に求められる実務経験の期間が2年、講師に求められる経験が7年以上、講義と演習の総時間がおおむね50時間、実施機関の登録の更新が3年ごと。

    受講者2年・講師7年という対比が覚えやすい入口になります。教える側に3倍以上を求めている、と理解すれば数字が結びつきます。

    三つの講習は期間で見分ける

    登録講習は3年以内、登録実務講習は期限なし、法定講習は申請前6か月以内。真ん中だけ「なし」という並びです。

    そして「なし」である理由を添えます。実務経験の代替だから、実務経験そのものと同じく期限がない。理由から入れば、期限を設ける肢に違和感を持てます。

    業務管理者は「一段と二段」

    宅建士の登録は一段、賃貸住宅管理業法の業務管理者は二段。柱書の前提(2年または同等以上)に加えて、1号か2号が要る。

    「宅建士なら業務管理者になれる」ではなく「宅建士+指定講習+柱書の前提」と覚えてください。

    理解度チェッククイズ

    問1 宅地建物取引士資格試験に合格した者が登録を受けるためには、宅地または建物の取引に関し2年以上の実務の経験を有し、かつ、登録実務講習を修了しなければならない。

    答え:×。18条1項は「宅地若しくは建物の取引に関し国土交通省令で定める期間以上の実務の経験を有するもの又は国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたもの」と定めており、「又は」で結ばれた選択的な要件です。どちらか一方を満たせば足り、両方は要りません。実務経験が2年以上あれば登録実務講習は不要ですし、逆に実務経験がなくても登録実務講習を修了すれば登録を受けられます。なお「2年」という期間は法律本体ではなく施行規則13条の15が定めており、「同等以上の能力を有すると認めた者」の中身は同13条の16が定めています。同条は登録実務講習の修了者(1号)のほか、国・地方公共団体等で宅地建物の取得または処分の業務に従事した期間が通算2年以上の者(2号)も挙げています。

    問2 登録実務講習を修了した者は、修了した日から3年以内に宅地建物取引士の登録を申請しなければ、修了の効力を失う。

    答え:×。登録実務講習の修了に期間制限はありません。修了してから何年後に登録を申請しても要件を満たします。理由は制度の目的にあります。登録実務講習は実務経験2年の代替として設計されており、実務経験そのものに期限がない以上、その代替にだけ期限を設ける理由がないからです。本問の「3年」は別の講習の数字で、施行規則10条の14が登録講習(5問免除)の修了者について、登録講習修了試験に合格した日から3年以内に行われる試験を免除の対象としています。なお施行規則13条の20は登録実務講習の実施機関の登録を3年ごとの更新としていますが、これは機関側の話であって受講者の修了とは関係ありません。

    問3 登録実務講習は、講義と演習によって行われ、修了試験は実施機関の任意である。

    答え:×。施行規則13条の21第3号は「講義、国土交通大臣の定める方法による演習及び登録実務講習修了試験により登録実務講習を行うこと」と定めており、修了試験は講習の構成要素です。任意ではありません。同条第8号は、修了試験を講義および演習の終了後に行い、受講者が内容全体について十分に理解しているかどうかを的確に把握できるものであることを求めています。さらに第11号は、国土交通大臣の定めるところにより作成した修了認定基準によって修了の認定がなされることを、第12号はその修了認定基準と教材を公表することを、第13号は修了者に修了証を交付することを、それぞれ義務づけています。講義と演習に出席しただけでは修了になりません。

    問4 登録実務講習は、宅地建物取引士証の交付を受けようとする者が、登録をしている都道府県知事が指定する講習として受講するものである。

    答え:×。実施主体と目的の両方が誤りです。登録実務講習を実施するのは国土交通大臣の登録を受けた機関であり(施行規則13条の16第1号)、目的は18条1項の登録の要件を満たすことです。本問が述べているのは法定講習の説明で、22条の2第2項が、宅建士証の交付を受けようとする者に対し、登録をしている都道府県知事が指定する講習で交付の申請前6か月以内に行われるものの受講を求めています。三つの講習は実施主体でも見分けられます。登録講習と登録実務講習は国土交通大臣、法定講習は都道府県知事。宅建士証を交付するのが知事なので、その前提となる講習も知事が指定する、という対応です。

    問5 賃貸住宅管理業者の営業所または事務所に選任される業務管理者について、宅地建物取引士は、それだけで業務管理者となることができる。

    答え:×。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律12条4項を受けた施行規則14条は、要件を二段構えで定めています。柱書が「管理業務に関し二年以上の実務の経験を有する者又は国土交通大臣がその実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めた者で、次の各号のいずれかに該当するもの」とし、そのうえで1号が登録証明事業による証明を受けている者(賃貸不動産経営管理士)、2号が「宅地建物取引士で、国土交通大臣が指定する管理業務に関する実務についての講習を修了した者」を挙げています。したがって宅建士であっても、柱書の前提を満たし、かつ指定講習を修了する必要があります。なお柱書の「2年以上の実務の経験または同等以上の能力」という形は、宅建業法18条1項と共通する発想です。また同法12条3項により、業務管理者は他の営業所または事務所の業務管理者を兼ねることができません。

    まとめ

    1. 登録実務講習は実務経験2年の代替である。18条1項は実務経験を有する者と、大臣が同等以上の能力を有すると認めた者とを「又は」で結んでおり、施行規則13条の16第1号が後者に登録実務講習の修了者を位置づけています。選択的な要件なので、どちらか一方で足ります。

    2. 経路は三つある。宅建業者等での取引の実務経験2年以上(18条1項前段、期間は施行規則13条の15)、公的部門での取得・処分の業務に通算2年以上(施行規則13条の16第2号)、登録実務講習の修了(同1号)。自分がどれに当たるかを先に確定させてください。

    3. 代替であることが内容を決めている。施行規則13条の21第4号は、講義および演習の総時間数をおおむね50時間とし、宅地建物取引士制度に関する科目を講義1時間、取引実務に関する科目を講義37時間、取引実務の演習に関する科目を演習12時間と定めています。演習が独立した科目として時間指定されているのは、実務の代替を名乗る以上、手を動かさせる必要があるからです。一部を通信で行えるのは同号ただし書によります。

    4. 修了試験に合格して初めて修了になる。講義・演習・修了試験の三点セットが同条第3号に明記され、修了認定基準による認定(11号)、基準と教材の公表(12号)、修了証の交付(13号)が続きます。受講だけでは足りません。

    5. 修了に期限はない。登録講習は修了試験合格から3年以内、法定講習は申請前6か月以内という期間制限を持ちますが、登録実務講習にはありません。知識の鮮度を担保する講習と、一度身につけた能力を担保する講習の違いから説明できます。

    6. 賃貸住宅管理業法の業務管理者と構造が似ている。施行規則14条は「管理業務に関し2年以上の実務の経験を有する者または同等以上の能力を有すると認められた者」を柱書の前提としたうえで、賃貸不動産経営管理士(1号)か、宅建士かつ大臣指定講習の修了者(2号)であることを求めます。宅建士の登録が一段であるのに対し、業務管理者は二段である点が違います。

    よくある質問

    Q. 不動産会社に3年勤めていましたが、経理担当でした。実務経験として認められますか。

    A. 18条1項が求めているのは「宅地若しくは建物の取引に関し」の実務の経験です。会社に在籍していた事実だけでは足りず、取引に関する業務に従事していたことが必要になります。経理や総務など取引に関与しない部門の期間は算入されない可能性があります。実務経験による登録を申請する場合は勤務先の証明が必要になるため、判断がつかないときは講習を申し込む前に、登録先となる都道府県に確認するのが確実です。

    Q. 登録実務講習はいつまでに受けなければなりませんか。

    A. 期限はありません。試験の合格そのものに有効期限がなく、登録実務講習の修了にも期間制限を定める規定がないため、必要になった時点で受講できます。ただし、合格から1年以内に宅建士証の交付を受けると法定講習が免除されるという規定があるため(22条の2第2項ただし書)、この1年に間に合わせたい場合は合格発表の直後に動くことになります。その免除を追う価値があるかどうかは宅建合格後にやることで扱っています。

    Q. 実施機関によって講習の内容は変わりますか。

    A. 骨格は変わりません。施行規則13条の21が、科目ごとの最低時間、修了試験の実施、修了認定基準による認定、修了証の交付を共通の義務として定めているためです。修了証の様式も省令で定められています。変わるのは、会場の場所、開催日程、通信部分の教材の形式、受講料といった運用面です。費用は法令に定めがなく機関ごとに異なるため、申込前に比較してください。

    Q. 修了試験に落ちることはありますか。

    A. 制度上は落ちることがあります。施行規則13条の21第8号は、修了試験を講義および演習の終了後に行い、受講者が内容全体について十分に理解しているかどうかを的確に把握できるものであることを求めており、第11号は修了認定基準による認定を求めています。ただし同第12号により修了認定基準と教材は公表されるので、受講を検討している機関が示している基準を確認できます。合格率について出所の不明な数字を参照するより、公表されている基準を見るほうが確実です。不合格の場合の再受験の取扱いは機関によって異なるため、申込前に確認してください。

    Q. 登録実務講習を修了すれば、すぐに宅建士として働けますか。

    A. 働けません。修了は18条1項の登録の要件を満たすためのもので、その後に登録の申請と、22条の2による宅地建物取引士証の交付の申請が必要です。2条4号が宅地建物取引士を「宅地建物取引士証の交付を受けた者」と定義しているため、重要事項の説明(35条1項)や35条書面・37条書面への記名(35条5項、37条3項)ができるのは宅建士証の交付を受けた後です。三段階の関係は宅建士の登録と宅建士証にまとめてあります。


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